2019年度 第71号

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」に関する
委員会決定

2020年2月14日 放送局:テレビ東京

見解:要望あり
テレビ東京は、2018年5月16日、『ゆうがたサテライト』内で、オウム真理教の後継団体であるアレフの動向に関するニュースを放送した。その中に、アレフの信者である申立人が登場する部分があったが、申立人の顔にはボカシがかけられていたものの、音声の一部が加工されていなかった。
申立人は、再三撮影をしないよう訴えたにもかかわらず無断で全国放送され、肖像権とプライバシーが侵害された、さらに、取材や編集の方法において放送倫理上の問題もあるとして、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
委員会は、審理の結果、プライバシー、肖像権の侵害はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。
ただし、委員会は、放送内容に高い公共性・公益性があるとしても、個人のプライバシー保護を徹底させることは、放送の目的と何ら矛盾することではなく、両立しうることであると考える。それは本件ニュースにもあてはまるとして、テレビ東京に対して、ボカシの濃さや音声加工についての技術的な処理の問題、事前のチェック体制など段取りの問題、プライバシー保護に対する関係者の意識の問題など、種々の観点から再発防止に向けた取り組みを強めることを要望した。

【決定の概要】

テレビ東京は、2018年5月16日(水)のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、午後4時59分から午後5時6分頃までの間、オウム真理教の後継団体であるアレフの動向に関するニュースを放送し、その中にアレフの信者である申立人が登場する部分があった。
ニュースは、死刑判決が確定していたオウム真理教の元幹部7人が2018年3月半ばに各地に移送され、教祖・麻原彰晃らの死刑執行の準備が進んでいるとの見方があることを紹介したうえで、そのような状況下でのアレフの動向を報じたものである。
アレフが「集中セミナー」と呼ぶ信者を集めた行事を行うという情報に基づいて、テレビ東京の取材班が、道路を隔てた向かい側にある駐車場に停めたワゴン車の中から教団施設の方向を撮影しようとしていたところ、これを発見した申立人ともう1人の信者がテレビ東京の記者に声をかけた。ワゴン車から出てきたテレビ東京のカメラマンが、申立人が撮影されることを拒否しているにもかかわらず申立人を撮影し続け、申立人の側もビデオカメラを構えてテレビ東京の記者たちを撮影しているという状況が放送される。テレビ東京のカメラマンがカメラを回し続けたこともあり、申立人は徐々に強い口調になりながら撮影への抗議を続ける場面が1分間弱続いてその場面は終わる。
その場面では、申立人の顔の部分にボカシがかかっている。申立人の声は基本的に加工されているものの、途中の10秒余り、加工されないままの肉声が流れ、これに続いて申立人の音声が加工されたかたちで同じ場面が繰り返し放送される部分がある。これは、一連の画像から一部のみを切り取って声を加工したうえで、もとの部分に上書きする方法で編集するべきであったところ、誤って、声を加工していない映像の後ろに、声を加工した同じ場面を挿入してしまったために生じたミスであるとテレビ東京は説明している。
申立人は、このニュースについて、放送で登場する人物が申立人と特定できるために申立人がアレフの信者であることなどが明らかにされてプライバシーが侵害された、また、申立人が拒絶したにもかかわらず撮影を続けられて肖像権が侵害された、さらに、取材や編集の方法において放送倫理上の問題もあるとして委員会に申し立てた。
委員会は、審理のうえ、プライバシー、肖像権の侵害はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。しかし、後述のとおり再発防止策の強化を要望することとした。決定の概要は以下のとおりである。
申立人の顔にかけられたボカシは薄く、一部で申立人の肉声が流れたことから、申立人がこの施設にいることや申立人がアレフの信者であることを知る者などには、放送の対象が申立人であると特定が可能である。しかし、アレフの動向を報じる本件ニュースの放送内容には、全体としては高い公共性・公益性が認められ、放送の対象を申立人と特定しうる視聴者は、基本的には申立人がアレフの信者であることを知っている者に限られることなどから、プライバシーの侵害があったと断ずることはできないと判断した。
また、取材の目的にも公共性・公益性が認められ、申立人やアレフの側とのトラブルを回避する必要性もある中で撮影を続けたことに違法性はなく、肖像権の侵害にもあたらない。
編集上のミスによって申立人の肉声が流れたことなどによって一部の視聴者には放送の対象が申立人であると特定できることとなったことについては、一部で肉声が流れたことは故意によるものではなく、ボカシを入れるなどの編集は行われて申立人と特定できる者の範囲は限定されていたこと、放送後速やかに編集上のミスの再発防止のための取り組みを行っていることから、放送倫理上の問題があるとはいえず、取材方法等にも放送倫理上の問題はない。
ただし、本件ニュースに全体としては高い公共性・公益性があることは委員会も認めるものであるが、申立人は、出家信者であるとはいえ、教団で特段の役職を持っている者ではなく、放送の対象が申立人であることを特定することに特段の意味はない。いかに放送内容に高い公共性・公益性があるとしても、個人としてのプライバシーを守る必要のある場面で、プライバシー保護を徹底させることは、放送の目的と何ら矛盾することではなく、両立しうることであり、本件ニュースでもこのことはあてはまる。
委員会は、テレビ東京に対して、ボカシの濃さや音声加工についての技術的な処理の問題、放送時間直前になってようやく編集作業が終わり、全体としてのチェックができなかったという段取りの問題、プライバシー保護に対する関係者の意識の問題など、種々の観点から再発防止に向けた取り組みを強めることを要望する。

