第11回 放送倫理検証委員会

第11回 – 2008年3月

光市事件を巡る裁判報道について

事件報道・裁判報道シンポジウム …など

光市事件を巡る裁判報道について

東京キー局全てと大阪・広島の局を合わせて8局へ質問状を送り、その回答をもとに、小委員会が選んだ情報番組を対象に在京民放4局からヒアリングを行ったことが報告された。これを受けて刑事裁判の理解やコメント、演出など、いくつかの番組制作上の問題点が提起され、議論がおこなわれた。

  • ヒアリングの印象では、制作者の裁判に対する理解が十分できているとは必ずしも言えない。制作者の頭にあるのは、”大いなる凡庸”というのか世間的常識に止まり、「なぜそうなるのか」の検証がされていないのではないか。
  • いま司法改革が進む中、”大いなる凡庸”に近づけようとするのは当然。一般の目線に立ってでしか作りえない。よって明らかなルール違反の個所を指摘してはどうか。
  • 個別的に見た場合、疑問点が各番組ともたくさんあり、限りがない。
  • 民放連放送基準では、これはいけない、留意する、避けなければならない、と守らねばならない度合いがいろいろある。度合いのきつい「これだけはしてはいけない」という点で指摘したほうが良いのではないか。
  • いま問題になっているのは、放送基準34条の「取材・編集にあたっては一方に偏るなど、誤解を与えないよう注意する」ということと32条のニュースは市民の知る権利に奉仕するものであり、公正でなければならないという条項だ。このあたりをどこまで言うのか。
  • 8局からのアンケートを見ると、納得できる回答もある。番組で勝手な意見が述べられるのは仕方ないが、バランスをとらなければならない。
  • 遺族の感情を傷付けているという番組内での批判の仕方はフェアでないのではないか。弁護団も記者会見でなぜなのかの説明はしている。
  • 裁判を扱う時は公正でなければならないとか視聴者に誤解を与えないようにするというのを、どのように織り込んでいくのかが問題になる。「これはこの基準から外れている」という指摘がないと委員会が意見を言う根拠がなくなるということは押さえておくべき。

以上の議論を踏まえ、小委員会で「意見(案)」を詰めることになり、4月1日に臨時委員会を開催して、最終的結論をまとめることとなった。

事件報道・裁判報道シンポジウム

前回委員会で東京大学大学院情報学環との共催が確認されたことを受けて、東大との交渉経過が報告された。そして、5月30日(金)に東京大学にある情報学環・福武ホールで開催することで了承された。

なお、シンポジウムの進め方、パネリストなどの人選、役割分担などについては、引き続き東大側と密に協議し、開催に向けて準備を急ぐこととなった。

番組審議会へ審議要請した2番組の対応について

1.香川・坂出市の事件に関し、加害者の子供(成人)が被害者の家を訪れ、謝罪するシーンを密着取材し放送した番組

当該局からは、「指摘されているテーマや内容に鑑み、局内に設置されている第三者機関「『放送と人権』特別委員会」において審議するほうが適切という判断をしたこと、2月25日に急遽、開催された上記特別委での審議結果を委員会宛に報告するとともに、審議結果を翌週の当該局番組審議会に報告した後、自らホームページ等で公表するとの報告が届いた。

2.憧れの女子アナに握手させると騙して、目隠しをした男性タレントに、全裸になったお笑いタレントの性器を触らせる番組

当該局からは、番組審議会委員長が視聴し「下劣な内容で、審議会にかけるまでもなく、各委員も同様意見と考えられる」として局に自戒を促したことを受けて、制作者にその意を徹底した旨の報告書が提出された。

委員会としては、当該局が自主・自律の原則に則り、それぞれ対応したことを了とした。

報告事項

1.「健康番組の表現方法について」

鮫肝油を飲んだ3分後に、血液がサラサラになるという健康番組で、その科学的根拠に視聴者から疑問が呈された。放送当該局と番組素材を持ち込んだ代理店との間で収録当時の事実関係などの検討がなされた。その結果、当該局は番組の中止と、一度考査を通過した番組素材についても社会情勢などを配慮し必要な場合は再考査を実施することとなった。

2.「青潮映像の誤挿入」

千葉市の港で発生した青潮の実態を紹介する番組の中で、一部異なった場所、時期の資料映像を挿入したもの。放送後、当該局が気付き、後日の同番組内およびホームページでお詫びした。

3.「道路財源問題報道について」

道路財源問題を扱った番組について、自民党より虚偽及び放送倫理上問題があると検証要請があった。討議の結果、指摘された問題のうち明らかに間違って放送された点は放送直後にお詫びと訂正がなされている。その他はデータの理解の仕方およびバランスの捉え方により見方が異なるが、この番組に委員会で取り上げて是正を求めなければならないほどの放送倫理違反があるとまではいえない。以上のことから、委員会では審議・審理しないこととした。

視聴者意見の概要

2月初旬から3月初旬にかけてBPOに寄せられた視聴者意見のうち、いくつかの番組が報告された。

  • 観光地で多数の猿が山から下りてきてホテルや車に入り込み、食べ物を持ち去るという話題を放送した番組。番組スタッフが餌付けをしてサルを呼び寄せ撮影したというホテルのブログが発端になり、事実とすれば「悪質なやらせだ」との意見が多数寄せられた。当該局はこれを否定、その後ホテル側が謝罪してブログも削除。
  • 「ロス疑惑」事件で逮捕された三浦和義元社長の米国人弁護士について「イケメン弁護士」というテロップ表示したニュース番組。  なぜバラエティー番組的な手法を使うのか、報道番組としての自覚が欠如しているとの視聴者からの批判。

以上

第10回 放送倫理検証委員会

第10回 – 2008年2月

光市事件を巡る裁判報道について

事件報道・裁判報道シンポジウムについて …など

光市事件を巡る裁判報道について

小委員会で洗い出した問題点をベースに、東京キー局全てと大阪・広島の局を合わせて8局に対し質問状を送ったこと、また回答を受けてヒアリングを行う予定であることが報告された。

質問内容は、刑事裁判手続き、刑事弁護人の役割についての理解、番組の作り方、演出、遺族会見・弁護人会見の取り扱いなど17項目。

  • BPOが何をするか、基本的スタンスの問題だが、「たとえ間違った見解でも発表すること自体は自由である」という基本原則に触れるような処理の仕方をすると大問題である。現在の司法制度のあり方、弁護士のあり方などオーソドックスにはこうであるというのと、あり方そのものも批判されるべきであるというジャーナリズムの立場がある。批判の目を摘むべきではない。
  • 「間違った発言を禁止するべきだ」とはBPOとしてはいうべきでない。ただ明らかに間違ったコメント、誤解に基づくコメントが一方的になされている状況について、もっとバランスがとれないかと思う。
  • 論評は自由だ。何が問題かというとコメンテーターは(テレビ局が制作した)映像を見てコメントするが、その映像自体が正確に伝えていない、そこが問題の本質ではないか。現場の方に勘違いや理解の浅さがあるからなのか。
  • どの局も申し合わせたように被害者側に立って、例外なく弁護団を袋だたきにしている。メディアが一定の方向に向いてしまう。それが裁判員制度に多大な影響を与える、危惧すべき一例だ。しかし一方で、テレビは世論に対し臆病であり、一定の方向を向いているとすれば、それは世の中全体がそう見ていると理解しないと、世論を批判するのかということになる。
  • 何が真実かわからないなかで、法廷の再現という手法を取る。見る人はそれが事実のように思ってしまう。その怖さ、世論は誘導できるということ。局側は視聴者に分かりやすい映像というが、それは視聴者を馬鹿にしていないか。
  • やるなとは言えないが、もう少し反対の立場も提示できないのか。
  • バランスというより正確であって欲しい。情報が断片的であり、荒唐無稽なところしか分からない。

