2020年度 第76号

「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」
に関する委員会決定

2021年3月30日 放送局:フジテレビ

見解:放送倫理上問題あり(補足意見、少数意見付記)
当事案は、フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと訴え、委員会に申し立てたもの。
これに対してフジテレビは、番組で「女性を暴力的に描いていない」などと主張するとともに、社内調査の結果を基に、「人権侵害は認められない」と反論した。
委員会は、審理の結果、人権侵害は認められないとしたが、出演者の身体的・精神的な健康状態に関する配慮が欠けていた点について、放送倫理上の問題があったと判断した。その上で、フジテレビに、本決定を真摯に受け止め、改善のための対策を講じることを要望した。 なお、本決定には補足意見と2つの少数意見が付記された。

【決定の概要】

 申立ての対象は、2020年5月19日に放送されたフジテレビの『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(本件番組)。出演していたプロレスラーの木村花氏が放送後に亡くなったことについて、同氏の母親が、娘の死は番組の“過剰な演出”がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと申し立てた。本件番組は、募集によって選ばれた初対面の男女6人が「テラスハウス」で共同生活する様子を映し、スタジオのタレントらがそれにコメントするスタイルのいわゆるリアリティ番組であり、Netflix等で配信され、数週間後に地上波で放送されていた。
 本件放送の中盤、木村花氏が共用の洗濯乾燥機に置き忘れていた重要な試合用のコスチュームを、男性出演者が誤って洗濯、乾燥してしまったため縮んで着用できなくなったことに対し、木村氏が怒りをあらわにする様子が描かれる。木村氏は、テラスハウス住人全員が顔を合わせたところで、男性に怒りの言葉をぶつけ、「ふざけた帽子かぶってんじゃねえよ」と言い、男性がかぶっていた帽子をとって投げ捨てる。この場面が「コスチューム事件」と名付けられ、SNS上で木村氏に対する多数の誹謗中傷を招いた。
 「コスチューム事件」が最初に人々の目に触れたのは3月31日のNetflix配信においてであるが、その直後、木村氏は自傷行為に至る。その後、5月14日には、未公開動画として、女性出演者から落ち度を指摘されたことに対し、木村氏が自身の正当性を主張するかのような動画がYouTube上で公開され、再度誹謗中傷を招いた。5月19日には地上波にて本件放送が行われ、5月23日、木村氏は自死した。
 以上の事案につき、人権侵害については3点の判断を行った。第1に、申立人は、視聴者からの誹謗中傷がインターネット上で殺到することは十分に認識可能であることから、放送局に「本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害」 の責任があると主張した。これについては、表現の自由との関係で問題があり、一般論としてはこうした主張は受け入れられない。ただ、本件では、先行するNetflix配信が誹謗中傷を招き、自傷行為という重大な結果を招いたという特殊性がある。このような場合においては、少なくとも、先行する放送ないし配信によって本件の自傷行為のような重大な被害が生じている場合、それを認識しながら特段の対応をすることなく漫然と実質的に同一の内容を放送・配信することは、具体的な被害が予見可能であるのにあえてそうした被害をもたらす行為をしたものとして、人権侵害の責任が生じうるものと考えられる。
 しかし、本件では、自傷行為後にフジテレビ側は一定のケア対応をしており、また、本件放送を行う前にも一定の慎重さをもって判断がなされたため、漫然と本件放送を決定したものとはいえず、人権侵害があったとまでは断定できない。
 第2に、申立人は、木村氏の言動は、著しく一方的な「同意書兼誓約書」の威嚇の下、煽りや指示によってなされたものだから、自己決定権及び人格権の侵害があると主張する。この点について、若者であるとはいえ成人である出演者が自由意思で応募して出演している番組制作の過程で、制作スタッフからなされた指示が違法性を帯びることは、自由な意思決定の余地が事実上奪われているような例外的な場合である。本件では、制作スタッフからの強い影響力が及んでいたことは想像に難くないが、上記のような例外的な場合にあったとはいえず、自己決定権等の侵害は認められない。
 第3に、コスチューム事件における木村氏の言動が、通常他人に見られたくないと考えられるものでプライバシー侵害に当たるとする主張については、撮影されることを認識し認容していたことなどからして、違法なプライバシー侵害であるとは言えない。
 他方、放送倫理上の問題に関して、3点につき判断した。第1に、それまでの経緯からして、木村氏に精神的な負担が生じることが明らかである本件放送を行うとする決定過程で、出演者の精神的な健康状態に対する配慮に欠けていた点で、放送倫理上の問題があったと判断した。すなわち、リアリティ番組には、出演者のありのままの言動や感情を提示し、共感や反発を呼ぶことによって視聴者の関心を引きつける側面がある。しかし、ドラマなどのフィクションとは違い、真意に基づく言動とは異なる姿に対するものも含め、視聴者の共感や反発は、生身の出演者自身に向かうことになることから、リアリティ番組には、出演者に対する毀誉褒貶を、出演者自身が直接引き受けなければならない構造がある。そして、出演者の番組中の言動や容姿、性格等についてあれこれコメントをSNSなどで共有することがリアリティ番組の楽しみ方となっており、自身の言動や容姿、性格等に関する誹謗中傷によって出演者自身が精神的負担を負うリスクは、フィクションの場合よりも格段に高い。このことなどを踏まえると、出演者の身体的・精神的な健康状態に放送局が配慮すべきことは、もともと放送倫理の当然の内容をなすものと考えられるが、リアリティ番組においては特にそれがあてはまる。しかし、上述のとおり、本件においてはこうした配慮が欠けており、放送倫理上の問題がある。
 第2に、申立人が、ことさらに視聴者の感情を刺激するような過剰な編集、演出を行ったことによる問題があると主張した点については、事実関係が確定できないこと、および、木村氏の怒りの場面は、少なくとも相当程度には真意が表現されたものと理解でき、放送倫理上の問題があるとは言えない。
 第3に、フジテレビの検証が内部調査にとどまった点の評価については、番組による人権侵害等を判断する委員会の基本的任務とは距離があり、本決定では判断を行わない。
 最後に、リアリティ番組の制作・放送を行うに当たっての体制の問題を、課題として指摘せざるを得ない。本決定を真摯に受け止めた上で、フジテレビが木村氏の死去後に自ら定める対策を着実に実施し、その効果の不断の検証を踏まえて改善を続けるなどして再発防止に努めるとともに、本決定の主旨を放送するよう要望する。
 同時に、放送界全体が本件及び本決定から教訓を汲み取り、木村花氏に起こったような悲劇が二度と起こらないよう、自主的な取り組みを進めるよう期待する。

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2021年3月30日 第76号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第76号

申立人
番組出演者の母親
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』第38話
放送日
2020年5月19日(火)
放送時間
午前0時25分~0時55分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1. 放送の概要と申立ての経緯
  • 2. 本件放送の内容
  • 3. 論点

II.委員会の判断

  • 1.委員会の判断の対象
    • (1) 本件番組及びその関連動画の相互関係
    • (2) 委員会の判断の対象
  • 2.事案の概要
    • (1) 本件番組について
    • (2) 木村花氏の本件番組への出演契約の際の状況
    • (3) 本件放送について
    • (4) 第38話のNetflix 配信後の状況
    • (5) 5月14日の未公開動画の配信
    • (6) 本件放送前後の状況
    • (7) SNS対策とSNS上の誹謗中傷の状況
      • ① 本件番組におけるSNS対策について
      • ② 第38話のNetflix配信及び本件放送を受けたSNS上の誹謗中傷の状況
    • (8) 木村氏死去後のフジテレビの対応
  • 3. 「本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害」について
    • (1) 当事者の主張
    • (2) 人権侵害の判断基準について
      • ①「本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害」に関する一般論
      • ② リアリティ番組における、視聴者の行為を介した人権侵害に関する放送局の責任
      • ③ 本件放送の特殊性
    • (3) Netflix 配信の前後から本件放送の前後までのフジテレビの対応について
      • ① Netflix配信前の状況
      • ② 自傷行為後の木村氏へのケアについて
      • ③ 5月14日の本件未公開動画の公開について
      • ④ 本件放送を行うとする判断について
    • (4) 人権侵害についての検討
  • 4. 自己決定権及び人格権の侵害について
    • (1) 当事者の主張
    • (2) 検討
    • (3) 小括
  • 5. プライバシー侵害について
  • 6. 放送倫理上の問題について
    • (1) 本件放送を行うとする決定に際しての出演者への配慮について
      • ① 出演者の身体的・精神的な健康状態への配慮と放送倫理
      • ② 本件について
    • (2)「過剰な編集、演出を行ったことによる放送倫理上の重大な問題」について
    • (3)「検証を十分に行わなかったことによる放送倫理上の重大な問題」について
    • (4) 申立人に対する対応について

