2017年度 解決事案

2017年度中に委員長の指示を仰ぎながら、委員会事務局が審理入りする前に申立人と被申立人双方に話し合いを要請し、話し合いの結果解決に至った「仲介・斡旋」のケースが6件あった。

「死後離婚特集に対する申立て」

A局が2017年6月に放送したバラエティー番組で、配偶者の死亡後に相手側との親族関係を解消する「死後離婚」を取り上げ、夫と死別した後、「姻族関係終了届」を役所に提出した女性にインタビュー取材したVTRを放送した。この放送に対し、この女性から、夫の死因や義母との関係等、背景を詳しく説明したにもかかわらず、放送では、「使いたい部分のみを編集し、身勝手な嫁と思わせるような取り上げ方をしていた」と、名誉毀損を訴える申立書を提出した。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、A局側が申立人に面会して「配慮が足りなかった」等と謝罪、それを受けて取下書が提出され、解決した。

(放送2017年6月、解決同年8月)

「年末特番に対する申立て」

B局は2016年12月に放送した年末特番で、この年に県内で発生した「学校をめぐる問題」3件をフリップで示し、「いじめの疑い」がある事例として紹介した。この放送に対し、生徒の母親が特徴から自らの息子を指していることは明らかで、「いじめの疑いのある誤報道は、本人と家族の名誉を侵害した」と申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、双方の代理人が2回にわたり話し合いの場を持った結果、申立人は「これ以上アクションは起こさない」として取下げ書を提出し、解決した。

(放送2016年12月、解決2017年10月)

「在宅医療特集に対する申立て」

C局は2017年2月に放送した報道番組で、自宅で最期を迎えたいという人の間で広がる在宅医療を特集した。この放送に対し、難病で亡くなる直前の夫の痛々しい写真を全く無断で放送されたという女性が、「故人と家族のプライバシーの侵害」と主張する申立書を提出した。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、同局に写真を提供した診療所職員を交えて3者で話し合った結果、診療所職員に「より問題があった」ことが分かったとして、申立書は取り下げられ、解決した。

(放送2017年2月、解決同年10月)

「深夜番組に対する申立て」

D局は2017年11月に放送した深夜バラエティー番組で、街頭で無許可で一般女性の顔を撮影したうえ、リポーターが身体的特徴を予想し、一方的な感想を述べる等の内容を放送した。この放送に対し、番組で取り上げられた女性が「勝手に撮影されたことで、私のプライドや人権が酷く侵害された」と申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、同局取締役らが申立人に会って、「弊社にすべての責任がある」等とする謝罪文を渡し、申立人の要望を聞いたうえで当該番組および翌日の夕方ニュースでお詫びのコメントを放送、さらに同じ内容のお詫び文を3か月間ホームページに掲載した。これを受けて取下げ書が提出され、解決した。

(放送2017年11月、解決2018年2月)

「産廃不法投棄報道への申立て」

E局は2015年11月に放送したローカルニュース番組で、廃棄物処理業者の担当役員が産廃不法投棄の容疑で逮捕されたと放送した。この放送に対し、同役員は不起訴処分となった後、委員会に申立書を提出、「断定的な表現・演出」と自宅マンションから逮捕、連行される映像を放送されたことで、プライバシーを侵害され、また会社が風評被害に苦しみ、申立人および家族が精神的痛手に苦しんでいる」と訴えた。委員会事務局の要請に応じて双方が話し合いに入り、申立人は放送されたニュース映像を確認したいとE局に要求したが、同局は放送法で保存が定められた3か月が過ぎたため、処分してしまったと拒否。その後、テロップ等が入っていない未編集の白素材が残っていたことが判明し、申立人が同社に出向いて視聴したものの、不完全な映像では放送内容が確認できず、納得できなかったとしながらも、会社の判断を優先して取下げ書を提出し、解決した。委員会では、局がニュース映像を処分してしまったとし、その結果未編集の素材しか確認できなかったことに申立人が納得できなかったのは「もっともだ」との意見が複数の委員から出された。

(放送2015年11月、解決2018年3月)

「税金滞納報道に対する申立て」

F局は2016年3月、ローカル情報番組で、地元市長の親族による多額の税金滞納について報道した。この放送に対し、その後退任した元市長が「申立人が市長として滞納を知った時期および滞納額が事実でなく、名誉、信用を大きく侵害され、放送翌月の市長選挙で得票数を激減させた」と委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、双方が代理人弁護士同席の下面談し、同局によると、「真実相当性がある」との点でほぼ一致したため、同局から申立人代理人に申立ての取り下げを求めるファックスを送付したものの回答がなく、その後も同局と事務局からの電話およびファックスによる再三の連絡にも返信がない状態が1年以上続いた。このため、委員会内規に照らし、申立人の明確な意思が確認できない状態が3か月以上続いたと判断、本件申立ては取り下げられたとみなし、委員会に報告した。

(放送2016年3月、解決2018年3月)

第256回放送と人権等権利に関する委員会

第256回 – 2018年3月

沖縄基地反対運動特集事案の通知・公表の報告、命のビザ出生地特集事案の審理…など

沖縄基地反対運動特集事案の「委員会決定」の通知・公表が3月8日に行われ、事務局が概要を報告した。命のビザ出生地特集事案の実質審理に入った。

議事の詳細

日時
2018年3月20日(火)午後4時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員、水野委員

1.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案の「委員会決定」(勧告:人権侵害)の通知・公表が3月8日に行われた。事務局がその概要を報告し、当該局の東京メトロポリタンテレビジョンが放送した決定を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの迫害から逃れた多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の出生地について、CBCテレビが2016年7月12日から2017年6月16日までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。番組では、岐阜県八百津町が千畝の手記などいわゆる「杉原リスト」をユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したのを受けて、千畝が「八百津町で出生」という通説に一部で疑念が生じており、千畝の子供で唯一存命の四男・伸生氏が入手した戸籍謄本には、「武儀郡上有知町」(現在の美濃市)で出生したと表記されていたことや、千畝の手記(下書き原稿)は出生地の記述が書き直されているとして、その筆跡鑑定の結果等を放送した。
この放送に対し、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」およびその理事である杉原千弘氏と杉原まどか氏、平岡洋氏の3氏が委員会に名誉毀損を訴える申立書を提出。番組は「杉原千畝命のビザ」が実体のない怪しい団体であり、また手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらにまどか氏および平岡氏がそれの偽造者であるとの事実を摘示しており、申立人らの社会的評価を低下させたと訴え、番組内で手記はいずれも千畝が書いた真正なものである旨の訂正を読み上げるよう求めた。
これに対し、CBCテレビは委員会に提出した「経緯と見解」書面において、番組は世界記憶遺産登録申請の活動の根幹となる「八百津町で出生」という通説が揺らいでいて、地元メディアの役割としてそれを再検証する必要があると考えて一連の報道を行ったと説明した。手記の書き直しは筆跡鑑定で、千畝とは別人の筆跡である可能性が高いという結果が出たが、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、まどか氏および平岡氏が手記を偽造したという印象を一般の視聴者が抱くとは思えないと主張。したがって、訂正を放送する考えはないと反論した。
前回の委員会で審理入りが決定したのを受けて、今回の委員会から実質審理に入った。CBCテレビから「答弁書」が提出され、双方の主張をまとめた資料を基に事務局が説明した。

3.その他

  • 委員会が2月2日に長野で開催した県単位の意見交換会について事務局が報告、その模様を伝える地元局の番組同録DVDを視聴した。

  • 2018年度「放送人権委員会」活動計画(案)が事務局から提示され、了承された。

  • 委員会が2018年度中に刊行する予定の『判断ガイド 2018』について、事務局から概要を説明した。

  • 坂井眞委員長、中島徹委員の2委員が3月末で任期満了となり、退任することになった。坂井委員長は委員、委員長代行時代を含め3期9年、中島委員は1期3年それぞれ務めた。

  • 4月から委員に就任する廣田智子氏(弁護士)が専務理事から紹介され、経歴等の説明があった。

  • 次回委員会は4月17日に開かれる。

以上

2018年2月2日

長野で県単位意見交換会

放送人権委員会は、2017年度の県単位「意見交換会」を2月2日に長野で開催した。意見交換会には、長野県内の民放5局とNHK長野放送局から47名が参加し、2時間にわたって行われた。意見交換会では、まず濱田純一理事長が「BPOとは何か」をテーマに講演した。その後、最近の委員会決定から「事件報道に対する地方公務員からの申立て」と「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」の決定のポイントを委員から説明し、それを受けて委員と参加者との間で意見を交わした。とくに、フェイスブックにある写真の使用について、各社から軽井沢バス事故での経験が報告されるなど、具体的な意見交換が行われた。
概要は、以下のとおり。

◆ 坂井委員長

本日は、本当にありがとうございます。
まず、ご挨拶に代えて、こういう意見交換会の意義というものを、簡単に述べさせていただきます。
放送人権委員会というのは、申立人がいて、局と申立人の話が、うまく話し合いで解決できないときに申立てを受け付けて、それを委員会で審理をして決定を出すという形式なので、どちらの結論が出ても、誰かは不満を感じることになります。ですが、報道の自由と、名誉、プライバシー、肖像権などの人権、それはどちらかが優越するというものではなくて、報道の自由も大切だけれども、報道する側も報道される側の人権を配慮して報道していかなければならない。そのバランスがどうなのかという問題なので、報道の自由も人権もそのどちらもが大切なのだということを、まず申しあげたいと思います。
放送における表現の自由、報道の自由は、NHKと民放連・民放各局を合わせた放送界全体で、自律して守って行かなければいけないものだと考えています。自律して守っていくということは、放送、報道をするときに、やはり人権に対する配慮もしっかりしていかなければなりません。
私たちは、そういう具体的な事案を扱いますから、委員会がどんな議論をして、どうしてこういう結論になったのかを、放送現場の皆さんと率直に意見交換できることは、すごく大事だと思っています。
さて、委員会決定を読むときのポイントですが、まず、委員会がどういうことを議論したのかということを考えていただくことが大事です。そして考えるときに、結論が厳しいとか厳しくないといった議論ではなくて、どういう事実認定、論理構成をして、こういう結論に至ったのか、そういう視点で読んでいただきたい。そういうところを理解していただくと、決定を今後に生かしていただけるのではないかと思います。もう一点、放送する側にいる方は、ついその立場でものを考えてしまいますが、この放送において、自分が放送された側だったらどう感じるだろうかということを、ぜひ、想像してみていただきたいと思います。
そういう決定文の読み方をしていただき、自分たち放送界で作ったBPOの人権委員会が言っているのだからと、そういうふうな形で生かしていただきたいと思います。

◆ 濱田理事長

BPOというのは、たしかに一つの組織体ではあるのですが、それは同時に社会の仕組み、システムであり、社会を作る一つの考え方、理想的な考え方を示しているのだと思います。
BPOは自主規制機関なのか第三者機関なのか、と聞かれることがよくあります。それについて私は、BPOというのは仕組みです。第三者の支援を得て放送界が自律を行う仕組みなのだと。つまり、もちろん放送界が自律を行うのだけれども、それを応援するのがBPOの役割だと思っています。ですから、何かBPOに任せておけば、この問題は解決できるということではなくて、最後は放送界の皆さま方自身に考えていただかなければいけないことだと思います。
たしかにBPOは、決定を出したり、さまざまな活動をしていますが、そこで目指しているのは、放送界がきちんと自律ができるように手助けをすることで、そのためにBPOではいろいろな仕組みを放送界との間で設けています。決定が出た3か月後に、その決定の趣旨を踏まえてどういう取組みを実際に放送局で行ったのか報告をいただくとか、あるいは決定を踏まえて当該放送局が研修を行う、あるいは今日のような意見交換会を放送局の皆さまと委員との間で行うとか、いろいろな事例を取り上げて一緒に勉強をする、といった取り組みしているわけです。
こうしたさまざまな活動は、決定の付属物ではない、ということを特に強調しておきたいのです。たしかにBPOの活動の中で決定を行うというのは、とても大事な活動です。
しかし、それと同じく、こういう形で意見交換する、さまざまな形の研修を行う、そういうことも合わせてBPOの要となる活動なのです。そういうことを通じて自律というものが最終的に機能するのだと考えています。
その意味では、単に勝った負けたといった勝負事として委員会の判断を読んでいただきたくはない。むしろ、その決定文の中で何を考えるか、何がこれからのジャーナリズムにとって必要なのか、大切なのか、そういうことを考えるメッセージが含まれており、それを読み取っていただきたいと思います。さらに言えば、それぞれ放送に携わっている皆さま方が自分の頭で考えるための材料にしてほしい。それが各委員会の思いです。
時々、長い決定文を読むよりは、何をしたらいけないのか、何をしてよいのか、そういうものをマニュアル化してくれないかというようなことを言われることもありますが、一種の「べからず集」でマニュアル人間を作ることは、ジャーナリズムの在り方としてはあってはならないことだと思います。それは、ジャーナリズムの本質や表現行為の本質に反する。表現をするという行為自体、自分の人格を、その文字あるいは番組に懸けるということだと思います。表現をする者は自分の人格を懸けてこれを伝えようとしているのだという原点を、その思いを、常に忘れないでほしい。それを思い起こすのが、こうした意見交換会などの機会だと受け止めていただけるとうれしいと思います。
こういう意見交換では、委員と放送局の皆さま方との間で結構厳しいやり取りをすることがありますが、それはとても大事なことだと思います。それがうまく機能するために大事なことは、お互いにそれぞれ良心、誠実さ、誇り、あるいは志を持って表現ということを行っているのだと、そういう相互了解があるということが一番大事だと思います。そうであってこそ、いろんな角度から物事を眺めてみよう、ああいう考え方もある、こういう考え方もあるということを柔軟に受け止めて学んでいくことができる。放送局の方々も、委員のほうも、こういうやり取りの中から学んでいくことが少なからずあります。そういうものとして、こういう場が持たれていると思っています。
そういう中で、人権委員会はもちろん、ほかの二つの委員会を見ていて「とても大事にしているな」と思うのは、徹底的に事実というものにこだわっていることです。放送番組というのは、一つの表現であり、表現のやり方にはいろいろな手法がありうると思います。だけども、究極的には事実にこだわって、そのうえで、ものを作っている。その姿勢は、やはり放送というものがジャーナリズムである以上は、一番の原点であります。最近、オルタナティブ・ファクトだとか、ポスト・トゥルースだとか、だんだん事実というものが怪しくなってきているところがありますが、やはり放送、新聞といったマスメディアというものは、徹底的に事実にこだわってほしいと思いますし、委員の方々も、そういうところをしっかり押さえながら判断をされているのだろうと思います。
もう一つ付け加えておきたいのですが、委員会は、法的に許されるか許されないかという単に法的判断だけではなくて、倫理的な判断として、これは如何なものか、あるいはこれは許されるか、といった倫理を巡る判断もします。非常に大雑把に言うと、法も倫理の一部なのですが、倫理というのは法的なルールよりはもっと広い概念ということになります。もし倫理というものを法的な規制と同じように扱うことになると、これは、法的な規制があるのに、さらに倫理々々でどんどん縛られていくのかというだけの話になってしまいます。
法的な規制というのは、それなりに、これまでの歴史の中で練られてきた。そういう意味では自由の逸脱を抑制するためには必要な部分があるのですけれども、倫理というのは、むしろ自分たちが行為する表現の自由の質を高めていく、そういうものだと思います。倫理を巡る議論というのは、ただ判断の結果をリスペクトするというだけではなくて、そういう判断が実際に正しいのかどうか、もう一度、放送界の皆さま方も自分の頭で考えてみる。一方的に受け取るだけではなくて、「自分はこう思う」といった意見も、むしろ積極的に出していただく。そういう中でこそ倫理というものが本当に根付いていくことになるのだと思います。
放送の自由と自律、この調整は、なかなか常に難しい課題ですけれども、常に放送にかかわる方々が自分たちが表現をするという誇りと緊張感を失わないことが、とても大切であり、それが、放送という活動の原点だと思います。そういうことを常に呼び起こしてもらうように、それを応援していくのがBPOの役割だと、私は思っています。
BPOというのは、組織があって活動してればそれでいいというわけではなくて、こういうやり取り、あるいは視聴者とのやり取りを含め、社会の仕組みの中に根付いていくことが大切だと思います。そのようなやり取りをしながら、自由と倫理、あるいは自由と自律の調整を図っていくという社会の在り方は、民主主義社会の一つの在り方として大変素晴らしいと思っています。
ぜひ、私たちもこういう思いを持ってこの意見交換会に臨んでいるということをご理解いただいて、皆さま方からも積極的なご議論をいただければと思っています。

