第279回放送と人権等権利に関する委員会

第279回 – 2020年3月

「訴訟報道に関する元市議からの申立て」を審理
委員会決定を4月に通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2020年3月17日(火)午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、松田委員、水野委員

1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫元死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱っており、父親の死が利用されて名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、生放送の制約の中で複数の執行情報等を分かりやすく伝えたもので、人権侵害には当たらないなどと反論している。
今委員会では、担当委員から決定文の草案が提出されて意見交換を行った。これらの意見を踏まえて修正案を作成し、次回委員会で引き続き検討することとした。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉が19年4月11日の『NEWS545』で放送した損害賠償訴訟のニュースを巡り元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張した。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。テレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実として、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、前回審理を受けて修正された決定文案を委員長が説明し、続けて文全体の詳細な確認が行われた。同時に委員の意見交換も行われ、若干の修正を加えたうえで、決定内容は委員会で承認され、4月に通知・公表することになった。

3.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の審理

札幌テレビは、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、男性が家で申請書類を記入し、北海道庁での申請手続きをする様子などを放送した。この放送に対して取材の対象となった男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求めて申立書を提出した。
これに対して札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものであり、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会では、ヒアリング開催に向けて手続きを進める方針が確認され、起草担当委員が論点と質問項目の検討に入ることになった。ただ、実施時期については、新型コロナウイルスの感染拡大という状況を見極めながら決めることとなった。

4.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案の審理

必要な書面を待っている状態のため実質的な審理は行われなかった。
フジテレビは2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を放送した。放送は、近所の進学塾の生徒たちが大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えていることに、周辺住民から苦情が出て、行政が規制を始めたことを紹介したもので、番組では、周辺住民のインタビューが流された。
この放送でインタビューに答えた女性から、突然マイクを向けられ質問された、一度も目撃したことがなく理解に苦しむ内容なのに、誘導尋問され、勝手に放送に使われたとして、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。

5. その他

  • 運営規則改正について報告
    改正が理事会で承認されたことを受け、改正内容の送付による会員社への通知、ウェブサイト掲載による告知を経て、4月1日から施行することが報告された。

  • 新型コロナウイルスに関連した報告
    新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、事務局の対応や委員会運営上の留意点等、事務局より説明があった。

以上

第278回放送と人権等権利に関する委員会

第278回 – 2020年2月

「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など

議事の詳細

日時
2020年2月18日(火)午後3時~8時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案 ヒアリングと審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の執行情報などを分かりやすく伝えたものであり、申立人の人権を侵害していないなどと反論している。
今委員会では、申立人と被申立人にそれぞれヒアリングを行った。
申立人は、フリップやシールを使って執行情報を伝えたことや出演者の発言などについて、見せ物として面白く見せようとする意図が感じられ、人命を扱う報道という意識に欠けている、などと訴えた。
フジテレビは、死刑執行をショー化する意図はなく、執行情報を伝えた方法や表現には必要性、相当性があり、放送倫理上の配慮も十分行った、などと説明した。
ヒアリングに続いて審理を行い、担当委員が決定文の起草に入ることとなった。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉が昨年4月11日の『NEWS545』で放送した損害賠償訴訟のニュースを巡り元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張している。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。またテレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実として、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、決定文の修正案について審理を行った。起草担当委員が前回の審理の内容を踏まえどのように修正を加えたかを説明し、続いて論点の各ポイントについて意見を出し合った。この議論を元に、さらに決定文の修正を行い、次回委員会で改めて審理することになった。

3.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の審理

札幌テレビ(STV)は、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、男性が家で申請書類を記入するところや、北海道庁での申請手続きなどの様子を放送した。この放送に対して、取材の対象となった男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求め申立書を提出した。
一方の札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものだとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会までに双方からの書面が整い、委員会では通常どおりヒアリング開催に向けて手続きを進める方針が示された。しかし、手続きを進めるうえで確認すべき事項が指摘され、事務局において確認の上、次回委員会で改めて検討することになった。