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2021年3月30日 決定の通知と公表の記者会見

通知は2021年3月30日午後1時から千代田放送会館2階ホールにおいて、午後3時から紀尾井カンファレンス・メインルームで公表の記者会見が行われた。詳細はこちら。

2021年7月20日 委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み

委員会決定第76号に対して、フジテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が6月25日付で提出され、委員会はこれを了承した。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2021年3月19日

2021年 3月19日

業務についてのお知らせ

BPOは、新型コロナウイルス感染拡大に関する政府の緊急事態宣言の解除を受け、視聴者電話の受け付けを3月22日から再開する予定です。

第158回 放送倫理検証委員会

第158回–2021年3月

2月の視聴者意見を報告

第158回放送倫理検証委員会は3月12日に開催され、2月にBPOに届いた視聴者意見の概要が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2021年3月12日(金)午後5時~午後7時
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第1会議室(千代田放送会館7階)+オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 2月の視聴者意見の概要

2月の28日間にBPOに届いた視聴者意見のうち、新型コロナウイルスのワクチン接種のニュースで注射の映像が頻繁に放送されることに対する批判的な意見などが事務局から報告されたが、個別の番組について特に踏み込んだ議論は行われなかった。

以上

第290回放送と人権等権利に関する委員会

第290回 – 2021年3月

「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」決定を了承…など

議事の詳細

日時
2021年3月16日(火)午後3時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」放送会館7階会議室
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」事案の審理

フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと申し立てた。これに対してフジテレビは、番組において「女性を暴力的に描いていない」などと主張するとともに、社内調査の結果を基に、「人権侵害は認められない」と反論している。
委員会は、これまでの審理をもとにまとめた決定文の最終案が起草委員から示され議論を行った。前回の委員会で残されたインターネットでの配信後の経緯において放送を行ったことや、同意書兼誓約書の存在などを人権侵害や放送倫理上の問題としてどのように判断するかといった論点などについても、改めて議論を行い、最終的に文案の一部に修正を加えたうえで、委員会決定として了承した。これを受けて委員会は、できるだけ早い機会に、申立人、被申立人に対して通知し、委員会決定を公表することを確認した。

2. その他

今年度で退任する委員から挨拶があった。

以上

2020年12月3日

全国の放送局を対象に意見交換会開催

放送倫理検証委員会と全国の放送局との意見交換会が、2020年12月3日千代田放送会館2階大ホールで開催された。また事前に申し込みのあった放送局に対して、オンライン配信を同時に実施した。放送局の参加者は、会場に40人、配信にて視聴したのは97社で、そのアカウント数は298件であった。さらに社内の会議室等で複数名による共同視聴をしたところも多数あった。委員会からは神田安積委員長、岸本葉子委員長代行、升味佐江子委員長代行、西土彰一郎委員の4人が出席した。コロナ禍のため、2020年度に放送倫理検証委員会が意見交換会を開くのは今回限りで、オンライン配信を利用して全国を対象に実施したのは初めてのことである。

開会にあたり、BPO事務局を代表して濱田純一理事長が「この意見交換会はBPOとしても大変重視しており、BPOの活動と放送局の皆さまとをつなぐ非常に重要な役割となっている。これからメインテーマである番組と広告の問題について議論してもらうが、民放連の広告の取り扱いのルールなどにもあるように、放送の番組内容と、広告放送との識別、区別というのは大変重要で、視聴者にとって、放送の効用というものがしっかり伝わっていくための重要な原理だと思う。同時に、広告放送は民間放送が放送を自由で自律的に行っていくための大事な柱でもあるので、この番組と広告の問題というのは、放送局全体として幅広く議論していくテーマである」と挨拶した。

意見交換会の最初は、10月30日に公表した「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題した委員長談話について、以下のとおり、神田委員長が解説をした。
放送基準は全部で152条あるが、3分の1以上は広告に関する放送基準である。理事長から、番組と広告の問題は民放において重要な原理であるとのお話があったが、放送基準における広告にかかる条文の多さはそのことを物語っている。
約3年前に、ある地方局の番組の中で、いわゆるステマの問題が取り上げられたことがあり、2017年5月25日付で民放連が「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」を策定した。
「留意事項」は、まず、「民放は視聴者の利益に資することを目的に、さまざまな情報を番組で取り扱っており、そうした取り組みのひとつとして、特定の商品・サービスなどを取り上げ、紹介することが日常的に行われている」「番組で特定の商品・サービスを取り扱うことは、視聴者に対して具体的で有益な情報提供となる」ということを明らかにしている。
同時に、「留意事項」は、「取り上げ方や演出方法などによっては、広告の意図や目的がなくても、視聴者に『広告放送』であるとの誤解を招く場合がある」ことも指摘している。また、万が一にも「誤解や疑念を持たれることは、民放の信頼やメディア価値の根幹にも関わる」と書かれている。
皆さんには、常にその2つの視点を意識しながら、番組の制作をしていただきたい。委員会も、番組が広告と誤解されることが問題になることがあれば、この2つの視点から考えることになる。つまり、特定の商品・サービスを取り上げ、紹介する番組について、最初から規制ありきではなく、視聴者に対して具体的で有益な情報提供であるという点を前提としたうえで、検討や評価をしているということをご理解いただきたい。
本年、秋田放送、山口放送の番組に関して、広告と誤解されるのではないかとの視聴者意見が寄せられ、委員会は討議を約半年間かけて行ってきた。その経過の中で、本年3月6日に、民放連の放送基準審議会が、「放送基準の遵守・徹底のお願い」という文書を発出した。本文書は、番組と広告の識別に関して、「その取り上げ方は放送責任の範囲内でおのずと決まってまいります。そのうえで、演出や構成などには大いに工夫の余地があるのではないでしょうか。番組の企画から放送前の考査まで、社内横断的なしっかりとした体制を構築し、放送の価値向上と収益の確保に尽力していただきたいと思います」としている。この点について、委員会は、民放連が各局に向けて、自主的・自律的な検討を促す趣旨のメッセージであると受け止めている。また、本文書は、番組と広告の問題とは別に、BPOにおいて過去にあった事例と同様の事例が繰り返し審議入りされていることについて、各局に対して警鐘を鳴らしている。
委員会は、このような動きを踏まえながら、半年間をかけて両放送局の番組の討議を行い、また、番組と広告の問題について、民放各局の自主的・自律的な対応を促すために望ましい結論に向けた議論をし、その結果、本年10月30日付の委員長談話を出すに至った。
委員長談話において触れているとおり、委員会は、これまで3局の事案について2つの意見書を出してきた。その中で、番組と広告の問題について、今後も民放各局で自主的・自律的に判断してほしい、その判断に当たっては「留意事項」を総合的に判断していただきたいということを繰り返し伝えてきた。その趣旨は、意見書で問題になった番組が放送倫理違反であると評価したとしても、そのことが、ある特定の部分を放送しなければ問題なかったということを意味するものではなく、むしろ、たとえば、その番組の中で、仮に問題がある部分があったとしても、他の部分で別の内容の放送になっていれば、いわば広告の印象が減殺され、全体として放送倫理に違反しないとされる余地があるのではないか、言い換えれば、ある特定の部分だけの問題ではなく、番組全体について「総合的に」考えてほしいということである。
通知公表時の質疑応答や意見交換会において、「番組の内容をどのようにすれば広告放送であると誤解を招かれなかったのか教えてほしい」といった質問や、さらには「番組と広告の境目をはっきりさせる明確な基準を示してほしい」という質問・要望も寄せられた。しかし、委員会の守備範囲は放送局の判断基準を作る役割ではない。仮に私たちが判断基準を作ることになれば、民放連が自主的・自律的に策定した「留意事項」を越えて、放送局の手足を縛る基準を作ってしまうことになりかねない。また、「総合的に判断する」ことは、放送局の自主的・自律的な判断を必要以上に阻害しないようにするためであり、決して放送局の判断を迷わせるためではない、ということは委員長談話でも重ねて触れているところである。
もっとも、「留意事項」が策定されてから既に3年が経過しているとしても、委員会で具体的なケースが取り上げられたのは去年以降であり、番組と広告の問題が急にクローズアップされて放送倫理違反という判断が出され、多くの局がどのような対策を講じたらよいか悩んでいることが意見交換等でもうかがわれたところである。そこで、委員長談話において、そのような事情を踏まえ、本問題について放送事業者や民放連が自ら問題点を整理した上で、処方箋を出すことが望ましく、自主的・自律的な取り組みが期待できるのであれば、その成果を待つべきであろうと考えるに至った。なお、自主的・自律的な取り組みが期待できるという1つの事情として、先ほど言及した民放連の放送基準審議会の文書に触れ、「本問題に関する放送局の現場の声を集約しながら、改めてこの問題に向き合う必要があるという民放連の自覚と決意がうかがわれる」と評価させていただいた。
以上のような点を踏まえて、委員会は、「民放連加盟各社または民放連の自主的・自律的な取り組みを当面注視することとする」旨の結論に至った。放送基準92条や「留意事項」の原点に立ち返っていただき、「留意事項」を実質的にまた総合的に会社の中で議論し参照して、よりよい番組作りをしてほしいと思う。委員会が「見守る」というのは、本問題を今後も皆さんと一緒に考えていくという趣旨であり、このような意見交換の機会があれば引き続き一緒に考えていきたいと思っている。
なお、本年9月に民放連の放送基準審議会に私が出席し、本問題について意見交換の機会をいただいた。議事要録が作成され各局に配付されていると聞いているので、どの程度ご参考になるか心もとないが、ご参考にしていただきたいと思う。
ご清聴いただき感謝申し上げたい。

