第171回 放送倫理検証委員会

第171回–2022年5月

毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』を討議

第171回放送倫理検証委員会は5月13日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、当該番組の関係者に対して行ったヒアリング等を踏まえ、担当委員から意見書の原案が提出された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』に同じ政党の関係者3人が出演し政治的な課題などについて見解を語ったことについて議論を行った結果、討議入りとし委員長談話を公表することを決めた。

議事の詳細

日時
2022年5月13日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、当該局から提出された報告書やヒアリングの内容を基に前回の委員会で交わされた意見を踏まえ、担当委員が作成した意見書の原案が示され、議論が行われた。
次回の委員会では、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について討議

毎日放送は2022年元日、バラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』を放送した。番組ゲストとして、弁護士・コメンテーターの橋下徹氏と日本維新の会代表・大阪市長の松井一郎氏、日本維新の会副代表・大阪府知事の吉村洋文氏が出演し、MCのタレント2人と「今の政治&大阪の未来は!?」をテーマに、番組内で計1時間程度トークを展開する内容であった。
放送後BPOには、「まるで維新の会の宣伝にしか見えない」「一特定政党だけをヨイショする番組」など、視聴者から批判的な意見が多数寄せられた。また1月11日に開催された当該局の番組審議会では、委員から「政治的なバランスに欠ける」「バラエティー番組に政治家を招くことに対する認識が欠如している」などの意見が出された。
これを受けて毎日放送は社内に調査チームを立ち上げ、関係者に対するヒアリングを行って事実関係を明らかにするとともに、全社研修やチェック体制の強化など再発防止に向けた取り組み状況を3月1日の番組審議会に報告した。
委員会は、当該局の一連の取り組みについて、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないこととした。一方で、問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、政治問題や政治家に関する番組を制作する際の留意点などを委員長談話として公表することを決めた。
委員長談話は、こちら。

3. 4月に寄せられた視聴者意見について議論

4月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組でのウクライナ情勢に関するインタビューの字幕が不正確といった指摘や知床の遊覧船沈没事故での不適切な取材のあり方、また、今夏に予定される参議院選挙に関連した放送に対する批判的意見などが事務局から報告され議論を行った。

以上

第304回放送と人権等権利に関する委員会

第304回 – 2022年5月

BPOの国際活動について委員会に報告…など

議事の詳細

日時
2022年5月17日(火)午後4時~午後5時30分
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「判断ガイド2023」について

「判断ガイド2023」について、事務局から目次構成案を示し、協議した。現在の「判断ガイド2018」の目次項目に、未収録の10本の「委員会決定」の内容を加えてみて、過不足がないか議論した。今後、委員長代行2名が監修委員となり、執筆・編集作業を進めていくことが確認された。

2.BPOの国際活動について

2021年度から開始しているBPO全体としての国際活動の現状について、事務局から報告した。特にドイツの放送自主規制機関FSF所長とBPO大日向理事長とのオンラインによる交流について詳しく伝えた。

3. その他

事務局から最新の申立て状況について説明した。

以上

2022年4月に視聴者から寄せられた意見

2022年4月に視聴者から寄せられた意見

エレベーターでの防犯対策として推奨される女性の行動に不快感を示した男性芸人の体験談に「不適切」などの意見が寄せられました。

2022年4月にBPOに寄せられた意見は1,648件で、先月から69件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール79%、電話19%、郵便・FAX 各1%。
男女別は男性41%、女性24%で、世代別では40歳代27%、50歳代23%、30歳代19%、20歳代13%、60歳以上12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、4月の送付件数は856件、54事業者でした。また、それ以外の放送全般への意見の中から24件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

女性にエレベーターを譲られたことを男性芸人が「不快な体験」として披露したことについて、防犯対策として警察も推奨する行動であり不適切という意見が寄せられました。またバラエティー番組で過去のテレビドラマを、主演の男性タレントが存在していなかったかのように紹介。これについて、大手芸能事務所を退所したこととの関連を懸念する意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は49件、CMについては21件でした。

