第149回 放送と人権等権利に関する委員会

第149回 – 2009年6月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案のヒアリングと審理

「派遣法・登録型報道」事案の審理 ……など

当面する事案の審理を迅速・的確に行うため、10年ぶりに臨時の委員会が開かれ、「保育園」事案のヒアリングと審理が行われた。この結果、「委員会決定」の起草の方向がほぼ固まった。また、「派遣法・登録型導入報道」事案の論点整理、審理要請案件についての審議等が行われた。

議事の詳細

日時
2009年 6月29日(月) 午後3時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案のヒアリングと審理

本事案の当事者に対するヒアリングを実施した。
この事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
番組は2008年10月19日放送のTBS『サンデージャポン』。ヒアリングには申立人と、被申立人であるTBSから担当プロデューサーら3人が出席し、それぞれ1時間ずつ実施した。
申立人は「次から次へ事実と異なることを放送された。園児たちの映像は前日に撮影されたのに、あたかも行政代執行の当日、私が現場に並べさせ盾にして抵抗したかのような放送だった。『せめて保育園なら子どもを第一に考えて欲しかった』というコメンテーターの発言は、子どもたちをあずかる私たちの仕事に対する最大の侮辱だ。訂正放送はされたが、私の意向はまったく無視された。」と述べた。
TBS側は「初めて映像を見たコメンテーターが間違った認識で議論を展開してしまった。ナレーションやテロップで日付を明示し、コメンテーターや一般視聴者が勘違いしないようにすべきだった。また、コメンテーターとの事前の打ち合わせが足りず、発言の間違いに気づかなかった放送中の進行管理体制にも問題があった。訂正放送では申立人の要望に沿って訂正・お詫びし、名誉は回復されたと考える」と述べた。
ヒアリング終了後は審理を続け、「委員会決定」の方向がほぼ固まった。3名の起草委員が決定案を起草し、次回の委員会で検討することになった。

「派遣法・登録型報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、4月の委員会で審理入りが決まった。
この日の委員会では2回目の審理を予定していたが、他事案の審理や申立人の事情もあり、今回は実質審理を見送った。このため委員会は、事務局からの簡単な「論点整理」の報告と、今後のスケジュールの検討に止めた。
この結果、次回の7月委員会で本格的な審理を行い、8月の委員会でヒアリングという方向で進めることになった。

審理要請案件について審議

「宗教団体からの訴え」について審議した結果、審理対象外と決定した。
この申立ては、「在京の民間放送局が2009年1月29日のニュース番組で、事実ではない事項を放送し、当団体の名誉・信用を不当に毀損したので、放送法に基づき視聴要請をしたにもかかわらず、当該局は何も対応をせず、事実上拒否している。委員会で、当該局に対し視聴させるよう勧告して欲しい」というもの。
委員会では、委員会運営規則の第5条(苦情の取り扱い基準)は、放送された番組の内容を審理対象とすると規定していることから、本件のような視聴請求は審理の対象外であると結論付け、この旨、申立人に通知することになった。

その他

次回委員会は7月21日(火)に開かれることになった。

以上

2009年5月に視聴者から寄せられた意見

2009年5月に視聴者から寄せられた意見

「小沢代表辞任」と「民主党代表選挙」についての意見、麻生総理・鳩山代表による「党首討論」報道への意見、「補正予算」を巡る与野党の攻防とETC割引・エコポイントなど景気対策についての意見が多かった。「新型インフルエンザ」関連報道については、「過剰報道ではないか」と冷静な報道を求める意見が多数見られた。

ニュース・報道番組・情報系番組での政治報道についての意見が多かった。政治報道としては「小沢代表辞任」と「民主党代表選挙」についての意見、麻生総理・鳩山代表による「党首討論」報道への意見、「補正予算」を巡る与野党の攻防とETC割引・エコポイントなど景気対策についての意見が多かった。

5月に電話・FAX・郵便・EメールでBPOに寄せられた意見は1,937件で、4月と比較し3,104件減少した。

方法:Eメール72%,電話25%,FAX2%,手紙ほか1%
性別:男性74%,女性23%,不明3%
世代:30歳代36%,40歳代23%,20歳代16%,50歳代14%,60歳以上9%,10歳代2%
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。5月通知数は1,095件(36局)であった。
またこの他に、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、29件を全加盟局・局に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 人権に関する審理・斡旋の要請・・・・・・・ 2件
    (個人または直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

