第98回 放送と人権等権利に関する委員会

第098回 – 2005年3月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

[事例研究]:テレビ東京による「訂正放送」を視聴…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

NHK名古屋放送局のニュース番組(2005年1月25日放送)について、愛知県の産婦人科医院長から苦情申立てがあった事案。

申立人は「2003年10月に助産師資格のない看護師、准看護師に助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを実名で報道された。既に改善措置を講じているにもかかわらず、現在も違法行為を行っているかのように報道されたことにより、名誉・信用を毀損され、人権を侵害された」と主張。救済措置として”訂正放送と、公表を前提とした謝罪文”を当該局に要求してる。

これに対し、NHK名古屋放送局は、「無資格者による助産行為は重大な社会的問題として認識し、県内でも行政指導の事例があったことを啓発することが重要だと判断して報道した。また、NHKとしては院長から抗議を受けた『コメント内容の間違い』と『改善指導を受けた時期の明示』については、翌26日に修正放送をし、放送上の対応については理解を得られたと認識している。要求については応じられない」としている。

2月の委員会で審理入りが決定された後、申立人から提出された「当該局への要求を明記した『権利侵害申立の補充書』」、これに対する当該局からの「答弁書」、さらに申立人からの「反論書」を基に意見交換した。また、当該局から提出された放送済みテープを視聴し、1時間20分にわたって審理した。

委員会では、「放送の1年2か月前になされた行政指導を時期を明示せずニュース報道で取り上げたことの是非」「医院名を上げての報道と、その公共性・公益性」などが、主な論点となった。

審理の結果、当該局に対し「再答弁書」の提出を求め、4月の委員会で論点整理を行い、5月の委員会で双方にヒアリングを実施する方向で、今後の審理を進めることになった。

[事例研究]:テレビ東京による「訂正放送」を視聴

テレビ東京は、情報バラエティー番組[『教えて!ウルトラ実験隊』(2005年1月25日放送)で取り上げた花粉症治療法の企画コーナーで、過剰演出があったとして、自主的に2月1日の同番組内で「訂正・お詫び」の放送をした。

委員会では、放送人権委員会に関わる苦情案件ではないものの、この番組の録画テープを当該局から借り受けて視聴し、訂正放送のあり方について事例研究を行った。

人権に関する苦情対応状況(2月)

2005年2月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔11件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・4件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

1の案件のうち、「宝石販売報道」(2005年2月3日放送)の苦情申立ては、不適切な取材による誤った報道として、放送人権委員会に「苦情申立書」(3月10日付)が届いたもの。申立人が、法人(株式会社)となっていることから、委員会では協議の結果、放送人権委員会運営規則に基づき、このままでは受理できない旨、申立人に通知することになった。

その他

「けん銃密輸事件報道」案件(2004年10月放送)については、2月の委員会で、放送人権委員会運営規則に基づき、審理対象外とすることを決定したが、事務局から、2月23日付で申立人に対し、飽戸委員長名で「審理対象外決定の回答文」を送付したと報告。

また、3月7日に広島で催した「放送人権委員会委員との意見交換会[中・四国]」について、中国・四国地区の放送局から22局32人が参加し、飽戸委員長をはじめとする7人の放送人権委員会委員と、「放送と人権」「取材のあり方」などをテーマに、具体的な事例を基に、活発な意見交換が行われたことを事務局から報告。参加委員から「有意義であった」との高い評価があった。

最後に、3月24日に開催される「BPO年次報告会」のスケジュールなどを確認、次回放送人権委員会を4月19日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第97回 放送と人権等権利に関する委員会

第097回 – 2005年2月

「産婦人科医院・行政指導報道」案件について協議

「けん銃密輸事件報道」案件について協議…など

「産婦人科医院・行政指導報道」案件について協議

愛知県の産婦人科開業医院長からNHKのニュース番組(2005年1月25日放送)について、1月31日事務局に、下記の苦情申立てがあり、2月8日に「申立書」が提出された。委員会では、この案件について審理入りするどうかについて検討した。

申し立てた院長は、NHKの記者から、「助産師不足の実態を調べ現状の改善に役立つ番組を企画したい」と番組企画を持ち出して協力要請があったので、取材に応じた。しかし、その日の夕方のニュースで、2003年10月に助産師の資格がない看護師、准看護師に助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを取り上げ、実名で報道された。2年も前のことを今になって取り上げた、この放送によって、名誉と信用を毀損され人権を侵害された、としている。

これに対し、NHK名古屋放送局は、「無資格者による助産行為は重大な社会的問題と認識し、愛知県内でも行政指導の事例があったことを啓発することが重要だと判断して報道したのであって、特定の意図を持って報道したものではない」「記者は最初から事実関係を確認したいと告げて取材した」と反論している。

また、NHKとしては、「院長から抗議を受けた『コメント内容の間違い』と『改善指導をうけた時期の明示』については、翌日修正放送などをし、放送上の対応については理解を得られたと認識している。今後も誠意を持って話し合いを続け、要求に対しては誠意をもって対応したい」としている。

委員会では、院長からの「申立書」とNHKからの「対応報告」を基にこの件を審理対象とするかどうか協議した結果、申立人が放送人権委員会での審理を強く求めていることや、当該局とこれ以上の話し合いを拒否していることから、審理事案とすることを決めた。

放送人権委員会では、「申立書」に当該局への要求が明確に記載されていないなど不備があるため、次回3月の委員会までに補正した「権利侵害申立書」を提出してもらうとともに、それに対する当該局の「答弁書」などの提出を求め、それを基に実質審理に入ることにした。

「けん銃密輸事件報道」案件について協議

奈良県の女性から、ニュース番組の特集(2004年10月放送)について、事務局に12月24日抗議文が送付され、1月28日「申立書」が届いた。内容は、「『けん銃密輸事件』を伝えた特集で、虚偽の報道をされて精神的打撃を被るとともに、けん銃密輸入グループの一員として犯人視され、人権が侵害された」と申し立ててきたもの。

委員会では、申立書や当該局の見解を検討する一方、当該局から提出された放送済みVTRを視聴し協議した。

放送人権委員会の運営規則第5条(2)には、苦情の取り扱い基準として、「放送されていない事項は原則として取り扱わない」と規定されているが、報道された首謀者に関する放送内容に誤りや歪曲があった場合には、共犯とされる者からの申立てであっても例外的に審理対象とするのが公平ではないかとの視点からも、慎重に検討した。

しかし、当該番組を視聴し判断したところ、申立人を特定して共犯者とうかがわせる事実は見出せなかった。したがって、本件報道による被報道者としての申立人資格を認めることは困難であり、このようなケースまで審理対象の範囲を拡大すると、報道を萎縮させるおそれがあるという意見が大勢を占めた。

こうした理由から、委員会は本件申立ては審理対象外として、審理しないことを決め、事由を記載した委員長名による文書を、申立人に送付することにした。

「委員会決定」に関する名古屋テレビの対応について検討

2004年12月に委員会決定を通知・公表した「警察官ストーカー被害者報道」事案(放送人権委員会決定24号)に関して、名古屋テレビから「対応報告」が提出されたことを、事務局から報告した。この委員会決定は、”問題なし”とする見解であり、委員会は当該放送局に決定通知後の対応・改善報告を求めていなかったが、05年1月末に名古屋テレビから自主的に提出された。

