第122回 放送と青少年に関する委員会

第122回 – 2011年5月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第122回青少年委員会は5月24日に開催され、4月16日から5月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、5月に寄せられた中高生モニター報告について審議した。また、今年度の調査・研究について、進捗状況及び調査内容等について担当委員から報告が行われた。

議事の詳細

日時
2011年5月24日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、視聴者意見の概要等について報告を受けたが、視聴審議の対象となる番組はなかった。ただし、小学生女児出演の番組に対し、「子どもを性的対象にしている」という意見が数件あり、同様の意見が断続的に寄せられていることから、少女が出演する番組について当委員会が2006年10月に出した「少女を性的対象視する番組に関する要望」の趣旨を踏まえて番組制作にあたるよう、BPO報告等に記載し改めて注意喚起することとした。

中高生モニターについて

5~7月の中高生モニター報告は、「バラエティー・クイズ・音楽番組」のジャンルを取り上げている。5月は、上記のジャンルの中から「好きな番組、面白い番組」を選び、「その理由や、好感の持てるタレント・出演者」について意見を求め、32人から報告が届いた。

最も意見の多かったジャンルは「バラエティー番組」で、21人から22番組に意見や感想が寄せられた。そのなかで複数回答のあった番組は、『しゃべくり007』『AKBINGO!』(日本テレビ)、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)、『シルシルミシル(さんデー)』(テレビ朝日)、『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)の5番組だった。

  • 「『しゃべくり007』はいつもくだらないコントが突然始まって、予測不可能な展開がとても面白いです。そしていつも思うのが、くりぃむしちゅーの上田(晋也)はすごい!です。なぜなら、ボケようとしている芸人を察知して、例えば「(原田)泰造はどう?」と瞬時に話を振ったり、周りがすごく見えているなと感じます。ボケる芸人に対して、的確に突っ込むことができる芸人がいて面白くなるんだと思います」。
  • 「初めて『ホンマでっか!?TV』を見た時、”面白い!”と思いました。番組では、頭脳・博識軍団の先生たちが、いろいろ知識を紹介しながら、分かりやすく解説してくれるのですが、特に教育評論家の尾木直樹さんが少し”オネエ”になったり、明石家さんまさんがボケたりしながら番組を進めてくれてとても楽しいです。この番組を見ていると新たな発見があったり、世間に対しての関心が深まったりして、面白いという感情が生まれるのだと思います。出演者で共感できるタレントさんはマツコ・デラックスさんです」。
  • 「最近見始めた『シルシルミシル』は、主に『工場見学』であり、『身の周りのモノの原点』を明らかにしていく番組である。それだけにとどまらず、視聴者が疑問に思っていることを解決するコーナーがあり、”視聴者のために”という精神が全面に出ている番組だと思う。そしてなにより好きな理由は、バカリズムという芸人がナレーションを担当していることだ。彼のスムーズなナレーションで、視聴者は強い関心を抱いた状態を継続することができ、飽きずに見ることができるのだ」。
  • 「『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)が”おもしろい”。普通の番組ではやらない企画がたくさんあり、その中でも、小型バイクでベトナムを縦断したり、車でアメリカを横断したりするなど、本当にインパクトのあるものが多い番組です。出演者は、大泉洋さん、鈴井貴之さんです。旅の最中、大泉さんはずっとボヤいてそれがうるさくて嫌いという方もいるかもしれませんが、僕はそのボヤきが面白いからこの番組が大好きです。そして、この番組はもともと北海道のローカル番組だったのですが、北海道で大ヒットして、ついには全国区で放送されるようになり、北海道の番組から、日本の番組になりました」。
    そのほか意見が寄せられた番組は、『世界の果てまでイッテQ!』『コレってアリですか?』『1億人の大質問!?笑ってコラえて』『嵐にしやがれ』(日本テレビ)、『ウンナンの気分は上々。』(TBS)、『笑っていいとも!』『VS嵐』(フジテレビ)、『いきなり!黄金伝説。』『アメトーーク』(テレビ朝日)、『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京)、『着信御礼!ケータイ大喜利』(NHK)だった。

