第165回 放送倫理検証委員会

第165回–2021年11月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』審議入り

第165回放送倫理検証委員会は11月12日に千代田放送会館で開催された。
委員会が7月21日に通知・公表した日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な再発防止策などをまとめた対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表する事にした。
番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問として放送していたテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について、同局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議した結果、視聴者の質問等を番組が作ることは世論誘導につながりかねず放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯について検証する必要があるとして審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2021年11月12日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見への対応報告を了承

7月21日に通知・公表した日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見(委員会決定第41号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、社内の検証チームが今回の事態に至った経緯と原因について調査
し、結果を30分番組にまとめて放送したことや、当該番組『スッキリ』において、担当以外の複数プロデューサーによるチェック体制を構築したこと、他の生放送の情報番組においても、事前に制作したVTRを可能な限り担当者以外の視点でチェックする体制を構築したことが記されている。また、再発防止への取り組みとして、コンプライアンス推進室に人権問題の相談に対し助言を行う担当を新たに設けたことや、全社員・スタッフを対象に専門家を招いてアイヌ民族差別や人権問題に関する研修会を2度にわたって実施したことが報告されている。
委員からは、「今回の問題は1994年『イヨマンテの夜』の事実上の再発だ。再発防止策が機能しているかどうか、長いスパンで確認する仕組みがあればなお良いと思う」「チェック体制の強化や研修の実施が柱になっているが、それよりも職場のコミュニケーション不足への対応の方が重要なのではないか。今後何らかのかたちで取り組んでほしい」などの意見が出され、概ね適切な対応がなされているとして報告を了承し、公表することにした。
日本テレビの対応報告書は、こちら(PDFファイル)

2. テレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』について審議

テレビ朝日は情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』で、2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるコーナーで、番組側が作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。
同コーナーでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ホームページなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し、出演した専門家らが答えていた。
当該放送局によると、放送中の短い時間で採用する質問を選り分けるため、チーフディレクターが選別の基準としてコーナーの流れを想定した質問案を事前に作っていたが、今年3月から10月にかけて、この想定質問を視聴者からの質問として放送に使ったという。104問が番組側で作成され、年齢や居住地域などは架空の属性で紹介された。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用する場合も、文章に手を入れ表現を修正したケースでは、クレームを避けるため属性を書き換えていたという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議を行った。その結果、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論誘導にもつながりかねない深刻な事案で放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

3. その他

視聴者意見等を踏まえて、衆議院議員選挙を含む報道について議論を行った。

以上

第298回放送と人権等権利に関する委員会

第298回 – 2021年11月

「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2021年11月16日(火)午後4時~午後7時30分
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、
野村委員、丹羽委員、水野委員

1. 「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」審理

NHK宮崎放送局は、2020年11月20日午後6時10分からの『イブニング宮崎』(宮崎県内で放送)の中で、同年3月26日に宮崎市内で男性2人が死亡した住宅火災の続報を放送した。そこでは、この火災は放火殺人事件の疑いが濃くなり、容疑者がガソリンをまいて火をつけ被害者(申立人の兄)を殺害し自分も死亡した可能性があり、その原因として「何らかの金銭的なトラブル」が死亡した2人の間にあったかのように伝えられた。
この放送に対して申立人(被害者の弟)が、「2人の間に何らかの金銭的なトラブルがあった」と報じられたことで、「兄にも原因の一端があったのではないか」との印象を抱かせるものであり、事件被害者である兄の尊厳を傷つけたとして、NHKに対して謝罪を求めてBPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対してNHKは、「事件当事者の2人が亡くなっている中でも、当時の取材で知り得た情報を基に『被害者』と『加害者』を明確に分ける形で客観的な事実を伝えており、申立人の主張する指摘は当たらない」と反論した。
委員会は、前回委員会の審理をもとに修正した決定文の修正案が起草委員から示され議論を行った。その結果、概ね審理が尽くされ、次回委員会で最終決定に向けて議論することを確認した。