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2020年2月14日 第71号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第71号

申立人
宗教団体会員の男性
被申立人
株式会社 テレビ東京
苦情の対象となった番組
『ゆうがたサテライト』
放送日
2018年5月16日(水)
放送時間
午後4時54分~5時20分のうち4時59分~5時6分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.本件放送の内容
  • 3.論点

II.委員会の判断

  • 1.はじめに
  • 2.プライバシー侵害の有無について
    • (1) 放送の対象が申立人であることを特定できるか
    • (2) プライバシー侵害の有無
  • 3.撮影・放送による肖像権侵害の有無
    • (1) 肖像権侵害についての考え方
    • (2) 撮影時の肖像権侵害の有無
    • (3) 放送による肖像権侵害の有無
  • 4.放送倫理に関する検討
    • (1) 取材方法について
    • (2) 編集方法について
    • (3) 申立人が特定されるおそれのある放送について
    • (4) 放送後の対応・申立人への配慮について

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯と審理経過

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2020年2月14日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2020年2月14日午後1時からBPO第1会議室で行われ、午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
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第33号

TBSテレビ 『消えた天才』映像早回しに関する意見

2020年2月13日 放送局:TBSテレビ

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、2019年8月11日の放送で、野球のリトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回(2018年1月3日および11月4日)でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたと報告があった。2019年9月の委員会で、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りし、議論を重ねてきた。
委員会は、「実際の映像」と言いながら、またはそう受け取れる状況で、映像の加工が繰り返された本件放送について、1993年に「NHK・民放 番組倫理委員会」が出した提言「放送番組の倫理の向上について」の「1 放送人としての心構え (2)事実に基づいた取材・制作を行う」や、日本民間放送連盟の放送基準「(32)ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない」に抵触するため放送倫理違反があったと判断した。

2020年2月13日 第33号委員会決定

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目 次

  • I はじめにpdf

  • II 審議の対象とした番組pdf

    • 1 卓球コーナー
    • 2 フィギュアスケート・コーナー
    • 3 サッカー・コーナー
    • 4 リトルリーグ・コーナー
  • III 委員会の調査pdf

    • 1 異例の“昇格”をした番組
    • 2 一連の早回し加工
      • (1) 卓球のラリー
      • (2) フィギュアスケートのスピン
      • (3) サッカーのドリブル
    • 3 新しい体制へ移行
    • 4 新体制下でも行われた早回し
    • 5 発覚の経緯と公表
  • IV 本件放送の背景と問題点pdf

    • 1 整っていなかった制作体制
    • 2 スピードを変える加工
    • 3 技術革新と心理的ハードルの低下
    • 4 チェックの仕組みの限界
  • V 委員会の判断pdf

  • VI おわりにpdf

2020年2月13日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2020年2月13日午後1時30分からBPO第1会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。記者会見には、25社39人が出席した。
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2020年7月10日【委員会決定に対するTBSテレビの対応と取り組み】

委員会決定 第33号に対して、TBSテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2020年7月2日付で提出され、委員会はこれを了承した。

TBSテレビの対応

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目 次

  • 1.委員会決定についての報道
  • 2.委員会決定の社内周知
  • 3.BPO委員を招いて研修会を実施
  • 4.番組審議会への報告
  • 5.「放送と人権」特別委員会での議論
  • 6.再発防止への取り組み
  • 7.総括

第221回 放送と青少年に関する委員会

第221回-2020年1月

視聴者からの意見について…など

2020年1月28日、第221回青少年委員会をBPO第1会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
委員会では、12月1日から1月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
前回委員会からの継続「討論」案件として、バラエティー番組で、お笑い芸人が女性アイドルグループをプロデュースする企画について、「未成年の女性を食い物にしたような内容で非常に不快になった」「芸人がセクハラやパワハラを行い、それをエンターテインメントとして放送していることに嫌悪感を覚えた」などの意見が寄せられた件について全委員が、連続企画の全部の回を視聴したうえで議論しました。その結果、青少年委員会として、青少年に対する影響という観点から、この放送が問題があるのかどうか、さらに検討する必要があるとして、次回委員会で再度「討論」を継続することになりました。
1月の中高生モニターのリポートのテーマは「年末年始に見た番組について」でした。25人から報告がありました。
モニターからは、大みそかの恒例の音楽番組ついて、「私はビートたけしさんの"浅草キッド"を聞いて驚きました。力強い声がホールに響きわたり、何かを考えながら懸命に歌っている姿はどの歌手の方にも負けないくらい輝いていました。…この番組を見て、今まで好きだった歌はより好きになったし、今まで興味を持っていなかったものも『いいな』と思えるようになりました。それぞれの歌手の方が一生懸命に歌っている様子は見ていてたくさんの人が新しい年も頑張ろうと思うと感じました」、同じ番組について、「初の試みとしてAIで復活したAI美空ひばりさんが登場していましたが、人間味があまりなく、怖かったです。美空ひばりさん自身が歌っている様子ならまだしも、AIで復活したものの需要が果たしてそんなにあるのか、それをあの番組で流すほどなのか疑問に思いました」、大みそかのバラエティー番組について、「"新しい地図"の人たちを出してくれてうれしかった。普通は出演者の予告は一切されない番組なのに、今回に限り知らされた理由が気になった。しかし、ずっと応援してきたファンにとっては一足早くお年玉をもらったような気分だったと思う。これからも地上波にたくさん出てほしい。今年はマンネリがなくなって新鮮なネタが多く、楽しく見られた」、同じ番組について、「最近は笑いのネタとしては過激過ぎる、とか危険だという理由で多くのバラエティー番組が面白くなくなってきている気がしますが、この番組は毎年本当に面白いと思います。しかし、家族と見るには気まずいようなネタが割と早い時間に放送され少し複雑な気持ちになりました」、また、自由記述として、元日の、テレビについて放送局の壁を越えてトークを繰り広げる番組について、「今年から(テレビ番組ばかりではなく)ネットを含めた動画コンテンツでのランキングになりました。この番組を見てテレビ関係者もネット動画コンテンツを意識していると初めて知りました。テレビ局の中でもテレビの未来を考えていることがうれしかったです。やはり、プロのテレビとネットの共生についての議論はすごかったです。…テレビに希望を感じることができたので制作者の気持ちをもっと伝える場があってもいいのではないかと思いました」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は、2月25日に定例の委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2020年1月28日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