次に意見が多かったジャンルは「音楽番組」で、7人から意見が寄せられた。複数の回答があった番組は『ミュージックステーション』(テレビ朝日)である。

  • 「先日の未曾有の大震災の後”音楽番組”が増えたように思う。とても良いことだと思う。理由は2つある。1つは被災地の人が一時でも大震災のことを忘れられるのではないかと思うから。もう1つは被災地に元気や勇気を届けることができるからだ。地震当日は報道特別番組だったが、次週から予定通り放送していた。僕にはそこに”歌には大きなチカラがある”。だから”放送しなければいけない”という気持ちが伝わってきた」。

そのほか意見の寄せられた番組は、『CDTV』(TBS)、『HEY!HEY!HEY!』『僕らの音楽』『青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ』(フジテレビ)、『題名のない音楽会』(テレビ朝日)だった。

「クイズ番組」には4人から意見が寄せられ、『ネプリーグ』(フジテレビ)に複数回答が寄せられた。

  • 「私はクイズ番組『ネプリーグ』(関西テレビで視聴)が好きです。なぜなら1つ1つのジャンルがアトラクション形式になっていて、まるで遊園地にいるような楽しい雰囲気があるからです。特に好きなのは『トラップハウス』です。画像がリアルで本当に体験しているように思います。また『ファイブツアーズ』は私にも勉強になります。読めても書けない漢字って多いです。そういうときに、こういった番組で取り上げてくれるととても助かります。放送が日曜のお昼にやっているので、日曜の昼下がり両親と一緒に問題を解いて楽しめるのもいいです。昼食のとき、とてもワイワイ会話が弾みます」。

そのほか、『Qさま!!』(テレビ朝日)と『パネルクイズ アタック25』(朝日放送、テレビ朝日系)に意見が寄せられた。『パネルクイズ アタック25』が好きだという報告の中には、先日亡くなった児玉清さんの病状を気遣った報告も寄せられた。

【委員の所感】

  • 今回の特徴は、特定の番組にモニター報告が集中することなく、さまざまな分野の番組に関心を持っている様子がうかがえました。ただ、「今の中高生はこういうことに面白さを感じているんだ」といったイメージがあまり湧かず、あまり意外な思いを抱くことはありませんでした。今後、もう少し具体的に書いてくれることを望みます。
  • 際立ったリポートが少なかったように思った。具体的にどこが面白いのか、どんなやり取りが面白いのか、どんなシーンが印象に残ったのかという具体的な報告が少なかったように思う。その辺のところを今後書いてくれることを望みたい。そんな中で、番組のナレーションに目をつけたリポートには”なるほど”と思わせるものがあった。
  • モニターの目のつけどころ”視点”と、文章力、構成力を大切にしてほしい。例えば、”歌には大きなチカラがある”と書いてあるリポートがあったが、そのフレーズをまず書き出しにして、次にその理由を書いてくれると説得力のあるリポートになると思う。また、”生き残る芸人は自分を面白くできて周りも面白くできるそんな人だと思います”という報告には本質をついた感想があると思った。
  • バラエティー番組の基本は、家族全員で”アッハッハ”と笑えるものが健全なものだと考えるので、”親子の会話も弾みます”といった報告や、”どうしようもないボケっぷり&天然っぷりから笑いの絶えない番組が面白い”といった報告に接し、家族一緒に楽しめる番組の好感度が高いという印象でした。

「今月のキラ★報告」 (東京・中学2年男子)

好きな番組は、『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)です。この番組には「DASH村」というコーナーがあります。TOKIOのメンバーが農業をしたり、道具を一から作ったり、動物を育てたりするコーナーです。また、村の近くに住んでいる村人たちが農業などの技術を教えてくれたり、芸能人と一体となってTV番組に協力してくれたりしているところが、他の番組にはない魅力だと思います。
僕はこの番組を見ると、「DASH村」に行き一緒にやりたくなってしまいます。それは、TOKIOのメンバーが自分たちで汗だくになりながら、(演技ではなく)自分の意思で取り組んでいるように見えるからです。地域の人たちも楽しそうにTOKIOのメンバーとふれあい、村を助けています。この一つのTV番組を作っているのが、テレビ局や芸能人だけでなく、普通の地域の人たちでもあるというのは、とてもすごいことでこの番組の最大の面白さだと思います。
現在「DASH村」は、今回の東日本大震災に被災しています。そこにいた人、動物などは無事なようですが、原発の問題により村に近づけない状況が続いています。番組作りに協力していた地域の人たちも避難生活を送っており、TOKIOのメンバーがその人たちに会いに行き、励ましています。テレビの中の芸能人であるTOKIOのメンバーが、避難中の人たちを訪ね、笑顔で抱き合う姿は、とても温かくまぶしく感じられました。
テレビの一番組なのに、芸能人が本当に地域の人たちと関わりながらリアルな村の生活を作っている様子、その温かさがテレビからそのまま伝わってくるのは、他の番組ではなかなか感じられるものではなく、それもこのコーナーが10年以上続いてきたからこそ、その長年の絆が伝わってくるのだと思います。
この僕が大好きなコーナーが、今回の大震災で無くなってしまうのではないかと心配しており、「DASH村」の未来から目が離せません。