次に、西土委員が「番組と広告の境目について」というテーマで講演をした。
本委員会は番組と広告の識別をめぐる問題を扱い、2つの決定を出している。これらの決定では、対象となった番組について、民放連放送基準第92条及び「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断した結果、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと結論づけた。
決定を公表した後、「何を基準として総合的に判断するのか」という声をよく聞く。この基準については、何よりも皆さんがお作りになった民放連放送基準第92条及び留意事項に依拠して判断する。その際、迷った時には原点に立ち返ってもらいたい。なぜ放送基準第92条及び留意事項が定められたのか、そこが原点になろうかと思う。当然だが、放送局の独立とそれに対する視聴者の信頼を保持することに、第92条の趣旨、目的を見出すことができる。
以上の趣旨に照らして、最終的には視聴者の読後感というか、視聴後感において、番組全体が広告放送であるとの印象を残すかどうかがポイントになるかと考える。つまり、番組の中に広告の要素、特定の商品をPRする要素があったとしても、番組を見終わった後に、例えば全体としてこれは情報番組であるという印象を視聴者に残すかどうかが、重要になる。
この判断のために、留意事項の2において例示として挙げられている「番組で取り扱う理由・目的」「視聴者への有益な情報」「視聴者に対してフェアな内容」など事案に即した多様な要素を番組のテーマや制作に至った背景も含め検討する。こうした検討は、繰り返しになるが、視聴者の知る権利に奉仕する放送の自由を確保するためという視点に立ってのことである。
もちろん、視聴者の知る権利に奉仕する放送の自由を行使するのは皆さんであり、したがって番組と広告の境目の問題は、皆さんがまず自主・自律的に考えていただくことになる。この点について、決定第36号は、決定第30号を引用して、「番組と広告の違い、その境目を認識し、緊張感を持って一線を画す日々の作業は部署を問わず、すべての民放関係者が肝に銘じるべき根本ではないか」と指摘して、自主・自律による対応策を求めている。
濱田理事長が冒頭で述べられた通り、広告は民放各局の自主・自律にとって、また財源という点でも極めて重要である。皆さんが番組と広告の境目の問題に突き当たって苦慮されていることは、私共も重々承知している。綺麗ごとではないことを承知してはいるけれども、国民の知る権利に奉仕する放送のプロの皆さんであれば、視聴者の立場に立って、説得力のある根拠を示しながら、グレーゾーンにある番組と広告の線引きも行うことができるものと確信している。そして、以上の不断の積み重ねにより養われるはずの皆さんの実践的な知を、民放連等を通じて、ぜひとも放送界全体の共有知にしてくだされば、大変嬉しい。それができるのであれば、この問題を扱った本委員会として、せめてもの救いになると考えている。最後に希望を付け加えて、私からの簡単な話に代えたいと思う。
どうもありがとうございました。

このあとの意見交換での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 番組と広告の問題は民放全体の重要な課題でありながら、例えば他局の営業系番組に関する深い情報を聞くことなどはなく個別の問題は表に出て来ないのだが、共有知とするために、委員会がヒアリングなどを通じて経験したことから共有化に向けての方策や方法論として気付いた点があれば披歴してほしいのだが。
A: 委員会決定の対象になった当該局が、その経験値を民放連に伝えるとか、系列局で悩みや苦労を共有して民放連に出してもらい、民放連が何らかの形で文書化するのが筋道立った方法ではないかと考える。(西土委員)
  各事案の意見書、特に委員会の「調査」または「検証」というところには、ヒアリングで制作過程について詳細にお聞きし、委員の受け止めたことが非常に具体的に書かれている。ヒントや共有知としてお役立ていただければうれしく思う。(岸本委員長代行)
  事例研究会であれば、参加している局どうしの意見交換、質疑応答の場があるので知見を共有できると思う。また、各局からの依頼(講師派遣制度)で機会を設けていただければ、率直な意見交換ができると思う。(神田委員長)
   
Q: 今後番組が番組として成立しつつ、ビジネスツールとしても考えていかねばならない時代に、現場にはBPOを恐れるような感覚があるが、新しい取り組みについて委員はどういうふうに考えるのかを伺いたい
A: 大変難しい質問であるが、問題になった時に備えて、きちんと説明できる社内における社内横断的かつ総合的な検討と、それを記録しておくことが必要である。新しい取り組みの内容については私たちにも知見として教えていただきたいし、勉強会などで意見交換していくことも大切な役割であると思う。(神田委員長)
  個人の意見だが、家のテレビで自分の家族が見た時にどう思うか、というのが1つの判断基準になるのではないか。恐れるべきはBPOの審議入りより、視聴者にそっぽを向かれることのはずだ。皆さんと共にトライ&エラーしながら経験値を重ねて、視聴者の信頼を失わない放送を、維持していきたい。(岸本委員長代行)
  番組は放送局が自らの責任で作る。局自身の判断で作られていると視聴者は信じているから、広告放送の中でなく番組の中である特定の商品やサービスが取り上げられると、その商品やサービスに対する好意的印象は高まる。だからこそ、広告主も広告放送ではなく番組の中で、自分の商品やサービスが取り上げられることを期待する。そこに気を付けないと、局の作る番組の中に広告が紛れ込み、視聴者は混乱し、商品やサービスに対する判断を誤ることにもなる。それは、本来局が制作する番組に対する信頼を低下させる恐れもあり、その点が心配である。そうならないためには、局が独自の視点で番組を展開していることが明確になるようにしなければならないのではないか。番組が全部同じ方向での特定の商品やサービスの情報提供になると視聴者の選択肢がなくなるので、番組の制作主体である局の姿が見えにくくなりがちである。番組制作の際に構成や内容に何かしらの手間をかけ、制作する主体が局である点に誤解が生じないようにすることが、放送の領域を自分たちで守ることにつながると思う。(升味委員長代行)
   