人間・悪魔・天使などが同居する架空の世界の風俗店を男性主人公が渡り歩く深夜のアニメに対して、「性的な内容となっていて、このようなアニメが年齢制限もなく青少年が見られる現状に憤りを感じる」「深夜アニメではあるが、ファンタジーとはいえ風俗店を男性が評価しており、女性キャラクターを蔑視している」「アニメなのに風俗と下ネタばかりで子どもに悪影響がある」などとの意見が寄せられました。
これに対して委員からは、「気持ち悪いから、下品だからという視点での評価については、言論・表現の自由との関連で非常に慎重にしなくてはいけないと思う」「遅い時間帯の子どもの視聴については、保護者にも配慮してもらうという民放連の規定も踏まえて検討する必要がある」「昔はテレビの深夜時間帯は大人のものという切り分けができたが、今はネットで24時間いつでも見られるため、社会的な時間の分け方の状況が変わってきている。そういう変化をどう捉えたらいいのか考えさせられる」「テレビは子どもだけを視聴者として対象にしているものではないので、深夜帯に大人向けのアニメを、表現の自由の範囲内で放送することはできるというスタンスでテレビ局は制作しているのだと思う」「制作する人や原作者の過激化というのが、アニメには限らないので、これがじわじわと深夜から普通の時間内に入ってくることには気をつけておくべきだ」といった意見が出されました。この件に関しては、これ以上話し合う必要ないとなりました。

<継続「討論」番組について>
一人の男性お笑い芸人が女性アイドルグループのプロデュースをするというバラエティー番組の企画において、お笑い芸人が選ぶ側の立場を利用して、選ばれる側の若い女性に好き放題振る舞うような演出に対して、「世の中を知らない若い女の子が見れば、権力がある人には媚を売らないといけないと思うだろう」「未成年の女性を食い物にしたような内容で不快になった」「女性がバカにされているよう。子どもたちや若者の本当に頑張りたい子が見ていてつらいのではないか」などとの意見が寄せられた件について、連続企画のすべての回を委員が視聴してうえで、「討論」が継続して行われました。
委員からは、「視聴した子どもたちは、自分が選抜される立場になったときに、決定権を持ったものによるセクハラとかパワハラをうまくすり抜けたり、我慢しなくてはいけないというメッセージを与えているのではないか」「リアリティーショーっぽく見せて、その中にパワハラ・セクハラを入れていく。それを見ている子ども、特に女の子から見たらこういうのが世界のあり方なのかと思ったりすることにつながらないか」などの意見の一方、「すべてが作られたものだというふうに思っているので、どこが問題かというのは非常に難しいと思う」「すべての回を視聴すると、最初の過激性はなくなっており、普通のバラエティー番組の範囲かなという印象がある」「1回目だけを見たときと、全部の回を見るのでは位相が変わってきている。最後の回まで見ると、懲罰的なものも含めてメッセージになりえる。1回ごとで評価するのか、全体を見てするのかによって異なる」といった意見も出ました。
この番組に関しては、青少年委員会として、青少年に対する影響という視点から、問題があったのかどうか、さらに議論をする必要があるとして今回結論を出さず、次回委員会で討論を継続することになりました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした1月のテーマは、「年末年始に見た番組について」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で25人から報告がありました。
「年末年始に見た番組について」では、全部で12番組について報告がありました。複数のモニターが取り上げたのは2番組で、『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)に11人が、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!』(日本テレビ)に4人が感想を寄せています。
「自由記述」では、番組や制作者への思い、最近のニュースへの関心を記述するモニターが多数いました。
「青少年へのおすすめ番組」では『はじめてのおつかい 爆笑!30年記念スペシャル』(日本テレビ)を5人が、『世界は教科書でできている』(NHK 総合)を3人が、『スーパープレミアム 涙のおもてなしスペシャル』(NHK BSプレミアム)を2人が取り上げています。ひとりで2つの番組を報告したモニターもいました。

◆委員の感想◆

【年末年始に見た番組について】

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)「AIの美空ひばりさんが怖かった」というモニターがいた。これは、近年AIというのが話題になっていて、そのことについて家庭で話してもらいたいという制作側の意図もあったのではないか。『紅白歌合戦』は、その年のことを振り返り、家族でいろいろ話す機会を提供しているという部分があると思う。

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)歌合戦の意味合いが薄れているように感じるという意見があったが、私もそう感じている。勝敗が最後の数分で決まるために曖昧になっている。このモニターはどうしたらいいか考え、「投票のタイミングを増やしたり、ルールを変えたり、技術をフル活用して新しい時代に合わせて進化していってほしい」と期待を寄せている。このような意見をぜひ制作者に届けたい。

