第256回放送と人権等権利に関する委員会

第256回 – 2018年3月

沖縄基地反対運動特集事案の通知・公表の報告、命のビザ出生地特集事案の審理…など

沖縄基地反対運動特集事案の「委員会決定」の通知・公表が3月8日に行われ、事務局が概要を報告した。命のビザ出生地特集事案の実質審理に入った。

議事の詳細

日時
2018年3月20日(火)午後4時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員、水野委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案の「委員会決定」(勧告:人権侵害)の通知・公表が3月8日に行われた。事務局がその概要を報告し、当該局の東京メトロポリタンテレビジョンが放送した決定を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの迫害から逃れた多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の出生地について、CBCテレビが2016年7月12日から2017年6月16日までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。番組では、岐阜県八百津町が千畝の手記などいわゆる「杉原リスト」をユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したのを受けて、千畝が「八百津町で出生」という通説に一部で疑念が生じており、千畝の子供で唯一存命の四男・伸生氏が入手した戸籍謄本には、「武儀郡上有知町」(現在の美濃市)で出生したと表記されていたことや、千畝の手記(下書き原稿)は出生地の記述が書き直されているとして、その筆跡鑑定の結果等を放送した。
この放送に対し、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」およびその理事である杉原千弘氏と杉原まどか氏、平岡洋氏の3氏が委員会に名誉毀損を訴える申立書を提出。番組は「杉原千畝命のビザ」が実体のない怪しい団体であり、また手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらにまどか氏および平岡氏がそれの偽造者であるとの事実を摘示しており、申立人らの社会的評価を低下させたと訴え、番組内で手記はいずれも千畝が書いた真正なものである旨の訂正を読み上げるよう求めた。
これに対し、CBCテレビは委員会に提出した「経緯と見解」書面において、番組は世界記憶遺産登録申請の活動の根幹となる「八百津町で出生」という通説が揺らいでいて、地元メディアの役割としてそれを再検証する必要があると考えて一連の報道を行ったと説明した。手記の書き直しは筆跡鑑定で、千畝とは別人の筆跡である可能性が高いという結果が出たが、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、まどか氏および平岡氏が手記を偽造したという印象を一般の視聴者が抱くとは思えないと主張。したがって、訂正を放送する考えはないと反論した。
前回の委員会で審理入りが決定したのを受けて、今回の委員会から実質審理に入った。CBCテレビから「答弁書」が提出され、双方の主張をまとめた資料を基に事務局が説明した。

3.その他

  • 委員会が2月2日に長野で開催した県単位の意見交換会について事務局が報告、その模様を伝える地元局の番組同録DVDを視聴した。

  • 2018年度「放送人権委員会」活動計画(案)が事務局から提示され、了承された。

  • 委員会が2018年度中に刊行する予定の『判断ガイド 2018』について、事務局から概要を説明した。

  • 坂井眞委員長、中島徹委員の2委員が3月末で任期満了となり、退任することになった。坂井委員長は委員、委員長代行時代を含め3期9年、中島委員は1期3年それぞれ務めた。

  • 4月から委員に就任する廣田智子氏(弁護士)が専務理事から紹介され、経歴等の説明があった。

  • 次回委員会は4月17日に開かれる。

以上

第255回放送と人権等権利に関する委員会

第255回 – 2018年2月

沖縄基地反対運動特集事案の審理、審理要請案件…など

沖縄基地反対運動特集事案の「委員会決定」案を検討し、了承した。命のビザ出生地特集事案を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2018年2月20日(火)午後4時~10時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員、水野委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が2017年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、軍事ジャ―ナリストが現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」としたうえで、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴えた。
これに対しTOKYO MXは、「申立人の主張は本番組の内容を独自に解釈し、自己の名誉を毀損するものであると主張するものであり、理由がないことは明らか」との立場を示し、また、虚偽・不公正であるとの申立人の主張については、「制作会社において必要な取材を尽くしたうえでの事実ないし合理的な根拠に基づく放送であって、何ら偽造ではない。申立人が主張するその他の事項についても同様であり、本番組の放送は虚偽ではなく不公正な報道にも該当しない」と述べている。
今月の委員会では、2月に入って2回開かれた起草委員会を経て修正された「委員会決定」案を審理、読み合わせをしながら表現、字句等を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。その結果、3月上旬に通知・公表を行うことになった。