4.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案の審理

今委員会では、まだ双方から必要な書面が整っていない状況が報告され、実質的な審理は行われなかった。
今事案は、フジテレビが2019年8月30日の『とくダネ!』で放送した都内の公園で大縄跳びが禁止された話題に対するもの。放送は、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに、周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介した。番組では、周辺住民が「本を読んだり、集中する日には、うるさいと思う」などと答えるインタビューが紹介された。
この放送に対して、このインタビューに答えた女性が、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問され、勝手に放送に使われ、「懇意にしている進学塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。

5.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」通知公表の報告

この事案に関する委員会決定第71号は2月14日に申立人と被申立人であるテレビ東京に対して通知され、通知後に記者会見を行い公表された。その報告とともに、委員会決定についてテレビ東京が報道した放送内容が紹介された。

6. その他

委員会運営規則に関する議論
運営規則の改正に関して委員会は、「苦情の取り扱い基準」を中心に検討を進めてきた。議論の焦点は、委員会として取り扱う事案について、これまでどおり委員会の審理を経てその都度決定することを前提としながら、委員会が審理対象としない決定をすることができるような明文規定を設けることにあった。第274回委員会から5回にわたる議論の結果、今委員会で委員会としての改正案がまとまり、これを決議した。今後改正案は、3月初めの理事会に諮られ、承認を得たうえで年次報告会で会員社に報告、ウェブサイト掲載などで一般に告知し、新年度から施行する予定。

以上

第277回放送と人権等権利に関する委員会

第277回 – 2020年1月

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」委員会決定を通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2020年1月21日(火)午後4時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案の審理

テレビ東京は、2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部は加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」としたうえで、音声の一部が加工されないまま放送された点について「編集作業上のミスで反省している。放送後速やかに社内ルールを見直し、再発防止に努めている」としている。
今委員会では、再修正された決定文案が担当委員から示され審理し、修正を加えたうえで、委員会として決定内容を承認した。2月14日に通知公表の予定。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉の『NEWS545』が昨年4月11日に放送した損害賠償訴訟のニュースを巡って元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」であり、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張した。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。テレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実だとして、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、起草担当委員より決定文の草案が提出され、担当委員が全体構成と論点別の主旨を説明した。審理の中では、とくに議員辞職と第三者委員会のセクハラ認定の時系列関係が逆転しているようなナレーションについて、委員の間で活発に意見が交わされた。この日の議論を元に、次回委員会までに、さらに決定文案の修正を行い、改めて審理することになった。

3.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の死刑囚の執行情報を分かりやすく伝えたもので、申立人の人権を侵害していないなどと反論している。
今委員会では、番組のどの部分が申立人の主張する権利侵害などの問題になりうるか、検討すべき論点を整理した。そのうえで、申立人と放送局の双方に対してヒアリングを行う方針を確認し、質問項目を決定した。次回2月委員会でヒアリングを実施する予定。

4.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の報告

今委員会では、まだ双方から必要な書面が整っていない状況が報告され、実質的な審理は行われなかった。
この事案は、札幌テレビ(STV)が、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道したもの。番組では、男性が家で申請書類を記入するところや、北海道庁での申請手続きなどの様子を放送した。これに対して、この男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求め申立書を提出したもの。
一方、札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものだとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。

5. 審理要請案件

・「大縄跳び禁止報道に対する申立て」
フジテレビは、2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を取り上げた。放送は、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに、周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介したもの。番組では、周辺住民が「本を読んだり、集中する日には、うるさいと思う」などと答えるインタビューが紹介された。この放送に対して、このインタビューに答えた女性が、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問され、勝手に放送に使われ、「懇意にしている進学塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて、BPO放送人権委員会に申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。

6. その他

  • 「覚せい剤押収報道に対する申立て」の通知報告
    前回委員会で審理入りしないと決めた同事案の処理に関する報告。同事案は、人権侵害の有無及びそれに係る放送倫理上の問題を検討する必要があると委員会が判断したものの、審理に不可欠な、取材の経緯を知る申立人の家族への事情聴取について了承を得られず、審理対象にしないと決定したもの。今回、申立人、被申立人である当該放送局に審理入りしないことを通知するとともに、委員長として、この決定にいたった委員会の判断と議論について説明する書簡を、双方に送ったことが報告された。