【意見の傾向】

5月の視聴者意見については、先月に引き続き、ニュース・報道番組・情報系番組での政治報道についての意見が多かった。政治報道としては「小沢代表辞任」と「民主党代表選挙」についての意見、麻生総理・鳩山代表による「党首討論」報道への意見、「補正予算」を巡る与野党の攻防とETC割引・エコポイントなど景気対策についての意見が多かった。自民党・民主党に関する報道に公平・公正を求める意見も多く、キーワード検索で「偏向」で91件、「公平」で87件が該当した。キャスター・コメンテーターの発言に対する批判意見は今月も多く、「不適切な発言」のキーワード検索では88件該当した。また、報道番組だけでなく、情報番組・バラエティー番組も含めて出演者の言動に対する厳しい意見も多く、「不適格な出演者」のキーワード検索では149件が該当した。意見内容では、先月に引き続き、近代日本の歴史に焦点を当てたシリーズ企画関連意見が276件あった。「新型インフルエンザ」関連報道についての意見は145件あり、「過剰報道ではないか」と冷静な報道を求める意見が多数見られた。この他、北朝鮮のミサイル・核実験関連報道への意見、「中央大学教授殺害事件」関連で容疑者の履歴書を映したことへの意見、裁判員制度開始に当たって現行の報道姿勢をただす意見が多かった。この他、逮捕されたアイドルタレントに関する報道が過剰すぎたのではないかと報道姿勢をいさめる意見と、テレビ復帰の時期尚早を指摘する意見、歩道を走る自転車の速度計測の不適さを指摘する意見などがあった。ドラマ、バラエティー番組に関する意見は今月も少なかったが、いじめを助長すると指摘する意見、ヤラセではないかと指摘する意見は若干だが増加している。放送局の視聴者応対に関する意見は49件、パチンコ規制などCMについての意見は75件、また、ラジオに関する意見は今月は41件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は前月より約20件減少した。
ジャンル別では相変わらずバラエティー番組に対する批判が最も多いが、前月に比べると16件減少している。これに対し、報道番組に対する意見が14件と前月の約3倍に増大した。また3番組に対し、5件以上の意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • ドイツを訪問した麻生首相がベルリン市内の大学でスピーチを行った際に、「チェコ」という国名を間違えて「チェコスロヴァキア」と言ったことを執拗に取り上げていた。報道番組は自国の首相の言葉の揚げ足取りをするために存在するのではない。本来放送すべきことは、「首相のスピーチがどういう内容であったか」と「欧州と日本の関係が今後どういう風に築かれていくのか」の2点だ。
  • 番組で、夏場所の二日前に横綱が親睦ゴルフをしたことを批判していたが、イラスト付きでこと細かく説明していたことに呆れた。単にスポーツ新聞の内容を紹介しているだけなのに、わざわざ文章に合わせたイラストを付けたりして長々と伝えることはないと思う。「『夏場所直前にライバル力士と一緒にゴルフするのは緊張感がない』と批判の声がある」という短い説明で済む内容ではないか。テレビでは何かにつけて「横綱の品格に問題がある」などと批判することが多いが、テレビの方がよほど品格に欠けていると思う。
  • 「新型インフルエンザ」の報道は騒ぎ過ぎではないか。弱毒性であり、強毒性への変異の可能性もないと判明したのに、相変わらず連日大げさに”扇動”している。単に「熱がある」だけとか「ただの季節性インフルエンザ」というだけで、「感染の疑いが・・・」などと、いちいち報道すべきではない。新型インフルエンザへの感染が確認された段階で報道すれば良い。厚生労働大臣が国民に「冷静に」と呼びかけたが、マスコミに対してこそ「冷静な報道」をするように命令すべきではないか。パニックになっているのは国民ではなく、マスコミと厚生労働大臣だけだろう。
  • 「新型インフルエンザ」についての報道で、”感染の疑いがあったが、結果としては感染していなかった”という患者に対して、テロップで「シロ」という表現をしていた。「感染していなかった」という意味でこの言葉を使っていることは分かるが、「シロ」という表現は犯罪の容疑者に対して使う類の言葉ではないのか。患者に対して使うには問題がある言葉だと思う。
  • 最近のテレビ番組はすべてがバラエティー化しており、ニュースと娯楽的な情報をないまぜにしている。深刻な事件を音楽や効果音を流して「演出」しながら報道したり、政治や経済の情報をバラエティーのように面白おかしく説明しようとしたり、芸能情報を大事件のように大きく扱ったりしている。特に、客観的事実と出演者の「解釈」が加えられた情報とが同列に扱われているので、とても混乱する。
  • 最近各局のワイドショーで「コメンテーター」と称する人が「裁判員制度」について、色々と物知り顔で話しているが、彼らはその道の専門家でも何でもないので、聞いていて少しも説得力がない。テレビで「裁判員制度」について議論するならば、それぞれの局の報道記者や専門家が出演して説明するべきである。中途半端な知識での所謂”知ったかぶり”はたくさんだ。
  • 裁判員制度のニュースで、裁判員に選ばれた男性にインタビューする映像と音声が放送された。男性の顔は映っていないものの、体格や服装から誰か判ってしまいそうな映像だった。声も処理等なしにそのまま放送していたが、大丈夫なのだろうか?法律では裁判員の情報は非公開だったと思う。この番組では制度開始前から「裁判員に選ばれた人は意見を聞かせてください」というテロップを流して募集していたが、どれだけ個人情報の保護が確保されているのか心配になった。
  • 「大学教授殺害事件」の容疑者逮捕のニュースをかなり時間を割いて報じていたが、裁判員制度が始まり一般人が裁判に参加するようになったというのに、テレビでの扇情的な事件報道が変わっていないことを心配している。容疑者の子どものころからの写真を何枚も映したり、周辺の取材で得た情報を詳細に紹介して性格を分析したりしている。コメンテーターやアナウンサーが犯行動機等についての推測・見解をコメントしていたが、容疑者のプライバシーを必要以上に侵害しているように思えたし、人格・性格と犯行に至った事情との関連性について、視聴者に先入観を持たせるような報じ方をしているように感じた。こういったテレビ報道を見た人たちが裁判員として参加するのだから、もっと慎重になって客観的な報道をするようにしてもらいたい。
  • 「大学教授殺害事件」の容疑者が逮捕された件で、この容疑者が転職を何度も繰り返していたことが強調され、転職回数が多いことと犯罪とが関係あるかのように報じていた。しかし、一般には転職回数と犯罪との間には何の因果関係もなく、実証すらされていないはずである。凶悪事件が起こるたびに容疑者の転職回数をうんぬんすることで、社会における偏見を助長することになる。
  • 「裁判員制度」に対するマスコミの報道に疑問を持っている。裁判員になると、裁判の間は身柄を拘束され、精神的にも大きな負担となる。その後も一生守秘義務でしばられるなど、苦役そのものである。それを、勤労・納税・教育に加えて、新たな国民の義務として法律だけで規定できるようなものではないはずだ。私は憲法違反だと思う。また、被告・原告の権利・人権を確保できるかも大きな疑問だ。制度の内容も含め、世の中に反対意見は沢山ある。ところがマスコミは反対とは決して言わない。世論調査で否定的な結果が得られても、「国民に理解されるようにしなければいけない」というだけだ。定額給付金ごときにあれだけ一生懸命に反対だと騒いだくせに、裁判員制度についてはすべてのマスコミが賛成しているなんておかしくないか?
  • 最近のテレビ番組には、モザイク処理が多すぎる。昔はこんなことはなかったと思う。街角インタビューで、後ろを通る通行人にまでモザイクをかけているが、通行人にモザイク処理をするくらいなら、人通りのないところでインタビューをするべきだ。また、背後の自動販売機にも必ずモザイク処理がされているが、そのまま映してもいいのではないか。