2.審理要請案件:「命のビザ出生地特集に対する申立て」

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの迫害から逃れた多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の出生地について、CBCテレビが2016年7月12日から2017年6月16日までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。番組では、岐阜県八百津町が千畝の手記などいわゆる「杉原リスト」をユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したのを受けて、千畝が「八百津町で出生」という通説に一部で疑念が生じているとして、千畝の子供で唯一存命の四男・伸生氏(ベルギー在住)が取り寄せた戸籍謄本には、千畝が八百津町ではなく、「武儀郡上有知町」(現在の美濃市)で出生したと表記されていたことや、千畝の手記(下書き原稿)を入手して調べたところ、出生地が「武儀郡上有知町」が二重線で消され、「加茂郡八百津町」に書き直され、伸生さんは書き直した文字は「父の筆跡ではない」と話し、筆跡鑑定士も「千畝のものと違う」と鑑定した等と放送した。
この放送に対し、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」およびその理事である杉原千弘氏と杉原まどか氏、平岡洋氏の3氏が委員会に名誉毀損を訴える申立書を提出。この中で、番組ではユネスコに提出された本件各手記を「杉原千畝命のビザ」が保管していることを杉原まどか氏と平岡洋氏に確認させ、直後に「鑑定士」2人が本件各手記は偽造文書であると決めつける発言をそのまま放送したことから、「一般の視聴者は、本件各手記は偽造されたものとの印象を受けた」と主張した。
さらに、杉原まどか氏及び平岡洋氏が本件各手記の真正を述べるインタビューを放送した直後に、「違うよ、こんなの」だとか、「裁判所からの鑑定だったら、完全に違う、と言う。」と、「鑑定士」が両氏のインタビュー内容を徹底的に否定してみせたことにより、「かかる構成からすると、杉原まどか及び平岡洋が偽造者であるとの事実を摘示している」と述べた。
申立書は、「私文書偽造は犯罪であり、しかもそれをユネスコに提出して偽造私文書を行使したというのだから、本件放送が杉原まどか及び平岡洋の社会的評価を低下させることは明らか」で、また本件各手記の保管者である「杉原千畝命のビザ」の社会的評価も低下させ、「本件各手記の真実の保管者は杉原千弘であること、同人は杉原千畝命のビザの理事であることから、杉原千弘の社会的評価も低下させる」と主張した。
申立書は放送による具体的被害として、それまで半年間に十数件あった申立人らへの講演依頼が、放送後はほとんどなくなった点等を挙げ、CBCテレビに対し、「本件各手記はいずれも杉原千畝が書いた真正なものである」との趣旨の訂正を番組内で放送するよう求めている。
申立人とCBCテレビは、委員会事務局の要請に応じて面会し、話し合いによる解決を模索したが、双方の主張は折り合わず、不調に終わった。
これを受けてCBCテレビは2018年1月30日付で「経緯と見解」書面を提出、「申立人が主張する『杉原千畝の手記とされる文書を、偽造文書と決め付けるような放送』は、行っていない。従って、申立人が求めている訂正を、放送する考えはない」と述べた。
同局は、八百津町が町内に設置した「杉原千畝生家跡」との看板を後に「実家跡」に書き換えたことをきっかけに取材を始め、番組は世界記憶遺産登録申請の「活動の根幹(根拠)となる『八百津町で出生』という通説が揺らいでいることを報じたもので、この"霧"を晴らすことが地元メディアの役割であり、真っ当な世界遺産登録への道と考えた。正確性、真正性が厳格に問われるユネスコの審査に、疑義を残したままで大丈夫なのか。登録申請者である八百津町の姿勢に警鐘を鳴らすとともに、世界に胸を張って杉原千畝の業績の顕彰を進めるため、この機会に、地元や研究者の間にくすぶる千畝の出生地の疑問、及びその根拠を再検証する必要があると考え、一連の報道を行った」と説明した。
また「一連の取材でキーになったのが、千畝の子どもで唯一存命の四男・伸生氏へのインタビューと、彼が入手した千畝の戸籍謄本などの一次資料」とし、出生地に関する手記の書き直しが、伸生氏が指摘するように別人によるものかその可能性を探るため「利害関係のない専門家」に筆跡鑑定を依頼したところ、「下書き原稿の出生地書き直しは、千畝とは別人の筆跡である可能性が高い。」という結果が出たと指摘。ただ、「筆跡鑑定は絶対ではなく、あくまで判断材料の一つ」として、「放送は、手記が真正か、偽造されたものかという判断には踏み込んではいない。但し、下書き原稿の出生地の書き直しに限っては、筆跡鑑定の結果を含めた総合的な判断として、不自然さが残ることを指摘した。申立人が指摘する『手記は偽造文書だ』という旨の放送は、行っていない。また、申立人が指摘する『杉原まどか氏および平岡洋氏が手記を偽造したという印象』を、この放送を視聴された一般の方が抱くとは思えない」と主張した。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