(司会)
今日は、事件報道に対する決定から、さらに焦点を絞って取り上げたいと思います。

◆ 【委員会決定第63号、第64号「事件報道に対する地方公務員からの申立て」】

(市川委員長代行)
では、委員会決定第63号のテレビ熊本のほうから、我々がどこで問題に感じたのかというところを中心にお話しします。この決定は「名誉毀損ではない、しかし放送倫理上の問題はあり」という結論です。それに少数意見がありました。
事案の概要ですが、申立人は、「意識が朦朧とした女性を連れ込み、無理やり服を脱がせた」と、警察発表に色を付けて報道し、自分が認めてもいないことを放送しており、これらのことを「容疑を認めている」と放送することにより、すべてを認めていると誤認させたと主張しています。また、フェイスブックの写真が無断で使用され、職場の内部、自宅の映像まで放送されるという、完全な極悪人のような報道内容で、人権侵害を受けたという主張です。
一方、テレビ熊本は、現職の公務員が起こした準強制猥褻の事案であって、その影響は大きいことから、こういう報道の仕方は問題ないのだと。それから、他の事案同様に取材を重ね、事実のみを報道したとして、人権侵害は全くないという主張でした。
きょうは、事案の取材から放送までの経過を追いながら説明いたします。逮捕当日の10時頃、報道各社にファックスで警察から広報連絡が入ります。その広報連絡には、「準強制猥褻事件被疑者の逮捕、発生日時、発生場所、申立人の実名、年齢、住所、申立人の職業、公務員である」ということと、「身柄措置が午前10時」、「通常逮捕」で、「被害者と逮捕罪名」と「事案の概要」が書いてあります。
その「事案の概要」に書いてあるのは、「被疑者は、上記発生日時、場所において、Aさんが抗拒不能の状態にあるのに乗じ、裸体をデジタルカメラ等で撮影したもの」と、これだけです。
ここで記者が警察の広報担当とどういうやり取りをしたかですが、記者は、「この容疑事実について、事案の概要の容疑を認めているのか?」と聞いたのに対して、広報担当は、「『間違いありません』と認めている」というふうに答えました。
そして、記者は、もう少し事実関係がどうなのか知りたいと、「抗拒不能というのはどういうことなのか?」と聞いています。それに対する答えはひとつながりで、「容疑者が市内で知人であったAさんと一緒に飲酒した後、意識が朦朧としていたAさんをタクシーに乗せて容疑者の自宅に連れ込んだ」、それから「容疑者は意識が朦朧としたAさんの服を脱がせ、写真を撮影した。Aさんは、朝、目が覚めて、裸であることに気付いた」、「1か月ほどした後、Aさんは第三者から知らされて、容疑者が自分の裸の写真のデータを持っていることを知り、警察に相談した」、このように答えています。
質問は、「抗拒不能とはどういうことか?」というものですが、これに対して広報担当者は、直接、それに答えるだけではなくて、それ以前の、マンションの部屋に入るまでの状況、それから、そのあとの状況も説明をしています。
そうだとするときに、記者としてどういうふうに理解するか、この「『容疑を認めている』というのは、何を認めているというふうに理解すればいいのだろうか?」ということが、次に問題になると思います。最初にあった広報連絡の「事案の概要」の部分、その部分に限るのか、それとも副署長が説明した、一連の成り行きと言うか、経緯部分とその後の部分も含めたものか。特に、その「Aさんと一緒に飲酒した後、意識朦朧としていたAさんを自宅に連れ込んだ」、それから「Aさんの服を脱がせて写真を撮影した」という、この後半部分も含めるのかどうか、これらも含めて事実を認めているのかどうかというところが、一つ問題になるわけです。
この点について私どもは、この取材の中で、いくつかの事情を考えるべきだったのでは、というふうに考えました。
一つは、広報担当の副署長は、広報連絡に書いた「事案の概要」について「間違いありません」とは言っているけれども、犯行に至る経緯というところについては明確に認めているというふうに言っているわけでない。「抗拒不能とはどういうことですか」、という質問に対して一連の事実を説明したということに過ぎないわけで、すべてについて認めているということまでは言えないのではないか、明言はしてないのではないかと。
「猥褻目的でAさんを自宅に連れ込んだ」と「それから服を脱がせた」ということは、「事案の概要」には書いてないわけで、抗拒不能の状態で裸であったこととこれらのことは別のことなので、やはり、これらのことまで申立人が認めた趣旨という説明とは言えないのではないかと。
それから、副署長への取材は、10時に逮捕されて2時間弱しか経っていない時点です。事案の概要で示された「抗拒不能の状態云々」という、これは被疑事実に当たるわけですけれども、弁解録取をしたときに、被疑者が果たしてそういった被疑事実に対する認否を超えた部分の犯行の経緯について、正確に警察からの疑いを理解して詳細に供述しているのかも疑問が生じます。
さらに、Aさんが、翌朝には裸であったことを認識していたのですが、1か月後に写真データを知って警察に相談したという、こういった経緯についても考えるべきではないかと。
そして、連れ込んだといったことは、むしろ一般的に言えば撮影する行為以上の違法性が強いことも考えると、広報連絡に書いてある事案の概要の事実とは別の問題として、きちんと捉えるべきではないかというふうに考えたわけです。
それに対して放送が示している事実ですが、abcdefと順に整理して並べていますが、この順に読み上げています。熊本テレビはabcまでのところのあとで「容疑を認めているということです」というふうに言って、さらにefというところで、その事案の概要にない部分の詳しいことを説明しています。
これらの説明の語尾を見ていただくと、「~ということです」というふうになっていて、これは最近の事件報道で「~ということです」という、疑い、容疑事実として説明するという意味では、こういう説明の仕方は決して間違いではないと思います。ただ、同じ語尾を使っている中で、dというところで「容疑を認めているということです」ということが入ってくると、やはり、全体としてaからfまでのすべてを認めているという印象を、どうしても受けざるを得ないのではないかと考えました。ですので、放送で示した事実は、ストーリー全体を真実であろうという印象を与えるのではないかと考えました。
そして、放送倫理上の問題としては、今の説明のように、どの部分までが申立人は事実と認めているのか、そうではない警察の見立てのレベルのことが含まれるかについて疑問を持つべきで、その点を丁寧に吟味して、不明な部分があれば、広報担当者にさらに質問、取材すべきだったのではないか。認めている部分はどこまでなのか、容疑事実の部分なのか、それとも、部屋に連れ込み、その後、服を脱がせたという、詳しい経過部分についてまで認めているのかを、突っ込んで聞くことはできたのではないかと考えました。仮にそこまで無理だったとしても、逮捕直後のこの段階での事案の説明としては、疑いや可能性に留まるということを、表現の中で、より適切にするべきではなかったのかと考えました。
あと、もう一点、薬物使用の疑いについて、「疑いもあると見て容疑者を追及する方針です」という言い方をしています。「疑い」、「追及する方針」というのは、一般的な可能性ということに留まらずに、何らかの嫌疑を掛ける具体的な事情があるのではないかとの印象を与えるという意味で、表現としては不適切ではないかと考えました。それが放送倫理上の二つの問題点です。
放送倫理上の考え方については、詳しく説明しませんが、民放連、新聞協会、それからBPOの決定文でも記載してありますので、報道に際して考えていただければと思います。
次に、肖像権・プライバシー権の侵害ですが、これは申立人が主張していた点で、職場や自宅を詳しく放送された。それから、フェイスブックの写真を何度も放送されたという点です。「公務員である、ということを考えると」、というのがテレビ局の説明でしたが、私どもは、公務員であれば必ずすべての場合にこうした放送の仕方が許されるとは考えていません。その職場や担当部署とか、そういうことを考慮しないで、一律に正当化されるわけではないだろうと思います。やはり、被疑事件、事実の重大性とか、公務員の役職であるとか仕事内容に応じて、放送の適否を判断すべきだと考えています。ただ、本件については、重い法定刑の事案であり、区民課の窓口で一般市民に接触する立場ということも考えて、やむを得なかったのではないかと考えました。
それから、繰り返しの写真使用については、問題ないと結論としては考えていますが、特にフェイスブックの画像は、ネット上では、公開され、誰でも見られるわけですけれども、そのことと、放送ができる、許されるかどうかというのは、別の問題だと考えています。
本件では、特に留意点として、同じフェイスブックの中にこの方の親族の写真も何枚か入っていたため、この放送を見た方がフェイスブックを見に行くと、その親族らの画像もあって、親族の画像も見ることになる、そういうフェイスブックのちょっと特殊な側面、そういった点は留意する必要があるだろうと付言しています。だからやってはいけないということではありませんが、その点での注意が必要だということです。この件では、ご家族からテレビ局に対して指摘があり、テレビ局は、ウェブ上でのニュース映像については、短期間で削除した経過があったと聞いています。
熊本県民テレビの事案について、違う点は、放送の内容について、ある意味で、より明確なところがあり、aからdまでに整理した、事案の概要にあたる事実と、その経過部分も含めて言ったあとで、最後のところで「容疑に対して『間違いありません』と認めています」と言っていて、これを見ると、これはaからdまで言ったことすべて認めているというふうに放送が示して、印象を与えるというところが明らかで、その点で放送倫理上の問題があると考えています。

◆ 【委員会決定第66号「浜名湖切断遺体事件報道」】

(奥委員長代行)
ニュース映像を見てもらいましたが、あれは一つのニュースではなくて、午前中の時間帯から4回流れていって、だんだん詳しくなっています。BPOの人権委員会として、この事案を、なぜ、人権侵害としなかったのかというところに絞って考えてみます。
これは静岡では大変大きな事件で、テレビ静岡もすごく力を入れて報道しました。申立人は後に容疑者として逮捕された人の知人です。事件発覚前に容疑者から軽自動車を譲り受けています。2016年7月14日に警察が申立人宅に赴いて、この軽自動車を押収し、申立人は同日以降数日間にわたって警察の事情聴取を受けている。これは申立人も認めていて、争いのない事実なんですね。
申立人の主張の一つは、たしかに車を押収されたけれども、それは容疑者による別の窃盗事件の証拠品として押収されたもので、浜名湖切断遺体事件とは関係ないというものです。そして、ニュースの中で、関係者とか、関係先とか、関係先の捜索と言う言葉が使われていて、こういう言葉を使われたことによって、申立人がこの事件にかかわったかのように受け取られる。それから、申立人宅の前の私道から撮影して申立人宅とその周辺の映像があって、これは見た人から申立人宅であることが特定されてしまう。この点で名誉毀損であり、プライバシー侵害だという主張です。
これに対して委員会の判断は、外形的な事実としては、証拠品としての軽自動車の押収だったことは間違いない。しかし、テレビ静岡は良く分からないまま、そういう情報があるというので、張っていたら警察車両が行ったので取材した、という状況でした。捜査本部が間違いなく動いていて、大々的に捜査していますし、実際に申立人からも事情聴取をしている。単に車を譲り受けた経緯だけではなくて、容疑者についてもいろいろ聞いている。こうしたことを総合すると、当日の申立人宅での警察の活動が、浜名湖切断遺体事件の捜査の一環だったというふうに判断せざるを得ない。この点で申立人の主張は退けられてしまうわけです。
人権侵害、名誉毀損というのは、申立人の社会的評価が、そのニュースが流れることによって低下したかどうかということです。申立人宅の映像がいろいろ映りましたが、ロングの映像を使っていたり、映った表札を隠したりして、申立人宅を特定するものとは言えない。ただ、当日、捜査陣が来て大騒ぎしていましたから、あの映像を見ると、周辺住民には、この事件だったのかと、申立人宅と特定できた可能性は否定できないと判断しました。
けれども、社会的評価が低下したからと言って、すぐそれで名誉毀損が成立するわけではなく、その事実摘示に公共性、公益目的があるかどうか、さらに真実性、相当性を検討する必要があるわけです。
ここで一番重要なところは、関係先あるいは関係先の捜索という表現が、このニュースの重要部分の真実性を失わせることになったのかどうかということです。これは後で説明するとして、分かりやすいプライバシーのほうから話します。プライバシーとは、他者に知られることを欲しない個人に関する情報や私生活上の事柄です。本人の意思に反してこれをみだりに公開した場合は、プライバシーの侵害に問われます。本件の場合、申立人宅の映像は直ちに申立人宅を特定するものではない。布団とか枕が映っていたと申立人は主張していますが、これも、いわゆる守られるべきプライバシーとは言えないだろうということで、結論的にはプライバシー侵害にはあたらないと判断しました。
そして、名誉毀損のほうですが、関係先とか、関係者とか関係先の捜索という部分について、真実性、相当性の検討することになります。
申立人宅における当時の捜索活動が、浜名湖切断遺体事件の捜査の一環として行われ、申立人が容疑者から譲渡された軽自動車が押収されたことは争いがないわけです。しかし、申立人は、関係者、関係先の捜索という表現があることによって、この事件と全然関係ないのに共犯者だとか、何か事情を知っているとか、そう周りから思われたと言っているわけです。テレビ静岡は、当日の捜査活動の全体像を、取材に入った段階で知っていたわけではないのですね。警察の捜査車両の後について行ったら、そこで捜査活動が行われて、車が押収された。それで、それを特ダネ映像だとして写したということです。
こうした場合、申立人や申立人宅をニュースの中で、どう表現するかということですね。本件放送は関係者とか関係先の捜索という表現を使った。こういう言葉の使い方は、ニュースにおける一般的な用語としては、逸脱とは言えないだろうと委員会は判断しました。そういうことで、申立人に対する名誉毀損は成立しないということになりました。
ただ、やはり放送倫理の観点から考えると、必ずしも、全く問題がないとは言えないだろうという感じがしました。先に述べたように、テレビ静岡は当日の警察の捜査活動の具体的な内容をつかんでいたわけではありません。捜索は3か所ぐらいで行われていました。
事態がだんだん動いてくるときに、どう考えたのかということが焦点で、良く分からないけども、ともかく目前で展開される捜査活動を取材する一環として、申立人宅を撮影したことに問題はないだろう。それに、それなりの配慮をして、ロングの映像を使っているとか、表札が見えないようしている。そういうこともしていて放送倫理上問題があるとまでは言えない。放送倫理というのをどう考えるかというのは、非常に難しい問題があるわけですけれども、委員会の総意として放送倫理上問題があるとまでは言えないだろうということになりました。
しかし、最初のニュースの段階では、「静岡県浜松市の浜名湖で切断された遺体が見つかった事件で、捜査本部は今朝から関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べています」とこう言っています。ここで関係先というのが出てくるわけです。そして、実際ニュースでは、この申立人宅の映像が、この最初のニュースを含めてくり返し使われている。
そして、午後4時台と午後6時台のニュースと遅くなるほど、詳細に、2階の窓の映像も加えている。実際、家の中まで入り込んで捜索が行われたかどうかというのは、分からないところがありましたが、申立人宅でも捜索が行われた、というふうに考えたことには、相当性が認められるだろうと判断しました。
しかし、時間の推移と共に、この申立人宅での捜査活動は車の押収だったことは分かったと思います。他のところでは、実際に家宅捜索もしていて、容疑者を任意同行している。捜査活動の中心はそちらのほうだったことは、推定できたはずだ。そうすると、くり返し申立人宅の映像を流し、なおかつ後になるほど増えてくる状況には問題があるのではないか。そこで、申立人宅の映像の使用はより抑制的であるべきではなかったかということを、決定文に書いたわけです。
この「より抑制的であるべきではなかったか」ということを、実際はどうしたらいいのかと、いろいろなところで聞かれます。これは、皆さんがそれぞれ考えなければいけないのですけれども、抑制的であるべきであったということは言えるだろうと思っているわけです。ですから、放送倫理上問題あるとまでは言えないけども、放送倫理上こういうことを考えてほしい、という決定になりました。

