2011年1月に視聴者から寄せられた意見

2011年1月に視聴者から寄せられた意見

九州霧島では数百年ぶりに新燃岳が爆発噴火するなど不安な年明けとなった。年末年始番組への意見は例年に比べ少なかったが、特番が長時間化したことや制作手法がいつも同じでマンネリ化しているといった批判が多かった。

1月にEメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,421件で、昨年12月と比較して25件増加した。意見のアクセス方法の割合は、Eメール69%、電話27%、FAX2%、手紙ほか2%。
男女別では男性72%、女性24%、不明4%。
世代別では30歳代32%、40歳代24%、20歳代19%、50歳代10%、60歳以上10%、10歳代5%。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。1月の通知数は658件[36社]であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、37件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・ 2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

1月の視聴者意見は1421件と12月より25件の増加だった。
日本海側を中心に大雪による被害が相次いだ。一方、九州霧島では数百年ぶりに新燃岳が爆発噴火するなど不安な年明けとなった。内閣改造、通常国会も始まったが、月末には小沢元代表が強制起訴され政治は波乱含み、鳥インフルエンザの感染も広がった。
年末年始番組への意見は例年に比べ少なかったが、特番が長時間化したことや制作手法がいつも同じでマンネリ化しているといった批判が多かった。
全国各地でタイガーマスクを名乗る人物からランドセルなどを施設の子どもたちに寄付することが伝えられ話題となったが、取材や報道の仕方などに批判意見もあった。サッカーアジアカップは日本代表が優勝したが、準決勝韓国戦の後日の報道で、旭日旗の映像を誤って放送し、視聴者から多くの批判意見があった。
箱根駅伝の中継放送では、解説者のコメントがひとつの大学に偏りすぎていて不公平だとの声が多かった。
バラエティー番組では、食べ放題の元をとるという内容で、子どもたちが食べ散らかし、しつけ、マナーがなっていない、見ていて不愉快だなどの意見が寄せられた。風水師を装った芸人がタレント所蔵の本を勝手に売り飛ばしたと、抗議する意見があった。
ラジオに関する意見は35件、CMに関するものは28件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は182件で、前月より約40件増加した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が47件、次いで報道に関する意見が32件、性的表現に関する意見が20件と続いた。低俗・モラルについては、ドラマ、バラエティー、アニメ、情報番組などを対象に多岐にわたる意見が寄せられた。報道については、昨年12月に成立した東京都の青少年健全育成条例の改正に関連し、石原慎太郎・東京都知事が出演した番組に対して「視聴者に誤解を与える内容だ」などの批判が寄せられた。性的表現については、教師と高校生との関係を描いた1月からのドラマに対して「子どもも見る時間に相応しくない」などの批判が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 「タイガーマスク」が児童施設にランドセルなどの贈り物をしていることが話題になっている。各局ともタイガーマスクの似顔絵を描いてみたり、追いかけてマスクを剥がそうとしたりと、正体を暴こうとする放送が増えてきた。制作者のモラルの無さがうかがえる。なぜ犯人探しみたいなことをするのか。善意でしている人の好意を無視するのか。全く理解できない。倫理観を持った番組作りを心がけてほしい。
  • 「埼玉県の小学校の教師が、理不尽な要求をし続ける保護者を訴えた」というニュースがあった。「正しい教師」対「モンスターペアレンツ」というイメージが浮かぶが、実際のところは双方の言い分を聞かなければ分からない。どうしても訴えた側の言い分のみがクローズアップされがちなので、現時点で伝えることは危険だ。特に、当事者である子どもについては、今後の学校生活に支障が出ることも予想され胸が痛む。他の子どもたちにしても影響があるだろう。今回の訴訟そのものは起こるべくして起きたのかも知れないが、過剰に報道することは反対だ。
  • ある政党の議員ばかりが出演して、自分たちの都合のいい発言を繰り返していた。政府の放漫財政を批判した際は「自分たちにやらせてくれればすぐ出来る」と、言いたい放題だった。進行役も同じ党の議員で、他党はもちろん第三者もいなかった。こんな偏った番組が放送されていいのだろうか。
  • 昼のニュースで、死亡ひき逃げ事件の報道の際、現場でカラスがつつく場面と、どう見ても人の遺体の一部にしか見えない肉片を数十秒間映していた。モザイクも無く、驚いた。被害者や遺族の気持ちを全く考慮しておらず、ひどすぎる。
  • アジアカップ日韓戦で、韓国代表の選手が猿真似をして日本を侮辱したとの報道の際、旭日旗が日本側の応援席にあった映像をパネルで使用していたが、実際にはその映像はサッカーワールドカップ・日本対オランダの試合のものだった。明らかに異なる試合の映像を用いて作為的に事実を捻じ曲げて放送したことは倫理に反するのではないか。
  • 市橋被告が本を出版するというニュースを民放各局で報道していた。市橋被告は殺人犯だ。英雄でもあるまいし、逃亡していた当時の生活の様子までテレビで詳細に取り上げる必要などない。テレビが犯罪者の本の宣伝に利用されているようで腹立たしい。
  • 報道番組や情報番組で、凶悪事件が起こると、犯人の学生時代のアルバム写真や、文集などが、参考資料として取り上げられるが、犯人が事件を起こした現在と、学生時代に何が関係あるのだろうか。単に興味本位で取り沙汰しているようにしか思えない。
  • 最近のテレビは、ちょっとしたことでモザイクを使う。たとえば公園や公道など誰もが通る場所を映す時でさえ、一般人の顔の部分にモザイクをかけることがある。安易にモザイク処理を行うことで映像の持つ意味や価値がどんどん薄れる。”個人情報”という言葉が独り歩きしていると言われるが、モザイク乱用にもそのことが表われている。テレビならではの生き生きとした映像を復活させるために、モザイクの使用を最低限に絞るよう検討してほしい。