3.その他

  • 3月13日に開催される2017年度BPO年次報告会について事務局長が説明した。

以上

第254回放送と人権等権利に関する委員会

第254回 – 2018年1月

沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

沖縄基地反対運動特集事案を審理し、提出された「委員会決定」の修正案について議論した。

議事の詳細

日時
2018年1月16日(火)午後4時~10時05分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員、水野委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が2017年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」としたうえで、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴えた。
これに対しTOKYO MXは、「申立人の主張は本番組の内容を独自に解釈し、自己の名誉を毀損するものであると主張するものであり、理由がないことは明らか」との立場を示し、また、虚偽・不公正であるとの申立人の主張については、「制作会社において必要な取材を尽くしたうえでの事実ないし合理的な根拠に基づく放送であって、何ら偽造ではない。申立人が主張するその他の事項についても同様であり、本番組の放送は虚偽ではなく不公正な報道にも該当しない」と述べている。
今月の委員会では、第2回起草委員会を経た「委員会決定」の修正案が提出され、担当委員の説明を受けて議論した。その結果、さらに起草委員会を開き、次回委員会で審理を続けることになった。

2.その他

  • 委員会が2月2日に長野で開催する県単位意見交換会の議題、進行等を確認した。

  • 2月22日に開催される第15回BPO事例研究会について事務局長が説明した。

  • 次回委員会は2月20日に開かれる。

以上

第253回放送と人権等権利に関する委員会

第253回 – 2017年12月

沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

沖縄基地反対運動特集事案を審理し、提出された「委員会決定」原案の構成、内容について意見を交わした。

議事の詳細

日時
2017年12月19日(火)午後4時~8時05分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員、水野委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が2017年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」としたうえで、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴えた。
これに対しTOKYO MXは、「申立人の主張は本番組の内容を独自に解釈し、自己の名誉を毀損するものであると主張するものであり、理由がないことは明らか」との立場を示し、また、虚偽・不公正であるとの申立人の主張については、「制作会社において必要な取材を尽くしたうえでの事実ないし合理的な根拠に基づく放送であって、何ら偽造ではない。申立人が主張するその他の事項についても同様であり、本番組の放送は虚偽ではなく不公正な報道にも該当しない」と述べている。
今月の委員会では、12月初めに開かれた第1回起草委員会を踏まえた「委員会決定」の原案が提出され、担当委員の説明を受けて、全体の構成、内容等について各委員から意見が出された。次回委員会でさらに検討を重ねることになった。

2.その他

  • 12月から委員に就任した水野剛也氏(東洋大学社会学部教授)が専務理事から紹介され、経歴等の説明があった。水野委員の就任は、2017年3月のBPO理事会で委員会の委員定数を1名増員することが承認されたことを受けたもの。

  • 委員会が11月28日に仙台で開催した東北地区意見交換会について事務局が報告、その模様を伝える地元局の番組同録DVDを視聴した。

  • 委員会が2月2日に長野で開催する県単位意見交換会の進行等を事務局が説明、了承された。

以上

第252回放送と人権等権利に関する委員会

第252回 – 2017年11月

沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

沖縄基地反対運動特集事案を審理し、「委員会決定」の構成や方向性について意見を交わし、その結果、担当委員が起草に入ることになった。

議事の詳細

日時
2017年11月21日(火)午後4時~7時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」としたうえで、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴えた。
これに対しTOKYO MXは、「申立人の主張は本番組の内容を独自に解釈し、自己の名誉を毀損するものであると主張するものであり、理由がないことは明らか」との立場を示し、また、虚偽・不公正であるとの申立人の主張については、「制作会社において必要な取材を尽くしたうえでの事実ないし合理的な根拠に基づく放送であって、何ら偽造ではない。申立人が主張するその他の事項についても同様であり、本番組の放送は虚偽ではなく不公正な報道にも該当しない」と述べている。
今月の委員会では先月のヒアリングを受けて、「委員会決定」の構成や方向性ついて意見を交わした。その結果、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.その他