◆ 【意見交換】

(司会)
ここから意見交換に入りたいと思います。3つの事案をご紹介しました。事前のアンケートでは、決定文を読んだがよく分からないといった意見も散見されましたが、いかがでしょう。

(C放送局)
3事案とも、全国どこでも起こりうることで、私も大変考えさせられました。地方公務員事案では、申立ては二つの局に対して行われていますが、他の放送局はどんな伝え方をしたのか。申立人からすると、この2局が他局と比べて大きく違った点や、納得いかない点があったのでしょうか。

(坂井委員長)
その点は、よく出てくる疑問ですが、申立てとして残ったのはこの2件ということです。この事件が報道されたとき、申立人は逮捕されていて直接見ていません。出てきてからご覧になって、最初は各局全部問題にしようと思ったかもしれませんが、見た結果、申立てとして残ったのがこの2局だということです。なぜこの2局なのかという点は、本人からは直接聞いていないので、答えることはできません。ただ、これは私の個人的な想像ですが、フェイスブックの映像の使い方だとか、写真をどんな大きさで何回使うか、みたいなことが、きっと関係しているのではないかと想像しています。

(A放送局)
同じ事案で、我々からすると、やや不本意な、と言うか、こういう原稿の書き方は、私たちでもするだろうなと思う点が2点あります。一つは、そのニュース価値という点が、あまり今回検討されていないのですが、なぜ裸の女性が部屋にいたのかということが、ニュースにとって一番大事な観点になります。つまり、もし女性が自発的、もしくは了解のもとで部屋に入って、服を脱いだということであれば、それは全く事件の本質が変わってくるわけです。そうしたニュース価値の重みの中で、当然、デスクにしても、記者にしても、そこをまず聞かなければいけないと考えたと思います。
もう一つのポイントは、実際の取材の中での警察との関係性というところだと思います。基本的に副署長というのはスポークスマンですから、僕たちの感覚としては、嘘は言わない、知らないことは知らないと言うけれども、嘘は言わないという前提に立っています。そこが崩れてしまうと、報道が成り立ちませんので、そういう中で、最も記者が知りたいニュースの価値の部分、つまり、なぜそこで抗拒不能な形でいたのかということを聞いたとき、認めていますという中の、さらに、感覚としては、ちょっとサービス的な発言でもあるかと思うのですが、具体的な内容を、経緯、内容を話したということであれば、我々としては、ニュースの重みと価値判断と、それから通常の取材の中で、これは信じるに足りると判断せざるをえない。たしかに、もう1回、どこまで事実ですかと聞けばいいと言えば、そうですが、ただ、日常の取材活動の中での判断として、ここが放送倫理上問題と言われると、ちょっと厳しいなという感触を持っています。
特に、決定の中にあったように、連れ込む、または服を脱がすことがより悪質だとしても、これはまさに相対の問題なので、極めて立証の難しい、また取材も性犯罪になるので難しい問題になります。そういう中で、出てきた最終的な表現、まとめ方をもって、この決定というのは少し厳しいというか、放送としてはなかなか難しいなという感想を持っております。

(坂井委員長)
それは、まさにポイントで、現場の立場からおっしゃるのは、よく理解できますが、その裏返しをぜひ申しあげておきたいと思います。
単に仲良く一緒に家に行って、裸になった姿を写真に撮っただけであったら、全然、話が変わるという問題意識を持っておられる。それはまさに話が違ってくるわけです。同じころ、東京でも酔っ払っている女性を無理やり家に連れさらって、裸にして強姦するような事件が何度かありました。それとは、性質が全然違いますよね。裸になっている女性の写真を単に撮ったというのと、拉致して連れ帰って裸にして強姦してしまう、というようなこととは、全然違う。裏を返せばそういう話だと思うんですね。
そこを当然聞きたくなるのは、分かります。その問題意識を前提に、このとき、どういう容疑事実で、どういう取材結果だったのか、ということを冷静に考えていただければありがたいというのが、委員会決定の立場です。そういう大変な事件であれば、そもそもこのような容疑事実にはならない。拉致して連れ帰って、無理やり服を脱がせて、裸の写真を撮ったのであれば、連れ帰れば逮捕監禁かもしれないし、服を脱がせたとすれば、それが、むしろ準強制わいせつになるので、写真を撮ったところで準強制わいせつにならない。なのに、このときの容疑事実は、極めてイレギュラーな容疑事実になっている。
経験のある方でしたら分かると思います。この容疑事実は、何か普通ではないと。ぜひ、そこに突っ込んでいただきたい。そして、これ、二つの番組でちょっとニュアンス違いますよね。二つ目のほうは割とまとめて認めていますと言っている。一つ目は、分けて書いていたけど、後ろのほうも結局まとめて認めているみたいな、ちょっとニュアンス違いますが、いずれにしても取材の現場では、容疑事実は写真を撮ったというだけです。裸になっている写真を撮った。黙って撮った。そして、認めているのですか、認めていますっていう、テレビ熊本はそういう取材結果だったと思います。広報連絡。副署長にですね。その後に、抗拒不能とは、どういう意味ですかと。容疑事実は抗拒不能で裸でいる女性の写真を撮った。その抗拒不能とは、何でしょうかと聞いたら、副署長が、容疑事実でないことまでいろいろ話し出したというときに、あれ、容疑事実と違うのではないか、もしそうだとしたら、全然違う話になるのではないかということに、気づいてもいいのではないかというのが、決定の立場なのです。
たとえば、サツ回り1年目の人がすぐそういうこと気づくかというと、必ずしもそうでないかもしれないけれども、報道された側の立場からすると、意識不明の女性を家に連れ帰って、服をはぎ取って、写真撮ったという報道になるのか、家にいて裸でいる女性を、ただ写真を撮ったという報道をされるかは、報道される側にとってのダメージはすごく違うだろうと思います。でも、そうは言っても、我々の決定は、だから名誉毀損だとは言っていなくて、相当性はあるとしています。
そこが接点だと思いますが、副署長の説明は曖昧で、質問と答えが食い違っているし、ここは信じてもしかたがないから、名誉毀損ではない。決定としては、これは相当性ありだと。でも、その部分は、冷静に考えたら、放送倫理上の問題があると言えるのではないか、というのが決定の立場です。少数意見を唱えた委員もいましたが、決定全体としてはそういう結論になったということです。

(司会)
この決定に少数意見を書かれた委員から付け加えることはありますか。

(奥委員長代行)
事件があって、簡単なことしか書いていない広報連絡を持って副署長のところに行き、抗拒不能とはどういうことですか、どうして抗拒不能になったのですかとか、いろいろ聞いて、副署長がそれなりに一貫した説明をすれば、それを第一報として書くのは、事件報道として逸脱しているとは言えないだろうということで、少数意見を書きました。

(坂井委員長)
ちょっと付け加えますが、この事件は結局、示談が成立して起訴猶予になっているため、本当は何が起きたのか、我々も分かりません。相手の女性から話を聞いているわけでもないし、警察に取材したわけでもない。
でも、結局刑事事件にならなかったというときに、最初の報道で、ダメージの大きい報道をして、そういう報道をされた人間が受けるダメージというのはどうなのかということは、個人的にはやっぱり考えるべきだと思っています。

(市川委員長代行)
あと、警察との関係についてどう考えるのかは、なかなか難しいことです。ここまで取材で引き出すことができて、全部話してもらえたということは、取材として必要なことだと思います。とくに、この事案の概要だけ放送しても、何が何だか分からないですから。ただ、その一方で、やはり「容疑を認めている」と言うことの与える印象というのはすごく強くて、グレーなものが真っ黒という印象を、非常に強く与えやすい。そうであるとすれば、「容疑を認めている」という言葉を使う以上は、認めているのはここまでで、それ以外の部分はあくまでも疑いのレベルだということは、きちっと書きわけてほしいと思います。

【フェイスブック写真の使用について】
(司会)
この決定は、フェイスブックの使い方について付言されているところもポイントです。フェイスブックの使い方がクローズアップされたのは、軽井沢でのバス事故ごろからではないでしょうか。ぜひ、皆さんの体験や評価についてご紹介いただけないでしょうか。

(A放送局)
この事故は広く報道されましたが、被害者は長野県の方ではなくて、関東など、県外の方が多いという特殊なケースでした。長野県の方が亡くなられていたら、当然ご自宅を訪れて、フェイスブックに載っている写真でも、本人確認を取って、かつ複数、大体3人ぐらい、それぞれ違う方、家族や友だちとか、どれぐらい近いか判断しながら、放送に出していいかどうか判断するのですけれども、このケースでは、東京のキー局が、関東の方で家族含めて取材をする中で、フェイスブックの写真を、家族や親族に確認を取って、間違いないと確認が取れて放送しました。軽井沢の事故の場合は、被害者のお写真ですので、決定で指摘のあったように、家族の方から使ってくれるなとか、逆にフェイスブックの写真でなくこちらの写真を使って下さいというケースもありました。
フェイスブックの写真自体を使うことに対しては、一般に広く公開されていると言えば公開されているものである以上、確認を取ったうえで使うと。ただ、指摘の中であったように、やっぱりフェイスブックをたどっていけば友だちにも行きついてしまうし、本当の家族が出てきてしまう。素性がすべて分かってしまうというところは、普段取材していく中で、あるいは放送する際に検討していかなければいけない要素かなと思います。

(B放送局)
この事故についてのフェイスブックの使用については、私どもも東京キー局のほうで対応したので、私どもが直接ということはありませんでした。ただ、軽井沢の事故でなく、フェイスブックを扱うことについては、まず本人確認、私どもも異なる3人の人から間違いないという確認を得て、家族、またはそうした関係の方に了解を得られるところについては、そうした了解を得ながら使用するという形で対応しています。
フェイスブックの扱いについては、今までの卒業写真などの扱いと同じ考え方でやっています。ただ、通常私たちが関係先を回って手に入れる、いわゆる卒業写真といったものとは違って、フェイスブックは一気に広がってしまうので、手に入れるという取材等での重きは同じですけれども、拡散というのか、広がるものということについては、これまでの写真とはちょっと違うので、扱いについては、正直なところ、まだ、それほど詰めて話してはいませんが、これまでの写真とフェイスブックの違いというものについて、考えていかなければいけないのかなと思っています。

(C放送局)
この事故では、いっぺんに多くの方が犠牲になられたことが一つポイントで、うちも東京のキー局の方針に基づいて使用しています。実際には、引用する場合は、フェイスブックより、といったクレジットを必ずつけることとか、今回のバス事故で言えば、実際にフェイスブックからたどっていって、ご親族や、ご遺族など、関係者の方たちに許諾を取ったりしました。遺族によっては、そこから提供を受けたりすることもありましたが、基本的な扱いに関してはキー局に準ずる形で使っています。でも、実際に使う場合には、昨今のSNSの繁栄の中で、人権を侵害しないかどうか、プライバシーは大丈夫かなど、しっかり留意しなければいけないと考えています。

(D放送局)
うちも系列の基準の下、フェイスブックとかツイッターとか、どこから引用したのかをきちんと出す。
さらに、フェイスブックにある写真とかですと、それを3人以上に本人確認を取ったうえで使います。その後は、ご家族やご友人から画像なり写真なりを入手して、二次的には、そういう手間をかけて入手したものを使っていくようになっています。
バス事故に関しては、大きな事故でしたので弊社ではなくキー局ですべて動画の入手とか写真の入手を行いました。ですので、私どもはかかわっていません。ただ、後からフェイスブックの写真とかを使わないでほしいといったご遺族やご家族から要望があり、使用禁止になった素材とかもあります。
地方公務員事案で、容疑者のフェイスブックの写真からご家族の写真に行き着くというような話がありましたが、でも、今は、名前検索をするだけでも、かなりの動画が上がってきます。どこどこの公務員、とインターネット検索すると、別にフェイスブックを知っているか知らないかにかかわらず、名前だけでも行きつくような状況にあると思います。その点、どう考えたらよいでしょうか。

(E放送局)
当時弊社では、複数の被害者の方の写真をフェイスブックから引用して、放送に使いました。その際は、フェイスブックより、というクレジットをつけて使用しました。その都度その都度判断していることですが、あれだけの大規模な事故で、非常に関心も高く、亡くなられた方々のお人柄とか、ご本人がどのような人生を送られたかということを伝えるうえで、写真は不可欠だという判断で、著作権法第41条にある事件報道を根拠に、その範囲内で使用すると判断しました。その判断基準は、軽井沢の事故の前も後も、社内では特に変わっていません。とは言え、その都度その都度見極めて、ということでやっています。でも、なるべく直接ご遺族なりご友人の方々から、違うお写真などを提供いただく努力をして、極力、そういったものに替えて放送しています。