各局への質問に対する回答が一般論でしか返ってこないことも考え合わせ、小委員会を拡大することも併せて、具体的に各局現場レベルからのヒアリングを行うこととした。

事件報道・裁判報道シンポジウムについて

事務局よりシンポジウムを開くにあたり、目的、対象、委員会の立場、規模など討議材料としてのメモを配付。

これを受けて委員より以下の提案があった。

「BPOが各局を呼びつけて聴くようなイメージは良くない。事件報道の問題は、裁判員制度もあり、放送だけではなく活字を含めた報道全体の問題になっている。東京大学大学院情報学環では、メディア研究者とメディアの現場が意見を闘わせる場を検討していることもあり、東大情報学環とBPOの共催でやったら有意義になるのではないか」

これに対し各委員からは、「テレビだけでなく、活字の世界に広げていくのも面白いのではないか」「日弁連や最高裁といったところを考えてもいいのでは」といった意見が出され、共催のため事務局が東大側と折衝することとなった。

報告事項

先月の委員会以降に出された2件の委員会決定と、新聞報道された番組について報告、議論が行われた。

  • フジテレビ「27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」
    1月21日フジテレビに対し通知。フジテレビ側からは、3ヵ月以内に改善策を報告したい旨の表明があった。その後、記者会見を行った。
  • テレビ朝日「報道ステーション『マクドナルド元従業員制服証言』」
    2月4日テレビ朝日に対し通知。決定文を記者クラブに配付した。
    テレビ朝日は当日の『報道ステーション』でこの件をニュースとして流した。(録画を視聴)
  • 昨年7月、中国で「段ボール入り肉まん」が作られていたと現地テレビ局が捏造していた問題で、その店の肉まんを食べていたという客の証言を独自の取材でインタビューしニュースで報じた局が、捏造発覚後に訂正していないと一部新聞・週刊誌で記事となった件。事務局から、「現地テレビ局が捏造を認め謝罪したことをニュースで報じたことで、事実関係の訂正は行われており、街頭インタビューのみあらためて訂正する必要はない」とする当該局の見解を説明した。これに対して、委員から問題だとの意見があり、録画を視聴後、議論を行った。

(問題点)

  • 現地テレビ局が捏造だったと謝罪した後、当該証言の信憑性の検証が必要ではなかったか。
  • 訂正がなされなければ、実際にはこうした段ボール肉まんがあったのだと視聴者に思い込ませてしまうのではないか。
  • 訂正もせず、沈黙する事は証言そのものが捏造であった事を認めることにならないか。

(議論)

  • 証言者は「まずくて吐きそうだった」と言っているだけで、段ボールが入っていたとは言っていない。
  • 放送時点では、証言を放送した局は、段ボール肉まんはあると思ったし、食べたと言う貴重な証言が得られたので放送する価値はあった。
  • その人が本当に信じてそう言ったのかもしれない。その場合は訂正の対象にならないのではないか。証言者は間違った思い込みで言ったようですとわざわざ言う必要がないように思う。
  • 街頭インタビューで事実と違うことを言った人がいた場合、いちいち訂正せよとは言えない。
  • ヤラセでない限り問題はないと思う。

以上を受けて、委員会としては、討議内容を議事録にとどめることとした。

視聴者意見の検討

1月中にBPOに寄せられた視聴者の意見のうち、2つの番組について視聴するとともに議論を行った。

1.香川・坂出市の事件に関連し、加害者の子供(成人)が被害者の家を訪れ、謝罪するシーンを密着取材し放送した番組
視聴者からは、「被害者には気の毒な事件だったが、子供たちには何の罪もない。脅迫めいた怒りをぶつけられ、ただ黙っているしかない子供を撮り、放送するのは人権無視だ」という意見。

  • なんでこんなことをやるのか?
  • 子供たちが自発的に被害者の家に行ったにせよ、放送することはどうなのか。デスクはやめようと言わなかったのか?
  • 被害者家族がテレビ撮影を許可したため、謝りに行った子供たちが渋々了解するしかなかったとしたら極めて問題だ。
  • キャスターが最後に言った「事件を起こせばこういうことになる」というコメントは気になる。見せしめ的な言い方で後味が悪い。
  • 事件当初は、被害者家族を悪者に仕立て上げるような作り方をしておいて、今度はその人の心情に寄りかかって作っている。
  • おかしいのは、子供が謝るのが当たり前だという作りをしていること。
  • 事件報道をどう考えるかにもつながる。取材する立場なら、どんなものでも撮ると言うだろうし、そこに倫理的なものを持ち込むのは難しい。

2.目隠しをした芸人に、憧れの女性アナウンサーと握手させるとだまして、実は全裸になった男の性器を触らせる番組。

  • いくら深夜の番組とは言え、下劣過ぎる。修正を入れれば何でもありなのか。
  • 制作者の意見ではなく、局の審議会がどう思うか聞いてみたい。

以上の討議を経て、上記2つの番組については、それぞれの局が自主的・自律的に対応するべき問題であり、番組審議会で審議していただくよう要望することとした。

以上

第9回 放送倫理検証委員会

第9回 – 2008年1月

フジテレビ「27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」について

テレビ朝日『報道ステーション』マクドナルド元従業員の制服着用告発証言報道 …など

フジテレビ「27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」について

3回の審議を経て、担当委員がまとめた「意見」案をベースにして議論した。

  • 経営困難という断定、強調を繰り返し、その繰り返しが江原氏にスポットを当てるためのものであった。
  • 江原氏を見せることで、本来の趣旨である励ますということがまったくなくなってしまった。こういう出演のさせられ方をしたら傷ついてあたりまえだ。
  • フォロー企画に何のタイトルもクレジットも冠しないで放送したことについても、言及したほうが良い。Aさんとフジテレビとの間では解決されたにしても、視聴者にはなんの説明もない。あのやり方は姑息だということを指摘しておいたほうがいい。
  • この番組の作り方に、明らかに虚偽の部分というのはあったと思う。「お父さん、実は後ろにいらっしゃっているの」というのは、虚偽以外の何ものでもない。放送番組基準の中にはこのようなものはやるべきではないという基準がはっきり書かれており、それに照らしたら、あの番組だけでなく、類似の番組も基本的におかしい。この委員会が、そういうものをバラエティー番組だから何でもありみたいな角度で認めてしまったら、まずいのではないか。
  • 類似の番組についても言及すべきかどうかだが、具体的にある特定部分が明らかにおかしくて、しかもそれを問題にする人がいたときには、そこを議論するというのがわれわれの役目であって、全体としてこうだからという話に解消させると、すごくまずいことになると思う。
  • われわれが意見を述べるとすれば、放送基準の54条、占い、運勢判断及びこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしないという、これしかない。もろにこれに触れているわけではない。断定したり、無理に信じさせようとしているわけではないので。ただ、非常に肯定的に扱っているという意味では、少なくとも放送基準の解説とはやや違う。

委員の意見の中から、取り入れるものは取り入れて「意見」を最終的に取りまとめることを、担当委員と委員長に一任し、本件の審議を終えた。(フジテレビへの通知と記者会見は1月21日に行った)

