2022年3月9日

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、3月9日午後3時20分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会から小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、大村委員の4人が出席し、テレビ朝日からは常務取締役(報道局担当)ら4人が出席した。
まず、小町谷委員長から委員会決定について、視聴者質問の作り上げが行われた本件放送は、事実に基づいて報道されてない点と、意見の出所が明らかにされてない点とで、民放連の放送基準に抵触していると判断したことを伝えた。そして意見書に沿って、①“完璧な番組”への自縄自縛、②働かなかった「複数の目」、③権限の集中がもたらした歪み、④局が果たせなかった責任、⑤機能しなかった通報窓口、の5つの問題点について説明した。
続いて高田委員長代行は、大きなポイントとして「権限が番組のトップに過度に集中していた」ことを挙げ、「いかに有能な人物でも、権限の過度な集中は時に独善を生み、自分にとって都合の良い事実を求めていくことがある。今後は権限の集中を是正してもらいたい」とコメントした。また岸本委員長代行は、「制作を業務委託した生放送の番組で管理・把握が難しいと思うが、もっと局の関われる点があったのではないか」「現場の人間の様々なパーソナリティを包含する組織を作り、視聴者の期待に応える番組作りをしてほしい」と述べた。最後に大村委員から、「通報制度は、体制を整備することと運用を実効的に行うことが必要で、研修などを通じてものが言いやすい雰囲気づくりが必要と考える」とコメントした。
これに対してテレビ朝日は、「今回の問題は番組の信頼を毀損する許されないことと受け止めており、視聴者、関係者の方々に深くお詫びする」「今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作にしっかりと生かしたい」と述べた。

引き続き、午後4時から千代田放送会館7階の会館会議室からオンライン形式による記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には54社100人が参加した。
はじめに小町谷委員長が意見書の概略を説明し、「質問者の属性の書き換えと質問の作り上げを前提にすると、事実に基づいて放送していない点と意見を取り扱う時の出所が明らかにされていない点で、民放連の放送基準に抵触していると考え、委員会は放送倫理違反があると判断した」と述べた。また、判断の過程で委員会が問題とした5点について解説し、番組に投稿を続けた視聴者との間の信頼を裏切ったという点で重い事案だと述べた。
続いて高田委員長代行は、「報道においてダブルチェックのプロセスが入り込む仕組みになっていなかったことが大きなポイントである」「ものが言えない雰囲気の中では、有能さが独善を生む」と指摘した。岸本委員長代行は、「視聴者の質問はそのままで扱わないと放送倫理違反になる、という判断ではない」「すべての放送人に意見書を良く読んでもらい、どこに誤りがあったのかなどを自分事として理解してほしい」と述べた。大村委員は、「コロナ禍においてもコミュニケーションを円滑にはかり、相談しやすい環境や制作体制を整える工夫が求められる」とコメントした。
記者からは、「審議入りの際の議事概要には、世論誘導にもつながりかねない深刻な事案とあったが、結果はどうだったのか」という質問があり、これに対して小町谷委員長は、「ヒアリングを通してそのような事実は認められなかった」と答えた。その他の質問は、事実関係の確認に関するものがほとんどだった。

以上

2021年7月21日

日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、7月21日午後5時40分から、オンライン会議システムを使用して行われた。委員会から小町谷育子委員長、高田昌幸委員、井桁大介委員、米倉律委員の4人が出席し、日本テレビからは取締役専務執行役員ら3人が出席した。
まず、小町谷委員長から委員会決定について、本件放送にはアイヌ民族に対する明らかな差別表現が含まれており放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その背景として「収録動画の最終チェック体制が極めて甘かったことや、紹介作品をスタッフの中で1人しか見ていないなど自らの制作番組に対するこだわりが薄かったこと、番組で取り上げたアイヌ民族やその差別問題に関する基本的知識が決定的に不足していたことが挙げられる」と説明した。そして「ヒアリングを受けた制作スタッフは口々に差別をする意図はなかったと語っているが、意図がなくても差別発言が容認されるわけではない」と指摘した。また、スタッフの1人が、当該コーナーで紹介した作品は差別される側の問題を伝える内容なので、番組で片方の意見だけを伝えることになるのではないかと考えたことについて「バランスをとって伝えるということが誤って放送現場に定着している可能性がある。研修等を通じて改める必要がある」と述べた。
続いて高田昌幸委員が「日本テレビでは、かつて、バラエティー番組内でお笑いタレントが「イヨマンテの夜」の曲を流しながら踊ってみせた際、アイヌ民族の尊厳を著しく貶め差別を助長したという問題が起きた。その教訓が全く生かされておらず継承もされていない。我々が常識だと思っていたことが、若い世代にとってはそうではなく、そこにこの問題の一筋縄ではいかない難しさがある」と述べた。そのうえで「幹部や上席の人は、現場を信頼して任せることと、任せっきりにすることは違うと自覚し、細やかな目配りや手当てをしてほしい」と指摘した。
これに対して日本テレビ側は「委員会決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かし再発防止に努めたい。社員、スタッフの人権意識や感度の低さに光をあて、不断の努力を重ねて、正しい情報を視聴者に伝えていきたい」と述べた。

続いて、午後6時15分からオンラインによる記者会見を開き決定内容を公表した。小町谷育子委員長、高田昌幸委員、井桁大介委員、米倉律委員の4人が出席し、132アカウントからの参加があった。
はじめに、小町谷委員長が委員会の判断について「チェック体制が隙だらけだった。また、制作番組に対するこだわりが薄く、担当のディレクター以外誰も紹介作品を視聴していなかった。差別に関する知識に乏しく放送人としての感度にも問題があった」と説明し、差別の意図がなくても差別表現をした放送が容認されるわけではないと指摘した。
続いて高田委員が「差別をしてはいけないという当たり前のことが世代間で継承されていない。番組のチェックがきわめて簡略に行われていた背景には、当該コーナーがグループ会社の配信映画を紹介するいわば番組宣伝だとして、制作する側が軽く見てしまった側面もあるのではないか」と指摘した。
記者からは「どういうところで放送人の感度が欠けていると感じたのか」という質問があり、これに対して高田委員は「感度とは、人を動物にたとえたときに、これでいいのかなと一瞬立ち止まることができるかどうかということだ。今回、番組を制作する上で、それはできたのではないか」と説明した。
井桁委員は「現在もなお差別はさまざまな形で続いている。一般常識を持っていればそれに気づき、立ち止まって議論できたのではないか。その最初の引っかかりがなかったこと自体に感度の低さを感じている」と答えた。
米倉委員は「チェック体制が緩いという以前に、一つ一つの制作プロセスにおいて、現場のスタッフの間で本当にいいのかの一声がなかなか出ない。出たとしても十分に議論された形跡がない。その点こそが放送人の感度に関わる部分ではないか」と述べた。

以上

2021年2月10日

フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発出されていることから、2021年2月10日午後1時30分からオンライン会議システムで行われた。委員会から神田安積委員長、高田昌幸委員、巻美矢紀委員の3人が出席し、フジテレビからは5人が出席した。
まず神田委員長から、委員会決定について、「架空データが含まれた一連の世論調査報道」には重大な放送倫理違反があったと判断したことを通知した。その理由として、架空データが含まれた世論調査の結果を正しい世論調査として放送し、事実に反する情報を視聴者に伝えた点を挙げた上で、当該局は架空データ作成に関与しておらず、本件放送において意図的な作為もなかったものの、世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査のニュースを1年余りにわたって合計18本放送し、市民の信頼を大きく裏切り、また、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めない、と指摘した。
続いて高田委員は、民主主義の根幹である世論調査の信頼性に大きな影響を与えたことに言及した上で、「委託先の調査会社が全面的に信用できると考え、立ち会いで防げたかもしれないのに立ち会わなかった」といった、過去の審議事案と同様の思い込みや判断ミスが認められるとし、「ニュース番組で報じる以上、世論調査もジャーナリストの取材活動の一環であるとの認識があれば、委託先の作業であっても、より目配りがきいて今回の事態を防止できた可能性がある」と述べた。巻委員からは、「民主主義における世論調査の重要性を強く認識している以上、委託先に任せたままにせず、何らかの対応を取るべきだった。再発防止策をつくり、世論調査を開始しているが、二度とこうした事態を招かないようジャーナリストとしての目線を欠かさないでいただきたい」との意見が示された。最後に神田委員長から「結論として重大な倫理違反と評価しており、再発することがないように自主的、自律的な努力を続けていただきたい。」と要望が伝えられた。
これに対してフジテレビは、「本日の決定をきわめて重く受け止めている。ご意見を真摯に受け止め、今後の世論調査の報道に生かしていきたい」「世論調査は先月再開したが、不正防止策を徹底していくことで、視聴者の信頼回復に努めていきたい」と述べた。

続いて、午後2時30分から同じくオンライン会議システムによる記者会見を行い、委員会決定を公表した。記者会見には42のアカウントから参加があった。
はじめに神田委員長が「本件放送は、フジテレビが、架空データが含まれた世論調査の結果を正しい世論調査として放送し、事実に反する情報を視聴者に伝えたものであり、放送倫理基本綱領、民放連放送基準の前文、さらには、放送基準の第32条に反しているものと評価される。フジテレビは、架空データ作成に関与しておらず、また意図的な作為もなかったが、世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、意見書の別表に記載したテーマに関し、架空データが含まれた世論調査報道を1年余りにわたり、合計18回放送したものであり、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めない。これらの点を踏まえ本件放送には重大な放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って概要を説明した。
続いて高田委員は「専門の業者に調査そのものを任せたとは言え、世論調査に関する作業はすべて取材活動の一環であり、集めた材料が正しいかどうか、記者として仔細に検討し、裏付けを取り確認に確認を重ねるという、ジャーナリストとしての初歩の行いを貫徹することができていれば、また違った結果になったと思う」と審議を振り返った。
巻委員は「ヒアリングを通じ、当該局の皆さんが民主主義における世論調査の重要性を認識していることがわかったが、そうであれば、委託先の調査会社に任せたままにせず、ジャーナリストとして適切な対応を取るべきだったのではないか」と述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: この調査は産経新聞社と合同だが、主体はフジテレビだったという認識か。
A: BPOは放送のみを対象としている。新聞社は検証の対象にしておらず、フジテレビのみを対象として調査をした。(高田委員)
   
Q: 本件において、委員会は委託先、再委託先をヒアリングの対象としていないが、不正に実効的な役割を果たしていた再委託先、ないしは委託先にヒアリングしなかったのはなぜか?
A: フジテレビが委託先、再委託先にヒアリングを実施しており、フジテレビに対する委員会の調査で委託先、再委託先のシステムの実態について必要な情報が得られた。フジテレビに対するヒアリングの内容に特段の疑義があれば委託先、再委託先にヒアリングを求めることもあり得たが、今回の事案では、フジテレビからの聞き取りで事実認定が可能と判断した。(神田委員長)
   
Q: 他の新聞やテレビ各社に比べフジテレビのチェック体制はどうだったと評価しているか?
A: 委託先への立ち会いに入るか、入らないかなどは、他メディアと比べての判断ではない。今回はヒアリングでも、当のフジテレビ自身に、委託先を訪問していれば防ぐことができたかもしれないとの認識があり、我々もヒアリングを重ねる中、訪問していれば、防ぐことが出来た可能性があった、という判断をしている。他局と比べての判断ではない。(高田委員)
   
Q: フジテレビは取り消した放送18本の世論調査の結果と、それを修正した結果を、現在に至るまで公表していない。不正の内容を公表するべきと考えるが、委員会では明らかになっていない状態をどう考えるか?
A: 訂正をどのように行うかは、それぞれの当事者が自主的に判断することだと思う。取り消した場合はこのような内容で放送しなさいと言うことは、もとよりBPOの役割ではない。(高田委員)
放送の取り消しの方法には、各局の自主的・自律的な判断がある。取り消した放送の内容を紹介・周知することもひとつの考え方であり、それを明らかにしないということも、その是非は別として、当該局の判断だと考える。そこで、どのような内容の放送の取り消しだったのかということを事実として別表に客観的に記載するにとどめ、当該局のかかる自主的・自律的な判断については委員会が評価を控え、意見書の読み手がそれをどう評価するかに委ねることとした。(神田委員長)
   
Q: 重大な放送倫理違反があったという結論だが、重大がついた理由は?
A: 報道番組における重要な情報である世論調査であることを前提とし、フジテレビがその世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにしていたこと、その時々に世論形成に大きな影響を与える重要なテーマに関して架空データが含まれた世論調査報道を1年余りにわたり合計18本放送したということを踏まえ、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことを総合的に考慮し、委員会で議論の結果、重大な放送倫理違反があったとの判断に至った。(神田委員長)
   
Q: 1人に任せきりだったということだが、政治部長や、報道局長、あるいは解説委員室もあると思うが、一緒に作業をしていなかったということか?
A: トピック的にその時々の政治情勢、社会情勢に関する質問をつくる場合、報道局内で声をかけ質問を集め検討はしていた。ただ、委託先の世論調査会社から(調査の)答えが返ってくると、そのデータは共有するが、分析・解析、ニュース原稿の作成といったプロセスは担当者に任されていた。政治部長や報道局長は、職制上は当然関わっているが、事実上任されていた。(高田委員)

以上

2021年1月18日

フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見の通知・公表

フジテレビに対する委員会決定の通知は、新型コロナ特措法に基づき政府が緊急事態宣言を発出したことを踏まえ、1月18日午後1時30分に電子メールで行った。

これを受けてフジテレビは、「決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります。全社一丸となり、再発防止に取り組んでまいります」とコメントした。

意見の公表は、同日午後2時30分にBPOのウェブサイトに委員会決定の全文を掲載することにより実施し、記者会見の開催は見合わせた。広報を窓口に質問を受け付けたところ、当日数件の確認の連絡が寄せられた。