(司会)
きょうは、FM局も一社参加されています。もちろん映像は使っていません。

(市川委員長代行)
親族の写真に紐付けされていったということについて、委員会としては、だから直ちにフェイスブックの写真を使ってはだめだと考えているわけではありません。ただ、フェイスブックやインターネット上で検索可能な情報だとすれば、そういうところに行きつきやすい性格があるわけですから、使うときには、この点も気をつけたほうがいいのではないかということです。そこは、その場その場でまだ検討をしなければいけない、結論を出せていないところだと、率直に思っています。
もう一方で、地方公務員事案でのフェイスブックの写真というのは、カメラを構えている様子の写真などを、しかも、それをかなり大きくして使っています。やはり、そういう出し方は、普通の卒業写真の顔を一部くり抜いて使うのとは、与えるニュアンスというのが違うと感じます。その点は、曽我部委員が少数意見で触れておられます。

(曽我部委員)
今、名前で検索すれば出てくるではないか、というご指摘がありましたが、「フェイスブックより」というクレジットがついているので、フェイスブックを見てみようという感じになって、クレジットがあることによって、より好奇心をそそる面もあるのではないかと思います。
それから、フェイスブックの写真を使われることの抵抗感というのは、おそらく本来の文脈と違う形で使われるということへの抵抗感というのがあるのだと思います。卒業アルバムの写真などは、割と文脈のない写真ですので、どこに出てもそれほど違和感はありませんが、フェイスブックの写真というのは日常生活の場面を切り取って載せているものですから、それを全く違う事件報道の写真として使われることは、本人としては非常に違和感が強いのではないかと思います。公開はしているものですが、心理的な抵抗感があるのは、その辺りが一つ原因ではないかと感じています。
地方公務員事案で少数意見を書いて言及したのは、ちょっと違う話で、フェイスブック写真の使い方と言うよりは、要するに、申立人は、区役所の窓口の、住民票の写しの発行などをしている人なのですね。それが、あのような形で大きく報道をされてしまうことの、ニュース価値の判断について、個人的にはそこまでやる必要があるのかなと感じました。
自宅マンションの前からの記者リポートや、職場窓口を映した局もありました。当時、市役所職員の不祥事が続いていたという文脈もあるやに聞いていますけれども、幹部公務員が職務上の不祥事を起こしたというのであればともかく、若手の窓口の職員が起こしたプライベートの事件という中で、あそこまでやる必要があるのかなというのを書いたのが私の少数意見です。

(坂井委員長)
このフェイスブックの写真の利用と肖像権の関係という問題は、まだ議論が固まっていません。去年の弁護士会と民放連との会合で話したことをご紹介します。
まず、皆さんのいう同一性確認、裏取りというか、本当に本人なのかということは、当然やっていただかなければいけないという前提で、そのうえで、そのまま使っていいのかという議論があります。そのとき、フェイスブックに関して言うと、あそこに出す写真というのは、公開しますという了解を取っているので、良さそうに見えますが、曽我部委員が言ったように、使われ方の文脈が違うときに、本当に全部それでOKと言えるのだろうかという話なのです。
フェイスブックで、自己紹介で出すことについては、公開されますよと言う前提なのだけど、たとえばこの事案で言うと、破廉恥な行為をやった被疑者として、テレビで何回も大写しをされることについての承諾まで、本当にあるのだろうか。軽井沢バス事故の件で言うと、事故の被害者として報道されるときに使われることを本当に承諾していたのだろうかということ。それから、最近の事件で言うと、座間の事件、あれは被害者といっても、バス事故よりももう少しデリケートな、センシティブな問題が関わってくる。
自殺とか、性被害があったのでないかということがあるので、そういうときに写真をどう使えるのかという議論もかかわってきます。
結局これは、肖像権の問題と報道の自由、表現の自由とのバランスの問題です。天秤の話で、たとえば座間の事件で、あまりひどい報道をされるから、遺族の方から、もう写真は絶対使わないでくれというような貼り紙をされました。そもそも遺族に本人に関する肖像権はないわけですが、族が嫌だ、本人が嫌だと言ったら、報道は全部出してはいけないことになるのだろうか。本当は、それはバランスからして、どうなのかという議論をしなくてはいけない。報道の側からも、これまで出してきたからいいだろうと言うのではなくて、報道の被害者であっても了解なく使える場合があるのではないかといった議論をするべきなのだと思います。
だから、同一性確認の問題と、報道として使っていいかという問題は、別の議論のはずなのですね。それが、座間の事件で言えばデリケートな部分があり、バス事故の場合は割と出して下さって結構だ、名無しじゃないんだうちの子は、と言いやすい状況があります。逆に、この事例で言うと、被疑者ですから、あまり出してほしくないという話が出てくる。
たとえば、熱海の散骨場の事案では、放送局が本人の了解なく、約束を破って使いましたが、その場合でも肖像権侵害を認めてない。というのは、一定の場合に本人の了解なく使っても、肖像権侵害にならない場合がある、ということなのです。放送メディアにとって、映像は、ある意味命なわけで、肖像権が万能だと言ってしまうと、ニュース映像の顔は全部ぼかさなければいけないというような話になって、三宅前委員長時代に、それはまずくないですか、という委員長談話を発表しています。
そういうところにかかわるので、報道する側から、やはりこういう場合は報道のために肖像を使えるのではないかという領域がある、ということを言わないと、だんだん窮屈になって、同一性確認だけでなくて、OKしてもらわないと使えないことになる可能性もあって、それは怖いことだと私は思います。情報流通という意味では、使っていい場合もあるし、もちろん座間の事件で、心なき報道があって、そういうのが良いと言うわけではありません。しかし、事件報道として必要な場合もあるというときに、肖像権と表現の自由、報道の自由のバランスをどう取るのか、報道する側から積極的な議論をしないと、本当に窮屈になって、難しい時代が来ると思っています。
それから、さっきE放送局がおっしゃった、著作権の問題で、報道引用の話と肖像権侵害の問題は別の議論なので、著作権法の議論だけではカバーできないだろうなという気がしています。また別の理屈を立てなければいけないのではないかと思います。

(C放送局)
地方公務員の事案に戻りますが、最終的には不起訴だったと思いますが、そういう刑事処分のことは、委員会決定の心証に影響するものでしょうか。それとも、あくまでも申立て事実のみで、審理されていて心証的なものは排除されているのでしょうか。
(坂井委員長)
刑事処分がどうなったかで、結論が変わるという話ではなくて、書いてあるとおり、事実はどうだったのかということと、名誉毀損で言うと、社会的評価の低下があったのかどうか、公共性、公益目的、真実性、相当性というところで議論をしていきます。逆に言うと、起訴前の刑事事件ですから、公共性はまず認められて、ストレートニュースですので、公益目的を否定することは、およそ考えられないので、結局、真実性、相当性の問題はどうかとうところだけでやっているので、後で不起訴になったからとかで、結論が変わるという話ではないと思っています。

(二関委員)
補足ですけれど、不起訴になる場合も、起訴猶予の場合とか、罪となる事実がないから不起訴にする場合など、いろいろあって白黒まさに良く分からない場合があります。検察官も、特にその理由とかを明らかにしないケースが結構多いと思います。その意味で、本当に不起訴になったからどうだということを、委員会が、そこから何か引き出せない場合のほうが、むしろ多い面がありますので、その事実が仮に委員会の審理より前に明らかになっていたとしても、影響を受けることは基本的にないということになると思います。

(D放送局)
私、報道でないので、一視聴者としての率直感想です。起訴になった起訴にならないが、この判断基準にならないというのは、ちょっと、びっくりしました。この程度、と言ってはいけませんが、もっと大きな重罪を犯している犯罪者が、顔写真が入手できたできないによって、顔写真が載る載らないという案件もあると思います。つまり、たまたまこの件では、フェイスブックをやっていて、我々放送側にしてみれば、写真を入手しやすいシチュエーションがあった。しかし、それが結果的に起訴されなかったにもかかわらず、ここまでの顔写真が出てしまったことが、あまり問題視されていないというのは、どうなのだろうかと疑問に感じました。

(坂井委員長)
そこは、論点が食い違っているように感じます。ご質問は、名誉毀損になるかどうか、放送倫理上問題があるかどうかの結論が、起訴されたかどうかで変わるのか、というものでしたから、それで判断するのではありませんという答えになりました。
今、おっしゃったのは、もっと根っこのことで、被疑事実は何だったのかという話なんですね。被疑事実は抗拒不能の女性を、意識不明の女性を家へ連れ帰って、服をはぎ取って写真を撮った、ではなくて、意識不明の女性の裸の写真を撮ったというもので、しかも起訴猶予になった、ないしは不起訴になったということで、我々が分かるのは、検察も立件しなかったということ。ただ、このケースは、嫌疑がなかったのか、猶予なのか分かりませんけど、示談が成立したということは、何らかの問題があったようにも思われる。でも真相は分からない。そういう前提で、放送局が何をしなければいけないかというと、放送した内容の真実性の立証、相当性の立証をしなければいけないという話になるのです。
だから、結果として検察が起訴したかどうかということは、我々には判断する理由はなくて、名誉毀損を判断するには、真実性、相当性の立証であり、本件のように検察も起訴しなかったものについて、放送局は何をもってそれを立証するのかという議論になるわけです。
その後の放送倫理の問題としては、じゃあ被疑事実について、結果的に起訴に至らなかった事案について、放送のときの話はそれは分からない前提ですから。そうすると、起訴されるかどうか分からない段階で、こういう容疑事実について、こんな写真の使い方をするのか、こんな放送をするのか、という話になってしまう。放送したときの話というのは、まだ逮捕されているだけですから、その後起訴されるか不起訴になるかということは、その放送時点での判断には出て来ようがない。真実性立証絡みでは後付けで判断されるので、出てきますけど、放送時点では、検察も真実性立証をしていないという話になりますよね。容疑事実をはみ出した部分については、真実立証をしないと判断したのかもしれない。そういうレベルの話をしているので、ちょっと論点が食い違っているような気がします。

(D放送局)
分かりました。私見ですけども、今、この社会では、防犯カメラとか非常に映像も入手しやすい、フェイスブックも然りだと思いますが、そういう映像の入手しやすさ云々で、映像が取れたからと、私ども放送局が使いやすくなっていることは事実だと思います。
この事案でも、容疑者の社会復帰という一面もある中で、刑が確定してない時点で、入手しやすかった映像が、テレビ的に使いやすいからと言って、出してしまったことに対して、自戒も込めて、注意をしていかなければいけないと感じます。

(坂井委員長)
この事件の被疑事実で、この段階で、こういう写真の使い方をするのですかという、それは、おっしゃるとおりだと思います。

■ 長野放送(NBS)を訪問、視察

放送人権委員会は、長野での意見交換会に先立ち、10名の委員全員が長野放送を訪問し、外山衆司社長らと懇談したほか、社内を視察した。
懇談では外山社長から「人権や放送倫理は重要な問題であり、長野県での意見交換会開催は、そのことをもう一度意識し、倫理意識を向上させる契機となる」と挨拶があった。その後、船木正也常務、矢澤弘取締役報道局長らから、ローカル局の現状や仕事の状況などの説明を受け、委員からも「取材における在京局との違いは」、「ネットとローカル番組の比率、自社制作の割合は」、「スタッフ数の増減や記者クラブの状況は」といった質問などが出された。さらに、委員らは夕方の『NBSみんなのニュース』の放送現場や、報道局内での作業などを視察した。
委員会ではこれまで、在京局への視察を行っているが、委員会としてローカル局を訪問、視察するのは、これが初めて。地方局に対する申立てが増える傾向にある中、今回の視察は、ローカル局の現状に対する委員らの理解を深める貴重な機会となった。