Q: 秋田放送と山口放送のローカル単発番組について、委員会は審議の対象としないという結論になったが、その理由について詳細に聞きたい。また、審議入りするか否かの判断基準について「①対象となる問題が小さく、かつ、②放送局の自主的・自律的な是正措置が適切に行われている場合には、原則として審議の対象としない」との考え方は、今後も判断基準の1つと考えても良いのか。
A: 後者の質問については、2009年7月に出した委員長談話の中で、審議に入るか否かの基準についてご指摘の2点の基準を明示しており、現在もその基準に沿って運用している。最初の質問については、議事概要に書いてあるとおりである。討議で終了している案件は、当該局に対してもそれ以上の説明をしていないので、その旨ご理解いただきたい。(神田委員長)
   
Q: 現在、民放連の考査事例研究部会で放送基準の改定作業が始まっているのだが、放送基準の書きぶりやよく分からない点などが委員会で議論になったことがあるか。
A: 「留意事項」において「対価を得て」という点が要件になるのかが議論になった。この点について、民放連に問い合わせたところ、対価の支払いの有無に関係なく「留意事項」は適用がされるとの回答であった。このことは意見書や委員長談話において触れているが、民放連でも改めて各局に十分周知されたほうがよいのではないかと思う。(神田委員長)
   
Q: 番組制作に伴う収益化が放送局にとっては命綱なので営業担当としては守っていきたいのだが、考査上のストライクゾーンが以前と比べて狭まった訳ではないのか。今までストライクだと思っていたのをボールと言われたのが今回の例だった、と解釈しているのだが。
A: ストライクゾーンつまりホームベースの大きさは変わっていない。ただし、ホームベースを通っていなくてもストライクだと思い込んでいた可能性はあるかもしれない。投げる前にきちんと考査をしてほしい。ストライクゾーン自体に変わりはないとしても、永久に変えなくて良いのかという問題はあると思う。時代の変化やメディアの役割の在り方などを踏まえ、民放連や各局において自主的・自律的に検討の余地はあるのかもしれない。(神田委員長)
   
Q: 対価性があっても視聴後感が悪くなく、番組内容が視聴者にとって有益であれば、番組として成立するのかどうかについて聞きたい。
A: 「留意事項」に照らして総合的に判断した結果、特に内容に問題がなければ、対価の支払いの有無にかかわらず、番組として問題ないという判断になると思う。(神田委員長)
   
Q: 質問ではなく要望ですが、2009年にバラエティー番組に対して出された意見書(委員会決定第7号)の中に、バラエティーが「嫌われる」5つの瞬間というのがあってすごく分かりやすかったので、「番組が広告と認識されない5つの瞬間」のような形でまとめてもらえると理解しやすくなると思うのだが。
A: 今回の番組と広告の問題は、民放の信頼やメディア価値の根幹にも関わる問題であり、少し硬い文章にせざるを得なかった。ご指摘の趣旨を踏まえて、今後も分かりやすく説明する機会や工夫をするように努めていきたい。(神田委員長)

意見交換会のまとめとして、神田委員長が、「当面は放送局の自主的・自律的な対応を見守りたいと考えているが、チェックリスト化、マニュアル化という対応ではなく、自主的・自律的に総合的な検討を深めていただきたい」と述べ、「是非お声掛けいただければ、できる限り意見交換の機会を設けていきたい」と結んだ。
最後にBPO事務局の竹内淳専務理事が、「番組と広告をめぐる現状の厳しさはひしひしと伝わってくるが、皆さまの自主・自律に期待することをご理解いただき、コロナ禍でもこういう意見交換の場は今後オンラインも加味して設けていきたい」と挨拶して閉会した。

終了後に実施したアンケートの回答から一部を紹介する。

  • 気になっていた「委員長談話」の詳細な解説を聞くことができて良かった。
  • 番組と広告の境界線については、今後も引き続き取り上げてほしい。
  • 多数かつ関連部署の人が同時に遠隔参加できることがオンラインの最大の利点。
  • 出張しなくて済むので助かる。時間も交通費も節約でき、大変ありがたい。
  • 参加しやすく効果的なので、今後もオンライン形式での意見交換の場を設けてほしい。
  • 必要な資料の事前共有をさせてほしかった。
  • キー局の場合は社員数が多いので、「1社5枠」という配信の制限は厳しい。

以上

2021年2月に視聴者から寄せられた意見

2021年2月に視聴者から寄せられた意見

女性蔑視と受け取れる発言により辞任した、東京オリンピック組織委員会会長の発言を取り上げた番組への意見が多く寄せられた。

2021年2月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,489件で、先月と比較して308件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール97%、電話0%、郵便2%、FAX1%(※電話は今月休止)。
男女別は男性52%、女性18%で、世代別では40歳代27%、50歳代25%、30歳代20%、20歳代13%、60歳以上12%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。2月の通知数は延べ829件【55局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、27件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

番組全般にわたる意見
女性蔑視と受け取れる発言により辞任した、東京オリンピック組織委員会会長の発言を取り上げた番組への意見が多く寄せられた。ラジオに関する意見は80件、CMについては15件あった。

青少年に関する意見

2月中に青少年委員会に寄せられた意見は88件で、前月から51件減少した。
今月は「表現・演出」が27件、「低俗、モラル」が24件、「報道・情報」が8件、「いじめ・虐待」が7件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • コロナ禍における最近の番組を見て、若者がウイルスを感染させている原因とも取れるような印象を受ける。確かに若者は、テレビをあまり見ない傾向があるが、特定の年齢層を批判することは、年代間の分断を生み出す可能性がある。確たる証拠に基づいた報道をすべきだと思う。

【番組全般・その他】

  • 事の発端は、新聞が元会長の女性軽視となるように発言を切り抜きで報道したものを、繋がりがあるアメリカの新聞が翻訳して伝えた記事のせいである。元会長自身の発言は軽率な部分もあるが、本筋では、女性は優秀だと褒めている。それをほとんどのテレビが報道しないのは事実に反する行為だと思う。編集されていない発言の全文を読んだ上で批判するのなら一向に構わない。しかし、一部を切り取った記事で女性蔑視だという意見ばかりを報道するのは不公平であり、視聴者に対する洗脳行為だ。全文を読み、公平な目で報道するようなテレビが出てくることを祈る。

  • 元会長のいわゆる女性蔑視発言について。本当にそのような思想があるのなら弁解の余地はないと思うが、発言の全文ではなく、部分的な切り取りのみで、朝から晩まで全人格の否定ともとれる批判を放送する必要性があったか、大いに疑問である。謝罪会見の本人の態度もいかがなものかと思うが、重大な事件を起こしたわけではない。今回はっきりと分かった事は、メディアがスクラムを組んで、連日批判一辺倒で放送すれば、権力のある有名人の首でも取れるという事だけ。暴走するメディアを監視し、行き過ぎを注意する組織もない。簡単に一人の人生を変える事ができるという流れに恐怖を感じる。メディアにあおられて溜飲を下げる感覚になった国民にも危険を感じる。

  • 昼の番組で、コメンテーターが、老人は社会の害悪かのごとく、老害と表現していた。60歳を超える人たちが、心身の衰えを感じつつ社会で数多く活躍していると思うが、その人たちは不要という意味で受け取った。テレビ放送は公共性を持っていて、共生社会を目指すものと思う。社会で活躍される人たちには敬意を持って接してもらいたい。