名古屋テレビの取り組みの概要は、「以前から同局が運用している『人権・プライバシーの尊重、報道被害の防止、名誉毀損の防止等にかかわる留意事項』を、全社員・スタッフで再確認した」とし、具体的には、「どのようなニュースでも取材・放送の是非、対応の仕方等で疑問がある場合は、複数の階層に多岐にわたって判断を仰ぐこと」や、「事案を担当した第一次取材者は取材内容や関係者の発言内容等を詳細な記録として文書化すること」などを改めて確認した、というもの。

委員会では、名古屋テレビから自主的に対応報告が提出されたことを評価するとともに、報告内容を了承した。

人権に関する苦情対応状況(1月)

2005年1月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔12件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

「視聴率調査に関わる検証会」報告

飽戸委員長から、民放連と広告主協会、広告業協会で構成する「視聴率調査に関わる検証会」の発足について報告があった。飽戸委員長は「この検証会の発足は、『視聴率に関するBPO三委員長の見解と提言』に基づいて、民放連会長直属の「視聴率等のあり方に関する調査研究会」(座長=清水英夫BPO理事長)が設置を決めたもので、私も委員として参加することになった。視聴率調査の監査を外国のようにきちんとやろうということで、検証活動を積極的に進めていくことになる」と経過を語った。

その他

事務局より、3月7日(月)広島市で開かれる「放送人権委員会委員との意見交換会[中・四国]」について、スケジュール案などを報告し、調整・相談。

次回放送人権委員会を3月15日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第96回 放送と人権等権利に関する委員会

第096回 – 2005年1月

「文化財遺跡発掘関連報道」案件の報告について

斡旋解決事案「キス強要バラエティー番組に抗議」の報告…など

「文化財遺跡発掘関連報道」案件の報告について

2004年8月に大阪府の男性から「文化財遺跡の発掘について取材を受けたが、応えた内容と放送された内容が違っていて、闇の事件屋扱いされた」との苦情が寄せられた案件。

前回12月の委員会で、申立人が問うている番組の制作姿勢や営業上の損失等は放送人権委員会運営規則の〔苦情の取り扱い基準〕になじまず、本件申立ては審理対象外と決まったのを受けて、委員長名でその旨を文書で申立人に通知したことを事務局から報告した。

年明け後も、申立人から特に反応はなく、委員会はこの件の審理を終了することにした。

斡旋解決事案「キス強要バラエティー番組に抗議」の報告

12月に愛知県の女性から、「駐車していたところ、お笑いコンビの一人が無断で乗り込んできて無理やりキスをしようとした。しかも、この一部始終をテレビカメラに撮影された。局側に抗議したら放送しないと答えたが、問題の本質がわかっていない。こんな取材・撮影は絶対許せない」と強い苦情がBPOに寄せられた。

BPOの要請で双方が話し合った結果、当該局が「深く謝罪するとともに、問題となったコーナー企画を即時打ち切る」ことなどで女性と合意した。

事務局からこの件を本委員会に報告、承認された。これで本年度の斡旋解決は4件となった。

人権に関する苦情対応状況(12月)

2004年12月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔14件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・4件

また、BPO発足2003年7月以降、2004年12月までの、苦情・斡旋・決定の累積件数は、次のとおり。

03.7 ~04.12 斡旋・審理関連 人権一般 斡旋解決/決定
189 168 357 8/3

(注)
2004年「決定」事案    3件
「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」(北海道文化放送)
「国会・不規則発言編集問題」(テレビ朝日)
「警察官ストーカー被害者報道」(名古屋テレビ)

2004年「斡旋解決」案件  3件

「リタイア盲導犬の世話を巡り名誉毀損」とのペット美容室経営者の訴え
「取材協力したのに虚偽の放送をされ、名誉・信用毀損」とのヘリコプター・オーナーからの苦情
「被虐待児ドキュメントで子供を無断撮影し放送された」との母親からの抗議

“訂正放送請求事件”の最高裁判決について意見交換

1996年6月にNHKが放送した中高年の離婚を考える番組『生活ほっとモーニング~妻からの離縁状・突然の別れに戸惑う夫たち』で、離婚した夫の一方的な話を放送されたとして名誉毀損・プライバシー侵害を訴えていた埼玉県の女性が、NHKに訂正放送などを求めた訴訟の上告審判決が、2004年11月25日に最高裁第一小法廷であった。

この判決内容は、今後の放送人権委員会の役割や審理に深く関わってくると見られることから、委員会で右崎正博委員に解説してもらい、意見交換した。

右崎委員はレジュメに基づき、判決内容を解説。論点として、この最高裁判決は、「?放送法4条1項について、放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自由の確保の観点から、放送事業者に対し、自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであって、被害者に対して訂正放送等を求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではないとしている」「今後、放送事業者は訂正放送等について自律的・自主的に対応することが求められるが、その際には、放送事業者によって自主的に設立された第三者機関としての放送人権委員会が、大きな役割を果たすことが期待されるのではないか」「放送人権委員会が権利侵害の認定をした場合は、謝罪放送や訂正放送を求める申立てに対して、委員会決定の中で、そういうことを示すことが必要になるかもしれない。その是非も含め検討が必要だ」と問題提起した。

また、「?民法第723条に基づく謝罪放送については、この請求部分についての上告がなされなかったので、最高裁での審理判断の対象にならなかった。しかし、放送法第4条に基づく訂正放送請求権が私法上の権利として認められないことになった一方で、民法第723条に基づく名誉回復措置としての謝罪放送・訂正放送の請求の可否については未解決のまま残された」と解説した。

この後意見交換を行ったが、主な意見は以下の通り。

  • 今後は放送法に代わって民法第723条に基づいて訂正放送請求等が行われることになるが、この条文は名誉回復措置だけが対象だ。プライバシー侵害等は対象外で、局側は名誉毀損以外はフリーハンドになる。このあたりが問題になりそうだ。
  • 裁判で、民法第723条を活用するより放送人権委員会に申立てたほうが、もっと幅広い対応が可能ではないかという流れが出てくることも予想される。
  • 放送局側も謝罪・訂正放送を求められた場合、自分の判断で決めないで、放送人権委員会でいったん判断してもらい、その上で、「放送人権委員会が求めるのだからやりましょう」というスタンスになるのではないか。放送人権委員会もそういう役割を期待されると思う。
  • 基本的には放送局の自主・自律的な決定が一番大事で、放送人権委員会に全面委任してくるケースはないと思う。

“番組に政治介入”との報道について意見交換

2005年1月12日付の朝日新聞(朝刊)が、「NHKが2001年1月に教育テレビで放送した、慰安婦問題などを取り上げた民間法廷を素材とした特集番組『ETV2001戦争をどう裁くか~問われる戦時性暴力』(4回シリーズの第2回)について、自民党の国会議員2人が”偏った内容だ”などと介入し、NHKは、その後番組内容を改変した」と報道し、NHKと、名指しされた議員2人は「朝日の取材は最初から意図的で、歪曲・誘導されたものだ」などと反発、抗議している問題について委員会で話し合った。