以上

2018年1月25日

沖縄地区の各放送局と意見交換会

沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、1月25日、那覇市内で開催された。沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会は今回が初めてである。意見交換会には、NHK沖縄放送局、琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ、ラジオ沖縄、FM沖縄の6局から24人が出席した。委員会からは、川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員が出席、BPOの濱田純一理事長が同席した。
意見交換会の冒頭、濱田理事長が開会のあいさつに立ち、「BPOはNHKと日本民間放送連盟とが組織した第三者機関であるが、放送局に物言いや注文をつけるだけの組織ではない。放送局の皆さんと一緒になって放送の自由を守り、放送が国民にとってより良いサービスを提供できることを目指す組織である。各委員会との意見交換もその一環であり、参加した委員は放送現場の生の声を聞いて糧にする。また、放送局の皆さんは、委員の意見を現場に持ち帰って放送の自主·自律の実現に反映させてほしい」と呼びかけた。そして、会場内のテレビモニターで、BPOのガイダンスDVDを視聴した。
意見交換会では、2017年12月14日に委員会が公表した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見書(決定第27号)と、基地問題に関連してインターネット空間で出回っている沖縄ヘイトやデマ情報に対し、地元の放送局がどう向き合っているのか、テーマをこの2点に絞り込んで意見が交わされた。
まず、『ニュース女子』の意見書について、川端委員長から意見書の論理構成が丁寧に説明されたうえで、委員会決定のポイントについて解説が行われた。川端委員長は、当該番組は、放送局が制作に関与していない、いわゆる「持ち込み番組」であるため、委員会が意見を通知した相手は、放送したTOKYO MXという放送局であり、制作した制作会社は、審議の対象とならない。しかし、当該番組が伝えた内容に放送倫理上の問題があったということになるのかどうかを検討しなければ、放送した結果、放送局に放送倫理違反があったのかどうか、つまり放送局の考査が適正だったかどうか問うことができない。そこで、制作会社にも直接ヒアリングを申し込んだが、「TOKYO MXにすべてお任せしている」として、直接のヒアリングはかなわなかった。当該放送局を経由して、文書で質問し文書で回答をもらった。委員会では、当該放送局へのヒアリングの内容も含め提出された回答書や資料について慎重に検討したが、いくつかの疑問点が残ったため、委員会として独自に調査をする必要があると判断して、担当委員が沖縄で現地調査を行った。
この結果、委員会は、意見書で述べたとおり当該番組には複数の放送倫理上の問題が含まれていたにもかかわらず、TOKYO MXは適正な考査を行うことなく放送した点において、重大な放送倫理違反があったと判断した。本件は、委員会が「持ち込み番組」に対する放送局の考査が適正であったかどうかを検証した初めてのケースである、などと詳細に解説した。
沖縄の各放送局の出席者からは、「沖縄では放送されておらずネットで見たが、番組は緊迫感もなく突っ込んで取材していないことがすぐに分かる」「沖縄に対する悪意を感じる。裏付けのないものを安易に制作しているなと思った」「なぜ、このような内容の番組が放送されたのだろうと思う。営業の力が大きく、考査のハードルが下がったのだろうか」など、インターネットで視聴した感想が述べられた。
現地調査の説明や印象を求められた中野・藤田両委員は、名護警察署周辺や二見杉田トンネル前など、当該番組のロケ地で確認を行った際の写真を紹介しながら、距離感を肌で感じることができ、当該番組の取材班は比較的狭い範囲を効率よく回ったと感じた、ラジオDJの聴き取りで新たな事実も分かり、調査は有意義だったと話した。
中野委員は、「委員会が行った調査は、誰にでも簡単にできる調査である。例えば、救急車の走行が妨害されたのかどうかは消防で確認できること。しかし、TOKYO MXは、報告書を提出するにあたって確認した形跡がない。委員会が行った今回の調査を放送局自身がやれないことはない」と述べ、事後対応で、当該放送局に自主・自律の精神が欠けているのではないかと厳しく指摘した。藤田委員は、「審議入りした直後に、TOKYO MXは、放送法及び放送基準に沿った制作内容であったなどと、内容について問題がなかったとする自社の見解を発表した。当該放送局が、審議中の事案についてこのような見解を発表したのは初めての経験だ。しかも、TOKYO MXのこの判断は誤っている」と指摘した。岸本委員は、「当該番組を、視聴者の視点で視聴した。第一印象は、視聴者を甘く見ているのではないかと思った。スタジオトークの内容も、そこまで言えるのだろうかと疑問のほうが大きかった。取材による裏付けを欠かさず、自ら発信する情報の質を常に検証してほしい。インターネット上の情報との向き合い方という課題にも真摯に取り組んでほしい」と、視聴者の信頼を裏切らないよう各放送局に不断の努力を呼びかけた。
また、出席者から考査について、「考査は"最後の砦"という委員会の意見は理解できるが、放送局の考査の過程で、すべて事実関係の裏取りが必要なのか。今後、持ち込み番組に対してBPOはどんな対応を考えているのか」という質問があった。これに対して川端委員長は、「すべての内容について裏取りを要求するのは非現実的である。番組の主張の骨格をなす部分について、本当にそんなことがあったのだろうかと、誰もが疑問に思うポイントを考査の過程でチェックすべきと考えている。合理的な裏付けがあるのかどうかについて、放送局がきっちりと調べて放送している限り、放送倫理違反にはならない」また、「今回のように放送局が制作に全く関与していない"持ち込み番組"については、委員会と放送局との合意書でも、制作会社に調査への協力義務を負わせていない。必要ならば、日本民間放送連盟などで議論されることと思うが、当委員会が意見を述べる立場にはない」と、委員会の基本的な姿勢も合わせて説明した。
休憩をはさんで、地元の放送局の間で最近増加していると感じている沖縄ヘイトや基地問題をめぐるデマ情報をテーマに意見交換を行った。
米軍ヘリから小学校や保育園に部品が落下した問題をめぐり、学校や教育委員会に誹謗中傷の電話が相次いだことについて、各局とも複雑な県民感情を慮って放送するか否か迷ったり悩んだりしていることが具体的に報告された。
NHK沖縄放送局は、「ネットに書き込みが多数あり一過性のニュースにしてはいけないと思い報道のタイミングをみていた。発生から1週間後に基地の歴史的背景も含めて全国ニュースで放送した」 琉球放送は、「小学校に偏見の電話がかかり始め、ニュースにするかどうか迷っていたが数十件にも達した。これは沖縄ヘイトを如実に示している。県民だけでなく県外の人にも考える材料を提供すべきと判断し、積極的に報道した」 沖縄テレビは、「基地の歴史を紐解きながら丁寧に報道しなければならないと考えた。基地問題に詳しいフリーのジャーナリストのインタビューを交えて伝えた」 ラジオ沖縄とFM沖縄のラジオ局からも、「現場にアナウンサーを派遣してリポートした」「基地の歴史的背景を伝えた」と報告があった。一方、琉球朝日放送からは、「小学校に沖縄ヘイトの電話がかかってきていることは承知していたが、詳細を伝えれば伝えるほど地元の県民は悲しむのではないかと考え、あえて報道しなかった」などと報告があった。
この他、高速道路で起きた玉突き事故に絡んで、米軍兵士が日本人を救助したのに沖縄のマスコミはこの美談を無視して報じないと一部全国紙が非難した件について、参加局から議論したいと提案があり、当時のニュース映像を視聴した。「継続取材をしているが、そんな事実は確認できない」「県警も否定している」「県外の視聴者に対して、いかに情報発信していくべきか悩んでいる」など現場の報告や意見が相次いだ。川端委員長は、「この件は、ネットニュースを読んで知ったが、いま地元の報告を聞いて事実関係が異なることに驚いた。継続取材で調べた結果、事実関係が違うのであれば冷静に伝えていくことが大切なのではないかと思う。放送できなくともホームページの活用など発信できる手段は工夫すれば、いろいろあると思う」と応じた。また、他の委員からも、「追加取材で得た事実は報じてほしい」「地元各社の取材で事実が一つに収れんされたのならば、一つにまとまって事実を伝えることも大切だ」などと発言があった。
さらに、沖縄の各放送局と系列のキー局との間には、ニュース価値に対して温度差があるのかどうかについて、"ホンネ"の意見が相次ぎ、参加した委員からは、沖縄の放送現場の葛藤が聞けて非常に有意義だったと感想が述べられるなど、予定の時間をオーバーして活発な意見交換となった。

今回の意見交換会について、参加者から以下のような感想が寄せられた。

  • 今回の、意見交換会は、大変勉強になることが多い会合でした。テーマ設定そのものが、TOKYO MXの『ニュース女子』問題という、沖縄の報道にとって重要な問題だったこともありますが、本音の部分で議論ができたのではないかと思っています。その中でも、委員の方々から出た「ネット上のデマやフェイクニュースに対して、逐一反論するのは難しくても、そうしたデマやフェイクを拡散させるマスコミに対しては、遠慮の無い批判をすべき」との言葉には、とても勇気づけられました。デマやフェイクにどう対応していくのか、そのときの芯となる考え方をもらえたように思います。そのうえで、BPOの意見書の指摘にもあった言葉をお借りすれば、放送局がヘイトやフェイクニュースへの"砦"になっていかなければならないと強く感じました。他のテレビ局の方々との議論も、大変興味深く、こういった機会が増えると意義深いと思います。

  • 『ニュース女子』の件では、番組を見た視聴者が情報を鵜呑みしてしまう危険性をあらためて感じました。放送基準には、「社会·公共の問題で意見が対立するものについては、できるだけ多くの角度から論じなければならない」とあります。視聴者から偏向報道だと思われないように、また、情報の根拠·裏付けは確実に行うべきであると、番組考査の大切さを再認識させられました。メディアにいる者として、発信した情報の責任は重大だと認識しています。ところで、SNSや動画サイトなどは個人で情報を発信できる時代となり、トランプ大統領がツイッターで発言している内容もニュースなどで取り上げられています。ネット配信はいろんな情報が拡散され影響が見られますが、一方で情報が操作される危険性も感じています。メディアが多様化されていく中で、テレビは信頼されるメディアでなければならないと思います。県民に支持される放送局としての使命と影響力を認識して頑張りたいと思います。

  • 「TOKYO MX」からヒアリングを行うだけでなく、地元消防などからも取材をして番組内容の検証をしているところに委員会の本気度を感じた。外部ディレクターによる番組や持ち込み番組については制作段階から密にかかわることができないうえ、番組枠を変更することも難しいことから、どうしても放送局側もチェックが甘くなりがち。TOKYO MXの例は他人事とは思えず、意見書は緊張感をもって読んだ。ただ、全体的に持ち込み番組を考査する放送局側への指摘・批判に多くを割いている印象で、制作会社側への指摘をもう少し増やしてほしかったほか、なぜこのような番組が生まれてくるのか、いわゆる「沖縄ヘイト」と呼ばれる現象の背景にまで踏み込んでほしかった。

  • 一般の人々に対してどの程度理解してもらっているか不明だが、個人的には、同じ「番組」を視聴できるメディアとはいえ、放送とウェブの違いはここにある!と知らしめた内容と感じた。「放送」する番組には裏付けを伴うという当然の話で、昨今流行りのウェブ発の番組に決定的に欠けている点だと思っていた。当該番組はバラエティーであり報道番組ではないとの認識だが、まことしやかな物言いや分かりやすいストレートな表現は、沖縄の基地や反対運動について知識のない視聴者に大小さまざまな誤解・反感を招く。事実ならばともかく、伝えられた「事実」のいくつかで裏付けが確認できないと立証された点は大きかった。放送により考えられる視聴者の反感を考えると、沖縄や反対運動に携わる人々に無用の大きなダメージを与えることになる。とはいえ、番組の意見そのものについては言及していない点は大事だと思う。

  • BPOの意見書については、「事実と異なる」という観点から一つひとつ検証されていて、番組に対して感じていた違和感や嫌悪感が、事実を確認することなく、制作意図に都合の良い情報の元に制作されたものということが確認できた。委員の皆さまが、この事態に真摯に向かい対応されたご努力に敬意を表します。一方、懸念は、今回のケースのように、BPOの調査に応じない制作会社が制作した持ち込み番組が増えないかということです。そして意見交換会は、なぜ、どのように委員会意見が出されたのか分かり、さらによい会だったと思います。また、意図的に発信される事実とは異なるネット情報への対応について意見が交わされたことは、大変有意義だったと思います。テレビが積み重ねてきた信頼を崩されないよう、さらに丁寧な番組づくりが必要だと感じました。

  • 持ち込み番組ということで、放送局や制作会社の協力が得られない中、調査しないといけない初のケースということで、BPOの委員の皆さんはかなりご苦労なさったことが分かった。独自に調査した分、直に沖縄にふれて、現状を理解いただけたと思うのでよかった。
    キー局と違ってローカル局は余計に持ち込み番組が多いので、砦である考査の責任が大きいことを再認識した。あらためて放送の信頼性と信ぴょう性を失ってはいけないと感じた。ややもすると放送がネットに飲み込まれる時代がくるなどと言われることもあるが、むしろ自由で危険なネットの裏取りをして真実を伝える放送の役割は今後ますます大きくなっていくと感じた。

以上

第124回 放送倫理検証委員会

第124回–2018年3月

"裁判の被告として別人の映像を4回にわたり放送"毎日放送の『ニュース』を討議
"モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送"東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議など

毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真を放送した際、撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたなどという誤ったエピソードを伝えたことに関し、委員会は事実の裏付けを取らなかったことや写真のキャプション内容を見落としたことは問題だとしながらも、再発防止のための対応策が取られているなどとして、討議を終了した。
裁判所に入る被告の映像を取り違えて、全く別人の映像を被告として4回にわたって放送した毎日放送のニュースについて、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、毎日放送は、誤って放送された人に謝罪するため、この人を探し出す作業を続けていることから、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。
東海テレビのニュース番組『みんなのニュースOne』で覆面座談会の模様を放送した際、一部モザイクが未処理のまま放送が行われたことについて討議が行われた。委員会はモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

議事の詳細

日時
2018年3月9日(金)午後5時15分~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した
毎日放送『教えてもらう前と後』を討議

毎日放送は、1月9日に放送したバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪をした。
前回の委員会では、「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」といった意見が相次ぎ、制作の経緯などについてさらに詳しく聞くために、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報が書かれていたという書籍の部分のコピーの提出を求めて、討議継続となった。
今回の委員会では、書籍に書かれた内容の裏付けをきちんと取らなかったことや、写真に添えられたキャプションには撮影時期がご成婚後であり、場所も違うことが書かれていたのに、それに十分な注意が払われなかったことは問題だとしながらも、放送法による訂正放送がなされるとともに再発防止のための対応策が取られ、また宮内庁とも話し合いをして了解を得ているとして、討議を終了した。

2. 裁判の被告として全く別人の映像を4回にわたって放送した
毎日放送の『ニュース』を討議

毎日放送は、去年12月に開かれた元神戸市議会議員の政務活動費詐欺事件の初公判を報道する際、3人の被告のうちの1人としてただの通行人とみられる全く別人の映像を放送した。この誤った映像は、その後の論告求刑公判や判決の報道の際など、合わせて4回放送された。2月に視聴者からの指摘で誤りに気づいた後、訂正放送を行うとともに、ホームページで訂正と謝罪をした。
当該放送局の報告書によると、神戸地方裁判所の正面玄関で取材していたカメラマンが撮影した映像に、被告のほか、通行人とみられる全く別人も写っていた。翌日朝のニュースに向けて映像を編集している過程で、担当記者は、この別人の静止画が被告であるかどうかの確認を求められた際、持っていた顔写真と少し違うとは思ったものの、「写真と実際は違う」と自分を納得させて「大丈夫です」と答えたという。また撮影したカメラマンも、誰を撮影したかなどを記載するキャプションに、映像全体として「神戸市議入廷」と書いただけで、どの部分が誰の映像であるか特定をしていなかった。
委員会では、「被告人ではない人を被告人として4回も放送したことは軽視できない誤りだ」「誤って放送された人が特定できていないので、謝罪もされていないのは問題だ」など厳しい意見が相次いだ。
毎日放送は、誤って放送された人を見つけて謝罪するため、撮影した時刻と同じ時間帯に、同じ場所で通行人を目視で確認する作業を続けていることから、委員会は、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。

【委員の主な意見】

  • 映像の取り違えはこれまでもあったが、4回も放送されることはなかった。
  • 担当記者の経験が浅いとはいえ、放送されたニュースを見ていないのには驚いた。カメラマンも見ていないということで、理解できない。
  • 間違って放送された人は、被告本人とよく似ているが、結果的に無関係な人を被告としてしまったことは罪深い。誤って撮影された人を特定して、きちんと謝罪できるか、しばらく様子をみたい。
  • 具体的な再発防止策が取られてはいる。

3. モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送した東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議

東海テレビは2月23日に放送したニュース番組『みんなのニュースOne』で、「働き方改革」をテーマにした座談会を放送した際、経営者や医師など5人の出演者との約束で顔にモザイクをかけるべきところ、一部未処理のまま放送したため、番組の中でお詫びをして、出演者にも謝罪した。
この問題について委員会では、「なぜ特定のシーンだけモザイクが未処理のまま放送されたのかがよくわからない」として、シーンの一部にモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論の内容も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 約束したモザイク処理がされないと、番組に出演した方が経営する企業の評判を落とすことにもつながりかねない。
  • 今後の取材協力者が得られなくなるかもしれないという、放送人にとって大きな問題であるはずなのに、その危機感が報告書からは読み取れない。
  • 時間が間に合わないから放送で使わないという判断もあったはず。
  • 番組審議会や当該放送局が作っている第三者機関による審議を見守りたい。