【番組全般・その他】

  • 韓国アイドルKARAのゴタゴタや、沢尻エリカについて長々と放送する前に、もっと伝えるべきことがある。くだらない芸能ニュースばかりに時間を割くのはやめてほしい。国会も始まり、報道すべきことはたくさんある。各局横並びの番組内容だが、何のために多数の放送局があるのか。
  • お笑い芸人に風水師を名乗らせ、他人の家のものをただ同然の値段で処分し、本人の許可なくその金額で物を購入するというコーナーがあった。本人は、査定金額に納得していない不愉快な企画である。謝罪するつもりはないと司会者は言ったようだが、これはやらせではないのか。
  • ニュース番組が動画サイトに投稿されており、ローカル局のニュースも全国で見ることができる。一方、著作権上の理由でこれらの動画はすぐ削除される。アニメやドラマであれば後にDVDを発売するなど、その後の売り上げに影響があるので削除することは分かるが、ニュース等の報道番組を削除する理由が分からない。そもそも多くの人に知ってもらいたいこと、考えてほしいことがあるから報道するのではないのか。
  • やらせがひどい。大ウナギを釣るシーンがあったが、仕掛けをして一晩置いておくものだった。三匹釣ったが、三匹ともキレイに針が口に刺さっていた。噛めば口に刺さるが、うなぎは間違いなく針ごとエサを飲み込んでいる。おそらくスタッフが仕込んだものだ。一人が、ザックを作ってきてメンバーにプレゼントしていた。それに、スッポン、ゴミ、ウナギを入れていた。ふつうなら手作りのプレゼントをそんなふうに扱わない。番組が用意した物だろう。視聴者を騙すような内容は、いくらバラエティーでも許せない。
  • 箱根駅伝での解説者のコメントがあまりに一方の大学に偏り過ぎている。母校をつい応援したくなるのだろうが、仮にも解説を任された者が全国放送で行うべきではない。他の大学に対しても大変失礼だ。
  • 最近のドラマは、やたらにインターホン(呼び鈴)の音を多用している。本能で見てしまうことを利用しているのだと思うが、高齢の両親は音が鳴る度に足腰が悪いのに玄関まで見に行く。わざとインターホン音を目立たせるような使い方も多く、迷惑している。

【ラジオ】

  • 息子が夜ラジオを聞いているので何を聞いているのか聞いたら、アダルトゲームを特集する番組で、驚いてすぐにやめさせた。普通に聞けるラジオではなく、地上波デジタル放送のようだが、それにしても内容がひどすぎる。パソコンアダルトゲームの卑猥な内容をそのまま語り、購買意欲をあおっている。せっかくのデジタルをアダルトにしか生かせない放送局に免許を出す意味があるのかと思う。

【CM】

  • CMまたぎは、番組スポンサーへの嫌悪感を覚えるので、手法としては逆効果だ。なぜ制作者はそれに気づかないのか。昨今は番組を録画して視聴する機会が多いが、CMまたぎをするとCMは録画機の機能で完全に飛ばしているので、結果スポンサー情報などは全く情報として入らない。そもそも番組の内容がよければCMまたぎをする必要などない筈だ。
  • 私は持病があるため、食事制限をしている。ダイエットサプリのCMで、「いっぱい食べる君が好き」という歌と共に、思い切り食べる映像が次々と流され、歌で「がまんしないでおかわりしなよ」と言っているが、このCMを見ることが非常に苦痛である。この会社は病気や経済的事情により満足に食べられない人間の気持ちを無視するのか。即刻打ち切りにしてほしい。

【BPOへの意見】

  • 定年退職して、テレビを見る機会が増えた。いわゆるCMまたぎは、視聴者を小馬鹿にしているようで不愉快だ。BPOが先頭に立って、民放各局に自粛を呼びかけることは考えられないだろうか。また、番組の中のCM時間率は決められていると思うが、本当に守られているのか。昼間に再放送されるドラマのCM時間率は夜の放送より多いような気がする。抜き打ち検査をすべきだ。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • キャバクラで働いていた人が教師になるという設定のドラマ。茶髪でタバコを持ち歩く学生をとがめず、庇うのはおかしい。だらしない制服で校長に生意気な口をきく場面では情けなくなった。水商売の人間や不良学生が「正義」で、規則に厳しい校長が「悪」という描き方では、10代の若者への悪影響が心配だ。
  • 最近、男性芸能人に抱きついたり、キスを迫ったりする男性芸能人が増えているように思う。このような行為は見ていて非常に不愉快だ。テレビは面白ければ何をしてもいいというものではない。最近のバラエティーは配慮が欠けているように思う。このままでは、バラエティーどころかテレビそのものが駄目になるような気がする。
  • ギャンブルを題材にしたアニメが放送されていて不愉快だ。製作にパチスロメーカーが加わっており、青少年にパチスロがアニメの延長線上にあるというような認識をされる恐れがある。
  • バラエティー番組だが、浮気に関するテーマの取り扱い方が下品だった。青少年が見る時間帯であることを差し引いたとしても、何を目的に放送しているのか疑問だ。男性の不貞を正当化する反面、30代の女性が独身でいることを蔑視する司会者の発言は、差別的である。

【報道に関する意見】

  • 東京都の青少年健全育成条例の改正についての石原都知事へのインタビューだが、あれほど問題となった事案であるのに、都知事という一方からの意見だけを取り上げることはいかがなものか。賛否両論があり、特に大きな批判もあった問題であるので、両論を紹介するべきではないか。
  • 「伊達直人現象」で騒いでいるが、子どもへのインタビューは非常識だ。児童養護施設の子どもに対して 「こういうプレゼントについてどう思うか?」などとインタビューしていることには驚いた。ましてや顔を映している。本人にはどうしようもない事情で施設に入所しているであろう子どもの気持ちを考えもせず、人権を踏みにじる行為だ。全放送局に猛省を促したい。

【性的表現に関する意見】

  • 堂々と不倫が描かれているドラマ。さらに、その不倫相手は主人公の教え子である女生徒だ。このような内容を、深夜帯ではなく21時という「ゴールデンタイム」で放送することは問題だと思う。このドラマを見て子どもがこのようなことに憧れ、真似でもしたら由々しき事態だ。
  • 深夜帯のアニメだが、近親相姦を主題にしている。性的な目的でわざと下着を見せたり、衣服の上から体に接触するなどのシーンが頻繁に放送されている。内容的には成人マンガと変わらないのではないか。年齢制限のないテレビでの放送としては不適切だと思う。