報道された番組については、出演者がNHKを相手取って申し立て、放送人権委員会が2003年3月に委員会決定を出した事案でもあり、事務局から当時の放送人権委員会の審理概要について説明した。放送人権委員会としても、「番組への政治介入があったのかどうか」について、今後も事実関係の解明を注意深く見守っていくことにした。

その他

事務局より、3月7日(月)広島市で開かれる「放送人権委員会委員と中・四国地区担当者との意見交換会」について、スケジュールなどを相談。また、今年度の「BPO年次報告会」を、3月24日(木)に開催することを報告した。

平成17年度の放送人権委員会の委員会の日程について協議し、原則第3火曜日午後4時からとし、例外として、8月は第4火曜日の23日、18年3月は第2火曜日の14日に開催することとした。

次回放送人権委員会を2月15日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第95回 放送と人権等権利に関する委員会

第095回 – 2004年12月

審理要請案件「文化財遺跡発掘関連報道」の取り扱いについて

「警察官ストーカー被害者報道」事案の総括…など

審理要請案件「文化財遺跡発掘関連報道」の取り扱いについて

8月に大阪府の男性から、「文化財遺跡発掘について取材を受けたが、対応した内容と放送された内容が違っていて、事実関係を捏造され、事件屋扱いされた」と苦情が寄せられた案件。放送人権委員会では9月に双方へ話し合いを要請したが不調に終わったため、10月に「申立書」の提出を求め、11の委員会で「申立書」を基に協議したが、内容に不備があり、苦情申立人に申立書の補足を提出要請していた。

12月の放送人権委員会では、再提出された「申立書」、および、申立書に対する当該放送局の「見解」、放送局から提出された当該番組のVTRを視聴して、審理入りするかどうかを協議した。

その結果、「申立人は当該番組の制作姿勢や制作のあり方を厳しく問うているが、放送人権委員会は番組の企画や姿勢などを審理対象としていない」こと、また、「当該番組によって営業上の損失を受けたことを問題にしているが、放送人権委員会では経済的損失等は把握できない」ことなどの事由により、本件申立ては、運営規則第5条の1〔苦情の取扱基準〕に照らして”審理対象外”と判断することに決定した。

なお、同決定は放送人権委員会委員長名の文書で、申立人に審理対象外とした事由を記して通知し、あわせて当該放送局にその旨を連絡することとした。

「警察官ストーカー被害者報道」事案の総括

愛知県の女性から申立てがあった「警察官ストーカー被害者報道」事案に関する「委員会決定」(見解)の通知・公表と記者発表の模様について、事務局から以下のとおり報告した。

「委員会決定は12月10日午前10時30分に、申立人・被申立人双方に通知した。被申立人の名古屋テレビ放送にはBPO会議室で飽戸委員長から委員会決定文を手交し、申立人には調査役が名古屋に出向いて直接、同決定文を手渡し、内容を説明した。

申立人は、この決定について『取材・放送に不慣れな一般市民にインタビューする際、特に好奇の対象となりやすい事件の時には、その人が顔出しで放送されるとどのような影響が出るかを慎重に配慮してほしい。その影響や配慮の内容を取材される側にも説明し、了承を取ってほしい』と述べた。

一方、被申立人の名古屋テレビは、『決定は、人権侵害等は無かったとされていますが、肖像の使用にあたっては慎重な配慮が必要であるとしています。名古屋テレビでは、自社の放送基準を遵守し、今後も人権と放送倫理に充分な配慮をした報道活動に努めてまいります』とのコメントを公表した。

この後、午前11時から東京・千代田区紀尾井町の千代田放送会館内で記者発表を行い、『委員会決定』の内容を公表した。記者会見には、放送人権委員会から飽戸委員長と、起草委員の右崎委員と五代委員、それに渡邊委員が出席。メディア側からは記者22社32人が集まり、カメラ6台が入った。

会見では、まず飽戸委員長が『委員会決定』の概要を説明し、『今回の決定は少数意見がなく全員一致でした』と述べた。次いで右崎委員が、申立人・被申立人双方の主張が食い違った”申立人からの情報提供の有無”と”顔出し放送の諾否”の2点について説明した後、『審理全体を通して申立人の立場にも充分な配慮を払い公平な判断をしたと思う』と述べた。渡邊委員は、『素人にインタビューに応じてもらう際、どこまで説明し理解してもらえるか、放送従事者のプロとしての心構えが今後、問われることになる』と補足した。

最後に飽戸委員長が、『今回の委員会決定は”問題なし”と判断して被申立人側に対応措置の要請はしていない。しかし当該放送局も含め各局は、この放送人権委員会の決定を素材として活用し、(顔出し放送を含むインタビュー取材等における配慮のあり方についての)議論を深めてもらいたい』と述べた」。

以上の事務局からの報告の後、当該放送局が通知当日に放送した「委員会決定の主旨」を伝えるニュースのVTRを視聴。また、関連の新聞記事も資料として配付した。

飽戸委員長は、「記者会見では質問は殆ど出なかったが、会見終了後に記者達からいろいろ聞かれた。この中で『新聞記事についても肖像権に充分配慮しなければならないですね』という記者もいた」と当日の模様と感想を述べた。

斡旋解決事案の報告

事務局から以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

  • 「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件
    10月に大阪府の男性から寄せられた、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情案件。当該放送局は、番組を紹介するHPの中で内容を訂正する措置をとったが、男性は納得せず、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。
    放送人権委員会で話し合いを斡旋した結果、再度の話し合い結果に基づいて局側が、内容を修正した番組を男性の出身地などで放送することを提案し、男性もこれを了承し解決した。
  • 「ドキュメントで子どもを無断撮影し放送」との苦情案件
    8月に山形県の女性から寄せられた、「児童施設に預けている4歳の長男がドキュメンタリー番組で被虐待児の一人として撮影されたことを知った。局に放送をやめるように求めたが、映像処理を少し施されて結局、放送されてしまった」との苦情案件。局側は「学園長から撮影許可を得た。苦情に応えてモザイクを大きくした」と説明したが、女性は納得せず、話し合いは膠着状況になった。
    放送人権委員会は双方に重ねて話し合いを要請し、それに応えて放送局幹部が申立人と直接面談。改めて企画意図を説明して了解を求めた。女性は「親の承諾がないまま子どもを撮影したことは問題だ」と重ねて主張したが、新たな要求等はなく、その後数か月間、当該女性からの抗議・苦情もないことから、放送人権委員会では落着したものと判断した。

以上2件が斡旋解決として委員会で承認され、2004年度の斡旋解決事案は合わせて3件になった。

人権に関する苦情対応状況(11月)

11月の1か月間にBPOへ寄せられた、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔25件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・21件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・4件