青少年に関する意見

4月中に青少年委員会に寄せられた意見は153件で、前月から49件増加しました。
今月は「いじめ・虐待」が43件、「低俗、モラルに反する」が33件、「表現・演出」が25件、「人権」が18件、「暴力・殺人・残虐シーン」が8件でした。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 発言内容が取り沙汰されている講義で実際に使われた「無垢」、「生娘」、「シャブ漬け」などの言葉を、ある放送局は別の言葉に置き換えていた。もし放送上不適当と判断したのなら行き過ぎで間違っていると思う。それらの言葉が不適当かどうかは視聴者やリスナーの判断に任せるべきだ。もし政治家の発言であったとしたら、誤った内容を視聴者に伝えることになる。大きな問題だと思った。

  • ヒグマが人を襲ったり目撃されたりしたニュースで、キャスターが「小学生は登下校時にクマよけの鈴をつけて」と呼びかけている。専門家の意見だとは思うが、おととし私は、鈴をつけていてクマに追いかけられた。ツキノワグマには有効かもしれないが、好奇心の強いヒグマには有効ではない。人の気配があっても出てくるクマは、人間の廃棄物を食べた、もしくは人を襲った経験があると思った方がいい。クマよけの鈴は「エサがある」という目印になるだけだ。数年前まではロケット花火や爆竹なども有効だといわれていたが、銃で仕留め損ねたシカを食べた経験から、今では火薬の匂いをエサと勘違いして近寄ってくる。クマよけの鈴をつけていれば安心だと思わせる報道は危険。

  • 放送局の社外取締役の一人が県議会議長。政治家が社外取締役では公平性に欠けるのではないか。また、地元選出国会議員の後援会への勧誘を副知事が県幹部に依頼していた事件について、この放送局は国会議員の名前を伏せて報道した。これも中立性に欠けるのではないか。

【番組全般・その他】

  • 「離婚後の親権の問題を考える」という番組のゲスト2人が共同親権に否定的な弁護士や学者で、離婚後に子どもとの面会交流ができないのは「別居親に問題がある」という印象を与える内容だった。同居親が不倫をして他方親の同意なく子を連れて転居(実子誘拐)するようなケースもある。

  • 性犯罪への対策のひとつとして、警察などは男性と二人きりでエレベーターに乗り合わせないよう女性に注意喚起している。それに従ったと思われる女性の行動について、男性芸人が「不快に感じたので脅かしてやろうと思った」という主旨の発言。これを自慢げに話すなんてどうかしている。ネタとしてOKを出し放送したテレビ局もおかしい。

  • 女性にエレベーターを譲られたことを男性芸人が「不快な体験」として披露。腹いせによる報復をおそれて男性と同乗し、犯罪に巻き込まれるなどの影響がありそうで心配だ。大変有害な内容だと思った。人気のある芸人の発言なので「怖がってはいけない、男性に配慮しないといけない」と思う子どもも出るかもしれない。

  • バラエティー番組で過去のテレビドラマを、主演の男性タレントが存在していなかったかのように紹介した。主演俳優が誰なのかは少し調べれば分かることで、単なる勘違いではないはず。大手芸能事務所に忖度(そんたく)して退所したタレントを起用しないなどの行為がいまだになくならないことについて調査してほしい。

  • 過去に公正取引委員会が元SMAPメンバーの扱いについて注意をしたが、大手芸能事務所の退所者への不当な扱いは一向に改善されない。事実を歪めてまで放送することが政治的な内容にまで及ぶことが懸念され、視聴者としては放送が信頼しにくくなる。

  • 「都市伝説」と銘打ってはいるが、世界情勢に乗じてデマを広めているだけだと感じた。稚内市内の看板などのロシア語表示をロシアの脅威と関連付けたり、プレゼンターが「日本が大きな自然災害に見舞われた時にどさくさに紛れて(外国に)攻め込まれるのが怖い、乗っ取られる」などと発言したり。公的なメディアで流すのは適切ではないと思う。関東大震災ではデマによって朝鮮人が虐殺されている。また、「バイデン(米大統領)はAI」という発言もあったが、もはや「都市伝説」ではなく危険な「陰謀論」。それを助長する内容はいかがなものか。