テレビ朝日『報道ステーション』マクドナルド元従業員の制服着用告発証言報道

前回、委員会に提出されたテレビ朝日の報告書に対して、委員会として問題点などについて回答要請し、回答を得た。委員会では、回答内容について次のような意見が出た。

  • この回答を公表するとしても何かつけないと、この木で鼻をくくったような回答をそのまま認めた形になってしまう。
  • コメントをつけるべきだと思う。この回答を踏まえた委員会の意見を、こういう点はやっぱり問題がある、反省してほしいという意見をつけるべきだと思う。
  • 結局、これも「わかりやすく」とか「映像がほしい」ということだ。こうでなければニュースは伝えられないというふうに思ったら、映像のないニュースなんて何も伝えられないということになってしまう。それがニュースに接する態度かということだ。
  • やっぱりおもしろさ、わかりやすさと、結論先にありき、それを何度も注意していかないといけない。
  • 問いかけの趣旨というものに正面から答えられていないことに対しては、遺憾だという意見を示しておきたい。

委員会では、コメントをまとめる委員を決め、各委員の了解を得て質問書と回答書の内容、そして委員会のコメントを公表することになった。

光市事件裁判報道

18番組をチェックして、問題点を抽出した委員長代行のリポートをもとにして審議した。

  • 視聴者の知る権利を侵害しているのではないか。つまりほんとは裁判でいろいろなことがあるのに、自分たちが番組を作るために都合のよい部分だけをピックアップして視聴者に伝えているということが一番大きい問題なのではないか。
  • 確かにこの事件はセンセーショナルな事件、難しい事件でもあるが、そもそも論として裁判というものをどう考えているのかということを放送局に問いたいと思った。
  • 弁護活動に対する無理解。弁護士は何のためにいるのかということ、それはすごく疑問に感じるところが多々あった。
  • 被害者遺族の発言の取り扱いで、放送局からすれば、遺族がこういうことを言ったんだということを放送しているということかもしれないが、長々と時間を取ってやるということは、放送局がこの被害者遺族の言っていることに共感しているというような意味合いを持ってこないのか、非常に気になった。
  • この問題は、そもそも刑事裁判制度が日本のメディアにまったく理解されていないという、そこに問題がある。もともと日本で法教育を全然やっていないから、専門家だけの世界になってしまって、専門家の間では当然、近代的な訴訟制度はこうあるべきだと思われていることが、まったく世間に共有されていないことがよくわかった。そこに根源的な問題がある。
  • 番組の作り方で困ったなと思うのは、ワイドショーとか生ワイド等は、昔はある程度は裏づけを取った情報に関して1人か2人にコメントしてもらったのが、最近、情報の検証みたいなことをほとんどやらないでコメントに全部頼るという作り方が常識になってしまった。この辺で一度、警鐘を鳴らしておかなければいけないという作り方だ。
  • この問題を考えていくキーワードとして、弁護団に対する誤解と公平性とフェアコメントというか、論評が問題なんだろうと思う。
  • 全体として、いわゆる死刑廃止論者を少数派、異端者という線は全番組にほぼあると思う。その少数意見に対する耳を傾けようという姿勢がほとんどない。そういう意味では、ほんとに誤解を視聴者に与えるだけじゃなくて、ある意味じゃ世論を誘導しているみたいなものがある。知る権利、つまり視聴者に対してまったく何も伝えていない、片方の意見を。そういう意味で、すごく偏向報道という、そして極刑礼賛というか、極刑を待っているという状況が何か作られていくなという、危惧を感じる。

この案件は作業量も多く時間がかかるため、小委員会を作り検討することになった。

坂出市事件報道

坂出市事件の報道問題をどのように扱うかについて、議論した。その結果、捜査段階の報道のあり方は、裁判員制度にも絡んでくる大きな問題であり、放送現場の人たちと一緒に考えていきたい。検証委員会が発足して1年になる5月をめどにシンポジウムを企画することになった。

報告事項

  • 読売テレビ「奈良・放火殺人事件を巡る調書漏洩事件」報道の再報告
    前回の報告では、なぜ誤報を出したのかなどに触れられていなかったため、再報告を求めた。1月9日付けで再度提出を受け、委員会はこの報告を了承した。
    読売テレビの報告内容はこちら
  • フグ肝入り釜飯をタレントが作って食べた番組に厚生労働省が行政指導
    昨年12月13日に放送されたバラエティー番組で、タレントが、宮崎県内でシロサバフグ(地元ではキンフグと呼ばれる)をもらい、毒のない肝も入れて釜飯を作って食べた内容が放送され、ホームページでも調理方法を紹介した。これに対して厚生労働省は「番組を視聴した一般国民が、安易に調理行為を真似た場合、死亡事故につながりかねず、フグ毒の知識を持たない一般国民がフグを調理することを助長するものであったことは、きわめて遺憾」として、健康被害の発生防止について対策を講じるよう指導した。
    これを受けて、当該局はHP上で注意を呼びかけ、翌週の番組終了後にも注意を呼びかけた。

    以上の報告に対して委員から、「本来は当該局が、当社はこういう指導を受けたことに対して、こういうことをしましたとホームページに公開すべきだ。テレビ局が自分たちがどう対応したかということを公表する責任はないのかなと思う」との意見が出た。

  • 三宅島観光協会事務局長公募選考を追ったニュース企画について
    三宅島観光協会の事務局長公募選考を伝えたニュース企画について「女性応募者が面接で泣いたシーンは、あたかも面接者が不当な質問をしたような印象を与えた」と、観光協会から文書が届いた。事務局で番組を視聴した結果、泣いた本人も面接会場から出てきて、泣いてしまったと明るく言っており、面接者が不当な質問をしたから泣いたという誤解は視聴者に与えてはいないと判断したことを報告し、委員会は了承した。

以上

読売テレビ「奈良・放火殺人事件を巡る調書漏洩事件」報道の再報告

《報道の内容》

当該ニュースは、昨年9月28日奈良地検が秘密漏示容疑で令状に基づいて京大教授の自宅と大学の研究室を家宅捜索したことを受け、当日の昼ニュース及び夕方ニュース(いずれも関西ローカル)内で放送したもので、「関係者によりますと(中略)調書から○○教授の指紋も検出されたということです」などと、教授が一連の事件に関与していた可能性が強いことを示唆する内容となっており、実名で報道したものです。

《報道にいたる経緯》

「調書から○○教授の指紋も検出された」という情報については、取材の過程で9月27日に、入手したものです。この情報に基づき、弊社報道部は、28日早朝から、当該教授の自宅に取材班を派遣しました。当日、奈良地検の家宅捜索が行われた際に現場に居合わせた報道機関は、テレビ局は弊社のみで新聞は2社でした。当日午後には大学研究室の捜索も行われ、これは全社が取材したものと見られます。

捜索が実際に行われたことを受けて、前述の通り弊社は当日の昼と夕方のニュースで報道いたしました。この際、「教授の指紋検出」については、捜索が行われた事実に引きずられ、情報の真実性について確認が取れないまま、報道に及んだものです。

《謝罪に至る経緯》

11月2日に奈良地検が事件の最終処分を発表し、教授が事実上事件との関わりはないとされたにも関わらず、当日のニュースの中で教授について全く触れず、名誉回復を怠る事態を招きました。