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!』(日本テレビ)「いい出来事も悪い出来事も面白く変えるのがこの番組のいいところ」という意見があった。ある種の浄化作用のようなものを子どもも感じていると知った。

  • 『マツコ"毒舌"観察!!50日間で女性の顔は変わるのか!?』(日本テレビ)で、自信や環境で人は良い方向に変われるというメッセージが伝わり面白かったと評価したモニターがいたが、その一方で同じモニターが、およそ2時間のこの番組の後半部分に、前半で見たのと同じような映像が何回も流れていたのでもう少しテンポアップしたほうがいいのではないかという指摘をしている。モニターが感じた良い点も改善したほうがいいと思う点も、制作者に伝えたいと思った。

【自由記述について】

  • 現代社会の授業で、ニュースでいろいろなもののイメージが操られていると聞いたということで「ある政党の議員が良くないことをしたというニュースばかりを今まで見てきたから、その政党は悪いと思っていたけれども、そういえばその政党の良いニュースは見たことがない」ということを書いてきたモニターがいた。視聴者はニュースをどう受けとめ、どう把握するかに注意を払う必要があるというメディアリテラシーの内容で非常に興味深かった。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『はじめてのおつかい 爆笑!30年記念スペシャル』(日本テレビ)どこかの年齢までは自分が子どもになった気分で見ていて、ある年齢からは逆に自分が親になったような気分でこの番組を見るという。見守られる側から見守る側へいつの間にか成長していることに気づいたという感想になるほどと思った。

◆モニターからの報告◆

【年末年始に見た番組について】

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)2020年の東京オリンピックに向けて、歴代のオリンピック曲メドレーから始まりました。画面に映し出された映像もさまざまなスポーツ選手の真剣な表情や笑顔、涙。記憶に新しいものも多く、それぞれの曲とともに振り返ることができました。(東京・中学2年・女子)

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)全体を見るととても面白い番組だったのですが、白組の歌手の多くが同じ事務所に所属しているアーティストだったり、歌う曲が去年の曲ではなく昔の曲が多かったのが少し残念でした。『紅白歌合戦』が今年を振り返る番組ではなく視聴率をかせぐための番組に近くなっているなぁと感じました。(北海道・中学2年・女子)

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)はじめて紅白歌合戦を見ました。私はビートたけしさんの“浅草キッド”を聞いて驚きました。力強い声がホールに響きわたり、何かを考えながら懸命に歌っている姿はどの歌手の方にも負けないくらい輝いていました。この歌はコンビを組んでいたときの相棒を想って書いた歌と紹介されていました。それを知って何かを考えながらというのは相棒だった人のことを考えて歌っているのだろうと思いました。今まではゆっくりとした歌は好きではないなと思っていたけれどこの歌を聞いてそう思わなくなりました。『紅白歌合戦』を見て、今まで好きだった歌はより好きになったし今まで興味を持っていなかったものも「いいな」と思えるようになりました。それぞれの歌手の方が一生懸命に歌っている様子は見ていたたくさんの人が新しい年も頑張ろうと思えると感じました。(兵庫・中学3年・女子)

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)初の試みとしてAIで復活したAI美空ひばりさんが登場していましたが、人間味があまりなく怖かったです。美空ひばりさん自身が歌っている様子ならまだしも、AIで復元したものの需要が果たしてそんなにあるのか、それを大晦日の紅白で流すほどなのか疑問に思いました。(東京・高校1年・女子)

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)今年の紅白はラグビー色を押し出し過ぎたかなと思います。ラグビーは昨年とても盛り上がったし世間の関心も高いと思います。でも、前半からインタビューを積極的に行ったり、カメラで切り取られていたりしていて「え、またラグビー?」と思うときがありました。でも、ステージ上での「ビクトリーロード」は素晴らしかったです。あと、ここ最近NHKホールのステージ以外で歌を歌ったり、中継や録画が多いです。CGもあります。そこは問題ないのですが、それにより別のカメラの映像が映し出されたりするなどのミスが増えたように感じます。もし見たい歌手の場面でミスがあると悲しいので、生放送という場ですが減ってくれると嬉しいです。(鳥取・中学3年・女子)

  • 『第70回紅白歌合戦』(NHK 総合)2019年の集大成を飾るにふさわしい内容だった。毎年大晦日は、紅白歌合戦を家族全員で視聴することにしている。今までは家族全員で見ていても、必ず誰かは飽きてしまっていた。それに対し、今回は全員で見て楽しめる内容だったと思う。強いて挙げるならば現在の状態では「歌合戦」の意味合いが薄れているように感じる。紅組白組に分かれて歌を披露することは問題ないと思うが、歌合戦の勝敗が最後の数分で慌ただしく決まるため、やや曖昧である。投票のタイミングを増やしたり、ルールを変えたりするなどの変更をするべきだと思う。これから5Gを筆頭にインターネットの技術革新が進む。したがって、それらの技術をフルに活用して新しい時代に合わせて進化していってほしい。(東京・高校1年・男子)

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!』(日本テレビ)吉本興業が犯した不祥事を笑いに変えたのは賛否両論あるが自分は良かったと思った。“新しい地図”の人たちを出してくれて嬉しかった。ふつうは出演者の予告は一切されない番組なのに、今回に限り知らされた理由が気になった。しかし、ずっと応援してきたファンにとっては一足早くお年玉をもらったような気分だったと思う。これからも地上波にたくさん出てほしい。今年はマンネリがなくなって新鮮なネタが多く楽しく見ることができた。(愛知県・中学2年・女子)