  • 昼の番組について。なぜ自分たちが過去に報道してきたのを忘れてしまうのか。司会者も全く普通に無視して、今日知ったみたいに話す。いくら芸人だとしても度が過ぎる。制作側も出演者も恥ずかしくないのか。元会長をいじめ同様に批判。結果、会長を辞任しても、いつまでもVTRやパネルを使って掘り起こして批判。それによりネットでもあおられた人たちによる批判が起こる。そうすると今度はネットの影響という流れを作る。自分たちが火をつけておきながら、反省も謙虚さもなく、ただただ批判するのみ。寄ってたかっての攻撃は許されるのか。会長選出が不透明とか言いつつ、組織委員会の定款も規定もまともに説明せず、まるで人気投票みたいに、いろんな人たちをあげていく。こんな番組をスポンサーもテレビ局の上層部も何とも思わず、ただただ垂れ流し放送。マスコミには自浄作用は働かないのか。国民は不幸だ。

  • テレビは何かといえば政権を責めている。一方、コロナ禍では、「飲食店が苦しいから、時短要請に応じない」という店主の声を同情的に伝えている。深夜まで遊んでいる若者を何の批判もなしに、彼らのコメントを流している。テレビは批判しやすい人や組織を貶めて楽しいのか。それが国民のためなのか。心地よい言葉で人の弱みにつけ込むのは反社会的勢力と同じだ。放送という武器を持った恐ろしい権力者であることを自覚せず、芸人やタレントを使い、世論に名を借りて断罪することこそ怖い。

  • 水曜日の番組を見た。日本の長い歴史の中で、女性はほとんどその権利を制限されて生きてきた。ネット社会になり、ようやく女性を悪く言う事がおかしいと声を上げられるようになり、海外からも批判され、これで少しは日本の男性も反省してくれるかと思いきや、日本はまだまだ人権後進国のようで、抵抗してこのような芽を潰そうとしている感じがする。この番組の企画もまさにそれ。女性を差別しないでという人間をフェミニストと呼び、それがあたかも悪いイメージであるかのように放送する。差別され続けた人たちが、差別しないでほしいと言うことの何が悪いのか。差別してきた側としては耳が痛いだけなので、どうにかこのムーブメントは収まってほしいのではないか。それを笑いにしてテレビで放送する事に悪意しか感じない。

  • 深夜の番組を見た。客観的に見て、注意力、交渉能力に問題があるAD(アシスタントディレクター)を、「ヤバい奴」という見下しのニュアンスが濃い、内輪のイジリがとても不愉快だった。スタッフの、彼の挙動に対して放たれる高笑いが高慢さに満ちていた。彼は、「自分自身も困っている」と語っているのに、それを病気である可能性すら頭に浮かばない制作側の扱い方が恐怖でしかない。裏方の彼がイジられ、笑い物にされる事は本当に彼自身が望んでいるのか。決してヤバい奴というくくりで、エンターテイメントとして消費してはいけない。彼が、自分の扱われ方に対して、立場がADということもあり、言われる、されるがままだとしたら、一方的なパワハラ企画である。

  • このコロナ禍において、なぜテレビ番組ではマスクをしないのか。スタジオは密室である。一方的に倫理的な対応をメッセージしておきながら、その人物はマスクをしない。ようやく、議員もマスクして、会食も控えるようにした。テレビ関係者は以前と変わりなく、つまらないことに騒ぎ、タレントは不祥事を繰り返す。視聴者は言っていることの内容ではなく、見たもので判断すると言われている。マスクをしようと誰ひとりしない、してはいけないと指示があるのか、誰も語らない、異常な世界である。ますますテレビ離れに拍車がかかるのではないか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で後輩芸人を無理やり冬の川に入らせて笑っていた。嫌がっていることを無理やりさせるのが面白いとしていることは問題だ。中高生に人気の芸人なのでお手本となるような番組作りをしてほしい。

【「低俗、モラル反する」との意見】

  • バラエティー番組でグラビア・アイドルの女性の下品な姿を皆で笑ったり、芸能人のトイレ事情をクイズの問題にしていた。親子で見ていて気分が悪くなる内容だった。21時台という子どもも見る時間帯ならば、家族で見て安心して見られる、役に立つ番組であってほしい。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 小学生数人がひき逃げされるというニュースがあった。ドライブレコーダーからの映像だったが、事故時の映像を生々しく放送しており衝撃的だった。ひき逃げに遭った子どもたちや家族への心理面に配慮した内容であったのか疑問を感じる。

  • コロナ関連のニュースでワクチン注射の場面が放送されるが、体に針が入っていく映像がアップで映されるのは生理的に耐えられない。なぜ注射の風景ではだめなのか。コロナの注射は深く刺すので、子どもは恐怖心を抱くのではないか。

第231回 放送と青少年に関する委員会

第231回-2021年2月

視聴者からの意見について…など

2021年2月24日、第231回青少年委員会をオンラインで開催し、7人の委員全員が出席しました。
委員会では、まず1月16日から2月15日までに寄せられた視聴者意見について議論しました。
かつて敵対する王女から虐待を受けた主人公の少年が、その後、王女に復讐するという深夜のアニメ番組での残虐な行為や性的なシーンについて「暴力、性犯罪を助長させる内容で青少年に影響が大きい。深夜とはいえ地上波で放送するべきではない」などの意見が寄せられました。これについて委員からは、「過激なシーンは映像が配慮されており、深夜帯の放送であることをどのように考慮するか難しく、討論に進む必要はないのではないか」「アニメであること、深夜帯であることが免罪符のようになっていないか。番組の担当者はどのように考えているのか意見交換の場があってもよいのではないか」などの意見が出されました。
2月の中高生モニターのリポートのテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」で、課題番組は、2020年度民放連賞〔テレビ教養番組〕最優秀受賞作品『ザ・ノンフィクション おじさん、ありがとう~ショウとタクマと熱血和尚~』(フジテレビ)でした。26人から報告がありました。
モニターからは、
「私は『あと半歩ふみだせ』というおじさんの言葉が印象に残りました。(寺に預けられていた)タクマは高校に進学し、ショウも中学校に復帰して、今は夢を持った社会人として活躍しています。自分ができる中で『あと一歩』をふみだそうというおじさんの熱い思いが伝わってきました。(中略)私の周りには非行に走ってしまった人やいじめを受けている人はいないので、あまり知りませんでした。しかし、この番組を見た後で、いじめや非行、その支援について調べようと思いました」
「今回のVTRを見終わって気づいたことは、出てくる人々みんなが愛にあふれていて幸せに見えることだ。(中略)もちろん辛いことだって複雑な事情だってある。それでもあそこには笑顔がたくさんあってみんなが、これが正しい、あれが正しいといちいち全部言われなくても仲間がいて一緒に前に進んでいける。(中略)きっと彼らは警察に補導されたことも特別非行に走ったこともないような私よりもすっと自分の人生を見据えてまっすぐ前に進んでいけているように感じる」
「十数年前の映像から特定の人物をクローズアップし、(熱血和尚の)廣中さんとの歩みを紹介するこのスタイルはドキュメンタリーならではでないでしょうか。(中略)私はドキュメンタリー番組に対して『雰囲気が重い番組=見づらい番組』という認識で、自分から進んで見ることはあまりなかったのですが、そんな私でもいつの間にか見入っていて、終わったときには涙がこぼれました。ドキュメンタリー番組は、見る側はその事柄について全く知らないことが多いと思います。そのため視聴者側から表現の工夫の仕方などを挙げるのは難しいです。制作の方々は視聴者に内容が伝わる最善の表現方法をこれからも見つけていってほしいと思います」
「逃げれば今度は追われる側となり、余計に息苦しくなってしまうことをおじさんは子どもたちに伝えたかったのだろうと思いました。中高生という、嫌なことには投げやりになってしまいがちの年頃の子どもに『逃げるな』というメッセージを与えることは、きっとその後の人生の基盤になっていくのだろうと思いました。逃げない、すなわち諦めない姿勢こそが、おじさんが子どもたちに与えた社会スキルだと思います」
などのリポートが寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は、3月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2021年2月24日(水)午後4時30分~午後6時30分
場所
オンラインで開催
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

