第190回 放送と人権等権利に関する委員会

第190回 – 2012年11月

イレッサ報道事案のヒアリングと審理
無許可スナック摘発報道事案の審理…など

「肺がん治療薬イレッサ報道に対する申立て」事案のヒアリングとヒアリング後の審理を行い、本事案の「委員会決定」の起草委員会を発足させることになった。「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の「委員会決定」最終案を了承し、本決定の通知・公表を11月27日に行うこととなった。

議事の詳細

日時
2012年11月20日(火) 午後3時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案のヒアリングと審理

本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性や正確性、公正さに欠けた報道により人権を侵害されたと申立てがあったもの。フジテレビは、番組に人権侵害も放送倫理に抵触する部分もないと反論している。
この日の委員会では、申立人とフジテレビの双方に対し、個別に事情を聞くヒアリングを実施した。
申立人側は、申立人とその代理人の計5人が出席した。申立人は、「私の娘はイレッサを承認直後に服用し、間質性肺炎で亡くなった。しかし、その後、承認前から間質性肺炎による致死的な副作用報告があったことがわかり、以来約10年間、そうした注意喚起を怠った国や製薬会社の責任を裁判で問い、娘のような被害が起きないように人生を賭けて闘っている。しかし本件放送は、私の娘のケースと安全対策等が講じられた後にイレッサ治療を受けているがん患者とを対比的に描くなど、あたかも私がイレッサの有効性を理解しないまま、がん患者のイレッサ服用を妨げる活動をしているかのように伝えた。がん患者支援の方々からも非難や注意を受け、私は生きざまを否定されたような思いだ」と訴えた。
一方、フジテレビからは、番組担当ディレクターと放送当時の番組編集長ら5人が出席し、「本番組はイレッサに感謝しているというがん患者の声を聞いたことを端緒に、高齢社会に生きる私たちが薬とどう向き合えばよいのかを考えてもらう機会になればと願い制作した。番組ではイレッサをめぐる10年間の動きを俯瞰する視点で多様な意見を紹介した。視野をできるだけ広く柔軟に持ち、いろいろな意見を客観的で公平、公正に伝えるため、何度も推敲を重ね映像も何度も確認した。申立人とがん患者を対立的に描いたつもりはないし、申立人の立場も正しく伝えており、人権侵害に当たるとは考えていない」等と述べた。
双方合わせて3時間に及んだヒアリング後の審理では、各委員がひとりずつ意見と感想を述べ、議論した。この結果、12月上旬に起草委員会を開催し、「委員会決定」原案を12月18日の委員会に提出してもらうこととし、そのうえでさらに議論を詰めることになった。

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の審理

本事案は、テレビ神奈川が本年4月、神奈川県警による無許可営業のスナック摘発と女性経営者の現行犯逮捕を現場で取材し、4月11日の『tvkNEWS930』で1分強のニュースとして放送したことに対し、この女性と家族から「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や、実名、自宅の住所等まで放送したのはプライバシーの侵害」等と申立てがあったもの。テレビ神奈川は、「通常の実名報道原則に基づいて放送した。申立人の基本的人権についても十分慎重に検討した」等と反論している。
この日の委員会では、2回の起草委員会と委員会審理を経てまとめられた「委員会決定」最終案について確認を行い、これを了承した。また、本事案の決定は、本年5月に修正された判断のグラデーションが適用される最初の事案となるため、通知・公表時に「新しい判断のグラデーションンの適用にあたって」と題する委員長談話を出すこととなり、この点についても了承された。
この結果、「委員会決定」の申立人、被申立人に対する通知と記者会見での公表は11月27日(火)に行われることとなった。
(追記:通知・公表は予定通り11月27日に行われた。決定本文および委員長談話はこちらから)

「国家試験の元試験委員からの申立て」事案の審理

本事案は、TBSが今年2月25日に放送した『報道特集~国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた一冊の書籍』で、国家資格である社会福祉士の試験委員だった大学教授が、試験委員就任前に執筆しその後も改訂を続けていた著作物が過去問題の解説集に該当する等、試験委員としてふさわしくない行為があったと放送され、名誉と信用を毀損されたと申立てたもの。
申立人は、番組では「疑念を招く」程度の行為を取り上げてあたかも申立人が試験問題を漏洩したかのように視聴者に印象付けるなど個人攻撃が行われたと主張している。これに対してTBSは、「問題漏洩等にはいささかも言及していない。試験委員だった申立人の行為が社会福祉士試験の公平性・公正性に疑念を招いたのではないかと問いかけたものだ」と反論している。
この日の委員会では、起草担当委員から本事案の論点とヒアリングでの双方への質問項目案について説明が行なわれた後、意見を交わした。論点としては、番組の意図と放送内容が整合していたかどうか、番組が申立人に対する過剰な非難・攻撃になっていなかったかどうか、社会福祉士国家試験の試験委員としての申立人の行為に不適切な点がなかったかどうか、等があげられた。
委員会では12月4日の委員会でさらに検討を重ね、12月18日の委員会で申立人、被申立人の双方に対するヒアリングを行うことを決定した。

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・14件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 12月4日に盛岡で予定されていた東北地区のBPO加盟放送事業者を対象とする放送人権委員会委員との意見交換会は、衆議院の解散・総選挙のため延期されることになった。日程を変更し今年度中に実施する。
  • 増加する事案の審理の迅速化を図るため、12月4日に臨時で委員会を開くことになった。これにより12月は委員会開催が2回となり、次回は12月4日(火)、次々回は12月18日(火)に開かれる。

以上

第138回 放送と青少年に関する委員会

第138回 – 2012年11月

昼間のテレビドラマの性表現について
中高生モニターについて

第138回青少年委員会は11月27日に開催され、10月16日から11月15日までに寄せられた視聴者意見について討論するとともに、11月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。また、2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会について事務局から概要を説明するとともに、2013年度中高生モニター募集の実施要項と、2013年度青少年委員会活動計画案についても了承された。

議事の詳細

日時
2012年11月27日(火) 午後4時30分~6時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