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!』(日本テレビ)大晦日は毎年ガキの使いを見ています。僕的には今年のが一番面白かったです。良い出来事も悪い出来事も面白く変えるというのがこの番組のいいところだと感じました。(大分・高校2年・男子)

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!』(日本テレビ)毎年欠かさずに家族で見ている番組でとても楽しみにしていました。最近は笑いのネタとしては過激過ぎる、とか危険だという理由で多くのバラエティー番組が面白くなくなってきている気がしますが、毎年、この番組は本当に面白いと思います。しかし、家族と見るには気まずいようなネタが割と早い時間帯に放送され少し複雑な気持ちになりました。6時間という長い放送時間であっても退屈するような時間が一秒もないくらいずっと笑いっぱなしの年越しでした。今年話題になったラグビー日本代表の選手が出演されていたり、吉本興業のスキャンダルの自虐ネタも印象的でした。長く続いている面白い番組なのでこれからも毎年続いてほしいと思いました。(石川・高校2年・女子)

  • 『NHKスペシャル 死闘の果てに 日本vs.スコットランド』(NHK 総合)キーワードとなったのは”same page(同じ絵)”という言葉です。「この試合、このチーム、このメンバー、この相手ならどう動くべきか」という質問への答えが全員同じになり、同じ戦い方・過程をイメージすることが大切であり、決して体形が大きいわけではなく、むしろ劣る日本ならではと言える「イメトレ」のようなものなのだと思います。たった1枚の同じ絵を見るために何百日にも及ぶ合宿を行い、試合に全身全霊で臨むというのは本当に本当にラグビーが好きでないとできないことなのだと感じました。私は今まであまりラグビーに興味を持ってきませんでした。ルールがあまりよく分からなかったり痛そうだったりするからです。ですが、そんなことよりも本当にラグビーが大好きで、世界の壁に大きな穴をあけた日本代表選手の皆さんにとても興味がわいた番組でした。(福岡・中学2年・女子)

  • 『50日間で女性の顔は変わるのか』(日本テレビ)タイトルのそのままの実験のようなことって、やってみたくても絶対できないことだし、You tubeでもそういった検証をよく見ますが、ここまでの規模でやっているのはなかなかないから、これこそテレビがやるべきことかもしれない!と思いました。変わったものだけを紹介するのではなく、リアルな変化を放送しているのも好感が持てるなと思います!結果から、年齢や性別にかかわらず、自信や周りの環境などで人は変わることができるんだなとあらためて認識することができました。ただ、番組の構成は特番で時間が長いこともあり、視聴者は最後のほうは疲れてくるのに、後半にかけてVTRが長くなっているのがちょっと気になりました。CMにいくときにこれからやるVTRをちょっと流したりすると、4回くらい同じ映像を見ることになってしまうのでもう飽きてしまうなと思います。もう少しパンパン進んでいってもいいなと思いました。(神奈川・高校1年・女子)

  • 『クイズ!ドレミファドン!2020新春SP』(フジテレビ)1月より始まるドラマの出演者の方々が本気でクイズに答えている様が面白かったです。特に今回はドラマの主題歌のイントロクイズもあり、出演者の方々自らが出演したドラマの主題歌は答えようと必死になっている姿や答えられなかった人をいじるやり取りなどが面白かったです。ただ、途中のサビトロクイズ(サビを聞いて曲名を答える)のコーナーで出てきた曲がその後のイントロクイズのコーナーでもう一度出てくるということがあったのですが、やはり同じ曲を2度出すというのは良くないのではないかと思います。私自身は少しガッカリしました。(愛媛・高校2年・女子)

  • 『第53回新春!爆笑ヒットパレード2020』(フジテレビ)たくさんのお笑い芸人さんが出演していて見る側も飽きることなく元日から楽しく過ごすことができました。ですが、毎年、ネタとネタの間に挟んでいる企画の内容に疑問を持っています。元日からヒヤヒヤするような中継をしなくてもよいと感じました。(神奈川・高校1年・女子)

  • 『第61回輝く!日本レコード大賞』(TBSテレビ)年の締めくくりにふさわしい大盛り上がりのイベントだったと思います。しかし、良い面だけではありませんでした。ネットでは賛否両論の声が見られました。たしかにレコード大賞の審査基準は曖昧と言わざるを得ない節があります。よって提案といたしましては、テレビリモコンのデータ放送を通じて視聴者の投票を反映できるようにすると視聴者自身に主体性が生まれると思います。(石川・高校2年・男子)

  • 『チャンネルはそのまま!』(テレビ朝日)たまたまテレビをつけたら始まったのがこの番組。母が北海道出身だったのでなんとなく興味が湧いて見はじめたが、最終的に全話見終えるほど久しぶりの面白いテレビドラマだったと思う。テレビ制作の裏側をコミカルに描いているところが好きだ。テレビ離れが進む中で、ツイッターのトレンド1位にもなっていたし、テレビにあまり関心のない層にも幅広く受けたのかなと思った。続編もぜひ作って欲しいなと思う。(東京・高校3年・女子)

  • 『ぐるナイ!おもしろ荘』(日本テレビ)毎年この番組に注目している。その理由としては、今年ヒットしそうな芸人さんの情報を早くに得られるし、何より本当に面白いからだ。新人さんをはじめまだ世の中に知れ渡っていないにもかかわらず、キレのある個性的なネタはお笑い好きの私にとってはたまらない。(佐賀・高校3年・女子)