以上

2020年9月2日

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、9月2日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、テレビ朝日からは常務取締役(報道局担当)ら4人が出席した。
まず、神田委員長から、委員会決定について、本件特集には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その理由として、本件特集の主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当ディレクターの知人らだったうえ、ロケがあることを事前に知って取材の舞台となったスーパーに来店していたのであり、偶然に出会った利用客ではなかった。このことからすれば、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていたと説明した。
続いて升味委員長代行は、「本件特集の制作会社はテレビ朝日と密接な関係があり、その報道部門を支えてきたともいえるところから、仲間意識もあってできた番組を受け取るときの考査、検収の意識が薄くなっていたのかとも思われる。対応策に示されているように今後は十分注意してほしい」「今後の対策として、本来なら準備に手間も時間もかかる人間ドキュメントを報道番組内で毎週のように定期的に放送していくことの難しさを認めて、このような番組制作を再検討するという点は、他局を含め多くの関係者に参考になるだろう」と述べた。また高田委員は、「今回ほど引き返すチャンスがたくさんあった事案は滅多にないが、それを生かせなかったのは残念」「番組に関わった多くの人が疑問を感じていたことが判明しており、仮にそれらの疑問が全体で共有されていればブレーキがかかったのではないか」「同僚や上下関係の中では仲間を疑うことに躊躇しがちだが、疑うことは確認することと裏表なので怠ってはいけない」とコメントした。最後に神田委員長から、偶然を装って故意に登場させたという点において、過去の類似の事案と比較して重い点があるとの補足説明がなされた。
これに対してテレビ朝日は、「今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります」「視聴者の皆様の信頼を回復すべく、引き続き再発防止に努めてまいります」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社31人が出席した。
はじめに神田委員長が委員会の判断について、「本件特集は、偶然に街で出会った人から話を聞き、その暮らしや人生模様を描き出し、ごく平凡に見える人の思いがけないドラマやエピソードを視聴者に伝える報道番組内の特集である。しかし、主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当した契約ディレクターの生徒や知人だったうえ、本件特集のロケがあることを事前に知って舞台となったスーパーに来店していたのであり、いずれも偶然に出会った利用客ではなく、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない『客』を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた」と評価をして、放送倫理違反があったと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて升味委員長代行が、「視聴者にとっては面白かったり楽しかったりした前提が全部崩れてしまうということにもなるし、報道番組としての事実を伝えるという点でも非常に問題があった番組だったと思っている」と述べた。高田委員は、「制作の各段階で疑問を持ったスタッフはいたが、それが共有されなかった点がポイント。取材において疑うことは確認作業と同じであり、それをしていれば本件は起きなかったのではないか」と述べた。
記者からの質問は、事実関係の確認に関するもの以外、特になかった。

以上

2020年8月4日

TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、8月4日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会からは神田安積委員長、長嶋甲兵委員、中野剛委員の3人が出席し、TBSテレビからは4人が出席した。
委員会決定について神田委員長はまず、本件番組について放送倫理違反があったと判断したと述べた。NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた「放送倫理基本綱領」には、「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定がある。「爬虫類ハンター」は、局自身が認めるように、X氏が「希少動物を発見・捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が本企画の根幹」であった。本件放送が、その核心である希少動物に、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を用いたことは、制作過程の重要な部分を制作者側が十分に把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであり、また、X氏が「確かな知識と野性の勘」を駆使して自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るものであったというほかない。これらのことを踏まえて、放送倫理違反があったという評価をしたと説明した。
続いて長嶋委員は、ヒアリングの際にベテラン関係者が口にした「作り方改革」「話し合い不足」という言葉を意見書に引用した。これから頑張ってやっていただきたいとコメントした。また中野委員は、委員会決定第24号TBSテレビ『ピラミッド・ダービー』を担当した立場からすると既視感のある事案で、今回もプロデューサーの番組管理という観点から考えた。全体会議もない中で、身軽な、機動的な番組作りだったのかもしれない。それが面白さの源泉だった面はあるだろうが、それがアクセルだとするとブレーキ役は存在したのか、改めて考えていただきたいとコメントした。
これに対してTBSテレビは、「約束を自ら破った。信頼を失ったと認識して番組を終了した。大きく反省している」「今後も、番組制作についての改革を進め、視聴者の皆様の信頼回復に努めていきたい」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階の大ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には24社37人が出席した。
はじめに神田委員長が、「放送倫理基本綱領」には、「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定がある。「爬虫類ハンター」は、X氏が「希少動物を発見・捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が本企画の根幹」であった。本件放送が、その核心である希少動物に、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を用いたことは、制作過程の重要な部分を制作者側が十分に把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと評価した。併せて、X氏が「確かな知識と野性の勘」を駆使して自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るものであったという評価もした。その上で、「NHK・民放 番組倫理委員会」が1993年に出した「放送番組の倫理の向上について」と題する提言をも踏まえて、委員会としては、本件放送には放送倫理違反があったという結論に至ったと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて長嶋委員は、この番組のある種の試み、実験精神というものを放送全体が失わないで前に進んでほしいという思いを込めて意見書を書いた。それを読み取っていただきたいと述べた。また中野委員は、視聴者の普通の見方からすれば、真剣に探して捕まえているとみるだろう。局自身も捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が企画の根幹であると言っているので、視聴者との約束を裏切るものであったという認定になったと述べた。
その後、神田委員長が2点、補足説明した。まず、「本件放送のロケは、わずか現地滞在4泊5日という短期間で行われた」との指摘をしているが、これだけの希少動物を何種類も見つけ捕獲するシーンの撮影を4泊5日という短い日程の中で行うこと自体に限界、無理があるのではないか。これができなければ番組が成り立たないとすれば、逆にどこかで無理を強いることにならないか。そして、このような懸念を組織の中の誰かが感じなかったのか。そのような思いを、「番組の『作り方』そのものに内在していたと言えよう」という指摘に込めている。もう1つは、バラエティー番組を扱う際の演出論について、意見書に引用している『ほこ×たて』事案の意見書には、「どこまでが演出として可能なのか、許容されるのか、という個別事例における境界線の設定は、局の自主的・自律的な判断に委ねてきたのである」と書いている。この問題意識を共有し、また前提としながら意見書を作ったつもりであり、その中で、最大限、皆さんの制作の自由を確保しながら、それでも許されない演出があるとすれば、どういうことなのだろうかと考えるときに、これまで委員会が考えてきた1つの基準がそれぞれの番組における「視聴者との約束」ということになる。本件放送では、「視聴者との約束」をどこに見て取るか、この点については、「『爬虫類ハンター』は、局自身が認めるように、X氏が『希少動物を発見・捕獲する様子をカメラが追うドキュメンタリー性が本企画の根幹』であった」ということであり、本件放送が、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を、撮影直前に撮影現場に移したことは「本企画の根幹」、ないしは「視聴者との約束」を裏切るものであり、その点で放送倫理違反があったということになる。その点は、あくまで本件放送限りの評価であり、直ちにこの手法をあらゆる番組において否定することを意味するものではない。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: ADはロケに同行したのか。ADやコーディネーターが、動物が逃げないように体を弱らせるようなことをしていたのか。
A: 現場にADは同行していないし、私たちが調べた限りでは動かないようにしたということはない。(長嶋委員)
A: 現地にはディレクター、コーディネーター、更には現地の協力者がいた。(中野委員)
   
Q: Bディレクターも手法としてはCディレクターと似たようなことをしていたということか。
A: 本件放送では、動物をあらかじめ協力者から借り受け、または別の場所で捕獲して、撮影直前に現場に置いている。過去10回の放送では、現地の協力者に対して、事前に目的の動物を発見したらその場所を連絡するよう要請し、また、その際に目的の動物を捕獲してしまった場合は、捕獲したのと同じ場所に、前日か当日に放ってもらったものであり、他の場所から持ってくることはしていない点という点で異なっている。過去10回の放送については審議の対象としておらず、また、演出論には踏み込むことを控えるという姿勢を踏まえて、「自主自律的にその限界を議論することが求められよう」という問題提起にとどめたものである。(神田委員長)
   
Q: 判断の1つの基準として、「視聴者との約束」を裏切るものは放送倫理違反ということか。
A: その番組が視聴者とどういう「約束」をしているのかという認定は非常にセンシティブであり、制作、編集の自由を不当に制限しないように、映像の視聴やヒアリングなどを経て、慎重に検討する必要がある。また、仮に「約束」を裏切ったとしても、その程度や自主的自律的な事後対応次第にて、討議入りしない、又は討議にて終了するものもあれば、仮に審議入りしてもその評価が分かれることもあり得る。したがって、個々の番組を離れて、「約束」違反をもって、直ちに一律に放送倫理違反になるとまでは言えない。(神田委員長)
   

以上

2020年6月30日

琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、6月30日午後2時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会からは神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、西土彰一郎委員の3人が出席し、琉球朝日放送と北日本放送からは7人が出席した。
委員会決定について神田委員長はまず、両局の番組についていずれも放送倫理違反があったと判断したと述べた。琉球朝日放送の番組は、民放連の「留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるので、放送倫理違反があったと判断したと説明した。また、北日本放送の番組は、民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連の「留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるので、放送倫理違反があったと判断したと説明した。
続いて鈴木委員長代行は「当該局による自主的・自律的な事後対応とその成果を期待している。正直、厳しい表現の下りもあるが、『自主・自律』を促すための苦言だと受け取っていただければありがたい」とコメントした。また西土委員は、番組と広告の境目を常に意識して番組を制作してほしい。そうした実践の積み重ねにより、自分のものにした留意事項、各局の実践的なルールこそが重要であると考えるとコメントした。
これに対して琉球朝日放送は、「放送倫理違反があったと判断されたことを何よりも重く受け止めている。今回の意見を踏まえて今後の番組作りに生かしていきたい」と述べた。北日本放送は、「委員会決定を本当に深く受け止めている。これからは考査体制を強化して、本当に視聴者から信頼される番組作りを、改めてどんな番組が信頼されるのかということを全社員で考えて、真摯に取り組んでいきたい」と述べた。
続いて、午後3時30分から千代田放送会館2階の大ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には50社67人が出席した。
はじめに神田委員長が、琉球朝日放送の番組は、番組の中身や表示の問題点から、視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連の「留意事項」に照らして総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるという判断をした。北日本放送の番組は、北日本放送が自ら「中途半端なPR色」を認めるように、特に番組の後半部分は視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連放送基準の92や民放連の「留意事項」に盛り込まれた特に留意すべき事項に照らして総合的に判断すれば、この番組も視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められるという判断をしたと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて鈴木委員長代行は「広告をめぐる意見書は2件目だ。意見書は通常、当該局に向けてものを言うものだが、今回は『民放連や民放各局の自主的・自律的な精神と姿勢で検討されるよう望みたい』と民放連を名指しして対応を促している。我々のメッセージがそこに込められていることを読みとっていただけるとありがたい」と述べた。また西土委員は、営業、編成、様々な職責の方がコミュニケーションをとって実践していく中でルールが具体的に決まってくるものだと思う。そういう観点から意見書を執筆したと述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 意見書には放送法第12条が出てこない。民放連放送基準で言及できるので、12条を持ち出すまでもないということか。
A: 当委員会は放送倫理に照らして倫理違反があるのかを判断する機関であることを踏まえ、放送倫理違反に関する判断をすることをもって必要十分であると考えている。(神田委員長)
   
Q: 琉球朝日放送の番組がセブンの提供でないことは、いつ分かったのか。また、番組は局の自主制作か。
A: 1月のヒアリング時に分かった。ビックリした。番組は琉球朝日放送の自主制作だ。
(鈴木委員長代行)
   
Q: セブン出店で沖縄ではお祭り騒ぎになったことは1つの情報であり、ニュースだと思う。PR色と情報性は表裏一体だと思うが。
A: 民放連の「留意事項」において、番組で特定の商品・サービスを取り扱うことは、視聴者に対して具体的で有益な情報提供となることが指摘されている。当委員会においても、その意義を損なうことのないよう十分に意識して議論、判断をしている。同時に、番組で取り上げた情報が広告放送であるとの誤解や疑念を持たれることは、民放の信頼やメディア価値の根幹にも関わることとなるとの指摘もされているところであり、その「境目」の判断については、「留意事項」に書かれているとおり、3つの視点はあくまで例示であり、総合的に判断する必要があると考えている。ご質問の点については、本件においてその点だけを踏まえて判断したものではなく、番組全体について総合的に判断したものであるが、その判断に関しては詳細な記載は控えている。詳細に記載するときは、個別事案を離れて基準であるかのような誤解を与え、かえってその意義を損なう可能性があると考えている。民放連放送基準審議会においても、「演出や構成などには大いに工夫の余地があるのではないでしょうか」と呼びかけている。私たちも各局に「大いに工夫の余地がある」ことを狭めることがないようにしたいと考えており、意見書にも記載したとおり、各局に自主的・自律的に検討していただきたい。(神田委員長)
   
Q: 広告会社の方がプロデューサーとして表示されていたことについて、委員会はどんな議論をしたのか。
A: その部分は倫理違反の判断とは直接関係ないが、表示は正確であってほしい。(鈴木委員長代行)

以上

2020年3月31日

NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、3月31日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会からは神田安積委員長、升味佐江子委員長代行の2人が出席し、NHKからは国際放送局長ら2人が出席した。
委員会決定について神田委員長は、「NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた放送倫理基本綱領、また、NHKの『放送ガイドライン』に照らした適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した」と述べた。続いて升味委員長代行が、「NEP(NHKエンタープライズ)による試写はプロデューサー1人だけ。できれば、NHK本体としても考査の役割を果たすために最終的に番組内容を検討する機会を意識してもつことが、今後、このようなつまずきにつながらない方法かと思う」とコメントした。これに対してNHKは、「再発防止はもとより、国際放送はこれからも放送法、放送番組基準、NHKの『放送ガイドライン』にきちんと従っていく形で、ますます視聴者のみなさまに資するチャンネルとして力を入れていきたい。今回のことを糧にして、これからも頑張っていきたい」と述べた。
続いて、午後2時30分から都市センターホテル会議室で記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には19社30人が出席した。
はじめに神田委員長が、「自主制作か外部への委託制作か、持ち込み番組かを問わず、放送局は全ての番組について放送責任を負い、その内容は放送倫理にかなったものでなければならない。NHKが適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って説明を加えた。続いて升味委員長代行が、「テレビ局についての信頼は、事実が正しいことが大前提だ。事実の正しさを確認することは、地味で単純な作業だと思うが、それが大切である。それから、試写や考査で疑問が生じた時には、中途でうやむやにせず、結末まで原因を追究する必要性を再確認する機会にしていただければありがたい」と述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 「事実確認の基本的作業なし、誤認の連続」とのこと。ディレクター、カメラマン、音声マンの3人とも本当に誤認だったのか。つまり、どこかで気付いていたのではないかという議論、3委員の間であったのか。
A: カメラマン、音声マンは日本人ではない。不信は感じなかったと言っている。ディレクターは、その場で全く疑問を感じなかったと答えている。1点あるとすれば、「彼女をレンタルする20代男性」の取材している場面。彼女をレンタルする動機が、女性と話すのが苦手だからという割に、非常にこなれた感じで最初から彼女に接していることについて、「あれっ」と思ったことはあったようだ。しかし、自ら納得してしまったところがある。若い人はこんなものなのかということと、前に同じ女性をレンタルしたことがあったので、2度目ならこういうものなのかなと納得してしまった。ディレクターの説明によると、1つずつ多少の疑問はあったけれども、自分の中で納得してしまっているうちに終わってしまったようだ。(升味委員長代行)
   