また、「指紋の検出情報」については、その後も引き続き取材を進めましたが、その存在を裏付ける情報は得られず、11月13日に教授代理人に対して、弊社の一連の報道に不備があったことを伝えました。

弊社では、前回の報告書に記載の通り、今回の事案は報道機関としての責任・役割を十分に果たしていなかったとの認識のもと、12月10日付けで5名の社内処分を実施し、翌11日に教授宛に取締役報道局長名での「お詫び」文を提出しました。

《名誉回復措置》

弊社が「お詫び」文を提出した12月11日、教授代理人の弁護士が記者会見を開き、提出文書を公表しました。この記者会見について弊社は、当日夕方のニュース(関西ローカル)で取り上げ、名誉回復措置の一環として報道しました。

また12月18日の夕方ニュース(関西ローカル)において、「調書漏洩事件」全体を振り返る年末特集の中で、自宅が家宅捜索を受けた教授について、指紋は検出されず事件に関わりが無かったこと、弊社がお詫びしたことを改めて伝えました。この措置については、単に謝罪の放送をするより名誉回復の効果が高いと判断し、実施したものです。

以上

第8回 放送倫理検証委員会

第8回 – 2007年12月

フジテレビ 『27時間テレビ・ハッピー筋斗雲』審議

事務局からの報告 …など

フジテレビ 『27時間テレビ・ハッピー筋斗雲』審議

「善意の放送の形をとりながら、結果的に自分や周囲の人たちが傷つけられた」と、出演させられた一般の人から抗議が寄せられた番組について、前回委員会後にフジテレビへ詳細な質問を行った。その回答をもとに、「審理」か「審議」かを巡って議論が行われた。その結果、「審議」事案として、番組の作り方についての放送倫理上の問題を指摘し自省を促す提言を行うことにした。そして、これまでの議論を踏まえて、虚偽の設定や、構成上に作為があったことなどについて、担当委員が委員会の意見をまとめ、次回委員会で最終結論を出し、その後公表することになった。

なお、委員会では、「審理」だから重い、「審議」だから軽いという考えはとらない。より良い番組作りのために役立ててほしいので、放送局はそのことを理解してほしい。また、公正さを保つために慎重に時間をかけざるを得ないことを周知しようということになった。

事務局からの報告

事務局から以下の件について報告し、委員会はその扱いを協議した。

1.「奈良・放火殺人事件をめぐる調書漏洩事件」報道・・・読売テレビ報告書。

  • 「奈良地検が秘密漏示容疑で令状に基づいて京都大学教授の自宅と大学の研究室を家宅捜索した。その日の昼のニュースと夕方のニュースで、”関係者によりますと(中略)調書から○○教授の指紋も検出されたということです”と、教授が一連の事件に関与していた可能性が強いことを示す内容で、実名を映像入りで報道した。しかし、捜査の結果、教授の指紋は検出されず、奈良地検は当該教授に対する立件を見送った。読売テレビは、捜査当局が最終処分で教授が事件と関わりがないとの判断を下した際に、その事実を伝えることにより教授の名誉回復を行う報道を怠った。このため番組担当者らの社内処分を実施し、教授あてにお詫びの文書を提出した。また、年末の番組内で、その事件を振り返る中で、名誉回復措置を取ることを考えている」

以上の報告内容について委員会では、どういう裏付けを取って報道したのかが不明であること、これから行われる名誉回復措置がどういうものであったのか、次回までに最終報告書の提出を要請、検討して公表することにした。また、今後、犯罪報道の問題について委員会が検討する場合、ケースのひとつとして取り上げることも考えたほうがいいかもしれないなどの意見が出た。

2.『報道ステーション』マクドナルド元従業員制服証言報道・・・テレビ朝日報告書

  • マクドナルドのフランチャイズ店で調理日の偽装があった問題で、直営店でも調理日改ざんがあったと元店長代理が制服を着て告発発言した。しかし、「やめた人が制服を着ているのはおかしい」、「制服は現在の制服ではない」など視聴者からの指摘が多く寄せられた。テレビ朝日は、番組で演出方法に誤りがあったと放送し、委員会宛に説明文書を提出した。

委員会では、元従業員の制服姿の告発発言と、お詫びの両方の録画を視聴して、議論。

  • なぜ、制服を着せる演出をしたのかの説明がなされていない
  • 当委員会の『朝ズバッ!』に対する見解を踏まえて、内部告発の扱い方を学習しているとは思えない。

などの意見が多く出された。検討の結果、委員会からテレビ朝日に質問書を出し回答を求め、その内容を公表するという方針を決めた。

3.香川・坂出市事件の犯人視報道(祖母と二人の孫が殺された事件)

  • 殺された子供の父親が、警察へ通報したのがなぜ遅かったのかとの疑問がコメンテーターと司会者の間で出た番組に対し、視聴者から「犯人視している」との抗議が多数寄せられた。他の局では、一部報道で発見から通報までの時間の経過が疑問視されていることを父親に質問して、その疑問に怒った父親の姿を何度も繰り返し放送した。また、別の番組ではコメンテーターが共犯について息子さんしかいないと発言。さらにある番組では、コメンテーターが「殺された祖母が孫を盾にしたのではないか」と憶測を述べた。容疑者逮捕後も犯人視した番組で謝罪がなされていないなどの視聴者意見が多く寄せられた。事件の捜査段階での報道のありかたについて、大きな問題が多く含まれている。

委員長から「参院総務委員会でも、オウムの事件のとき以来、まったくテレビは学習していないではないかという意見を述べられた議員がいて、この問題については次の放送倫理検証委員会で議論の対象としますと申し上げた。この委員会で扱うとすると、犯罪の捜査段階の報道のあり方という視点からで取り上げることになると思うが、どうするのか議論していただきたい」と発言があり、議論した。

  • 程度の問題だが、犯罪の捜査過程において、犯人の推理等を延々とやること、繰り返しの映像で印象づけるということはいかがなものかと思う。しかし、これは一切やってはいけないという具合にもいかない。
  • 結論から言えば、こんなことをやっていると、犯罪報道にどんどん規制がかかってきますよということ。
  • 変なことになると、犯罪報道全部が萎縮してしまう結果を招きかねない。いけないのは犯人視報道と憶測報道だ。
  • 委員会として犯罪報道の問題をテーマにシンポジウムを開いたり、各社の代表を全部集めて議論をぶつけ合わせるというようなことをしてはどうか。一定の結論を出そうということは考えないで、この問題をいっしょに考えようというシンポジウム的なことをやるなど、もっと違うやり方、対応もあるのではないか。
  • 個別に一つ一つ取り上げていくよりは、もっと大きい影響を与える可能性があるということでは、いいやり方かもしれない。

4.光市事件裁判報道

  • 「光市事件」の報道を検証する会から、「光市事件の差し戻し審報道では、あまりにも弁護団へのバッシングがひどく、事実関係についても間違いや歪曲がある。また、制作姿勢としての作為や、いわゆる演出過剰、再現映像でも事実に反した部分もあって非常に誤解を与えている。当該局には、質問書を出したが、いずれも門前払いのような回答で、真剣に考えてくれない。裁判員制度導入を間近に控えて、こういう裁判報道のありかたについて、6局18番組を取り上げて、委員会で検証して欲しい」と申し入れがあった。

委員からは、

  • 小委員会を作ってやっていかないと、できないのではないかと思う。
  • 公正な論評やコメントの範囲にとどまっているのかどうか。そこを逸脱して、ほんとに問題が番組の中にあるのであれば、それは取り上げないといけないと思う。
  • 裁判報道一般のあり方のようなテーマを入れると、手に余るのかなという気もする。