  • 委員会運営規則に関する議論
    BPOの認知度が上がるとともに、委員会に対する申立ての提出件数が急増し、内容が複雑化、委員会本来の目的とずれたものも散見されている。こうした状況を受け、委員会は、主に運営規則にある「苦情の取り扱い基準」のありかたについて議論した。委員会としては、これまでどおり委員会の審理を経て、その都度決定することを前提としながら、審理対象としない決定をすることができるような規定を明文化する方向で検討することとなった。

以上

第276回放送と人権等権利に関する委員会

第276回 – 2019年12月

「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案のヒアリングと審理…など

議事の詳細

日時
2019年12月17日(火)午後3時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案のヒアリングと審理

本件は、テレビ埼玉が2019年4月11日に放送した『News545』の中で伝えた損害賠償訴訟のニュースを巡り、元市議から申立てがあったもの。その中で元市議は、「自分が起こした裁判であるのに、自分がセクハラで訴えられたかのようなニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられ、また「次の市議会議員選挙に立候補予定」であると伝えたことは選挙妨害であると主張している。これに対しテレビ埼玉は、ニュースの中では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。またテレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実であるとして、当該放送日の夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。
今委員会では、申立人と被申立人双方に個別にヒアリングを行った。申立人は、当該ニュース番組の放送中に3回テレビ埼玉に電話し、「議員辞職は第三者委員会の認定の前である」と間違いを正すように求めたにもかわわらず訂正されなかった。「違う時間で訂正しても同じ人が見ているとは限らない」と訴えた。一方、被申立人であるテレビ埼玉は、ニュース全体を見れば誤解を与えるようなものでないことは明らかであると説明した。
ヒアリングに続いて本件の審理を行い、担当委員が論点を踏まえて決定文の起草に入ることを決めた。

2.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案の審理

テレビ東京は2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部は加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」とした上で、音声の一部が加工されないまま放送された点について「編集作業上のミスで反省している。放送後速やかに社内ルールを見直し、再発防止に努めている」としている。
今委員会では、前回委員会の議論を反映した委員会決定文の修正案が担当委員から提出され、意見交換を行った。今回の議論を基にさらに決定文の修正を行い、次回委員会で引き続き審理することになった。

3.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビが去年7月、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行を報じた特別番組について、松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の死刑囚の執行情報を分かりやすく伝えたもので、放送内容には必要性、相当性があるなどと反論している。
今委員会までに双方から必要な書面が提出され、それぞれの主張をもとに検討すべきポイントについて意見交換を行った。担当委員が次回委員会までに論点等を整理することになった。

4. 審理要請案件

・「覚せい剤押収報道に対する申立て」審理入りせず
X放送局は、今年6月、ローカルニュースの中で、覚せい剤押収事件について押収現場での記者リポートや付近住民のインタビューなどをニュースとして放送した。インタビューは、人物が分からないようにカーテン越しに撮影された映像で音声だけが伝えられた。この放送に対して、その家族から、放送は現場と自宅の場所を「特定するに十分な情報であり、家族の肉声は、現場を監視し警察に通報した者のように聞こえた」と訴えるとともに、「インタビューは、麻薬の運び出しと関係のない会話を一部切り取って放送した」と指摘した。そのうえで、「麻薬関連の報道は、暴力団も絡み、住民の安全に配慮するべきところを、私たち家族を危険にさらし、地域社会に誠実に暮らす家族の名誉を傷つけた」として、放送した経緯の説明と謝罪を求めて8月4日付で委員会に対して申立書を提出した。
この申立てについて委員会は、まず、人権侵害の有無及びそれに係る放送倫理上の問題を検討する必要がある事案と判断した。しかし、審理にはインタビューの経緯や内容を家族に直接聞くことが不可欠であるところ、申立人は家族の病気を理由にそれが困難であるとして、その了承を得ることができなかった。このため委員会は、十分な判断材料が得られないことがあらかじめ明らかな以上、本申立てを審理対象にすることはできないと判断した。ただし、この決定に至った委員会の判断と議論について、申立人だけでなく被申立人に対して詳しく説明することにした。