  • 私は電気設備の技術者。紀行番組のエンディングでスタジオの芸人を「メキシコの電気ビリビリマシーン」に感電させているが、子どもがこの企画を見て興味本位でコンセントに金属棒を突っ込んだらどうなるだろう。取り返しのつかないことになる前に即中止すべき。

  • 愛媛県の銘菓の特集で、飲食店を経営する友人が取材を受けた。放送日に従業員と常連客が集まり、店がいつ登場するかとテレビ画面を凝視していたが、最後まで触れられないまま放送が終わった。気落ちしている友人がとても気の毒だ。事前に「放送しないことになりました」と一言連絡するなどできなかったのだろうか。

  • セキセイインコに首輪をつけ、肩に乗せて散歩する飼い主。他人の飼育方法についてどうこう言うつもりはないが、「鳥博士」として取り上げ、その危険な飼育方法を紹介するのは番組としてお粗末。鳥は驚くとパニックを起こし飛び立とうとする。ひもに絡まれば脚の切断、絶命にもつながる。誤った知識を広めるのは罪。専門家の監修を受けるべきだ。

  • 「旧家に眠るお宝 一挙に売ります」という企画。テレビ番組が数百~数千万円の高額美術品の売買を仲介するような行為に問題はないのだろうか。

  • バラエティー番組で芸人が包茎をネタにする。何が面白いのかわからないが、人の身体的欠陥(ネタにしている人はそう思っているのだろう)で笑いを取ろうとしている。次の日、学校でいじめに遭うんです。なかなかしんどいです。芸能事務所やテレビ局にメールしたけど返信はない。「表現の自由があるのでやめなくてもいいのかな」「死なないと取り合ってもらえないのかな」たくさんの疑問が湧く。僕がテレビを見ないことは簡単なんですけど、いじめてる人に見させないことはできない。これをネタにしないと生きていけないくらいの芸人はいなくなれ。親に申し訳ないのでこんなことで死なないとは決めてるけど、本当にしんどいよ。それでも聞きたい、僕が死んだらこのネタ、放送しないようになりますか?

  • 海外生活が長く、帰国後に日本のバラエティー、お笑い番組を見てがく然とした。人をののしる、冷やかす、ばかにする、たたく、そういったことで笑いを取っている。信じがたい光景で欧米ではあり得ない。他に笑いを取る芸がないのであれば、芸人の質がたいへん落ちているということだと思う。人のアタマをたたく笑いなど、海外では「芸」ではなく犯罪だ。

  • BPOの「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解は評価する。しかし、テレビ番組が規制されるほど、YouTubeなどに過激で危険な動画が増え、再生数が伸びる(収入になる)のも現実だ。BPOは、テレビ番組を規制した先のことも踏まえた対策をしてほしい。

  • BPOが罰ゲームや暴力について否定的な見解を示したが、大人が子どもをしっかり教育できなくなっているだけ。放送がけしからんというのは責任を放棄している大人の意見。犯罪を助長してはいけないが、そうでない暴力的な内容は、それがいやな人は見なければいいし、子どもたちにはちゃんと教育すればいい。

青少年に関する意見

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • アイドルグループの1人が他のメンバーそれぞれにドッキリを仕掛けるという企画で、最後に発案者が全てを受ける逆ドッキリを仕掛けられるという内容。一人一人のドッキリは体を張るものも多少はあったが、健康にはある程度留意していたのかと思う。しかし最後に番組側からドッキリ全てをかけられる場面はいじめにしか見えず、とても笑えなかった。子どもが他者を傷つける言動や危険行為を「面白いこと」として捉えることを助長している。

【「低俗、モラルに反する」】

  • 中高生等も見る時間帯に、AV女優を出演させて整形について語らせていた。この方を知らない人もネットで検索すれば、裸の画像や動画がすぐに出てきてしまう。やるなら夜中の時間帯に放送するべきではないか。そして最近よく特集される整形についても、安易に放送するのはあまり良くないと思う。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 特撮ヒーローもので、主役の1人が普段は大人しく優しい男性なのに、恋人が傷つけられて「彼女を傷つける奴はどんな人間でも絶対にゆるさない」と、悪人を殺してしまったのは残酷だ。悪人も、毎回普通の人間が敵の親玉に操られているだけなのに、どうして改心させたり救ったりせず、容赦なく殺してしまうのか。あまりにも残酷すぎて子ども番組とは思えない。