Q: 音声マンとカメラマンが日本人ではないとことだが、日本語はよく理解できないような方だったのか。
A: 完ぺきではないと思うが、外国から呼んだわけではないようだ。日本にいるスタッフ。(升味委員長代行)
   
Q: この審議が行われている途中で、NHKの朝の番組でシューズレンタルの話があった。事後のブリーフィングで、その件は取り上げないということだったので、今日の意見書の中に取り上げているのかなと注目していた。記載すべきだという議論はなかったのか。
A: NHKの『おはよう日本』についての質問かと思う。『おはよう日本』については、審議に至らずという結論となった。ただし、討議に付し、その中での委員の議論状況は委員会のHPで開示した。委員会の問題意識を必要十分に開示したということを踏まえて、本意見書に重ねて指摘することは結論として控えた。(神田委員長)

以上

2020年4月8日

北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見の通知・公表

北海道放送に対する上記委員会決定の通知は、新型コロナウイルスに関連する緊急事態宣言の発令を踏まえ、4月8日午後1時30分に、電子メールにて実施した。

これに対して北海道放送は、「当社が2019年7月3日(水)に放送した『今日ドキッ!』内のニュースについて、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会から放送倫理違反の指摘を受けたことを重く受け止めています。意見書では、参議院比例代表選挙の公示前日に、特定の候補のみを取り上げて放送したことは、『選挙報道に求められる公平・公正性を損なっており、放送倫理に違反する』と指摘しています。当社は意見書に真摯に向き合い、再発防止に取り組み、より良い選挙報道の実現に向けて一層の努力をしてまいります。」とのコメントを、自社のホームページに掲載した。

また公表については、同日午後2時30分にBPOのウェブサイトに委員会決定の全文を掲載することにて実施し、記者会見の開催は見合わせた。広報を窓口に質問を受け付けたが、4月15日時点で質問は寄せられていない。

以上

2020年2月13日

TBSテレビ『消えた天才』映像早回しに関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、2月13日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、岸本葉子委員の3人が出席し、TBSテレビからはスポーツ局担当の取締役ら4人が出席した。
神田委員長は委員会決定について、「今回の放送は、1993年に出されている『放送番組の倫理の向上について』と題する提言と民放連の放送基準(32)に抵触し、過剰な演出であるとして放送倫理違反があったと判断した」と説明した。続いて、岸本委員が「意見書の立場は、個人に責めを帰するのではなくその人がどうしてそうするに至ったか背景や構造的な問題がないかを探り学ぼうというものである。現在の技術環境に合わせたチェックの仕組みを構築するのはすぐにできることではなく、そうした状況にあっては個々人のモラルによるところが大きい」と述べた。続いて、鈴木委員長代行が「今回のように当該局が自ら問題のありかを探って公表するケースはそう多くはない。あるスタッフがプロデューサーに問題を報告してから公表まで1週間であり、ものすごいスピード感である。報告しなければいけないと思ったスタッフの感覚は健全であり、こうした感覚は今後いろいろなことに生きる」と述べた。これに対して、TBSテレビは「番組作りというのは、小さいかもしれないけれど、一個一個の判断の連続で最後に番組になっていくものなので、その判断が技術革新の便利さゆえに、安易になってはいけないということを教えていただいた。技術は進歩するが、立ち止まって番組作りのプロセスの中で、作り手が何を大事に、何を伝えるかということをきちんと踏まえて作れるような制作者のリテラシーアップと、番組を通じての視聴者への還元にこれから努めていきたいと思う」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社39人が出席した。
はじめに神田委員長が意見書に沿って、委員会の判断、番組の詳細、背景と問題点等を説明した後、「意見書の最後の段落に『技術革新が下げた心理的なハードルは、個々人のモラルによって押し上げ、保たなければならない状況にある』と書いている。『モラル』は『放送倫理』に置き換えることが可能であり、あらゆる放送局で妥当する普遍的な課題をつきつけている。各局各人に放送倫理に基づく対応を自主自律の下で検討してもらい、再発がないようにと強く願っている」と述べた。続いて岸本委員が「意見書に四つの背景と問題点を書いた。特に後の二つ(「技術革新と心理的ハードルの低下」「チェックの仕組みの限界」)は局や部署を問わず放送に携わる人が共有する課題だと思っている。今回の特徴は、問題が内部での気付きによって発覚し、すみやかに調査を開始したことである。違和感を感じたことを上司に上げる勇気が今回の特筆すべき自主自律的な対応につながった。こうした気づきとそれを口にして、問題の共有・解決につなげていく力学が働いたことをとても頼もしく思っている」と述べた。鈴木委員長代行は「ヒアリングで、早回しにかかわった人たちに悪意はまったくなく、むしろ"消えた天才"に対して、こんなにすごかったんだとつい強調したいためにこういう行為に走ったと改めて確認できた。組織的に確立された手法が継承されているわけではないということがわかった。スポーツ局内では、スピードを変える加工は悪い意味ではなく日常的に行われていた。スポーツ中継のリプレイでの早送りやスローモーションなどは、視聴者も了解しているから手法として認められているが、今回はまさかここで速めているとは思わないところで行われた。視聴者との約束を超えた映像加工であり、過剰な演出であると言わざるを得なかった。技術的に可能になればなんでもやっていいわけではなく、やっていいことと悪いことを当該局だけでなく広く放送の現場の人に考え”てほしい」と述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: (意見)当該局の自主自律的な対応を今回のような形で意見書で評価して盛り込んでもらえると、委員会がこういう対応を自主自律的なこととして受け止めていることがよくわかる。
A: 意見書の中でも常に当該局の自主自律的な姿勢は適切に評価するように努めている。審議入りした案件だけではなく、討議入りするかどうか、また、討議から審議入りするかどうかのステージにおいても自主自律的な取り組みをしているかどうかを重視している。討議入りした案件について審議入りするか否かの基準については、2009年7月に川端前委員長が委員長コメントを出している。ひとつは放送倫理違反の程度の大小、もうひとつは自主自律的な取り組みをしているかを勘案して審議入りするかどうかを判断するとしている。審議入りした案件において、放送倫理違反があるとしても、局の事後的対応の評価を明らかにして、すべての局に自主自律的な姿勢の重要性と大切さを伝えていきたいと思っている。(神田委員長)
   
Q: 審議入りの経緯を改めて聞きたい。どういうきっかけでBPOに伝わったのか。元々野球の投手の件を調べた結果、ほかの3件が明らかになったのか。
A: 元々当該局が4件を公表した。それを基にBPOに報告書を提出してもらった。その時点で局の一連の対応はわかっていたが、もうひとつの審議入りの条件である、放送倫理違反の程度が重いか軽いかについて、委員会としては、初めてのケースであるし、こういう手法で早回しが行われたことに驚きがあり、事後対応はよいけれども審議入りせざるを得ないと判断した。技術革新の問題には、当該局だけではなく広く放送界に警鐘を鳴らすテーマがあるのではないかと考えて審議入りした。(鈴木委員長代行)

以上

2020年1月24日

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、1月24日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、中野剛委員、巻美矢紀委員の3人が出席し、関西テレビからは編成局担当の取締役ら3人が出席した。
まず神田委員長が、審議の対象とした番組には放送倫理違反があったという委員会の判断を説明したうえで、「現場の制作者の中に局の見解や本決定に納得できない人がいれば、局はそのような意見を受け止めながら、現場での理解を深めていっていただきたい」と、経営側として今後の適切な対応を求めた。中野委員も「経営陣によく読んでもらいたいというメッセージを込めて、局の事後対応の検証にも重点を置いた意見書にした。辛辣なトークを楽しみにしている視聴者もいるので、この意見書をいい番組作りにいかしてほしい」と、また巻委員は「一部の制作者の問題ではなく、会社全体のシステムを見直す好機ととらえて現場との対話を続けていってほしい」と述べた。
これに対して関西テレビは「問題が起きてから勉強会を積み重ねてきたが、現場には新しい人も入ってきているので、この意見書をしっかり読んで、視聴者の信頼を得られるようにしていきたい」と答えた。
その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、22社43人が出席した。
はじめに神田委員長が意見書のポイントを解説して、放送倫理違反があったという判断にいたった経緯を説明した。続けて「関西テレビの当初の見解とその後の見解との間には相違があり、局内に見解の変遷があったことを示している。だからこそ最終的に『放送倫理上の問題があった』という結論には重みがあり、その結論を社内で深めてほしい」とコメントした。中野委員は「ヒアリングをした複数の制作者が『ギリギリのラインを攻めることが視聴者から求められている』と話していたが、そうであれば、自分たちが自主自律的に作ったガイドラインを十分に理解している必要がある。2007年に発覚した『あるある大事典II』の問題を受けて関西テレビが自主的に作った『番組制作ガイドライン』や『倫理・行動憲章』の内容を、経営陣は改めて現場に指導してほしい」と経営に呼びかけた。その一方で「考査は最後の砦なので、各社の考査のあり方を今一度考えてほしい。さらに、疑問に思ったことを伝えあえる環境かどうか、各社の制作現場も考えてほしい」と、現場にも意見書の趣旨を踏まえるよう促した。また巻委員は「今回の問題については、関西テレビの中だけでなく放送界全体でもさまざまな意見があると思う」とヒアリングなどで受けた印象を受けて、「だからこそ今回の問題をきっかけに、公共性が高いと位置付けられているテレビの役割や使命、また各社が自主的に作っている放送基準の意義や具体化について、放送界全体で考えるきっかけにしてほしい」と、放送業界へのメッセージを述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 韓国の人を「手首切るブスみたいなもの」と揶揄的に言っていることが放送倫理違反なのか?
A: 一つ一つの表現がダメだというのではなく、発言全体の文脈の中で、国の外交姿勢の擬人化にとどまらず、広く韓国籍を有している人を侮辱していて、それが民放連の放送基準などに抵触していると判断した。(神田委員長)
   
Q: どういう表現をすればよかったのか?
A: ヒアリングの際に「カットすべきだった」と話す制作者はいたが、委員会として具体的にどうすべきであったとは言っていない。その方法にはいろいろな選択肢があったはずであり、局が自主自律的に考えるべきことであると考える。(神田委員長)
   
Q: 意見書を読むと、現場の制作者の中には局の見解に納得していない人がいるようだ。そういう人たちには、自己批評番組でコメンテーターが指摘した「作り手のエゴ」だという認識がないのではないか?
A: ヒアリングをした委員の実感としては、現場の制作者は悩んでいた。だから制作会社のスタッフは局のプロデューサーに「この表現が放送で使えるかどうか」を聞き、プロデューサーはさらに放送倫理担当者に聞いている。最終的には問題の表現を使うということになったが、使っていいのかどうか悩んでいたことがうかがえる。最終的なジャッジに問題があったと考える。(中野委員)
A: 局の見解と自分の考えの間に「溝」がある制作者がいることは事実だが、その「溝」を埋めるために、一人ひとりが考え続けてほしいという期待を込めている。(神田委員長)

以上

2019年12月10日

読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、12月10日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、長嶋甲兵委員の4人が出席し、読売テレビからは常務取締役(コンプライアンス、技術担当、社長担当補佐)ら3人が出席した。
委員会決定について升味委員長代行は、「プライバシーの観点から、取材でここまで踏み込まずにどこかで止まって欲しかった」と述べた。岸本委員は、「本件は多くの放送局にとって共通の課題だと思うが、放送後の対応には目を見張るものがあった」と述べ、また長嶋委員は、「報道と情報バラエティの境がなくなりつつある中で、良識のようなものが混乱している」と発言した。最後に神田委員長から、「意見書の冒頭に番組内で叱責した出演者の発言をあげたが、その内容には大変重いものがあり、その後の自主・自律的な対応につながったと言えよう。意見書だけではなく、その言葉を、今後の教訓として自局内で問い続けていってほしい」とコメントした。これに対して読売テレビは、「意見を真摯に受け止め、今後の番組作りに生かしていく。放送後、番組制作体制の強化とともに全社的な研修会を開催して人権意識の向上に取り組んでおり、今後も再発防止と信頼回復に努めていく」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社44人が出席した。
はじめに神田委員長が、「問題の放送は、特に性的少数者の人権や当事者の社会的困難への配慮が課題として議論されている時代に、もっとも感性が鋭敏であるべき放送が、著しく配慮を欠くやり取りを放送した点で看過できない問題があり、民放連の放送基準(3)に反し、放送倫理基本綱領や民放連の報道指針に反する放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って説明を加えた。続いて升味委員長代行が、「報道番組で培ってきた人権意識や裏取りの意識を貫いて、情報バラエティの番組作りにも生かしてもらいたい。また研修や日々の現場でお互いに意見を言い合うことなどを積み重ねて、人権への関心を高めてほしい」と感想を述べた。岸本委員は、「企画を成立させる、誰かがチェックしている、といった基準ではなく、多様性の時代の社会生活における普通の感性で取材や制作をすることが課題である」と述べ、長嶋委員は、「街ブラ企画には問題を生む土壌があるなと気になった。違和感を共有する場がなかった点も踏まえて、新たなワークフローの形を考える必要があるのではないか」と述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 特に性的少数者の人権などが議論されている時代、と委員会の判断にあるが、放送倫理違反があったとする今回の意見に時代背景が影響したとの認識でよいか。
A: プライバシーに関しては、性的少数者の当事者だけではなく、その背後にいて告白できない人たちも含めて守っていかねばならない時代であり、それを前提にして放送基準を理解しないといけなく、その解釈の中に時代は影響してくる。(升味委員長代行)
   
