青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第239回

第239回-2021年10月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議…など

2021年10月26日、第239回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議にあたり、榊原委員長と沢井委員からそれぞれ専門分野の観点からのレクチャーがあり、これをもとにバラエティー番組が青少年、とりわけ児童へ及ぼす影響について意見交換をしました。
9月後半から10月前半までに視聴者から寄せられた意見には、土曜21時から放送された劇場版アニメ映画について、「PG12指定の刺激の強い残虐なシーンがある映画を放送するのはいかがなものか」などがありました。
これを視聴した委員の中でも、殺陣や血しぶきのシーンへの配慮について意見が割れたため、全員で再度視聴して次回に改めて議論することにしました。
続いて10月の中高生モニター報告(テーマ:「最近見たドラマについて」)を検討しました。中高生モニターからは、日本の沈没という未曾有の危機を前に奮闘する人々を描く10月新ドラマに関して、「沈没による被害や犠牲者の実態など、リアルに演出してもらうことにより、視聴者は疑似体験でき、本当に巨大地震が起こった時に、このドラマが参考になり得ることもあると思います。」などの報告がありました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関しては、放送局へのアンケート結果についての経過報告がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、11月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2021年10月26日(火)午後4時30分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議
 (榊原委員長と沢井委員からのレクチャー)

視聴者からの意見について
中高生モニターについて
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議 (榊原委員長と沢井委員からのレクチャー)

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議にあたり、榊原委員長から「共感性の発達とミラーニューロン・嘲笑は"笑い"ではない」、沢井委員から「テレビの暴力的映像が青少年の情動や行動に与える影響についての科学的エビデンス」というテーマでレクチャーがあり、これをもとにバラエティー番組が青少年、とりわけ児童へ及ぼす影響について意見交換をしました。

視聴者からの意見について

9月後半から10月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
土曜21時から放送された劇場版アニメ映画について、「PG12指定の刺激の強い残虐なシーンがある映画を放送するのはいかがなものか」「21時からの放送で、子どもにはグロテスクすぎる。元々は深夜放送なのに、規制も無しに放送しないで欲しい」という意見が寄せられました。
これを視聴した委員の中でも、殺陣や血しぶきのシーンへの配慮について意見が割れたため、全員で再度視聴して次回に改めて議論することとしました。
野良猫を高台に乗せ、同じ高さの離れた高台にエサの大トロを置き、幅跳びのような形で飛び移らせるという企画に対し、「下にマットが敷いてあるとしても失敗して落ちると危険だ」「子どもが野良猫をもて遊ぶようになったらどうするのか」といった意見が寄せられました。
委員からは「動物愛護の観点から気になる」という意見が出されました。
山梨のキャンプ場から失踪した少女の12歳姉への顔出しインタビュー報道に対し、「被害者の家族・友人への配慮を求める《BPO委員長コメント》が出たにもかかわらず、必要だったのか?違和感が残る」という意見が寄せられました。
委員からは「12歳姉本人の決意と、取材を受ける理由を本人の口から説明していた」「取材を受けるまでの親子の関係も丁寧に描いており、八街の場合とは違うと受け取れた」「記者の方が、とても丁寧に対応されたから取材できたのであろうと理解した」という意見が出されました。

中高生モニターについて

35人の中高生モニターにお願いした10月のテーマは、「最近見たドラマについて」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。33人から報告がありました。
「最近見たドラマについて」では、20番組への感想が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは7番組で、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)を5人が、『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)を4人が、『木曜ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」』(テレビ朝日)を3人が取り上げていました。2人ずつが記述していたのは4番組で、『真犯人フラグ』と『二月の勝者―絶対合格の教室―』(ともに日本テレビ)、『オシドラサタデー「消えた初恋」』(テレビ朝日)、『アンラッキーガール!』(読売テレビ)でした。
「自由記述」では、ドラマへの期待、意見、要望が最も多く、次に多かったのが10月7日夜に発生した最大震度5強の地震発生時の各放送局の対応についての感想でした。また、現在審議中の「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての意見もありました。
「青少年へのおすすめ番組」で複数のモニターが取り上げたのは4番組で、『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)が7人、『ゲームゲノム』(NHK総合)と『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)が5人、『BS1スペシャル「勝敗を越えた夏2021~ドキュメント日本高校ダンス部選手権~』(NHK-BS1)が2人でした。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)このドラマを通して、視覚障がい者のことについて知り、学ぶことができたという指摘があった。ドラマの1つの役割と言えると思う。