その他

飽戸委員長から、「11月25日に『NHKに対する訂正放送要求裁判』の最高裁判決があったが、今後の放送人権委員会審理にも関係するところがあると思うので勉強会をしたい」との提案がなされ、来月の委員会で意見を交わすことを申し合わせた。

事務局から、「中・四国地区のBPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を、2005年3月7日(月)の午後、広島市において開催する準備を進めていること、並びに、3月下旬に「BPO年次報告会」を開く予定であることが報告された。

次回放送人権委員会を1月18日午後4時から開催することを確認し、閉会した。

以上

第94回 放送と人権等権利に関する委員会

第094回 – 2004年11月

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

10月の委員会で実施した申立人・被申立人に対するヒアリングを受けて起草委員会がまとめた「委員会決定案」を基に、最終の審理を行った。

協議の結果、原案に微修正を加えて「委員会決定」がまとまり、12月10日に双方へ通知、その後、記者会見で公表することを決めた。

なお、本件事案の性格を踏まえ、公表にあたっては、申立人を匿名にすることも併せて了承した。

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討

事務局から以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

  • 「文化財遺跡発掘関連報道」案件
    8月に大阪府の男性から、「取材に対応した内容と放送された内容が違っていて、事件屋扱いされた」との苦情が寄せられた案件。当該放送局との間で話し合いが続けられていたが、なお双方の主張には隔たりがあったため、申立書の提出を求めることにしていた。
    11月の放送人権委員会では、11月9日付で提出された「申立書」を基に協議したが、当該放送局に対する具体的な要求が記されていないなど記載内容に不備があることから、申立書の補足を要請することにした。
  • 「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件
    「児童虐待があったかのように報道され、人権や名誉を傷つけられた」とする、栃木県のセミナー運営団体関係者からの苦情案件。
    事務局から、その後の状況として、「当該放送局は『いつでも話し合う用意がある』としているが、代理人からはその後、全く動きがない」旨を報告した。
  • 「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件
    「虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」として大阪府のヘリコプター・オーナーが苦情を申し立てている案件。
    事務局から、その後の動きとして、「10月末に双方の話し合いが行われ、申立人は当該放送局に対し、『大掛かりな謝罪は要求しない。(自分の親族や関係者がいる)地方の放送局か新聞で謝罪してくれればいい。期限はつけない、ゆっくり考えてくれ』と求めたと聞いている」と報告した。

人権に関する苦情対応状況(10月)

2004年10月中にBPOへ寄せられた、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・15件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・7件

「地方局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」の開催について

在京局と放送人権委員会委員との意見交換会(本日)に続いて、「地方局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を開催することとし、2005年2~3月の広島市開催を目指し、委員のスケジュール等を確認した。

次回の委員会を12月21日(火)午後4時から開催することを確認し、閉会した。

以上

第93回 放送と人権等権利に関する委員会

第093回 – 2004年10月

「警察官ストーカー被害者報道」事案のヒアリングと審理

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案のヒアリングと審理

◆ 申立人側ヒアリング

(出席者)申立人 愛知県在住の女性

冒頭、申立人が、持参したメモに基づいて「メディアは、表現の自由を前提にあげさえすれば、一市民の生活を犠牲にすることが許されるのか、はなはだ疑問に思う。犯罪被害者という特異な立場において侵害された権利をあえて主張することは、社会全体の利益につながるのではないか」と述べ、その後、委員との質疑応答に入った。

◆ 被申立人側ヒアリング

(出席者)被申立人 名古屋テレビ放送 3人

冒頭、被申立人側から「申立人との間で見解が異なっている点について、改めて意見を述べたい」として、次のような陳述があった。

「提出した補強資料に記したとおり、3月5日の深夜に申立人本人が情報提供の電話をしてきたことは間違いない。本人からの連絡がなければ、本件を当社が知ることはできなかった。

顔出し放送の了解に関しても、記者とカメラマンの記憶に不自然な点はなく、当社の主張は妥当なものであり、警察という権力を持つものが重大な犯罪行為をなしたということを、申立人が勇気を持って糾弾するという、その真摯さを担保する意味からも、顔出しの放送が相応しいと判断した」。

この意見陳述後、委員との質疑応答を行った。

■ ヒアリング後の審理

申立人・被申立人双方へのヒアリング終了後、審理に入った。

前回(9月)の委員会までの審理および前記ヒアリングの結果を踏まえ、まず起草委員が申立人の主張3点(人格権侵害、放送倫理違反、過剰取材)について、「委員会の判断」部分の原案を説明した。

この原案に対し、委員から、一部表現の追加・訂正意見が出され、各委員は概ねこれに賛同。さらに、モザイク使用の是非、映像の使用量、”2ちゃんねる被害”の扱いなどについて意見が交わされた。

協議の結果、もう一度、次回委員会で最終的な詰めを行った上で「委員会決定」を決定し、12月上旬に通知・公表することを決めた。

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討

事務局から、以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

1.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件

栃木県のセミナー運営団体から、「犯罪行為があったことを前提にするような報道をされ、人権や名誉を傷つけられた」とする苦情申立てが6月にあったが、9月になって、内容を一部手直しした申立書が再送付されてきた。9月の委員会で検討し、新たな申立内容での双方の話し合いを要請していたが、その後、申立人と当該放送局の間で話し合いが行われているようだ。
放送人権委員会では、暫くの間、その推移を見守ることにした。

2.「文化財遺跡発掘関連報道」案件

大阪府の男性から、「文化財遺跡の発掘について取材を受けたが、答えた内容と放送された内容が違い、事実関係を捏造され、事件屋扱いされた」との苦情が8月に寄せられた案件で、9月の委員会で検討し、双方に話し合いを要請していた。その後、10月に入って申立人と当該放送局との間で話し合いが行われたが、双方の主張に隔たりがあり、不調に終わっている。
放送人権委員会として「申立書」の提出を求め、それを待って、審理入りするか否かの検討を行うことにした。

3.「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件

大阪府の会社社長(男性)から、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情が10月に届いた。当該放送局では、番組を紹介するインターネットのHPで訂正する措置を採ったが、この訂正の仕方に苦情申立人は納得していない。
放送人権委員会では、双方に対し、さらに話し合いを続けるよう要請することにした。

斡旋解決事案の報告

事務局から、10月初旬に苦情があった「盲導犬の世話を巡り、名誉を傷つけられた」という沖縄県のペット美容室経営者(男性)からの苦情について、事務局が誠意を持って話し合いを要請したところ、再度、双方による話し合いが行われ、解決したものと認められると報告した。
放送人権委員会ではこれを了承し、今年度初の斡旋解決事案とした。

「総務省の行政指導に関する三委員長声明」について

委員長から、「9月21日に『三委員長・理事長 会談』を開き、放送人権委員会の委員会決定が引用された総務省の行政指導に関して”BPO三委員長声明”の形で意思表示を行うことを決めた。放送人権委員会各委員の意見は、その場で詳しく紹介した。それらの意見をベースに声明原案を作成している」と、その後の経緯を紹介。続いて事務局が、「この”三委員長声明”案を基に各委員会で再度議論し、その結果をまとめ、最終的に11月11日に『三委員長・理事長 会談』を開催して声明内容を確定し、公表する段取りになっている」と説明した。