最後に、委員長が、当該局は基準にまったく反していないと言っているが、委員会として「具体的にこの点についてはどうして基準に反していないと思うのか」と質問すべきと思われるところを抽出することから始めようと提案し、その作業を委員長代行に要請。その上で、どうするか、次回委員会で検討することにした。

委員会では、これまで提出された資料、当該局から提供された18番組の放送録画を配布し、次回委員会までに視聴してもらうことにした。

視聴者意見の検討

一ヵ月間の視聴者意見の概要を事務局が報告した。

香川・坂出市事件についての意見が多く寄せられ、また言葉の問題、メディアスクラムなどについての意見が特徴的だった。

以上

第7回 放送倫理検証委員会

第7回 – 2007年11月

一般の人にドッキリカメラ手法を用いて、霊能者が亡き人のメッセージなるものを伝え、「傷つけられた」と抗議のあった番組

事務局からの報告 …など

一般の人にドッキリカメラ手法を用いて、霊能者が亡き人のメッセージなるものを伝え、「傷つけられた」と抗議のあった番組

審議では、当該放送局から委員会へ提出された2度目の回答書と、出演させられた一般の人たちに調査役が直接行った聞き取り調査の内容、および双方の主張の対比を事務局が説明。担当委員が問題点を整理して説明した。そのうえで、この委員会がどう扱うのがよいのか、企画・制作手法やいわゆる霊能者と呼ばれる人物の扱いなどについて多角的に議論した。

委員会としての結論を出すには至っていないため、議論のポイントや主な意見を記す。

  • 一般の人を番組に登場させるにあたっては、その人の心情や生活への配慮が最低限のマナーだ。
  • 本来、カウンセリングは、本人の意思で受け、その内容はプライバシーにかかわるので公開すべきものではない。このケースでは本人の了解もなしに、しかも、スピリチュアルと名づけている科学的根拠のないカウンセリングを受けさせている。
  • 一般の人を出演させる手続きが問題。
  • テレビ人のテレビ観そのものがかなり頽廃し、傲慢さが感じられる。
  • 何を言われようが、そのとき盛り上がればいいという、ものすごく短いサイクルでしかものを考えない傾向が年々強くなってきている。この委員会は”おかしい”としつこく言い続ける必要がある。

委員会では、当委員会が何らかの意見を公表するにしても、当該局の説明を聞く必要があるとして、事実関係について具体的に尋ねる質問書を当該局に出し、回答を見た上でこの問題をどう扱うか、もう一度議論することになった。

なお、審議の中で、前回の議事概要を公表するに当たり、当該局から、3点について事実誤認ではないかとの疑義が出され、その旨を併記して欲しいとの要請があったこと、それに対して要請を断った理由などを事務局から報告した。

事務局からの報告

TBSから検証委員会に提出された2つの文書を報告。

  • TBSの番組審議会が、放送倫理検証委員会の見解を受けたあと、8月、9月の2回の審議を経て、10月に会社に対して提出した(再発防止に向けて取り組む方策などをまとめた)意見書。
  • TBSの第三者委員による常設委員会『「放送と人権」特別委員会』がTBSに対して出した”改善策をまとめ、改善策を盛り込んだ報告書を作成すべきだ”との意見書。

視聴者意見の概要

10月委員会以降の視聴者意見の概要とデータを報告。

試合と試合後の亀田関連報道についてと、音楽ソフトの紹介の仕方についての意見が集中し、全体として1ヶ月間で初めて2000件を超える意見がBPOに寄せられた。亀田問題について委員からは次のような意見が出た。

  • TBSは、亀田贔屓の放送をやるんだということは、いわば”偏理偏党”ではっきりしている。問われるとすれば根本のところでスポーツ番組をどう考えるのか、スポーツというものの素晴らしさをどう伝えていくかというのがないことだ。
  • スポーツをキャラクターショーにしてしまう。フィギュアの競技中継に「浅田真央物語」なんかを入れてしまうということも構造的には一緒だ。
  • バレーボールの中継もそうだ。わけがわからない芸能人が応援団に入っていて、スポーツファンはばかばかしくて見ていられない。
  • ああいうショーアップとか、スポーツのプロモートとかが、スポーツそのものをだめにしているということは、大きな問題だが、どれを取り上げるかとなると難しい。
  • TBSが偏見を持って亀田を持ち上げれば、必ずそれに反論する勢力が出て、ほうっておいても、上手にバランスがとれていっているような気がする。
  • テレビはどこか見世物であっていいという面もあるから、それをモラルでとやかく言うことはない。
  • こうやれば受けるだろう、視聴者はこういうものを求めているのだろうというそのレベルが低いのでは。

以上

第6回 放送倫理検証委員会

第6回 – 2007年10月

裁判員制度と事件報道

総務省の行政指導 …など

裁判員制度と事件報道

裁判員制度の発足を1年半後に控え、委員から事件報道のあり方を議論する必要があるのではないかとの問題提起があった。委員会として検討する必要があるのか、あるとするならどういうやり方があるのかを審議した。

まず提案委員から、立法段階からの報道のあり方をめぐる議論の流れが紹介された後、「公正」「推定無罪」「予断排除」「評議の秘密」の裁判の原則、9月のマスコミ倫理懇談会第51回全国大会で最高裁総括参事官から「被疑者があたかも犯人であるかのような事件報道のなかで、裁判員が公正・中立な判断をできるかどうか不安がある」との懸念が表明されていることなどをふまえ、委員会として公正な裁判を受ける被告人の権利と報道の自由をどうバランスをとるべきか、議論を深めるべきではないか、との問題提起があった。

議論の概要は以下の通り。

  • 基本的に、この委員会の存在理由は、既に放送されたものについて議論すること。”予習”としてはわかるが、放送されてから議論するのではないか。
  • 問題になるのはテレビの影響力をどうみるか。基本をおさえるのは大事だが、具体的事例でないと難しい。
  • まだ報道側の自主的なガイドラインができていない。できてからでないと議論もしにくいのではないか。
    この件に関しては、具体的事例がないと議論しにくいという意見が多くだされ、報道側のガイドライン作成を待ち、具体的な番組などがあった時にあらためて議論することになった。

総務省の行政指導

昨年から件数が増えている総務省の行政指導について、委員会として審議するかどうか、するとすればどういうやり方があるかを議論した。

  • 総務省と各局が個別対応しているが、どう対応したのか事例研究し、情報が周知されることが必要ではないか。
  • 総務省が、どういう根拠で指導を行ったかがわからないものが多い。社会に公開する仕組み、いわば”可視化”が重要。
  • 委員会として、運営規則第4条にある「放送倫理を高め、番組の質を向上させるため」と行政指導のあり方・放送局の対応の議論をどう結びつけるのか。
  • 何か問題があるとしても行政指導に対して表現する側(放送局)が毅然とした態度を示さなければ委員会としてはやりようがないのではないか。

こうした意見が出された後、委員長から「委員会として審議あるいは審理している番組などが行政指導を受けていれば、取り上げようもあるかもしれないが、過去に指導を受けた番組について、改めて委員会で議論するのは、委員会の目的からして難しい」との判断が出された。