【視聴者意見について】

「性表現が過激、子どもが見たらどうするのか」といった視聴者意見が多数寄せられた昼間のテレビドラマについて委員間で討論した。多岐にわたる議論が行われたが、再度論点を整理するため、委員会内にチームを立ち上げ、継続討論することとした。その他、担当委員および事務局より視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで討論し、審議対象とするべき番組はなかった。

【中高生モニター報告】

11月は「報道・情報・ドキュメンタリー番組」の企画書を作ってもらい27人から報告が届いた。
「報道番組」と「情報番組」の境界が分りづらくなっている現状を反映し、中高生モニターの企画書でもその傾向が現れていて、「情報系報道番組」的な企画書が半数以上を占めた。中高生にも分りやすい番組作りを目指し、好感度の高いタレントを起用したり芸能ニュースを取り上げたりするなど工夫を凝らした企画が多かった。
はっきりと「ニュース」をタイトルに出している企画書は5本あり、中でもpodcastやfacebookを使った新しい形を提案しているのが目を引いた。
「ドキュメンタリー」には、これまでのような日本人目線の作り方ではなく"世界からの視点で"考えることを提案したり、これからの自身の将来を見据えた「職業」について、また「アメリカ大統領の一日」を追いかけたり、「人権を考える」などの企画書があった。
サッカー、スケート、剣道など、スポーツや、趣味の「俳句」を扱った企画もあった。

委員の所感

  • 世界の出来事をBSやCSで視聴できる今の状況を反映して、幅の広い企画があがってきている。

  • 企画書を読んでいて、情報番組と報道番組の境はもう意識されないのだなと、あきらめの境地になった。

  • ふだん政治に対して批評しているコメンテーターを、現役国会議員たちが批評する『私ならこうする!』という企画は逆転の発想で、たいそう面白く読んだ。

  • 「地下鉄サリン事件」の企画を読んで、もう事件の全体像を知らない世代が増えてきていて、すでに歴史になってしまっていることに「はっ」とさせられた。こういった番組が作られる必要性を感じた。

  • 「若者は世界がすべて理屈で割り切れると信じすぎている」という企画は、自分たちの世代では考えられなかった発想で、ネット等で訓練された新鮮な意見だった。

  • 若い人に日本や世界の問題点について考えてもらうという企画があったが、現代という時代をどう読み解くのかは、生きていくのに一番大切なテーマであり、教養とはそういうものだと思った。

  • ちょうど解散・総選挙の時期だが、選挙に対するテーマが一つも入っていないのが特徴だ。大人のやっている政治に対して微妙な感覚のずれがあって、魅力を感じていないのかもしれないという点が気になった。

  • 熟してはいないが、今は中高生にこんな発想があるんだということを丁寧に番組制作者に伝えてゆけば、良いヒントになるのではないか。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント

◆企画1.『世界で一番権力を持つ人の一日~アメリカ合衆国大統領を追う~』  (神奈川・中学2年男子)

【ねらい】
僕は、11月6日に再選を決めたオバマ米大統領のドキュメンタリーを作りたいです。アメリカ合衆国の大統領は、いったいどんな一日を過ごしているのでしょうか。世界で一番権力を持っているともいえるアメリカ大統領の一日を追いかけます。何時に起きて、何を食べ、誰に会い、どんな仕事をしているのでしょうか。大統領の専用機は、いったいどんなふうになっているのでしょうか。「ホワイトハウス」と言えば、記者会見で見るところしか知りませんが、他にもたくさんの部屋があると思います。そもそも、大きさはどのくらいなのでしょうか。何人くらいの人が働いているのでしょうか。また、日本の総理大臣とアメリカの大統領について、選び方や役割など、その違いについてしっかりと伝えたいと思います。司会は、『報道ステーション』(テレビ朝日)でおなじみの古舘伊知郎さん。何人かの解説者にも出演してもらいます。例えば、『週刊こどもニュース』(NHK)に出演していた池上彰さんや、大学の教授などです。難しくなりがちなアメリカの政治の話を、小学校高学年の人にも分かるように説明してもらいます。
視聴対象は小学校高学年からです。小・中・高校生に興味を持って見てもらいたいので、午後7時から9時に放送します。

【フジテレビ 情報企画部プロデューサー(『新・週刊フジテレビ批評』担当)の感想】

みなさんの企画、私が皆さんの年頃に、こんなにキチンとした考え方を持って世の中を見つめていたかなあと思いながら、楽しく読ませていただきました。モノを作る上で大切なのは、「これが知りたい、伝えたい」という「思い」です。いずれの企画からも、その「思い」がストレートに伝わってきました。中でも、心に刺さったのは、『世界で一番権力を持つ人の一日』です。私はこの世界に入って、もうすぐ25年。経験から、「伝えたい」ことより、時として「できること」を先に考えてしまう傾向にあります。大統領の一日、朝から晩まで是非見てみたいです!常識に縛られない自由な発想と思いを大切にしてください。

【テレビ東京 報道局取材センター社会担当デスクの感想】

中高生に向けてもっとニュースを身近でわかりやすく伝えたい、という意欲にあふれた企画書がたくさんありました。裏を返せば、通常私たちが放送しているニュースでは中高生に興味を持ってもらうような伝え方ができていないのかなと感じました。また、『世界で一番権力を持つ人の一日』は素直に私も見てみたいと思いました。大統領の仕事の紹介にとどまらず、そこを入り口に現在アメリカが抱える問題へと内容を発展させていければ、番組として深みのある面白い企画になるのではないでしょうか。

◆企画2.『同情と尊敬』  (長野・中学2年女子)

放送時間帯:夜7:00~
視聴対象:中高生、大人

【ねらい】
人権についてのドキュメンタリー番組。主に、全国水平社を創立した西光万吉さんの話。明治維新後に出された解放令。それにより、今まで差別された人々はどう変わったか、差別は無くなったと思われたが、"同情"と名前を変えただけで実は続いていた。そんな中、水平社を創立した西光さんの思いなどを伝える番組。
視聴者へ伝えたいこと:私は最近、中学で人権の授業で全国水平社を学びすごく感銘を受けました。見えない差別と戦った人々のことを、より多くの人に知ってもらいたいのでこの番組を考えました。差別の現状を視聴者に伝えたいです。