【委員会の推薦理由】

番組に出演するタレントと一般人の交流は、その場限りで終わってしまうことが多い中で、TOKIOのメンバーと「DASH村」の地元の人々との長年の”絆”が番組を支え、独自の魅力を生んでいることを的確に指摘していました。今回の東日本大震災によって「DASH村」のコーナーが終了することへの危惧感の表明から、番組に対する筆者の愛情がストレートに伝わってきたことを評価しました。

調査・研究について

本年度予定されている番組制作者を対象とした調査の実施にあたり、担当委員からその進捗状況が報告され、その補足として一般視聴者を対象とする調査を行うことの提案があり、委員会として了承した。

2011年4月に視聴者から寄せられた意見

2011年4月に視聴者から寄せられた意見

引き続き、「福島第一原発事故」に関する意見多数。放射線漏れの危険性、警戒区域、計画避難区域の設定などへの疑問や、報道が情報を伝えるという役割を十分に果たしていないなどの不満も多い。またスタジオ番組のチャイムのような効果音が、緊急地震速報と似ており、やめてほしいとの意見が多かった。

4月にEメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,468件で、3月と比較して2,187件減少した。意見のアクセス方法の割合はEメール62%、電話34%、FAX2%、手紙ほか2%。性別は男性72%、女性25%、不明3%。世代は30歳代31%、40歳代25%、20歳代17%、50歳代12%、60歳以上11%、10歳代4%。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。4月の通知数は536件[45社]であった。またこの他に、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、47件を会員社に送信している。