【番組全般、その他】

  • 深夜放送のパーソナリティーが「体罰訴訟」の最高裁の判決を受け、敗訴した生徒の母親に対して不適切な発言をしていた。この裁判は、「男性教師が小学生の男児の胸元をつかんで壁に押しつけて叱った行為が体罰にあたるかどうか」が争われたもので、最高裁判決は「教育的指導の範囲であり、体罰にはあたらない」と原告の訴えを退けた。これに対してパーソナリティーが「こんなことで訴えるのはモンスター・ペアレンツだ」と言い、母親に対して「くそババア」「ざまあ見ろ」と発言した。これは、訴えた子供が体罰を受けた後に夜中に泣き叫んだり、食欲が低下したなどの後遺症に苦しんでいたことを知っての発言だろうか。
  • 泥酔して逮捕されたアイドルタレントが起訴猶予処分となった報道で、キャスターが「誰にも迷惑をかけていない」「一般人なら注意を受け終わり」等と警察批判を繰り広げていた。そもそも警察が現場に駆け付けたのは、酔っ払いが騒いでいるとの通報があったからであり、通報者を始めとする近隣住民に不安や恐怖感を与え、安眠を妨害している点で十分に迷惑をかけている。「他の人もやっているのだから今回も見逃すベきだ」と言わんばかりの発言には、甚だ疑問を感じざるを得ない。法に抵触するような行いをすれば、立場や時期等関係無く処罰されるのは当然の事である。きちんと公務を遂行している警察を一方的に非難し、犯罪を擁護する様な発言をするのはやめて頂きたい。
  • 民放のBSや地上波の深夜の通販番組の多さには呆れる。BS局は放送全体の半分ぐらい通販番組を放送しているが、通販専門局とどこが違うのかという感じだ。民放の地上波番組が下劣で空疎でくだらないからBSで他の選択肢がほしいのに、これでは存在意義がないに等しい。「通販番組を全廃しろ」とはいわないが、比率を減らして昔の番組の再放送や映画・音楽・演劇・海外ドキュメンタリーなどを放送してほしい。
  • いわゆる「熱湯風呂コマーシャル」が放送された。知っているとは思うが、熱湯風呂に耐えられた秒数だけ主演ドラマの番宣が出来るというものだ。しかしながら数日前に、19歳の母親が2歳の娘を熱湯風呂に入れてやけどを負わせたという事件が起きたばかりだ。その母親は「テレビでやっているのを見て面白そうだと思った」と、テレビの影響であることを供述したという。そういう事件が起きた直後なのに、こうした放送をするその神経が理解できない。
  • 秋葉原で髪の毛をピンクに染めたオタクに「今の日本についてどう思うか?」というインタビューをしていたが、「平和ボケしすぎ」「首相の愛読書が漫画では情けない」等、真面目な回答だった。ところが、その後スタジオで「ピンクの頭でどっちがボケてんだ」と言った出演者がいた。意見を求めておいて、意見に突っ込まず外見に突っ込むというのは非常に失礼だと感じた。
  • ドキュメンタリー番組でよく「スーパードクター」と言われる名医を取り上げているが、外科医を紹介する時に、手術中の患部や臓器を映すことがある。例えば脳外科の手術風景で脳の内部をアップで映していたが、あまりに刺激が強すぎて目を覆いたくなった。老人や子供も見ているのだから、リアルな映像を見せるのではなく、CGや絵を使って説明してほしい。
  • 最近、音楽番組で身体にタトゥーを入れたミュージシャンを良く見かける。せめて隠すか、見えないように映す配慮をして欲しい。局に抗議をしたら、「時代遅れ」と言われた。
  • 「乳がん検診を実際に受けてみる」という企画で、発言が不適切だと感じた。「自己触診によってしこりがあったら『アウト』」と男性漫才師が表現したり、「女性は乳がんがあるから大変。男でよかった」という差別的発言もあった。現に命を落とす方がいるのだから、乳がんについて取り扱う際に「笑い」が必要なのかと疑問に思った。
  • テレビでよく「番組宛にEメール・FAXでお便り下さい」と呼びかけているが、視覚障害者の私にとってはEメールもFAXもどちらも使いにくい。電話で意見を伝えることの出来る「ボイス・メッセージ」を番組ごとに導入してほしい。
  • 「いやな大人ベスト10」という企画を放送していたが、1位が「貯金していない大人」だった。私は障害者で医療費もたくさんかかるので、やっとの思いで生活している。貯金をしたくても、するだけの余裕がない。スタジオでは女性アナウンサーがこの結果をバカにしたように笑っていたが、貯金したくても出来ない人がいることも考えてほしい。
  • 最近のバラエティー番組についてだが、たいして面白くもないのに、スタッフらしき人の不自然な笑い声が入るのがとても耳障りだ。番組の制作者は面白さを増しているとでも思っているのだろうが、見ている方はイライラする。番組がそんなに面白くないのに笑っている声を聞くと、嘘をつかれているようだ。
  • 番組予告や宣伝スポットで流れていた映像が本放送では使われないということが最近よくある。視聴者としては予告や宣伝で見た映像に興味を抱いて番組を見ようと思ったのだから、その部分が本放送で放送されないというのはおかしい。番組としては問題になることではないのかも知れないが、視聴者としては嘘をつかれたような気がして気分が悪かった。
  • 「エコポイント」に関する特集で、家電量販店と地域家電店とを比較した報道をしていたが、そのやり方に抗議したい。家電量販店の方は安価で消費者に還元提供出来るよう、既に準備万端整っていると伝えた。一方、それに対する地域家電店については、販売店店員の談話で「地域の店は高価格なので量販店には太刀打ちできず諦めている」「準備不足なので慌てている」という印象を与えていた。更にその後で、念押しの如く男性アナウンサーが「街の電気屋は厳しい」とコメントしていたが、これにも意図的なものを感じた。地域のお店の中には価格だけでなく各種対抗策を打ちだし、事前から情報収集をして準備し、制度に疑問を持つ顧客には説明をするなどしている店もある。今日の報道が何を根拠にしているのか理解できない。
  • 「食への取り組み」をする3人の人物を紹介するドキュメンタリーだったが、視聴して大変感心した。「地産地消」を実践する県産野菜を移動販売している男性、実家の養豚業を継ぎ、NPO法人を立ち上げ、生産者の顔が見える畜産や農家を次世代に繋ぐ活動を行っている青年、そした、小学校等で大豆を植える活動をする料理研究家の女性を取り上げ、彼らの食への取り組みを紹介していた。食料自給率の低い日本にとって、大切な農業の未来を考える一助になる良い番組だったと思う。
  • 最近のワイドショーや情報番組で「草食系男子」「肉食系男子」という言葉を耳にします。一体何を基準に分類しているのでしょうか。人をこのように分類するということは、いずれ差別につながって行く可能性があります。人を「草食」や「肉食」で分類するような表現は、放送で使わないで欲しい。
  • 自転車通勤を取り上げ、歩道を走っている自転車の速度を測る実験をしていた。最初の1台が時速40キロで、計測した全部で9台の自転車の平均速度は34キロだった。しかし、一般的な自転車、通称「ママチャリ」は34キロの速度は出せない。時速35~40kmというと、実業団かレーサーのやや遅めの平均速度だ。レース用の自転車でその速度なのだから、今回のようなことはまず絶対にあり得ない。自転車を故意に危険なものと判断させるために誇張したのか、さもなければ測定器械の故障である。
  • 料理は衛生第一に作る事が基本の基本である。だから、料理人は両手の肘から指先までは何も装着しないで調理をすることが当たり前だと思う。素人といえども、料理人が指輪、腕時計、リストバンド類など装着したまま作っているのを見るとぞっとする。調理前にいくら手を洗っていても、指輪と手の間には細菌がうようよしていて、食中毒の一因になる。最近、芸能人が大きな指輪をしたまま料理をしているのを見たが、このようなシーンはカットすべきだと思う。
  • 番組紹介に「様々な業界で活躍する人々。元気な姿に隠れた波乱の人生を通して、健康のありがたみを知る」といった内容が書かれていた。しかし、実際の放送を見ると、これが健康飲料のコマーシャルであることが分かった。これは教養・ドキュメンタリー番組と見せかけた通販番組に他ならず、視聴者を騙すようなものだ。通販番組なら通販番組であると、はじめから表示すべきである。