以上

第200回 放送と青少年に関する委員会

第200回-2018年2月27日

視聴者からの意見について…など

2018年2月27日、第200回青少年委員会を午後4時30分からBPO会議室で開催、6人の委員が出席しました(1人は所用のため欠席)。
委員会ではまず、1月16日から2月15日までに寄せられた視聴者意見について議論しました。
アニメ番組に残酷なシーンがあるとの視聴者意見が寄せられたことについて、委員から、「アニメでは、多少大げさな表現をするものだ、という考え方もあるが、普段あまりアニメに親しんでいない人にとっては、それが強い印象を与えてしまう。このことに放送局側がどう配慮するのか、今後議論する必要があるだろう」などの意見が出されました。
ほかに、犬の訓練士が凶暴化した犬を叩いて訓練する様子を紹介したドキュメンタリー番組に対して、「動物虐待ではないか」といった意見が寄せられたことについて、委員からは、「虐待という印象はなかった。番組では、叩くという行為への批判があることも、両論併記的に紹介していて、全体として十分配慮はできていたと思う」などの意見が出されました。
議論の結果、いずれの番組も討論など次の段階に進む必要はない、となりました。
2月度の中高生モニターのリポートのテーマは「テレビ・ラジオ番組の企画を考えよう」で、テレビ28番組、ラジオ3番組の企画が提出されました。また、青少年委員会からの依頼に応えてくれた在京放送局の番組制作担当者から、中高生モニターが考えた番組企画に対する丁寧な講評が寄せられました。
委員会では、中高生モニターが考えた番組企画から垣間見ることができる今の中高生たちの関心事などを読み取るとともに、制作者の講評から伺われる番組に対する思いなどについて議論されました。
調査研究については、委員会に先立って開かれた調査研究報告会に関する小委員会で話し合った内容を担当委員が報告しました。調査研究報告会は3月13日に開催される予定です。
次回は3月27日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2018年2月27日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

休日の早朝に放送されたアニメ番組での暴力・残虐シーンについて、「子どもが見る時間帯に、あんな残酷なアニメを放送する気がしれない」「どれだけ青少年に影響があるのか考えていただきたい」などの意見が寄せられました。これに対し、委員からは、「アニメでは、多少大げさな表現をするものだ、という考え方もあるが、普段あまりアニメに親しんでいない人にとっては、それが強い印象を与えてしまう。このことに放送局側はどう配慮するのか、今後議論する必要があるだろう」「同じアニメということで、放送を単純に時間帯で区切ることについては、考えなければならない」などアニメについて議論を深める機会を持ちたいとの意見も出されましたが、当面、討論等に進む必要はないということになりました。
ドキュメンタリー番組で、犬の訓練士が凶暴化した犬を叩いて訓練するシーンについて、「訓練とはいいがたい暴力を使った虐待であり、犬ならば許されるというものではない」「しつけのためなら暴力も許されるという誤った価値観を拡散しかねない」などの意見が寄せられました。これに対し、委員からは、「虐待という印象はなかった。番組では、叩くという行為への批判があることも、両論併記的に紹介していて、全体として十分配慮はできていたと思う」などの意見が出されました。この件については、これ以上、話し合う必要はない、となりました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした2月のテーマは、「テレビ・ラジオ番組の企画を考えよう」です。全部で27人から31本の企画が報告されました。
人気タレントを起用したバラエティー番組や、ドラマ、音楽・紀行などの教養番組、骨太なドキュメンタリー番組まで、10代らしい視点の企画が集まりました。テレビ・ラジオの内訳は、テレビの企画が28番組、ラジオが3番組でした。また、在京放送局の番組制作担当者がモニターの企画の一つひとつに目を通し、温かく細やかな講評をしてくださっています。

◆委員の感想◆

  • 【テレビ・ラジオ番組の企画を考えよう】について

    • 今回、「星を見上げる」など星をテーマにした企画がいくつかあった。今の子どもたちはいろいろな刺激があり過ぎる社会の中で、自分をじっくり見つめる時間をなかなか得られないという実感があるのかもしれないと思った。もう一度、自分ときちんと向き合うために、空を見るのだろうか?うまく番組にできるかどうかは別として、今の若者たちが求めているものが少し感じられて、興味深かった。
    • 大人の常識や当たり前の日常を疑い、若者の小さな疑問や反感を取り上げたいという企画があった。足元の疑問から大きな問題を見つけていくことは大切で、若い世代らしい良い発想だと感じた。
    • 「被爆遺構」を通して平和を考えたいという企画を長崎に住む高校生が考えていた。毎月9日の11時2分になると流される音楽やゼノ神父の存在など、彼の暮らしの近いところに多くの物語があって、日々それらに触れながら丁寧に生きている大勢の子どもや大人たちが彼の周りにはいるのだろうと感じた。企画自体も、とても丁寧に考えられていた。
    • 放送局の方からの講評に、「戦争や被爆については高校生の目線がほしい」と書かれたものがあり、制作者たちは若い世代の年齢に応じた視点というものを必要としているのかもしれないと感じた。

◆モニターの企画を講評してくださった番組制作者の紹介◆

  • 【NHK】 青少年・教育番組部チーフプロデューサー
  • 【日本テレビ】チーフプロデューサー
    • 『踊るさんま御殿』『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』を統括
  • 【TBSテレビ】マネージメントプロデューサー
    • 『東大王』『ピラミッドダービー』『ペコジャニ』などを担当
  • 【テレビ朝日】
    • 『マツコ&有吉 かりそめ天国』
    • 『ごはんジャパン』『題名のない音楽会』『スマートフォンデュ』
    • 『chouchou』『お願い!ランキング』
    • 『林修の今でしょ!講座』
    • 『今夜、誕生!音楽チャンプ』
    • 『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』
    • 『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』 7人の各番組担当者
  • 【フジテレビ】 編成部アニメ担当
    • 『ノイタミナ』『サザエさん』など担当
  • 【テレビ東京】 制作局CP制作チーム
    • 『THEカラオケバトル』『おしゃべりオジサンと怒れる女』など担当

◇番組制作者の総評◇

  • 日本テレビ チーフプロデューサー/『踊るさんま御殿』『笑ってコラえて』などを統括
    大変心のこもった、しっかり構成された企画が多く感心しました。また、企画書の中に「私たちはテレビ局を信用している」という表現がありましたが、テレビ制作に携わる者として、とてもありがたく、気が引き締まる言葉でした。また、様々なコンプライアンスに配慮した様子は時代を感じさせます。YouTubeなど、ショートコンテンツが全盛の時代となっていますが、テレビ番組やラジオ番組が負けないような、斬新なアイデアを今後も期待しています。
  • TBSテレビ マネージメントプロデューサー/『東大王』『ペコジャニ∞!』などを担当
    大変楽しく拝見させて頂きました。企画提出、有難うございました。更に皆さんの【視点の鋭さ】がテレビ制作を生業としている者として、大変勉強になり、今すぐにでも番組として見てみたい企画が多数ありました。また中・高校生の皆様が【将来】や【仕事】に対し、強く興味を持っている印象を受け、なんとか【テレビの力】で若い世代の不安を払拭できるよう、制作者として襟を正して番組制作にあたらなければ…と思いました。メディア利用形態の多様化が進む昨今ですが、まだまだテレビへの期待の高さを感じられる企画が多かったのも幸いでした。皆様、お疲れ様でした!
  • フジテレビ 編成部アニメ担当/『ノイタミナ』『サザエさん』などを担当
    等身大の中高生を描くことに、デジタルネイティブ世代らしい、昭和世代にない番組を作っていくパワーを感じました。また、タイトルのつけ方が上手いことに感心しました。タイトルが番組を想像できることがテレビは大切です。ぜひ、この感性を磨いて行って欲しいと思います。ただ、タイトル負けして番組の内容に工夫がない企画もありました。ぜひタイトルやコンセンプトから、番組の中身のイメージも膨らませていく力がつくと、企画力はぐーんとあがります。

◇モニターの企画書と番組制作者からの講評◇

  • ● 神奈川・中学1年男子
    [番組名]:「ANZEN漫才みやぞんのぽじてぃばー」
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:金曜 午後7時~7時30分
    [出演者]:みやぞん・悩み迷う中学生
    [ねらい]:みやぞんの一番の魅力である彼の笑顔と笑い声から醸し出る人の良さやポジティブシンキングで、今悩んでいたり壁にぶち当たっている中学生に寄り添い、一緒の時間を過ごしてもらうことによって、少しでもこじれた心を救ってもらう。ひいては同じような悩みを持っているテレビの視聴者も癒す。
    [内容]:(ケース1) 友人関係の悩み・・・みやぞんに聞いてもらう
    (ケース2) 部活動で上達しない・・・みやぞんに一緒に練習してもらう
    (ケース3) 学校に行きたくない・・・みやぞんにアドバイスをもらう
    (ケース4) 将来への不安・・・みやぞんが芸人になった経緯など語る
    (ケース5) 親とのけんか・・・普段の生活を録画し客観的にみてみる
    みやぞんと関わった後、中学生がポジティブに考えられるようになればよいと思います。

≪企画の講評≫

  • 【日本テレビ】
    シンプルな王道の企画ですが、旬の「みやぞん」をキャスティングすることで中学生にも、大人にも身近な内容になりそうです。内容のケース案も、非常に具体的にシミュレーション出来ていて、素晴らしいです。内面的な、深い「お悩み」の際、みやぞんが、どうさばいていくのか、見てみたくなりました。
  • 【TBSテレビ】
    【中学生の悩み】とポジティブ芸人の【みやぞんさん】の掛け算。面白い着眼点だと思います。まさに中学生ならではの発想で、実際放送しても同世代の若者は感情移入して見てくれるでしょうし、その世代を子に持つ親世代も気になる番組となるでしょう!
  • 【テレビ東京】
    「番組を通して悩んでいる視聴者も癒してあげたい」という企画意図はほほえましく、人気芸人のみやぞんと、悩みを抱えている中学生との交流を想像するとほっこりしました。みやぞんに「悩みを聞いてもらう」「一緒に練習してもらう」などだけではなく、それぞれの企画にゴールがあるとテレビとしては見やすいのではないかと思います。
  • 【フジテレビ】
    等身大の中学生のホンネを掘り下げるとても良いコンセプトの企画と思います。寄り添うための演出方法に工夫があれば可能性がありそうです。ぽじてぃばーというタイトルが秀逸です。

    ——————————————

  • ● 東京・中学2年男子
    [番組名]:「カズレーザーの本読みガチ勢」
    [放送媒体]:ラジオ
    [放送日時]:土曜 午後10時~10時30分
    [出演者]:カズレーザー・芦田愛菜・みやぞん
    [ねらい]:最近問題になっている「活字離れ」を食いとめるべく、楽しくわかりやすく本の魅力を紹介する。
    [内容]:本の面白さを若年層の人にも分かりやすく伝える、教養とバラエティを織り交ぜた番組。
    みやぞんに毎回課題図書を出す。本のタイトルから受ける印象を歌にしてもらい、読後に感想文を書いてもらう
    カズレーザーのおすすめ本の紹介
    カズレーザーが石川啄木や森鴎外などの昔の作家にインタビューをし、意外なエピソードなどを聞き出す(作家は役者や芸人が演じる)
    芦田愛菜が作家の部屋を訪ねて、書斎や本棚の本などをレポートする作家本人と本について語る。
    「AIは名作を生み出せるか!?」をテーマに、人工知能で小説を作ってみる

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    番組のねらいがハッキリしていて良いと思います。あとは「活字の魅力」を音声でどのように伝えるか、その演出の工夫が番組の成否を決めることになるでしょう。ストレートインタビューばかりだと視聴者は番組に飽きてしまいます。人工知能が書く小説はラジオで聴いても面白いかもしれません。
  • 【日本テレビ】
    活字離れが叫ばれていますが、AIの作る名作、や「森鴎外」にインタビューなど、斬新な企画で活字離れを止めたいという大きな目的に向かう点は大変素晴らしいと思います。どう映像で表現するのか、踏み込んで考えるのもいいのではないでしょうか?
  • 【テレビ東京】
    「本の面白さ」だけに焦点をあてた切り口は大胆で、具体的なキャスティングも、企画趣旨に合ったものだと思います。既に亡くなっている作家にインタビューする、という形でその作家の人物像を掘り起こすという企画は、これまで世に知られていないような新しい、興味深い情報があれば、面白くなりそうだと思いました。
  • 【テレビ朝日】
    この企画は、出演者のカズレーザーと芦田愛菜の特性をよく活かせていると思います。二人が本に対して強い思いがあるので、リポーターとして説得力のあるコメントをしてくれると思います。あとは、本に対して興味の無い視聴者がどうしたら観てくれるのか、その工夫の仕方がポイントだと思います。

——————————————

  • ● 千葉・中学2年女子
    [番組名]:
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:夜遅い時間の30分
    [出演者]:高校生か中学生の女の子
    (毎日の生活を楽しみつつも、友人たちのインスタやツイッターに反応したりしないといけないことに、頑張らなくてはいけない気がするが、頑張れなくて落ち込んだりする)
    司書の人(出来れば光浦靖子さん)
    ネコ
    [ねらい]:中学生の私は学校の外でもSNS等で常に友人たちと繋がっていて、それが楽しくもあり、息苦しくもあります。(とは言ってもその繋がりは楽しいし断ち切る勇気もありません)友人に「いいね」したり、されたり、時々すごく頑張らないといけない気がします。
    そんな時ふらりと学校や地域の図書館に一人で行くと、一人でボッーと居てもいいような気がして落ち着きます。私にとって安心して孤立できる場所=図書館です。
    学校の中でも、図書館は教室と違う空気があり、時間の流れがあります。図書館から別の世界に(本を通して)タイムトリップして、また新たな気持ちで生活に戻っていくような、背中を押してくれるゆるい哲学的番組があればいいなと思います。
    [内容]:30分程度のミニドラマ。
    主人公は気分が落ち込んだり、モヤモヤすることがあると図書館に行く。
    ボーっと座っていると、司書が一冊の本を持ってきて無造作に置いていく。何気なく本を開くことで、主人公が本の世界にトリップしていく。
    最後にその日の本を紹介するのはネコ。
    本1)「本日はお日柄もよく」原田マハ著
    友人が生徒会選挙に立候補をし、主人公が手伝いを依頼される。

    選挙の応援演説、また立候補の演説も一緒に考えてと頼まれ、断れず何となく依頼を受ける。「支えてくれる周りに感謝します」的な友人のスピーチに心の中でウンザリした主人公(どこでも、メディアでもスポーツでもこうしたことを言い過ぎると感じている)は何だかなと一人図書館に行く。
    不愛想な司書の人が一冊の本「本日はお日柄もよく」(原田 マハ著)を置いていく。主人公がそのページを開くと……。

    本の中のいくつかの場面がドラマ仕立てで再現され、主人公がそれを少し引いた視点から俯瞰してみている。本を通して「言葉の力」を感じた主人公は友人の生徒会選挙を新たな気持ちで手伝おうとする。

    ネコが最後に取り上げた本の紹介をする。
    本2)「ユルスナールの靴」須賀敦子著
    年1回の三者面談。

    明確な進路希望があるわけでない主人公。親や先生からのアドバイスもあまり響かず、かと言って自分で決めるほどの勇気も指針もない状態でいる。

    司書が差し出した本は「ユルスナールの靴」(須賀敦子著)
    本の中の「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ」を目にする。そこから須賀さんのエッセイの回想…

    自分の靴は?自問しながらも親の希望や偏差値に拘らないことが決まりすっきりする主人公。

    ネコによる本の紹介(終わり)