意見概要

番組全般にわたる意見

4月の視聴者意見は先月より減って1,468件だった。内容は先月に続き、東日本大震災による「福島第一原発事故」に関する意見が多かった。地震から二ヵ月以上たった今も、被災者の避難生活は厳しい。仮設住宅の建設は思うように進んでおらず、復旧・復興への道筋は未だ見えない。福島第一原発事故の収束は困難を極めており、魚介や野菜など農水産物への風評被害もあとを絶たない。視聴者からは放射線漏れの危険性、警戒区域、計画避難区域の設定などへの疑問や、報道が情報を伝えるという役割を十分に果たしていないなどの不満も多い。通常放送体制に戻ったことには理解が示されたものの、低俗で下品な放送ではなく、ひとの痛みがわかる番組をという厳しい声もあった。またスタジオ番組でチャイムのような効果音が多用されているが、緊急地震速報と似ており、やめてほしいとの意見が多かった。ACジャパンの公共広告への批判も先月に変わらず多い。夏に向けての節電問題では、放送局が何も示さず、煌々とスタジオで電力を使っていることに批判があった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は110件で、前月より15件減少した。今月は、低俗・モラルに反するとの意見が25件、次いで性的表現に関する意見が21件、視聴者意見への反論・同意が15件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見については、ドラマ、アニメ、バラエティー、また特定のタレントに対する批判的な意見が寄せられた。性的表現については、深夜のバラエティーの新番組に対し、「深夜とはいえあまりに内容が低劣だ」「不健全で卑猥な映像が目につく」といった批判が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 原発事故の放射線漏れだが、「基準が」どうとか「基準値の何倍」とかと放送している。国民が知りたいことは「危険なのか」や「何をしたときに受ける放射線量なのか」である。もっとわかりやすく例を引きながら報道すべきだと思う。政府の発表の仕方も悪いと思うが、専門的なことなので、内容を噛み砕いた報道をしてほしい。
  • 福島第一原発の事故における、各局の放送に疑問を感じる。このような恐ろしい事故を起こしながら、原子力発電所そのもののあり方に疑問を持つ発言や言及が全く見られない。東京電力は他の民間企業とは違い、特別に擁護すべき存在なのか。テレビでの情報に疑問、不信感を抱く。正しく公正な情報を提供してほしい。
  • 福島第一原発の放射線漏れ問題で、福島産の野菜に「風評被害」が出ている。ワイドショーやニュースは政府批判を繰り返すだけで、かえって風評被害を煽っている。今大切なことは「店頭に出ている野菜は安全だ」と周知することだ。私の叔父は福島の農家で、現在は埼玉に避難しているが心を痛めている。「店頭に出ているものは安全」を徹底してほしい。
  • 「災害地の食べ物を買って風評被害をなくそう」「現地を応援しよう」と放送しているが、そもそも風評被害なのだろうか。消費者はそれらを食べたことにより、数年後、数十年後に自分の体や子供に何が起こるか分からないから避けるのであって、できれば「全く健康に及ぼす恐れのない」食品を食べたいと誰もが思う。「買って応援しよう」ということは間違っているのではないだろうか。
  • 各局で「不要な電気を消して」と節電を呼び掛けているが、当のテレビ局はどうしてあんなに照明が明るいのだろう。録画撮りは仕方がないにしても、薄着だったり半袖でミニスカートだったり、一体何度に空調温度を設定しているのだろうか。節電もしないで、節電を呼び掛ける。これは変だ。
  • 今回の震災に伴い各局で募金を呼び掛けている。独自の募金を実施していたり、他の局では赤十字を直接紹介していたりと募金先がまちまちだ。放送業界全体として紹介口座を一本化することはできないのか。結局は赤十字や自治体に寄付されるはずなので、独自の募金口座を開く必要があるのか疑問だ。せめて独自口座で募金を呼び掛けている局では、その寄付先と金額の開示を放送するべきなのだが、HP上での公開にとどまっていることが多い。
  • 東京電力のお詫びCMは私達の電気料金から支払われている。東京電力がお詫びする部分を放送したければ、東京電力の記者会見を流せば良い筈だ。放射性物質や計画停電に対する有益な情報発信をするのならまだわかる。そのようなお金があるならば、福島で苦しんでいる被災者を救済するために使うべきではないか。また、東京電力からCM料金を受け取った広告代理店、テレビ局も倫理的に問題があるのではないか。
  • 各局で東電の記者会見を放送しているが、記者の暴言をやめさせられないのか。大きな声で怒りをぶつける記者がいたが、聞くに堪えない。それに加え、番組MCやコメンテーターの東電に対する怒り方。視聴者は怒っても良いが、報道に携わる者は感情的に怒ってはいけない。

【番組全般・その他】

  • 「日本へ支援を」と呼びかけて、わらしべ長者のように物々交換で品物の価値が上がっていくという企画だが、これは支援ではない。単なるバラエティーの企画であるにもかかわらず、「震災への支援」といってイタリアの人々の善意を利用するのは非常に不道徳だ。協力してくれたイタリアの方にも、被災者の方々にも大変失礼だ。日本人として恥ずかしい。
  • 震災後気づいたのだが、番組中、特に情報番組やバラエティー番組それにCM中にも効果音が多用されている。注意を集めるための演出手法と思うが、やめてほしい。パネルやテロップが画面上に現れると同時に「ピロピロ」と効果音がかぶせられる。緊急地震速報など重要な警報に神経質になっている今、このような演出はすぐやめてほしい。
  • 私は視覚障害者です。最近地震が多く、目の見えない私にはテレビの「緊急地震速報」が頼りだ。しかしバラエティー番組で”効果音”として似たような音が使用されていることが多く困っている。何とかならないだろうか。
  • 私は岩手の被災地に住んでいる。テレビで軽薄なバラエティー番組を見るにつけ、お笑い芸人はもとよりそれを規制できないテレビの現状に情けなさを感じる。大震災や原発事故の問題を他人事のように思っているとしか思えない。もっと人の痛みがわかる、人に優しい番組を提供してほしい。お笑い芸人もこのような時は、もっと自分のなすべきことを深く考えて行動すべきだ。
  • 里山と言われる地域で農業をしている。春、山菜の季節になり関連した放送も多くなると思うが、その際に山菜取りは地権者の許可無く取れば犯罪であることを視聴者に認識させるようにお願いしたい。人心の荒廃、マナーの悪さに困惑している。最近も農地内の井戸の鉄板の蓋が盗まれ、四季桜の枝が切り取られた。私が農作業をしていても挨拶もなく、堂々と果樹園に立ち入ってワラビを取り始める始末だ。ゴミの不法投棄も頻繁だ。放送の中でもっと強く、犯罪であることを強調していただきたい。
  • 東日本大震災関連の報道特番により、多くの番組が休止になった。数日後に通常の放送が再開されたが、この間に多くの番組が放送を休止した。後日振替放送をしてくれた番組もあるが、ほとんどは連続ドラマやアニメばかりで、バラエティー番組などは振替放送をしていない番組が多い。視聴者は、放送できなかった番組を、いつになったら放送してくれるのか知りたい。せっかく収録した番組をお蔵入りにせず、きちんと振替放送してほしい。