【CM】

  • サラ金やクレジットカードのCMが多すぎる。これらのCMをなくすのが無理なら、せめて放送時間を深夜11時以降に限定すべきだ。
  • 家庭用デジタル回線のCMで、「映画を見るのに、ビデオをレンタルしてはもったいない」という内容のものが放送されている。レンタルビデオショップを営む私は、それを聞くたびに不愉快な思いがする。もう少し、レンタルビデオ業者に対する配慮があってもいいのではないか。

【BPOへの意見】

  • 毎月、BPOのHPの「視聴者からの意見」を見ているが、BPOは視聴者からの意見を当該局へ伝えているのだろうか?HPに載せた分だけが伝えられているのだろうか?是非、全部の意見を伝えてほしい。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 夕方6時ごろからのニュースで、18歳以上しか購入してはいけないゲームに関することを取り上げていた。「レイプレイ」という、女性を脅してレイプするという内容のゲームであったが、ゲームの名称を隠すこともせず、また、ゲームのパッケージにモザイク処理をすることもせずに報道していた。子供が目にする可能性のある時間帯にこのような内容を取り上げるのは、私が子どもの頃にはなかったと思う。テレビ局の報道や番組が低俗なものばかりになれば、それだけ視聴者が減ると思う。
  • 12歳から20歳の女性グループに、リンボーダンスと称して、バーではなくて男性スタッフの下をくぐらせるということをしていた。メンバーの女の子は胸を突き出して、棒に見立てた男性スタッフの下をのけぞるように通過する。そのリンボー役の男性スタッフの下半身あたりに何度も女の子たちの胸が当たっていたが、それが狙いなのだろう。あまりのセクハラとその下品さに閉口した。
  • 5月5日「こどもの日」の18時台のスポーツコーナーだと思ったが、「ビーチバレーの女子ペアが決勝へ進出」がタイトルだった。ところが、カメラアングルが女子選手の股間やお尻、胸元ばかりを映していて、夕飯時、しかも「こどもの日」で子供が見ているのにとても不愉快だった。選手や関連者を侮辱したカメラワークは止めてもらいたい。
  • 最近、子どもの教育上よくない番組が多い。出演者が下ネタを口にしたり、食事時の番組で排泄物に関する発言をしたりする。下ネタや排泄物については発言を控えてほしい。