委員長と各委員からは、「中身の大部分に放送人権委員会委員の意見が反映されている。あとは表現やワーディングの問題だけだ」などの意見が出され、結局、「特別なことがあれば後日、事務局宛にメモで提出いただくとして、原則的に三委員長・理事長の判断に一任する」ことで了承した。

人権に関する苦情対応状況(9月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・14件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・5件

放送人権委員会委員との意見交換会の開催について

懸案となっていた「在京局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を11月16日午後4時から、千代田放送会館7階会議室で開催することに決定。したがって、次回委員会は、この意見交換会に引き続いて、同日午後5時30分から開催することとし、閉会した。

以上

第92回 放送と人権等権利に関する委員会

第092回 – 2004年9月

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件について検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

警察官からストーカー行為を受けた愛知県の女性が、「警察に被害届を出した際、名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、意に反して顔出し放送(3月)され、権利侵害された」と訴えている事案。名古屋テレビは、「申立人の意思を確認した上で顔出し放送に踏み切った」と主張している。

委員会では、申立人からの「申立書」「反論書」や、それに対する当該局からの「答弁書」「再答弁書」などを踏まえて、実質的な審理に入った。また、本事案の基本的な論点となる「申立人から事前に取材要請があったかどうか」や「放送での顔出しの応諾に関する事実認識」の双方の主張について意見交換した。

検討の結果、委員会では、申立人・被申立人双方の主張に隔たりが大きいことから、10月の委員会で双方を個別に招いて事情聴取することが必要と判断し、ヒアリングを行うことを決めた。

「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件について検討

この案件は、6月に栃木県のセミナー運営団体から、「犯罪行為があったことを前提とするような断定的な報道をされ、人権や名誉を著しく傷つけられた」として苦情申立てがあったもの。

放送人権委員会では、7月の委員会で協議した結果、「申立書の記載内容に不明な点がある」として不受理と決定。その旨を7月末に申立人代理人に伝えるとともに、申立人の意向を確認していたところ、9月、一部手直しした申立書が新たに送られてきた。

これを受けて、委員会で取り扱いを検討した結果、当該申立内容について放送局と一度も話し合っていないことから、まずは申立人側に局側との話し合いを行うよう要請することにした。

放送人権委員会審理に関連する苦情について

  • 「文化財遺跡発掘関連報道」に関する苦情
    「文化財遺跡発掘についての取材を受けたが、答えた内容と放送が違っていた。放送では事実関係を捏造され事件屋扱いされた」との苦情が、大阪府の男性から8月、放送人権委員会に寄せられた。苦情申立人と当該局との間では、苦情申立て以前に文書でのやり取りが行われていたが、双方の主張は対立したままである。
    委員会としては再度、双方に話し合いを要請し、その結果によっては「申立書」の提出を求めることにした。
  • 「親に無断で施設児童取材」との苦情
    8月に放送された”被虐待児童が児童施設で養育されている様子を描いたドキュメンタリー”に対し、山形県在住の児童の母親が苦情を寄せた。「施設に預けている子どもが自分に無断で取材され放送された。放送前に番組を視聴させてもらったが、モザイクを掛けてあるとはいえ、明らかに自分の子どもとわかる。放送をやめるようディレクターに話したが、取り合ってくれない」と当該局に抗議。
    これに対し、当該局は「親権を代行している施設の長に許可を得ており問題はない。モザイクも掛けており、人権上の配慮もしてある」として、放送に踏み切った。
    放送後、放送人権委員会に対して電話で苦情の訴えがあったものの、母親から当該局に直接訴えがなされていないことなどから、放送人権委員会では、両者にさらなる話し合いを要請していた。
    9月に当該局の報道担当役員らが苦情申立人宅を訪れ、取材意図や配慮などを説明した。これに対し申立人は、「親の許可なしでの取材・放送は遺憾である」と主張したが、それ以上の要求はなく経過してきており、当該局側は、これで一応決着したものと判断している。

人権に関する苦情対応(8月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・2件

その他

「放送人権委員会委員と在京局の放送人権委員会担当者との意見交換会」を、早ければ11月の委員会当日に開催することにした。

また、「放送人権委員会委員と地方の放送事業者との意見交換会」は、年を越えた今年度内を目途に広島で実施することにした。

次回放送人権委員会を10月19日(火)午後3時30分から開くことを決め、閉会した。

以上

第91回 放送と人権等権利に関する委員会

第091回 – 2004年8月

審理要請案件

委員会決定を受けてのテレビ朝日の「改善報告」について…など

審理要請案件

1.「警察官ストーカー被害者報道」

愛知県の女性から6月に申立書が提出された案件で、内容は「3月6日に警察に被害届を出した際に名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、『放送では顔は出さないでほしい』と言ったにもかかわらず顔出しでニュースなどで放送され、権利侵害された」というもの。これに対し名古屋テレビは、「申立人から積極的な事前の接触があって取材したもので、取材過程で警察官の不当行為を決然と告発するという強い意志を感じ、本人の意思を確認した上で顔出し放送に踏み切った」と主張している。
放送人権委員会は7月の委員会で、当該局に話し合い継続の意向がなお残されていたことから、双方にさらなる話し合いを斡旋していたが、その後のやり取りでも”顔出し放送”応諾の事実認識に関する双方の主張に大きな隔たりがあることなどから、委員会では話し合いがつかない状況にあると判断し、審理に入ることを決めた。

2.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」

この案件は、6月に栃木県のセミナー運営団体から、「4月に放送された報道番組で、犯罪行為があったことを前提とするような断定的もしくは誘導的な報道をされたために、人権や名誉を著しく傷つけられた。当該局に報道の訂正と取消・謝罪を求めたが、当該局からは『十分な取材に基づくもので、問題はない』と回答された」というもの。
7月の委員会で、「申立人と放送内容の具体的な関係がはっきりせず、また人権や名誉を傷つけられた具体的な記載がなく、申立内容が不明」として、本案件を不受理と決定し、その旨を委員長名の文面(7月27日付)で申立人代理人に送付していた。
委員会で今後の取り扱いについて協議した結果、申立書不受理の通知後も申立人からなんら意思表示もないことから、次回委員会までに、新たな申立てを行う意向があるかどうか申立人に確認することにした。

3.「政治的公平を求める民主党の申立て」

7月に民主党から、山形テレビが3月に放送した自民党山形県連制作の持ち込み番組『どうなる山形!~地方の時代の危機~』に対して「”政治的公平”を定めた放送法に反し、民主党の権利を侵害したものだ」とする申立てがあり、7月の委員会で検討した結果、「委員会の苦情取扱基準(申立人資格の適格性および苦情取扱対象)に照らし、本案件を審理対象外とする」ことを決定し、その旨を委員長名の文面(7月26日付)で申立人側に送付している。
委員会では、事務局から「その後申立人代理人に問い合わせたが、特に反応がなかった」との報告を受けて協議し、当該案件はこれで一件落着と判断して検討を終えることにした。

