第100回 放送と人権等権利に関する委員会

第100回 – 2005年5月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案のヒアリング・審理

人権に関する苦情対応状況(4月)…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案のヒアリング・審理

愛知県の産婦人科医院長が2005年1月にNHK名古屋放送局で放送された「ニュース番組」において、「2003年10月に助産師資格のない看護師、准看護師に内診等の助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを実名で報道され、現在も違法行為を行っているかのように伝えられたことにより、名誉と信用を毀損され、人権を侵害された」と申し立てている事案で、5月の委員会では、申立人、被申立人双方を招いてヒアリングを行った。

ヒアリングで申立人側は、「行政指導を受けた2003年10月以降、当医院では厚生労働省の指導の通りに診療を行っている。今回の実名によるニュース報道の必要性は全くない。またニュースで行政指導が何時行われたのか、時期を明示していないことは誤報である。翌日(1月26日)の修正報道についても満足していない。本件報道によって当医院は多大な報道被害を受けており、NHKにはきちっとお詫びして頂きたい。また今回の全てのニュースを取り消してもらいたい」と主張した。

一方、NHK側は「今回のニュースは十分な裏付け取材に基づいて、行政指導が行われたと言う事実を伝えたものであって内容に誤りはない。また、報道した内容には公益性、公共性があり、権利侵害には当たらないと考える。行政指導の時期を明示しなかった点については、今回の報道目的からして、必ずしも指導の時期まで明示する必要はないと判断した。また、報道では、改善の指導が行われた事実を過去のことだとわかるように伝えている。ただ、今から考えれば、最初から時期を明示したほうがより正確に内容を伝えることができたと思う」と述べた。

双方に対し、各委員からは事実関係などについて質問があった。2時間近くに及ぶヒアリングのあと、審理に移り意見を交わしたが、6月の委員会で更に審理を継続することになった。

人権に関する苦情対応状況(4月)

2005年4月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔14件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

その他

審理要請案件「宝石販売報道」について

この案件については、前回の委員会で、審理対象としないことを決めた(BPO報告23参照)ことに伴い、飽戸委員長名で審理対象外とした理由を添えて、申立人に送った回答書を事務局から委員会に提出した。

「放送人権委員会判断基準」改訂作業を報告

放送人権委員会事務局から、下記の「放送人権委員会判断基準集2005年版」(仮題)編集方針を報告し、委員会の了承を得た。

放送人権委員会では、03年5月に「放送人権委員会の判断~6年間の記録」を発行した。これは、1997年の発足から03年まで6年間に扱った11事案20件に及ぶ「委員会決定」で打ち出された判断基準を系統的にまとめたもの。今回の「放送人権委員会判断基準集2005年版」は、その改訂版で、05年8月までの16事案25件の委員会決定で出された判断基準を網羅したものとなる。委員会の指導・了承のもとに編集作業を進め、9月末の発行を目指している。

最後に、次回放送人権委員会は6月21日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上