第138回 – 2012年11月
昼間のテレビドラマの性表現について
中高生モニターについて
第138回青少年委員会は11月27日に開催され、10月16日から11月15日までに寄せられた視聴者意見について討論するとともに、11月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。また、2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会について事務局から概要を説明するとともに、2013年度中高生モニター募集の実施要項と、2013年度青少年委員会活動計画案についても了承された。
議事の詳細
- 日時
- 2012年11月27日(火) 午後4時30分~6時55分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 視聴者からの意見について
中高生モニターについて
2013年度青少年委員会活動について - 出席者汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員
【視聴者意見について】
「性表現が過激、子どもが見たらどうするのか」といった視聴者意見が多数寄せられた昼間のテレビドラマについて委員間で討論した。多岐にわたる議論が行われたが、再度論点を整理するため、委員会内にチームを立ち上げ、継続討論することとした。その他、担当委員および事務局より視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで討論し、審議対象とするべき番組はなかった。
【中高生モニター報告】
11月は「報道・情報・ドキュメンタリー番組」の企画書を作ってもらい27人から報告が届いた。
「報道番組」と「情報番組」の境界が分りづらくなっている現状を反映し、中高生モニターの企画書でもその傾向が現れていて、「情報系報道番組」的な企画書が半数以上を占めた。中高生にも分りやすい番組作りを目指し、好感度の高いタレントを起用したり芸能ニュースを取り上げたりするなど工夫を凝らした企画が多かった。
はっきりと「ニュース」をタイトルに出している企画書は5本あり、中でもpodcastやfacebookを使った新しい形を提案しているのが目を引いた。
「ドキュメンタリー」には、これまでのような日本人目線の作り方ではなく"世界からの視点で"考えることを提案したり、これからの自身の将来を見据えた「職業」について、また「アメリカ大統領の一日」を追いかけたり、「人権を考える」などの企画書があった。
サッカー、スケート、剣道など、スポーツや、趣味の「俳句」を扱った企画もあった。
【委員の所感】
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世界の出来事をBSやCSで視聴できる今の状況を反映して、幅の広い企画があがってきている。
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企画書を読んでいて、情報番組と報道番組の境はもう意識されないのだなと、あきらめの境地になった。
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ふだん政治に対して批評しているコメンテーターを、現役国会議員たちが批評する『私ならこうする!』という企画は逆転の発想で、たいそう面白く読んだ。
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「地下鉄サリン事件」の企画を読んで、もう事件の全体像を知らない世代が増えてきていて、すでに歴史になってしまっていることに「はっ」とさせられた。こういった番組が作られる必要性を感じた。
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「若者は世界がすべて理屈で割り切れると信じすぎている」という企画は、自分たちの世代では考えられなかった発想で、ネット等で訓練された新鮮な意見だった。
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若い人に日本や世界の問題点について考えてもらうという企画があったが、現代という時代をどう読み解くのかは、生きていくのに一番大切なテーマであり、教養とはそういうものだと思った。
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ちょうど解散・総選挙の時期だが、選挙に対するテーマが一つも入っていないのが特徴だ。大人のやっている政治に対して微妙な感覚のずれがあって、魅力を感じていないのかもしれないという点が気になった。
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熟してはいないが、今は中高生にこんな発想があるんだということを丁寧に番組制作者に伝えてゆけば、良いヒントになるのではないか。
モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント
◆企画1.『世界で一番権力を持つ人の一日~アメリカ合衆国大統領を追う~』 (神奈川・中学2年男子)
【ねらい】