かつて敵対する王女から虐待を受けた主人公の少年が、のちにその王女に復讐するという深夜のアニメ番組において、残虐行為や性的シーンについて、「暴力、性犯罪を助長させる内容で青少年に影響が大きく深夜とはいえ地上波で放送するべきではない」「残虐行為、薬物を使い人格を崩壊させる、性的行為などモラルに反する内容で青少年に悪影響だ」といった意見が寄せられました。
これに対し委員からは、「子どもの見る時間帯なら問題だが、過激なシーンは映像がボカされたり真っ暗だったり、あからさまに描かれていない。深夜帯の放送であることをどのように考慮するか難しく、直ちに“討論”に進む必要はないのではないか」「他のアニメと比較した場合、この番組を特定のものとして取り上げることによって、他にも多くの作品を取り上げることになり、それによって表現の幅が狭くなってしまわないように注意する必要はある」などの意見が出された一方で、「アニメであること、深夜帯であることが免罪符のようになっていないか。番組の担当者はどのように考えているのか意見交換の場があってもいいのではないか」「登場人物がかわいく描かれていて、台詞も軽くて子どもが見ても大丈夫と勘違いされる恐れもあるので、保護者には気をつけてほしい」「今では夜中であっても録画で見られてしまう。録画制限のようなことはできないのだろうか」「アダルトアニメみたいな過激なものが、いくら映像がボカされているとはいえ、地上波に乗せることに関しては疑問に思う」といった意見が出されました。

学園ドラマにおいて、女性教師が未成年の俳優が演じる男子生徒を上半身裸にして強引にマッサージしたり、逆らったら部活の試合に出さないと言うシーンに関して、「男子生徒役は18歳にも満たない。番組内ではセクハラと表現しているが、これは性暴力だ。誤解を招き、役者の精神が心配だ」といった意見が寄せられました。
これに対し委員からは「映画では18歳未満の出演者が、性的な場面を演じると児童ポルノに入ってしまう可能性もある。劇場公開にかかわるセンシティブな問題となる」「“児童”と言われる分類に入る役者が演じる性的なシーンについて、テレビの制作者はどのような認識で臨んでいるのか知りたい」「役者を職業としてプロでやっている人が未成年で、性的なシーンを演じる場合、プロだからいいのかどうなのか、なかなか難しい議論だ」といった意見が出されました。

中高生モニター報告について

33人の中高生モニターにお願いした2月のテーマは、「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」で、27人から報告がありました。いつものように、「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」についての欄も設けました。
課題に選んだ番組は、2020年度民放連賞 [テレビ教養番組]最優秀受賞作品
『ザ・ノンフィクション おじさん、ありがとう~ショウとタクマと熱血和尚~』(フジテレビ)。愛知県岡崎市の寺の住職・廣中邦充さんと、非行や虐待、いじめなどの理由によって親元で暮らせなくなった子どもたちとの11年間の歩みをしっかりと見つめた番組です。番組のタイトルに出ているショウやタクマも、ある時期、廣中さんのもとで過ごしました。番組では、子どもたちに「おじさん」と呼ばれ、慕われている廣中さんが、癌に侵されてもなお、亡くなる直前まで子どもたちに手を差し伸べ続ける姿を追っています。多くのモニターが、廣中さんの子どもたちへの愛情に感動し、また、番組に登場する子どもたちが自分と同世代であることに興味を持ち、自分の置かれた環境に照らしながら視聴した様子が伺えました。そして、思春期の子どもの成長には廣中さんのような本当に信頼できる大人の存在が必要であること、また、ショウやタクマの友情から、気持ちを分かち合える仲間は尊いものであることを読み取っていました。中には、「SNSでさまざまな人と簡単につながれてしまうことで、以前より子どもが抱える問題が複雑化し、危険性を増している今の時代には、駆け込み寺のような存在がより一層必要なのではないか」という感想を持った人もいました。
「自由記述」に寄せられた内容は多岐にわたりました。平日夜に放送されているニュース・報道番組で、キャスターがマスクを着用したままニュース原稿を読むことへの賛否やバラエティー番組でのコロナ対策に関する感想といった「コロナ禍の放送」という視点で書かれた意見、そして、2月13日夜に発生した福島県と宮城県で震度6強を観測した地震に関する記述。これらはいずれも複数名から寄せられていました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)に5人が、『ドラマ「ハルカの光」』(NHK Eテレ)に4人が、『ねこ育て いぬ育て』(NHK-BSプレミアム)に2人が感想を寄せています。

◆委員の感想◆

  • 【【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

    • 多くのモニターがのめり込んで視聴したようだ。自分の知らない世界、自分とは異なる環境から素晴らしい出会いによって立ち直った人たちの存在を知れたことがうれしかったということが、リポートからひしひしと伝わってきた。

    • これまでドキュメンタリーをあまり見たことがなかったというモニターが結構多かった。そのため、率直に、「自分か知らない世界があった」という驚きの声が寄せられていた。異なる境遇にある人への理解を深めたり、どうすれば問題が解決するのか考えたりしたようで、ドキュメンタリーの良さがしっかり伝わったのではないかと思う。

    • 廣中さんに心を寄せて書いているモニターが多かった。中には、廣中さんの人間性、懐が深く、おおらかで笑顔を絶やさない様子を見て、「私もおじさんのような人になりたいと心から思った」と書いたモニターもいた。中高生に、このように思わせるということは、とても良い番組だった証しだと思う。

    • 中高生モニターは中1から高3までの子どもたちだが、ショウやタクマなどの登場人物は年齢が近く、自分のことと重ね合わせながら考えてくれたモニターもいた。ショウが廣中さんに付き添われて、学校の担任に会いに行くシーンを見て、「学校というのはもっと合理的で、自由で、広い視野が持てる環境になってほしい」というような今の自分の環境における不満や問題意識を記述したり、「廣中さんのように自分のことを支えてくれた人に感謝する気持ちを持った」と感想を寄せたり、考察を深めながら視聴した様子が伺えた。

    • ショウの中学校の担任が、最初、事なかれ主義であるかのように描かれていて気になった。しかし最後にナレーションで、「先生がとてもよくケアしてくれた」というようなことが伝えられ、とても細やかにバランスを取っているのだなと感じた。

    • 最後まで、絶対に、自分のそばにいてくれる人がいるということが、子どもの成長に大きな影響を与えるとモニターみんな伝わったと思う。番組の中に出てきた家庭に問題があったり、「おまえなんか死んでしまえ」と親から言われてしまったりした子どもたちが、廣中さんのおかげで救われた様子に、私自身も感動した。

    • 廣中さんとショウとタクマの3人でバットを持った少年たちに話をつけに行く、というシーンについて、シーンの切り取り方が格好良くなりすぎていて少し疑問を持った。あのシーンはきっちり話をつけるというだけで終わっていたが、もしぶつかり合いになっていれば事件になった可能性もある。おそらく、放送されたシーンの前後には、話をつけるための調整など、もっと違うシーンが撮影されていたのではないかと思う。その部分を短く放送しても良かったのではないか。

    • 廣中さんの生き方が強く印象に残ったと感想を寄せたモニターは多かったが、登場する子どもたちに気持ちを寄せて考えたモニターは意外に少なかったような気がする。自分とは別世界で生きる子どもたちには共感しづらかったのだろうか。

◆モニターからの報告◆

  • 【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

    • 「仲間」の大切さなど「仲間」について学べる、とても良い番組だと思った。演出が上手だったのか、題材が良かったのかわからないが45分とは思えないほどあっという間に番組が終わった。それほど番組に引き込まれた。(千葉・中学1年・男子)