【いじめの助長について】

  • お笑い番組で、相手に飛び蹴りをする場面があるが、見ていて笑えない。娘が学校で男子生徒から飛び蹴りをされることがあるという。家でテレビを見ていて飛び蹴りの場面が映ると、娘が「私は同じやり方で蹴られた!」と言うので、私は飛び蹴りの場面を見るたびにとてもつらくなる。たとえ我が家でこのような番組を子どもに見せなくとも、よその子が見ていればいじめを受けるのだ。子どもがテレビを見る時間には、このような場面を放送しないでほしい。
  • 女性タレントが同性タレントに対し、何度も抗議しているにも拘らず、股間を触る行為や、傷口にスプレーを吹き付けるなどのいじめ行為をしつこく繰り返していた。更に気になるのは、他の出演者がこれを止めることなく一緒に笑っていることだ。このような行為は、いわゆる子どもの陰湿な「いじめ」によく似ている。特定の一人に対して違法行為をしつこく繰り返し、周囲の人間はだれも止めないでずっと笑っている。そのことが、さらに「いじめ行為」をエスカレートさせる。このような番組を制作し放送する感覚を、まったく理解できない。
  • BPOの青少年委員会が「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」を出しているが、今でもそれに反するような体罰を加えている。ある番組で「出演者の足の裏に電流を流す」という体罰をしていたが、このような行為が毎週のように行われている。罰則規定を設けて、放送局を厳しく指導すべきだ。

【性表現について】

  • 夜7時の子どもの見る時間帯に「SEXの回数」など、見るに堪えない内容を放送していた。何を考えているのか!深夜番組であればともかく、放送時間を考えてほしい。
  • 土曜の深夜、とんでもなく卑猥な内容を含む番組を放送しているので驚いた。アダルトDVDを紹介するコーナーでは、際どい映像と女性の喘ぎ声を流すなどしており、明らかに放送番組の倫理の限界を超えている。昔と違い、今は子供も自室にテレビを持つ時代である。夜更かしをしている子供がそのような番組を見つけ、毎週見るようになったらどうするのか?

【言葉に対する意見】

  • 最近、民放の番組で「草食系」「肉食系」というように、「〇〇系」「□□系」という言葉をよく耳にする。しかし、これらの乱れた言葉遣いは、子どもや若者に悪影響を及ぼす恐れがある。「理系」「文系」や「太陽系」などの正しい使い方の「〇〇系」は問題ないが、例えば「こっち系」「きれい系」といった乱れた言葉遣いは直ちに止めていただきたい。子どもの学力低下と若者のマナーや規範意識の低さに繋がる。

【危険行為について】

  • ドラマで主人公がレーザーポインターの光を視聴者の方に向けるような行動があった。レーザー光を目に当てると障害を起こす危険があるが、若者に人気のある俳優がレーザーポインターをそのように使うと、真似をする人が多く出てくるのではないかと思う。ドラマのホームページにも、レーザーポインターをユーザーに向けるような写真が載っている。このような演出は公共の安全のためにも不適切だと思う。

【非科学的事項に関する意見】

  • 小学生の娘2人と一緒に見ていたが、動物と話をすることができるという女性が出演していた。娘達は女性の行動をそのまま信じ、「彼女は動物の気持が分かるんだ」と受け取っていた。学校でもその話題が出たらしい。このように科学的に実証できないことを、判断能力が完全ではない子どもたちが見るような番組で放送するべきではないと思う。今回は”動物と話せる女性”だが、これは「前世が分かる」等と語る「スピリチュアル」を売りにしているタレントと何ら変わらないのではないか?
  • 血液型を扱う番組は他にもあるが、この番組の制作者は2004年のBPOの勧告を「もう気にしなくて良い」と考えているのではないか。血液型性格関連説の信奉者は「縛りが解けた」と歓迎しているようだ。血液型のような生まれながらのものによって、差別につながりかねない、あるいは差別そのものを表現するのはよくない。放送局の基準以前に、社会的な常識に照らしても問題があるはずだ。悪質な血液型番組がはびこらないよう、注意喚起を強く求める。

【「たばこ」の喫煙シーンについて】

  • テレビ番組から喫煙シーンを極力排除してもらえないだろうか。人気ドラマでは、脳卒中でベッドに寝ている人の隣で喫煙をするシーンがあった。また、人気アニメなどでは、親が子供の前で喫煙している状況が平気で放送されている。子供は自分が見た内容に影響されやすい。

【その他の意見】

  • 母親が2歳の女児に熱湯をかけ火傷させた事件があった。この母親は「テレビで見た熱湯に入るお笑い芸人の様子を思い出し、長女を熱湯に入れることを計画した」と供述している。私も熱湯風呂の芸を100パーセント面白いとは思わないが、このような事件があると、世間はすぐにテレビのせいにする。どうか熱湯芸人を責めないで、テレビ各局も自粛や禁止にしないでほしい。芸人のせいではなく、見る人間のモラルの問題なのだから。
  • 「子どもが真似をするから大食いの番組をやめるべきだ」「バラエティー番組はいじめを助長する」という話をよく聞くが、そのような発言をする人は何か勘違いをしていないだろうか。そのような番組を見ていても、子どもに「こういうものを真似してはいけない」としつけることは出来るし、また子どもをしつけることが親の務めではないか。親がしつけもせず、なんでもテレビのせいにするのはおかしい。”臭いものにフタをする”ことだけが子どもの教育ではないと思う。”そういった番組がなくなればいじめが減る”という話にも、根拠はまったくない。