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    上品な雰囲気の素敵な番組だと思いました。須賀敦子さんのような方の著書を、いまの中高生が手に取るきっかけになればよいと強く感じました。このあとは、実際にどのような脚本を書くことができるか、ということになると思います。
  • 【日本テレビ】
    SNS時代を謳歌しながらも、どこか疲れを感じるという、今の若者の価値観が反映された素敵な企画だと思います。30分のミニドラマの入り口が図書館になっているのは、とても理にかなった設定です。
  • 【TBSテレビ】
    哲学的番組…それをミニドラマで…なかなか斬新な着眼点でユニークな企画だと感じました。今の若者の『悩み』などを本の世界に入り込み解決していく設定が、深夜ドラマ枠で今の若者にササリそうですね。ラストでの本の紹介も突然【ネコ】なのにビックリしました。【ネコ】が大好きなのでしょうか?
  • 【フジテレビ】
    SNSに疲れた少女が図書館で本に救われるコンセプトはとても良いと思います。等身大のストーリー設定にも、大人にはわからないハードル3者面談を迎える憂鬱など、とても可能性を感じます。ぜひ脚本まで仕上げて欲しいです。
  • 【テレビ朝日】
    独特の世界観のある企画だと感じました。一見、ドラマなのですが、主人公の悩みの解決に必要な書籍の情報が得られるなど、「物語」と「情報」の二つが当時に楽しめる番組になると思います。しかし、逆に「物語」と「情報」の相反するものを同時に伝えるのは難易度が高いので、その伝え方の工夫をより深く考えないといけないのかもしれません。

——————————————

  • ● 富山・中学2年男子
    [番組名]:ドラマ「空で星が光っている」
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:月曜から金曜 午後9時55分~9時59分
    [出演者]:女子中学生:藤嶋花音(ふじしまかのん)
    男子中学生:藤本 哉汰(ふじもとかなた)
    星ナビゲーター:中嶋朋子
    [ねらい]:夜空の星を見ていると、ちっぽけなことは全部吸い込まれていく気分になる。それにロマンチックだ。街の光が強い所では星空はなかなか見られない。阿智村の中学に通う中学生同士の淡い恋と美しい星空を高精細の4Kの映像で届ける番組。
    [内容]:『星は輝きによってお互いを知ることができる。同じように、人も光を与え合うことで星のように輝くことができる。(凰宮天恵)』
    日本一星の美しい場所と言われる長野県の阿智村を舞台に、季節ごとに変わる星座にまつわる話や星や月にまつわる名言を、高校生の2人のドラマ仕立てで紹介する4Kの5分間の番組。番組中では日本各地の美しい星空スポットや、プラネタリウムなども紹介する。

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    美しい映像がたくさん見られそうな楽しい番組です。番組のねらいはよくわかるので、実際に5分間をどのように構成するか、具体的に考えてみてください。
  • 【TBSテレビ】
    【夜空の星を見ていると、ちっぽけなことは全部吸い込まれていく気分になる…】なんともロマンチックな書き出しで始まる企画書だ。【星空】をテーマに高校生の男女を見ていくドラマにホンワカさせられるだろう。この高校生の男女に恋愛的発展はあるのだろうか?
  • 【テレビ東京】
    4Kという、まさに“これからのテレビ”の企画。美しい映像と、中学生の淡い恋、星にまつわる名言と見るところが盛りだくさんですが、うまく構成出来れば素敵な番組になりそうです。
  • 【テレビ朝日】
    美しい映像や感動的なストーリーは、ドラマだけでなくバラエティーでも視聴者を惹きつける魅力的なファクターになりますが、5分という短い放送尺の番組だからこそ、視聴者が「ぜひ見たい!」と思えるものでないとなかなか見てもらえないと思います。そういう意味では、阿智村という特定の一か所で星座の話や名言を紹介するドラマというのではいささか弱いかと思います。毎回ドラマ仕立てで日本中の星空スポットを紹介していくなどの方が、より訴求力があるのではないでしょうか。

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  • ● 秋田・中学3年女子
    [番組名]:「大喜利×未来大予想!!」
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:
    [出演者]:様々な分野の専門家・芸人・タレント
    [ねらい]:バラエティーとして未来予想をすることで多くの人に今、日本にある問題を考えてもらい、若者や子どもたちのニュースへの関心を高める
    [内容]:専門家チームとタレントチームの対決
    2100年を舞台に「日米関係は?」「AI技術は?」「大人気歌手は誰?」など様々なジャンルのお題について大喜利で回答
    回答をもとにそれぞれのチームで2100年の東京を作り上げ、最後に子ども審査員がジャッジ!「未来っぽい街」が優勝

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    未来を予想するという発想は面白いと思います。ただ、予想すること自体は誰にでもできます。その上、当然ですが番組内で未来を確認することもできないため、「言いっぱなし」にならないような工夫が必要でしょう。
  • 【日本テレビ】
    2100年の未来を考える、というとても夢のある企画です。最後の2100年の「東京」を作るというゴールは、是非視聴者として見てみたいと思いました。未来はを語るのは楽しいですが、映像にするには難しいジャンルです。映像化をしっかり考えることが必要です。
  • 【フジテレビ】
    2100年となっていますが、2022年ぐらいの5年先ぐらいの予想の方が、現実味があって面白そうな気がします。
  • 【テレビ朝日】
    若者や子供たちのニュースの関心を高めるという狙いは非常に良いと思います。ただ、その方法が「審査されて優勝」とゲーム性が強くなった場合、ウケ狙いの発言や子ども審査員に気に入られようとする発言・発想ばかりになり、本当に2100年の東京を作れるかどうか、今日本にある問題を考えてもらえるかどうかを今一度精査する必要があるかと思います。番組のねらいは本当に魅力的だと思うので、ぜひ遊びだけで終わらない方法を考えてみてください。

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  • ● 東京・中学3年女子
    [番組名]:
    [放送媒体]:
    [放送日時]:
    [出演者]:
    [ねらい]:
    [内容]:私たちはいずれ社会に出て働くことになります。この先の進学で、どんな学校がいいのか?その学校でどんなことができるのか?という情報を知りたいです。そして、実際の仕事や職業とどうつながっていくのかも気になります。若い人たちの将来につながる情報をリアルに教えてくれる、そんな番組があればいいと思います。バラエティー形式でクイズのように職業を解説しわかりやすくするのもいいと思います。私たちはテレビ局を信用しているので、テレビ局がしっかり取材し、ためになる情報をもっと教えてほしいです。

≪企画の講評≫

  • 【日本テレビ】
    若者にとって「役立つ」バラエティのコンセプトの提案ですが、文中に「私たちはテレビ局を信用している」という言葉がありました。制作者としては、とても励みになる言葉です。
  • 【TBSテレビ】
    この企画書から今時の中学生の『将来への不安』『将来への希望』が見え隠れしました。また【私達はテレビ局を信用している】という言葉にドキっとさせられました。テレビ番組作りというのは、それだけ責任感のある仕事だと…改めて考えさせられました!
  • 【フジテレビ】
    子供達の未来に必要な情報を今の放送局は放送できていません。反省しました。
  • 【テレビ朝日】
    世の中の仕事内容や施設、企業の中を見せる番組はすでにたくさんあります。その中でいかに視聴者が分かりやすく、楽しく知ることのできるオリジナリティ溢れる番組をどうすれば作れるかをぜひ考えていただき、意見を発信していっていただきたいと思います。また、大学などは非常に数が多く、一部の学校だけを紹介するのは公平ではないので、その中からどうすれば公平に視聴者が求める情報に絞っていけるのか、その方法も考えてみてください。

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  • ● 埼玉・高校1年女子
    [番組名]:極み~あらゆるもののトップとは~
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:土曜 午前10時~11時
    [出演者]:その業界で日本国内ナンバーワンの人、ものなど。
    例)個人資産を1番持っている人
    今まで1番借金を作った人
    持っている敷地の面積が1番多い人
    バッティングセンターで使ったお金が1番多い人(自称でも良い)今まで1番浪人したことがある人
    1番たくさんの資格を持っている人など、
    1番がある人ならどんな人でも。
    芸能人だと売名行為などがあるのでできる限り一般人。
    [ねらい]:何かを極めてその頂点に立つと言うのはとても難しいことであり、1つを極めるだけでもとても大変です。人生の中で何かを極めると言う経験をすることがない人もいるかもしれません。1度しか経験できない人生だから、できることが無限にあるわけではなく、だからこそ自分の経験することがない他の人の人生も見てみたいです。
    テレビを通してでも擬似的に体験できるというのは人生を2つ味わえるようで自分の世界観も広がります。今も話題になっていますが卓球やテニスやフィギアスケートで1になる事はとても素晴らしいと思うし、メディアでも取り上げられることが多いです。しかし、不名誉なことであったとしても何かを極めたりするのは、裏には隠されたドラマやその人の人生があると思います。そういうのをテレビで流すことで、高いハードルに望まなくてもいいんだと思えることで気持ちが楽になる人もいると思うのです。
    グローバル化が進む中で、国や性別や年齢宗教が違えば様々な考え方を持った人持った人に出会うことが多くなり、そうするとお互いを認め合い尊重することが大切で、今後求められていくと思います。この番組を通して、今までスポットライトが当たってこなかった人も取り上げて紹介することでそれらの認め合いや尊重することにつながると思います。
    [内容]:駅や人の多い所で何かこれだけは日本で1番だと確信を持って言える人を探しその人に密着取材をします。またはインターネットや電話を通じて身近にそういう人が居ると言うのを視聴者の方に情報提供いただいて、取材交渉をして密着取材をする。または、視聴者からこんなものの頂点にいる人を調べてほしい、といった要望を募り、スタッフが調査して、取材交渉をする。その中で見つけたその人ならではの暮らし方や考え方や常識をテレビで放送する。ドキュメンタリー番組です。

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    ナンバーワンを紹介するという番組のねらいはシンプルで良いと思います。ただ、個性的な「一般人」を紹介する番組は現在もさまざまあるので、この番組ならではの魅力をさらに深めて考えると良いでしょう。
  • 【テレビ東京】
    「あらゆるもののトップ」が、「業界ナンバー1」から「日本一と確信してる人(自己申告?)」「不名誉な事でも一番を極めた人」とさまざまで、料理の仕方(演出)にかなりの腕が必要だなぁと思いました。ただ、本当に何かを極めた人の話は興味深く、得るものも多いので、そちらをメインにしたものは見たいとおもいます。
  • 【フジテレビ】
    極めた人は何かをもっているはず。素晴らしいコンセプトです。ドキュメンタリーっぽい作りもありですが、バラエティー的に少し斜めに見る切り口もありではと思います。
  • 【テレビ朝日】
    なにかしらのナンバー1である人を取り上げる番組は、これまでもありました。問題は、いま、その人を取材した場合、我々は、その結果しか見ることができません。密着取材の中で語られることを再現VTRにするなど手法はありますが、ありきたりになってしまいます。インタビュー以外で、その人が、どんな苦労や経験をしてきたのかを「映像」にするアイデアが必要だと思います。書籍ではなく、テレビは「映像」が命なので。

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  • ● 東京・高校1年女子
    [番組名]:13歳のハローワーク ~仕事とは~
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:日曜 午後10時~11時
    [出演者]:そのときそのときに応じて取り上げる職業に従事している人
    [ねらい]:ドキュメンタリー番組で現実に視聴者の目を向けてもらう。
    仕事の良いことだけでなく、あまり美しくない面も見せる。
    中高生が将来の職業選択の参考になるような番組を作る。
    (簡単に言ってしまえば、本『13歳のハローワーク』のテレビバージョン)
    [内容]:『プロフェッショナル』に似ているが、収入やその仕事に就くにあたって必要なスキルや試験も取り上げる
    存在すら知らなかった仕事や、意外と何をやっているのか知らない仕事を取り上げる。最近、インターネットの普及で様々な職種が誕生しているので興味深いと私は思う。したがって、なるべくよく知られていない職業が望ましい。個人的に世界を飛び回る人など特に関心がある。例えば、エンジニアだけでもプログラマー、データベースエンジニア、ネットワークエンジニア、フロントエンジニアなどがある。さらに、番組の裏側で制作において欠かせないカメラマンはどのように他のカメラマンと違のか、など細かいところで、実は少し予想と違う仕事の実情も良いと思う。

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    番組のねらいはハッキリしており良いと思います。ひとつ気になったのは、タイトルに「13歳」と付けることで視聴者を限定してしまう可能性があることです。実際には誰に向けて番組を作りたいのか、あらためてターゲットについて考えてみてください。
  • 【TBSテレビ】
    高校1年生からの企画提出にも『将来(仕事)』への興味が強い事がうかがえます。しかもディープな職業紹介ドキュメンタリーという事で幅広い視聴者層に見て頂けるのではないでしょうか…更にガチの体験ロケなど広がりもアリな企画でしょう!
  • 【テレビ東京】
    すでにいろいろなメディアにある「13歳のハローワーク」を、テレビバラエティーでやるためにどう立体化するか、掘り下げて考えてみて欲しいです。
    これからの日本を担う学生さんたちに有意義なテレビになると良いですね。
  • 【テレビ朝日】
    中高生が将来を見据え、様々な職業について興味を持つきっかけになる良い企画だと思います。ただ興味のある仕事とは十人十色で個人差があるので、TV番組にする時に何の職業を取り上げるか判断が難しいなと感じました。現在は本やネットで職業についての情報は簡単に調べる事が出来るので、TV番組にする意義、例えば映像で仕事ぶりをみたい職業とは何か?を考えてみるのも良いかもしれませんね。

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  • ● 青森・高校2年女子
    [番組名]:明日天気になあれ
    [放送媒体]:ラジオ
    [放送日時]:毎日 午後10時~10時10分
    [出演者]:優しく語りかけるような声・話し方を得意とする人
    [ねらい]:「明日を生きよう」を伝える
    [内容]:オープニング→明日の天気・見える星の紹介
    →明日の年中行事やイベント紹介→エンディング
    今日が楽しかった人は明日も晴れやかな気持ちに、イマイチだった人は明日が楽しみになるような番組を作りたいと思い、企画を考えました。天気コーナーに星の紹介を入れたのは、この番組を聴いた人の心が軽くなればいいと思ったからです。星を見るには必然的に上を向くことになるので、嫌なことがあった日でもラジオを思い出し、夜空を見上げれば星に癒され、心が軽くなるかもしれません。年中行事やイベントを紹介する理由は、明日が楽しみになるスパイスのひとつにと考えたからです。この番組は「明日」にだけ特化するように作りたいと思いました。