【いじめに関する意見】

  • バラエティー番組で、司会のタレントが別のタレントを便器に見立て大便をするふりをしていた。人を便器扱いし、それもテレビで放送するなど非常識だ。子どもが見ていて真似をしたらいじめにつながる。好きな番組だけに、改善をお願いしたい。

【言葉に関する意見】

  • 今夜放送のバラエティー番組の宣伝を見た。お笑い芸人が誰かを指差し「殺すぞ」などと怒鳴っているところが流れた。お笑い番組であっても、人を指差してそのような発言をすることは許されない。21時では子どもたちも見ている。不適切な発言は放送しないでほしい。

【暴力・残虐シーンに関する意見】

  • とにかく青少年には見せたくないドラマだ。初回を視聴したが、殺人や児童虐待の描写がすさまじく見ていて非常に不快に感じた。また、「子ども時代に受けた虐待経験が引き金となって成長後に無差別殺人を起こす」というストーリーは刺激がありすぎ、危険だと思った。
  • 深夜アニメだが、怪物が少女の首を食いちぎるシーンが放送された。脚本家は、「これから毎週やらかしていく」などと残酷描写を売り物にするようなことを公言している。深夜とはいえ、テレビで残酷描写を確信犯的に売り物にする番組を放送するのはいかがなものか。
  • ある殺人事件を扱った報道番組で、CGを使用した殺害シーンの映像があった。人物を青と赤で表していたが、子どもも見ている時間帯なので、その必要性自体に疑問を感じた。

【虐待に関する意見】

  • 食べ放題の店で一家が元を取るという企画。子どもが肉以外を食べようとすると、元レスラーの母親が
    「肉だけ食べろ」と頭ごなしに怒鳴りつけていた。子どもに親が偏食を強要する児童虐待ともとれる内容で不愉快だった。親の仕事のために子どもが被害を受けるのは見るに堪えない。

【マナーに関する意見】

  • バラエティー番組のゲームコーナーで、司会者が子どもに「今日は誰を倒したいですか」と尋ねると、お笑い芸人を呼び捨てて名指しする子どもがいた。芸人であっても目上の人間だ。呼び捨ては良くない。番組を見た子どもたちが「目上の人を呼び捨てにしても良い」と勘違いしてしまうではないか。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 「子どもに悪影響」という意見が目立つが、その根拠は何か。私の子ども時代も「そんな番組を見ていると物を粗末にするようになる」などと言われていたが、そうした番組を視聴していた世代が社会人になり、環境問題などを考えるようになっている。裏づけもなく「悪影響がある」と主張する視聴者が多いことに驚く。人の感性は十人十色なのに、自分の感性と違うからと非難の的にすることはおかしい。
  • アニメを子どものものと思い込んでいる親が多く、「子どもが見ると困る」という意見を送る親の無知が目立つ。子どもに見せたくないのなら、子どもと話し合い家庭内でゾーニングをすることも親の義務だ。「不健全だから規制しろ」とすぐ権力に頼る情けない姿勢を子どもは見ている。批判する前に、子どもになぜ駄目なのか、その根拠や正当性を提示し理解させるべきだ。

【CMに関する意見】

  • 教育関連の企業のCMで、机の上で制服を着た学生が踊る場面を見て唖然とした。学校でも家庭でも、机の上には座ったり立ったりするものではないと教えるものだ。合成である、という問題でもないし、まして教育企業のコマーシャルだ。このような企画はおかしい。

第120回 放送と青少年に関する委員会

第120回 – 2011年2月

視聴者意見について

中高生モニターについて

第120回青少年委員会は2月22日に開催され、1月16日から2月14日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に深夜バラエティー1番組について視聴し審議した。また、2月に寄せられた中高生モニター報告の審議及び3月20日に開催する中高生モニター会議の内容・進行について協議した(* 3月11日の震災により中止)。

議事の詳細

日時
2011年2月22日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

TBS『さしこのくせに』(2月8日放送)について

青少年に人気のあるアイドルグループのメンバーが出演するバラエティー番組について「番組がスポンサーの運営する有料サイトに誘導する内容になっており、ファン心理に付け込んだ悪質なやり方」などの批判意見が多数寄せられ、番組を視聴の上審議した。

【委員の主な意見】

  • 番組と広告が渾然としており、その境目が見えないところが気になる。また、結果的に青少年からお金を吸い取るような構図になっている。
  • 番組上、課金表示が無いのは問題だが、あったとしても番組の構成自体が誘導的で放送倫理上許されるだろうか。
  • 子ども向け番組では、キャラクターグッズなどの関連商品を紹介するようなことも多々見られるが、それとは明らかに違う気がする。
  • この企画自体がどこから生まれたのか。また、番組制作とサイトを運営するスポンサーの関連の有無があるのか知りたい。

以上の審議の結果、委員会としては当該番組の制作プロセスなどについて、次回委員会で番組担当者の説明を受け、引き続き審議を行うこととした。

中高生モニターについて

12月~2月は「ドラマ・アニメ番組」のジャンルをテーマに取り上げ、2月は中高生モニターが「見たい、作りたいドラマ・アニメ」の企画書を作ってもらい、30人から報告が届いた。また、その企画書を在京局の現場の担当者に読んでもらい、講評をいただいた。