【自由記述】

  • 最近のドラマは、『3年A組』が放送されてから、社会に問題を問いかけるようなミステリー?サスペンス?的なものが増えていると思います。ドラマは面白いのですが、ずっと同じようなジャンルのドラマばかりだと飽きてしまうような気がします。(東京・中学1年・女子)

  • ゴーン氏が逃亡した件についてよくテレビで取り上げられているのを見ます。こうした大きな出来事は、さまざまなテレビ局の番組でいくつもの情報や異なる意見を知れるので良いな、と思いました。(兵庫・中学1年・女子)

  • 現代社会の授業でニュースでいろいろなもののイメージを操られているという話を聞いた。たしかに私は、特定の政党の議員が良くないことをしたなどマイナスのことばかりをニュースで見ていたから、その政党のどこが良いのだろうと思っていたが、思い返してみれば、その政党の良いニュースを見たことがない。ひょっとしたら私の知らないところで良いことをしていたのかもしれないと思った。だから、多くの人の目につくニュースで偏った情報が流されていることは良くないと思うし、ニュースで見たからといってすぐに信用するのも良くないと思った。(群馬・高校1年・女子)

  • なかなかテレビを見る時間がない中で少しだけ見たニュースがあります。それは大学入試制度についてです。国語の記述の採点にはやはり人間なので公平にはなかなかいかないものだと思います。いくら採点者を訓練するとはいえ、その採点で今後の人生が大きく左右されると考えると、僕もあまり導入を肯定できません。未来を担う若者の学力をはかるための制度だとは思いますが、文科省も受験者の立場に立ってもう少し考えてほしいです。(埼玉・高校1年・男子)

  • 歌番組で曲をテレビ用に編集していることを疑問に思う。もちろん番組中ですべての曲をフルで放送することは無理だと思う。そのための最低限の編集はやむを得ないと考える。しかし、一部の曲はあまりにも短く編集され過ぎていて、その曲の良さが薄れているときがある。このような状況は、改善されるべきであると思う。(東京・高校1年・男子)

  • テレビ番組のインターネット同時配信が始まろうとしているようですが、個人的にはこれは良いことだと思います。というのは、インターネットで同時配信すれば今までは地方局の番組を見られなかった人でも見ることができ、面白いと思ってくれるかもしれません。地方局の活性化につながり、ひいては日本社会全体の活性化にもつながる良いことだと思います。(愛媛・高校2年・女子)

  • 『新春TV放談2020』(NHK 総合)を見ました。テレビについて局の壁を越えトークが繰り広げられます。毎年、テレビ番組のジャンルごとのランキングをもとに話し合われますが、今年からネットも含めた動画コンテンツでのランキングになりました。この番組を見てテレビ関係者もネット動画コンテンツを意識していると初めて知りました。テレビ局の中でもテレビの今後について考えられているのだなと知りました。私はテレビ局の人がテレビの未来を考えていることがうれしかったです。やはりプロのテレビとネットとの共生についての議論はすごかったです。現場で動いている人はやっぱり違うなと思いました。この番組で考えを知れて、テレビに希望を感じることができたので制作者の気持ちをもっと伝える場があってもいいのではないかと思いました。(鳥取・中学3年・女子)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『はじめてのおつかい 爆笑!30年記念スペシャル』(日本テレビ)私はまだ中3ですが、泣きながら見ています。おつかいに行く子どもたちの行動の一つひとつが私を泣かせます。正義感を持っておつかいを成し遂げようとする子ども。わが子を心配そうに遠くから見守る親。親が自分の子どもが「ただいま」と帰ってきたときに心の底から子どもを褒めている姿を見ると、親は子を本当に愛しているのだなと感じます。将来、もし自分に子どもができたら一体どんな気持ちになるのか。『はじめてのおつかい』みたいになるのだろうか。まだ子どもの私には想像できません。(鳥取・中学3年・女子)

  • 『はじめてのおつかい 爆笑!30年記念スペシャル』(日本テレビ)この番組は自分が親になったような気分させてくれます。そして自分にもこんなころがあったのかなぁ~と思い出させてくれます。個人的に好きなのは「あれから?年後」とビフォーアフターを見せてくれるコーナーです。(広島・高校2年・男子)

  • 『はじめてのおつかい 爆笑!30年記念スペシャル』(日本テレビ)以前までの放送はどちらかというと自分は「子どもサイド」で見ていたが、いつの間には「子どもを見守るサイド」で見ていた。出演者たちが涙する理由が少しだけ分かった気がした。(佐賀・高校3年・女子)

  • 『世界は教科書でできている』(NHK 総合)私も教科書は役に立たないのではと思っていたが、特に理科の知識が役立つことがあることを知れて面白かった。(群馬・高校1年・女子)

  • 『スーパープレミアム 涙のおもてなしスペシャル』(NHK BSプレミアム)正直、東京五輪は見たくても受験と重なるため、情報を入れないようにしていましたが、やはり、地元にもオリンピックが来るなら肌で感じたいなと思いました。(神奈川・高校2年・女子)

  • 『塩野七生と高校生の対話』(NHK Eテレ)対話が行われた理由が1人の高校生だったことに驚きました。テレビを見ていても緊張感や場の空気が伝わってきました。塩野先生が今の若者である私たちに伝えたいことが50分間ぎっしり詰まっていて、とても心に響きました。先生の言葉を文字で表示し強調している部分はとてもいいと思いました。(北海道・中学2年・女子)