【CMに関する意見】

  • 日曜の朝で子供もテレビを見る時間帯に、毎回のようにパチンコや酒のCMが入る。子どもたちへの配慮はないのだろうか。酒やパチンコ等の子どもに有害なコマーシャルは、放送時間をゴールデンタイム以降に限定すべきではないか。パチンコのCMは間違いなく有害な情報だ。ただちに是正するよう各局に求めてもらいたい。

第102回 放送と青少年に関する委員会

第102回 – 2009年6月

在京各社連絡責任者との意見交換

フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』について …など

6月23日に開催した今年度第3回青少年委員会(通算102回)では、在京各社の連絡責任者と意見交換を行ったほか、5月16日~6月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、1番組を視聴のうえ審議した。また、中学生モニター報告についても審議したほか、調査研究について報告があった。

議事の詳細

日時
2009年6月23日(火) 午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

在京各社連絡責任者との意見交換

青少年委員会では、4月の4名の委員交代を受け、委員会と各放送局との相互理解のための意見交換の場の設定について議論を重ねてきた。今委員会では、在京民放キー局5社とNHKの連絡責任者が出席し、BPOに対する局側の要望や今後の意見交換の枠組みなどについて議論し、今後とも幅広い意見交換の場を持つことで一致した。

フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』について

前回委員会の意向を踏まえ再度審議し、制作意図などについて、番組制作担当者との直接の意見交換の場を持つことで一致し、次回委員会に担当者の出席をお願いすることとした。
番組内容については前回および前々回の議事概要を参照。

視聴者意見について

サンテレビ 『今夜もハッスル』

サンテレビが制作し、独立UHF5局で放送されている深夜番組に対し、視聴者から複数の批判意見が寄せられた。

<BPOに寄せられた視聴者意見の概要>

  • 全編を通し、過激な内容満載の番組である。中学生や高校生も夜更かしをする週末の夜に、このようなポルノ同然の番組を放送する放送局の常識を疑う。
  • 非常にわいせつなアニメーション画像や音声が流されている。ゲーム感覚で女性をいたずらする映像は、「性に対する健全な感覚」を歪める。青少年を悪い妄想に陥らせないようにして欲しい。

<委員の主な意見>

  • 番組全体を通じて根底に流れる倫理観の欠如の問題だ。チャンネルを合わせれば受動的に見られる状況にある地上波での放送であり、深夜なら何をやっても良いというのは、放送全体に児童・青少年への配慮を求めた放送基準を理解していない。
  • それぞれの業界が自ら定めているルールに基づいた18禁ゲームやアダルトビデオの映像をそのままテレビで流すことは、そのルールを無視することであり、明らかに許されるべきではない。
  • 青少年への影響というレベルを超えて、放送全体の品位を下げている。このような番組が公権力の介入の糸口になり、表現の自由が侵害されるきっかけにもなりかねない。

委員会としてはサンテレビに対し、視聴者意見および各委員の意見を記載したうえで次に掲げる事項について回答を求め、その回答を受けて次回委員会で再度審議することとした。

【青少年委員会からの「回答のお願い」】

  • 直近の貴局番組審議会に、視聴者意見及びBPO青少年委員会各委員の意見を報告していただくことをお願いします。また、番組審議会での審議結果を当委員会にお知らせください。
  • 当該番組の今後の方向や方針などで決まっていることがありましたらお知らせください。
    * なお、当該番組を6月27日の放送をもって終了するとの連絡がサンテレビからあった。

中学生モニター報告

6月は、1週間のうちに見た主な番組5本のタイトルと、その中で面白かったものとつまらなかったもの1本ずつについて意見を書いてもらった。
意見を局別に多い順に見ると、フジテレビ系が面白い7件・つまらない14件、日本テレビ系が11件と5件、TBS系が4件と6件、テレビ朝日系が5件と2件、テレビ東京系が3件と1件、そして関西テレビ(ローカル)が面白い1件、NHKがつまらない1件と続いた。つまらない番組がないというモニターも2人いた。
ジャンル別では、バラエティー番組が面白い10件・つまらない15件と最も多く、ドラマが11件と6件、報道・情報系番組が8件と5件、などだった。

【担当委員の所感】

委員会では、6月の中学生モニター報告の担当委員が報告の全体的な感想を述べた。

  • 中学生なりによくテレビを見ていてメディアリテラシーの能力が高い。
  • けっして下品な話題や安易な話題を求めていない点は、制作現場の人に伝えたい。
  • 特にドラマについての見方がしっかりしていて、安易なドラマのパターン化を見抜いている。
  • 今回は面白い番組・つまらない番組について漠然と聞いたが、モニターの面白いという言葉の受け取り方に興味をもった。別の機会に面白さの中身を深く聞きたい。

他の委員からは以下の意見が出された。

  • 中学生は今のような時代状況の中で心に残るものや心底笑えるものを求めている。
  • 中学生もモニター報告を書くだけの一方通行だとむなしいのだと思う。今月は質問項目が絞られたせいか内容が濃かった。今後こちらのスタンスを明確にし、かつ視点が狭くなりすぎないよう、質問を考える必要がある。

【面白かった番組】

中学生モニターが選んだ面白かった番組で、一番多かったのは『アタシんちの男子』の3件で、「毎回繰り出される困難をみんなで乗り越えるのが面白い。先が見えないのでこれからの展開も楽しみ」、「俳優も役のイメージに合っている」などという意見だった。
2件意見があったのは6番組で、ドラマでは『ザ・クイズショウ』に「クイズ番組とドラマを一緒にしたような構成がいい。最後が予想外の展開になったのも面白い」という意見があったが、「展開が早すぎて分かりにくい。全体的にオーバーアクション。おすすめはエンディングの嵐の歌だけ」という反対意見も1件あった。『アイシテル』は「いろいろなことを考えさせるドラマ。親殺し、子殺しが起きている世の中に、親のこと、子どものことを一番に考えるこのドラマはすばらしい」、『BOSS』も「BOSSを演じる天海さんが本当にかっこいい。内容も毎回新鮮で本当におもしろい」などという意見だった。
バラエティーでは『中井正広のブラックバラエティー』に「いつもしまりのない、自由でグダグダな感じがいい」。
報道・情報系番組では『Touch!eco いま、私達にできること。』に「司会者の”まず自分でできることから取り組みましょう”という言葉が印象的」、「宇宙から見た地球の話が一番印象に残った」という意見が、『ルビコンの決断』にも「世界のラーメン王。企業を一代で築いた人が苦労したり悩んだりする様子に感動した。特許を業界に開放したのはすごい」、「再現ドラマも親しみやすかった」などの意見があった。