【NHK 編成局副部長の感想】

部落差別に限らず、人間は弱いために、他人を低くみることで優位にたたないと生きていけないいきもののようです。全国水平社を創立した西光万吉についてのドキュメンタリー、とても大切な企画です。わたしも『その時歴史が動いた』(NHK)という番組で2008年4月に「人間は尊敬すべきものだ~全国水平社創立~」という番組をプロデュースし、夜10時に総合テレビで全国放送しました。ただし、西光が目指したのは「同情」ではありません。「尊敬」です。なぜ「同情」を得ることを嫌い「尊敬」を得ることを目指したのか、それをテーマにして、ドキュメンタリーを構成したら、心をうつ番組になると思います。がんばってください。

◆企画3.『世界からの視点で』  (東京・高校2年女子)

【ねらい】
世界にはさまざまな問題がありますが、最近よく思うのは、どうしてもそれらの問題について"日本人目線"でしか考えられないという事です。そこで、私が今回提案する番組では、初めにその1週間のうちに世界で起こった出来事などのニュースを報道します。次に、世界各国(10ヵ国くらい)の老若男女をゲストとして招いてその国の立場、その国の国民の意見などを教えてもらいます。日本人は一般に"内向き志向"といわれていて、「海外に出て行こう」「世界で活躍したい」という思いを持つ人は、依然として世界的にみるとその数は少ないと思います。こういった番組を作ることで、視聴者は国際問題により多くの関心を持ち、さらに中立的な考えを持つことができるので、ゆくゆくは世界に出て行こうと考える人も増えるのではないかと思います。

◆企画4.『無題』  (東京・高校1年男子)

【ねらい】
先日、父親から「読んでみろ」と、日経ビジネス10月号の『世界に誇る日本の商品100』という雑誌を渡されました。読んでみると世界で売れている百種の日本商品が紹介されていて、今、日本はダメだと外国と比較して嘆いている人が多い中、ひょっとするとそんな悲観論は間違っているのではないか、払拭できるのではないか、という可能性を感じその期待を強く抱きました。「へー!」と思える内容が満載でしたが、「へー!」って思える内容であることはドキュメンタリー番組には特に必要ですよね。そこで、僕は世界に通用している日本の文化や商品やサービスなどを紹介していくドキュメンタリー番組ができたら間違いなく興味深い内容になるだろうし、なにより元気のない今の日本に必要だと思います!

【テレビ朝日 報道局チーフプロデューサー(『人生の楽園』担当)の感想】

番組として実現できそうだと思ったのは、世界に誇る日本の商品を紹介するという企画です。視聴者に「へー!」と思わせたい、「日本はダメだ」という悲観論を払拭したい、という意図がはっきりしている点が、良いと思いました。ただ、どのような番組スタイルにするのか、どのように紹介していくのかなど、"見せ方"に新鮮なアイデアを提案してほしかったです。またタイトルがついていなかったのは、残念!魅力的なタイトルは、企画=番組の重要な要素です。

◆企画5.『いくぞJ1!松本山雅』  (長野・高校1年女子)

放送時間帯:平成24年11月11日(日)AM11:00~13:00
視聴対象:長野県内のプチ山雅ファンと予備軍
キャスター:中田英寿さん(は無理だと思うので)、松木安太郎さん、元川悦子さん(松本市出身スポーツライター)

【ねらい】
昨年、奇跡的とも言える後半戦の粘りでサッカーJ2に初参入した松本山雅FC。ホーム観客動員数はJ2の中ではJ1昇格を決めた甲府に次ぐ2位。順位も反町監督のすばらしい采配で1桁以内も夢ではない。私たち信州人にサッカーの魅力を教えてくれた監督はもちろん選手やサポーターをねぎらい、来年はJ1昇格できる力があることを全国へ発信できるような特番を、最終試合のキックオフ前に放映できるような企画にしたい。

◆企画6.『五・七・五!!』  (群馬・高校1年女子)

放送時間帯:19:00~20:00
視聴対象:10~20代
キャスターほか:ベッキー(司会)、道尾秀介(作家)、堺雅人(俳優)、MIWA(歌手)、宇多喜代子(俳人)

【ねらい】
私は小学4年生から俳句を作っています。俳句というと難しいとか松尾芭蕉といったイメージしか持たれません。この番組では普段なじみのない10代~20代の人にも興味をもってもらうため、高校生による俳句甲子園を取り上げ、また現代にも通じるような俳句を紹介してゆきます。大会だけでなく、普段の学校での活動の様子も紹介し、その中で俳句の作り方や季語といったことを視聴者の方に知ってもらいます。

◆企画7.『よくわかる!日刊15分ニュース』  (滋賀・中学1年男子)

放送時間帯:配信は、朝5時、夕方5時(pod castによる)

【ねらい】
僕は、誕生日プレゼントにiPod を買ってもらいました。そのiPodで聞くことができるpod castがとても気に入って、毎日色々な番組を聞いています。pod castは、好きな時間に好きな場所で聞くことができるので便利です。
今回の企画に際して、テレビ、ラジオ以外のものでもよいかなと思って、考えてみました。時間は15分間で、1日2回の配信。pod castには色々なジャンルのものがあるけれど、毎日配信されているニュースはNHKくらいで、とても長いニュースのときもあるのが難点。毎日短時間のニュースなら、聞きやすいし、中学生や高校生が日々のニュースに関心を持てることが一番のねらい。