Q: この放送に関わってヒアリングの対象となった13人のうちで、女性は何人いたのか。
A: 2人。役職者ではない。(升味委員長代行)
   
Q: 感度の高いアンテナを張るよう期待するとあるが、その反面で気にし過ぎて萎縮して自由な表現ができなくならないか。そのバランスに関してはどう考えるか。
A: 出演者に言われてその重大性に気付いたが、出演者に言われるまで気が付かなかった、そのギャップの大きさの理由を知りたかったが、必ずしも明らかにならなかった。そこで、今後、感度の高いアンテナを張る必要性に触れたが、今回の事案や意見書の内容が今後の番組制作を萎縮させるようなものだとは考えていない。むしろ、放送に至るまでの間に、放送倫理に照らして議論をすることが必要であったと思う。(神田委員長)
  萎縮というのは、どこに触れたらいけないのかがわからない時に起こるものであり、研修などで知見を広めることによって、伸び伸びと制作することができるのだと思う。(岸本委員)
  気付いている人もいたが共有する場がなかったり、判断するのが1人の統括プロデューサーに任されていたりした点は、違和感や問題意識を丁寧に拾い上げるようなシステムではなかったということで問題である。(長嶋委員)
  自分が知るということがまずは大事だが、自分の関心事だけではなく現場の色んな人と意見交換をする場を持ち、別の見方があることを指摘され、それで知識が広がっていくと思う。(升味委員長代行)
   
Q: 意見書を読むと違和感を持った人もいたようだが、声を上げられなかったのは、仕事に追われていたとか放送時間が迫っていたとか、気持ちの面での弱さのようなものがあったのかどうか、ヒアリングで聞く機会はあったのか。
A: 元々ダブルチェック体制だったが1人の統括プロデューサーに任され、彼がコンプライアンス意識も高く上司や部下からの信頼も厚くて、何となくスルーしてしまった感じである。(長嶋委員)
  時間に追われているというようなことはなかった。前提として2部は問題が起こるようなことはないという油断があった。そして制作の過程で違和感を感じたスタッフもそれを共有し反映する場がなかったことがあげられる。(升味委員長代行)
   
Q: チーフプロデューサー(CP)と統括プロデューサー(統括P)について、CPは役職名で何人かいるプロデューサーの中から任命されていると思うが、統括Pもそのような認識でいいのか、それとも何人かを束ねる立場なのか。また、生放送時に対応すべきは統括Pであると定められているのか。
A: 番組には統括Pが2人いて、1部と2部それぞれを統括している。放送中に対応するのは統括Pである。(升味委員長代行)
   
Q: 放送を見ていないので教えてもらいたい。性別を表明していない客にどう接したらいいか悩むご主人というテーマで、興味本位だけの企画ではないと思っていたのだが、現実的にはどんな内容・コンセプトだったのか。
A: お好み焼き屋の店前をよく通る犬を連れた人が、男か女かわからないというお店の女性の悩みに対してお笑い芸人が応えるという内容。(長嶋委員)
(*回答を聞いて、質問者が勘違いしていたとの返事あり)
   
Q: もし同じ内容の企画がバラエティ番組で深夜の放送だとして審議されたら、同じ見解になるのか。
A: 私たちが解答を述べることは控えるべきであり、まさに放送局がその番組がどのような内容であるかを踏まえて自主的・自律的に判断してほしい。(神田委員長)

以上

2019年10月7日

長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、10月7日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、長野放送からは取締役(編成・業務推進・放送番組審議会担当)ら2人が出席した。
神田委員長は委員会決定について、「民放連放送基準(92)や、当該基準を踏まえて民放連が策定した『番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項』の『視聴者に「広告放送」であると誤解されないよう、特に留意すべき事項』に照らした適正な考査が行われておらず、放送倫理違反があったと判断した」と説明した。続いて鈴木委員長代行が、「問題点と背景として、考査体制というシステムの不備だけでなく、局員の当事者意識の希薄さがあった」と述べ、高田委員が、「持ち込み番組とはいえ、放送の数日前まで内容を誰も把握していなかった」と発言した。これに対して長野放送は、「この意見書を真摯に受け止め、今後の放送活動に生かしていく。全社一丸となり再発防止に取り組んでいく」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には43社80人が出席した。
はじめに神田委員長が、「持ち込み番組の場合、放送局による考査が適正に行われたどうかが検証の対象となる。その前提として番組の放送倫理上の問題の有無について検討した。その結果、当該放送局の考査は、民放連放送基準(92)や、当該基準を踏まえて民放連が策定した『番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項』の『視聴者に「広告放送」であると誤解されないよう、特に留意すべき事項』に照らした適正な考査を行わず、当該番組を放送したことについて放送倫理違反があったと判断した」と説明し、さらに、「当該番組を『留意事項』に照らして判断したとき、視聴者に広告放送であると誤解される番組であると委員会は事実認定した。放送基準の解釈・運用については各放送事業者の自主・自律的な判断が尊重されるべきであり、広告に関する放送に当たっても、各放送事業者が、『留意事項』等に照らして、自主・自律的な判断をしていただきたい」と補足した。続いて鈴木委員長代行が、「今回第30号となる意見書の特徴は、端緒が視聴者からのメールであった点、初めて広告との関係を問うものである点、2年前の東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』に対する意見書に続き持ち込み番組の考査のありかたを問うものである点である。『ニュース女子』に対する意見書では考査のあり方に対する注意喚起を行ったが、現場に浸透しておらず残念である」と述べた。高田委員は、「関係者の当事者意識が薄かった。番組に対してそれぞれ関わった人たちが少しでも番組の内容に関心をもっていればこうしたことは起きなかったのではないか」と述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 改稿要請すべきところをせずに放送した結果、広告放送と誤解されたという結果になった。この点が放送倫理違反と結論づけられたということでよいか?
A: それで結構である。(鈴木委員長代行)
   
Q: 広告放送でなかったものが広告放送と見られたのがよくないということでよいか?
A: 広告放送であると判断しておらず、広告放送であると誤解される番組であるという判断をし、その前提に立って意見を述べている。(神田委員長)
   
Q: 番組は放送基準に抵触したのか?
A: 放送基準(92)「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」を踏まえて、民放連の「番組内で消費・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」が規定され、その中の「2.視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」において、「視聴者に『広告放送』であると誤解を招くような内容・演出になっていないかを、総合的に判断する必要がある」と規定されている。今回の事案は、放送基準(92)を踏まえて規定された「留意事項」2の「広告放送であると誤解される番組」であったと判断し、放送基準(92)及び「留意事項」2に反しているという評価をした。(神田委員長)
   
Q: 『ニュース女子』に対する意見書の教訓が現場に浸透していなかったことについてどう受け止めるか?また浸透させるための課題は?
A: 当該意見書の教訓が現場に浸透していないとすれば、委員会全体としても極めて残念、遺憾だと受け止めている。当該放送局だけでなく放送局全体に刺さる意見書を書く工夫をしてきたが、今回のように持ち込み番組への考査の問題が短期間に繰り返されたとなると、意見書の工夫だけでは足りないところがあると思う。当委員会としても、意見書を出すだけではなく、放送局との意見交換の機会を増やし、これまでの様々な事例、意見書のエッセンスを上層部の方々だけでなく現場で制作に関わる方々に伝え、直接意見交換をし、よりよい放送をしてもらうために、放送倫理を常に意識して自主・自律的に議論、判断することが大切であるということを考える機会をもっと設けていきたいと考えている。(神田委員長)

以上

2019年7月5日

日本テレビ
『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』
2つの「祭り企画」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、7月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員の5人が出席し、日本テレビからは取締役執行役員(コンプライアンス担当)ら3人が出席した。
まず升味委員長代行が、「祭り」が番組のために用意されたものであったのに制作スタッフがその過程を把握していなかったこと、また視聴者の「了解」の範囲を見誤りナレーションによって地元に根差した「祭り」に出演者が体当たりしていると思わせてしまったこと、さらに挑戦の舞台である「祭り」への関心が薄くなっていく中で安易なナレーションを生んでしまった、という委員会の検証を解説し、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるをえないという判断になったことを説明した。
これに対して日本テレビは、「丁寧な審議に感謝している。今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作にいかしていく。視聴者に自信を持って伝えられる体制を整えてから、ぜひ『祭り企画』を再開させたい」と述べた。
その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、30社62人が出席した。
はじめに升味委員長代行が、意見書の内容を紹介して判断にいたった経緯を説明した。岸本委員は「どこまで視聴者に伝える必要があるのかという問いが現場から聞かれたが、それ以前に、制作過程を正確に把握していなかったことが問題だ。すべてを把握してはじめて、バラエティーが豊かな番組空間を作り出せる」と述べた。中野委員は「日曜日の夜8時にこの番組を見ている人たちは、番組のコアなファンだけでなく、多様な視聴者がいることを忘れてはならない。現地コーディネーターに頼りすぎるのでなく、コーディネーターとのコミュニケーションを密にしてほしい」と呼び掛けた。さらに藤田委員は、これまでに放送倫理検証委員会が出したバラエティーの意見書(決定第7号 2009年11月17日)について触れ、「番組のすみずみまで計算しつくしてはじめてバラエティーが成り立つ」という委員会の考えに変わりがないことを説明した。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 祭り企画は全部で111回放送しているが、2つ以外の「祭り企画」を審議の対象とはしなかったのか?
A: 審議に必要なものは視聴したが、この2件について掘り下げて審議することに意味があると考えた。(升味委員長代行)
   
Q: 現地コーディネーターは、制作スタッフの一員なのか?あるいは外部の存在なのか?
A: 独立した当事者。企画が通ってはじめて経済的にも対価を得ている。制作スタッフと現地コーディネーターとの関係は、放送局と制作会社との関係とは異なる。(中野委員)
   
  制作スタッフは、企画の提案を各方面に投げかけ、提案されたいくつもの企画の中から選んだものについてロケをしている。選ばれた企画の現地コーディネーターは、制作スタッフと一体ではなく、制作会社と契約関係にある独立した他者だ。ただし、制作スタッフがその企画を採用して番組にしているのだから企画内容には責任を伴い、ロケに入ってからは制作スタッフと現地コーディネーターのコミュニケーションが大切であるのに、今回はこのコミュニケーションが欠けていた。(藤田委員)
   
  日本テレビは問題が明るみに出た当初、現地コーディネーターを切り離して外の存在であるかのように言っていたが、その後、番組制作の大切な協力者だと訂正した。委員会のヒアリングの対象は普段は放送局と制作会社だが、今回は制作会社の協力者という立場で、コーディネーターにもヒアリングに応じてもらった。(岸本委員)
   
Q: 「やらせ」「でっちあげ」という指摘については、どういう議論があったのか?
A: これまでも、委員会では、「やらせ」「でっち上げ」を定義し、その番組がこれにあたるかあたらないかという判断の仕方はとっていない。今回の『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』についていえば、バラエティー番組であり、番組の素材として番組のために何か物を作る、何かを準備するということ自体が倫理違反であるとは考えていない。そこにある事実そのものを伝える報道番組やそのようなドキュメンタリーとは違う面があると考えている。(升味委員長代行)

以上

2018年2月8日

フジテレビ『とくダネ!』
2つの刑事事件の特集に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、2月8日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、升味佐江子委員長代行、神田安積委員の3人が出席し、フジテレビからは専務取締役(報道局・情報制作局担当)ら5人が出席した。
まず川端委員長が、「7月の映像の取り違えは、多くの人が関与しながら誰もチェックできなかったことが問題だ。また8月の放送は、当初、担当者たちは『警察に確認する必要がある』という正しい認識を持っていたのに、時間的に追い込まれて間違いが放送されてしまったわけで、必要な人員や時間が確保されているのかが課題。フジテレビに対しては9月に委員長談話を出したばかりで、会社の文化として事実の確認を取るというジャーナリズムの基本がおろそかになっているのではないかという危惧を感じる。きちんと事実を伝えないと、社会からメディアに与えられている使命を果たせないということを、全社的に考える雰囲気を醸成してほしい」と要請した。
升味委員長代行は、「聴き取りをした社員やスタッフはまじめで熱心な方々なのに、放送倫理違反があったという結果になったことは残念だ。その理由として、分業体制の中で、この番組は自分たちが作る番組だという『熱さ』が、現場に欠けてきているのではないかと懸念する」と述べた。
神田委員は、「7月の放送では誤って全く別の人のインタビューを使ったことが問題となったが、その発言内容が、放送したいテーマと関連があったのか疑問に感じた。同一人物かどうかの確認の問題とは別に、その内容のインタビューを使うことの是非について、誰も声を上げておらず、また、この点について検証した様子がみられないことも問題だ」と指摘した。
これに対してフジテレビは、「今回の決定を重く、真摯に受け止めている。今後の番組制作にいかして、会社として、再発防止に継続的に努めていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、26社52人が出席した。
はじめに川端委員長が、刑事事件の容疑者の情報という、確認にとりわけ慎重さが求められるセンシティブな事実の報道に際し、裏付けをきちんと取っていなかったため、同じ番組で1か月の間に2件の間違いが続いて視聴者に誤った情報を伝えたと、放送倫理違反があったと判断した理由を説明した。そして「裏付けを取るべき相手にきちんと裏付けを取っていれば、こういう間違いは起きなかった。チームで取材するときに、役割分担の思いが強すぎると、その隙間に、確認するという手順が陥ってしまいかねないことを明らかにした事案だ」と述べ、フジテレビに限らず、なぜ事実の確認が必要なのかを現場の人が理解してほしいと話した。さらに、テレビはきちんとした裏付けがある情報を伝えるメディアだという認識を視聴者が持たなければ、ネットに対してテレビの優位性は保てないと、意見書に込めた気持ちを明らかにした。
升味委員長代行は、「誰かがもう一声あげていれば、防げたミスだ。分業体制が進んで自分に割り当てられた仕事ではない、他の人に任された仕事だという気持ちになり周囲に遠慮しているのかもしれないが、テレビがネットと違うためには、そこを乗り越えなければいけない」と、同じ番組を作る者として感じた疑問点を放置しない情熱を現場に求めた。また、「情報番組は人や事柄のエピソードの面白さを追求するので、裏付けの必要性についての厳しい意識が欠けていたのではないかと危惧する」と述べ、先輩が現場の若い制作者を指導し、経験を伝承する必要性を強調した。
神田委員は、「正確な報道と裏付け取材が必要だということは十分に理解されていたが、理解していることと実践できていることとは違うので、裏付け取材が不十分なまま誤った放送がされてしまうことがある」と指摘した。そのうえで、どのようなプロセスを経て間違った結果を招いてしまったのか、再発を防ぐためにはどうすればいいのかについて、「個別のケースについての意見書ではあるが、ほかの放送局にも共有していただき、今後の番組作りにいかしてほしい」と、制作現場によびかけた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 間違いが1件だけなら審議入りしなかったのか?
A: 容疑者の映像の取り違えはこれまでにもあったが、静止画の場合が多かった。今回はインタビューを含めて映像を長い時間放送してしまい、しかもそのミスをキー局がおかしたということが問題。そのうえ、同じ番組での事実確認のミスが重なったので審議した。(川端委員長)
   