僕は、11月6日に再選を決めたオバマ米大統領のドキュメンタリーを作りたいです。アメリカ合衆国の大統領は、いったいどんな一日を過ごしているのでしょうか。世界で一番権力を持っているともいえるアメリカ大統領の一日を追いかけます。何時に起きて、何を食べ、誰に会い、どんな仕事をしているのでしょうか。大統領の専用機は、いったいどんなふうになっているのでしょうか。「ホワイトハウス」と言えば、記者会見で見るところしか知りませんが、他にもたくさんの部屋があると思います。そもそも、大きさはどのくらいなのでしょうか。何人くらいの人が働いているのでしょうか。また、日本の総理大臣とアメリカの大統領について、選び方や役割など、その違いについてしっかりと伝えたいと思います。司会は、『報道ステーション』(テレビ朝日)でおなじみの古舘伊知郎さん。何人かの解説者にも出演してもらいます。例えば、『週刊こどもニュース』(NHK)に出演していた池上彰さんや、大学の教授などです。難しくなりがちなアメリカの政治の話を、小学校高学年の人にも分かるように説明してもらいます。
視聴対象は小学校高学年からです。小・中・高校生に興味を持って見てもらいたいので、午後7時から9時に放送します。
【フジテレビ 情報企画部プロデューサー(『新・週刊フジテレビ批評』担当)の感想】
みなさんの企画、私が皆さんの年頃に、こんなにキチンとした考え方を持って世の中を見つめていたかなあと思いながら、楽しく読ませていただきました。モノを作る上で大切なのは、「これが知りたい、伝えたい」という「思い」です。いずれの企画からも、その「思い」がストレートに伝わってきました。中でも、心に刺さったのは、『世界で一番権力を持つ人の一日』です。私はこの世界に入って、もうすぐ25年。経験から、「伝えたい」ことより、時として「できること」を先に考えてしまう傾向にあります。大統領の一日、朝から晩まで是非見てみたいです!常識に縛られない自由な発想と思いを大切にしてください。
【テレビ東京 報道局取材センター社会担当デスクの感想】
中高生に向けてもっとニュースを身近でわかりやすく伝えたい、という意欲にあふれた企画書がたくさんありました。裏を返せば、通常私たちが放送しているニュースでは中高生に興味を持ってもらうような伝え方ができていないのかなと感じました。また、『世界で一番権力を持つ人の一日』は素直に私も見てみたいと思いました。大統領の仕事の紹介にとどまらず、そこを入り口に現在アメリカが抱える問題へと内容を発展させていければ、番組として深みのある面白い企画になるのではないでしょうか。
◆企画2.『同情と尊敬』 (長野・中学2年女子)
放送時間帯:夜7:00~
視聴対象:中高生、大人
【ねらい】
人権についてのドキュメンタリー番組。主に、全国水平社を創立した西光万吉さんの話。明治維新後に出された解放令。それにより、今まで差別された人々はどう変わったか、差別は無くなったと思われたが、"同情"と名前を変えただけで実は続いていた。そんな中、水平社を創立した西光さんの思いなどを伝える番組。
視聴者へ伝えたいこと:私は最近、中学で人権の授業で全国水平社を学びすごく感銘を受けました。見えない差別と戦った人々のことを、より多くの人に知ってもらいたいのでこの番組を考えました。差別の現状を視聴者に伝えたいです。
【NHK 編成局副部長の感想】
部落差別に限らず、人間は弱いために、他人を低くみることで優位にたたないと生きていけないいきもののようです。全国水平社を創立した西光万吉についてのドキュメンタリー、とても大切な企画です。わたしも『その時歴史が動いた』(NHK)という番組で2008年4月に「人間は尊敬すべきものだ~全国水平社創立~」という番組をプロデュースし、夜10時に総合テレビで全国放送しました。ただし、西光が目指したのは「同情」ではありません。「尊敬」です。なぜ「同情」を得ることを嫌い「尊敬」を得ることを目指したのか、それをテーマにして、ドキュメンタリーを構成したら、心をうつ番組になると思います。がんばってください。
◆企画3.『世界からの視点で』 (東京・高校2年女子)
【ねらい】
世界にはさまざまな問題がありますが、最近よく思うのは、どうしてもそれらの問題について"日本人目線"でしか考えられないという事です。そこで、私が今回提案する番組では、初めにその1週間のうちに世界で起こった出来事などのニュースを報道します。次に、世界各国(10ヵ国くらい)の老若男女をゲストとして招いてその国の立場、その国の国民の意見などを教えてもらいます。日本人は一般に"内向き志向"といわれていて、「海外に出て行こう」「世界で活躍したい」という思いを持つ人は、依然として世界的にみるとその数は少ないと思います。こういった番組を作ることで、視聴者は国際問題により多くの関心を持ち、さらに中立的な考えを持つことができるので、ゆくゆくは世界に出て行こうと考える人も増えるのではないかと思います。
◆企画4.『無題』 (東京・高校1年男子)
【ねらい】
先日、父親から「読んでみろ」と、日経ビジネス10月号の『世界に誇る日本の商品100』という雑誌を渡されました。読んでみると世界で売れている百種の日本商品が紹介されていて、今、日本はダメだと外国と比較して嘆いている人が多い中、ひょっとするとそんな悲観論は間違っているのではないか、払拭できるのではないか、という可能性を感じその期待を強く抱きました。「へー!」と思える内容が満載でしたが、「へー!」って思える内容であることはドキュメンタリー番組には特に必要ですよね。そこで、僕は世界に通用している日本の文化や商品やサービスなどを紹介していくドキュメンタリー番組ができたら間違いなく興味深い内容になるだろうし、なにより元気のない今の日本に必要だと思います!