【TBSテレビ 報道局編集部長の感想】

若い世代が満足できるニュース番組の提案がたくさんありました。また、人気タレントをMCに起用という提案も多く、テレビは見やすくなければということを実感しました。人気のある人からの情報発信に触れたいということなのかもしれません。たいへん参考になりますし、実現性が高い提案だと思います。「松本山雅」「俳句」などは、個人の趣向を強く反映させた提案で、レギュラーの番組の中でいかに多くの人に向けて制作できるかがカギになるのでしょう。「米大統領」「人権」など、ドキュメンタリーのカテゴリーに入るものは、是非、見たいテーマです。ただし、テレビは非常に多くの人がお客さんですから、作り手だけの関心に陥らないようにする、という姿勢が大切だと思います。また、「日本文化を紹介」、「世界からの視点」は、内と外、相反する方向からのアプローチですが、テレビが知らせきっていないテーマがまだまだたくさんあるのではと思いました。最後に、「iPod向けのニュース番組」。同様の試みは既に始まっています。若者には当たり前のニーズでしょうし、近未来のメディアを考えさせる提案でした。

◆企画8.『オウム地下鉄サリン事件について特集した情報番組』  (北海道・中学3年女子)

【ねらい】
次々とオウムの指名手配犯が捕まって話題になりましたが、サリン事件は17年前に起こりました。直接事件を知らない、覚えていない人が増えています。私も直接は事件を知りません。そこで、事件を知らない年代を対象にしたオウム地下鉄サリン事件の情報番組があればいいと思います。私たち「若者」は世界が全て理屈で割り切れると信じすぎていると思います。理屈に合わないことは起こるわけがないと、信じすぎている気がします。理屈にあわない、自分たちとは違う考え方をしている人たちがいること、何の恨みをかっていなくてもある日被害者にされることがあることを知るのは重要だと思います。

【日本テレビ 報道局プロデューサー(『news every.』担当)の感想】

デイリーの報道番組を制作していますと、フォーマットに固執して新しい表現方法の開発を忘れがちになります。今回、企画書等を拝見し学生の皆さんの「発想の斬新さ」「切り口の新鮮さ」に驚き大変刺激になりました。また、オウム事件など過去の大きな事案について、世代間の認識を議論する番組企画提案がありましたが、非常に興味深く実現出来ないか検討したいと思いました。

【自由記述】

「ぜひ見てみたい」「見て良かった」番組について書いてもらい、20人から報告があった。

  • 私は、日本テレビ11月3日(土)の『NEWS ZERO特別版 櫻井翔 世界を、取材する。』を見ました。映像の中にはふだん見るアメリカの様子とは相反するような、テントで生活する方々の姿がありました。私は、苦しい生活をおくっている人の最低限の願いが、大統領のもとに届いているのかと不安になりました。(東京・中学2年女子)

  • 見て良かった番組は、『探偵ナイトスクープ』(朝日放送)です。笑ってしまうような依頼でもその道のプロや学者さん、芸能人と一緒に解決します。笑いあり涙ありの番組なので大好きです。(大阪・高校1年女子)

  • 最近BS放送で、毎朝5時から『ワールドWave』(NHKBS)という番組を見ています。日本のニュース番組では知ることのできない世界の出来事を知ることができる他、英語の勉強にも役立っています。(東京・高校2年女子)

  • 友だちにすすめられて見た『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(フジテレビ)。タイトル通り「そんなこと、あるわけないよ」と思いながらも、ついつい引き込まれるように見てしまいました。(神奈川・中学2年男子)

  • 『クイズ!オーサカ理由学』(毎日放送)を見ました。ふだんから慣れ親しんだ"オーサカ"の謎の理由の答えがいっぱいあって、おもわず「へぇーっ」と言ってしまうばかりでした。(大阪・高校2年男子)

  • 『世界ナゼそこに?日本人 3時間スペシャル~知られざる波瀾万丈伝~』(テレビ東京)という番組はぜひ見たいです!(東京・高校1年男子)

  • 最近「見てよかった」と思う番組があまりないように感じます・・・。(大分・中学3年男子)

【2013年度青少年委員会活動について】

  • 2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会について事務局から概要を説明するとともに、2013年度中高生モニター募集の実施要項と、2013年度青少年委員会活動計画案についても了承された。

2012年度 第47号

「無許可スナック摘発報道への申立て」に関する委員会決定

2012年11月27日 放送局:株式会社テレビ神奈川

勧告:放送倫理上重大な問題あり(補足意見・意見付記)
テレビ神奈川が2012年4月、神奈川県警による無許可営業のスナック摘発と女性経営者の逮捕を現場で取材し、4月11日夜の『tvkNEWS930』でニュースとして放送したことに対し、この女性と家族から「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や、実名、自宅の住所等まで放送したのはプライバシーの侵害」等として申立てた事案。

2012年11月27日 第47号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第47号

申立人
スナック経営者とその家族
被申立人
株式会社テレビ神奈川
苦情の対象となった番組
『tvkNEWS930』(月-金 午後9時30分~10時)
放送日時
2012年4月11日(水)
午後9時35分頃から1分9秒

本決定の概要

テレビ神奈川は2012年4月11日夜の『tvkNEWS930』内で、神奈川県警によるスナック女性経営者の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)違反の無許可営業の現行犯逮捕を実名、年齢、住所とともに放送した(以下、「本件放送」という)。冒頭にアナウンサーの「カメラは強制捜査から逮捕の瞬間までをとらえていました」とのコメントがあり、摘発現場を撮影した映像の存在を強調した構成だった。全体が1分9秒で、そのうち本人とはっきりと分かるかたちで、この女性経営者を写し出した映像が計4回37秒あった。顔のアップ映像や警察の車に連行される場面も含まれていた。
また、テレビ神奈川は本件放送を同社が運営するニュースサイトに動画とともに掲載した。ニュースサイトの項目は1週間で自動的に削除されたが、同社のサイトおよび、facebookページ、twitterアカウント等を通じて当該動画と静止画を閲覧できる状態が1か月以上続き、この女性経営者から抗議があるまで放置されていた。
本委員会は、女性経営者とその家族から本件放送によってプライバシー、肖像権を侵害され、名誉を毀損された等の申立てを受けて審理し、決定に至った。決定の概要は以下の通りである。
現行犯逮捕の事実を放送した本件放送の内容に誤りはないが、事案は風営法違反の中でも悪質性の比較的軽微な「無許可営業」(最終的に罰金50万円の略式命令)である。本件放送は、映像の存在を強調し、繰り返し女性経営者の映像を流した。その結果、この女性に対する過剰な制裁的・懲罰的効果が生じ、本人とその家族に精神的苦痛を与えた。この点で、本件放送は、プライバシー等に関する明確な権利侵害は認められないものの、「報道の自由」という観点を考慮しても、放送界がこれまで積み重ねてきた事件報道のあり方をめぐる議論を十分に踏まえた形跡はなく、人権への適切な配慮を著しく欠いており、放送倫理上重大な問題がある。
また、同社のサイトにテレビニュ―スがそのまま掲載され、かつ長期間閲覧可能な状態で放置されていた点、サイトの管理に問題があった。今後、適切な管理を行うことを要望する。