2.  その他

事務局から現時点での申立て状況などを報告した。

以上

2021年11月12日

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』が審議入り

放送倫理検証委員会は11月12日、テレビ朝日の『大下容子ワイド!スクランブル』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、同番組内の視聴者からの質問に答えるコーナーで、今年3月からおよそ半年間にわたり、番組スタッフが用意した質問を視聴者からの質問であるかのように放送していた。
テレビ朝日は10月21日、番組や番組ホームページで概要を公表するとともに、謝罪を行った。
同局によると、放送した質問のうちおよそ2割にあたる104問が番組側で作成されていたほか、視聴者から受け付けた実際の質問の中には、質問者の居住地域や年代などが架空の属性で紹介されていたものもあった。
委員会は、テレビ朝日から報告書と番組DVDの提出を受けて協議を行った。その結果、深刻な事案であり、質問の内容等によっては世論誘導にもつながりかねないなどの意見が出され、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2021年10月に視聴者から寄せられた意見

2021年10月に視聴者から寄せられた意見

衆院選開票特番について、中継先の候補者に対する出演タレントの発言、態度が侮蔑的などの批判や、小室さんと眞子さんに関する話題の取り上げ方などへの意見が多かった。

2021年10月にBPOに寄せられた意見は1,726件で、先月と比較して860件減少した。
10月1日、電話による意見受け付けを再開した。月間を通じて電話で意見を受け付けたのは去年12月以来。
意見のアクセス方法の割合は、メール83%、電話15%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性48%、女性24%で、世代別では40歳代27%、50歳代24%、30歳代21%、60歳以上16%、20歳代10%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送事業者を特定したものは、当該事業者のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は851件【64事業者】であった。
このほか、放送事業者を特定しない放送全般への意見の中から23件を抜粋し、全会員事業者に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

特定の局の衆院選開票特番について、中継先の候補者に対する出演タレントの発言、態度が侮蔑的などの批判が多かった。また、小室さんと眞子さんに関する話題の取り上げ方や、取り上げること自体についての意見も多かった。
ラジオに関する意見は55件、CMについては17件あった。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は89件で、前月から19件減少した。
今月は「表現・演出」が18件、「低俗・モラルに反する」が17件、「暴力・殺人・残虐シーン」が11件、「いじめ・虐待」が9件、「性的表現」と「マナー・服装」がともに5件と続いた

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 総選挙を前にテレビのキャスターやコメンテーターたちは「成長戦略が必要」としきりに言っているが、成長戦略とは何かの説明もない。選挙があるのだから改革至上主義、成長戦略ばかり主張する人だけではなく、さまざまな意見を持つコメンテーターを出演させ、国民の選択肢を広げてほしい。

  • 生放送の討論番組で与党幹部が「スマホは日本人の発明」、「消費税の使途は社会保障費のみ」などと発言。事実ではないのに番組内で訂正やフォローはされず、言いっ放しになったことは問題。

  • 週1回のラジオ番組の「DJ」はある政党の参議院議員。番組の内容はその党の衆院選の選挙公約や議員の活動報告など、党の宣伝とも受け取れる話ばかりだ。特定の政党の話だけを番組として30分間も放送することに違和感を覚える。

  • 森友・加計問題や辺野古問題などの特集は衆院選投票日の前日に取り上げる内容ではないと感じた。むしろ政治的主張を強く感じた。

  • 衆院選開票番組でお笑いタレントが、落選が濃厚になった自民党幹事長にインタビューし、笑いながら「ご愁傷様でした」。あまりに失礼ではないか。礼を欠きすぎていて不快。

  • 開票特番の出演者が候補者に「ご愁傷様」。その候補者に一票を投じた有権者をも嘲笑する態度で、芸人であれば許容される、といった類の言説ではないと思う。制作側の見識も疑わざるをえない。