・「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」審理入りを決定
札幌テレビ(STV)は、今年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、北海道における初めての申請であるとして、男性が家で申請書類を記入する様子やインタビューのほか、北海道庁での申請手続きなどについて放送した。
これに対して、この男性は、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、申立書を提出した。記者の働きかけにより「不本意な申請をすることになり、これを広く報道され、申立人の名誉を毀損された」などとして、放送内容の訂正と謝罪を求めた。
一方、札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

5. その他

  • 運営規則に関する議論
    社会におけるBPOの認知度が上がっている。ことし6月にBPOが行った調査でも70%となった。そうした中で、委員会に対する申立ての提出件数も増えている。しかし、その内容が複雑になり委員会本来の目的とずれたものも散見されるようになっている。こうした状況を受け、委員会では、運営規則にある「苦情の取り扱い基準」の整備の必要性が指摘され、委員の間で意見が交わされた。

以上

第275回放送と人権等権利に関する委員会

第275回 – 2019年11月

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2019年11月19日(火)午後4時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案の審理

テレビ東京は2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部は加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」とした上で、音声の一部が加工されないまま放送された点について「編集作業上のミスで反省している。放送後速やかに社内ルールを見直し、再発防止に努めている」としている。
今委員会では、起草担当の委員から提出された委員会決定の草案について審理を行った。はじめに、起草担当委員が決定案の構成等について説明し、申立人が訴えるプライバシー権、肖像権の侵害に関する評価、取材・編集方法に放送倫理上の問題があったか等、意見が交わされた。今回の議論を基に決定文の修正を行い、次回委員会で引き続き審理することになった。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

テレビ埼玉は、2019年4月11日の『News545』の中で損害賠償訴訟のニュースを放送した。この放送に対して元市議から申立てがあった。元市議は、放送の中で「自分が起こした裁判であるのに、自分がセクハラで訴えられたかのようなニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられたと申し立てた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張している。
これに対しテレビ埼玉は、ニュースの中では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題もないと反論している。またテレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことを認め、当該放送日の夜のニュースで言葉を修正した放送を行ったほか、市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。
今委員会では論点整理が行われ、また、申立人、被申立人に対するヒアリングにおいて、それぞれに尋ねる質問項目を決めた。ヒアリングは、次回12月の委員会で行う予定。

3.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビが去年7月、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行を報じた特別番組について、松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱い、父親の死が利用されたことで遺族としての名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、速報情報を扱う生放送の時間的、技術的制約の中で、複数の死刑囚の執行情報を分かりやすく伝えたもので、その方法には必要性、相当性があり、申立人の権利を侵害していないなどと反論している。委員会は、前回、審理入りを決めた。
今委員会では、書面が出そろっていないことから、論点として検討すべきポイントや今後の議論の進め方について意見交換を行った。

4. その他

  • 申立てについて事務局より報告し、意見が交わされた。
  • 委員会運営について意見交換を行った。
  • 次回委員会は12月17日に開かれる。

以上

第274回放送と人権等権利に関する委員会

第274回 – 2019年10月

「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2019年10月15日(火) 午後3時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案のヒアリングと審理

テレビ東京は2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部は加工のないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、放送人権委員会に申立てを行った。これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」としている。
今委員会では、申立人とテレビ東京に対するヒアリングが行われた。申立人は、放送によって自身がアレフ会員であることが知られると、対外的な活動に支障を来すなど不利益を被る可能性があると訴えた。被申立人のテレビ東京は、「プライバシー保護には十分配慮した」と述べた一方、音声の一部が加工されないまま放送された点について「編集作業上のミスで反省している。放送後速やかに社内ルールを見直し、再発防止に努めている」と発言。また、申立人らのメディアに対する取材妨害の実態を伝えることも教団の閉鎖性などを伝える証左になると考え放送した、と説明した。
ヒアリング終了後、本件の論点を踏まえて審理を行い、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案の審理