    • 登場人物が、自分とちょうど同じ年代の人たちだったので、興味を持って視聴できました。私がいちばん印象に残った場面は、ショウが地元の不良たちから殴られたとき、後日、おじさんも同行して、その人たちを呼び出して、交渉をしていた場面です。普通だったら、「もう地元には戻るな」で終わるだろうに、ちゃんと話をつけて、そして、最終的には、ショウは地元の中学校を卒業できました。地元に戻れたのも、おじさんが、逃げずに向き合うことの大切さを、身をもってショウに示したからだと思います。ただ、主な登場人物のタクマとショウの会話の中で、「金が無くなったら、恐喝していた」とか、ショウとおじさんとの会話で「バイクを盗むときは、マイナスドライバーとハンマーで」という言葉があり、どれだけ、過去に悪いことをしてきたのか、ということを伝えたくて、この場面が番組内に取り入れられたのだと思うのですが、私は不必要に感じました。なぜなら、恐喝されたり、バイクを盗難されたりした被害者の気持ちは置いてきぼりで、加害者目線の、しかもあまり反省の色もないままの発言に感じ、視聴者によっては、「金が無いときは恐喝すればいい」「マイナスドライバーとハンマーでバイクを盗めるのか」と参考にする人もいるのではないか、と思ったからです。悪事の具体的な行動や方法については、番組内ではあえて触れない方がいいのではと感じました。(長崎・中学1年・女子)

    • 2回ほどリストカットの跡が残った腕が出てきたのが、心に刺さった。思春期の子どもたちの精神状態が現れていて、大人たちに伝えることはでいると思うが、私はトラウマになるくらい怖かったので、腕にモザイクをかけてほしいと思った。(宮城・中学1年・女子)

    • 子どもたちを預かって、お金まで払って、とても愛を感じました。おじさんの周りにいるとみんな笑顔になって、人としてお手本になるような人だと思います。私もおじさんのような人になりたいと心から思いました。(山形・中学1年・女子)

    • 私は「あと半歩ふみだせ」というおじさんの言葉が印象に残りました。タクマは高校に進学し、ショウも中学校に復帰して、今は夢を持った社会人として活躍しています。自分ができる中で踏み出そうというおじさんの熱い思いが伝わってきました。また、子どもたちからおじさんへの感謝の気持ちもよく伝わってきました。私の周りには非行に走ってしまった人やいじめを受けている人はいないので、あまり知りませんでした。しかし、この番組を見た後で、いじめや非行、その支援について調べようと思いました。(岡山・中学2年・女子)

    • 本当にいい番組だと思いました。題材がとてもいいというのもありますが、番組の構成がしっかりしているので、見ていて考えさせられることが多くありました。このような番組はもっと宣伝をしていたほうが視聴する人も増えて、ノンフィクションの需要というのがより明確になると思いました。(埼玉・中学2年・女子)

    • 寺で過ごす若者たちと和尚さんのありのままの姿を映し出しているような感じでいいなと思いました。(沖縄・中学3年・男子)

    • 強い思いは人を変えることができるのだとよく分かった。私はボランティア活動ができる人に憧れている。廣中さんのようにはいかなくても、周りの人をよく見て、相手の気持ちを考えて行動することから始めていきたい。(東京・中学3年・女子)

    • この番組では非行に走ったという少年や少女たちを決してかわいそうに描いたり恐ろしく描いたりしていない。私たちとは事情や環境も違うはずなのに、身近に感じるほど対等に描いていると感じた。そして、今回のVTRを見終わって気が付いたことは、出てくる人々みんなが愛にあふれていて幸せに見えることだ。出て来る映像のほとんどが、みんなが笑い合っていて幸せそうだった。もちろんつらいことだって複雑な事情だってある。それでもあそこには笑顔がたくさんあってみんながこれが正しい、あれが正しいといちいち全部言われなくても、何が正しいのか、正しいとは何なのかを自分で見つけ出して前に進める。分からなくなっても仲間がいて一緒に前に進んでいける。私はそういったことは簡単なようで難しいと思う。私はそんな彼らがすごいと思った。きっと彼らは警察に補導されたことも非行に走ったこともないような私よりも、ずっと自分の人生を見据えてまっすぐ前に進んでいけているように感じる。(東京・高校1年・女子)

    • 特に印象に残っている場面は、ショウが学校に復帰するために担任の先生のところに和尚さんと話しに行った場面です。そこで担任の先生が、ショウに対して、学校に戻ってきてほしくないような口調でショウのことを叱りました。その時、和尚さんが、ショウのことを全面的に守り、担任の先生を注意したのです。ショウは自分の味方になってくれる大人がいると知り、とても安心したと思います。それを見て、私はまるで自分のことのようにうれしく感じました。このような心温まる番組が、コロナで悲しいニュースばかりの今の状況に求められているのではないかと感じました。(東京・高校1年・女子)

    • 和尚さんのように、身近に頼れて、寄り添ってくれる人がいるのは心強いなと思います。番組を見て、自分にも支えてくれた人がいたかもしれないと思い返し、感謝するきっかけとなりました。自分も人に寄り添えるようになりたいと思います。(千葉・高校1年・女子)

    • この作品を通して廣中さんの考え方や人生を少しですが知ることができました。だからなのか、最後の廣中さんが亡くなり、お葬式でかつて廣中さんにお世話になった人たちが泣きながら弔う場面で、思わず私も泣いてしまいました。それほど感情移入がしやすかったです。私はこの作品に出てくる人ほど厳しい人生を歩んでいるわけではありませんが、それでも胸に響いてくるものがありました。(愛知・高校1年・女子)

    • 自分は非行に走る人と無縁の生活をしてきたので、このような人たちがいることに驚いた。暴力団とつながると危険なことや足を洗おうとすれば筋を通せと言われること、未成年の薬物依存は、別世界の話だと思っていた。誰しもワルになった背景があり、更生できるということが分かったような気がした。自分はワルじゃないと思うけど、駆け込み寺のような存在は近くになくて、この状態に例えようのない不安を覚えたり、虚無を感じる人っているんだろうなと考えた。(東京・高校1年・女子)

    • 十数年前の映像から特定の人物をクローズアップし、廣中さんとの歩みを紹介するこのスタイルはドキュメンタリーならではなのでしょうか。このスタイルだと視聴者側は登場人物に対して感情移入しやすいので、自然に作品の意図・内容が入ってくるので気軽に見られてとてもいいと思います。私はドキュメンタリー番組に対して「雰囲気が重い番組=見づらい番組」という認識で、自分から進んで見ることはあまりなかったのですが、そんな私でもいつの間にか見入っていて、終わったときには涙がこぼれました。ドキュメンタリー番組は見る側はその事柄について全く知らないことが多いと思います。そのため視聴者側から表現の工夫の仕方などを挙げるのは難しいです。制作の方々は視聴者に内容が伝わる最善の表現方法をこれからも見つけていってほしいと思います。(熊本・高校2年・男子)

    • ショウのことを途中までは心配しながら見ていたのですが、最終的には中学校にも行くことができ、大人になって仕事をちゃんとしていて、とても安堵しました。和尚さんの頑張りもありますが、本人の頑張りがあったので、立派になられたのかなと思います。(長崎・高校2年・男子)

    • 人間のもろさを強く感じました。見た目は強そうだけど、実は人一倍心が弱った少年たち。和尚さんとの出会いは、彼らに生きることの意味を伝えるだけでなく、彼らが心の奥底でずっと求めていた本当の「愛」を教えるすごく貴重なものだったのだと思います。(東京・高校2年・女子)

    • 特に印象に残ったのは食事のシーンと、和尚さんが子ども一人ひとりの様子を見ているという2点だった。みんなで一緒にご飯を食べること。これは親の愛を十分に受けてこなかったり、親の仕事の都合で一人で食事を済ませたりしている子どもにとって大切な環境であり、その食卓が成長につながっていくのではと感じた。また、子どもたちの家族が抱える問題をも見通してしまう、和尚さんのような人は、核家族化やSNSの普及により、昔に比べて一層子どもが抱える問題が増え、複雑化した現在において重要な存在であるように思う。(千葉・高校2年・女子)

    • 逃げれば今度は追われる側となり、余計に息苦しくなってしまうことを、おじさんは子どもたちに伝えたかったのだろうと思いました。中高生という、嫌なことには投げやりになってしまいがちの年頃の子どもに「逃げるな」というメッセージを与えることは、きっとその後の人生の基盤になっていくのだろうと思いました。逃げない、すなわち諦めない姿勢こそが、おじさんが子ども達に与えた社会スキルだと思います。(東京・高校2年・女子)