委員会決定を受けてのテレビ朝日の「改善報告」について

6月4日に委員会決定を通知・公表した「国会・不規則発言編集問題」(放送人権委員会決定 第23号)に対して、テレビ朝日から飽戸弘委員長宛に8月11日付文書で、改善策と具体的な取り組みに関する報告があった。

放送人権委員会は報告内容を検討した結果、委員会が指摘した”視聴者への説明対応”に加え、7項目にわたる”改善策”を講じたことを評価し、了承した。

なお、委員会では、この当該局の改善報告とそれに対する委員会の評価、了承についてBPO報告に掲載することにした。

「政治的公平を求める民主党の申立て」

総務省は情報通信政策局長名で6月22日、テレビ朝日と山形テレビに行政指導、民放連に協力要請をし、この中で、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』(2003年9月15日放送分)に関して、総務省が、同社からの報告とともに、当該番組に対する放送人権委員会「委員会決定」(6月4日に通知・公表)の主要部分を引用し、それを根拠に厳重注意と再発防止措置を要請したことについて、放送人権委員会として重大な問題との認識の基に、委員間で意見交換をした。

最後に、飽戸委員長が、「これは放送人権委員会、BPOの活動にとって重要な問題であるので、各委員の意見を事務局で整理・集約し、清水委員長に報告、今後『三委員長・理事長会談』などしかるべき場で検討をお願いすることにしたい」と発言、これを了承した。

人権に関する苦情対応(7月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・2件

その他

「次回放送人権委員会を9月21日午後4時から開くことを決め閉会した。

以上

第90回 放送と人権等権利に関する委員会

第090回 – 2004年7月

審理要請案件

委員会決定についての北海道文化放送の「改善報告」…など

審理要請案件

1.「警察官ストーカー被害者報道」

この案件の申立人は愛知県の女性で、内容は「警察官からストーカー行為を受け3月6日被害届を出したところ、当該局からインタビューを受けた。『放送では顔は出さないで欲しい』と依頼したにもかかわらず、ニュース番組で放送された。抗議したところ、『顔出しの了解は得ていたはず』と言われ、謝罪を求めたが断られた」というもの。
審理入りするかどうかについて意見が交換されたが、当該局になお話し合いの意図があることを考慮し当面話し合いを継続するよう要請することになった。

2.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」

この案件の申立人は、栃木県のセミナー運営団体と個人2人で、内容は「犯罪的行為があったことを前提とするような断定的な報道をされたために、人権や名誉を著しく傷つけられた。当該局に報道の訂正及び取消・謝罪を求めたが、当該局からは『十分な取材に基づくもので、問題はない』と回答された」というもの。
各委員から、「申立書の内容では、組織の名誉を侵害されたのか個人の名誉を侵害されたのか定かでない」「申立人2人についても直接放送では取上げられていない」「権利侵害の具体的内容がはっきりしない」などの意見が出された。
上記の意見を踏まえ、本件は受理されるまでには至らず、その旨を申立人側に伝えることにした。

3.「政治的公平を求める民主党の申立て」

7月6日付けで民主党代表の岡田克也氏を申立人とする申立書が提出されたのをうけて協議した。
申立書の内容は「山形テレビが3月20日に放送した『どうなる山形!~地方の時代の危機~』は、自民党山形県連制作の持ち込み番組で、”政治的公平”を定めた放送法の規定に反するものだ。本件番組は、自民党との関係で政治的に公平な取り扱いを求めることが出来る民主党の権利を侵害したものだ」というもの。
委員会で取り扱いを協議した結果、1.苦情の取り扱い基準を定めた放送人権委員会運営規則第5条第1項の(5)において、「苦情を申し立てることが出来る者は、当分の間、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする」と定めていて、政党等団体は申立人資格の適格性を欠くこと、2.本件申立ては本質的に見て、人権侵害というよりむしろ政治的公平性に関する問題を対象にしていると考えられるが、同運営規則同条同項の(1)において、苦情の取り扱い対象は、「名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関するものを原則とする」と定めていて、直ちに政治的公平に関する問題を審理することは困難であること、との見解で一致し、本件申立ては受理されないことになった。
以上の見解は、2003年12月に自由民主党の幹事長安倍晋三氏から「テレビ朝日が『ニュースステーション』で放送した『”菅政権”閣僚名簿発表』コーナーは不公平・不均衡」とする申立てが、BPO=放送倫理・番組向上機構宛にあった際、審理対象外として処理した事由と同内容である。

委員会決定についての北海道文化放送の「改善報告」

北海道文化放送(UHB)から委員長宛に6月21日付で、先の当該局に対する委員会決定(勧告)に関する「改善報告」があった。

委員会では、この報告内容を検討した結果、UHBが委員会決定を真摯に受け止め、誠意ある対応をしていることを高く評価した。

民放連加盟各局は、BPOの発足にあたり、「各委員会から放送倫理上の問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取り組み状況を3か月以内に委員会に報告し、委員会はその報告に対して意見を述べ、BPOが報告と意見を公表することを了承する」と申し合わせていることから、この申し合わせに基づき、北海道文化放送の改善報告ならびに委員会の意見をホームページならびに「BPO報告」で公表することを確認した。

放送人権委員会への苦情(6月)

6月に寄せられた放送人権委員会関連の苦情について、下記の報告が事務局よりあった。

◆人権関連の苦情〔21件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先番組名などが明らかなもの)・・・5件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・16件
    その他、放送人権委員会についての問い合わせ等・・・1件

その他

次回放送人権委員会を8月17日午後2時から開くことを決め閉会した。

以上

第89回 放送と人権等権利に関する委員会

第089回 – 2004年6月

「国会・不規則発言編集問題」の総括

苦情対応について…など

「国会・不規則発言編集問題」の総括

6月4日に行われた申立人・被申立人双方に対する委員会決定の通知と記者会見の模様を事務局が説明した。説明内容は以下の通り。申立人藤井孝男議員は国会の都合で出席できなかったが、代わりに代理人弁護士が出席し通知を受け取った。被申立人側はテレビ朝日編成制作局専任局次長らが通知を受けた。この後、決定についての記者発表が行われた。通知後申立人・被申立人双方からコメントが出された。

次に、テレビ朝日から提供された「委員会決定」の主旨を伝える同局のニュース並びに当該番組「たけしのTVタックル」等のVTRを視聴した。(当日の夕方のニュース「ニュースステーション」をはじめ、あわせて4日間6回の放送)

委員からは、「既にお詫び放送により名誉が回復されているからそれでいいということにはならない。視聴者に対する説明責任が大切だ」「公人であっても人格権の侵害があれば取上げるべし。公人だから手厚くしているとの印象をもたれるのは心外」「視聴者に対する説明責任を命じたのは今回が初めて。テレビ朝日の今後の対応を注目したい」などの意見があった。

委員会は、3か月以内にテレビ朝日から出されることになっている社内体制の整備など放送倫理に対する今後の取り組み方についての報告を見守ることにした。

苦情対応について

「放送人権委員会が出来てから7年余りの間に、14の決定が出たが、うち3件がBPO発足以降のこの1年間に出たということなる。また、これまで勧告は4件。それがこのわずか2か月間に2件の勧告が出たことになる」と事務局より報告。