(決定の構成)

委員会決定は以下の構成をとっている。

I.事案の内容と経緯

  • 1. 申立てに至る経緯
  • 2. 放送内容の概要
  • 3. 申立人の主張
  • 4. 被申立人(放送局)の答弁

II.委員会の判断

  • 1. はじめに
  • 2.「報道の自由」の観点
  • 3. プライバシー侵害と名誉毀損について
  • 4. 肖像権をめぐって
  • 5. 放送倫理上の問題
  • 6. 抗議に対する対応

III.結論

  • 補足意見
  • 意見

IV.審理経過

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2013年2月26日 委員会決定に対するテレビ神奈川の対応と取組み

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目 次

  • 1.広報及び放送対応
  • 2.社内での報告・周知等
  • 3.申立人に対して
  • 4.番組審議委員会への対応
  • 5.意見交換会の実施
  • 6.報道部内での対策
  • 7.動画配信について
  • 8.放送倫理向上に向けた取り組みについて

第65回 放送倫理検証委員会

第65回 – 2012年11月

iPS細胞心筋移植手術実施との誤報について
尼崎事件の顔写真取り違え問題について

第65回放送倫理検証委員会は11月9日に開催された。
委員会が今年7月に出した日本テレビ『news every.』「食と放射能」報道に関する意見について、当該局から提出された対応報告書を検討した結果、これを了承し、公表することにした。
新聞の一面トップの誤報記事が、テレビでも報道されたiPS移植のニュースについて討議した。裏づけ取材の方法から、このニュースを事実と判断した根拠まで、当該2局から自主的に提出された報告書も参考にして、広範な議論が行なわれた。その結果、ニュースとして大きく扱った局に対して、これを事実と判断した根拠の説明を改めて求め、次の委員会で討議を継続することにした。
NHKとすべての民放キー局がミスをした尼崎事件の顔写真取り違え問題についても、写真の入手経路や確認方法について、提出された報告書をもとに討議した。各局とも複数の関係者から確認をとった上で放送していること、間違われた被害者から各局の訂正放送と謝罪を受け入れてこれ以上触れないでほしいという意向が表明されていることから、審議の対象として意見を公表するまでの必要はないという結論になった。しかし、容疑者写真の取り違えは、それ自体が重大な過ちであるので、19年前の古い集合写真から抜き出した顔写真を容疑者の写真として放送することには、たとえ複数の関係者が同一性を認めていても、なお記憶の薄れなどから間違いが起きる危険があることを認識して放送の可否を判断する必要があるので、それを踏まえた再発防止の取り組みを社内で確立しなければならないという委員会の討議結果を、BPO報告などで公表することにした。

議事の詳細

日時
2012年11月9日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構〔BPO〕」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
■日本テレビ『news every.』「食と放射能」報道の対応報告書を了承
■iPS細胞心筋移植手術実施との誤報について
■尼崎事件の顔写真取り違え問題について
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、立花委員、服部委員、水島委員

■日本テレビ『news every.』「食と放射能」報道の対応報告書を了承

日本テレビは、 『news every.』 の「食と放射能」報道に関する意見(委員会決定第14号)を受けて、社としての再発防止策を報告書にまとめ、10月30日、委員会に提出した。
それによると日本テレビは、1年余り前、同じ報道番組の「ペットビジネス」事案に続いて類似の過ちを繰り返したことを踏まえて、▽番組制作上の問題点を根本から見つめ直す「番組制作向上委員会」(委員長は大久保社長)を始動させたこと▽従来の取材ハンドブックを発展的に改訂し、各種ガイドラインや社内研修用テキストなどを加えた新しい取材ハンドブックを作成・配布したことなど、多様な改善策を実施している。委員会は、意見書で指摘した過去の教訓を現場で「血肉化」するための取り組みが幅広く進められている点を評価して、この報告書を了承することにした。(報告書の全文はこちらに掲載)

■iPS細胞心筋移植手術実施との誤報について

10月11日、一部新聞が一面トップで報じたiPS細胞心筋移植手術実施のニュースは、その後国際会議でポスター展示発表を行った研究者の虚偽発表であることが明らかになったが、放送局では2局が報道番組で当該研究者のインタビューを含むニュースとして伝え、また、ほとんどの局の情報番組がこの新聞記事を紹介する形で報じた。
ニュースとして伝えた2局のうち、日本テレビは11日朝から夜のニュースまで移植手術が実施されたことが事実であることを前提として大きく扱った。テレビ朝日は当日の夕方ニュースの最後で、国際会議で発表があった事実だけを短く伝えた。
虚偽の疑いがあると判明したあと、2局は13日から15日にかけて、お詫びや報道に至った経緯を説明する放送を行い、その後、当委員会に対して、経緯報告書を自主的に提出した。(新聞記事の掲載前から取材していたNHKは心筋細胞移植手術実施のニュースとしては全く放送せず、12日夜のニュースの中で何故放送しなかったかを説明した。)
委員会では、新聞の特ダネ記事を追いかけて報道する際に、どのような裏づけ取材が行われたのか、事実と判断した根拠はどこにあったのかを中心に、意見交換が行われた。
討議の結果、移植手術実施が真実であることを前提として、iPS細胞の作成方法や手術実施の経緯、患者のその後の状態までニュースで詳しく伝えた日本テレビに対しては、真実と判断した根拠は何だったのかに重点を置いた報告書を改めて求め、次回の委員会で討議を継続することになった。一方、移植を行ったと日本人研究者らが国際会議で公表したという事実のみを短いニュースで伝えたテレビ朝日については、国際会議でそのような公表があったこと自体は事実であるから、あくまでその紹介のみのニュースであれば、誤報とは言えないとして、議論を終えることにした。
新聞の記事の紹介を中心に放送した民放各局の情報番組についても、コメンテーターの解説などに問題点が認められるものの、基本的には新聞で報じられたことを当該の新聞記事を使用して紹介するという枠を出ていないことから、誤報とは言えないとして、議論を終了した。