    • 『木曜ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」』(テレビ朝日)まさにこの数年直面しているコロナの問題に関する内容を扱うなど、現実社会の問題とリンクさせて表現できることは、オリジナルのドラマだからできることかもしれない。ただ一方で、モニターの感想の中にもあったが、フィクションとはいえ、どこまで踏み込んだ内容にするのか、それで傷つく人はいないのかなど、検討するのは大変だと思う。制作者の挑戦や努力を応援したい。

  • 【自由記述について】

    • スマホやタブレットなどインターネット端末の普及でテレビ離れが進んでいるということについて、モニターが「ドラマをテレビで視聴している人は周りにいる。だからこそ、テレビはもっとドラマを頑張ると良いのではないか」という応援メッセージを寄せてくれた。ぜひ放送局に伝えたいと感じた。

    • 先日の地震時の放送について、あるモニターから「スタジオもすごく揺れていたけど、アナウンサーはそのまま情報を伝えていた。落ち着いていてさすがと思ったと同時に、机の下に入って身を守る行動をとるべきだったんじゃないかとも思った」という意見が届いた。伝える責任と自らの安全確保という難しい問題だと感じた。

    • 地震の際にヘルメットをかぶってニュース報道をしていたのを見たというモニターが、災害について改めて考え、防災グッズを自分も準備しようと思った、という感想が寄せられた。番組が子どもたちにとって、災害を自分のこととして受け止める機会になると改めて感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)クラスメイトの紹介のシーンでは、それぞれの見え方について「全く見えてない、光を強く感じる、ぼんやりと色や光が見える」というように視覚障がいにはいろいろあるということを映像で分かりやすく説明してくれたり、芸人の濱田祐太郎さんが漫談を交えて面白く説明をしてくれたり、私たちにも分かるようにしてくれていていいと思いました。また、全くなじみのなかった白杖や拡大読書器のことも、ドラマのストーリーの中で自然に学ぶことができました。(中学1年・女子・東京)

    • 『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)普通とは一体何なのか考えさせられ、障がい者と健常者、それぞれの生きている世界でたくさんの悩みがあって、それをお互いがカバーしていけるような世界を目指していくことが大切だと思いました。(中学3年・女子・富山)

    • 『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)このドラマは原作及び旧作のドラマ『日本沈没』とは話や登場人物の設定が異なっているという。そこで、原作についても調べてみた。同じ作品であってもキャラクターや設定を変えて描きたいことを変える。これが「ドラマ化」の醍醐味なのかもしれないと感じた。国のリーダーとはどんな人であるべきか。そんなことをこのドラマは視聴者に問いたいのかもしれない。(中学3年・男子・静岡)

    • 『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)今話題になっているSDGsにも関連するいい番組だと思います。このまま地球環境のことを考えずに暮らしていくと本当に沈没が起こるのかなと思います。(中学3年・女子・宮崎)

    • 『日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」』(TBSテレビ)沈没による被害や犠牲者の実態など、リアルに演出してもらうことにより、視聴者は疑似体験でき、本当に巨大地震が起こった時に、このドラマが参考になり得ることもあると思います。(高校3年・男子・長崎)