【テレビ朝日 報道局チーフプロデューサー(『人生の楽園』担当)の感想】
番組として実現できそうだと思ったのは、世界に誇る日本の商品を紹介するという企画です。視聴者に「へー!」と思わせたい、「日本はダメだ」という悲観論を払拭したい、という意図がはっきりしている点が、良いと思いました。ただ、どのような番組スタイルにするのか、どのように紹介していくのかなど、"見せ方"に新鮮なアイデアを提案してほしかったです。またタイトルがついていなかったのは、残念!魅力的なタイトルは、企画=番組の重要な要素です。
◆企画5.『いくぞJ1!松本山雅』 (長野・高校1年女子)
放送時間帯:平成24年11月11日(日)AM11:00~13:00
視聴対象:長野県内のプチ山雅ファンと予備軍
キャスター:中田英寿さん(は無理だと思うので)、松木安太郎さん、元川悦子さん(松本市出身スポーツライター)
【ねらい】
昨年、奇跡的とも言える後半戦の粘りでサッカーJ2に初参入した松本山雅FC。ホーム観客動員数はJ2の中ではJ1昇格を決めた甲府に次ぐ2位。順位も反町監督のすばらしい采配で1桁以内も夢ではない。私たち信州人にサッカーの魅力を教えてくれた監督はもちろん選手やサポーターをねぎらい、来年はJ1昇格できる力があることを全国へ発信できるような特番を、最終試合のキックオフ前に放映できるような企画にしたい。
◆企画6.『五・七・五!!』 (群馬・高校1年女子)
放送時間帯:19:00~20:00
視聴対象:10~20代
キャスターほか:ベッキー(司会)、道尾秀介(作家)、堺雅人(俳優)、MIWA(歌手)、宇多喜代子(俳人)
【ねらい】
私は小学4年生から俳句を作っています。俳句というと難しいとか松尾芭蕉といったイメージしか持たれません。この番組では普段なじみのない10代~20代の人にも興味をもってもらうため、高校生による俳句甲子園を取り上げ、また現代にも通じるような俳句を紹介してゆきます。大会だけでなく、普段の学校での活動の様子も紹介し、その中で俳句の作り方や季語といったことを視聴者の方に知ってもらいます。
◆企画7.『よくわかる!日刊15分ニュース』 (滋賀・中学1年男子)
放送時間帯:配信は、朝5時、夕方5時(pod castによる)
【ねらい】
僕は、誕生日プレゼントにiPod を買ってもらいました。そのiPodで聞くことができるpod castがとても気に入って、毎日色々な番組を聞いています。pod castは、好きな時間に好きな場所で聞くことができるので便利です。
今回の企画に際して、テレビ、ラジオ以外のものでもよいかなと思って、考えてみました。時間は15分間で、1日2回の配信。pod castには色々なジャンルのものがあるけれど、毎日配信されているニュースはNHKくらいで、とても長いニュースのときもあるのが難点。毎日短時間のニュースなら、聞きやすいし、中学生や高校生が日々のニュースに関心を持てることが一番のねらい。
【TBSテレビ 報道局編集部長の感想】
若い世代が満足できるニュース番組の提案がたくさんありました。また、人気タレントをMCに起用という提案も多く、テレビは見やすくなければということを実感しました。人気のある人からの情報発信に触れたいということなのかもしれません。たいへん参考になりますし、実現性が高い提案だと思います。「松本山雅」「俳句」などは、個人の趣向を強く反映させた提案で、レギュラーの番組の中でいかに多くの人に向けて制作できるかがカギになるのでしょう。「米大統領」「人権」など、ドキュメンタリーのカテゴリーに入るものは、是非、見たいテーマです。ただし、テレビは非常に多くの人がお客さんですから、作り手だけの関心に陥らないようにする、という姿勢が大切だと思います。また、「日本文化を紹介」、「世界からの視点」は、内と外、相反する方向からのアプローチですが、テレビが知らせきっていないテーマがまだまだたくさんあるのではと思いました。最後に、「iPod向けのニュース番組」。同様の試みは既に始まっています。若者には当たり前のニーズでしょうし、近未来のメディアを考えさせる提案でした。
◆企画8.『オウム地下鉄サリン事件について特集した情報番組』 (北海道・中学3年女子)
【ねらい】