【「人権」に関する意見】

  • お笑い芸人が「エレベーターで先に待っていた女性に譲られ、1人で乗った。怪しまれたと思ったから腹が立ってもう一回降りて脅かしてやろうと思った」と発言した。話を誇張している可能性もあるが、このような犯罪を助長するような発言で笑いを取ろうとすることに、人権侵害を感じる。性犯罪を少しでも助長するような発言、またそれを軽視する発言を放送していいとは思えない。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 最近ウクライナ紛争で報道が過熱していて、視聴率アップを狙ってなのか死体の映像を各メディアで流している。深夜ならまだしも、子どもが見るであろう朝や日中にも頻繁に映像を出している。いつから死体の映像が解禁されたかわからないが、あまりにも凄惨な映像にショックを受けている。放送倫理として如何なものか。放送時間帯を制限するなど規制が必要だと思う。


第245回 放送と青少年に関する委員会

第245回-2022年4月

視聴者からの意見について…など

2022年4月26日、第245回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、8人の委員全員が出席しました。
3月後半から4月前半に寄せられた視聴者意見には、4月スタートの深夜トーク番組のパイロット版が3月に生放送され、グラビア美女へのセクハラや過激で下品な性的表現、容姿をアフリカ民族への侮蔑的表現を使って揶揄した発言などがあったことに対し、「女性蔑視も甚だしい、非常に不快だ」「時代に沿ったコンプライアンスを学び直してと欲しい」といった意見などが寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見について議論しました。
4月の中高生モニターリポートのテーマは「これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について」でした。モニターからは、第二の人生を歩む姿を描いたドキュメンタリーについて、「平和で生き生きとした暮らしぶりを見ていると、とても心が和みます」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、5月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年4月26日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
今後の予定について
その他
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

3月後半から4月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
4月スタートの深夜トーク番組のパイロット版が3月に生放送され、グラビア美女へのセクハラや過激で下品な性的表現、容姿をアフリカ民族への侮蔑的表現を使って揶揄した発言などがあったことに対し、「女性蔑視も甚だしい、非常に不快だ」「時代に沿ったコンプライアンスを学び直してと欲しい」といった意見が寄せられました。
委員からは、「“アイヌ蔑視発言”とも関連するが、放送倫理上の問題と思われる」との意見が出たうえで、「確かに下品の極みだが、テレビ局は後日ホームページで謝罪し、さらに社長会見でも謝罪している」「番組のレギュラー化に際して生放送は取りやめ、チェック体制の強化を表明している」などの意見が出され、局として自主・自律的な対応を取っていることから議論はこれで終了することにしました。
男性アイドルグループの一人が他メンバーにドッキリを企画するが、最後に企画者本人に対して、他メンバーに敢行したドッキリ・ネタ全てを一気に連続で仕掛けられる”ドッキリ返し”を番組スタッフからされるという内容に対し、「拷問、集団リンチだ」「いじめの様な酷い内容を周りが笑っていることが怖い」という意見が寄せられました。
委員からは、「一つ一つの内容はそれほど危険・残忍とは思えないが、最後に一人に対して総掛かりで有無を言わせず仕掛ける様は、仲間内の“いじり”を越えて、そのしつこさは”いじめ”を想起させる」「芸人ならある程度了解済みということは理解できるかもしれないが、仕掛けられるのがアイドルだと小さい子どもにはそうは見えないのでは」「簡単に出来そうな仕掛けだからこそ、安易に模倣される恐れがあるのでは」などの意見が出されました。これについては、委員会が4月に「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について「見解」を出したことも踏まえ、これ以上の「討論」には進まないこととしました。
今回の委員会の議論から、「討論」に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