対象番組は今年1月21日に秋田県内で放送された『NHKニュースこまち845』。情報公開請求等によって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた中で、匿名で、ある男性教員に対してハラスメントが認められ「訓告の処分を受けた」と報じた。
この放送に対して男性教員が、氏名は公表されていないが、関係者には自分だと判断される内容であり、「大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに謝罪を求めBPO放送人権委員会に申立てを行った。これに対してNHKは、「処分をされた教員はいずれも匿名で、役職や年齢に触れていないなど、個人が特定できないよう十分配慮している」と説明した。
今委員会では起草委員より委員会決定の修正案が示され、審理の結果、委員会決定を了承した。10月30日に通知・公表を行う運びとなった。

3. 「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

テレビ埼玉は、2019年4月11日午後の『News545』で、元市議が提訴した損害賠償訴訟のニュースを放送した。元市議は、その中で「自分がセクハラで訴えられたかのようなタイトル」をつけられたことや、「第三者委員会のセクハラ認定後に議員辞職したかのような誤解を与える表現」などによって、名誉が損なわれたとして申立てた。
これに対しテレビ埼玉は、ニュースの中では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に説明しているなど、全体をみれば誤解されるようなものではなく、名誉毀損や放送倫理に反するものではないと反論している。またテレビ埼玉は「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実だとして、当該放送のあった日の午後9時半のニュースで表現を修正して放送したほか、市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。
今委員会までに全ての必要書類が提出され、双方の主張が出そろったことを受け、次回委員会までに担当委員が論点等を整理することになった。

4. 審理要請案件「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」~審理入り

フジテレビは、2018年7月6日の「FNN 報道特別番組 オウム松本死刑囚ら死刑執行」で、オウム真理教事件の松本智津夫死刑囚ら7人の死刑執行に関する情報を速報するかたちで放送した。
特別番組は、各拘置所からの中継、スタジオでの事件の解説、被害者遺族らの会見や反応など約1時間半にわたって生放送され、刑の執行情報は更新しながらフリップなどで伝えられた。
これに対して松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、番組は「人の命を奪う死刑執行をショーのように扱った」ことと、出演者のコメントが、遺族の名誉感情を傷つけるものであったなどと主張し、フジテレビに謝罪を求めてBPO放送人権委員会に申立てを行った。
フジテレビは、速報情報を扱う生放送の時間的、技術的制約の中で、複数の死刑囚の執行情報をできるだけ視聴者に分かりやすく伝えたと説明し、「ショーのように扱った」ものではなく、人権侵害にあたらないなどと反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。

5. 審理要請案件「俳優のドキュメンタリーに対する申立て」~審理入りせず

ある俳優に密着したドキュメンタリーの放送(以下、「本件放送」という)に対して、番組は俳優側との間で交した約束の趣旨と違う内容であり、番組に提供した映像が許可なく使われたなどとして、家族が2019年7月22日付けで、当該放送局に謝罪を求める申立書を委員会に提出した(以下、「本件申立て」という)。
委員会は、委員会運営規則5条1項の苦情の取り扱い基準に照らして本件申立てを審理するかどうか検討し、審理対象外と判断した。理由は以下の通り。
当機構は、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的としている(BPO規約第3条)。当該目的に鑑み、当委員会では、運営規則において、裁判で係争中の事案および申立てにおいて放送事業者に対し損害賠償を請求する事案は取り扱わないものと定めており(放送人権委員会運営規則第5条第1項第5号)、また、その趣旨を踏まえて、放送局に対する金銭要求が関係している事案については取り扱わないことを原則としている。
この点、申立人は、本件申立てに先立ち、当該放送局に対して損害賠償の支払いを請求している。
また、申立人は、本件申立てにおいて、本件放送は自身が撮影した映像を許可なく番組に使用したとして、当該映像について自身が有する権利を侵害するものであるとの主張もしている。これは、当該映像に関する著作権を主張しているものと解される。当委員会では、著作権に関わる問題については、財産的色彩が強く、上記目的を有する当委員会の審理に馴染まないことから、これも取り扱わないことにしている。
これらの理由から、当委員会は、本件申立てについて審理対象とはならないものと判断した。

6. その他

  • 申立ての状況について事務局より報告した。
  • 次回委員会は11月19日に開かれる。

以上

第273回放送と人権等権利に関する委員会

第273回 – 2019年9月

「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2019年9月17日(火)午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1.「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」