Q: 『とくダネ!』は、けさの放送でも存命の方を亡くなっていると紹介してしまうミスがあったようだが?
A: 放送局として、事実の確認を取った上で放送するという文化を育ててほしいと強く思っている。そのために、事実の確認は譲れないという気構えをみんなが持つような方策を考えて、全社的に取り組んでほしい。(川端委員長)

以上

2017年12月14日

東京メトロポリタンテレビジョン
『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、12月14日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員の4人が出席し、当該局の東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)からは、常務取締役(編成局担当)ら4人が出席した。
まず川端委員長が「審議の対象となったのは"持ち込み番組"であるが、TOKYO MXには、放送倫理上の問題がある番組は放送しないという責任がある。委員会は、放送内容には裏付けがないか裏付けが十分でないものがあったという放送倫理上の問題を指摘したうえで、TOKYO MXは考査でその問題点を発見して、制作会社に内容の修正を求めるか、このままでは放送できないと判断すべきだったという結論に至った。TOKYO MXは、委員会の審議中にもかかわらず、2017年2月、放送倫理上の問題も放送法違反もないという自社の見解を発表した。しかし、今回の委員会決定で明らかなとおり、自社が定めた放送基準を自ら裏切るような内容の"持ち込み番組"を放送してしまった点において、TOKYO MXには非常に重大な責任があると考える。意見書で指摘されたポイントを重大に受け止め、具体的な対応策を早急に示していただきたい」と強く要請した。
藤田委員は、「委員会で独自の調査を実施し、事実関係の確認と表現について6つの問題点を指摘したが、この意見書を、TOKYO MXの社内で共有し、議論してほしい。その結果を改めてお伺いしたい」と述べた。
中野委員は、「委員会は、特別な調査をしたわけではない。審議の対象となったあと、TOKYO MXは、なぜ自律的な検証を行わなかったのか。その点が重大な問題だと思っている」と指摘した。
岸本委員は、TOKYO MXが発表した見解について、「視聴者への視点の希薄さを感じた。視聴者の支持なくして放送の未来はありえない。視聴者の視点にたった意識を持ってほしい」と述べた。
これに対してTOKYO MX側は、「委員会の審議が開始されて以降、当社は、社内の考査体制の見直しを含め、改善に着手している。改めて、今回の意見を真摯に受け止め、全社を挙げて再発防止に努めていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、30社72人が出席した。
はじめに川端委員長が意見書の概要を紹介し、今回の審議の過程について詳しく説明した。審議の対象とした番組は、放送局が番組制作に関与していない"持ち込み番組"であったため、放送倫理検証委員会としては、当該局の考査について審議する初のケースとなった。番組を制作した制作会社のスタッフに直接ヒアリングできず、TOKYO MXの報告書と考査関係者へのヒアリングでも当該番組が伝えた内容に裏付けがないか裏付けが不十分だと思われる放送倫理上の疑いが解消されなかった。このため、委員会として沖縄で独自に調査する必要を感じ、担当委員が沖縄に赴き意見書に記載したとおりの調査を実施した。「基地建設反対派は救急車を止めたのか」「基地建設反対派は日当をもらっていたのか」「いきなりデモ発見の場面」で伝えられた抗議活動の参加者が「1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」という内容に裏付けとなる事実があったのかなど、放送倫理上の問題があったかどうかをチェックした。その結果、委員会は、TOKYO MXには、適正な考査をしなかったために、放送倫理上の問題があり、そのままでは放送してはならないものを放送してしまったという重大な放送倫理違反があったとの結論に至ったと述べた。そして、川端委員長は、「自らの放送倫理のとらえ方について考え直していただくことを期待している」と、TOKYO MXに早急に対応するよう求めたことを明らかにした。
藤田委員は、「"持ち込み番組"と放送局の接点は考査である。本件放送を考査担当者になったつもりで初めて視聴した際、何かひっかかる場面や立ち止まる場面があるかどうかというポイントを中心に検証した。本件放送を見たときに浮かんだ疑問が解消されなかったので現地調査を行ったが、その結果、裏付けがないか不十分なまま放送されたことが確認できた」と述べた。
中野委員は、「放送に携わる人たちには、放送番組で事実を提示する場合、事実に対する畏れを抱き、このような内容で本当に大丈夫なのだろうかと自問を繰り返し、慎重に扱ってもらいたい。TOKYO MXには、放送倫理上の問題が指摘された中、放送で伝えた内容の裏付けを確認するなど真摯な検討を加えた報告書を提出してもらいたかった。しかし、早々と放送倫理上問題なかったとする見解を出したため、『放送の自律の放棄ではないか』と言った委員もいた」と述べ、当該局の審議入り直後の対応を厳しく批判した。
岸本委員は、「TOKYO MXをはじめ放送局のみなさんには意見書の『おわりに』まで読み込んでほしい。インターネットと比較した放送の情報の質について言及している。視聴者は、放送局の情報は、放送局が事前にチェックしているため不確実、不適切な情報ではないだろうと信頼を寄せている。今回のようにチェック機能が十分に機能しなければ視聴者の信頼への裏切りにつながる。放送人としての矜持をもって考査に当たってほしい」と訴えた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 独自調査は、どのような議論をして誰が行ったのか。また、委員会による調査の前例はあるか。
A: 1回目は委員1人と事務局、2回目は委員2人と事務局で沖縄に赴いた。このほか、人権団体から話を聞いた。調査したのは、放送内容に裏付けとなる事実があるのか、裏付けとして示されている事実が裏付けとして十分なのかどうかという確認であり、"ある事実"が本当に存在したのかどうかという調査ではない。また、放送倫理検証委員会の独自の調査としては4例目である。(川端委員長)
   
Q: "持ち込み番組"であり意見書は放送内容に踏み込んでいない。委員会の調査の限界と思うか。"持ち込み番組"の対応について委員会として働きかけるつもりはないのか。
A: 委員会はNHKと日本民間放送連盟(民放連)加盟局の放送倫理上の問題を「審理」「審議」するのが職責である。今後、本件放送のような完パケ"持ち込み番組"が増加するのならば、意見書を受けて民放連で検討されると思う。(川端委員長)
   
Q: 『ニュース女子』は、他の放送局でも放送している。本件放送を考査して放送を取りやめた局はあったのか。
A: 『ニュース女子』は、レギュラー編成していない放送局を含めて、TOKYO MX以外に27局で放送実績(2017年5月30日現在)がある。しかし、本件放送を放送した局はなかった。いくつかの放送局は本件放送について独自の考査をして放送しなかったと聞いているが審議対象ではないので調査していない。(川端委員長)
   
Q: 過去の審議事案で、"重大な放送倫理違反"とされたケースを教えてほしい。
A: フジテレビ『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見(委員会決定20号)、NHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見(委員会決定23号)に続き、今回が3例目である。(川端委員長)

以上

2017年10月5日

TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』
「多摩川リバーサイドヒルズ族エピソード7」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、10月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、鈴木嘉一委員の4人が出席し、当該局のTBSテレビからは取締役(情報制作局担当)ら3人が出席した。
まず川端委員長が「ホームレスの男性を『犬男爵』と呼び、極端に誇張したイラストとともに『人間の皮を被った化け物』と決めつけたこと、カメラに向かって怒鳴る出会いのシーンを3回も使い、男性の人格について『すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物』という印象を与えたこと、『人間の皮を被った化け物』という別のホームレスの男性の発言を本人に断りなく撮影し、了解もないまま放送したことは、明らかな放送倫理違反と認められる」と指摘した。一方で、「TBSテレビは的確な訂正と謝罪を行うとともに、ホームレス支援を行っているNPOの人を招いて研修会をすぐに開催した」と事後の対応について評価した。その上で、「現場の記者や番組制作者らの間に生まれつつある『問題をもう一度考え直す』という空気をぜひ育て、より良い番組を作ってほしい」と今後への期待を表明した。
鈴木委員は「ネーミングなどでホームレスの人たちを茶化していると最初から疑問を呈する番組制作スタッフがいたことや、放送直後から局内で表現などについて疑問や批判の声が上がったことなど、健全さもみられる。事後の対応も適切で真摯な自律的姿勢もみられるのに、なぜ問題が起きたのかを考えてほしい」と指摘した。
斎藤委員は「ホームレス問題は貧困や障害など複雑な要素を持っている場合が多い。報道番組以外で扱うときは報道よりはるかに深く取材し、注意深く放送すべきだ」と訴えた。
渋谷委員は「自分の視点だけではなく、取材される側、視聴者がどう思うかを、プロとしてさまざまな角度から表現を考えて放送してほしい」と述べた。
これに対し、TBSテレビ側は「取材や番組づくりの過程で何度も違和感がありながら止められなかった。いくつものレベルでチェックしたが、たくさんの人がチェックしているにもかかわらず結果として無責任になってしまった。報道、情報、制作を含め、全社でスタッフの意識と各レベルでのチェック体制を向上させていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社37人が出席した。
はじめに川端委員長が意見書の概要を紹介し、明らかな放送倫理違反と認められるという結論に至った理由を説明した上で、こうした番組作りの背景には、社会的弱者、特にホームレス問題に対するスタッフの無理解と偏見があったと指摘した。
鈴木委員は「非常に複雑な社会的背景があるホームレス問題に対する認識の希薄さ、バラエティー的な表現を許容し放置するという『集団的無意識』の延長線上に、今回問題となった『エピソード7』がある。この『集団的無意識』をどうやって乗り越えればよいか、現場の一人ひとりが考えてほしい」と要望した。
斎藤委員は「ホームレス問題の背景には、貧困だけでなくさまざまな問題がある。報道以外のジャンルの番組でこうした問題を扱う場合は、報道以上に詰めた取材をして、深く考え、慎重な表現をしなければならない」と指摘した。
渋谷委員は「行政当局に代わって自分たちが懲らしめている、問題を解決していると考えるのは放送としていかがなものか。取材する側とされる側は立場が違う。取材される側がどう思うか、自分が作る映像がどう受け取られるかというところまで考えて番組を作ってほしい」と訴えた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:ホームレス男性との河川敷での「出会いのシーン」が、「過剰な演出とまで言い切れるかどうかは微妙」と判断した背景を説明してほしい。
    A:ディレクターの実際の指示は「『なんでこんなところに入ってくるのか』と言いながら出てきてください」というだけの指示だった。ところが実際は、撮影していたカメラマンも驚くほど怒鳴りながら出てくる映像になっている。これは頼まれたホームレス男性が、「こうやらなければならない」と思い込んで行ったことで、ディレクターがそのような演出をしたわけではないのでこのように判断した。(川端委員長)

  • Q:「人間の皮を被った化け物」ということばは、取材ディレクターがホームレス男性に言わせたのではないかという疑念を感じるが、確認は行ったのか?
    A:もちろん確認した。言わせたとか誘導したということは全くなく、突然このような表現が出てきた。(川端委員長)

以上

2017年2月7日

2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、2月7日午後2時45分から、千代田放送会館7階のBPOの第1会議室で行われた。委員会からは川端和治委員長、升味佐江子委員長代行、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、藤田真文委員が出席、一方、放送局を代表して日本民間放送連盟とNHKから合わせて4人が出席した。
まず川端委員長が「通例とは異なり、今回は個々の番組を対象に審議をしたわけではない。昨年は参議院議員選挙と東京都知事選挙という二つの大きな選挙があり、この二つの選挙のテレビ放送に関して視聴者や活字メディアからさまざまな意見や批評があった。このためいくつかの放送を視聴して、委員会として意見を述べる必要があると考えた」と決定を出すに至った経緯を説明したあと、意見書の要点を解説した。続いて升味委員長代行が「最近の選挙で投票率が下がっていることに危機感を持っている。政治的選択が少数の人で行われるのは良くないので、わかりやすく視聴者が興味を持てるような多様な放送に努力してほしい」と要望し、斎藤委員は「ジャーナリストだからわかる争点を、この決定に書かれている自由を生かして、放送局は有権者にもっと提示していい」と述べた。さらに渋谷委員は「選挙は国民が主役になる唯一の機会だ。選挙は難しいと現場が考えて萎縮しているのではないかと感じることがあるが、最高裁判決などを踏まえたうえで、自ら考えて自由に放送してほしい」と述べ、また藤田委員は「放送局には選挙に関する報道と評論の自由があるにもかかわらず、放送局が自縄自縛に陥っていると思うことがある」と指摘した。これに対して民放連は「決定の内容を全加盟社に周知する。決定は、我々に対するお叱りと同時に励ましでもあると受け止め、国民が主役になるために必要な情報をバランスよく伝えていきたい」と述べた。またNHKは「選挙放送に対する委員会の期待を、現場の記者やディレクターにしっかり浸透させることで、公平・公正で視聴者に役立つ報道を続ける」と述べた。

このあと、午後3時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には26社60人が出席した。
初めに川端委員長が意見書について「前半は、制作現場が公平・公正について窮屈に考えているのではないかと思い、公職選挙法と放送法をわかりやすく解説した。また後半は、昨年の選挙の放送に則して意見を述べた」と説明し、「必要なことは質的な公平性で、選挙の争点の指摘や事実関係のチェックなど、国民に必要な情報を提供することは放送局の責務だ」と指摘した。続いて升味委員長代行が「何が公平かを各放送局が自主・自律で決めることは現場にとり大変だと思うが、選挙に行きたいと思うような放送をもっとしてほしい」と述べ、斎藤委員は「最近のジャーナリズムに議題設定機能が欠けているのではないか。プロのジャーナリストとしての取材と見識に基づいて、何が重要な争点かを放送局が提示してほしい」と要望した。渋谷委員は「横並び意識で無難に番組を作るのではなく、自ら汗を流し、何ができて何ができないのかをよく理解したうえで、広大な自由の領域を生かした放送をしてほしい」と、また藤田委員は「政党や候補者が実現できないような公約を述べたり、虚偽の事実で対立候補を批判したりした時に、それが言いっぱなしになって事実関係を検証しないと、選挙の公正が害される」と、それぞれ意見書に込めた考えを述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:選挙の放送量についての議論はしなかったのか?
    A:放送量の検証はしなかったが、安全な放送だけをしようと考えて放送量が減ると、困るのは視聴者だ。視聴者に必要な情報を提供するのはメディアの責務だ。(川端委員長)

