番組と広告の識別が問題視された
TBSテレビ『熱狂マニアさん!』への意見の通知・公表
上記委員会決定の通知は7月11日午後1時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、高田委員長代行、大石委員の3人が、TBSテレビからは専務取締役ら4人が出席した。BPO側から放送倫理違反があったと判断するに至った経緯を説明したあと、TBS側が「BPOの意見を真摯に受け止め、番組と広告の識別について、番組の制作から放送に至る過程において適正な対策を講じ、視聴者の皆さまの信頼回復に努めてまいりたい」などと述べた。
続いて午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、委員会決定を公表した。会見には新聞・テレビなど31社70人が出席した。
はじめに小町谷委員長が、本件放送は番組と広告の識別に関して番組制作者の認識が甘く、視聴者から疑念を持たれる可能性が高い内容が放送されたこと、局内での情報共有が十分でなかったことも手伝ってスポンサーであるX社のCMが番組本編と直結して、あるいは近接して流れたことも重なり、視聴者から疑念を持たれる可能性をさらに高めたことなどが認められた。こうした事態が起きることを事前に防ぐ役割を担う考査も十分にその役割を果たすことができなかった。本件放送は、以上の3点が相乗的に作用して放送されており、総合的に勘案して、委員会は、本件放送は「広告放送はコマーシャルとして放送することによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」と定めている民放連の放送基準第92項および「留意事項」に反しており、放送倫理違反があったと判断したと述べた。
続いて高田委員長代行は、番組と広告の識別を明確にして、視聴者に誤解を与えないことは民間放送にとっての生命線だと私は思う。そこの部分が今回は曖昧になってしまったが、引き続き、より良いバラエティー番組、情報番組を作るために、さらに工夫を重ねていってもらいたいと述べた。
大石委員は、このような番組が数多く、いろいろなチャンネルで放送されている。今回は番組と広告の識別が、今までのある種の惰性があったかもしれないし、警戒感がより薄らいで、一層分かりづらくなってしまった。あるいは、それが混ざり合ったような形になって誤解されるような番組になってしまったと述べた。
このあと、以下のような質疑応答があった。
〇質問・委員会決定の末尾に「視聴者・聴取者にとって番組と広告の境目が曖昧な番組を
放送している局は数多く存在する。各局のこうした『横並び』が、番組と広告の
境目に対する放送局の関心を低下させてきたのではないか」という記述がある。
こうした現状を委員長はどう考えているのか。
回答・番組と広告の境目が曖昧になっている傾向はあるだろう。こうした番組が
たくさんあるのは事実だし、こうした番組を作っても何ら問題ないという意識に
結びつくことが多いのではないかと思う。改めて言うが、委員会決定は対象局
だけに出しているものではなく、放送業界全体に向けて出しているものなので、
皆さまに読んでいただき、自局でこうした問題がないかどうかを改めて振り返っ
ていただければと思う。
〇質問・情報バラエティー番組などでスポンサーを取り上げることは普通にある。
それが駄目だということではなく、作り手の演出の仕方、例えば「一部
離島では別途手数料がかかります」などはスポンサー目線の表現方法であり、
そのような手法に問題があったという理解で間違っていないか。
回答・番組を提供しているスポンサーを番組内で取り上げてはいけないというような
ことを委員会は考えていない。あくまで「留意事項」に即した判断であり、
本件放送は演出の方法や取り上げ方に問題があったと考えている。
記者会見は約50分で終了した。
以上