【CM】

  • CMで「上を向いて歩こう」の歌が流れている。選曲は良いかもしれないが、最後のフレーズが「一人ぼっちの夜」で終わる。震災で多くの犠牲者が出ており、家族を亡くし孤児になってしまった子供が、このCMを見たら、どう思うだろうか。一見、被災者の心情を理解しているようにも見えるが、全く理解していない企業CMだと思う。
  • ACジャパンのCMはもうやめてほしい。メッセージ性が強いだけに、何度も同じことを言われ続けて、洗脳しようとしているように感じる。せっかく楽しい番組を見て、気持ちが上がってきたのに、ACジャパンのCMが流れた瞬間、一気に現実に引き戻されて、笑っていた家族も苦笑いに変わる。
  • 新しく始まったロト6のCMはふざけすぎだ。「月」と「木」だから、ゲストは五月さんと舟木さんという内容だが、人をバカにしている。すぐにでも変更すべきだ。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 新しく始まったドラマだが、あまりにひどい。子どもをもつ親としては気が気でない。”ママ友”同士の付き合いや”お受験”などを踏まえたストーリーのようだが、言葉の暴力が多数見られる。特定の子どもをターゲットに嫌がらせをする展開もあった。子どもが起きている時間帯に、反社会的だ。
  • 深夜のアニメだが、内容が男性同士の同性愛のようで、子どもに見せたくない。同性愛者を否定するわけではないが、わざわざそのようなアニメを放送しなくてもよいのではないか。
  • 10代のアイドルにパジャマと水着を着せ、深夜番組でもありえないほど低俗な内容を放送していた。19時といえば子どもも見る時間帯だ。アダルトの有線放送局でもあるまいし、ふざけた番組など放送するべきでない。このような番組を放送する局の姿勢が理解できない。

【性的表現に関する意見】

  • 深夜のバラエティーだが、放送内容があまりにも低俗で下世話すぎる。ほとんどが性を軽く扱っているとしか思えないコーナー企画であり、乱れた性風俗を助長するものだ。さらに、アシスタントに現在ティーン層に人気のあるアイドルグループのメンバーを起用しているため、録画してこの番組を見る彼女らのファンの中高生も少なくないはずだ。
  • 視聴制限のない地上波の昼の時間帯で、しかも児童・生徒らは春休みになる期間に、女性の裸の描写などが羅列されているドラマが放送されている。道徳的な問題以前に、性的接触によるHIVや性病の危険性の高まりなど、身体的に大変危険な行為を、誰でも簡単に視聴できる放送局が放送するべきではない。
  • 最近の深夜アニメはおかしい。残虐な暴力や性をテーマにしすぎている。アダルト作品でされると思われる表現すらあらゆるところに使われている。少しばかりのお色気なら分かるが、露骨な表現があまりにも目につく。アダルトでやるべきことは、きちんと18歳未満視聴禁止、購入禁止などのゾーニングの措置を取るべきだ。

【報道に関する意見】

  • 大震災にあわれた方々、特に両親を亡くされた子どもの心、人権を守るよう強く要望する。地震関連情報が小康状態なのか、両親を亡くされた子どもがけなげに生きるという内容の報道だったが、見ていて腹が立った。ただでさえ悲惨な状況にある被災者を食い物にしている。

【いじめに関する意見】

  • 多くの子役が出演しているドラマだが、いじめなどが多く描かれている。出演している子どもたちの心のケアもちゃんとされているのか心配だ。演技とはいえ、いじめ役をやっている子役の心に影響はないのか。