  • 委員会が11月28日に仙台で開催する東北地区意見交換会の進行等について事務局が説明、了承された。

以上

第251回放送と人権等権利に関する委員会

第251回 – 2017年10月

沖縄基地反対運動特集事案のヒアリングと審理…など

沖縄基地反対運動特集事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聴いた。

議事の詳細

日時
2017年10月17日(火)午後3時~9時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案のヒアリングと審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が2017年1月2日と9日に放送した情報バラエティー番組『ニュース女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャーナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるトークを展開し、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。この放送に対し人権団体「のりこえねっと」の共同代表・辛淑玉氏が、「名誉を毀損する内容である」と申し立てた。
委員会では、申立人と被申立人のTOKYO MXにヒアリングを行い、詳しく事情を聴いた。
辛淑玉氏は代理人の弁護士とともに出席。本件番組でスタジオ出演者の発言やテロップ等を合わせると、(1)沖縄の基地反対運動の現場で行われているのは「犯罪」で、「テロリズム」である、(2)反対派は5万円の日当、つまり報酬をもらってやっている、(3)そこにおカネを送っているのは辛淑玉氏である、等の事実を摘示しており、これが申立人の社会的評価を低下させ、名誉を毀損したと改めて主張した。
また、スタジオの出演者が、申立人は「元々反原発、反ヘイトスピーチなどを職業的にずーっとやってきて、今は沖縄に行っている」「いわゆるスキマ産業ですね」と述べたことについて、「スキマ産業という、つまり営利目的でやっている、何らかの利益を得ているという評価をされた。しかし、この活動だけで利益を得たことは一度もない。この事実の摘示は虚偽であり、それ自体が名誉毀損にあたる」と述べた。
さらに、番組の制作会社が反対運動の現場や辛淑玉氏ら「のりこえねっと」の人間に何ら取材をしていない点を挙げ、「対象としている個々対立する意見がある事象について、片方の意見のみ聞いて報道したことが、最も大きな不公正」と指摘。辛淑玉氏は、「少なくともMX自体も私に聞くべきだと思う」と付け加えた。
このほか、本件番組が「明白な人種差別」と主張する理由について、「韓国人はなぜ反対運動に参加する?」とのテロップ等、「批判の対象が韓国人であること、外国人であることを殊更強調している。それ自体が差別」と主張した。
本件番組による被害については、「普通のテレビで見られ、スマホでもテレビの受信が出来る(地上波の)MXで流されたということが、今までインターネットの中だけでやられていたものとは一線を越えている」との判断を示し、具体的には放送による精神的な苦痛、放送後の脅迫・嫌がらせのメール、手紙、社員研修等仕事の発注量の減少、社会的評価の低下等「かつてとは質・量が違い、多岐にわたる」被害があったとし、特に「今回の番組で初めて、自分の出自は沖縄の友だちにこんなに迷惑になると思った。朝鮮人であることが、こういう使われ方をするかと思い、厳しかった」と心境を語った。
一方、被申立人のTOKYO MXからは上席執行役員編成局長、考査担当者ら3人が代理人弁護士2人とともに出席。「申立人の主張は本番組の内容を独自に解釈し、自己の名誉を毀損するものであると主張するものであり、理由がないことは明らか」との立場を改めて示した。
また、虚偽・不公正であるとの申立人の主張については、「制作会社において必要な取材を尽くしたうえでの事実ないし合理的な根拠に基づく放送であって、何ら偽造ではない。申立人が主張するその他の事項についても同様であり、本番組の放送は虚偽ではなく不公正な報道にも該当しない」と述べた。
ただ、「表現の仕方などに関しては、もう少しきちんと見ておいても良かったのかなと、要は不快の念を抱かれた方がいらっしゃるのではないかということで、遺憾の念を述べさせていただいており、そこは反省点である」と語った。
基地反対派を「テロリスト」と表現していることについては、「明らかに断定していれば、それはまずいという指摘になる」「『テロリストみたい』という表現だったら、ギリギリ許される表現なのかなというふうには考えていた」と説明した。
本件番組は自社制作番組とは異なり、スポンサー側で制作を行い、電波料も別途支払われ、番組分類上「持ち込み番組」に該当する。同局は「きちんと考査もしたうえで放送しており、放送倫理、放送基準、放送法に則って、たとえ持ち込みであろうが、自社制作であろうが、所定の手続きをもって審査して放送している」と、重ねて放送責任を認め、さらに、名誉毀損の成否は通常、公共性、公益性、真実性という枠組みで判断するが、持ち込み番組であっても、自社制作と同じ基準で判断することを前提としてよいかとの問い対し、「そうでなければいけないと思うし、それはきちんと責任をもっていくつもり」と答えた。
基地反対派や申立人らに取材しなかったことについては、反対派らの意見を「聞けたほうがベストと思う」としながらも、「これはある一つの角度から見た番組なので、違う角度から見る番組というのは当然必要になる。いわゆる放送法第4条が定めるような両論併記というところも、我々としては視野に入れているので、今回は取材をしなくても、別の機会で取材をすれば良いだろうという判断も一つはある」と述べた。
また考査担当者は、本件番組は通常スタジオトークを中心に番組進行することが多く、現場での取材はほとんどしないことから、沖縄に飛んで取材した「軍事ジャーナリスト」の報道内容については、「そもそもの現場に本人が行っているというのが、なによりの担保になってしまって、自分の中では疑う余地を外してしまったというのが本音」と明かした。
委員会はヒアリング後審理を続行、その結果、担当委員が起草準備のための会合を開いたうえで、次回委員会でさらに審理を進めることになった。