次々とオウムの指名手配犯が捕まって話題になりましたが、サリン事件は17年前に起こりました。直接事件を知らない、覚えていない人が増えています。私も直接は事件を知りません。そこで、事件を知らない年代を対象にしたオウム地下鉄サリン事件の情報番組があればいいと思います。私たち「若者」は世界が全て理屈で割り切れると信じすぎていると思います。理屈に合わないことは起こるわけがないと、信じすぎている気がします。理屈にあわない、自分たちとは違う考え方をしている人たちがいること、何の恨みをかっていなくてもある日被害者にされることがあることを知るのは重要だと思います。
【日本テレビ 報道局プロデューサー(『news every.』担当)の感想】
デイリーの報道番組を制作していますと、フォーマットに固執して新しい表現方法の開発を忘れがちになります。今回、企画書等を拝見し学生の皆さんの「発想の斬新さ」「切り口の新鮮さ」に驚き大変刺激になりました。また、オウム事件など過去の大きな事案について、世代間の認識を議論する番組企画提案がありましたが、非常に興味深く実現出来ないか検討したいと思いました。
【自由記述】
「ぜひ見てみたい」「見て良かった」番組について書いてもらい、20人から報告があった。
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私は、日本テレビ11月3日(土)の『NEWS ZERO特別版 櫻井翔 世界を、取材する。』を見ました。映像の中にはふだん見るアメリカの様子とは相反するような、テントで生活する方々の姿がありました。私は、苦しい生活をおくっている人の最低限の願いが、大統領のもとに届いているのかと不安になりました。(東京・中学2年女子)
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見て良かった番組は、『探偵ナイトスクープ』(朝日放送)です。笑ってしまうような依頼でもその道のプロや学者さん、芸能人と一緒に解決します。笑いあり涙ありの番組なので大好きです。(大阪・高校1年女子)
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最近BS放送で、毎朝5時から『ワールドWave』(NHKBS)という番組を見ています。日本のニュース番組では知ることのできない世界の出来事を知ることができる他、英語の勉強にも役立っています。(東京・高校2年女子)
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友だちにすすめられて見た『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(フジテレビ)。タイトル通り「そんなこと、あるわけないよ」と思いながらも、ついつい引き込まれるように見てしまいました。(神奈川・中学2年男子)
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『クイズ!オーサカ理由学』(毎日放送)を見ました。ふだんから慣れ親しんだ"オーサカ"の謎の理由の答えがいっぱいあって、おもわず「へぇーっ」と言ってしまうばかりでした。(大阪・高校2年男子)
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『世界ナゼそこに?日本人 3時間スペシャル~知られざる波瀾万丈伝~』(テレビ東京)という番組はぜひ見たいです!(東京・高校1年男子)
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最近「見てよかった」と思う番組があまりないように感じます・・・。(大分・中学3年男子)
【2013年度青少年委員会活動について】
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2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会について事務局から概要を説明するとともに、2013年度中高生モニター募集の実施要項と、2013年度青少年委員会活動計画案についても了承された。