【要望・提案】

  • テレビの重要な役割に報道があることは承知しているし、被災地の現状を伝える義務もあることはわかっている。ただ、大人なら現実を受け止め対処する術やストレス解消法はある程度わかっているが、子どもはそれができない。そこでお願いだが、各局で話し合いをし、せめて一局は子ども向け番組を放送してほしい。

【殺人シーンに関する意見】

  • 災害で多くの人が亡くなったり行方不明になっているのに、殺人事件を題材にしたアニメを放送している。こんなアニメを見て元気になるわけがない。子どもの見ている時間帯に放送するべきではない。家族そろっての楽しい時間帯に、殺人事件のアニメは不謹慎だ。もっと夢と希望のもてる内容で放送してほしい。

【暴力シーンに関する意見】

  • アイドルが高校生に扮した学園ドラマ。登場人物は不良で、学級崩壊した高校で喧嘩を通して真剣に生きることを訴えているが、暴力を否定することもしない。むしろ出血や怪我を含めた喧嘩シーンを売り物にしている。アクションを否定はしないが、見ていて痛々しい。多くの中高生に暴力を助長するようなドラマは放送すべきでない。

【差別に関する意見】

  • アスペルガー症候群が題材の回のドラマだが、あまりにも差別がひどい。アスペルガーの子を転校させることを子ども達の多数決で決めるなど、常識を超えている。病例を理解していない、脚本家、原作者、監督のレベルが低すぎる。

【犯罪助長に関する意見】

  • メイド喫茶が題材の犯罪を扱う刑事ドラマが再放送されたが、犯行のトリックが容易であり、視聴者が犯罪の手口を模倣する恐れがある。実際、数年前にメイド喫茶閉店後の店内で誘拐未遂事件が発生している。犯罪予防の見地からは、この回の放送は刑事ドラマとして適切な題材とは言いがたい。春休み中の子どもが見る可能性もあり、昼間の時間帯での放送は如何なものか。

【視聴者意見への反論・同意

  • 番組内容に対して、「子どもに悪影響だ」「子どもが真似をする」という意見が多いが、自分の意見を通すために子どもをダシにしているような内容があるように思える。何がどう悪影響なのか不明瞭なことも多く、仮にそうならテレビを判断基準にした育て方をしなければいいだけだ。子どもがお笑いの下品さを真似たりすることはあくまで遊びであり、コミュニケーションのネタである。
  • 最近、アニメに対する視聴者意見が多いが、どれもアニメの規制に賛成する意見ばかりだ。確かに、ある程度の規制は必要かもしれないが、表現規制が行き過ぎてしまうと本来の面白さが薄れてしまう危険性もある。

【CMに関する意見】

  • 震災中は中断していたが、最近またパチンコのCMが放送されている。深夜の時間帯であればまだしも、子どもが見るような時間帯には放送を控えるべきだ。
  • ACジャパンが「ありがとウサギ」や「こんばんワニ」 などの誤った挨拶の仕方をCMで放送しているが、いまだに平気で放送していることは考えられない。即放送を止めるべきではないのか。

第172回 放送と人権等権利に関する委員会

第172回 – 2011年5月

「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」事案の審理

「大学病院教授からの訴え」事案の決定について ……など

先月の委員会で審理入りが決まった「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」事案について、実質審理の開始を前に申立人から申立てを取り下げたいとの書面が提出された。委員会で協議した結果、本事案については審理を行わないことを決めた。

議事の詳細

日時
2011年 5月17日(火) 午後3時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」事案の審理

本事案は、TBSテレビが2010年4月9日に放送した『芸人記者VS超犯罪現場体当たりスクープSP』における、「若い女性に人気があるアメリカのブランドの偽造バッグ販売店を取材し、ブランド品の模倣品販売の実態を視聴者に知ってもらう」という企画について申し立てられたもの。
衣類・雑貨の輸入・卸と販売を手がける申立人は、その行為は法に触れるものではなく、放送により名誉と信用を毀損されたとしてTBSに対し謝罪等を求めて申立てを行い、先月の委員会で審理入りが決まった。
これを受け、申立人の「申立書」に対するTBS側の「答弁書」および関連資料が提出され、今月の委員会から実質審理が開始される運びとなっていた。しかし「答弁書」提出後、申立人より本件申立てを取り下げたいとの意思表示があり、5月12日付で書面が提出された。
委員会で取り扱いについて協議した結果、申立人側にこれ以上争う意思がないものと判断し、本事案については審理を行わないことを決めた。審理入り決定後の申立て取り下げは初のケースとなる。