2.その他

  • 委員会が今年度中に開催予定の県単位の意見交換会について、年明け2月2日に長野で開催することになり、事務局から概要を説明した。

以上

第250回放送と人権等権利に関する委員会

第250回 – 2017年9月

浜名湖切断遺体事件報道事案の通知・公表の報告、沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」の通知・公表が8月8日に行われ、事務局が概要を報告した。また沖縄基地反対運動特集事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年9月19日(火)午後4時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案の「委員会決定」(見解:要望あり)の通知・公表が8月8日に行われた。事務局がその概要を報告し、当該局のテレビ静岡が放送した決定を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴え、TOKYO MXに対し訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果公表等を求めた。
これを受けて同局は、申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出した。その中で「本番組は沖縄県東村高江地区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題においてこれまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明。放送内容は、「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて起草担当委員がまとめた論点と質問項目案について検討した。その結果、次回委員会で申立人、被申立人双方にヒアリングを実施し、詳しい事情を聴くことを決めた。

3.その他

委員会が本年度中に予定している東北地区加盟社との意見交換会を11月28日(火)に仙台で開催することになり、その概要を事務局が説明した。

以上

第249回放送と人権等権利に関する委員会

第249回 – 2017年7月

都知事関連報道事案の通知・公表の報告、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理、沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

都知事関連報道事案の「委員会決定」の通知・公表が7月4日行われ、事務局が概要を報告した。浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」の再修正案を検討し、了承された。また沖縄基地反対運動特集事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年7月18日(火)午後4時~8時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案の「委員会決定」(見解:要望あり)の通知・公表が7月4日に行われた。事務局がその概要を報告し、当該局のフジテレビが放送した決定を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

今月の委員会では、前回の委員会後に修正された「委員会決定」案が提示され了承された。
その結果、8月上旬に「委員会決定」を通知・公表することになった。

3.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴え、TOKYO MXに対し訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果公表等を求めた。
これを受けて同局は、申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出した。その中で「本番組は沖縄県東村高江地区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題においてこれまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明。放送内容は、「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
前回の委員会後、被申立人から「再答弁書」が提出され、所定の書面が出揃った。今月の委員会では、事務局が双方のこれまでの主張をまとめた資料を説明、それを基に委員が意見を交わした。今後、論点を整理するため起草担当委員が集まって協議することとなった。