調査研究について

担当の中橋委員より、調査研究(「青少年のメディアリテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関して、放送局へのヒアリングなど予備調査の進捗状況について報告がありました。

今後の予定について

  • 2月15日に開催される学校の先生方と青少年委員会委員との意見交換会についてテーマ、進行等の最終的な確認をしました。

以上

2020年1月に視聴者から寄せられた意見

2020年1月に視聴者から寄せられた意見

冬休みに入り、子ども向けの番組についての意見や年末年始の特別番組への意見が多く寄せられた。

2020年1月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,716件で、先月と比較して447件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール83%、電話15%、郵便 1%、FAX 1%。
男女別は男性51%、女性48%、不明1%で、世代別では30歳代25%、20歳代24%、40歳代23%、50歳代14%、60歳以上11%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。1月の通知数は延べ1,115件【56局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、24件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

冬休みに入り、子ども向けの番組についての意見や年末年始の特別番組への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は64件、CMについては16件あった。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は118件で、前月から30件増加した。
今月は「表現・演出」が34件、「低俗、モラル」が32件、「編成」が8件、「いじめ・虐待」が7件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 国内ニュースにおりまぜて、海外の交通事故の映像が、「間一髪の瞬間」などとして取り上げられている。なぜそういった映像を選んで報じているのか、意図や選定理由がはっきりしない。事故の起きた場所なども詳しく伝えない海外の交通事故の映像に対し、しかも「結局、ケガ人はいなかった」ということを、視聴者はどのように受け取ればいいのだろうか。

【番組全般・その他】

  • 偶然、高校生・中学生・小学生の孫たちと大食い番組を見た。孫たちは、次々に食べ物が口の中に消えて行くところを見て大喜びしていた。しかし私には、大食いをすることも、それを見て孫たちが喜ぶことも異様な光景に見えた。"食べる"ということは、本来、"生きる"ためである。たくさん食べることに何の意味があるというのか。苦しそうに食べ物を詰め込む姿は、食べ物を粗末にしているようにも映る。テレビは、子どもたちの純粋な心に与える影響が大きい。大食い番組はもうやめてもらいたい。

  • 私は、青少年育成にかかわる委員をしている。最近、歩くシーンが多い旅番組やバラエティー番組で、出演者が、道路左側を歩いていることが非常に多い。安全確保の上なら致し方ないが、どのような道路環境であろうが、左側を堂々と歩いている。子どもたちにどう説明すればいいのか。非常識な番組作りが多い。

  • 小さな子どもが難題を乗り越えて、一生懸命"おつかい"に頑張る姿を見せたいという制作者の気持ちは分からなくもない、しかし今回の放送では、4歳の男の子に8キロも歩かせていた。本来は片道2キロのところ、「母親が忘れ物をしたので、2回行くことになり、8キロの行程になった」ということだった。しかし、母親が忘れ物をしたというのは、制作者側の設定だったのではないかと疑いたくなる展開に見えた。本当に忘れたのだろうか?感動的な場面をあえて演出したようで、興醒めしてしまった。

  • 「子どもに悪影響」「青少年に見せたくない」というようなクレームが多く寄せられているが、純粋に笑って楽しみたい者としては、この現状に憂慮している。行き過ぎた表現規制や、事あるごとに巻き起こる自粛ムードによって、地上波、BS、CSを問わず、魅力ある番組が減り、どんどんテレビがつまらなくなってしまっているのは本当に悲しい。そもそも、人によって好き嫌いがはっきり分かれるようなジャンルがあって当然ではないか。それを自分が気に食わないから、「規制しろ」「自粛しろ」などと苦情を言うのはお門違いだ。嗜好に合わないなら見なければいいだけだ。少なくとも法に触れる可能性のあるものや、公序良俗に著しく反するものでなければ、表現の自由は尊重されるべきだと思う。昨今のインターネット社会によって、メールやWEBサイトに匿名で送れるがゆえ、悪質なクレーマーやモンスターペアレントが増えてしまったように感じる。

  • 朝の情報番組を見た。女性が通勤などで、女性専用車両に乗りたくない理由としてあげられた例が、事実とかけ離れている。専用車両に乗るか乗らないかは個人の判断だ。痴漢など、男性からいやな目に合わされたことのある女性にとって誤解を抱かせる内容だった。取り上げた事例がどこの誰からの情報なのか、また、今回の放送に対する抗議の声についてどのように対処するのか、説明してほしい。

  • 水曜夜の番組は、高齢タレントの認知機能の衰えをあざ笑う内容だった。放送を見た限り、彼の発言や取り乱し方は、元々の彼の性格だけでなく、高齢者特有の判断力と認知機能の衰えがあると感じられた。彼に冷静な判断力があったとは思えず、彼が取り乱している姿やそれを笑いのネタにされるのはとても悲しい。もし、自分の家族が衰えた姿をさらされ、世間の記憶に晩年の姿として残ったらと思うとやりきれないのではないか。老いを笑いにすることが、高齢者をどれほど傷つけるか認識してほしい。