【モニターの主な意見】

まず、ドラマの企画書を書いてくれたのは14人(男子7人、女子7人)で、15案が寄せられた。ドラマの特徴は、比較的オリジナルな発想の企画が多かったことである。
「僕は映画『ALWAYS三丁目の夕日』や、連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』など、僕たちの年代は知らない時代のドラマを作ってみたいと思います。『三丁目の夕日』を観て感じたことですが、終戦から復興した日本の明るい人々の生活模様を見て、僕が知らない時代なのに感動したからです。つまり、現代を生きている僕たちの世代から少し時代を遡って1970年代を舞台にドラマを作り、こういう世界があったんだということを知りたいということです」。
「僕は、『He is MEMORY』という企画を考えました。詐欺師で指名手配犯(山本太郎)は親のカタキ「M」を探す。FBI捜査官(成宮寛貴)は連続殺人容疑で「M」を探すために来日。私立探偵(草刈正雄)は過去の因縁から「M」を探す。正体不明の殺し屋(竹内力)はターゲット「M」を探す。詐欺師×FBI捜査官×私立探偵×殺し屋=最凶チーム誕生!!「M」を探すために、FBI・公安・ヤクザなどを相手取りド派手な作戦を決行!果たして「M」の正体とは…そこに現れた女「リョウ」…。「M」の記憶がチームに刻まれる…」。
「私は1つ、どうしてもドラマで見たい作品があります。それは、小路幸也さんの『東京バンドワゴン』シリーズです。いつも読みながら、この役はこの俳優さんがやったら面白いだろうな、と勝手にキャスティングをしてしまいます。
ネット上では沢山のファンが「キャスト予想」を繰り広げており、また作者本人も「幼いころにお茶の間に笑いと感動を届けてくれたテレビドラマ」を意識して書いています。
ストーリーも複雑な構成の大家族が下町で小さな事件を解決していくドタバタ人情劇。ストーリーの数がまだ少ないのですが、2時間ドラマにして原作中の時間の流れに忠実に放送してもいいし、書き下ろしのエピソードを書いてもらえば連続ドラマにもできると思います。まだまだ完結しなさそうなので、ひょっとしたら『渡る世間は鬼ばかり』のようなロングシリーズになるかもしれません。
最近は原作物のドラマが増えています。私は大好きな作品をドラマ化するときはファンのイメージをできるだけ裏切らないで欲しいと思います。そこで、テレビ局のサイトの中に”こんなキャスティングでこの原作をドラマ化してほしい!”という意見を自由に書き込める場所があったら、制作者側もどんなドラマが求められているか分かるし、視聴者側は自分の要望を気軽に伝えられ、日本のドラマにもっと関心を持ってくれるような気がします」。
「私が見たいドラマはコメディードラマである。アメリカでヒットした『奥さまは魔女』や『フルハウス』のようなドラマの日本版を見たい。ストーリーは、普通の家族の日常のできごとで親近感を持てるものがいい。登場人物も、家族、友人、近所の人たちという感じ。その中で、家族愛や地域の人たちのつながりなど、人と人とのふれあいを描いて、楽しいドラマにしてほしい。放送時間は、家族団らんの時間の夜8時か9時ごろで、どんな年代の人も、楽しめるものがいい」。
アニメの企画書は15人(男子8人、女子7人)から寄せられた。アニメ企画の特徴は、コミックやゲームソフトなどを原案とする提案が多かったことである。また、『まんが日本昔話』の世界版をという提案、人気シナリオライターの麻枝准(まえだじゅん)さんのオリジナルで「学園ファンタジーもの」を、という提案も寄せられた。
「僕は、『週刊少年ジャンプ』に連載中の大石浩二さんの『いぬまるだしっ』をアニメ化したいです。話の内容は、おませな幼稚園児・いぬまる君が、はちゃめちゃを引き起こすというものです。ストレートで分かりやすいギャグや個性的なキャラクターもいて誰でも楽しく見られるという所は『クレヨンしんちゃん』と似ています。
しかし同じギャグアニメでも、『クレヨンしんちゃん』は野原ファミリーの生活を中心としたアットホーム的な要素が強いですが、いぬまる君の場合、家庭が謎に包まれています。あくまでも、たまこ先生の目線から描かれ幼稚園での出来事に終始しています。これは、幼稚園で起こっているだけで学園ドラマなのかも知れません。だから、同じおませな幼稚園児でも、しんのすけ君のように特異な存在と感じるのではなく、特別だけど奇異じゃないぎりぎりのこれあり!なギャグに共感できます。
放送時間帯は夜7時から30分番組、原作は短編なので1回に2~3話放送します。あまりオリジナルストーリーは入れず、できるだけ原作に忠実なものにしたいです。また、原作の絵はアニメ化しやすい絵だと思うので、原作ファンを失望させないと思います。自虐的なキャラクターが多いが暗くなく、嫌味な事もなく、さらりとした作風の原作がとても面白いので、大人気アニメになると思います。ぜひアニメ化したいです」。
「僕は、ニンテンドーDSで出ている『レイトン教授』シリーズをまとめてアニメ化したいと考えています。『レイトン教授と永遠の歌姫』はアニメ映画化したものの、その後のアニメは作られておらず、私のナゾは深まるので企画しました。タイトルは『レイトン教授とナゾの事件簿』。今も難問を解決しているレイトン教授とルークに、ある日一通の手紙が届く。『7年前の兄を探してください』。そのときから新たな事件が始まる!アニメのほか、ネット、ゲームがリンクする。アニメの最後で”ナゾ解き問題”を出題。それを解くと、マル秘画像がGetできるような感じになったらいいなあと思います」。
また、多くの人気声優を指定した企画も届いた。
「私が作りたい番組は、アニメ『D.Gray-man』(ディー・グレイマン)の2期です。1期終了後に原作ではもっと面白い物語があって引きつけられるような魅力があり、是非それをアニメでやってほしいからです。大げさかもしれませんが、私は今までアニメやマンガに救われてきたことがたくさんあります。そして、多くのアニメやマンガを見てきた私は、戦闘・流血の多いアニメやマンガにある共通点を見つけました。闘っている人たちにはそれぞれ護るものや理由があるのです。それぞれのプライドであったり、大切な人であったり、仲間だったりと、もう一度この物語をテレビで見たいと思います 声優には、中井和哉さん、子安武人さん、杉田智和さん、小野大輔さん、神谷浩史さん、仲村悠一さんほかを起用したい。」。
「私が見たい作りたいアニメは『キングダム ハーツ』です。2002年に野村哲也さんが初クリエイトされたスクウェアエニックスのゲームソフトで、現在は多くのシリーズが制作されており、全世界で600万本以上の大ヒットを成し遂げた人気作品です。放送時間帯は高校生や大人も見ることができる19時か19時半から30分間、作家はもちろんアニメーション監督でもある野村哲也さんにお願いしたいです。声優陣はゲームと同じく、ソラは入野自由さん、リクは宮野真守さん、カイリは内田莉紗さんがいいと思います。そして私の大好きな山寺宏一さんにも引き続きドナルド・ビースト・ジーニー・セバスチャンの声を演じてもらいたいと思います。アニメの主題歌もゲームと同じく、宇多田ヒカルさんに歌ってもらいたいと思います」。
「僕は小さいころ、よくレンタルビデオで『まんが日本昔ばなし』を見ていました。とてもほのぼのとした中にも、”善”と”悪”を教えられたような気がします。そこで、昔ばなし~日本から世界へ~』という題名で、1時間の番組を作るのはどうかな、と思いました。前半の30分は日本の昔話を、そして後半の30分を世界の昔話という構成で、最初にナレーションで、どこの国の、どんな場所の物語か?を3分ぐらいで紹介して物語に入る。例えば、エジプトの物語でしたら、今ニュースで報道されている映像を見せることで、大変なことになってしまっているけれど、こんな良いお話が生まれた国なんだなとか、こんなふうな歴史があるから今があるのかな?と見ている人にちょっとした何かを考える機会を持ってもらうことができる番組にしたいです。ナレーションは、ホンジャマカの石塚英彦さんがいいです」。