対象番組は今年1月21日に秋田県内で放送された『NHKニュースこまち845』。情報公開請求等によって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた中で、匿名で、ある男性教員に対してハラスメントが認められ「訓告の処分を受けた」と報じた。この放送に対して男性教員が、氏名は公表されていないが、関係者には自分だと判断される内容であり、「不正確な情報を、あたかも実際に起きたかのように間違って報道された」と主張し、「大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに謝罪を求めBPO放送人権委員会に申立てを行った。
 
これに対してNHKは、「情報公開請求で開示された内容を、各大学で改めて取材を行い、内容に誤りや変更がないことを確認した上で概要を説明した」と反論したうえで、「処分をされた教員は、いずれも匿名で、役職や年齢に触れていないなど、個人が特定できないよう、十分配慮している」と説明した。
 
第269回委員会において審理入りを決定し、前回委員会では申立人とNHKに対してヒアリングを行った。今月の委員会では、第1回起草委員会で起草した「委員会決定」案が示され、委員より説明の後、審理が行われた。審理では、論点に対する評価や表現等について意見が交わされた。修正を行い、次回の委員会に提案することになった。

2.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」

テレビ東京は2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。その中で、アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかける一方、音声の一部が加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」としている。
委員会は、第271回委員会で、運営規則の要件を満たしているとして審理入りを決定した。
今委員会では、論点の整理やヒアリングでの質問項目の絞り込みなどを行い、次回委員会で申立人、被申立人双方に対してヒアリングを行うことを決めた。

3. 審理要請案件「訴訟報道に関する元市議からの申立て」

テレビ埼玉は、2019年4月11日午後の『News545』で、元市議が提訴した損害賠償訴訟のニュースを放送した。元市議は、その中で「自分がセクハラで訴えられたかのようなタイトル」をつけられたことや、「第三者委員会のセクハラ認定後に議員辞職したかのような誤解を与える表現」などによって、名誉が損なわれたとして申し立てた。これに対しテレビ埼玉は、ニュースの中では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に説明しているなど、全体をみれば誤解されるようなものではなく、名誉毀損や放送倫理に反するものではないと反論している。またテレビ埼玉は「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実だとして、当該放送のあった日の午後9時半のニュースで表現を修正して放送したほか、市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。
委員会は、第272回委員会で、運用規則の要件を満たしているとして審理入りを決定した。まだ双方の必要書類が全て揃っておらず、今委員会では、今後の審理の進め方について意見交換を行った。

4. その他

  • 申立ての状況について事務局より報告があり、関連して委員の間で意見交換が行われた。

  • 次回委員会は10月15日に開かれる。

以上

第272回放送と人権等権利に関する委員会

第272回 – 2019年8月

「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など

議事の詳細

日時
2019年8月20日(火)午後3時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1.「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案

今年1月21日に秋田県内で放送された『NHKニュースこまち845』が対象。情報公開請求等によって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた中で、匿名で、ある男性教員に対してハラスメントが認められ「訓告の処分を受けた」と報じた。この放送に対して男性教員が、氏名は公表されていないが、関係者には自分だと判断される内容であり、「不正確な情報を、あたかも実際に起きたかのように間違って報道された」と主張し、「大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに謝罪を求めBPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対してNHKは、「情報公開請求で開示された内容を、各大学で改めて取材を行い、内容に誤りや変更がないことを確認した上で概要を説明した」と反論したうえで、「処分をされた教員は、いずれも匿名で、役職や年齢に触れていないなど、個人が特定できないよう、十分配慮している」と説明している。
第269回委員会において審理入りを決定し、今委員会では申立人とNHKに対してヒアリングを行った。申立人は、「在籍している大学のハラスメントを強調して伝えたことによって、特定の人間が割り出されてしまうという問題が生じた」と主張し、「学生との信頼関係が取れなくなっている」と述べた。
一方、被申立人のNHKは、秋田放送局の幹部らが出席し、「今回の報道は、県内の国公立大学のハラスメントの全体像を伝えることを主眼としたもので、個別案件を強調する意図はない」と主張するとともに、今回行った情報公開に基づく調査取材の過程を述べた。
ヒアリング終了後、本件事案の論点を踏まえて審理を行い、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案