一般の人にドッキリカメラ手法を用いて、霊能者が亡き人のメッセージなるものを伝え、「傷つけられた」と抗議のあった番組

「善意の放送の形をとりながら、結果的に自分や周囲の人たちが傷つけられた」と出演させられた一般の人から抗議が寄せられた番組について、制作手法や霊能者の使い方などについて審議した。なお、審議に先立ち、事務局が当該放送局の放送後の対応を報告し、出演者から抗議を受けた後、制作放送された当事者の活動を改めて紹介し直したフォロー番組を視聴した。

  • 取り上げた人に対する愛情が感じられない。最初から「感動を作ってやろう」という意図が見える作りだ。
  • 抗議を受けて作ったフォロー番組は、訂正でも何でもない。最初の放送は、相手方の了解をとらずにドッキリ手法で騙している。最初からストーリーありきで作っている。
  • 出演者にとって心外な内容を前提にストーリーができているのではないか。あざとい印象がある。仮に、それが事実であったとしても、触れてほしくない、開示されたくない情報を出すことを本人に断わらずに放送していいのか、という問題があるのではないか。
  • 仮に一般の人をだまして作るドッキリ手法の番組が許されるとしても、結果として撮影された人が喜んで納得しなければ、その時点で失敗。放送してはいけないと思う。
  • 有名タレント、有名な霊能者に会えば喜んでくれる、といった作り手の驕りがどこかにあるのではないか。番組の作り方の問題だと考える。
  • 委員会として何を問題にするのか。一般の人をだましたような作り方と霊能者と呼ばれる人の使い方、その発言内容が問題になるのではないか。また、抗議を受けて作ったフォロー番組は、訂正ではないので一般視聴者はわからない。問題のある番組を作ったという意識がないのでは。
  • 民放連の放送基準には、迷信、占いの類の表現に関する条文や、個人的な問題を扱う場合は、出演者および関係者のプライバシーを侵してはならないとか、不快な感じを与えてはならないなどいくつか条文がある。これに触れるという言い方はできるのではないか。
  • 総務省が放送局の作った基準を理由に行政指導を行うことが増えているので、違うフレームで見るほうがよいと思う。

委員会では、今回の議論をふまえ、問題点を整理したうえで、さらに審議していくことにした。

事務局からの報告

  • 浮くコンクリートは、真っ赤なうそで国民をだましたとの訴え。事務局で当該局から提供された番組録画を視聴した結果、放送表現上問題はないと判断。
  • 光市母子殺害弁護団に対する懲戒請求発言の放送について、公正・公平な検証を求めるとの要請。すでに、弁護士同士で係争中であり、委員会の審理要件に合致せずと判断。
  • 片輪走行競技の不適切な映像表現について、当該局から委員会に報告。視聴者からの指摘で、当該局が調査した結果、記録自体に間違いはなかったが、ビデオで確認した結果、スタントマンのお手本走行の映像を途中挿入していたことが判明。同社のホームページでお詫び。

その他、TBSが委員会の見解を受けたことなどによって、10月1日に組織改正を行ったこととあわせ、井上社長が会見で「番組をもっとちゃんと作るべきとの指摘を受け、非常に恥ずかしい思いをしている。これまでよりきめの細かい監督管理体制とし、番組の質的向上を目指す」と述べたことを報告。

また9月の委員会以降の視聴者意見概要とデータを報告。今年度上半期だけで、BPOに寄せられる意見が前年と比較し、80%増加し、放送局への批判、BPOに対する注文が強まっていることを指摘。

以上

第5回 放送倫理検証委員会

第5回 – 2007年9月

委員会決定の総括

調査と見解のとりまとめについて …など

委員会決定の総括

委員会決定直後のテレビニュースや新聞記事、視聴者の反応については、すでに資料を委員に送付していたが、それ以降のメディアの反応、放送界の反応、さらに委員会決定を受けたTBSの対応について事務局が報告した。TBSのとった主な措置は、次のとおり。

  • 委員会決定の翌日と、司会者の休み明けの8月16日の『朝ズバッ!』の冒頭で視聴者に謝罪
  • 臨時の放送番組審議会を開き、検証委員会見解を受けて議論した(後日、報告書提出予定)
  • 本件等について役員等の処分
  • TBSが視聴者にメッセージを送る『TBSレビュー』(30分番組)において服部・放送倫理検証委員会委員をゲストに委員会決定を詳しく紹介する解説番組を放送

委員会では『TBSレビュー』を視聴した上で総括に入った。

委員会の議論の概要は以下の通り。

調査と見解のとりまとめについて

  • 調査と取りまとめには機動性が必要で、今後どうすればよいか考える必要ある。毎回、今回のように(担当委員に依存)はできないだろう。
  • 委員会議論で「勧告ではなく見解」となったときに、どういう論理構造で、どう書くか。どれだけ詳細にどこがだめだったかきちんと書くかに苦心した。しかし、審理段階で各委員と、委員会決定に何を書き込む必要があるのか、いろんな側面からの議論ができて方向性がはっきりした。
  • 今後こういうことは、ある程度の頻度を持って起こる。今回は二人の担当委員がものすごく自己犠牲的に頑張って、ここまでたどり着けたが、今後、どういう体制で同じ水準のことをできるようにするのかという問題のほうが大きいような気がする。
  • 今回の調査は2人で行ったが、手分けができる4人は必要かなと感じた。
  • 委員が調査をやるのは今回ぐらいの規模が限度。もう少し大きくなったら特別調査チームを作るべきだ。
  • 調査は弁護士中心の特別調査チーム、判断は委員会という二重構造にしたとき、難しさが出てくると思う。特別調査チームと不即不離の関係を一緒に作らないと、水と油みたいな報告書になってくるということになる。

取材テープの視聴について

  • 取材テープ内容をTBS側が文字にしたものを読んだが、「ほんとに活字だけで信用できるのか」という問題もあった。しかし、そのときにどうやって取材源の秘匿や内部告発を萎縮させないことを保証しながらそれをやるかということは、審理途中でも議論した。最終的には音声加工したビデオを視聴したが、その結果、内容はまったく文字で配られたとおりで、途中で編集されていないことを確認した。
  • 「これを前例にしていいのかどうか」というのは、場合による。BPOの姿勢としては、ほんとに必要なところでだけやるという判断が必要なのではないかと思う。
  • ある局の制作者は、何でTBSはテープを出したんだ、悪い前例をつくってくれたと言っていたが、検察とか裁判所がやる提出命令とは違う。放送界内部の自律の問題で、同じととられては困る。われわれも軽々にやったわけではないことは知っておいてほしい。
  • 合意書第1条(調査への応諾)の解釈はきちんとしておくべきだ。
  • 取材テープの提出依頼や取材源の秘匿は今後の課題として検討すべきだ。この委員会は公権力ではないので、取材テープの提出命令は出せない。取材テープを見るのは当然の権利ではなく、前例にすべきではない。
  • 当該局に調査委員会を設置させれば、その委員会は局側だから取材テープは当然見られる。「あるある」はそうだった。当委員会の場合は位置づけが難しい。