  • 眞子さんは結婚して一般人なのに結婚後も追いかけられ、司法試験の結果まで放送されてかわいそう。2人の気持ちを察すると見ているこちらが心苦しくなる。

  • 眞子さまと小室氏の結婚報道で「速報です。小室氏が記者会見のために自宅を出ました」。この情報のどこに「速報」で流す必要があるのか全く理解できない。

  • 小室さんの親がしたことについて本人に責任を取らせるような風潮に疑問を感じる。子どもは親を選べないし管理できないのに、親のしたことにまで報道が過熱するというのはおかしい。

  • 小室圭さんの学費の借金問題、弁護士資格などについて正しい情報を調べて伝えてほしい。NHKも民放も良いことしか伝えないが、視聴者としては単純に正確な情報を知りたい。

  • 組閣の速報テロップがうるさい。そもそも報道番組の最中に速報テロップを出す意味が分からない。知らないと生命に関わる、など速報を出す基準を明確にしたほうがいいのではないのか。こういう速報の合間にもし地震など自然災害の速報が流れたら「またか」と見逃す人が出てくるのではないのか。それこそ命の危機だろう。

  • 「視聴者からの質問に答えるコーナー」の質問が「創作」だった。毎日楽しみに見ていたのに、だまされたという思いで力が抜ける。ほかの情報番組でもLINEなどを使って視聴者意見を集めているが、本当に意見を受け付けているか疑問に思ってしまう。ウソ偽りのない視聴者意見募集のあり方、検証可能な手法を編み出してほしい。

  • 民放各社の警察密着特番は「社会に開かれた警察」などの観点からは非常に良いと思うが、犯罪者=悪い人というステレオタイプが目立つ。研究が進み、犯罪者の中には人格障害、ADHD、幼少時の虐待などの精神医学的な背景があるような社会的弱者もいることが分かってきた。刑罰を与えるよりも精神科病院で治療した方がいいのではないかという議論もある。テレビ局も犯罪者は悪い人だと決めつける報道より、犯罪を減らすにはどうしたらいいか、議論のきっかけを与える報道をしてほしい。

  • 押収された覚せい剤のアップ映像がニュースで流れた。私は職業柄、治療中の覚せい剤中毒者と関わることがよくある。ほんのささいなことでも彼らには刺激となり、再び覚せい剤に手を出すきっかけとなる。映像を流すことは絶対に避けてほしかった。

  • 緊急事態宣言の解除にともなう飲食店での酒類提供について特集していた。報道が必要な内容であるが、ビールを美味しそうに注いだり、それを美味しそうに飲んだりするシーンがことさら強調されていて、それを見たことで非常に強いアルコールへの欲求が呼び起こされた。私は持病によりアルコールの摂取を制限されている。料理番組やバラエティー番組であれば見ないことで対応できるが、ニュース番組は社会一般の情報を入手するため視聴が必要。喫煙シーンが議論されたように飲酒シーンについても一考をお願いしたい。

  • 番組で放送される視聴者投稿の映像の中には、明らかに危険な場所で撮影されたと思われるものがある。それに対して注意をすることもない。「このような映像を撮るとテレビで放送される」と期待して危険な場所で撮影する人が増えるのではないかと危惧している。

  • ワイドショーでしばしば「コロナで一番苦しんでいるのが飲食店」などの表現が使われているが、飲食店は自治体から長期間、高額の支援を受けている。確かに一部は厳しい状況だと思うが、協力金バブルで左うちわの店もある。番組は両方の情報を発信してほしい。

  • 水泳女子100mバタフライのニュース。見出しテロップは「池江璃花子選手 2位」、ナレーションの主語も池江選手。優勝した飯塚選手はテロップ表示だけで名前も読んでもらえないのはおかしくないだろうか。正当な評価をするのが普通だと思う。私は飯塚選手の関係者ではないが、悲しい気持ちになった。

  • 民放の朝、夕のワイドショー、ニュース等を楽しく見ている。最近、番組改編時期にアナウンサーが交代や結婚、出産で番組を離れるに際して、ことさらに時間を長く取って離任を紹介したり泣いたり騒いだりと、視聴している側にとっては不快なシーンが多くなった。あいさつや告知はもちろんいいと思うが、何か身内による宴席での盛り上がりにしか見えないノリが多い。