  • Q:2014年に自民党が放送局に出した「選挙時期の報道についての要望」や、停波の可能性に言及した総務大臣の発言は、考慮したのか?
    A:我々の役割は具体的な番組に即して意見を述べることだ。そのために必要な事項は考慮するが、番組から離れた抽象的な議論はしない。今回は、あくまでも昨年の二つの選挙をめぐるテレビ放送を踏まえて、この意見書を作った。(川端委員長)

  • Q:放送法の趣旨に照らして、今は放送局のあり方も問われていると思うが?
    A:放送の影響力が大きいから放送法があるのだが、放送法が作られた際には、放送の自由がなかった戦前の結果を繰り返してはならないという痛切な思いがあった。そのため権力が放送内容に介入するのではなく、放送局が自らを律することが一番いいと考え、放送法では、放送局の自主・自律の規範として番組編集準則を置き、各放送局が自律的に番組編集基準を定め、番組審議会がそれを審議するという仕組みを作っている。総務省と我々の見解が異なっているが、番組内容に法的な規制が必要だという動きがある中で、自主・自律がもともとの精神だということを思い起こしてほしい。(川端委員長)

  • Q:メディアが選んだ情報を視聴者が受け取るのではなく、自分から興味のある情報を取りに行くネットとの関係については?
    A:ネットの世界は「ポスト・トゥルース」の領域と言われている。何が真実かを見極める能力があるのはメディアで、その役割はますます重要になる。(川端委員長)

  • Q:意見書にある「挑戦的な番組」とは、どういうものか?
    A:候補者が言っていることを客観的に伝えるだけでは面白くない。一歩批判的に踏み込む姿勢があってもいい。紙に書いた選挙公報と同じものが画面に流れるだけでは、チャレンジ不足だと思う。(升味委員長代行)
    A:例えば、選挙期間中に立候補者をスタジオに呼んで意見を戦わせることを公職選挙法は禁じていない。(藤田委員)

  • Q:具体的にどう改善したらいいのか?
    A:なにか基準を出した方が現場は楽だという考え方はあるが、基準は私たちが決めるのではなく、放送人の職責として自主・自律に基づいて番組を作ってほしいと期待している。(升味委員長代行)
    A:マニフェストを精査して質問することをやっていないのではないか。本当の争点が隠されているのではないかという個人的な印象を持っている。(渋谷委員)

以上

2016年12月6日

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』「双子見極めダービー」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、12月6日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、岸本葉子委員、鈴木嘉一委員、中野剛委員の4人が出席し、当該局のTBSテレビからは取締役(制作担当)ら3人が出席した。
まず川端委員長が「視聴して大変面白い番組だと思っただけに、今回の件は委員会としても非常に残念であった。その原因は、顔相鑑定の専門家として出演してもらったにもかかわらず、最終的には一つの素材のようにしか扱わなかったために、出演者に対する配慮や敬意が欠ける編集をしてしまったことである。その背景には、TBSテレビの局制作の番組でありながら、2つの制作会社が関与するなど非常に複雑で、責任があいまいになりそうな制作体制の中、制作過程全体のつながりがきちんと見られていないことに問題があったのではないか」と述べた。その上で「現在、このような制作体制は非常に広くとられているが、放送局側がどのように制作会社との関係を適切に構築していくのかが、これからの課題であることを十分留意してほしい」と指摘した。
また、中野委員は、「今回の件は、放送前に問題点に気づけるチャンスが何回かあった。その時に、スタッフが自分の意見をしっかり言えばストップがかかったのではないか。スタッフが自分の意見を率直に言えるような環境作りに、放送局側もしっかり取り組んでほしい」と述べた。また、岸本委員は、「とくに若い制作者には、意見書の結論部分だけでなく、それに至る過程についても是非読んでもらい、私たちの問題意識を共有して、番組制作にあたってほしい」と述べた。さらに、鈴木委員は、「委員会では、これまでも、番組で失敗したら、番組で取り返せというメッセージを送ってきた。今後、番組をよくする形で失点を取り戻してほしい」と述べた。
これに対してTBSテレビ側は「委員会の考えを、全社で、特に制作現場の皆に共有させ、ご意見を実のあるものにしていきたい。制作会社の力を借りて番組を制作する形態が多くなったが、局としてのガバナンスが効いていなかった。この制作形態を前提に、TBSとしてどうような体制が組めるのかが、今後の課題だと認識している」と述べた。

このあと、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には20社37人が出席した。
初めに、川端委員長が意見書の概要を紹介し、「委員会は、出演者に無断でレースから脱落したことにしてその姿を消すという、出演者に対する敬意や配慮を著しく欠いた編集を行ったことを放送倫理違反と判断した」と説明した。さらに「番組制作を担当した人たち相互の間でも、重要なことの伝達がなされていなかった。制作現場内の風通しの悪さが問題の背景にあったのではないか」と述べた。その上で「局制作をうたいながら、実際は制作会社が作っているという番組は現在たくさんあるが、局がしっかりその制作過程を管理できる体制を作っていかなければ、これからも同じような問題が起こるのではないか」と指摘した。
中野委員は「疑問を持つスタッフが複数いたにもかかわらず、最後の出演者の姿を消す段階まで、結局声を上げられなかったことが、担当者へのヒアリングで浮かび上がってきた。その道のプロとして番組を放送する以上は、率直に自分の意見を発言し、議論した上できちんと対応策を考えてほしかった」と述べた。岸本委員は「バラエティー番組ということで、長時間の慎重な議論を重ね、この意見書をまとめた。現場の制作者には、この意見書を隅々まで読んで、私たちの問題意識を共有していただきたい」と述べた。また、鈴木委員は、「言うまでもなく、出演者は一個の人格であり、それぞれ社会的な立場を持っている。出演者を単なる素材と見てしまうとそういう人間的な要素が抜け落ちてしまう。今回は、スタッフが出演者を素材視していたところに一番の問題があったのではないか。スタッフの意識が問われたケースだと思う」と述べた。

記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:事実関係の確認だが、TBS側のスタッフは、編集作業で時系列を入れ替えたことや、出演者の姿が消されたことを、問題が発覚するまで知らなかったということなのか?
    A:その通りです。(川端委員長)

  • Q:この番組のスタッフには、以前審議対象となった「ほこ×たて」のスタッフもいたと思うが、意見書で同じ制作スタッフがいたことに言及していないのはなぜか?
    A:同じスタッフがこの事案にも関与していることは当初からわかっていたので、そのことが今回の過ちが起こったことに関連しているかは注意してヒアリングをした。しかし、そういうことではないことがわかったので、制作会社と放送局との関係一般の問題にとどめて言及している。(川端委員長)

  • Q:個人の問題ではなくて、構造の問題ということか?
    A:そうです。(川端委員長)

  • Q:「ほこ×たて」と総合演出が同一人物で、スタッフたちが意見を言いにくい環境があったということだとすると、「ほこ×たて」の事案と共通項があることになるのではないのか?
    A:「ほこ☓たて」の事案の際に、総合演出に意見が言いにくいということが問題になっていたなら関係があることになるが、「ほこ×たて」の時はそうではなかったと理解している。あの事案では、ディレクターが単独で「ない対決を作り上げてしまった」ことなので、問題は違うと思う。(川端委員長)

以上

2015年11月6日

NHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、11月6日午後2時から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会からは、川端和治委員長、升味佐江子委員長代行、中野剛委員、藤田真文委員の4人が出席した。当該局のNHKからは、局内の調査委員会委員長を務めた副会長をはじめ5人が出席した。
まず川端委員長は、「NHKは日本で唯一の公共放送でしかも最も信頼されている。NHKなら正確な報道をしてくれるという視聴者の信頼があるのに、それを裏切ることはメディア全体の信頼度を引き下げることにつながりかねない。番組のねらいは非常に良かったが、肝心の相談場面は事実と相当にかけ離れていた。真実を追求しようとして努力を尽くすことが全くないまま、ブローカーとされる人物の言うことをそのまま垂れ流すというのは、最も問題のある態度ではなかったか」と述べた。そのうえで、「日本を代表する報道番組として、視聴者の信頼を得られる素晴らしい放送を今後も作っていただきたい」と要望した。
続いて藤田委員が、「NHKの調査報告書は『NHKガイドライン』の枠の中にとどまることで、視野を狭くしてしまったのではないか。現場でこの意見書をかみしめて欲しい」と述べた。中野委員は「放送された内容と事実の間に大きな乖離があった。視聴者側に向いた調査報告書にして欲しかった」と述べた。升味委員長代行は、「特に『クローズアップ現代』という番組だけに残念だった。時代の先端に切り込む姿勢を失わないで欲しい」と述べた。
これに対してNHK側出席者は、「今回の決定を真摯に受け止める。取材、制作、放送のあらゆる点で多くの問題があったことを率直に認めざるを得ない。"視聴者のために公共放送がある"という原点に戻り、信頼される放送、番組制作に取り組みたい」と述べた。

このあと、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には27社77人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
初めに川端委員長が「相談場面は事実とかけ離れた情報を視聴者に伝えている。報道番組として許容される範囲を著しく逸脱していた点で非常に問題があり、重大な放送倫理違反があると判断した」と述べた。さらに、「政府側のメディア規制の動きが目立っている状況のなかで、総務省の文書による厳重注意の行政指導と政権与党の事情聴取は、問題があると指摘せざるを得ない」と強調した。そして、「『クローズアップ現代』は、これからも良心的な番組を作り続けて欲しい」と要望した。
続いて藤田委員が、「委員会の調査はNHKの調査報告書への疑問から始まった。この意見書を読んで、自分たちの番組作りはどうだったのかを検証して欲しい」と述べた。中野委員は、「慎重に進めた事実認定の結果、放送された内容と事実の間にある落差が大きすぎると感じた。意見書を基に良い番組作りを進めて欲しい」と述べた。升味委員長代行は、「視聴者に報道が真実かどうかを確かめる術はない。制作現場の皆さんは、視聴者が番組を見て、その内容を信じて社会を見る目をはぐくんでいくことを考えながら、制作にあたって欲しい」と述べた。

記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:「重大な放送倫理違反」と判断したが、「重大な」が付いた理由は?
    A:視聴者が報道番組に寄せる信頼を裏切るレベルの倫理違反、という意味で「重大な」という形容を付けた。(川端委員長)

  • Q:この事案が「やらせ」でなければ何が「やらせ」なのだろうかという疑問がある。委員会では議論にならなかったのか?
    A:この問題を「やらせ」のあるなしということのみで判断するべきではないと考えた。また、「やらせ」の定義の問題にしたくないとも考えた。番組は、事実が全くないのにゼロから作り上げたわけではないので、ねつ造とまでは言えない。多重債務者は信用情報機関のリストに載っている状態であり、ブローカーとされた人物は専門用語を使って手口を詳しく語ることができた。さらに、多重債務者は全く出家のことを考えていない、という状態ではなかった。従って、NHKガイドラインにあるような「事実のねつ造につながる『やらせ』」ではない。ただ、視聴者の一般的な感覚からすると、NHKガイドラインの「やらせ」の概念は狭いと感じるだろう。(川端委員長)

  • Q:自民党内には「BPOはお手盛りではないか」という意見がある。BPOに対する疑念があるのではないか?
    A:BPOの意見に対して放送局が改善策を取る、という「循環」があるようになったが、こうした「循環」が完全な状態ではないのも事実で、放送倫理が問われるケースが少なくなっているわけではいない。ただ、少なくとも放送局はBPOの意見に従って自主的自律的に改善策を講じていて、前には進んでいるのではないか。(川端委員長)

  • Q:野党からのNHKへの事情聴取も今回あったが、与党とどう違うのか?
    A:政権与党であるがゆえに、呼ばれた放送局側は事実上の強制力を感じざるを得ない点が問題である、と意見書で指摘した。(川端委員長)

  • Q:A氏がブローカーであるかどうかについて、委員会はどのように判断したのか?
    A:ブローカーの定義そのものが難しいが、少なくとも「経営が行き詰った寺などを多重債務者に仲介することによって、多額の報酬を得ているといいます」という番組でのナレーションとは違うと判断した。(升味委員長代行)
    A氏は活動拠点を持って、B氏以外の人の出家詐欺を仲介した、という事実は確認できなかった。(藤田委員)

  • Q:出家詐欺が広がっているかどうかの、委員会としての判断は?
    A:広がっていることを確定的に言える材料はなかったが、一方、全然広がっていない、とも言いきれないと判断した。(川端委員長)
    番組に登場する出家の仲介をうたうサイトの存在は確認した。(中野委員)

  • Q:ブローカーではない人物をブローカーとして放送したことについて、委員会での議論はどのようなものだったのか?
    A:いわば、相談場面の丸投げという形で取材がなされたこと自体に大きな問題がある。事後の取材もない。安直な取材だったことに問題を感じた。(升味委員長代行)