    • 『木曜ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」』(テレビ朝日)コロナ禍の病院をドラマで表現することは必ずしも良いことではないのではないか、とも考えます。制作者は、現場の最前線でコロナウイルスと戦う医療従事者、患者にとってこのドラマがどのように映るかをよく考える必要があると感じます。ドラマを見て、医療従事者や患者が愉快に感じるか不愉快に感じるかは作り手の演出次第だからです。すべての視聴者が勇気をもらえるようなドラマとなることを願って、これからの展開を楽しみにしたいです。(高校1年・女子・東京)

    • 『真犯人フラグ』(日本テレビ)1話から伏線がたくさん張られていると思われる。過去に放送された『あなたの番です』のスタッフということもありこれから面白くなりそう。(高校2年・男子・愛知)

    • 『二月の勝者―絶対合格の教室―』(日本テレビ)親が受験についてどう思っているのかということや家庭によってどんな困難があるのかということなど、親の立場で考えてドラマを見られるのが楽しみ。話を重ねていくごとに、「そういう考えもあるのか」と学習できそうだ。(中学2年・女子・埼玉)

    • 『アンラッキーガール!』(読売テレビ)ここまでのアンラッキーさを持つ人はなかなかいないと思うが、結構身近にありそうなこともあり、「ああこういうことあるよね」と共感できるアンラッキーさもあり、それも含めて楽しむことができた。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『アンラッキーガール!』(読売テレビ)主人公の幸のようにどんなことがあっても前向きでいられるようになりたいです。(中学2年・女子・大分)

    • 『大河ドラマ「青天を衝け」』(NHK総合)挿入歌では洋風な曲が入ってきて、珍しいのであまりしっくりこなかったが、明治の新政府の情景が浮かんできて、工夫されているなと感じた。曲は作品のイメージにもつながるので、ドラマそれぞれのこだわりが見られて面白い。(高校1年・女子・京都)

    • 『よるおびドラマ「この初恋はフィクションです」』(TBSテレビ)内容よりも放送の仕方に関心を持ち、視聴を始めた。ドラマはTBSの深夜帯に放送しているが、テレビ以外に見逃し配信アプリ、更にはYouTubeで全話が見られるという大きな利点がある。見逃し配信アプリでのドラマの配信は今までもあったが、民放の見逃しYouTube配信は初めてでとても驚いた。YouTubeにはドラマの無断転載も多いのでその防止にもつながると思った。また、1話が15分程で隙間時間にも見やすい、ちょうどいい長さでいいなと感じた。ウェブドラマ(1話15分程度で構成されていて、スマホでいつでも視聴できるという点が人気)の要素も大いにあり、若者が見やすいような工夫を感じた。(高校1年・女子・埼玉)

  • 【自由記述】

    • スマホやタブレットなどのインターネット端末が普及し、テレビを見る人が少なくなってきていると感じます。友だちも「ドラマは見るがニュースやバラエティーは見ない」という人が多かったです。なので、私はとても悲しかったですが、逆に言えばドラマは視聴している人がいるということなので、若者などに人気のマンガを実写化するとか、人気の俳優を主人公にするとかすれば見る人も増えると思いました。(中学3年・女子・富山)

    • ドラマが家族の会話の種になることも多いので、ドラマを見るのを楽しみにしています。最近は、海外ドラマをケーブルテレビで視聴することも増えました。(高校1年・女子・東京)

    • 一つのテレビドラマが何かを考えるきっかけになったり、大きく得るものがあったりするということは、とても素晴らしいと感じます。私も『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)の影響を受けて「点字ブロックで立ち止まらないようにしよう、白杖を持った方がいたら気にかけよう」と自分なりに意識するようになりました。改めて、たくさんの人に影響を与えるテレビの偉大さを痛感したし、もっとこうした番組が増えればいいなと感じました。(高校2年・女子・埼玉)

    • テレビドラマを見ていると、本編とは別にいわゆる番外編を配信しているという告知が見られる。私は、多くの番外編を「見なくても本編は楽しめるけど、見れば更に楽しめるかもしれない」くらいの内容だと認識している。しかし、まれに「番外編を見なければ本編に謎が生まれる」ものが存在する。こういった場合、その番外編は本来なら本編に組み込まれるべきものなのではないだろうか。(高校3年・女子・東京)