【番組全般・その他】

  • コントのネタが統合失調症の方を揶揄した内容で不快に思った。「自我がない」など気になるセリフがあった。統合失調症の方本人、ご家族、友人が見ていたと思うと胸が痛む。

  • 大トロを食べるために野良ネコがどれくらいジャンプするか、人工の谷を徐々に広げながら試していた。失敗すればけがをしかねない危険な企画で、虐待ではないかと感じた。残酷でとてもバラエティーとして笑える内容ではなかった。

  • 私は登山経験者。バラエティー番組の冒険企画でタレントが山中で「沢下り」、「滝飛び込み」、「崖下り」。十分な装備と技術なしに行うにはあまりに危険な行為が、楽しそうに、勇気があれば誰にでもできるような演出で放送されていた。番組は事前に下調べをして安全性に問題ないことを確認してやっているのだと思うが、山の知識のない視聴者はそうした危険性には気がつかないと思う。登山は無知で臨むと死に至る可能性があることを認識した上で放送すべきだし、せめて「危険なのでマネしないで」の一言を入れるのが適切だと思う。

  • おにぎり早食い競争は危険だと思うので放送してほしくなかった。過去には死亡事故もあった。どうしてこのようなものを番組で取り上げるのかと思う。

  • 人気スポットのランキングで、13位としてある企業のショールームと商品が紹介された直後に、そのショールームとその商品のCMが流れた。流行を紹介する番組でこういうことがあると、どこまでが広告でどこからが事実なのかわからなくなる。好きな番組だっただけに非常にガッカリした。

  • ラジオ各局でサプリメントの通販番組が増えた。一番よく聴く局は早朝の番組を10分カットして通販番組に置き換えてしまった。毎日同じ内容の番組にうんざり。各放送局の「独自性」が失われつつあるように思う。

  • 90代の母親がテレビの通販番組にしばしば「引っかかり」、カタログと商品が山のように送られ溜まっている。活字媒体と違ってテレビからは映像音声が流れ、高齢者はじっくり考えずに「買わされて」しまう。何を買ったかも分からなくなったころに、督促状、回収業者、裁判と、売った側が高齢者を脅す。高齢者は「恥だから」と子どもには黙っている。こうした事態を招いていることを認識して、テレビ通販番組のあり方、モラルを考えてほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 20時台に「マッチングアプリで夫が浮気…マンガにもなった妻の痛快リベンジ」という内容の放送があった。小さな子どもも見ている時間であるのに、マッチングアプリの相手と会うために「おしゃれなパンツをはく」「ホテルで待ち合わせ」「私激しいかも」のような内容があり、問題を感じた。今後こういった内容を含む番組は時間を考えていただきたい。

【「低俗、モラルに反する」】

  • 県のマスコットキャラクターを主人公にしたアニメの中で、競輪で賭博するおじさんの話が出てきたが、この番組は早朝の子ども向けだというのに、賭博のやり方を指南するシーンがあった。子どもが賭け事をやりたいと言い出したら困るし、かけ方を教えるということは賭け事しろということと同等だ。競輪のシーンを出すくらいはいいと思うが、深夜アニメではないのだから、もう少し考えてもらいたい。これが知事の企画するアニメというのだからビックリ。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 朝の時間帯で、ラスボスによって敵の首領の首をはねるシーンは刺激が強すぎる。子ども向けの番組には相応しくない過激な残酷映写は良くないと思う。残酷な場面を規制するべきだ。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 芸人同士の鮎取り対決の場面で、芸人Aが芸人Bを掴んで無理矢理水の中に沈めようとし、それを見ている周囲の人間が、笑っている場面があった。子ども達も見る可能性の高い日曜日のゴールデンタイムに、あのような様子を放送することは、子ども達に悪影響を及ぼすものであり不適切。