4.その他

  • 7月27日(木)に開催される第14回BPO事例研究会について改めて事務局から説明した。当委員会からは、「事件報道に対する地方公務員からの申立て」と「STAP細胞報道に対する申立て」の2事案を取り上げる予定で、坂井眞委員長、市川正司委員長代行、曽我部真裕委員が出席する。
  • 8月は休会とし、次回委員会は9月19日に開かれる。

以上

第248回放送と人権等権利に関する委員会

第248回 – 2017年6月

都知事関連報道事案の審理、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理、沖縄基地反対運動特集事案の審理、STAP細胞報道事案の対応報告、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の対応報告など

都知事関連報道事案の「委員会決定」案を検討のうえ了承し、浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」案を引き続き議論、また沖縄基地反対運動特集事案を審理した。STAP細胞報道事案について、NHKから提出された対応報告を引き続き検討し、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案で、テレビ熊本、熊本県民テレビから提出された対応報告を了承した。

議事の詳細

日時
2017年6月20日(火)午後4時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
前回の委員会後開かれた第2回起草委員会で修正された「委員会決定」文が、今月の委員会に提案され了承された。その結果、7月4日に「委員会決定」を通知・公表することになった。

2.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュースで、「静岡県浜松市の浜名湖で切断された遺体が見つかった事件で、捜査本部は関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べています」等と放送した。この放送に対し、同県在住の男性が「殺人事件に関わったかのように伝えられ名誉や信頼を傷つけられた」と申し立てた。
申立人は、「私の自宅、つまり私と特定できる映像と、断定した『関係者』『関係先』とのテロップを用いて視聴者に残忍な事件の関係者との印象を与えた。実際、この放送による被害が目に見える形で発生しており、名誉毀損は十分に成立する」等と述べている。
これに対しテレビ静岡は、「本件放送は社会に大きな不安を与えてきた重大事件について、客観的な事実に基づいて、捜査の進展をいち早く知らせる目的をもって行ったものであり、申立人の人権の侵害や名誉・信頼の毀損にはあたらないものと考えている」等と述べている。
今月の委員会では、6月7日の第2回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」修正案を審理し、次回委員会でさらに検討を重ねることになった。

3.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴え、TOKYO MXに対し訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果公表等を求めた。
これを受けて同局は、申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出した。その中で「本番組は沖縄県東村高江地区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題においてこれまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明。放送内容は、「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
前回委員会で審理入りが決定したのを受けて、今回の委員会から実質審理に入った。申立人、被申立人よりその後提出された書面について事務局が報告し、委員から発言があった。

4.「STAP細胞報道に対する申立て」 NHKの対応報告

2017年2月10日に通知・公表された委員会決定第62号に対し、NHKから提出された報告「STAP細胞報道に関する勧告を受けて」(5月9日付)を、前回の委員会に引き続いて検討した。
その結果、同報告に関する委員会の考えを「意見」として取りまとめ、これを付して報告を公表することになった(局の報告と委員会の意見はこちらから)。

5.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の対応報告

2017年3月10日に通知・公表された委員会決定第63号に対して、テレビ熊本から6月9日付で提出された「対応と取り組み」報告について事務局より報告があり、委員会としてこれを了承した。

6.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案の対応報告

2017年3月10日に通知・公表された委員会決定第64号に対して、熊本県民テレビから6月9日付で提出された「対応と取り組み」報告について事務局より報告があり、委員会としてこれを了承した。

7.その他

  • 委員会が7月18日(火)に開催する在京キー局との意見交換会について、事務局が議題、進行等を説明して了承された。当日予定される委員会に先立って開催する。
  • 7月27日(木)に開催される第14回BPO事例研究会について事務局から説明した。当委員会からは、「STAP細胞報道に対する申立て」、「事件報道に対する地方公務員からの申立て」の2事案を取り上げる予定。
  • 次回委員会は7月18日に開かれる。

以上

第247回放送と人権等権利に関する委員会

第247回 – 2017年5月

都知事関連報道事案の審理、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理、STAP細胞報道事案の対応報告、沖縄基地反対運動特集事案の審理入り決定など