【委員の所感】

  • モニターの皆さんが想像力を働かせ、よく形にできたことを評価します。中身の問題は別として、それぞれが作りたいという意欲がよく読み取れました。
  • 1980年代以降、貧しさとか厳しい労働とかいう”原体験”がなくなった時代の中で、いかにリアリティーのある作品を創作するかということが難しくなってきている。ぜひ、想像力をたくましくして、本物を見つけ出していってほしい。
  • コミックやゲームを発想の題材にしている企画の多いことが目立っていた。特にアニメの企画書では、声優さんたちにこだわりを持っていることが分かり、世代間の感性の差が大きいことに気づかされた。
  • 昔、私たちもいくつかのドラマをつなぎ合わせれば、こんなドラマができると空想したものだ。オリジナルな発想を作れというのは難しいこと。まず、模倣からスタートして自分自身の世界を作っていってほしい。
  • 「Mを探せ」という企画は面白い着想だった。ただ、ものを作るには「核」を考え出すことが肝心で、ぜひよい映画見たり、よい本をたくさん読んだりして自身を磨いていってほしい。
  • 今回、一生懸命それぞれの企画書を考えてくれたんだと思います。こうした経験をたくさん積んで、新しいものが作り出せるようになると思います。3月のモニター会議のテーマの準備運動と考え、会議では面白いユニークな意見をどしどし出してください。

2月のテーマ「ドラマ・アニメ番組」企画に対して、在京局の制作現場の方から届いたコメント。

企画1.ドラマ企画提案:「人情系ドラマをもっと。」(栃木・高校2年女子)

【番組の内容】
韓国のドラマは、たいがい話数が多いです。15分、30分、60分、又はそれ以上と、一話あたりの時間はさまざまですが、それほどチャンネルが少ないという訳ではないのに視聴率が取れているようにみえます。話数が多くても視聴者を確保しているのです。理由のひとつに、日本ではおそらくやっていないであろう制作方法があります。
それは、視聴者の声を作品に反映することです。韓国ドラマは、テレビ局に届くクレームなどを参考に脚本を変えて製作したり、毎回違う脚本家が制作したりしているケースが多いそうです。クレームにより、放送の数日前に取り直しをした例もあるとか。ドラマが社会現象になる背景にはそのような苦労もあるのだと思います。
私は今のテレビドラマ界に『渡る世間は鬼ばかり(渡鬼)』のような、ベタなうえ先が読める、だけどついつい見てしまう、というような人情系のドラマがもっとほしいです。この方法を使えば、視聴者のリアルな声をドラマに反映することができるので、より視聴者を楽しませることができると思うし長く続けることもできると思います。
お国柄であって、日本では通用しなかったりできないことかもしれませんが、試してみる価値はあると思ううえ、そんな方法もあったのか、と驚かされたので、提案してみることにしました。

【TBS編成制作局部長の感想】
ホームドラマの大切さをご指摘いただいたモニターレポート、ありがとうございました。
かつて、テレビのドラマは『渡鬼』のようなホームドラマが定番でした。しかし、フジテレビの『月9』に代表される「トレンディードラマ」の登場などによって、「家族」から「恋人同士」へと定番が移って行きました。その背景には、社会全体の「核家族化」があったといえるかもしれません。
しかし、例えばフジテレビの『フリーター、家を買う。』のように、家族の大切さを正面から訴えるドラマがヒットする例も見られるようになりました。『渡鬼』は今回のシリーズで終わりますが、それに代わる「ホームドラマ」の可能性をTBSとしても模索して行きたいと思います。

企画2.『ニュースアニメ』(東京・高校2年男子)

放送時間:日曜、午後5時から30分
作家:渡邊鐘さん
声の出演者:一般公募の素人の人

【番組の内容】
自分が考えた番組は、その週に起きた出来事を、どうしてそのことが起きたのかなど詳しくアニメで放送するという内容。簡単に言えば、NHKの『週刊こどもニュース』のアニメ版。アニメでやることで、ふだんニュースを見ない人たちに、アニメということで興味を持ってもらえる。そのうえ、声優が全員素人なのでこの番組から人気声優を輩出したりもできる。 時間帯が日曜午後5時からなのは、まず、夕方にならないと子ともたちがテレビを見ないからです。また、午後5時からなのは、5時30分からは『笑点』があり、6時からは、『ちびまる子ちゃん』が放送されるので見てしまい、視聴者層が重なってしまうので、日曜5時からにしました。

【テレビ朝日編成制作局アニメ・プロデューサーの感想】
『週刊こどもニュース』的な分かりやすいニュース番組として着眼点はユニークです。ただし、アニメの制作は作画から仕上げ、アフレコ、ダビング、ミックスまで時間がかかります。ニュースの命は、速報性や、”生で”今起こっている真実を正確に伝えることです。今起こっていることをすぐアニメ化することはもちろん、途中経過の事象にも作業時間を考慮すると、放送時間に間に合わなくなります。『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』のように大きなくくりでテーマを選んでじっくり作って、分かりやすく伝える作り方がベストでしょう。