【「性的表現」に関する意見】

  • 12歳の少女の裸を連想するシーンが多かったり、それを覗くシーンがあったりした。アニメだが、対象キャラが少女だし大丈夫なのか。

【「マナー・服装」に関する意見】

  • アニメの主人公がまだ高校生のはずなのに、ピアスをしてタバコを吸い夜遊びの朝帰りをしている。いつからこの日本は高校生の喫煙を容認したのか。深夜番組とはいえ、こんな番組の放送を黙認していいのか。

第239回 放送と青少年に関する委員会

第239回-2021年10月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議…など

2021年10月26日、第239回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議にあたり、榊原委員長と沢井委員からそれぞれ専門分野の観点からのレクチャーがあり、これをもとにバラエティー番組が青少年、とりわけ児童へ及ぼす影響について意見交換をしました。
9月後半から10月前半までに視聴者から寄せられた意見には、土曜21時から放送された劇場版アニメ映画について、「PG12指定の刺激の強い残虐なシーンがある映画を放送するのはいかがなものか」などがありました。
これを視聴した委員の中でも、殺陣や血しぶきのシーンへの配慮について意見が割れたため、全員で再度視聴して次回に改めて議論することにしました。
続いて10月の中高生モニター報告(テーマ:「最近見たドラマについて」)を検討しました。中高生モニターからは、日本の沈没という未曾有の危機を前に奮闘する人々を描く10月新ドラマに関して、「沈没による被害や犠牲者の実態など、リアルに演出してもらうことにより、視聴者は疑似体験でき、本当に巨大地震が起こった時に、このドラマが参考になり得ることもあると思います。」などの報告がありました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関しては、放送局へのアンケート結果についての経過報告がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、11月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2021年10月26日(火)午後4時30分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議
 (榊原委員長と沢井委員からのレクチャー)

視聴者からの意見について
中高生モニターについて
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議 (榊原委員長と沢井委員からのレクチャー)

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議にあたり、榊原委員長から「共感性の発達とミラーニューロン・嘲笑は"笑い"ではない」、沢井委員から「テレビの暴力的映像が青少年の情動や行動に与える影響についての科学的エビデンス」というテーマでレクチャーがあり、これをもとにバラエティー番組が青少年、とりわけ児童へ及ぼす影響について意見交換をしました。

視聴者からの意見について

9月後半から10月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
土曜21時から放送された劇場版アニメ映画について、「PG12指定の刺激の強い残虐なシーンがある映画を放送するのはいかがなものか」「21時からの放送で、子どもにはグロテスクすぎる。元々は深夜放送なのに、規制も無しに放送しないで欲しい」という意見が寄せられました。
これを視聴した委員の中でも、殺陣や血しぶきのシーンへの配慮について意見が割れたため、全員で再度視聴して次回に改めて議論することとしました。
野良猫を高台に乗せ、同じ高さの離れた高台にエサの大トロを置き、幅跳びのような形で飛び移らせるという企画に対し、「下にマットが敷いてあるとしても失敗して落ちると危険だ」「子どもが野良猫をもて遊ぶようになったらどうするのか」といった意見が寄せられました。
委員からは「動物愛護の観点から気になる」という意見が出されました。
山梨のキャンプ場から失踪した少女の12歳姉への顔出しインタビュー報道に対し、「被害者の家族・友人への配慮を求める《BPO委員長コメント》が出たにもかかわらず、必要だったのか?違和感が残る」という意見が寄せられました。
委員からは「12歳姉本人の決意と、取材を受ける理由を本人の口から説明していた」「取材を受けるまでの親子の関係も丁寧に描いており、八街の場合とは違うと受け取れた」「記者の方が、とても丁寧に対応されたから取材できたのであろうと理解した」という意見が出されました。