【委員のおもな意見】

  • この問題は2つに分けなければいけない。ニュースで流したところと、情報番組で新聞の紙面を見せたところと。それは違う性格のものだと思う。
  • 新聞がどんなに大きく報道しようと、自社で内容も確認しないで報道してよいはずがない。
  • 自分が自ら取材に行ったものではなくて、受身から始まる取材に対してどう裏づけを取るかという問題だと思う。自分から攻めて行っていない時のスタンスや対応に弱いところがあると思う。
  • テレビが独自にスクープしてこれは大きな間違いでしたということなら少し違うが、どう見てもこれは新聞の後追いだろう。テレビにもっと裏付けの取材しなさいということは言えるが、それ以上のことは言えない。
  • 間違ってはいけないけれど、間違うことはある。その時に単に反省しましたとか、以後気をつけますということになると、物事がどんどん痩せ細っていくという感じがする。BPOはそうした役割をしているのではないのだからいろいろな対応があって良いと思う。
  • 情報番組は、新聞の記事を紹介しただけでなく、ある種のコメントを重ねている。その部分に関しては番組として見なすべきであろう。情報番組でお詫びしていないのは、自主的自律的な是正が図られていないということではないだろうか。
  • 結局、真実と信じて放送したことにどれだけ合理性のある根拠があったのかということになる。

■尼崎事件の顔写真取り違え問題について

尼崎の連続不審死事件では、活字メディアだけでなく、NHKとすべての民放キー局も、事件とは無関係の人の顔写真を容疑者として放送した。後日、「あの写真は私だ」という女性の訴えが弁護士経由で寄せられ、各局とも間違いを認め、お詫び放送をした。すべての局が全く同じ写真を容疑者の写真だとして間違って使用したという今回のようなケースは前代未聞といえる。
この事件は、その特異性から社会の関心も高く、管轄の在阪局だけでなく、在京局からの応援を含めた共同取材体制が組まれたことから、委員会はキー局と在阪の系列局に対して、写真入手の経緯や放送すると判断した経緯などの報告を求め、それを基に議論が展開された。
各局が入手したのは、同じ集合写真の中から接写したもので、報告書によると、提供者の証言だけでなく、複数の関係者にあたり、「似ている。間違いない」との声が多かったことから、放送に踏み切った局がほとんどである。
しかし、この写真は19年前のものだった。委員会では、いくら複数の関係者から確認をとったと言っても、19年前であれば、当時を知っている人に確認をとっても記憶の薄れがあろうし、最近の容疑者の知人であれば、19年前の容疑者については想像に任せるしかない状況になる。しかも集合写真の小さな画像だったことを考えれば、いっそう同一性の確認は困難であったはずである。複数の関係者への確認作業を行うというマニュアルを守っていても、このケースでは当人かどうかの根拠にはならないのではないか、集合写真から一人を抜き出して拡大した写真を見せて、この人ですかと聞いた局もあったが、その方法では、判断する人を強く誘導する結果になるからそれ自体適切でないなどの意見が出された。
討議の結果、委員会では、ミスが確認された後、各社とも速やかなお詫び放送をし、今回の問題点について自主的に検証していること、また間違えられた当事者が、各放送局の謝罪を受け入れ、これ以上の騒ぎにならないことを望んでいるとのことなどから、審議入りしないこととした。
ただし、容疑者写真の間違いは人権上大きな問題であることを肝に銘じ、今後間違いを繰り返さないために、従来の型通りの手続きや手法だけではなく、何が真の確認になるかの社内議論を深めて、実効性のある再発防止策を確立して欲しいとの要望を、BPO報告やホームページを通じて、各局に伝えることになった。
さらに、委員会では、警察が異例の措置としてメディアに提供した写真を各局とも繰り返し使っているが、裁判員制度に関連して、使い方によっては犯人視報道につながる恐れがある、という意見もあったことを付記して、これを契機に、事件報道における容疑者の顔写真の扱いについて、各局が改めて検討や確認をするよう要望することにした。

■ANN(テレビ朝日系列)中・四国ブロックと検証委員会との意見交換会開催

テレビ朝日系列の中・四国ブロック4局との意見交換会が、10月30日、松山市の愛媛朝日テレビの会議室で行われた。これまで大阪・福岡・札幌で行われた意見交換会は、いずれもエリアの全局が対象だったが、今回のように、ある系列局だけで行うのは初めて試みであった。
放送局側からはブロックの4局から部長クラスを中心に12名、また委員会からは吉岡委員長代行、香山委員が参加した。
意見交換会では、まず両委員から、委員会での論議を通じ、日頃感じている点が紹介された。吉岡委員長代行が、「スタッフが何故今、放送局で働いているのか、何を伝えたいのか。放送倫理はスローガンではなく、その使命から生まれるのではないか」と直近の事例を交えて語り、香山委員からは「ミスは起きることを前提として、些細なミスでも報告しあい、皆で共有することが大切だ」と、自身が属する医療現場で今や常識になっている例を挙げ、グループワークでシミュレーションしていく研修方法が提案された。
これを受けて、各局からは、若いスタッフとのコミュニケーションをめぐる悩みや取材のありかたなどについて様々な意見が出され、予定時間まで活発な議論が交わされた。
各局からは、「意見を交わすうちに熱くなった」「これまで持っていた“高みからの監視機関”という見方が変わった」「エラーを少なくしていくヒントをもらった」などの感想が懇親会などで語られた。
さらに「他系列の局の人が一緒だとなかなか本音は出ないものだが、ここまでさらけ出せたのは気心が知れていたからだろう。こうした形式をどんどん採って欲しい」との声も多かった。