テレビ東京は2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。その中で、アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した。申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部が加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「顔にボカシを入れ、氏名の公表もしておらず、必要かつ十分な配慮を行った」としている。
委員会は、第271回委員会で、運営規則の要件を満たしているとして審理入りを決定した。今委員会では、これまでに両者から提出されている書面をもとに論点などについて意見を交わした。

3. 審理要請案件「訴訟報道に関する元市議からの申立て」

テレビ埼玉は、2019年4月11日午後の『News545』内で、元市議が提訴した損害賠償訴訟のニュースを放送した。放送は、「元市議セクハラ訴訟 被害女性職員 請求棄却求める」とタイトルスーパーを表示し、経緯の説明の中で「(議会)第三者委員会が調査をした結果、5つの行為がセクハラやパワハラにあたると認定され、元市議は去年10月に議員を辞職しました」と伝えた。
申立人は、ハラスメントそのものを「身に覚えのないこと」と主張したうえで、「申立人が提訴した裁判であるのに、申立人がセクハラを訴えられたような印象を与え名誉を損なわれた」と訴えた。また、経緯の説明の中で、実際には第三者委員会の認定前に辞職しているのに、「第三者委員会にパワハラを認定されたことから議員を辞職した印象を与え、視聴者に誤解を与えた」などと主張した。そのうえで申立人は、「元市議セクハラ訴訟」という名称をやめることや誤解を与える放送をしたことについて訂正と謝罪等を求めて申し立てた。
これに対してテレビ埼玉は、放送では「被害を訴えた職員を相手取った裁判」と明記していることや、申立人代理人が報道各社に配布した訴状から「セクハラの有無が裁判の争点となると判断した」ことを挙げ、「名誉を損なうとか、放送倫理に反するとは考えていない」と反論している。また、テレビ埼玉は、「言葉の順番が違うことで誤解を招きかねない懸念が残る」と判断し、当該放送のあった日の午後9時半のニュースで修正した内容で放送したほか、市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。
20日に開かれたBPO放送人権委員会は、運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

4. その他

  • 申立ての状況について事務局より報告があり、関連して委員の間で意見交換が行われた。

  • 次回委員会は9月17日に開かれる。

以上

第271回放送と人権等権利に関する委員会

第271回 – 2019年7月

審理要請案件「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」…など

議事の詳細

日時
2019年7月16日(火)午後4時00分~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1. 審理案件「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」

対象となったのは、秋田県内で放送された今年1月21日夜の『NHKニュースこまち845』。情報公開請求などによって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた中で、匿名で、ある男性教員に対してハラスメントが認められ、「訓告の処分を受けた」と報じた。この放送に対して男性教員が、氏名は公表されていないが、関係者には自分だと判断される内容であり、「不正確な情報を、あたかも実際に起きたかのように間違って報道された」と主張し、「大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに謝罪を求め、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
委員会は、第269回委員会において運営規則の要件を満たしているとして審理入りを決定した。今委員会では、放送によって人物の特定が可能であったかどうか等、論点やヒアリングにおける質問項目を絞り込み、次回委員会で、申立人、被申立人双方に対してヒアリングを行うことを決めた

2. 審理要請案件「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」

テレビ東京は、2018年5月16日午後の『ゆうがたサテライト』ニュースで「オウム真理教事件の死刑囚らの刑執行の可能性が高まる中、オウム真理教はアレフと名前を変えて存続している」として、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」を特集した。その中で、アレフの札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部が加工されないまま放送された。
これについて申立人は、再三撮影をしないよう訴えたにもかかわらず、無断で全国放送し肖像権を侵害したほか、申立人が特定できるなどプライバシーを侵害したと訴え、テレビ東京に謝罪と映像の消去などを求めてBPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対してテレビ東京は、「音声が加工されずに出たのは、編集上の手違いで特定の意図はない」と説明するとともに、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象」として、「報道には公益性がある」と主張している。
委員会は、運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