中高生モニターについて

35人の中高生モニターにお願いした10月のテーマは、「最近見たドラマについて」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。33人から報告がありました。
「最近見たドラマについて」では、20番組への感想が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは7番組で、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)を5人が、『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)を4人が、『木曜ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」』(テレビ朝日)を3人が取り上げていました。2人ずつが記述していたのは4番組で、『真犯人フラグ』と『二月の勝者―絶対合格の教室―』(ともに日本テレビ)、『オシドラサタデー「消えた初恋」』(テレビ朝日)、『アンラッキーガール!』(読売テレビ)でした。
「自由記述」では、ドラマへの期待、意見、要望が最も多く、次に多かったのが10月7日夜に発生した最大震度5強の地震発生時の各放送局の対応についての感想でした。また、現在審議中の「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての意見もありました。
「青少年へのおすすめ番組」で複数のモニターが取り上げたのは4番組で、『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)が7人、『ゲームゲノム』(NHK総合)と『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)が5人、『BS1スペシャル「勝敗を越えた夏2021~ドキュメント日本高校ダンス部選手権~』(NHK-BS1)が2人でした。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)このドラマを通して、視覚障がい者のことについて知り、学ぶことができたという指摘があった。ドラマの1つの役割と言えると思う。

    • 『木曜ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」』(テレビ朝日)まさにこの数年直面しているコロナの問題に関する内容を扱うなど、現実社会の問題とリンクさせて表現できることは、オリジナルのドラマだからできることかもしれない。ただ一方で、モニターの感想の中にもあったが、フィクションとはいえ、どこまで踏み込んだ内容にするのか、それで傷つく人はいないのかなど、検討するのは大変だと思う。制作者の挑戦や努力を応援したい。

  • 【自由記述について】

    • スマホやタブレットなどインターネット端末の普及でテレビ離れが進んでいるということについて、モニターが「ドラマをテレビで視聴している人は周りにいる。だからこそ、テレビはもっとドラマを頑張ると良いのではないか」という応援メッセージを寄せてくれた。ぜひ放送局に伝えたいと感じた。

    • 先日の地震時の放送について、あるモニターから「スタジオもすごく揺れていたけど、アナウンサーはそのまま情報を伝えていた。落ち着いていてさすがと思ったと同時に、机の下に入って身を守る行動をとるべきだったんじゃないかとも思った」という意見が届いた。伝える責任と自らの安全確保という難しい問題だと感じた。

    • 地震の際にヘルメットをかぶってニュース報道をしていたのを見たというモニターが、災害について改めて考え、防災グッズを自分も準備しようと思った、という感想が寄せられた。番組が子どもたちにとって、災害を自分のこととして受け止める機会になると改めて感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)クラスメイトの紹介のシーンでは、それぞれの見え方について「全く見えてない、光を強く感じる、ぼんやりと色や光が見える」というように視覚障がいにはいろいろあるということを映像で分かりやすく説明してくれたり、芸人の濱田祐太郎さんが漫談を交えて面白く説明をしてくれたり、私たちにも分かるようにしてくれていていいと思いました。また、全くなじみのなかった白杖や拡大読書器のことも、ドラマのストーリーの中で自然に学ぶことができました。(中学1年・女子・東京)

    • 『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)普通とは一体何なのか考えさせられ、障がい者と健常者、それぞれの生きている世界でたくさんの悩みがあって、それをお互いがカバーしていけるような世界を目指していくことが大切だと思いました。(中学3年・女子・富山)

    • 『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)このドラマは原作及び旧作のドラマ『日本沈没』とは話や登場人物の設定が異なっているという。そこで、原作についても調べてみた。同じ作品であってもキャラクターや設定を変えて描きたいことを変える。これが「ドラマ化」の醍醐味なのかもしれないと感じた。国のリーダーとはどんな人であるべきか。そんなことをこのドラマは視聴者に問いたいのかもしれない。(中学3年・男子・静岡)

    • 『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)今話題になっているSDGsにも関連するいい番組だと思います。このまま地球環境のことを考えずに暮らしていくと本当に沈没が起こるのかなと思います。(中学3年・女子・宮崎)

    • 『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)沈没による被害や犠牲者の実態など、リアルに演出してもらうことにより、視聴者は疑似体験でき、本当に巨大地震が起こった時に、このドラマが参考になり得ることもあると思います。(高校3年・男子・長崎)