以上

2015年3月6日

"全聾の天才作曲家" 5局7番組に関する見解の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、3月6日午後2時から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会からは、川端和治委員長、小町谷育子委員長代行、香山リカ委員、斎藤貴男委員の4人が出席した。当該局からは、TBSテレビ、テレビ新広島、テレビ朝日、NHK、日本テレビのBPO登録代表者など計10人が出席して通知を受けた。
まず川端委員長は、「各局がそろって誤った番組を放送し、メディアに対する視聴者の信頼を損ねた事案だった。制作当時に虚偽を見抜くことは難しかったとして、放送倫理違反があるとまでは言えないと判断したが、メディアがこの程度のことでだまされているようでは、隠された社会悪を暴くことなどできないのではないか、と多くの国民は不安に思っただろう。そういう意味で重大な事案だった」と述べた。そのうえで、「重要なのは、だまされたことがわかった後の対応である。過ちを繰り返さないために、どこにどのような問題があったのか、どうすれば防ぐことができたのか、問題発覚後の自己検証をきちんとやることを考えてほしい」と要望した。
続いて小町谷委員長代行が、「取材期間が長期に及ぶほど、ディレクターが取材相手に共感を持つことは避けられないと感じた。その時に、距離をとってチェックするのがデスクやプロデューサーの役目だ。デスクやプロデューサーは何をするべきだったのか、具体的に検証してほしい」と述べた。香山委員は、「広島の被爆者や東日本大震災の被災者、そして障害を抱える人たちを傷つける結果となってしまった。社会的に弱い立場にある人々に希望や励ましを与えるような番組を今後も作ってほしい」と述べた。また、斎藤委員は、「この程度の話にだまされているようでは、もっと大きな問題に対処できないのではないかと懸念される。安易な物語づくりに走りすぎているのではないか。深く考えて番組を制作してほしい」と述べた。 
これに対して各局の出席者は、「今回の決定を重くそして真摯に受け止め、再発防止に取り組んでいきたい」などと述べた。テレビ新広島は、さらに「広島の平和への願いを全国に伝えたいという思いがこのような結果になって残念だが、萎縮することなく、今後もこのテーマを放送していきたい」と付け加えた。

このあと、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には27社62人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
初めに川端委員長が「メディアが互いに補強し合う形で虚偽の物語を伝え、新垣隆氏が告白するまでそれに全く気がつかなかった。メディアの真実を伝える能力に国民が疑問を持ってしまう、そういう事案ではなかったか」と述べた。そして、委員会が、佐村河内守氏の物語がどこまでが真実でどこからが虚偽なのかを、番組の関係者のほか、佐村河内氏や新垣氏、耳鼻咽喉科の専門医の協力も得ながら調査・検証し、放送の時点で虚偽を見破れなかったのは止むを得なかったという結論に達して、放送倫理違反があるとまでは言えないと判断したことを説明した。しかし、「だまされたのは仕方なかった、で終わっては、これからも同じことが繰り返されるのではないかと危惧される」として、「なぜ気が付かなかったのか、きちんと検証して、その結果を視聴者に公表してほしい」と要望した。
続いて小町谷委員長代行が、「取材相手が虚偽を述べた事案はこれまでにもあったが(「委員会決定」第6号、第12号、第19号)、これほど大がかりな規模でだまされた例はない。佐村河内氏が悪い、だけでは説明がつかない事案だ。これまでと何が違うのか、よく検証してほしい。番組が審理対象にならなかった局も、この決定を参考にしてほしい」と述べた。香山委員は、「社会的に弱い立場の人たちを励ます感動の物語には、それが虚偽だとわかったときに、大きな怒り、失望を与えるというリスクがある。それを教訓として、今後も弱い立場にある人たちに希望を与えるような番組を作り続けてほしい」と述べた。斎藤委員は、「今の時代、巧妙にメディアを利用しようという人たちがいる。そうした人たちにだまされないように、今回のことをぜひ教訓としてもらいたい。安易に感動の物語を求めてしまうと、ものごとを単純化したい誘惑に駆られてしまう。また、個人的には、新垣さん、佐村河内さんの今後のテレビでの扱われ方にも注目していきたい」と述べた。

記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:今回、佐村河内氏や新垣氏に聴き取りをして、2人が開いた記者会見と異なる点や新たにわかった点などはあるか?
    A:2人が曲作りにどうかかわったかについては記者会見にはなく、委員会が初めて明らかにしたと考える。聴覚障害についても、信頼できる専門家の見解を伺って、決定に反映させている。(川端委員長)

  • Q:芸術家の中には、苦難を乗り越えて芸術の域に達した人が多いが、どのように取り上げるべきなのか?
    A:制作者は、そうした人物に迫るには懐に飛び込めと言われているようだが、今回は飛び込んで取り込まれた。そのような場合には、デスクやプロデューサーが醒めた目で冷静に判断するべきだという教訓が、改めて確認された事案だ。今回は、芸術家を取り上げたと言っても、「被爆二世」「全聾」「障害者との交流」といったいわば外側の部分の話が中心になっていた。作曲家としての佐村河内氏を取り上げるなら、作曲という面で徹底的に迫るべきではなかったかと私は思う。そうすれば、おかしな点にも気づくことができたのではないか。(川端委員長)

  • Q:裏取りが十分ではないのに、これで放送倫理違反を認定しないようでは、視聴者からの信頼は回復できないのではないか?
    A:取材時期の早いTBSテレビの『NEWS23』とテレビ新広島は、一定の裏付け取材をしている。母親には断られてできなかったが、小学校時代の同級生には取材した。 
    委員会は、裏は完璧に取らなければならないとまで言うのは間違いだと思っている。そのような要求をすると、メディアの挑戦意欲を削いでしまうおそれがある。裏付けは合理的な範囲で取らなければならないが、それで間違った場合には、視聴者にていねいに説明して、過ちを繰り返さないためにどうすればいいかを考えていくことで、メディアの質は向上するのではないかと思う。(川端委員長)

  • Q:民放4局に比べてNHKへの検証部分が多いように感じるが、NHKに重きを置いた理由は何か?
    A:検証番組を放送したのはNHKだけであり、その点では優れていたが、この検証番組が、「なぜだまされてしまったのか」の説明に終わり、不十分だった。佐村河内氏が作曲したと信じた証拠として挙げた全体構成図について、佐村河内氏はなぜこれを書くことができたのかという疑問が解明されていない点や、佐村河内氏を社会的評価の定まった作曲家と信じた根拠としてあげた米TIME誌が「現代のベートーベン」と評したという事実はない点などを指摘したため、他よりも長くなった。(川端委員長)

  • Q:(斎藤委員に)佐村河内氏と新垣氏のメディアでの扱われ方に注目していきたいとの話だったが、具体的にはどのようなことなのか?
    A:これはあくまでも個人的な関心事項であるが、佐村河内氏が「悪」で、新垣氏が「善」というような簡単な話ではないと思う。今、新垣氏がテレビでバラエティー・タレントのように登場し、活字メディアがそれに疑問を投げかけるような状況があるが、ここにテレビの態度が表れているように思うので、注目していきたい。(斎藤委員)

  • Q:この見解の前と後では、テレビに求められるものの重さが変わってくるように感じたのだが。
    A:前と変わらなければ、同じことでまただまされてしまうだろう。われわれが民主的な判断をするためには、正しい情報が与えられる必要がある。メディアからの情報は正しいものであってほしいと思っている。メディアが簡単にだまされるようでは、われわれは判断を誤ってしまうおそれがある。この問題を突き詰めて、どうすればだまされないのかを考えてほしいというのが委員会の要望だ。(川端委員長)

以上

2015年2月9日

テレビ朝日『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、2月9日午後1時15分から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、鈴木嘉一委員、藤田真文委員の3人が出席し、当該局のテレビ朝日からは常務取締役ら3人が出席した。
まず川端委員長が「『報道ステーション』のこのニュースの問題意識はジャーナリズムとして正当なものだったが、残念なことに2点について、放送倫理違反があると判断した」と指摘したうえで、問題発覚後の訂正・お詫び放送については、高く評価していることを伝えた。鈴木委員は、今回のテレビ朝日の再発防止策が具体的かつ実践的で、評価していると述べるとともに、委員会決定の末尾に書かれている「視聴者の信頼を回復する道は、前に進むことによって開かれる」を、委員会からのメッセージとして受け止めてほしいと要望した。また、藤田委員は「残念だったのは、ミスに関する情報共有のコミュニケーションが、当日の報道局内でうまくいかなかったことだ。ミスがあったら、その情報を共有して、適切・迅速に対処するという環境作りに配慮してほしい」と述べた。
これに対してテレビ朝日側は「意見書の指摘を真摯に受け止め、今後の再発防止に役立てたい」と述べたうえで、今後は、報道局内のすべての番組で、正確で、公平・公正な報道を徹底するように努めていきたいと述べた。
このあと、午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には29社61人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介したうえで、「この放送自体は、国民の最大の関心事のひとつである、原発の安全基準が適切なものかどうかを追究しようという、報道機関としての役割をきちんと果たしたニュースだったと評価している。それだけに、このような会見内容の取り違えや、不用意な編集のような過ちはしてほしくなかったというのが、正直な思いだ」と述べた。
続いて鈴木委員は「テレビ朝日は『報道ステーション』での再発防止策を、報道局内の他の番組に一律に適用するのではなく、番組ごとに検証して対応を検討している。真摯な取り組みとして評価している。」と述べた。
また、藤田委員は「映像の取り違えについて、放送中に気付いたにもかかわらず、情報が共有されずに対応が遅れたことは残念だ。迅速かつ適切な対応をとることが報道番組の信頼性を担保するうえで必要だということを教訓にしてほしい」と述べた。またメディア間の相互批判や、社会からの批判は、メディアの社会的責任を果たすうえで重要だが、批判の言葉が非常に軽く取り扱われている感じがする。今回の事案でも、ネット上で「捏造」という言葉で語られたりしたが、「捏造」と「誤報」「単純ミス」が混同されて、批判の文脈にのせられることがある。この事案は、誤報や単純ミスはあったが、なかったことをあったかのように報道する「捏造」にはあたらないと認識している。メディア相互で検証する場合には、誤りの程度や根拠を明確にしながら、批判すべきだと感じたなどと述べた。
記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:「空白の3時間」によって、放送まで残り3時間の時点で着手したとなっているが、作業時間として3時間は短かすぎて、原因のひとつになったと考えているのか?
    A:その後、多くの人が作業を分担し、ビデオも前半と後半に分けて編集しないと間に合わなかったことなどから考えると、意図した放送をするためには、相当切羽詰まった状況だったと言えるだろう。ただし、この状況でミスしたことが、どうしてもやむを得なかったとは言えないので、放送倫理違反と判断せざるを得なかった。(川端委員長)

  • Q:放送での間違いについて、田中委員長が火山の基準についても似たような発言をしているので、一般論として成り立つのではないかというやり取りがあったと記載されているが、似たような発言は本当にあったのか、また一般論として成り立つという点について、委員会はどう考えたのか?
    A:会見の中で、それに近い発言もなくはないので、活字の場合なら要約したということで成り立つかもしれないが、田中委員長の音生かしで使用した発言は、明らかに違うところなので、どうみても間違いである。一般論として成り立つのではないかということも「苦しい言い訳」だと、委員会は判断した。(鈴木委員)
    A:田中委員長はその後の質疑で、火山の審査基準の見直しの可能性についても回答している。先ほど、ありもしないことを報じた「捏造」ではないと述べたのはその点で、全体的な認識としては誤りではないといえる。しかしVTRで切り取って使用した部分は、火山の基準に関する部分ではなく、間違いなので、放送倫理違反と考えた。(藤田委員)

  • Q:意見書では複合的な要因のように書かれているが、これをやっておけば、今回の問題は避けられたのではないかというような、分岐点やポイントがあったのか?
    A:B記者は放送を見た瞬間に問題に気付いているので、彼にもっときちんとビデオ部分も見てもらっていれば、間違いは避けられたのではないかと思う。(川端委員長)
    A:プロデューサーやニュースデスクが、記者会見ではあまり新しい話は出ないだろうと思って、注意を払っていなかったことが問題だったと思う。B記者や、文字起こしをしたディレクターたちに確認するなどして、会見の内容に注意を払っていれば、火山の問題に質疑が集中したことは把握できただろう。もっと早くチームを立ち上げられれば、VTR編集がこのような追い込みになることはなかったので、分岐点はそこだったかもしれないと思う。(鈴木委員)
    A:文字起こしや編集を別々の人間がおこなうなど、役割分担が複雑なので、意見書では図で説明している。報道番組の現場では、時間に間に合わせるために、必然的に起こることなのかもしれないが、このような過度な分業体制は、チームワークの良さでもあるのだろうが、かえってあだになってしまったといえる。ミスはいつでもおこりうると考えると、いくつかのチェック体制をとりながら、例えば文字起こしを担当し、編集に立ち会うディレクターが一貫して同じパートを受け持つことが必要だったのではないか。そのような現場判断の部分が、ミスのひとつの要因ではなかったかと思う。(藤田委員)

以上

2014年4月1日

フジテレビ『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、4月1日午後2時30分から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、水島久光委員長代行、香山リカ委員、森まゆみ委員の4人が出席し、当該局のフジテレビからは常務取締役編成制作局長ら4人が出席した。
まず川端委員長が「高く評価されていた番組だけに残念だった。編集で張り合わせて『ない対決を、ある』ことにしなければ、すぐれた番組として生き残れたのではないか」と述べたあと、「問題の直接のきっかけはひとりのディレクターの誤った判断だったかもしれないが、それを許した体制があったことを深く心にとどめてほしい」と指摘した。
これに対してフジテレビからは「意見書に書かれたことを深く受け止める。この番組の視聴者との約束は『真剣勝負』であったので、それを破ったのだから番組の打ち切りを決断した。今後は、社長直轄の再発防止委員会の場で、あらゆるジャンルの番組について視聴者との約束をチェックしていく」と述べた。
このあと、午後3時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社50人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。重大な放送倫理違反とした委員会の判断について、川端委員長は「ない対決を、ある」としたことや制作体制の組織的な問題などを指摘したうえで、「制作スタッフの間や、制作スタッフと出演者の間に、番組の基本コンセプトの合意がなかったと思われるのが問題だ」と述べた。
水島委員長代行は「出演者や視聴者との微妙なバランスが崩れて、番組への信頼が一気に失われてしまったことを、制作スタッフの皆さんは理解してほしい」と述べた。香山委員は「視聴者が事実を知った時のショックを原点として、この事案を考えた。裏切られた、楽しみにしていたのに、という視聴者の思いを、この意見書につなげた」と述べた。また、森委員は「家族が好きで見ていた番組だった。編集技術によっていまや何でもできてしまうようだが、制作者は誘惑に負けず、愚直に番組を作り続けてほしい」と述べた。