2022年度の新しい中高生モニターは30人です。4月のテーマは「これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の欄も設けました。全員から報告がありました。
「これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について」では、テレビが25番組、すべて違う番組が寄せられました。ドキュメンタリー、ドラマ、バラエティーなどジャンルはさまざまで、何年も前に見た番組を取り上げたモニターも複数いました。ラジオは4番組で、2人が同じ番組を挙げていました。
「自由記述」では、ウクライナ報道について「どの言葉がうそで、どの映像が正しいのか分からず困惑している」などの声がありました。新年度になり「ご長寿番組が次々に終了して残念」といった感想もありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『バリューの真実』(NHK Eテレ)と『東大王SP』(TBSテレビ)にそれぞれ4人から感想が寄せられました。

◆委員の感想◆

  • 【これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について】
    • ドキュメンタリーでもドラマでも、生き方や社会の現実を反映した番組が印象に残っているように感じる。小学校低学年の頃に見た番組を挙げたモニターも複数いた。テレビやラジオの番組が、一部の若者にこれだけ影響を与えているということを制作者に伝え、心に残るいい番組を作ってほしいと思う。

    • テレビやラジオに関心がある若者は、脚本家やディレクター、放送作家といった裏方の制作者への関心も強いと感じる。かつてバラエティーにあったような裏方も表に出て笑いを取るというやり方とは違う形で、制作者の存在を魅力的に伝えることも、これからの放送の価値を高めていくうえで重要なのではないか。

    • シニアが第二の人生を歩む姿を描く番組を挙げたモニターは、年代を問わず視聴者の心を和ませ、ポジティブな生き方を参考にできる、という感想を寄せてくれた。自分も常々、家族そろって見られる番組とはどんな特徴なのかと考えているので参考になる意見だった。

    • 東京にある店の特集は自分たち県民にはほぼ無関係なので全国の人に役立つ情報がほしい、というモニターの声があった。情報はどうしても東京に偏ってしまうところがあり、地方の人たちはどんな思いでこういう番組を見ているのだろうかと気になっていたところがあり、その辺のバランスも必要なのかと思う。

  • 【自由記述について】
    • ウクライナ報道について、戦闘や遺体の映像を流すときは、多くの人が安心して見られるよう(注意書きを表示するなどの)配慮が欲しい、という声があった。戦争の悲惨さを伝えるときは「安心できないもの」ということが伝わらないと意味がない気がするが、今は戦争を扱ったドキュメンタリー番組でも残虐なシーンが問題になったりする。それで報道と言えるのだろうかというところもあり、非常に難しい問題だと感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について】
    • 『シリーズ江戸川乱歩短編集』(NHK)このシリーズの面白いところは、回によって演出家が変わるところです。「江戸川乱歩という一人の作家の短編を4人の演出家が30分の映像にする」。この試み自体がとてもユニークだし、どの回も演出家の個性が出ているので「明智小五郎」という人物の新しい顔を見ることができて楽しいです。ワクワクします。(高校2年・女子・埼玉)  

    • 『ねほりんぱほりん「児童相談所職員」』(NHK Eテレ)普段は報道されることのない立場の方、しかも児童虐待をいちばん近くで見てきた方が児童虐待について語るこのような番組は、「児童虐待防止」を訴えるうえで、とても重要だと思いました。この番組の面白い点は、人形劇で展開していくところだと思います。「児童相談所職員」の回は、特に重い話が多い回だったのですが、随所にくすっと笑えるようなシーンが挟まっていて、自分の気持ちをリセットしながら見ることができました。(高校1年・女子・東京)

    • 『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ)小学2年生の時にたまたま見たドラマで、掟上今日子の総白髪で眠ってしまうと記憶がリセットされてしまうというキャッチ―な設定に心ひかれたことをよく覚えています。どんな難事件も一日で解決するため、とてもスピーディーで、凝ったトリックが見ていてとても楽しかったです。いかに一日が大切なのか、記憶に残るような一日を過ごせていることはとても幸せなことなのだと幼いながらに思いました。(中学3年・女子・群馬)