5月の苦情対応概要

BPOに寄せられた5月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔20件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・11件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・9件

次の斡旋中事案について現状が報告された。

「ストーカー被害者として顔出しで放送された」との苦情

6月8日苦情申立人の愛知の女性から「ストーカーの被害者として報道された際顔出しでニュースなどで放送された(3月)。訴訟をするつもりだったが、放送人権委員会に申し立てることにした。」との電話があった。委員会では次回までに当該テレビ局に当該番組の同録テープ並びに対応経緯等を送ってもらい委員会で審理対象にするかどうかを決めることになった。

その他

民放連の「視聴率等のあり方に関する調査委員会」(座長清水BPO理事長、有識者委員として飽戸放送人権委員会委員長が参加)の報告書について三好事務局長より報告。

飽戸委員長より「視聴率だけでなく視聴質というようなものをきちんとみんなで研究して、それによっていい番組を作る努力するということは提言の最初の柱に入っていたが、放送局側がすぐにやることは難しいということで最後は取り下げた。替わりにいい番組を表彰する新しい賞揚システムを考えようということになった。実現可能性の非常に高い現実的な提言となったと思う」との説明があった。

次回の定例委員会を7月20日(火)に行うこときめ、議事を終了した。

以上

第88回 放送と人権等権利に関する委員会

第088回 – 2004年5月

「国会・不規則発言編集問題」ヒアリング

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」委員会決定の総括…など

「国会・不規則発言編集問題」ヒアリング

◆ 申立人側ヒアリング

(出席者)申立人 自民党衆議院議員 藤井 孝男 氏
外2名

冒頭、申立人が持参した「意見要旨」に基づいて申立人が下記のような心情を陳述した。

「自分は、従前より北朝鮮問題について消極的な姿勢を示したことはなく、特に拉致被害者の救済に関する問題について妨害をするような態度をとったことはない。しかるに『ビートたけしのTVタックル』(03年9月15日放送)においては、横田めぐみさんの実名を公表した野党議員に対し、あたかも自分がその発言を妨害するために不規則発言を繰り返したかのような印象を与える編集映像が流された。

これによって自分の名誉が毀損されたことは明らかであり、政治的信条・政策に関わる本件のような虚偽の報道をされることは、まさに政治的生命を絶たれかねないほどの衝撃がある。

テレビ朝日は、ダイジェスト保存版テープから編集したことによる、全くの思い違いから犯した『誤った編集』であったと弁解しているが、「確定的な意図」に基づいた捏造編集であるとの疑いは未だ払拭できない」

この本人陳述に続いて質疑が行われた。委員からの主な質問は以下のとおり。

  • テレビ朝日は、申立人に発言の機会を番組で与えたり、謝罪番組を2回放送したり、さらには社長が系列社長会で謝罪したりと、局側としてはおそらく最大限の対応をしていると思うが、この点はどうか。
  • 具体的に編集のどういう経緯を明らかにされればよいと考えるか。
  • 今、テレビ朝日に一番求めることはなにか。
  • 申立人のいう「確定的な意図」とは何か。

(申立人側ヒアリング約50分間)

◆被申立人側ヒアリング

(出席者)被申立人 テレビ朝日 編成制作局編成専任局次長
外2名

冒頭、テレビ朝日側から「なぜ『誤った乱暴な編集』がおこなわれたか」について下記のような説明があった。  「『TVタックル』は制作会社との共同制作で、具体的な番組制作は制作会社で、内容チェック・放送責任はテレビ朝日が負っている。

昨年9月放送の当該番組は3部構成で、その第1部が『自民党総裁選の4候補と北朝鮮問題への取り組み視点について』をテーマとしていた。

この日ゲストの西村真悟委員が1997年(当時新進党)国会ではじめて横田めぐみさん拉致の問題を取り上げたが、当時内閣・国会がどういう空気でこれを捉えていたかということを認識してもらうために、そのときのビデオテープを使った。この時、番組で保存していたダイジェスト版テープから抜き出して、西村発言と(10分後の藤井議員の)不規則発言を直接つなぐという乱暴な編集をしてしまったのである。尺を短くするというディレクターの判断だったが、藤井議員はじめ視聴者にも誤解を与える表現をしたことは、本当に申し訳なく思っている。

藤井議員の指摘を受けて、調査結果等について話し合いをしようとしたが、藤井氏が『この問題は自民党の問題で、党に全て任せてある』という立場だったので、直接の話し合いの場は全くといっていいほど持てなかった。当時の幹事長・幹事長代理には謝罪放送の話はしたが、藤井氏とは意思の疎通が得られなかったことは非常に残念に思う」

この意見陳述に続いて質疑が行なわれた。委員からの主な質問は以下のとおり。

  • 「保存テープ」とか「ダイジェスト版」といった言葉が出てくるが、どういう意味か。
  • このダイジェスト版というのは、横田さん拉致問題、加藤幹事長北朝鮮へのコメ支援問題、不規則発言の3か所のダイジェスト保存版からの編集としているが。
  • それがどうしてあのような編集になったのか。
  • 一貫性があるとしたら、コメ支援を推進した加藤幹事長の問題についての部分を入れた上で不規則発言が入るならば言われた意味はわかるが、コメ支援問題が全部ドロップしてしまったのはなぜか。
  • これまでのお詫びや謝罪でテレビ朝日側の責任は果たせたと考えるか。

(被申立人側ヒアリング約70分)

(休憩後審理再開)

委員長からまず、「今日のヒアリングを通じて若干新しい情報として伝わったものはあった。全く新しい事実が出てきたというようなことではないが、ヒアリングを終えて改めて考えるべきことがあれば述べて欲しい」との要請があり、各委員が次のような意見を述べた。

「『誤って編集した』とするテレビ朝日の弁明は歯切れが悪いが、根拠はないとはいえないし、ましてや故意に『藤井議員が拉致の事実に消極的であるという印象を視聴者に与える』という意図の下に編集したとまでは認められないようだ」

「テレビ朝日側が(誤りを)明確に認めているのであれば、放送人権委員会で改めて認定する必要はなく、テレビ朝日がそれを認めているという事実だけを記述すればよいという意見を前回の委員会で申し上げたが、その点今日聞いた限りではどうもはっきりしない」

以上のような議論の後に、もう一度持ち回り委員会で最終的な詰めを行ったうえで「委員会決定」を完成させ、6月4日に通知・公表することを決めた。

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」委員会決定の総括

委員長が、「5月14日に(上記表題の)委員会決定を通知・公表した」と述べ、続いて事務局から次のように経過報告した。

「5月14日、委員長以下4人の委員が出席のもと、『委員会決定』を北海道文化放送(UHB)に通知、その後記者会見をして『委員会決定』の内容を公表した。北海道在住で、当日授業のため上京できなかった申立人には、放送人権委員会担当調査役が札幌に赴き、『委員会決定』を手渡し、委員会判断部分を朗読した。これに対し申立人は、『委員の先生方が自分の事案のために多くの時間を割いていただいたことに感謝する。自分自身もこの委員会決定をいろいろな意味で重く受け止めている』と話した。