    • 『木曜ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」』(テレビ朝日)コロナ禍の病院をドラマで表現することは必ずしも良いことではないのではないか、とも考えます。制作者は、現場の最前線でコロナウイルスと戦う医療従事者、患者にとってこのドラマがどのように映るかをよく考える必要があると感じます。ドラマを見て、医療従事者や患者が愉快に感じるか不愉快に感じるかは作り手の演出次第だからです。すべての視聴者が勇気をもらえるようなドラマとなることを願って、これからの展開を楽しみにしたいです。(高校1年・女子・東京)

    • 『真犯人フラグ』(日本テレビ)1話から伏線がたくさん張られていると思われる。過去に放送された『あなたの番です』のスタッフということもありこれから面白くなりそう。(高校2年・男子・愛知)

    • 『二月の勝者―絶対合格の教室―』(日本テレビ)親が受験についてどう思っているのかということや家庭によってどんな困難があるのかということなど、親の立場で考えてドラマを見られるのが楽しみ。話を重ねていくごとに、「そういう考えもあるのか」と学習できそうだ。(中学2年・女子・埼玉)

    • 『アンラッキーガール!』(読売テレビ)ここまでのアンラッキーさを持つ人はなかなかいないと思うが、結構身近にありそうなこともあり、「ああこういうことあるよね」と共感できるアンラッキーさもあり、それも含めて楽しむことができた。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『アンラッキーガール!』(読売テレビ)主人公の幸のようにどんなことがあっても前向きでいられるようになりたいです。(中学2年・女子・大分)

    • 『大河ドラマ「青天を衝け」』(NHK総合)挿入歌では洋風な曲が入ってきて、珍しいのであまりしっくりこなかったが、明治の新政府の情景が浮かんできて、工夫されているなと感じた。曲は作品のイメージにもつながるので、ドラマそれぞれのこだわりが見られて面白い。(高校1年・女子・京都)

    • 『よるおびドラマ「この初恋はフィクションです」』(TBSテレビ)内容よりも放送の仕方に関心を持ち、視聴を始めた。ドラマはTBSの深夜帯に放送しているが、テレビ以外に見逃し配信アプリ、更にはYouTubeで全話が見られるという大きな利点がある。見逃し配信アプリでのドラマの配信は今までもあったが、民放の見逃しYouTube配信は初めてでとても驚いた。YouTubeにはドラマの無断転載も多いのでその防止にもつながると思った。また、1話が15分程で隙間時間にも見やすい、ちょうどいい長さでいいなと感じた。ウェブドラマ(1話15分程度で構成されていて、スマホでいつでも視聴できるという点が人気)の要素も大いにあり、若者が見やすいような工夫を感じた。(高校1年・女子・埼玉)

  • 【自由記述】

    • スマホやタブレットなどのインターネット端末が普及し、テレビを見る人が少なくなってきていると感じます。友だちも「ドラマは見るがニュースやバラエティーは見ない」という人が多かったです。なので、私はとても悲しかったですが、逆に言えばドラマは視聴している人がいるということなので、若者などに人気のマンガを実写化するとか、人気の俳優を主人公にするとかすれば見る人も増えると思いました。(中学3年・女子・富山)

    • ドラマが家族の会話の種になることも多いので、ドラマを見るのを楽しみにしています。最近は、海外ドラマをケーブルテレビで視聴することも増えました。(高校1年・女子・東京)

    • 一つのテレビドラマが何かを考えるきっかけになったり、大きく得るものがあったりするということは、とても素晴らしいと感じます。私も『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)の影響を受けて「点字ブロックで立ち止まらないようにしよう、白杖を持った方がいたら気にかけよう」と自分なりに意識するようになりました。改めて、たくさんの人に影響を与えるテレビの偉大さを痛感したし、もっとこうした番組が増えればいいなと感じました。(高校2年・女子・埼玉)

    • テレビドラマを見ていると、本編とは別にいわゆる番外編を配信しているという告知が見られる。私は、多くの番外編を「見なくても本編は楽しめるけど、見れば更に楽しめるかもしれない」くらいの内容だと認識している。しかし、まれに「番外編を見なければ本編に謎が生まれる」ものが存在する。こういった場合、その番外編は本来なら本編に組み込まれるべきものなのではないだろうか。(高校3年・女子・東京)