    • 『カルテット』(TBSテレビ)夜10時という当時は遅い時間に、大人の世界を垣間見たような感覚だった。コメディタッチで楽しみやすい部分もありながら、登場人物が抱える秘密や関係性など、それまでは見たことのないようなストーリーで、俳優がエンディングを歌っているなどすごく新鮮だった。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ)私はこのドラマの影響を受けてプログラマーみたいな、人のために役立つものを作れる人になりたいと思い、現在高校3年生ですが、志望大学の工学部に入学できるよう毎日勉強しています。小学生の時に見始めてから今まで、考え方などずっと影響されています。1話~最終話まで30回以上見ていますし、今でも勉強するときはサウンドトラックを聴きながらやっています。(高校3年・女子・茨城) 

    • 『人生の楽園』(テレビ朝日) 平和で生き生きとした暮らしぶりを見ていると、とても心が和みます。毎週違った家庭の様子を取り上げることで、たくさんの人々から、自分の参考になるような生き方、考え方が得られます。年代を問わず視聴者の心を和ませ、ポジティブな生き方を参考にできる、とても良い番組だと思います。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『二つの祖国』(テレビ東京)2019年3月に特別企画のドラマとして放送されていました。そのなかで、ジャパニーズ・インターンメントと呼ばれる第二次世界大戦下での日系人の強制収容を描いたシーンがありました。私はアメリカに留学していた経験があるのですが、アメリカでは、ひとつの人権侵害が行われた事件としてこれを歴史で学びます。番組を視聴して、改めて戦争の残酷さを感じたとともに、戦争を日系アメリカ人という新しい立場から考え直すことができ、自分の視野が広がったと感じます。現在行われている戦争でも、置かれている立場が似ている人がいるのではと思い、痛ましくも感じます。(高校3年・男子・東京)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)いじめや貧困、障がいなど、社会的に前向きに掘り下げないような内容に優しく寄りそって一緒に考えているところが長所だと感じました。もう少し聴きやすいように放送時間を早めてほしいです。自分のようにスマホを持っていないリスナーも多いと思うので、固定電話でも参加できるイベントをつくってほしいです。(中学1年・男子・山形)

    • 『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)
      いつもと違う6人全員集合の回でしたが、誰かが話しているときは耳を傾ける、一気に沢山の人が話さず、1人が話し、面白い場面ではみんなで笑い合えるのが、バランスがよくとても聴きやすかったです。聴くだけでなく、メールで参加しやすい参加型のラジオで、読むスピードもちょうど良く、ラジオに若い世代を取り入れるには最適だったと思います。(中学2年・女子・山形)

  • 【自由記述】
    • 私が小学生だった頃よりも番組の入れ替わりが激しくなり、中には1年で終わる番組もあらわれるようになってとても悲しかったです。SNSなどで流行が秒単位で変わる時代だからこそ、テレビ番組は流行を最速でキャッチするより、少し古くてもそこが味になるような世代を超えて愛される存在でいてほしいと私は思います。(高校2年・女子・岩手) 

    • テレビからスマホ時代になっている今、似たような企画を行う番組が増えたように感じます。コロナ禍であるため制限されることもあり、番組制作が今まで以上に大変だと感じておりますが、そんな世の中だからこそ、明るく笑顔になるような番組を待っています。(高校2年・女子・千葉)

  • 【青少年へのおすすめ番組】
    • 『バリューの真実』(NHK Eテレ)MCを務めるSixTONESが高校生の目線に立って質問に答え、説明をしているので、まるで学校の先輩に教わっているかのような親近感が湧きました。「価値観のズレ」に焦点を当てているので、保護者とのコミュニケーションが少なくなっている方や、あまり保護者と話さないという方は、保護者と一緒に視聴するのも良いのではないかと思いました。この番組を一緒に見ることで「私も実はこんな悩みがある」「こんなコンプレックスがある」と話しやすくなるのではないでしょうか。(高校1年・女子・東京)

    • 『東大王SP』(TBSテレビ)この番組は知識も必要ですが、ひらめき問題も豊富なので小さい子どもも大人も一緒に楽しめるところが良いと思います。あまり悪いところはないのですが、しいて言えば出題から答案までの時間が長すぎることだと思います。(中学2年・女子・東京)

以上