「大学病院教授からの訴え」事案の決定について

(1)テレビ朝日・朝日放送から対応報告

今年2月に通知・公表した「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」で、当該局であるテレビ朝日・朝日放送から報告書「委員会決定を受けての取り組み」(5月2日付け)が委員会に提出され、事務局より報告した。
今回の報告書には参考として別の文書が添付されていた。これの取り扱いをめぐって委員会で意見を交わしたが、この添付書面については局側にも検討を求め、次回の委員会で改めて話し合うことになった。

(2)通知書へ回答

本事案の「委員会決定」に関連して、番組に登場する大学病院医師から弁護士を通じてBPO宛「通知書」が届いた。
「通知書」では、番組前半で取り上げられた直腸がん患者の遺族による裁判で、医師が具体的にこの裁判に関わった事実はないとして、決定の「放送内容の概要」のうち当該部分を訂正するよう求めている。
委員会で検討した結果、当該部分は放送内容の要約に過ぎず、委員会の判断として医師が裁判に関わったかどうかを事実認定したものではないし、要約としても放送内容に反していないので、訂正の必要性は認めないものの、医師から訂正の申し入れがあった事実を決定の「放送内容の概要(3ページ)」に「注記」することとした。(「委員会決定46号」はこちらから)
また「通知書」では、「委員会決定」が、医師の勤める大学病院で起きた医療事件の民事裁判高裁判決を誤って解釈しているとして、この点についても訂正を求めているが、委員会の判断に変わりがないことを改めて確認し、その旨回答することとした。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・16件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 毎年、各地区のBPO加盟放送事業者との間で開かれている放送人権委員会との意見交換会を10月4日(火)、中国・四国ブロック地区加盟社を対象に広島で開催することが決まった。
  • 次回委員会は6月21日(火)に開かれることになった。

以上

第49回 放送倫理検証委員会

第49回 – 2011年5月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』 ……など

第49回放送倫理検証委員会は、5月13日に開催された。
4回目の一括審議を行ったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送の『イチハチ』ホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3事案は意見書の詰めを行い、内容面での合意が得られたため、審議を終了した。最終的な修正作業を行い、速やかに当該局への通知と、公表の記者会見を行う。
同じく審議中の日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』についても、担当委員から提出された意見書の修正案に対し、委員の中からほとんど異論は出ず、5月下旬をめどに、当該局への通知と、公表の記者会見を行うことになった。
政治的公平性について審議しているBS11の『”自”論対論 参議院発』については、意見書原案が担当委員から提示され、ヒアリングの概要が報告された。

議事の詳細

日時
2011年 5月13日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

上記2番組で放送された3つの事案は、いずれも出演者からの情報に頼り、事実確認が杜撰であったことから問題が起きており、番組の制作過程に似通った構造的問題を含んでいることから、委員会は一括して審議をおこなってきた。
4回目になる今回の審議では、担当委員から出された意見書原案について詰めがおこなわれ、内容について大筋で合意した。
更に、多忙な制作現場のスタッフには、意見書を読む余裕がないという状況を踏まえて、どうしたら委員会の思いが伝わるのか、どんな方法が考えられるのかについても、意見交換が行われた。
審議は今回で終了し、表現の手直しなどの修正を行ったうえで、新たな工夫を加えて意見書を通知・公表することになった。

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。
3回目の今回の審議では、担当委員から意見書の修正案が提出され、補足的な議論があったが、特段の異論などは出されなかった。
このため、必要な加筆修正を経て、5月下旬をめどに、当該局への通知と、公表の記者会見を行うことになった。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

番組の司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるのではないかとされる事案。
担当委員が作成した意見書の原案が提示され、あわせてBS11に対して行ったヒアリングの概要が報告された。憲法が定める表現の自由と、放送法や民放連の番組基準などが掲げる政治的公平性をどう考えるかという問題や、番組編成全体で政治的公平性を配慮しているという当該局の主張に説得力があるかという問題などについて、さまざまな議論が交わされた。次回の委員会では、こうした議論を踏まえた修正案をもとに、審議を継続する。

以上