3. その他

  • 申立て状況について事務局から報告。映像を視聴し意見を交換した。

  • 7月26日に予定される事例研究会の進行について報告した。

以上

第270回放送と人権等権利に関する委員会

第270回 – 2019年6月

「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」の審理…など

議事の詳細

日時
2019年6月18日(火)午後4時00分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1. 審理事案「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」

対象となったのは、秋田県内で放送された今年1月21日夜の『NHKニュースこまち845』。情報公開請求などによって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた。県内の大学で起きた3年前の事案について、匿名で「男性教員は、複数の学生に侮辱的な発言をしたことなどがアカデミックハラスメントと認定され、訓告の処分をうけた」とのナレーションに、開示された文書にある「学生への侮辱的発言、威圧的な行動」と「小中学生でも出来る」という文言を接写した映像を使って報じた。
この放送に対して男性教員が、氏名は発表されていないが、関係者には直ぐに自分だと判断される内容だ、とした上で、「私が複数の学生に対して『小中学生でも出来る』などといった侮辱が理由で処分されたと報道された。不正確な情報をあたかも実際に起きたかのように、間違った報道をされた」と主張し、「誤った情報が周知され、大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに対して謝罪を求めてBPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対してNHKは、「情報公開請求で開示された内容を、各大学で改めて取材を行い、内容に誤りや変更がないことを確認した上で概要を説明した」と反論したうえで、「処分をされた教員は、いずれも匿名で、役職や年齢に触れていないなど、個人が特定できないよう、十分配慮している」と説明している。
前回委員会で、本件申立ては、運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
今回の委員会では、両者から提出された書面を元に委員が論点などについて意見を述べた。今後、起草委員が論点やヒアリング項目を整理し、次回委員会に提出することになった。

2. 委員会決定第69号「芸能ニュースに対する申立て」に関するTBSテレビからの「対応と取り組み」報告書の承認

委員会決定第69号に対して、TBSテレビから「対応と取り組み」をまとめた報告書が6月11日付で提出され、委員会はこれを了承した。 

3. その他

  • 申立て状況について事務局から報告が行われた。

  • 今後の意見交換会の準備について進捗状況が報告された。

以上

第269回放送と人権等権利に関する委員会

第269回 – 2019年5月

「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2019年5月21日(火)午後4時~5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、
二関委員、廣田委員、水野委員

1. 審理要請案件「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」

委員会は、本件申立ての審理入りを決定した。
NHK秋田放送局は、今年1月21日午後8時45分からの『NHKニュースこまち845』の中で、情報公開請求などによって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた。
ニュースでは、ある大学で起きた3年前の事案について、匿名で「男性教員は、複数の学生に侮辱的な発言をしたことなどがアカデミックハラスメントと認定され、訓告の処分をうけた」とのナレーションに、開示された文書にある「学生への侮辱的発言、威圧的な行動」と「小中学生でも出来る」という文言を接写した映像を使って報じた。
この放送に対して男性教員が、氏名は発表されていないが、関係者には直ぐに自分だと判断される内容だ、とした上で、「私が複数の学生に対して『小中学生でも出来る』などといった侮辱が理由で処分されたと報道された。不正確な情報をあたかも実際に起きたかのように、間違った報道をされた」と主張し、「誤った情報が周知され、大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに対して謝罪を求めてBPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対してNHKは、「情報公開請求で開示された内容を、各大学で改めて取材を行い、内容に誤りや変更がないことを確認した上で概要を説明した」と反論したうえで、「処分をされた教員は、いずれも匿名で、役職や年齢に触れていないなど、個人が特定できないよう、十分配慮している」と説明している。
21日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

2. その他

  • 委員会決定に対する当該局研修 第69号「芸能ニュースに対する申立て」に関する当該局研修を5月29日にTBSテレビで実施する。

以上

第268回放送と人権等権利に関する委員会

第268回 – 2019年4月

事務局報告…など

議事の詳細

日時
2019年4月16日(火)午後4時~5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、
城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1. 事務局報告

当面の委員会予定を中心に事務局より報告

2. その他

  • 今年度開催の意見交換会について

以上