都知事関連報道事案および浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」案をそれぞれ議論し、またSTAP細胞報道事案について、NHKから提出された対応報告を検討した。さらに沖縄基地反対運動特集事案を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2017年5月16日(火)午後4時~9時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
前回の委員会後、起草委員会が開かれて「委員会決定」文が起草され、今月の委員会では担当委員の説明を受けて決定文案の結論部分を中心に審理した。次回委員会でさらに検討を重ねることになった。

2.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュースで、「静岡県浜松市の浜名湖で切断された遺体が見つかった事件で、捜査本部は関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べています」等と放送した。この放送に対し、同県在住の男性が「殺人事件に関わったかのように伝えられ名誉や信頼を傷つけられた」と申し立てた。
申立人は、「私の自宅、つまり私と特定できる映像と、断定した『関係者』『関係先』とのテロップを用いて視聴者に残忍な事件の関係者との印象を与えた。実際、この放送による被害が目に見える形で発生しており、名誉毀損は十分に成立する」等と述べている。
これに対しテレビ静岡は、「本件放送は社会に大きな不安を与えてきた重大事件について、客観的な事実に基づいて、捜査の進展をいち早く知らせる目的をもって行ったものであり、申立人の人権の侵害や名誉・信頼の毀損にはあたらないものと考えている」等と述べている。
委員会では、5月9日の第1回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」案を審理した。その結果、第2回起草委員会を開催して修正案を検討し、次回委員会に提出することになった。

3.「STAP細胞報道に対する申立て」 NHKの対応報告

本事案で「勧告」として「名誉毀損の人権侵害が認められる」との決定を受けたNHKから、対応報告(5月9日付)が委員会に提出された。
報告内容について意見が出され、次回委員会でさらに検討のうえ対応を決めることになった。

4.審理要請案件:「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティー番組『ニュース女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャーナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるトークを展開し、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この特集に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が、「事実と異なる虚偽情報」と在日韓国人である同氏に対する「人種差別発言」により名誉を毀損された等とする抗議文(1月20日付)を同局に送付した。
その後辛氏は1月27日付で申立書を委員会に提出。「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が虚偽のものであることが明らか」としたうえで、番組内では、「のりこえねっと」の団体名を挙げるとともに申立人について、あたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また申立人が外国人であることがことさら強調され、不法な行為をする「韓国人」の一部であるかのような人種差別を扇動するものであり、申立人の「名誉を毀損する内容である」と訴え、TOKYO MXに対し同番組での訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果報告、再発防止策の公表と実行、人権、差別問題に関する社内研修の確立等を求めた。
また申立書は、「虚偽を事実であるかのように放送したこと」「まともに取材していないこと」「極めて偏向した内容であること」という放送内容は、「もはや放送倫理云々のレベルですらなく、明確に放送法4条各号違反である」と主張した。
さらに1月9日の放送については、改めて申立人もしくは「のりこえねっと」に取材することなく、前週放送の「虚偽報道を糊塗するような放送がなされた」としている。
申立人とTOKYO MXは、委員会事務局の要請に応じて代理人同士が話し合いによる解決を模索したが、不調に終わり、申立人側から4月12日、改めて委員会の審理を要望する意思が事務局に伝えられた。
これを受けて同局は4月27日、本件申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出。その中で、「本番組は、沖縄県東村高江区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題において、これまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明し、放送内容は「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
同局は、申立人が「黒幕」として「テロリスト」に資金を供与しているかのような情報を番組が摘示したと主張していることについて、「申立人が具体的に本件番組のどの表現を捉えてこのような主張をしているのか、不明であると言わざるを得ない。当社としては、本件放送はそのような内容を含むものではないと考えている」と述べ、また「申立人が問題視している『テロリスト』等の表現は、高江でヘリパッドの建設反対運動には、一部強硬な手段がとられていることを伝える中で比喩として用いられているものであり、申立人について述べたものではないため、本件申立ての争点である申立人の名誉毀損の成否とは直接の関係がないといえる」と主張した。
このほかTOKYO MXは、申立人が放送内容が事実に反すると主張している点について、「当社として調査、確認した結果、本件番組内で使用された映像・画像の出典根拠は明確であり、本件番組内で伝えられた事象は、番組スタッフによる取材、各新聞社等による記事等の合理的根拠に基づく説明であって、本件放送に係る事実関係において、捏造や虚偽があったとは認められない」と反論した。
TOKYO MXによると、本件番組は自社制作番組とは異なり、番組分類上スポンサー側で制作を行い、電波料も別途支払われる持込番組に該当するため、クレジットが、「製作著作 DHCシアター」となっているが、「当社は、放送枠を販売する形式ではあるが、放送責任が当社にあることは承知している」と述べている。
なお、本番組については、BPO放送倫理検証委員会が2月10日の委員会で審議入りを決定している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