記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:なかった対決を編集で作ったこの放送は、「審議」ではなく「審理」事案とするのがふさわしいのではないか?
    A:「審理」は、虚偽の疑いのある放送によって視聴者に著しく誤解を与えたことが前提となるが、バラエティー番組は虚構を承知のうえで楽しむものであり、報道番組のように事実と違うから直ちに虚偽放送と言うことは適当ではない。ラジコン側とスナイパー側の対決であるという全体の構造は崩れていない。(川端委員長)
    Q:審議の対象となった「スナイパー」「鷹」「猿」以外にも、フジテレビは問題のある演出があったと、明らかにしていたはずだが?
    A:フジテレビが報告してきた他の放送回もチェックしたが、委員会として見逃すことができないような大きな問題があるとは思われなかった。(川端委員長)
    Q:そもそもこのディレクターの動機は何だったと、委員会は考えているのか?
    A:出演者を大事にする気持ちから、全員を出演させたいとディレクターが考えていたことと、すでにボート部分の収録を終えて、すべてを撮り直す日程的な余裕がなかったことではないかと思う。(水島委員長代行)
    ボートが3連勝しラジコン側が勝利した、という当初の結末を変えてはならないとディレクターが判断していたこともあると思う。(香山委員)

2014年3月5日

日本テレビ『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に
関する意見の通知・公表

委員会決定第19号の通知は、3月5日午後1時から千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、小町谷育子委員長代行の2人が出席し、日本テレビからは取締役専務執行役員ら3人が出席した。
まず川端委員長が「『放送倫理違反があるとまでは言えない』という結論になったが、問題がなかったと言っているわけではないことに注目してほしい」と指摘したうえで、「実質的にまったく裏取りをしないで放送してしまったという点では、放送倫理違反を認めるのが適当ではないかという意見もあった。インターネット詐欺を専門とする弁護士が紹介・同席しての取材であり、取材者に客観的な証拠の確認まで厳密に求めるのは無理があるのでは、ということでこのような結論になったが、もう少しきちんと調べてほしかったという思いはある」と述べた。
小町谷委員長代行は「今回の決定を刑事裁判に例えるなら、結果だけ見ると無罪判決のようだが、無罪にもいろいろあり今回の事案は相当グレーの色が濃いものだと思う。1回だけでなく2回も真実でない放送がされたことにも、ぜひ留意していただきたい」と述べた。
これに対して日本テレビ側は「意見書のご指摘を真摯に受け止める。この意見書を持ち帰り、今後の番組作りに最大限の努力をしていきたい」と述べた。

この後、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定文を公表した。会見には17社37人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が、『スッキリ!!』の2回の放送について「放送倫理違反とまでは言えない」と結論付けた意見の概要を紹介した。今回の事案は、インターネット詐欺被害を専門に扱っている弁護士が「被害者」を紹介し、しかも取材に立ち会っていたことをどう見るかについて審議を重ねてきたと説明したうえで、「被害者と、彼らが語る被害内容の真実性について、弁護士の保証があると見ることができ、それを信じたのも相応の合理的な理由があると考えた。また、インターネット詐欺という新しい問題に取り組んだ意欲を評価し、それを委縮させてはいけないことも考慮した」と述べた。
続いて小町谷代行が「裏付け取材が問題になった事案は今回が6件目なのだが、そのうち4件が日本テレビのものだった。日本テレビがこうした類似事案を再発させないよう取り組んでいくのを、今後も見守りたい」と述べた。
記者との質疑応答のうち、主なものは以下のとおりである。

Q:放送倫理違反とまでは言えないという判断が下されたのは、今回が初めてか?
A:これまでも第1号事案と第9号事案では、部分的に「放送倫理違反は認められない」としているが、審議の対象とした番組全体について放送倫理違反を認めなかったのは、今回が初めてのケースとなる。(小町谷代行)
Q:「放送倫理違反とまでは言えない」という意見にしては、結論の部分の記述が厳しいように感じるのだが?
A:現実に委員会の中では、放送倫理違反を指摘する意見と放送倫理違反とまでは言えないという2つの意見があり、客観的な裏付け取材をほとんど実質的にしていなかったことも指摘することになった。結論は「放送倫理違反とまでは言えない」だが、バンキシャなどの苦い経験がありながら、日本テレビではその教訓が生かされていると言えないので、厳しめの意見も入っている。(川端委員長)
Q:この弁護士が、ニセの被害者を紹介した理由をどう考えるのか?
A:われわれのヒアリングの対象は放送関係者が原則で、この事案で弁護士本人の聴き取りをしなければならない特別の理由もないので、動機について聞いていない。インターネット詐欺の被害回復はきわめて新しい分野で、たくさんの被害者が相談に来るのが前提条件になる。この弁護士はおそらく、テレビで専門家として紹介されることに大きな魅力を感じ、協力しようということになったのではないか。(川端委員長)

2014年2月10日

鹿児島テレビ「他局取材音声の無断使用」に関する意見の
通知・公表

委員会決定第18号の通知は、2月10日午後1時から千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、斎藤貴男委員、升味佐江子委員の3人が出席し、鹿児島テレビからは取締役ら2人が出席した。
まず川端委員長が、この問題についてはすでに総務省から、電波法59条違反で行政処分が出されているが、それが即放送倫理違反になると判断したのではないと指摘し、それを含めて取材・制作の過程が適正でなかったことが、放送倫理違反と判断した理由であると次のように説明した。「国民の知る権利にとって非常に重大な事案で他に方法がないときに、電波を傍受してスクープとして使うことはありうると思う。今回の事案はそうではなく、他局の取材成果を自局の放送に使ってはいけないという常識的なことをディレクターが認識しておらず、離れた場所の映像なのになぜクリアな音声がとれたのかという疑問が社内チェックで問題にされることもなかった」。
これに対して鹿児島テレビ側は「なぜこんなことになったのか、なぜ事前に気づかなかったのか、背後にどんな問題点があったのかを、社をあげて考え続けてきた。視聴者に向き合う仕事をしているという誇りを全員が共有して、再生をはかりたい」と述べた。

この後、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には26社50人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。このなかで川端委員長は、放送倫理に違反すると判断した理由について「電波法59条に違反していると同時に、適正な取材・放送ではなかった」と説明した。そして、総務省の判断を優先して視聴者への説明が遅れたことについても、問題がなかったわけではないと述べた。
続いて斎藤委員が「同じ高校で新体操をしていた女性リポーターがいるのだから、どうして独自の切り口で番組をつくろうとしなかったのか、もったいないと感じた。放送局は、発表などに頼らない独自取材をもっと大切にしてほしい」と述べた。
また升味委員は「番組は、制作者が面白がってつくり、放送を見て周囲とあれこれ言い合うものであってほしい。1年契約を10年も20年も更新してきた派遣スタッフに制作の現場が委ねられ、そのような体制がモチベーションを低下させ番組への関心の希薄化につながったようにもみえた。このような状況が改善されるよう、鹿児島テレビには"放送人養成プロジェクト"を成功させてほしい」と述べた。
記者との質疑応答では「取材クルーが正社員ではなく派遣スタッフだから、放送倫理に対する認識が不足しているとか、モチベーションがあがらないというような書きぶりになっていると感じられる」との質問に対して、川端委員長が「ダイレクトな因果関係として書いたつもりはない。委員会はこれまでの意見書でも、社員だけしか対象にしていない社内研修を改善することなどを要望してきたが、この事案を契機に鹿児島テレビは、処遇の区別をしない新しい取り組みを始めている。クリエーターとしての誇りを持って、いい番組をつくってほしいと期待している」と答えた。
また、聴き取りをした派遣スタッフらから、待遇への不満や仕事への意欲がわかないという声が聞かれたのかと質問されると、斎藤委員が「ディテールを申し上げるのは差し控えるが、私は、派遣のしくみが十分に機能しておらず、仕事に対する執着が薄らいでいるように感じた」と答えた。升味委員は「取材の際に一歩踏み込んだ取材をしてみよう、いい番組にするためにあれこれ議論しようという気持ちになれないということは、聴き取りから伝わってきた」と答えた。

2014年1月8日

2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見の通知・公表
(関西テレビ『スーパーニュースアンカー』およびテレビ熊本『百識王』)

上記委員会決定の通知は、1月8日午後1時から千代田放送会館7階BPO第一会議室で行われた。委員会から川端和冶委員長、水島久光委員長代行、渋谷秀樹委員の3人が出席し、関西テレビからは常務取締役ら3人、テレビ熊本からは報道編成制作局長ら2人が出席した。
まず川端委員長が「委員会として非常に残念だったのは、3年前の決定第9号の事案とほとんど同じ問題点についての事案であったことだ」と述べたうえで、選挙の公平・公正性をゆがめたと認められることから、委員会は2つの番組にそれぞれ放送倫理違反があったと判断したことを通知した。そのうえで「なぜ同じような問題が起こってしまったのかを、皆さんによく考えてもらわないと、選挙のたびにまた繰り返されるのではないかという危機感を委員会はもっている」と指摘し、「選挙の重要性から考えて、テレビ放送がこれをゆがめてはならないという原点を、皆さんにしっかり意識していただいて、今後の制作を進めてほしい」と要望した。
これに対して関西テレビは「今回の事案を深く反省して、意見書も参考にしながら今後の体制を構築していきたい。考え続けることがもっとも重要だという指摘もあるので、委員会の眼差しに応えられるように頑張っていきたい」と述べた。またテレビ熊本は「今回の事案を大変重く受け止めており、この決定を今後の報道・制作に活かしていきたい。この大失態を次に活かすべく全社的に取り組んでいく」と述べた。

この後、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には27社49人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。そのなかで川端委員長は2つの番組をともに放送倫理違反とした委員会の判断について説明したうえで「3年前の委員会決定第9号や昨年4月の委員長コメントを公表しているにもかかわらず、またこのような問題が起きたことがもっとも重要だと委員会は考えた。そこで、今回の意見書では、どうすればいいかという点を2つの提言で示すことにした。他の放送局もこの意見書をよく読んで、参考にしてほしい」と述べた。
続いて渋谷委員が「放送における選挙の公平・公正性は抽象的でわかりにくいので、『こころの秤』という提言を書いた。仮に特定の候補者だけを放送したら、有権者である視聴者の心の中にどのようにゆがみを起こすかを、具体的に想定して考えたらどうだろうかという趣旨だ」と述べた。
また水島委員長代行は「報道局だけでなく、全ての放送にかかわる人たちに、これを機会にもう一度、選挙と放送の関係をしっかり考えてほしいと願って、秤やサッカーの比喩も取り入れて意見書を書いた」と述べ、今回のことがあったからといって、選挙に関する番組制作を避けようとするのではなく、むしろ視聴者に選挙に関する多様で豊富な情報を、いかに提供できるかを考えていってほしいとコメントした。
記者との質疑応答では「BPOとして、再発防止のために、次の国政選挙の前にあらためて注意喚起するような考えはあるか」との質問に対して、川端委員長は「放送倫理検証委員会は、放送された番組のなかの具体的な問題に対して、意見を申し上げるところであり、次回の選挙の前に注意を促す通知を出すような立場にはない。ただ、具体的な事例があればそれを契機に、談話やコメントを出すことはありうるだろう」と答えた。さらに、選挙に関する番組を制作する際には、選挙の公平・公正性を害しないかどうかをよく議論してほしいし、その材料として意見書を是非活用してほしいと述べた。また、関西テレビの同じ番組が、連続して審議の対象になったことについても質問があり、水島委員長代行は「たしかに同じ番組ではあるが、問題の原因は全く別のところにあった。関西テレビに構造的な問題があるとは感じていない」と答えた。

2013年8月2日

関西テレビ『スーパーニュースアンカー』
「インタビュー映像偽装」に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、8月2日午後2時30分から千代田放送会館7階BPO第一会議室で行われた。委員会から川端和冶委員長、小町谷育子委員長代行、水島久光委員長代行、升味佐江子委員の4人が出席し、関西テレビからは常務取締役ら3人が出席した。
まず川端委員長が、問題のインタビュー映像を放送したことと問題発覚後視聴者に伝えない決定をしたことの2点について放送倫理に違反する、と委員会として判断したことを通知した。インタビュー映像の放送については「取材から放送までの期間が相当あったのだから、コミュニケーションがとれた職場であれば、どこかで気づけたのではないか」と述べ、視聴者に伝えない決定については「報道局の幹部が現場の意見を抑える形で逆の判断をしたことは重大な問題ではないか」と指摘した。
これに対して関西テレビ側は「意見書で指摘されたことを真摯に受けとめ、再発防止に全力をあげたい。テレビ報道に対する信頼を損なったことについて視聴者に深くお詫びしたい。視聴者の信頼回復に全力をあげていきたい」と述べた。

この後、午後3時15分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社54人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。そのなかで川端委員長は「誤りを犯しても、それが気楽に言えるような職場環境があれば、このような映像は放送されなかった。なんでも相談できる環境や制度を、意識して用意することがもっとなされないと、再発防止は難しいのではないか」と指摘した。さらに関西テレビで自主的自律的な是正がなされなかったことが重大な問題だったとして、「現場は許されない映像であるという認識を持っていたが、その声を活かす組織的な対応ができていなかったのではないか。関西テレビは6年前の"あるある問題"の深い反省から、いろいろな改革に取り組んだが、あのときの経験が風化してしまったのではないか」と述べた。
続いて升味委員が「今回は関西テレビの問題だが、他の放送局の番組についてもモザイク映像の向こう側には本人がいるのか、という疑問を生じかねない。テレビは視聴者の信頼によって成り立っていることを十分理解して仕事をしてほしい」と述べた。
また小町谷委員長代行は「訂正・お詫び放送をしなかったことを委員会が放送倫理違反と指摘したのは、今回が初めてのこと。その判断ミスをしたのが幹部なので、どのような再発防止策となるのか見守りたい」と述べた。
さらに水島委員長代行は「放送は組織が力を合わせて作るものだと再認識させられた。怠ってはならないことを誰もが理解することが、組織で制作するテレビの場合重要である」と述べた。
記者との質疑応答では「今までBPOの悩みはメッセージが現場の若い人に届いていないことだとおっしゃっていたが、今回は放送局の幹部にも届いていなかったということなのか」との質問に対して、川端委員長は「今回はお詫びするかどうかの判断をトップが間違ったので、それを放送倫理違反と指摘した。現場では正しい意見が数多く出たのに、それが採用されなかったことに正直驚いた」と答えた。また関西弁で記された「はじめに」の狙いについて質問があり、升味委員が「大学で使われるシラバスのようなもので、意見書全体を通して何を問題にしているかが分かるように表現したかった。多くの人に読んでほしいと考えて工夫した」と答えた。