【つまらなかった番組】

つまらなかった番組では、『爆笑レッドカーペット』が一番多く3件で「このごろ毎回同じ人が出てきてネタ切れになっている。変なことを言ったり踊ったりするだけでは芸人とは言えない」、「ごはんを食べている時にふさわしくないシモネタに疑問」などの意見だった。
2件意見があったのはバラエティーで、『ザ・ベストハウス123』には「おもしろいものと、つまらないものとの差が激しい」など、『ネプリーグ』には「普段と違い接戦でも大差がつくわけでもなく、見せ場がなかった」などの意見があった。

【全体集計】

この週に見た主な番組名も1人5本ずつ書いてもらったが、集計すると『ザ・クイズショウ』が9件で1位、2位は7件で『MR.BRAIN』だった。『MR.BRAIN』は感想が書きづらかったのか、面白かった・つまらなかった番組としての意見は1件もなかった。3位は『ミュージックステーション』『ひみつの嵐ちゃん』『スマイル』の3番組で5件ずつ。6位は4件で4番組が並び、『アタシんちの男子』『アイシテル』『BOSS』の他に『天地人』が入った。10位は3件で7番組が並び、『ネプリーグ』『爆笑レッドカーペット』の他に『つばさ』『ザ!世界仰天ニュース』『サプライズ』『ザ・イロモネアSP』『ターミネーター3』となっている。
そして2件の17位には16番組が並んだが、ここで『Touch! eco いま、私達にできること。』『ルビコンの決断』の他、『ズームイン!!SUPER』『スーパーニュース』『報道ステーション』という情報・報道系番組が多く登場する。中学生が情報・報道系の番組も、ドラマやバラエティー程ではないが、よく見ていることが分かる。

7月のモニター報告は、日本PTA全国協議会が毎年行っている「子どもとメディアに関する意識調査」のうち、中学2年生の保護者が子どもに見せたくないと思っている番組について、感想を聞くこととなった。
また、半年の任期中に1回行っている「中学生モニター会議」を8月21日に開催することに決めた。

調査研究について

事務局から「デジタルネイティブはテレビをどう見ているか?」(仮)調査研究の進捗状況について、「9月中の報告書完成に向けて作業を進めている。完成を受けてのシンポジウムを10月9日の午後に開催することで決定した」との報告があった。

第148回 放送と人権等権利に関する委員会

第148回 – 2009年6月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「派遣法・登録型報道」事案の審理 ……など

先月に引き続き、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理を行った。また、「派遣法・登録型導入報道」事案の実質審理が始まった。

議事の詳細

日時
2009年 6月16日(火)  午後3時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

前回に引き続き審理を行った。この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。番組は2008年10月19日放送のTBS「サンデージャポン」。
この日の委員会には、申立人の「反論書」とTBSの「再答弁書」が提出された。前回の審理をふまえ、名誉毀損はあったか、番組の性格を考慮すべきか、訂正放送は十分だったかなどの各点について、意見の集約に向けて審理した。
次回6月29日の委員会では、申立人、TBS側双方に対してヒアリングを実施することになった。

「派遣法・登録型報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の「サンデープロジェクト」の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、この事案の審理入りが4月の委員会で決まり、今回の委員会で初めて実質審理を行った。
はじめに、申立人・被申立人双方の主張をまとめた論点整理を行い、その後各委員がこの事案についての大まかな感想や意見を述べた。
その中では、「番組は熱心な調査報道である」という感想の一方、「言葉の使い方や映像の出し方はどうだったか」と言った声もあり、これらの意見を受け、次回委員会では議論の筋道を立て、委員会決定に向けて更なる審理を進めることになった。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理について

本事案は、東京都在住の勤務医らから、08年2月にTBSのニュース情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が医師の名誉を侵害したなどとして申立てがあったもの。申立人から提出される「反論書」、これに対するTBS側の「再答弁書」の提出を受け、6月の委員会で審理を続ける予定であったが、「再答弁書」が6月末に提出されることから、今回の委員会では実質審理は行わず、7月の委員会より審理を再開することとした。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・ 2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・83件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6月29日(月)に開催し、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の当事者に対するヒアリングが行うこととした。

以上

第26回 放送倫理検証委員会

第26回 – 2009年6月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』 …など

第26回放送倫理検証委員会は6月12日に開催され、まず、日本テレビ『バンキシャ!』について4回目の審理を行った。担当委員による委員会決定文案について議論されたが結論に至らず、次回に持ち越すこととした。
『ETV2001』については、NHKから「放送倫理検証委員会の意見についての見解」が提出されたので意見交換を行った。その結果、より多くの方々に議論を深めてもらうために、委員会の「意見」とNHKの見解等をまとめたブックレットを発行することにした。
二重行政をテーマに大阪府の道路清掃を取り上げた『ニュースキャスター』事案については、委員会からの質問に対するTBSの回答が提出された。それをもとに討議したが取り上げるかどうかを含めて、再度議論することにした。
バラエティー番組の問題点については、担当委員により2案出された原案を一本化した上で、7月に臨時の委員会を開いて集中的に議論することにした。