5.その他

  • 在京キー局との意見交換会を7月18日(火)に開催することになり、事務局から概要を説明して了承された。当日予定される委員会に先立って開催する。
  • 委員会が今年度中に予定している東北地区加盟社との意見交換会について、今秋仙台で開催することを決めた。
  • 次回委員会は6月20日に開かれる。

以上

第246回放送と人権等権利に関する委員会

第246回 – 2017年4月

浜名湖切断遺体事件報道事案のヒアリングと審理、都知事関連報道事案の審理など

浜名湖切断遺体事件報道事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。また都知事関連報道事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年4月18日(火)午後3時~8時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュースで、静岡県浜松市の浜名湖周辺で切断された遺体が発見された事件について、「捜査本部が関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べている」等と放送した。この放送に対し、同県在住の男性が「殺人事件に関わったかのように伝えられ名誉や信頼を傷つけられた」と申し立てた。
今月の委員会では、申立人と被申立人のテレビ静岡にヒアリングを実施し、詳しい話を聴いた。
申立人は、「テレビ静岡は、私の名前も公表していない、被疑者として断定して放送していないと主張しているが、私の自宅、つまり私と特定できる映像と断定した『関係者』『関係先』とのテロップを用いて視聴者に残忍な事件の関係者との印象を与えた。実際、この放送による被害が目に見える形で発生しており、名誉毀損は十分に成立すると思う。私有地に侵入しての取材については、マスコミという屋外での撮影を主たる業務とする職種であるので、当然に撮影前のみならず、撮影後の編集の段階においても、私道等撮影をしても問題なき場所かの確認を取るべきで、少しの注意で結果が予見でき、回避ができるのに、注意を怠った重過失がテレビ静岡にはある。プライバシーである寝具を撮影したことも、奥の窓を撮影するためという主張は苦しいもので、編集段階でいくらでもどうにかなる。要は犯人視していたからこそ、躊躇なく知られたくない生活の一部も撮影、放送したものだと思う」等と述べた。
テレビ静岡は報道の責任者ら4人が出席し、「申立人の氏名等を一切報じていないのはもちろん、申立人を犯人視する表現をしたり、視聴者に申立人を犯人視させたりする演出やねつ造は一切行っていない。さらに、本件捜査が行われた申立人の自宅を一般視聴者が特定できないように種々の配慮をしつつ、報道の真実性を損なわないよう映像を編集した。その中で、申立人宅の道路に面して干してあった枕等が映像に映っていた点については、道路からごく自然に目に入るものであることや下着等のものでないことから、プライバシーの侵害には当たらないと考えている。申立人宅の私有地への立ち入りという点については、一般の立ち入りが禁止されることを示す表示や門柱・仕切りなどは一切なく、取材陣はこれを一般の生活道路として立ち入りや通行が認められているものと認識していた。本件放送は社会に大きな不安を与えてきた重大事件について、客観的な事実に基づいて、捜査の進展をいち早く知らせる目的をもって行ったものであり、申立人の人権の侵害や名誉・信頼の毀損にはあたらないものと考えている」等と述べた。
ヒアリング後、本件の論点を踏まえ審理を続行、その結果、担当委員が「委員会決定」文の起草に入ることになった。

2.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
今月の委員会では先月のヒアリングを受けて、人権侵害と取材方法や編集などの放送倫理の問題について審理を進めた。その結果、担当委員が「委員会決定」文の起草に入ることになった。

3.その他

  • 放送人権委員会の2016年度中の「苦情対応状況」について、事務局が資料をもとに報告した。同年度中、当事者からの苦情申立てが18件あり、そのうち審理入りしたのが4件、委員会決定の通知・公表が5件あった。また仲介・斡旋による解決が6件あった。
  • 次回委員会は5月16日に開かれる。

以上