以上

2012年10月に視聴者から寄せられた意見

2012年10月に視聴者から寄せられた意見

ニュース報道に関する批判意見が多かった。「尼崎連続変死事件」の報道では、事件の中心人物とみられる被告の顔写真を、取り違え、数日間使用し続けたことに、人権侵害だとの意見が寄せられた。また、iPS細胞を使って心臓手術を行ったという報道について虚報に踊らされたマスコミのあり方を問う声があった。

2012年10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,899件で、先月と比較して827件減った。
意見のアクセス方法の割合は、メール69%、 電話26%、 FAX3%、手紙ほか2%。
男女別は男性62%、女性33%、不明5%で、世代別では30歳代33%、40歳代30%、 20歳代 18%、50歳代12%、 60歳以上5%、10歳代2%の順になっている。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は863件【41局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、19件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

10月の視聴者意見は1,899件と先月より827件減った。
ニュース報道に関する批判意見が多かった。「尼崎連続変死事件」の報道では、事件の中心人物とみられる被告の顔写真を、まったく別人のものと取り違え、数日間にわたって使用し続けたことに、人権侵害だとの意見が寄せられた。また、iPS細胞を使って米国で心臓手術を行ったと嘘の記者会見をした人物への取材についても、批判が多かった。虚報に踊らされたマスコミのあり方を問う声があった。遠隔捜査ウィルス事件で誤認逮捕が相次いだことにも、厳しい意見が多かった。警察・検察の自白強要などに対するマスコミのチェック機能への不信の声があった。
ラジオに関しては47件、CMに関する意見は80件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は116件で、前月より21件増加した。
今月は、いじめ・虐待に関する意見が30件、次いで低俗・モラルに反する意見が18件、性的表現に関する意見が10件と続いた。
バラエティー番組の中の「川柳」のコーナーで、女性アイドルの容姿を笑いのネタにした内容に関して、いじめではないかという意見が複数寄せられている。また、子どもが見る可能性がある午後の時間帯でのサスペンスドラマなどの再放送について、配慮を求める意見が寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 「尼崎連続変死事件」の角田美代子被告の顔写真が別人のものだったという。これは「松
    本サリン事件・犯人誤報」以来の大問題だ。いずれの局も謝罪はしていたが、散々この事件についてあれこれ報道した後に、「すみません、間違っていました」の一言で終わらせていた。これは人権侵害であり、一言謝って済まされる問題ではない。なぜこんなことが起きたのか、各テレビ局で検証し、視聴者に説明するべきだ。倫理観を疑う。
  • 「iPS細胞を使った手術」が捏造だと分かったとたん、今度は手のひらを返したようにバッシングが始まった。そもそも、虚言癖のある人物の言葉に惑わされ、ウラを取らないまま報道してしまったのは自分達マスコミである。それを反省するどころか本人バッシングにすり替えるとは報道者の風上にも置けない。
  • iPS細胞の移植で問題になっているMさんの報道に関して疑問を持っている。本人の話が正しいとも思っていないし、擁護しているわけではない。しかし、元はといえば新聞社が情報の裏を取らずに、いい加減な記事を載せてしまったことだ。世紀の大誤報ではないか。しかし記者会見では、記者が責め立てるような口調で質問したり、バカにしたような笑い声が聞こえたりと聞くに堪えない。報道の誤りを認めずに、スキャンダルを得たとばかりに執拗に1人を責めるような報道は放送倫理が守られていると言えるのか。
  • 沖縄で起きたアメリカ兵によるレイプ事件で、「代わる代わる暴行をした」と女性キャスターが読み上げていた。1人の女性を集団でレイプすると聞くだけでも、彼女がどれほど傷ついたことか。それを更に「代わる代わる」と表現する必要があるのだろうか。彼女は米兵にレイプされただけではなく、テレビからも犯されたようなものだ。こんなデリカシーのない、心ない報道がジャーナリズムなのか。複数の人の手を渡ったはずの記事をチェックする機能はないのか。真摯に反省すべきだ。
  • 「週刊朝日と橋下徹大阪市長」について、各局の情報番組は“単なる興味本位”で取り上げているように感じられる。「同和問題」は非常に微妙な問題だ。知らない世代が増えていることを考えれば、正確な知識、情報もなく、ただテレビで騒ぐことが必要だとも思えない。また、橋下氏が記事を掲載した週刊朝日について「ペンの力での家族抹殺だ」と発言したことを、面白おかしく紹介していることに危機感を覚える。マスコミは「同和問題」という“事の重大性”を今一度認識して頂きたい。
  • 近隣トラブルから、元警視の男性が女性を日本刀で刺し殺したという事件があった。その報道の中で、救急車が報道陣の前を通る際に、某テレビ局の記者が、「今、救急車が」と救急車の前に立ちふさがりリポートし、救急車が徐行せざる得なくなった。救急車はわずか数秒でも人の命を左右する緊急車両だとわかっているのに、自分たちの都合で邪魔をする。こんな行為は許されない。
  • 遠隔操作ウィルス事件のマスコミの報道について。無実の人が、“自白の強要”により犯人にされてしまった事実をしっかり検証するべきだ。検察や警察の捜査、取り調べの問題点を追及するべきだ。誤認逮捕された人たちの生活はその後どうなったのか。またマスコミ自身で調査もせずに検察や警察の発表通りに報道した責任を感じてほしい。
  • 誤認逮捕された人を、テレビや新聞でも最初は完全に犯人扱いで取材、報道していた。今になってテレビも、誤認逮捕と報道や解説をしているが、犯人扱いで報道していたテレビや新聞の責任は重大である。逮捕された段階で実名報道することは、推定無罪の原則をないがしろにするものではないか。こうした場合のテレビや新聞の反省を一度も聞いたことがない。報道の自由の拡大解釈であり、自らの責任を放棄している。
  • お笑い芸人や芸能人をコメンテーターとして個人的な意見を言わせることはいかがなものか。特定の政党や政治家を批判するのならば、自分はどの政党や政治家を支持しているのか、明確に表明してからにすべきだ。批判だけ垂れ流すことは世論誘導だ。
  • 最近、通行人などにボカシが入っている映像をよく見るが、気持ち悪い。肖像権を気にしているのかと思うが、そもそもテレビに映り込む通行人や野次馬などは雑観だ。通行人が自身の肖像権侵害に関して新聞社やテレビ局を抗議したとか訴訟を起こしたなどという話も聞いたことがない。自主規制なのだろうが、それなら生放送もぼかしたらどうか?