企画3.『壊滅戦隊ヘタレンジャー』(神奈川・中学3年男子)

放送時間:1話10分で3話構成の30分、深夜時間帯
声優:坂口大助さん、宮野真守さん、若本則夫さんほか

【番組の内容】
柳田理科雄氏の『空想科学読本』を読んでいて、僕はアニメ『「壊滅戦隊ヘタレンジャー』という企画を考えました。
舞台は日本。昨今の不景気によって、ヒーローの多くが失業。不況を生き延び、業績も回復しつつあった「壊滅戦隊ヘタレンジャー」…今や人々から忘れられ、ダサがられ、誰からも注目されなくなった戦隊ヒーローに、「消息不明のブルーの代理」として「ヘタレパープル」が入隊するところから物語は始まる。
そのメンバーは、イケメンなのに頓珍漢な言動が周りを混乱させるレッド、お金に関してうるさいイエロー、ケータイが離せないピンク、「世界で最も上手にずっこける男」と自負するグリーン…そんな仲間に振り回されっぱなしのパープルのとんでもない日々が始まろうとしていた。
そんなころ、彼らの敵”悪の帝王”率いる世界で最後となってしまった”大手悪徳組織”…その名も「悪の組織」が、倒れかかった経営を立て直す最終手段として「世界征服」に重い腰を上げた。正義と悪の戦い、しかしときに主観的になりすぎて気づけば善悪が逆転していることも…。正義、悪、第三者、とにかくいろんな人を巻き込んで繰り広げられるドタバタコメディ!
キーポイントは「幼いころ、夢を持って見たヒーロー番組と、物理的・法律的制約との矛盾」です。ただ、そこがリアル過ぎないよう、アニメになっています。…ロボットを用意したら、「大型家電の安全基準に満たない」と使用を禁止されたり、怪人が巨大化したら、食費がかさんで大変なことになったり。
そしてもう1つ「笑わせるところは思いっきり、でも時にはピシッと決める」こと。彼らは怠けているように見えますが、ただ「やる気スイッチ」が入らないだけ。信念は持っていますから、与えられた任務は彼らなりに遂行するし、時には思いがけないことで本領を発揮することもあるのです!…1話あたり10分・3話構成で、放送時間はこのジャンルのゴールデンタイム、深夜がいいです。
声の出演は、メインキャラだけ言うと、パープルには坂口大助さん、レッドには宮野真守さん、悪の帝王には若本則夫さんがいいと思います!

【フジテレビ編成部企画班編成企画プロデューサーの感想】
柳田理科雄氏の『空想科学読本』を元にした企画はよくあがりますが、それをアニメ戦隊企画として考えたアイデアは素晴らしいと思います。基本的には、コメディタッチで展開されるようですが、”××という大型家電の安全基準に満たないため、ロボットが使用禁止”や”怪人が巨大化して、これぐらい食費がかさんだ”など笑いの中に思わず『ヘー』と思ってしまう雑学を入れるのは、決して子どもや一部のオタクだけではなく、企画としての汎用性があるようにも感じられました。

企画4.『青春サクセスストーリー』(新潟・高校2年男子)

放送時間:2時間ドラマ 出演者:さまぁ~ず・大竹一樹ほか

【番組の内容】
「僕は『青春サクセスストーリー』を提案します。主人公は百貨店で働く根暗な入社2年目の男[A]。高校を卒業して親戚のコネで百貨店に就職するが、ある日店は倒産してしまう。店内の後片付けを任されたAは、婦人服売り場で使われていたマネキンに惹かれ、”もったいないから”と自宅へ持ち帰る。そのマネキンは、中学校のころ密かに思いを寄せていた少女[B]にどことなく似ていた。突然、無職になったAは途方に暮れ、引きこもりがちになっていたが、マネキンをBと思い込み、やがて”Bのために”と本格的に就職活動を始める。なんとか小さなスーパーに就職が決まり、一生懸命に働く。稼いだ給料でマネキンに着せる洋服を買ったりする、そんな姿を見かねた両親がマネキンを捨ててしまう。
悲しみに暮れるAに中学校の同窓会の手紙が届く。「ここに行けばBに会えるかもしれない。」そう思い立ち、同窓会に参加することに。同窓会当日、Bも参加していたが、話しかけられないまま同窓会は終了。しかし、Bから突然の告白を受ける。Bは、Aが一生懸命働いていることを知り、そこに惹かれた。身だしなみも綺麗で百貨店で働いていたことから、言葉遣いも丁寧なAをBの両親は惚れこみ、二人は結婚することに。あのマネキンがなければ、ひきこもったままの生活を送っていただろう。あの、マネキンのおかげでAは幸せになった。
「サクセスストーリー」がテーマで、ありきたりなドラマにならないよう工夫しました。「マネキン」は言葉を話しませんが、立っているだけで絶大な効果を発揮します。そのマネキンとサクセスストーリーを組み合わせた、意外性のある作品になると思います。
出演者はジャニーズやAKB48でなければ、現実味があって面白いかと。ただ、さまぁ~ずの大竹一樹さんを見てみたいですね。

【テレビ東京『マジすか学園2』のプロデューサーの感想】
企画を具体的に書いてあるところがすばらしいと思いました。コンセプトを考えることも大切ですが、それをどういう形で展開させるかを考えることはそれ以上に難しいことです。
さらに踏み込んで、マネキンをストーリーに登場させることで何を示したいのかを考えていくともっとブラッシュアップできそうです。
マネキンの登場の仕方や存在に意外性がでてくればくるほど作品も魅力的になるでしょう。思い切って主人公をマネキンにしてもいいかもしれません。

企画総評
【NHKドラマ部チーフ・プロデューサーの感想】
中高生たちの企画で共通しているのは「リアル」「希望」「家族」というキーワードです。何か希望や自信が持てるサクセスストーリーやコメディー、人情ものを家族といっしょに見たい。そんな思いが強く伝わってきました。
驚いたのはそれぞれの提案に、ねらう視聴者ターゲット、放送時間帯などの編成的戦略が明快にプレゼンされてあることでした。テレビのなんたるかを肌身で知りつくしている世代らしいな、と頼もしさを覚えました。