    • さまざまな問題を抱える子どもを見てきた廣中住職もまた、昔はタクマと同様にヤンキーでした。ただ、そんな彼だからこそ、生活に悩む子どもを受け入れ、児童施設では決して癒されることがない部分にまで真摯に向き合ってくれ、叱ることなく、まずは笑顔で迎えるその場所は、時代が変わろうとも息苦しさを感じる生活の受け皿として、とても重要な役割をしているなと思いました。また、何より、自分も学校に悩み、少し自暴自棄な時期があったため、寺のような悩みを相談できる場所があれば、親を長い間困らせるようなことはなかっただろうに、と感じました。最後に住職の廣中さんが言っていた「逃げるなー」は、現実から目をそらし、ことを闇雲に終わらせ、あのときに行動を起こしておけばよかったと後悔させないために発せられていて、何もかもが中途半端に終わる自分にとってかけがえのない言葉になりました。(高知・高校3年・男子)

    • 今の社会の問題とは何か、正しい家族、人間関係の在り方とは何かということを考えさせられました。今、社会問題になっている親から子どもへの虐待、その逆である子どもから親への暴力のもとになる親と子どもの見えない溝、そんな溝の橋渡しをする役目を担ってくれていたのがこの番組で紹介されていた通称熱血和尚である廣中邦充さんだと思いました。今、核家族化や近所付き合いのなくなりなど、周りの人たちとの関係がなくなっている状況で、路頭に迷ったり人生に悩んだりしている子どもが多くなっていくかもしれません。和尚のように橋渡しをする。というのはなかなかできないと思いますが、話を聞いてあげたり、親の愚痴なども聞いてあげたりしてお互いのストレスを軽くし、関係に少しでもプラスの貢献ができるような人になりたいと思いました。ですが、それが余計な一言にもなるかもしれません。そんなときに、こんな和尚がいる駆け込み寺のような場所があってほしいなと思わせられる番組でした。(茨城・高校3年・男子)

    • 私は今、悩むことやしんどく思うことが積み重なっていますが、この番組を視聴したことで、放っておいても時間が解決することがあるし、生活や人との関わりの中で解決策が見つかることもあるのではないかと考えられるようになり、少し気持ちが軽くなりました。(宮城・高校3年・女子)

  • 【自由記述】

    • コロナ生活も、早いもので、もう1年となりましたが、そんな中でもテレビの存在は極めて大きいものだと改めて感じています。ちなみに、わが家は家族が在宅しているときは、ずっとテレビが付きっぱなしです。(長崎・中学1年・女子)

    • 朝の情報番組を見ていると、時々、有名人や芸能人が出演されていますが、正直「うるさいな」と思うことがあります。叫んだり、数人で騒いだりするシーンも見られ、コロナの状況を踏まえても、やや不適切な行為だと思います。(愛知・中学2年・女子)

    • 私は最近コロナの緊張感が緩んでいるように思います。世の中の空気を映し出し、全体の意識に大きく影響を与えるのはテレビだと思うので、気を引き締めるべきときは、テレビでも、もっと注意を呼びかけてほしいなと思います。(千葉・高校1年・女子)

    • バラエティー番組のひな壇で横にはアクリル板が立てられていても前後にはないときなど、感染対策として正しく効果を発揮できているのだろうかと不安に思ってしまうことがあります。心配してしまって番組に集中できないこともあるので、表情をしっかり見られないのは残念ですが、出演者がマスクを着用している場面があってもいいのではないでしょうか。(宮城・高校3年・女子)

    • 今のテレビ番組はコロナの感染対策も十分されていて安心して見ることができています。強いて言うならば、番組のはじめにどんな感染対策をしているか紹介してもらえるとそのテレビ番組への信頼も上がると思います。(愛知・高校1年・女子)

    • 『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)で、キャスター同士がスタジオ内で会話するときにマスクを着用することにした件について。インターネット上でも称賛の声が上がっていましたが、私はこの取り組みに疑問を抱きました。マスクをするとキャスターの口の動き・表情がわかりづらく、(2月時点では)この番組は字幕放送に対応していないため、特に聴覚障害を持っている方などはニュースの内容が分かりづらいのではないかと思いました。(熊本・高校2年・男子)

    • 『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)コロナの状況の中、テレビ東京のアナウンサーがマスクを着けたままニュースを報道したことについて、私は、緊急事態宣言の緊張感を取り戻すことができて良い試みではないかと思いました。(東京・高校2年・女子)

    • 今シーズンのドラマは、簡単に人が死んでいく、残酷な死、暴力的な死が、とても多いように思います。命の重さは、ドラマでは描ききれないところもあり、とても不安になります。そんな中、『木曜ドラマ「にじいろカルテ」』(テレビ朝日)は、助け合って生きる姿が描かれていて、今のコロナ禍に、柔らかな気持ちになります。メディアは、視聴者に生きることのすばらしさを伝えてほしいと願います。(群馬・中学3年・男子)

    • 先日の地震を受け、新型コロナウイルスが流行する中での避難方法、ポイント、現状をメディアで流してもいいのではないかと思いました。メディアには影響力があるからこそ正しい情報、国民の役に立つ情報を流してほしいと思いました。そして地震で不安になっている人もいると思うので、少しでも心が落ち着く情報を流してほしいと思いました。(埼玉・中学2年・女子)

    • つい先日の福島県沖での地震で久しぶりに大きな揺れを自宅で感じ、東日本大震災から10年たつのかということも思い出しました。人間は忘れやすい生き物とも言われていますが、メディアなどを通して記憶を風化させず、これからの災害の予防として、いかしていくこともできる生き物だと思います。自分が将来大人になってもそんな記憶を風化させない番組が続いていてほしいなと思いました。(茨城・高校3年・男子)

    • いつも1時間の番組が、放送時間を拡大して2時間、3時間になるのが最近多い感じがします。延長が多くて、ときには見飽きてしまうこともあるのですが、放送局側としてはどのようなメリットがあるのでしょうか。(東京・高校1年・男子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)ちびまる子ちゃんは昔から面白いという印象がありましたが、今見ても面白かったです。ボケとツッコミがあって、間もお笑いみたいで、面白いポイントを押さえているからかなと思いました。気を付けて見てみると、背景がよく変わったり、BGMもたくさん流れていて、よく作り込まれているのが分かりました。ちょっとお馬鹿なエピソードが小学生らしくてよかったです。(千葉・高校1年・女子)

    • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)時代のギャップを感じました。ちびまる子ちゃんの世界では、まる子の家は大家族で、また彼女は、おかっぱでサスペンダーの服をいつも着ています。このような光景は、最近だと街に全く見られないので、新鮮で、かつ懐かしさとともに心がほっこりしました。時代とともにバラエティーなどテレビ番組の形態は進化していきますが、アニメの世界観はもとのままで居続けていてほしいと思いました。(東京・高校2年・女子)

    • 『ドラマ「ハルカの光」』(NHK Eテレ)このドラマを視聴して、光は人の視界を照らすだけでなく、人生に悩む人に明るい未来へと続くヒントをくれる不思議な力を与えてくれるんだと感じました。(高知・高校3年・男子)

    • 『ねこ育て いぬ育て』(NHK-BSプレミアム)動物を飼う大変さがよく分かった。私はいつか保護犬・猫を飼いたいと思っていたが、番組を見て私には無理だと痛感させられた。一見楽しそうに見える番組だが、動物を軽はずみに飼いたいと言わせないような番組だと思った。(東京・中学3年・女子)

    • 『パオガオ』(琉球朝日放送)動物園にいる動物のことを紹介している番組だった。動物の身体的特徴や食事の仕方などなど、細かい部分まで紹介しているので、その動物の生態をよく知ることができ、実際に行って確認してみたくなった。(沖縄・中学3年・男子)

調査研究について

  • 調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関し、3月に実施する各放送局を対象としたアンケート調査の最終確認を行いました。

以上