  • 大みそかに放送された懐かしの歌番組を家族で楽しく見た。一曲一曲見やすい文字で曲名や歌詞テロップが出ていて、「あの当時は何をしていたか…」などと思い出しながら、家族の会話も弾んだ。毎年、年末恒例の歌番組にうんざりしていたが、こちらは、昭和30年代の曲から最近の曲までバランスよく詰め合わせられ、様々な年代の人が楽しめるように丁寧に作られていて好感が持てた。40歳代の私にとって懐かしい歌もあり嬉しかった。一緒に見ていた70歳代の両親も、知っている曲を口ずさみながら見ていて、こちらまで幸せな気分になった。この番組にチャンネルを合わせて本当に良かった。次回も楽しみにしたい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、与えられた課題に対して、失敗すれば体罰が下される内容は、子どもたちに対して悪影響を及ぼしかねない。”失敗イコール体罰”的な番組は排除されるべきでないか。

【「低俗、モラル」に関する意見】

  • 風俗店を題材にした性的な内容の深夜アニメが放送されている。セクハラ行為をギャグにするなど女性差別的な描写もある。このようなアニメが年齢規制もなく青少年が見られる現状に憤りを感じる。

【「編成」に関する意見】

  • 子どもが見ている時間帯に、殺人や死体の出るドラマの番宣はやめてほしい。楽しく見ていたのにテレビを消したり、他のチャンネルを見せたりと安心して見られない。

【「要望・提言」】

  • アニメの規制を強化し過ぎないでほしい。昨今の視聴者は下ネタに不寛容過ぎるのではないか。子ども向けアニメなら子どもが楽しめていればいいのではないだろうか。子ども向けアニメでは下ネタよりもDVシーンを入れるほうが子どもに見せられないと思う。

2020年1月24日

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、1月24日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、中野剛委員、巻美矢紀委員の3人が出席し、関西テレビからは編成局担当の取締役ら3人が出席した。
まず神田委員長が、審議の対象とした番組には放送倫理違反があったという委員会の判断を説明したうえで、「現場の制作者の中に局の見解や本決定に納得できない人がいれば、局はそのような意見を受け止めながら、現場での理解を深めていっていただきたい」と、経営側として今後の適切な対応を求めた。中野委員も「経営陣によく読んでもらいたいというメッセージを込めて、局の事後対応の検証にも重点を置いた意見書にした。辛辣なトークを楽しみにしている視聴者もいるので、この意見書をいい番組作りにいかしてほしい」と、また巻委員は「一部の制作者の問題ではなく、会社全体のシステムを見直す好機ととらえて現場との対話を続けていってほしい」と述べた。
これに対して関西テレビは「問題が起きてから勉強会を積み重ねてきたが、現場には新しい人も入ってきているので、この意見書をしっかり読んで、視聴者の信頼を得られるようにしていきたい」と答えた。
その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、22社43人が出席した。
はじめに神田委員長が意見書のポイントを解説して、放送倫理違反があったという判断にいたった経緯を説明した。続けて「関西テレビの当初の見解とその後の見解との間には相違があり、局内に見解の変遷があったことを示している。だからこそ最終的に『放送倫理上の問題があった』という結論には重みがあり、その結論を社内で深めてほしい」とコメントした。中野委員は「ヒアリングをした複数の制作者が『ギリギリのラインを攻めることが視聴者から求められている』と話していたが、そうであれば、自分たちが自主自律的に作ったガイドラインを十分に理解している必要がある。2007年に発覚した『あるある大事典II』の問題を受けて関西テレビが自主的に作った『番組制作ガイドライン』や『倫理・行動憲章』の内容を、経営陣は改めて現場に指導してほしい」と経営に呼びかけた。その一方で「考査は最後の砦なので、各社の考査のあり方を今一度考えてほしい。さらに、疑問に思ったことを伝えあえる環境かどうか、各社の制作現場も考えてほしい」と、現場にも意見書の趣旨を踏まえるよう促した。また巻委員は「今回の問題については、関西テレビの中だけでなく放送界全体でもさまざまな意見があると思う」とヒアリングなどで受けた印象を受けて、「だからこそ今回の問題をきっかけに、公共性が高いと位置付けられているテレビの役割や使命、また各社が自主的に作っている放送基準の意義や具体化について、放送界全体で考えるきっかけにしてほしい」と、放送業界へのメッセージを述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 韓国の人を「手首切るブスみたいなもの」と揶揄的に言っていることが放送倫理違反なのか?
A: 一つ一つの表現がダメだというのではなく、発言全体の文脈の中で、国の外交姿勢の擬人化にとどまらず、広く韓国籍を有している人を侮辱していて、それが民放連の放送基準などに抵触していると判断した。(神田委員長)
   
Q: どういう表現をすればよかったのか?
A: ヒアリングの際に「カットすべきだった」と話す制作者はいたが、委員会として具体的にどうすべきであったとは言っていない。その方法にはいろいろな選択肢があったはずであり、局が自主自律的に考えるべきことであると考える。(神田委員長)
   
Q: 意見書を読むと、現場の制作者の中には局の見解に納得していない人がいるようだ。そういう人たちには、自己批評番組でコメンテーターが指摘した「作り手のエゴ」だという認識がないのではないか?
A: ヒアリングをした委員の実感としては、現場の制作者は悩んでいた。だから制作会社のスタッフは局のプロデューサーに「この表現が放送で使えるかどうか」を聞き、プロデューサーはさらに放送倫理担当者に聞いている。最終的には問題の表現を使うということになったが、使っていいのかどうか悩んでいたことがうかがえる。最終的なジャッジに問題があったと考える。(中野委員)
A: 局の見解と自分の考えの間に「溝」がある制作者がいることは事実だが、その「溝」を埋めるために、一人ひとりが考え続けてほしいという期待を込めている。(神田委員長)

以上