第46回 放送倫理検証委員会

第46回 – 2011年2月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

政治的公平性が問題になった在京テレビ局の討論番組…など

第46回放送倫理検証委員会は2月18日に開催された。
当該局から提出された報告書を公表することで討議を終了したフジテレビの『Mr.サンデー』については、川端委員長の前文を付して、BPOのホームページと「BPO報告」に掲載されたことが報告された。
在京のテレビ局が1月に放送した討論番組は、政治的公平性に疑念があると、視聴者から意見が寄せられた。討議の結果、より詳細な資料を検討する必要があるという結論に至った。当該局に資料の提出を依頼し、継続して討議することにした。
取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であったことから審議入りが決定した毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)については、担当委員が行ったヒアリングの中間報告が行われた。
同じ毎日放送の『イチハチ』(1月12日放送)でニューヨークに不動産を23件持っている女性を紹介したが、視聴者から虚偽ではないかとの指摘があった。当該局は調査不足による誤った放送であったことを認めている。上記2番組と共通する問題なので、この番組を加えて3番組をいっしょに審議することにした。
日本テレビの報道番組『news every.サタデー』(1月8日放送)が最近流行のペットビジネスとして、ペットサロンとペット保険を紹介した。ところが客として登場した2人の女性は、これらの店舗を展開する運営会社の社員であったことが、当該局への視聴者意見から判明した。このような取材が行われた背景や原因を検証するために、審議入りすることにした。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

当該局から提出された社員研修用の詳細な報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、他の放送局でも、調査の方法やあるべき解決策の指針、問題点の事前チェックの参考資料として役立つと思われたので、当該局に公表することを依頼したところ、了解が得られた。
BPOでは、川端委員長の前文を付してBPOのホームページにアップするとともに、2月15日発行の「BPO報告」(NO.93)の3ページ以降にこの報告書を掲載した。(全文はこちら[PDF])
pdf

政治的公平性が問題になった在京テレビ局の討論番組

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている政治討論番組が放送された。政治的公平性から見ておかしいのではないか、との視聴者意見が寄せられた。
当該局によると、番組編成上同様のレギュラー番組が複数あり、その中で政治的公平性を保つようバランスを取っているとの説明であった。委員会はそれを検証するために関係する番組と説明書を提出してもらい、討議を継続することにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』および毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(1)

テレビ東京は、酵素飲料を飲むことにより、ダイエットに成功したと紹介された女性は、その飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。毎日放送は、15億円でホテルを買収しようとする富豪女性が紹介されたが、そのホテルを宣伝するための作り話ではないかと視聴者から指摘があった事案である。
前回の委員会では、この2事案については事実の確認と演出方法に共通する問題点があるので、一括して審議入りすることにした。
主に両番組の制作スタッフを対象にして、2人の担当委員によってヒアリングを実施し、その経緯を委員会に報告した。その報告によると、出演者の選定プロセスが安易であることや情報・事実に対する認識に甘さがあること、また、制作スタッフ間でのコミュニケーション不足などが指摘され、制作体制上、共通する問題点が明らかになってきた。

所有者の確認が不十分だった毎日放送『イチハチ』(2)

世間の常識と隔絶したセレブたちの豪勢な生活ぶりを紹介するスペシャル番組の中で、ニューヨークに23件の不動産を持つという女性を紹介した。ニューヨークの豪華なコンドミニアムをその女性の案内で取材・放送したが、視聴者から「紹介されたコンドミニアムは彼女の所有物件ではない」との情報が当該局に寄せられた。当該局が独自に調査した結果、「女性の所有であることが証明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した。
委員会では、当該局からの報告書を元に討議した結果、制作過程において前回審議入りを決めた同じ番組の「ホテル購入話」と通底する問題があるのではないかとの判断から、テレビ東京と毎日放送の前記2番組とあわせて3つの番組をまとめて審議することにした。

【委員の主な意見】

  • これらの問題の中核は、セレブな出演者の話を鵜呑みにすることにある。事実確認とか取材がおろそかになり、出演者をどう扱うかということが制作の中心になってしまっている。
  • 出演者に嫌われたくないという制作者の気持ちの根底には、この人のお蔭で番組を成立させてもらっている、ネタを貰っているという意識が厳然とあるのではないか。
  • このような企画に登場するセレブな出演者について、制作サイドは芸能人であるという認識を持っているようだ。しかし、視聴者にとっては、一般人の中にこのような人がいると理解するのだから、当然、裏取りはしなければならない。
  • スタジオトークに留まらず、実際にあるリアルな世界に取材に出るという選択をした段階で、テレビと関係ない世界との関わりが出てくる。そこに対してどういう責任を果たすかという認識がない。
  • バラエティー番組であるし、トーク全体が駄法螺話だから、厳密に取材しなくてもよいのではないかという議論が現場にあるのだろうか。
  • この問題は明確に倫理違反とまで言えるかどうか。事実誤認になる可能性はあるけれども、本当に事実誤認であるかどうかは、委員会は立証できない。
  • 放送界が、情報という人参を結局うまく利用されているのではないだろうか。商品として利用されているものもあれば、芸能人になるステップに利用されているものもある。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

『news every.サタデー』(1月8日放送)のコーナー企画で、新しいペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を取り上げた。犬を連れてそれぞれの店を訪れた2人の女性客を取材したが、この女性はペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが、放送後に局に寄せられた視聴者意見で判明した。当該局は2週間後(1月22日)にお詫び放送をして視聴者に謝罪した。
当該局から委員会に提出された報告書によると、取材したディレクターは、2人の女性客が運営会社の社員だと知りながら、時間の制約もあって取材・放送したという。
委員からは、ニュース現場の報道モラルはどうなっているのか、誰もこのミスに気づかなかったのはなぜか、一昨年の「バンキシャ!」問題のあと示された再発防止策は機能しているのだろうか、などの指摘があった。
委員会は、同様の問題が繰り返された背景や原因などを検証するために審議入りすることにした。