その他全般について

  • TBSが見解を受けたその日のニュースで、「捏造はなかった」が最初に出て、「しかし問題点があった」というニュース構造になっていた。「これは解釈が違う。ちゃんと受け取ってほしい」と不満に思った。
  • 制作側が杜撰であることによる事実誤認は今後も起きるだろう。
  • 今回の件を振り返ってみると、委員会での取り上げ方を考えなければいけない。ある意図を持った組織に、我々が利用されかねない危惧がある。
  • 国家権力の放送に対する介入を防ぐということが目的だとすれば、いったいどの時点で取り上げるのか。われわれが見て捏造だと思ったときに取り上げるのか、捏造じゃないかというある疑惑を感じたときに、審理ではなく、とりあえず審議してみようというようなスタンスもあるのか。それとも少し社会的にそのことが動き出したときに、われわれが社会的な倫理観を背景に介入するのか。その辺のタイミングというのを今後議論しておきたい。
  • 今回、『朝ズバッ!』が騒がれ始めたころ、特に新聞メディアが「どうする気だ」「ここはちゃんと機能するのか」という論調だった。何だか裁判所扱いみたいに、とにかくお灸を据えてほしいという変な社会正義みたいな幻想を楯に、あの番組をやっつけてやったら気持ちがいいみたいな雰囲気になっていった。だから、どういう答えを委員会が出すのかというのも、ちょっと低いレベルの興味津々みたいな雰囲気が漂っていたが、委員会決定を出してハッとしてくれたメディアが多かったと思う。きちんとわれわれは一つ一つの具体的な事柄に対して、まさしく見解を示した。なぜ見解なのかということも、ある程度はわかってもらえたような気がする。
  • 多くの現場の人たちが一生懸命読んでくれたと期待したい。番組はこういうつもりで作らなきゃいけないんだというのが積み重なっていく最初の一歩になればと思う。
  • 『朝ズバッ!』を見ていてつくづく思ったが、人は見かけによる。にじみ出る。本気で謝っているのか、困っているのか、一応言っておこうなのか、テレビって怖い。ほんとに怖いほど本心が伝わる。
  • TBSレビューで「こういうシステムの改善をやりました」という紹介があったが、「制作工程における資料の残し方とか、そういうところでこういうプロセスを加えました」というのがあればもっとよかったという気がする。今度の事例で取材メモがなくなったというのも、とっても重大で、今後ともそれが続いたら、調査ができない、機能しないということになるかもわからない。だから、どこかに箱を置いて、その場のメモはとりあえずそこに放り込んで、一定期間は保存するという体制を作ってもらうことも考えられる。
  • 謝り方だが、プロデューサーと司会者とコメンテーターが何が問題だったか話し合いながら謝る、そういう習慣づけが必要。委員会としては「見解」でそれを言い、モラルを浸透させていきたい。
  • 今後、当該局がどれだけ協力してくれるのかが鍵だ。今回、TBSは対応が早かったが、今後も同じように機能するかだ。
  • 放送された内容が取材と一致しているかどうかという点に限って審理するという方針を決め、われわれができることできちんとした意見を出すことができたのはよかった。結果として、TBSが会社としては非常にまじめに取り組んでいる。正に自省を促したことになったことで、「勧告」をして上から強制的にやるんだというのではなく、我々は自省を促す機関ですよというのを示した意味で、非常にいい落ち着き方をしたと思う。

事務局からの報告事項

  • 色覚障害者にやさしいカラーコピー機の開発を紹介したニュース番組について、日本色覚差別撤廃の会事務局長から、使用された映像と解説は虚偽とみなさざるを得ないとの意見が寄せられたが、ビデオをチェックしたところ、虚偽性は認められず、当委員会が取り上げる問題ではないと判断した。
  • 神奈川県貸金業協会から、1年前の放送で利息制限法を越えた金利についてコメンテーターの弁護士が「グレーゾーンではなく違法ゾーン」と発言したことについて虚偽との申立書が送られてきた。利息制限法の上限金利を越す利息は違法との最高裁判決を受けて法改正が行われ、施行を待つ状況であり、取り上げる妥当性がないと判断した。
  • 一般の人が、やらせやだましと思われる方法でテレビに出演させられ、番組上は善意の放送の形を取りながら、結果的に出演させられた本人や、周囲の人たちが傷つけられた。このような番組作りは許されないとする当事者からの訴えがあり、当該局から経緯説明の文書提出を受けて、委員会に報告。10月の委員会で、とりあげるかどうかを検討することになった。
  • このところ頻発している総務省の行政指導について、前回の委員会で、委員から、「行政指導のリストアップ」と「当該放送局が総務省に提出している文書の収集」を要請された件について、事務局から委員会にリストを提出し、数局に対しての要請と、それに対する反応について報告。これについても次回委員会で、改めて検討することにした。

以上

第4回 放送倫理検証委員会

第4回 – 2007年7月

委員会決定案の一部を修正

前回の審理に続き7月26日臨時に開催した第4回委員会では、追加調査結果を踏まえて最終審理を行い、吉岡委員がまとめた委員会決定案の一部を修正することで大筋の合意を得た。細部の表現の字句調整を委員長と担当委員に一任し、8月6日に「通知・公表」することを決めた。

第3回 放送倫理検証委員会

第3回 – 2007年7月

TBS『みのもんたの朝ズバッ!』の不二家関連部分について

第3回委員会は、7月13日に開催され、TBS『みのもんたの朝ズバッ!』の不二家関連部分について、担当の小町谷委員長代行、吉岡委員からの報告をもとに審理を行った。その結果、さらに調査の幅を広げることを決め、その結果を踏まえて7月26日に臨時の委員会を開いて、審理を続けることになった。
このあと、事務局から、放送での仮名処理をめぐりトラブルになった問題、また、テレビショッピングでのダイエット効果ビデオについて週刊誌で報じられた問題について、それぞれの局から提出された文書を報告した。
また、6月の視聴者意見の概要では、”介護関連企業””英会話教室””食肉偽装”などの報道姿勢、また司会者、キャスター、コメンテーターの発言に関する批判が多いことを報告した。

第2回 放送倫理検証委員会

第2回 – 2007年6月

TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家報道の審理入りを決定

視聴者意見の検討 …など

TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家報道の審理入りを決定

委員長は「われわれが判断すべきは、まず、この放送によって虚偽の疑いのある番組が放送されたということになるのかどうか、その結果、視聴者に著しい誤解を与えた疑いがあると言えるのかどうかであり、以上の2つの要件が満たされていると判断されたときには、放送倫理上問題があるか否かの審理をここで行うことになる。従って、一番の問題はこの放送に虚偽の疑いがあるかどうかということだが、もう一度、放送内容を見て、それから議論したい」と述べ、改めて全員で番組録画を視聴した。

(委員会での議論の概要は以下の通り)