    • 先日、地震があった時、『報道ステーション』を見ていた。スタジオもすごく揺れていたけど、アナウンサーはそのまま情報を伝えていた。「落ち着いていてさすがだな」と思ったと同時に、机の下に入って身を守る行動をとるべきだったんじゃないかとも思った。(中学3年・女子・京都)

    • 10月7日にあった地震で、テレビをつけると、ニュース番組の出演者全員がヘルメットをかぶって放送を続けていました。テレビは災害時の重要な情報源となりますが、その出演者が即座にこのような対応をし、視聴者に注意を呼びかける体制がとられていたこと、それが実践されていたことは素晴らしかったと思います。また、今回の地震をきっかけに、多くのテレビ番組で防災グッズの紹介や、災害が起こった時にするべき行動について、特集が行われており、テレビが、私も含めたたくさんの人々に災害について改めて考える機会を与えてくれたように思います。(高校1年・女子・東京)

    • 先日地震があった時、アナウンサーが「落ち着いてください」と、繰り返し冷静な声で伝えてくれたおかげで慌てず落ち着くことができました。(高校2年・女子・神奈川)

    • 『ドリフに大挑戦スペシャル』(フジテレビ)という番組がありましたが、それについてネットニュースで「痛みを伴う笑い」というワードがありました。すべてを「痛みを伴う笑い」とひとくくりにしてしまうと何もできなくなるのではないかと思いました。今回のコントは、アクションや効果音、表情などで笑わせていると感じましたが、それすらも「痛みを伴う笑いだから子どもに悪影響だ」などと言ってしまうこと、一部分のシーンを見て、それに至る経緯や流れを見ずに「この番組は良くない」と真っ向から否定してしまうことは、少し違う気がしました。(中学1年・女子・東京)

    • テレビ番組をネットで見るのが当たり前になりつつある。自分自身、一人で見たい時に見たいものだけ見るオーダーメードな形に知らず知らずに適応してしまっていると感じることが多い。だんだんとテレビ局もネット配信との両立をするようになり、これからのテレビはどうなっていくのか疑問が出てきた。(高校2年・女子・東京)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)「そんなこと、テレビで流していいの?」と思ってしまうような際どい内容が新鮮でした。テレビではもちろん、ネットでも得られないような、ためになるディープな知識を知ることができて良かったです。(高校2年・女子・神奈川)

    • 『ゲームゲノム』(NHK総合)番組で取り上げていたゲームの評判については僕も聞いたことがあったが、孤立や分断、人と人とのつながりといった、これほどコロナ禍とリンクした内容のゲームだとは思わなかった。最近のコロナ禍において、物資の配達業者などがエッセンシャルワーカーという生活の根本に関わる大事な仕事として改めて注目されているが、それと似た内容を5年前に考えていたというのはなかなかに驚異的だった。(高校1年・男子・東京)

    • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)見るとストレスを一時的に忘れられるように心がポッと温かくなる感覚になる。例えば、いつも身近にいる家族のような番組だと思う。日曜日の6時になると何となくチャンネルを合わせてしまうし、同じような番組は他にも「サザエさん」だとか「笑点」があるように思う。どれも日曜日の夜に、夕飯を食べながら家族で楽しめる番組だ。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『BS1スペシャル「勝敗を越えた夏2021~ドキュメント日本高校ダンス部選手権~』(NHK-BS1)中学生の妹がダンスをやっており身近に感じました。各校それぞれのダンスの色があり、力がこもっているのが伝わってきました。何においてもそうですが、完成されたものの裏にはたくさんの努力があります。同世代がこうしてカッコいい姿を見せてくれたことは自分にとっても励みになったと思います。(高校1年・女子・東京)

調査研究について

担当の中橋委員から、調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関し、放送局へのアンケート結果についての経過報告がありました。

以上

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