【委員の主な意見】

  • 情報バラエティー番組について、事実を正確に伝えることの重要性を議論しているが、正確さが命のニュース番組でも同じような問題が起きてしまった。ニュース現場の劣化、報道モラルの低下を指摘せざるを得ない。
  • ニュースを伝える者としての主体性が全く感じられない。どんな手段や方法であっても、とにかく映像さえ撮れればいいという安易さには憮然たる思いがする。
  • この担当ディレクターは社員ではないということだが、なぜ先輩やデスクに相談をしなかったのだろうか。職場内のコミュニケーションそのものが、日常的に機能していないということなのか。
  • ひとりの判断ミスにだれも気づかず、問題のある放送がそのまま放送されてしまった。軽い話題やトピックスでも、許されることではない。
  • 「バンキシャ!」問題は、情報の裏付けが不十分で、結果的には誤報になったが、取材者にはチャレンジする姿勢が感じられた。その意味では、今回の事案のほうが問題の根は深いともいえる。
  • 「バンキシャ!」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたということだったが、どこまで機能しているのか。大きな代償を払って得たはずの教訓は、本当に生かされているのだろうか。

以上

第170回 放送と人権等権利に関する委員会

第170回 – 2011年2月

「大学病院教授からの訴え」事案の通知・公表の報告

委員会運営上の検討課題 ……など

2月8日に行われた「大学病院教授からの訴え」事案の決定通知と公表の模様について事務局より報告した。
放送人権委員会の委員会運営上の課題について検討した。今月は、事案審理に関連した事務局による資料収集とその取り扱いについて実質的な議論を行った。

議事の詳細

日時
2011年 2 月15 日(火) 午後4時~6時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の通知・公表の報告

2月8日に行われた本事案の決定通知と記者会見での公表の模様について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。また当該局であるテレビ朝日が決定について報じた番組同録DVDを視聴した。
決定通知は8日午後1時30分より行われた。申立人が大学の職務の都合上、上京できなかったため、申立人に対する通知は担当調査役が現地まで出向いて行った。東京では、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で、堀野委員長と起草委員である小山委員、武田委員の3人が出席し、被申立人であるテレビ朝日および朝日放送からは4人が出席して通知が行われた。
堀野委員長は「番組の意義は評価するものの、申立人のインタビュー映像の使い方と民事裁判の経緯についての紹介の仕方に放送倫理上の問題があった。また表現上配慮に欠ける部分があった」とする決定内容を伝えた。ただし人格権の侵害については否定した。
通知を受けて申立人は「人格権の侵害が認められなかった点には不満が残るが、放送倫理上の問題があるとの決定には満足している」と感想を述べた。
一方被申立人は、番組制作担当者が「7か月にわたる丁寧な審理にお礼を申し上げる。しかし、決定は判決の解釈や臨床試験という表現の問題など編集権にまで踏み込んでおり、制作者個人としては受け入れがたい」と述べた。
これに対して堀野委員長は「正確に伝えているかどうかであり編集権の問題ではない。編集権があるから誤ったことを伝えていいということにはならない」と述べた。
この後、午後3時前から千代田放送会館2階ホールで記者会見を行い、決定内容を公表した。テレビ、新聞等から25社・44人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
会見では堀野委員長が決定の概要を説明し、「社会的事象に切り込もうとした番組の意図は高く評価したい。しかし、裁判所の判断を裏付けとするなら判決の紹介は正確であるべきだ。また申立人のインタビューの使い方には取材目的との間にズレがある。これらの点で放送倫理上問題ありとなった」と述べた。
起草主査を務めた小山委員は「申立人が主張していた実名と映像の使用による人格権の侵害については、申立人が準公人という立場にあること、本件報道は過去の出来事を取り上げているが、現在につながる公共性・公益性があること等から人格権の侵害はないと判断した。また申立人に対する直撃取材の問題についても人格権の侵害はなく放送倫理上の問題もないと判断した」と補足した。
武田委員は「医療という専門家集団を監視することもマスメディアの役割であり、やらなければならない仕事だ。しかし、番組の正義を貫くためにはもう少し方法論を考えてほしい」とコメントした。
記者から、予定より会見が遅れたのは反論等があったからかと質問が出た。
堀野委員長は「編集権にまで口を挟んでいるという意見もあった。われわれは、編集権があっても伝えることは正確に伝えるべきだと述べた」と答えた。
直撃取材の問題点について質問が出た。
堀野委員長は「直撃取材そのものには問題はなかったが、映像が局側の説明する意図とは違った使い方をされているところに問題があった」と述べた。
記者からさらに「直撃取材は最後の手段であり、アリバイ的取材に陥る危険性もある。本件では直撃によって教授の言い分については尽くされた取材ができていたのか」と質問が出た。
堀野委員長は「詳しいやり取りは聞いていないが、放送では教授は身のあることを答えていない」と述べた。

委員会運営上の検討課題

放送人権委員会の委員会運営上の課題について検討した。今月は当面の課題として、事務局による資料の収集・調査について実質的な議論を行った。
放送人権委員会は、申立人、被申立人から提出された書面、資料等に基づく審理を原則としているが、一方で審理の参考とするために、委員会の指示に基づき事務局が資料収集をするケースもある。
この日の委員会では、インターネットや情報公開制度を使った資料収集が容易になった現状において、こうした事務局の資料収集や調査のあり方、委員会審理における用い方等について各委員が様々な角度から意見を述べた。
これらを整理したうえ、次回委員会でさらに議論を深めることになった。

1月の苦情概要

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・39件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 2月4日に開かれた第3回BPO事例研究会について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。当日はBPO加盟30社89人が出席し、「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の委員会決定をもとに、犯罪被害者とその遺族に対する取材と放送上の配慮について議論した。また昨年秋刊行された『判断ガイド2010』で、放送倫理上の問題を考える目安として示された「事実の正確性」など5項目についての説明が行なわれた。このあと、最近目立って増えている顔なしインタビューの問題についても意見を交わした。
  • 次回委員会は3月15日(火)に開かれることになった。

以上