【番組全般・その他】

  • とても良い番組だ。毎週見ている。地方の素朴な産品を使って一流の料理人が素晴らしい料理を作ってみせる。それと同時に地方の産品の紹介、風光明媚な田舎を紹介していることはとてもすばらしい。こんないい番組ができるのであれば、ぜひ地方の山間僻地や離島へも出掛けてほしい。私の妻は島根県の隠岐島の出身だが、一時期沢山来ていた観光客も今は少なくなり、人口は昭和40年代に比べると3分の2に減っている。こんなところへも是非一流料理人に来ていただき、地域の産品の生かし方と風景などの紹介をしていただきたい。
  • 北極でシロクマを探すというコーナーで、あたかも偶然見つけたような放送だったが、その後接近しての映像を見ると、母熊の首に首輪のようなものがついていた。GPS機能がついていて、場所を特定出来るものではないのか。やらせにあたるのではないか。
  • 視聴者の質問に対する男性アナウンサーの答え方に違和感があった。筋力の衰えの自己チェック方法が紹介されていたが、その結果をもう一度知りたいという要望に、「番組のホームページを見るように」との返答であった。スタジオの壁に貼り出されたその方のFAXは手書きのものであった。もしかしたらインターネットを使う方ではないのかも知れない。日々、インターネット環境にどっぷり浸かった生活をしていると気がつかないのかもしれないが、放送に携わる側は、こうした人々にこそ配慮する想像力が必要ではないのか。
  • なぜ最近の番組は、「ワイプ」と称する小窓を出すのだろう。出演者の反応やリアクションを映したいのだろうが、不要だし邪魔だ。そんなものは必要ない。中にはそれを意識して過剰ともいえる反応をする出演者もいる。どんな反応をしようが、視聴者には関係ない。わざとらしいリアクションなどみたくもない。

【ラジオ】

  • 1日4回も同じラジオショッピングを放送しているが、発毛剤やダイエット商品の効能が「ほぼ100%」や、使用した人の「96%に効果があった」など、誤解を生みかねない表現が多用されている。番組のホームページを見ても、効能や効果の出典の明記がなく、「景品表示法」で定める不当な表示に反する恐れがある。

【CM】

  • CMに胸を打たれた。幼い兄弟が、田舎のおじいちゃんの家ではしゃいで虫捕りをするうちに暗くなってしまい、お兄ちゃんが健気に弟を励ましながら真っ暗な道を歩くという内容だ。最後にはおじいちゃんが普段給油をするスタンドの明かりがついているのを見て、ほっとすると同時に母親に見つけてもらい、思わずそれまで泣かなかったお兄ちゃんが泣いてしまうというもの。自分の子供時代を思い出し、いつもけんかをしていても困った時には姉妹で助け合ったこと、迷子になった時に母親に会えた時は心から安堵し、やはり泣いたことを思い出した。離れて暮らす両親に親孝行したいと思った。
  • 自動車のCMで、女性歌手が歌う「Waiting for  you」という曲が、どうしても「うぇいちん、うぇいちん、うぇいちんぽ~」と歌っているようにしか聞こえない。家族と一緒にテレビを見ていて気まずくなる。先日母が同じように聞こえたと言ったので、インターネットで検索したら何件か似たような書き込みがあった。おそらく他の人にもそう聞こえているのだと思う。女性歌手も商品の車も嫌いなわけではない。そういう風に聞こえないように改善していただけないか。

青少年に関する意見

【いじめ・虐待に関する意見】

  • バラエティーで、女性アイドルの容姿を馬鹿にする川柳を放送していた。子どもたちも見る番組なのに、本人のいない所で容姿を馬鹿にして笑うのは、まるでいじめではないか。それを見て育つ子どもたちに、どんな影響があるだろうか。こんな内容を公共の電波を使って発信するなんて、とても疑問に思う。
  • ドラマの番組宣伝の最後に「頼むから死んでくれ」と言っていたが、今問題になっているいじめの最たる言葉ではないか。今現在、いじめを受けている子どもたちは、この言葉によって深く傷つくかもしれない。「頼むから死んでくれ」などという言葉は、軽々しく使う言葉ではない。

【低俗・モラルに反する意見】

  • バラエティー番組で、“ドッキリ”をやっていた。芸能人が驚いたり、怒ったり、よくある構成だった。しかし、ドッキリを仕掛けられるのが芸人だったら面白いが、今回、芸能人の5歳の子どもに“ドッキリ”を仕掛けていた。いくらなんでも良くない。

【暴力・殺人・残虐シーン関する意見】

  • 7歳と9歳の子どもがこのアニメを予告で知り、楽しみにしていたので見ているが、あまりにも残虐なシーンが多くて見せるべきか迷っている。悪者が味方の脇腹を何度も刃物で刺す、悪者が味方の少女を何度も踏みつけるなど、恐ろしい。それ以外の主人公達が冒険しているシーンは楽しいが、無駄な暴力シーンに違和感がある。

【編成に関する意見】

  • 午後の再放送枠で放送中のサスペンスドラマは、夜9時以降に放送する内容だ。同居している姑が見ているので、不可抗力で小学生の子どもが見てしまう。殺人やレイプなど、子どもに見せられる内容ではない。サスペンスの再放送は、昼間は放送しないでほしい。

【CMに関する意見】

  • サスペンスや刑事ドラマのスポットCMは殺人のシーンが多い。番組は選んで見られるが、スポットCMは突然流れてくるので選べない。特に刃物で殺害する場面や、刃物のアップはインパクトが強い。簡単に手に入る刃物での殺傷シーンは、青少年に悪影響だ。

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