また、UHBからは本日、『委員会決定』に対する『見解』と『委員会決定』の主旨を伝えるニュースのビデオテープが届いた。その見解は、『今回の決定を受けて、今後、取材・編集体制を強化するとともに、スタッフに対する人権教育をさらに徹底し、放送倫理と人権に一層配慮する』というものであった」 (委員会決定と当該放送局の「見解」を伝えるビデオテープを視聴の後、事務局から以下のとおり説明を補足)

「UHBの報道は、コンパクトではあるが、よく『委員会決定』の主旨を伝えているのではないか。今後、UHBは、民放連の申し合わせ通り、勧告に対する対応と改善策を3か月以内に放送人権委員会に報告することになるが、真摯に対応していただけるだろうと思う」

4月の苦情対応

◆人権関連の苦情〔12件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・6件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・6件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

◆事務局から検討事項の報告があり、検討した。

「すでに4月20日の委員会で『審理対象外』としたドキュメンタリー番組事案の申立人から、『お礼と要望及び質問について』とする文書が届いた(5月6日)。そこでは『真の開発者たちの誇りを傷つけた道義上の責任はもとより、違法行為とも思われるような他人や他社を登場させた放送局の行為は、人権救済を目的とした放送人権委員会の審理対象とはならないのか』といった質問への回答を求めている」と報告。これに対し、委員からは「(この事案は)取り上げることはしないということを、前回の委員会で了解を得て、すでに委員長名で『ご連絡』として申立人に送付しているが、さらに何か最終的な通告をすべきかどうか」「前回文書が委員会からの最終文書のはずであるから、その必要はないのではないか」などといった意見が出されたが、検討の結果、事務局名で前回委員会の結論である『審理対象外とすることに変更がない』旨の文書を送付することが了承された。

その他

事務局内の異動について紹介があり、当事者が挨拶。

続いて事務局から、BPOの存在と意義を広く知ってもらうために、放送人権委員会と青少年委員会のそれぞれが個別の告知スポットCFを現在製作中で、7月から全国の放送局で放送してもらうことになっていることなどについて報告した。

(閉会 19時10分)

以上

第87回 放送と人権等権利に関する委員会

第087回 – 2004年4月

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

「国会・不規則発言編集問題」審理…など

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

3月31日の起草委員会を受けてまとめられた委員会決定案について、起草委員から説明があった。また申立人の名誉が回復されているかどうかという視点で、改めて昨年12月17日に放送された続報ビデオテープを視聴した。それを受けて意見交換が行われ、委員会決定案の表現について数か所の修正を確認し、少数意見は後日提出してもらうことにして本件審理を終了した。

このあと、委員会決定の通知・公表について、5月14日(金)午後1時から申立人と被申立人双方に通知,2時から公表記者会見することを決めた。

以下、意見交換の主な内容。

  • 多岐にわたる申立ての論点を4つに大きく絞って判断することにした。
  • 当該放送局が軽率だった点、全体から受ける印象からも問題があること、また取材対象者との意思疎通が不十分であったために余分にトラブルを招いたこと、以上の点は全て賛成だが、権利侵害とまではいえないのではないか。放送倫理上は問題だが。
  • もう少し権利侵害だとはっきり表現したほうが委員会の判断としてわかりやすい。
  • 12月のビデオテープを見ても本人に対するお詫びになっていない。
  • 続報という形で本件番組に誤りがあったものを正しく知らせるというのも訂正の1つのあり方ではないか。
  • 人権侵害の部分については「訂正します」とは一言も言っていない。

「国会・不規則発言編集問題」審理

前回の審理以後、各委員が文書で提出した意見をもとに起草委員会が作成した第一次草案が提示され、起草委員から説明があった。またテレビ朝日がなぜ本件放送のような内容になったかを検証した番組のビデオテープを視聴した。それを受けて、特に謝罪についての双方の主張をどのように「委員会決定」に反映させるのか、処分の要求をどう判断するか、オリジナルテープの「ダイジェスト保存版」を基にした編集の問題点を具体的に取り上げるのかなどについて意見が交わされた。

また申立人からのテレビ朝日「再答弁書」閲覧要求について検討した。その結果「新しい重要な部分が記載されている場合は委員会で検討してケースバイケースで見せてもよい。ただし反論は1回限りに限定すべきで、今回はヒアリングの場で反論して欲しいとの条件を付けたい」との考えで一致した。

委員会は、起草委員会を連休明けに開くこと、次回委員会(5月18日)でヒアリング(事情聴取)を行うことと決めた。

以下、意見交換の主な内容。

  • テレビ局の対応には一般人に対するものと大きな差がある。
  • 処分要求について委員会が答える必要があるのか。
  • 人権救済と放送のあり方という視点に絞った姿勢で臨むべきだ。

苦情対応(3月)

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・15件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・1件
事務局から個別苦情申立てについて報告され、対応について検討した。

  • ストーカー被害者として顔出しで放送されたとの苦情
    すでに苦情として前回の委員会で受理して斡旋に入っており、2度ほど話し合いが行われたが、申立人は裁判を考えているようなので、当分、推移を見守ることにした。
  • 幼稚園児へのインタビューが父親を傷つけたとの苦情
    事務局が苦情申立人の夫人と連絡を取り、申立人の要求である「放送による謝罪」は何を詫びるかということを具体的に触れなければならないので、本件の場合はかえってお子さんのためにならないのではないかと伝えたところ、やや怒りもおさまったようだとのこと。当該放送局はすでに「謝罪文」を申立人に手交しており、新たな動きがなければ一応解決したと判断したいとの事務局の報告があった。
  • 自動改札機誕生をめぐるドキュメンタリー番組で審理申立て
    04年4月5日付けで、審理の申立てがあった事案で、申立人の主張は、「他人や他社が開発者に成りすまして番組に登場し、真の開発者達の誇りを傷つけた」というもの。
    上記事案について当委員会は、放送人権委員会の審理事案とするか否かについて審議した。以下、意見交換の主な内容。
  • 申立人の主張は、放送による人権侵害とは別の次元のものだ。
  • 人権侵害には当たらないのではないか。放送人権委員会では事実認定ができない。
  • 番組では、申立人が出演しているわけではなく言及もされていない。人権侵害と認定するのは困難だ。
  • 審理対象外とすることに異存はない。放送人権委員会運営規則第5条(5)に定める「放送による権利侵害」に当たらないということでいいのではないか。
  • 放送人権委員会の審理事案と性格をことにすると同時に、当委員会の限界をはるかに越えているので正しい判断ができない。

以上に基づき、当委員会は、委員全員(8名)の一致で、本事案を「審理対象外」とすることを決定、上記意見を集約して文書化し、委員長名で申立人に「連絡」することとした。

業務報告会の報告・その他

事務局から、3月23日に行われた業務報告会についての説明と、放送人権委員会運営規則の中で「議決の方法」について改訂が行われ4月から実施されたことの報告があった。

以上