議事の詳細

日時
2009年 6月12日(金)午後5時~8時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

岐阜県が発注した土木工事で、裏金作りが行われているという建設会社役員の証言を報じた日本テレビの報道番組『バンキシャ!』(2008年11月23日放送)について、担当委員が作成した決定文案をもとに審理した。
現場で取材したスタッフの能力の問題よりも、むしろ制作体制の不備など構造上の問題ではないかという点に議論が集中した。
また、委員会として、検証番組の制作・放送を行う等の「勧告」を出すべきかどうかについても議論されたが、今回は結論に至らなかった。

<主な委員の意見>

  • 本来、取材を陣頭指揮すべき立場の人たちが局内にいて、現場で走り回って取材しているのは裏取り取材の経験の乏しい人たちばかりだ。日本テレビは、問題の根本を個人の能力の問題と捉えているように見えるが、そういうしくみを作ったのは局である。その責任について、日本テレビの報告には触れられていない。
  • 番組の責任者は十分な情報を知らずに判断を迫られ、その一方で現場のスタッフは情報提供者の詳しい情報を知らされずにロケに行っている。オーケストラのように協業を行わなければいけないのに、それぞれが一部分しか分からないオートメーション工場のような分業になっている。
  • 事実ではないことを報道したことついて、結果責任ではなくて注意義務を怠った重大な過失があると捉えるべきだ。まず、真実でないかもしれないと予見する”予見義務”をどうやって制作体制に取り入れるかという問題だ。
  • 放送前に、おかしいと思うべきことが何点か分かっていたのに確認しなかった。調査報道をする際に踏むべき常道をどの程度踏んだのかを検証すべきだ。
  • 検証委員会が最初に審理したTBSの事案の場合は、一人の内部告発者の証言だけで番組を作ったとすると、注意義務違反が問われたかもしれない。しかし、非常にあいまいだったけど第2の証言者がいたので、真実と信じるに足る根拠が得られたと委員会は考えた。今回はそれがない。
  • 番組制作期間があまりにも短すぎる。大きなテーマなのに調査がそんな短い時間でできるはずがない。全体の責任体制もよくわからないなど、いろいろな問題がある。オーケストラの例が出たが、コンダクターがきちんとすべてを把握して指揮しないとだめだ。
  • この状況下であれば、自分も同じ過ちを犯しただろう。現場のスタッフを責められない。私たちは、検証番組を作るべきだと反省のあり方を示唆してはどうか。テレビで犯した過ちはやっぱりテレビであがなう、それが一番フェアなテレビマンの反省の仕方ではないか。
  • 視聴者が納得するような検証番組を制作することが大切だ。日本テレビの調査報告書、特別調査チームの調査報告書、委員会の決定文案は70%位重なっていると思う。これらは検証番組の立派な台本になる。

こういった意見を踏まえて、次回の委員会で最終決定できるよう、継続して審理することにした。

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』

4月28日に委員会が通知・公表した「意見」に対して、6月4日にNHKから「放送倫理検証委員会の意見についての見解」が提出された。同日の記者会見において、NHK会長はこの問題に言及している。また、5月12日(1094回)と5月26日(1095回)に開催されたNHK経営委員会でもこの件は付議事項として議題に上り、NHKのホームページで公開されている議事録からも活発な議論が行われている様子がうかがえる。当委員会は、この問題についてより議論を深めてもらう材料を提供する目的で、委員会の「意見」とNHKの見解などを一冊のブックレットにまとめることにした。

道路清掃をめぐる二重行政を取り上げたTBS『情報7daysニュースキャスター』

4月11日に放送された『ニュースキャスター』で、府道と国道との交差点で大阪府の清掃車が国道を横切るときに、清掃用のブラシを上げて国道は清掃しないようにして通行する映像が二重行政の例として取り上げられた。TBSは、これが誤解を招く放送であったことを認め、お詫び放送を行った。 この事案について、委員会がTBSへ出した質問に対する回答書が提出された。その回答書をもとに議論したが結論に至らず、委員会として審議入りするかどうかを含めて、もう一度討議することにした。

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点を委員会としてどう扱うのかというテーマについて、担当委員から2つの案が提出された。俎上にのっている個別の番組について問題点を整理し、具体的に議論することが必要である点では一致したが、方向性についてはひとつの案に絞り込んだ上で、引き続き検討することにした。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組は時代と共に変貌する。それに伴い、バラエティー番組に関する問題も反復して発生する。どうして、制作者は過去の事例や他局の事例に学ぼうとしないのか。
  • 放送倫理を問うときは先に判断基準があり、その基準に違反しているかどうかを検証するプロセスを経なければならない。バラエティー問題については、判断基準としての、民放連の放送基準に言及すべきではないか。
  • べからず集ではなく、おもしろいバラエティーを作るにはどうすればいいのか、という考え方を示してはどうだろうか。ルール的なものは多すぎないほうがいいわけだから、あまり書き込むべきではない。
  • 制作しているセクションがどこであっても、バラエティー番組と標ぼうしている限りは全て対象に考えるべきだ。いろいろなジャンルが混ざり合ってバラエティー番組は成立しているのだから、軸足がどのジャンルにあるかは問題にすべきではない。
  • 風刺がきき、毒がなければバラエティーではない。常識を破ってこそバラエティーだ。制作者は放送倫理のギリギリを狙っていると認識することも大切だ。

昨秋以降の委員会で俎上にのせた何本かのバラエティー番組をまとめて検討しなければならず、重いテーマなので十分な時間をかけて議論すべきだという意見が出された。そこで、7月に臨時委員会を開催し、バラエティー番組を集中的に議論することにした。

以上