  • 十分な調査、あるいは裏づけのないままを放送したということは、虚偽の疑いを引き起こす、あるいは誤解を生むと思う。またお詫び訂正の不明確な提示のあり方が、更にこの問題をおかしくしていて、倫理上の問題として考えなければいけない。
  • 最初の放送では、「こういうことがあった」とは断言していない。「疑いが出てきた」と言っている。表現の問題は確かに言い過ぎじゃないのかという印象は受けたが、しかし、今時、世の中怒りたいことはいっぱいあるわけで、自分の意見を言える、自由に言うという場に対して結果として制約をかけることはしたくない。
  • この委員会の役割は何なのか。これに白黒をつけるのが私たちの役割なのか。事実関係を明らかにすることよりも、こういう問題が起きたときに、当事者間でどういう話し合いをするのか解決のモデルケースのようなものを出す必要があるのではないかと思う。
  • 終わった事例だ。放送で問題を起こし、放送で謝り、不二家もそれを一応了としたということで、終わっているのではないかと思う。
  • この問題は、情報バラエティー、ワイドショー、ニュース番組の企画ものの中に皆ある。極めて拙速なスクープ主義で、単一証言に頼ってものを言っているというのは、そこら中にある。
  • 一般視聴者として見てみるとTBSは充分謝っていない、どこをどう間違って、それは何故間違ったのか、お詫び訂正放送のあり方のモデルケースみたいなものを、この番組を材料にして作っていけたらと思う。
  • 放送したことに多少の誤りがあったとして、それを放送の時点で放送当事者がその誤りを誤りだと認識しないで、何らかの誤信をした理由が充分にあったかどうかが大きなポイントだと思う。実際に放送番組を作っていく上で、取材して編集してそれを放送するという過程の中で、「編集」というのが実は一番大きな問題で、そこで大きな誤りが生じる場合がある。表現の自由というのは、誤って信じたことを誤って発表、表現、放送してしまう、その自由を含むという線を崩してはいけない。
  • 10年前に勤めていた人があたかも今のように放送されたこと、それについてはコメントなり表示で「証言は10年前のものだった」と示すべきだ。
  • 小売店からの返品を工場に集めることはありえない事、そんなことをやって採算が取れるはずがないという指摘は、無視できない。虚偽の疑いがある番組が放送されたかどうかということは、もうちょっと慎重に審理すべきではないかと思う。
  • ここで問題にすべきは、放送の中で悪意のうそがどれぐらいあったかということ。それがあったとはっきりした場合に、それに対しては何か言わなきゃいけない。
  • 明らかな虚偽とは言えないまでも、明らかに視聴者を誤信に導くような編集のしかたについてはガイドラインとして出すというやり方はあると思う。

以上の意見を踏まえて更に議論した結果、審理入りすることで意見の一致を見た。

審理にあたっては、特別調査チームを設ける必要はなく、委員の中から担当の委員を決め、ヒアリングなどの調査を行う。その結果をまとめて委員に送り、次回、それを皆でディスカッションするという方向が決まった。担当委員は、小町谷委員長代行、吉岡委員。

視聴者意見の検討

アマチュアゴルフのスター選手の音声を録るために、パートナーの選手にマイク装着を依頼し断られ、また、上空からヘリコプターで撮影した問題について、視聴者からの抗議が多数寄せられた。なお、この件に関して、当該放送局は、既に番組内で謝罪し、ゴルフ連盟にも謝罪していることも報告。

委員会の最後に、第1回委員会の議事概要について委員会の承認を得た。

以上

第1回 放送倫理検証委員会

第1回 – 2007年5月

「委員会運営と定例委員会決定」

報告事項の検討 …など

「委員会運営と定例委員会決定」

委員会運営では、事務局から運営規則、調査のスキームなどについて説明し、委員会の「審議」「審理」の区別と、それぞれの取り上げる番組の範囲についても議論した。「審理」対象は「虚偽の疑いのある番組が放送されたことにより、視聴者に著しい誤解を与えた疑いがあると委員会が判断した番組」に限定されていることを確認。一方審理対象としないものについても、「係争中のもの」「政治的公正・公平」「宗教」「歴史観」「放送されていないもの」などについて検討した。また、取り扱う番組の放送時期については、原則は委員会発足後放送された番組とするが、放送人権委員会(人権委員会)が放送後1年以内としていることから、同じ基準に合わせる方がよいとの考えが出された。こうした議論は、今後も続けて、ある程度まとまった段階で委員会の内規とする予定。

委員会の内容をどこまでどのように公開するか、議事録を作るか作らないかについても話し合った。委員会での審議内容や、決定の過程を見てもらうためにも、プライバシーの問題を除いて、なるべく公表すべきだとの意見もあった。そして、議事録にもいろいろなレベルがあるので、今後議論して行くこととし、とりあえず、議事録の要約を作成して委員に配付し、合意を得てからHP等で公表するなどしてはどうかとの意見で一致した。

定例委員会の開催日時を調整し、毎月、第二金曜日の午後5時からとすることを決めた。

報告事項の検討

放送上問題になった案件、視聴者からの要請など4件について、当該放送局からの報告を中心に事務局が報告し検討した。

  • 国会答弁を編集して「全く逆の答弁」という表現で放送した番組について、政党が抗議し、局側がその後、当該番組内で訂正とお詫びをおこなった件。
  • 鮎漁解禁のニュースで、同じ日に観光PR用CMの為に撮った養殖鮎を取り付けた再現映像を、知らないまま報道で使ってしまい、後日、番組内でお詫びをした件。
  • 視聴者から特定宗教の教義は邪義であると手紙で訴えてきた件。

以上について、委員会は審理入りする案件ではないことを決めた。ただし、訂正の仕方について、どうあるべきか審議の場で議論したいテーマだとの意見が出た。

TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家報道について

この件は、不二家の社外委員会の元委員長2人が、私人の立場で放送倫理検証委員会に「調査、審理を申し立てた」と、記者会見して発表し、報道されたため、公知の事実となった。しかし、委員会は、申し立ては受けないことになっており、双方の紛争を解決するための機関でもないため、あくまで「虚偽の疑いのある放送によって、視聴者に著しい誤解を与えた疑い」があったかどうかを審理する必要の有無について、双方の資料と放送ビデオを基に検討した。委員の主な発言は以下の通り。

  • 「この問題について、既に不二家は、TBSの謝罪を受け入れている。そういう状況があるのに、あえてなお視聴者に誤解を与えているとして取り上げる必要があるのか」
  • 「テレビを通して放送したものが虚偽かどうか、あるいはテレビを通して謝罪をしたかどうか、あくまでもテレビの画面上に出たもので判断すべきで、これは解決済みだ」
  • 「一連の放送を見ると、あまりにも全体としてひどすぎる」
  • 「事実関係の伝え方が甘いとか、司会者の論拠が乏しい高圧的な決めつけは、問題としてあるが、一般的に今のテレビにはこういう問題があるという中の一事例として議論するならともかく、本件を真正面から取り上げることはどうか」
  • 「紛争が解決しているかどうかと、虚偽の内容があるかどうかは別の問題だ」
  • 「放送でのお詫びや訂正は何をどう謝っているのか視聴者は理解出来ない。この委員会はお詫びしているから審理しなくていいのだとすると、視聴者に説明責任が果たせるのか疑問を感じる」
  • 「非常に慎重に、相当きちっとした、社会に分かり易い結論を出して、審理に入るか入らないかを決めるべきで、短時間の議論では無理ではないか」
  • 「どっちにしても、相当明快な理由付けをしなければならない」
  • 「いろいろ疑問点があるので、プレ(事前)審理のようなものをした方がよい」

審理入りするかどうかについてもう一度議論したいという意見が多く、臨時の委員会を開くか検討したが、この問題は緊急性はそれほどないこと、次回定例が2週先の6月8日であることから、それまでに、TBSに対して疑問点をいくつか追加質問して回答をもらい、委員に回覧して、次回委員会で審理入りするかどうかの結論を出すことにした。

記者会見

審議終了後、放送倫理検証委員会のスタートにあたり、委員全員が記者会見し、抱負や放送法改定反対についてそれぞれの考えを述べた。この中で川端委員長は「表現の自由が民主社会を守る上で一番重要だ。もちろん表現の自由といっても、特に放送の場合は電波という公共の資源を使うということで、放送する側が自ら律していかなければならない事柄があると思う。それを国家権力、行政の側が放送法や電波法の規定を手段として介入してくるということは決して好ましいことではないので、われわれのような委員会が自ら律していただくためのお手伝いをしたい」と述べた。

以上