    • 先日、地震があった時、『報道ステーション』を見ていた。スタジオもすごく揺れていたけど、アナウンサーはそのまま情報を伝えていた。「落ち着いていてさすがだな」と思ったと同時に、机の下に入って身を守る行動をとるべきだったんじゃないかとも思った。(中学3年・女子・京都)

    • 10月7日にあった地震で、テレビをつけると、ニュース番組の出演者全員がヘルメットをかぶって放送を続けていました。テレビは災害時の重要な情報源となりますが、その出演者が即座にこのような対応をし、視聴者に注意を呼びかける体制がとられていたこと、それが実践されていたことは素晴らしかったと思います。また、今回の地震をきっかけに、多くのテレビ番組で防災グッズの紹介や、災害が起こった時にするべき行動について、特集が行われており、テレビが、私も含めたたくさんの人々に災害について改めて考える機会を与えてくれたように思います。(高校1年・女子・東京)

    • 先日地震があった時、アナウンサーが「落ち着いてください」と、繰り返し冷静な声で伝えてくれたおかげで慌てず落ち着くことができました。(高校2年・女子・神奈川)

    • 『ドリフに大挑戦スペシャル』(フジテレビ)という番組がありましたが、それについてネットニュースで「痛みを伴う笑い」というワードがありました。すべてを「痛みを伴う笑い」とひとくくりにしてしまうと何もできなくなるのではないかと思いました。今回のコントは、アクションや効果音、表情などで笑わせていると感じましたが、それすらも「痛みを伴う笑いだから子どもに悪影響だ」などと言ってしまうこと、一部分のシーンを見て、それに至る経緯や流れを見ずに「この番組は良くない」と真っ向から否定してしまうことは、少し違う気がしました。(中学1年・女子・東京)

    • テレビ番組をネットで見るのが当たり前になりつつある。自分自身、一人で見たい時に見たいものだけ見るオーダーメードな形に知らず知らずに適応してしまっていると感じることが多い。だんだんとテレビ局もネット配信との両立をするようになり、これからのテレビはどうなっていくのか疑問が出てきた。(高校2年・女子・東京)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)「そんなこと、テレビで流していいの?」と思ってしまうような際どい内容が新鮮でした。テレビではもちろん、ネットでも得られないような、ためになるディープな知識を知ることができて良かったです。(高校2年・女子・神奈川)

    • 『ゲームゲノム』(NHK総合)番組で取り上げていたゲームの評判については僕も聞いたことがあったが、孤立や分断、人と人とのつながりといった、これほどコロナ禍とリンクした内容のゲームだとは思わなかった。最近のコロナ禍において、物資の配達業者などがエッセンシャルワーカーという生活の根本に関わる大事な仕事として改めて注目されているが、それと似た内容を5年前に考えていたというのはなかなかに驚異的だった。(高校1年・男子・東京)

    • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)見るとストレスを一時的に忘れられるように心がポッと温かくなる感覚になる。例えば、いつも身近にいる家族のような番組だと思う。日曜日の6時になると何となくチャンネルを合わせてしまうし、同じような番組は他にも「サザエさん」だとか「笑点」があるように思う。どれも日曜日の夜に、夕飯を食べながら家族で楽しめる番組だ。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『BS1スペシャル「勝敗を越えた夏2021~ドキュメント日本高校ダンス部選手権~』(NHK-BS1)中学生の妹がダンスをやっており身近に感じました。各校それぞれのダンスの色があり、力がこもっているのが伝わってきました。何においてもそうですが、完成されたものの裏にはたくさんの努力があります。同世代がこうしてカッコいい姿を見せてくれたことは自分にとっても励みになったと思います。(高校1年・女子・東京)

調査研究について

担当の中橋委員から、調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関し、放送局へのアンケート結果についての経過報告がありました。

以上