≪企画の講評≫

  • 【日本テレビ】
    ラジオで表現された星を、実際に見上げてみるとは、とてもロマンチックですね。映像が無い状況から、想像し、それを実際目にするというプロセスは、テレビのような直接的、刺激的なものでないため、ソフトで、生活に潤いが感じられるに違いありません。
  • 【TBSテレビ】
    ラジオの企画書。【明日を生きよう】というポジティブキーワードは視聴者から共感を得ると思います。素敵なコンセプトですね。またラジオで星の紹介をする事で夜空を見させる狙いは抜群ではないでしょうか…テレビでもこんな番組があるとイイですね!
  • 【フジテレビ】
    ミニ番組にぴったりのコンセプトですね。明日を楽しみにする仕掛けが行事やイベント以外にもたくさんありそうな気がします。明日のイベントや新発売の商品とか?明日のエッセンスが広がればありな企画と思います。
  • 【テレビ朝日】
    「明日が楽しみになる」という番組の狙いは素晴らしいと思います。番組で扱う内容が、明日の天気や年中行事、見える星の紹介などということですが、インターネットなどで簡単に手に入る情報をわざわざラジオで聞きたいと思わせるオリジナリティが必要だと思います。「明日の天気によって伝えるDJが変わる」など、番組ならではの工夫があると楽しいかもしれません。

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  • ● 愛知・高校2年女子
    [番組名]:当たり前の先にあること
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:日曜 午前8時~8時30分
    [出演者]:小さな疑問の発案者・調査解決役
    [ねらい]:日々の生活で浮かぶ、ふとした疑問。それは他人にとっては当たり前のことかもしれない。しかし発想力や見方を変えることによって同じ事柄でも違うことが見えてくる。当たり前のことが大発見の糸口になると証明する。
    [内容]:大人になると気にならなくなることってありませんか。
    高校生の私が言うのもなんですが,私たち学生は他人にとってはくだらないことでも自分にはすごく重大なことに感じたり,当たり前のことに反感を持つことがあります。大人は言います。多感な時期だから,経験が足りないからだと。
    本当にそうなのでしょうか。
    くだらない疑問って、ホントにくだらないことなのでしょうか。常識は正しいことなのでしょうか。ニュートンだってくだらないことに疑問をもって重力を見つけたのです。ならば、ふとした疑問には今学んでいる英語や数学にも負けない大切なことが隠れているかもしれません。
    全力でくだらないことを掘り下げて調べてみましょう!追及するまでもないと思えるほど身近な疑問を様々な角度から考察・調査する。

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    「ふとした疑問」にフォーカスするという番組のねらいはよいと思いました。このあとは、番組の具体的な映像を思い浮かべてみてください。ロケなのかスタジオなのか、誰が何をしているようすを放送するのか。具体化することが大事です。
  • 【日本テレビ】
    くだらない疑問の具体例があると、とてもイメージしやすくなると思います。疑問解決バラエティーの新しいスタイルを是非創造してみてください。
  • 【TBSテレビ】
    【当たり前のこと】が果たして本当なのか?を切り口に選んだ興味深い企画。高校2年生ならではの具体的な【当たり前のこと】が書面で分かれば、更に企画のイメージがしやすかったでしょう。【当たり前のこと】を掘り下げて大発見、見つけたいですね!
  • 【テレビ東京】
    「学生にしか重要性が分からない、くだらない事」にフォーカスをあてて調べてみるのはとても楽しそうです。確かに大人になったら忘れてしまう、若い時にしか分からない大切なことがあるかもしれません。「あなたたち大人は全部忘れちゃったんでしょ」と言われているようでドキっとしました。
    ただ「高校生が重大に感じるくだらない事」というのが具体的には何なのか、どんな「くだらない事」を調べたいのかが分からないので番組がイメージできなかったのが残念です。
  • 【テレビ朝日】
    どういう素朴な疑問をどう掘り下げるか、そこを具体的に考えるのが番組を作る上で一番大事かもしれません。「小学生の疑問を街での聞き込みだけで掘り下げる」「ギャル高校生が本人たちの疑問を自分たちだけでリサーチ」など、答えが出るまでの過程を楽しめる工夫を考えると、視聴者を飽きさせない番組になると思います。

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  • ● 長崎・高校2年男子
    [番組名]:被爆遺構の今。復興への道筋。
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:8月9日 午後7時~9時
    [出演者]:福山雅治、草野仁
    当時を知る方・長崎だけでなく、他県の学生。
    [ねらい]:この番組を通して、戦争で多くの人が苦しみ悲しんだことを学ぶ。
    原爆を投下されてから復興までの歩み。被爆遺構の現在の姿を通して、改めて平和について考えるものにしたい。平和でいるためには、その陰で努力している人がいる。例えば、広島、長崎、沖縄で平和活動をしている人たち。もっと多くいるでしょうが。そうでなければ、戦争のことは忘れられていたかもしれない。都合よく書き換えられていたかもしれない。戦争のことを話題にすることは大切です。
    [内容]:自分にとって当たり前の戦争のことが、身近でない人がいる。長崎では毎月9日の11時2分に音楽が流れます。新聞には毎日戦争に関連した記事が載っています。これは長崎だからなのだと思うようになりました。平和である今を続けるためには、戦争の恐ろしさを知ることが大事です。戦争が実際に起こって、多くの人が悲しみ苦しんだこと。被爆遺構にはそれらの記憶があります。戦争をしないためにも忘れない。
    この番組で、今ある被爆遺構を多くの人に知ってもらいたい。自分にとって身近な遺構が、それすらも知らない同世代の人がいる。それが平和ということかも知れないが、その先の未来に不安を思う。
    防空壕や原爆で被害にあった場所や木の現在の姿。当時の姿が残る小学校や新しい建物で塞がれてしまった、当時のトンネル。家の近所にトンネルがあります。普段は公開されていませんが、定期的に入り口だけ入ることができます。その奥がどうなっているのか、TVカメラに入ってもらいたい。普段私たちが立ち入ることのできない、被爆遺構の今、その奥を伝えてほしい。そして、戦争の悲しみを伝えてほしい。
    私はこの夏、ゼノ神父の本を読み感想を書きました。今の長崎では多くの人が忘れてしまった人です。ゼノ神父の当時の姿も取材してほしいです。隠れキリシタンや26聖人などは多くで取り上げられていますが、戦後の長崎を支えた人の姿も伝えてほしい。私が通っている学校のすぐそばにも、戦後バラックがたてられていたようですが、その記憶は消されてしまっています。私が習わなかった戦後を知りたいと思い企画しました。ゼノ神父のドラマ仕立ての物も入れてほしい。ただ、けがの具合などの演出は映像を控えたい。昨年、まる焦げの子供の遺体が何度もニュースで扱われましたが、やけどの映像など、見ることがつらいと思う方もいるだろうから。多くの人に見てもらいたいので。

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    番組のねらいはよく伝わります。「身近な遺構」という視点もとても興味深いと思います。ぜひ、平和や戦争について多く人々が考えるきっかけになるよう、この番組の演出をさらに考えてみてください。
  • 【日本テレビ】
    戦争の悲劇を繰り返さないように、次世代へメッセージをいかに送るか。我々大人の大切な義務ですが、企画者のような若い方にも熱い思いを持っている方が沢山いるはずです。同年代より下の世代へ向けて、どう伝えるのが良いのか、どうすれば沢山の若者に見てもらえるのか、若者ならではの工夫を是非考えてみてください。
  • 【TBSテレビ】
    被爆機構のドキュメント企画は是非見てみたい番組です。戦後72年たち『語り部』の方々も減ってきた今だからこそ伝える必要があるでしょう。日本国内の人々は勿論だが、できれば世界中の人々(世界には今も戦争は無くなっていません)にも配信して見て頂きたい企画だと思います。
  • 【テレビ東京】
    長崎に住んでいる高校生だからこその企画提案だと思います。
    住んでいる地域に色濃く残る「戦争」の爪痕を単に紹介するだけでなく、高校生の目線で「戦争」を切り取るような番組になると、この企画の意味がもっと出てくると思います。
  • 【テレビ朝日】
    戦争の記憶が風化される今、長崎の被爆遺構や知られざる戦争秘話を広く視聴者に伝えること、それこそテレビが担う大切な使命であり意義も大きいと思います。是非とも成立していただきたい企画です。ドキュメント番組は企画者、取材者の熱意で深みも迫力も変わります。熱い気持ちを持ち続け、これからも研究してください。

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  • ● 東京・高校3年女子
    [番組名]:Hit The Stage
    [放送媒体]:テレビ
    [放送日時]:土曜 午後10時~11時
    [出演者]:司会、演者
    [ねらい]:土曜の夜にテレビの前でリラックスしながら、ライブに来ているような感覚を味わってもらう。
    本気のエンターテイメントをつくりあげ、提供する。
    新しい音楽、芸術との出会いを生み出す。
    [内容]:毎週土曜の夜に1時間、ライブショーを生放送する。トークやつなぎの時間は極力少なくし、最大限時間を使って様々な演目を放送する。
    主な内容は音楽で、ジャンルを問わず様々なアーティストに出演してもらう。大衆音楽以外を多く取り上げ、クラシックやR&BやHip-Hopなど幅広く放送する。また、アンダーグラウンドで活躍するアーティストや、海外のアーティストなどにも出演してもらう。
    音楽とともに、ダンサーや芸術家、パフォーマーともコラボレーションし、その一瞬でしか味わえないショーをつくり上げる。

≪企画の講評≫

  • 【NHK】
    「本気のエンターテインメント」を作りたいというねらいはよくわかりました。どのような演出をすれば、多くの人々が音楽を楽しんでくれるかを検討してみてください。一般的に視聴者は、馴染みのない音楽をあまり聴いてくれません。そこをどのような工夫で乗り切るか、そこがポイントです。
  • 【日本テレビ】
    こういったストロングスタイルの音楽番組が少なくなりましたので、是非見てみたいと思います。ただ、音楽番組が少なくなった背景には、嗜好の多様化があります。できるだけ多くの人に見てもらう工夫をする必要があるかもしれません。
  • 【TBSテレビ】
    土曜日の夜の音楽番組といえば『THE夜もヒッパレ』。若者に大人気番組であったように、この時間帯での音楽番組には魅力があると思う。更に高校3年生の感性で、これからのミュージック界を牽引するかもしれないアーティストを教えて欲しい!
  • 【テレビ東京】
    土曜の夜に良質なライブショーの生放送、というのはいいと思います。「じゃあ、どんな番組なの?」というのが見えてこないので、コンセプトや出演者、演出などもう少し掘り下げて考えるといいと思います。
    MTVの「アンプラグド」のような、アコースティックを基調としたものなのか、シルク・ドゥ・ソレイユのようなパフォーマンスメインのものにするのか…FNS歌謡祭のような「コラボ」を売りにしたものなのか、既存の物でも実は様々な切り口がありますので、この番組ならではの新しい何かを見つけてもらいたいです。
  • 【テレビ朝日】
    個人的には非常に興味がありますが、アンダーグラウンドで活躍する人たちを地上波の22時に放送するにはやはりショーだけではなく、その人の人となりをしっかり紹介しなくては、なかなか視聴者はついてきてくれないと思います。特に日本人はなかなかこの手のエンターテインメントへのアレルギーがあるので、大衆向けでない場合はここで紹介披露する意味を丁寧に描かないといけないかと。そうすると他と大差がなくなるので、オリジナリティがさらに必要か思います。

調査研究について

2月23日に調査研究に関する小委員会を開催、委員会ではそこで交わされた議論を担当委員が報告しました。
小委員会には菅原委員と中橋委員が出席し、1月23日に行った在京局の担当者らと行った意見交換会で出された意見などをどのように報告に反映するかなどについて話し合い、分かりにくいとされた表現を改めることや、誤解を招きかねないデータの扱いを精査するなどの修正を加えました。
調査研究報告会は、3月13日午後に開催する予定です。

2017年度 第67号

「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」に関する
委員会決定

2018年3月8日 放送局:東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)

勧告:人権侵害
東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)は2017年1月2日放送の情報バラエティ―番組『ニュース女子』で沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集した。軍事ジャーナリストが沖縄を訪れリポートしたVTRを放送し、その後スタジオで、出演者によるトークを展開した。また、翌週9日放送の『ニュース女子』の冒頭では、この特集に対するネット上の反響を紹介した。
この放送について、申立人の辛淑玉氏は、「本番組はヘリパッド建設に反対する住民を誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴えた。
委員会は審理の結果、2018年3月8日に「委員会決定」を通知・公表し、「勧告」として、本件放送には申立人に対する名誉毀損の人権侵害があったと判断した。その理由として、本件放送で「申立人は過激で犯罪行為を繰り返す基地反対運動を職業的にやってきた人物でその『黒幕』である」、「申立人が過激で犯罪行為を繰り返す基地反対運動参加者に5万円の日当を出している」との事実を摘示しているものと認められ、TOKYO MXによって、それら事実の真実性は立証されていないとの判断を示した。

【決定の概要】

TOKYO MXは2017年1月2日、『ニュース女子』で沖縄の基地問題を取り上げ、1月9日の同番組では1月2日の放送に対する視聴者からの反響について冒頭で取り上げる放送をした。『ニュース女子』は「持込番組」であり、TOKYO MXは企画、制作に関わっていないが、「持込番組」であっても放送局が放送責任を負うことは当然であり、TOKYO MXもこれを争っていない。
この放送について申立人は、「高江でヘリパッドの建設に反対する住民を『テロリスト』『犯罪者』とし、申立人がテロ行為、犯罪行為の『黒幕』であるとの誤った情報を視聴者に故意に摘示した。『テロリスト』『犯罪者』といわれた人間は、当然のごとく社会から排除されるべき標的とされる。本放送によって〈排除する敵〉とされた申立人は平穏な社会生活を奪われたのである」などとしたうえ、そのように描かれた基地反対運動の「黒幕」であり「日当5万円」を支給しているものとされた「申立人の名誉の侵害について主に」問題とするなどと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しTOKYO MXは、1月2日の放送は、申立人が「のりこえねっと」を主宰する者で、現在は沖縄の基地問題にも取り組んでいるという事実を摘示するものに過ぎず、これらの事実摘示が、直ちに申立人の社会的評価を低下させるものではなく、また、申立人が基地反対運動の「黒幕である」とか、基地反対運動参加者に「日当」を出しているとの内容ではないし、仮にそのような内容であり、それが社会的評価を低下させるとしても、公共性のあるテーマについて公益目的で行われた放送で、その内容は真実であるから名誉毀損にはあたらない、などと反論した。
委員会は、申立てを受けて審理し決定に至った。委員会決定の概要は、以下のとおりである。
1月2日の放送は、前半のVTR部分と後半のスタジオトーク部分からなるが、トークはVTRの内容をもとに展開されており、両者を一体不可分のものとして審理した。VTR部分では基地反対運動が過激で犯罪行為を繰り返すものと描かれており、これを受けてのトーク部分では申立人が関わる「のりこえねっと」のチラシに申立人の名前が記載されていることに言及しつつ、申立人が日当を基地反対運動参加者に支給していると受け取る余地がある出演者の発言やテロップ、ナレーションが重ねて流される。これらの放送内容を総合して見ると、本件放送は「申立人は過激で犯罪行為を繰り返す基地反対運動を職業的にやってきた人物でその『黒幕』である」、「申立人は過激で犯罪行為を繰り返す基地反対運動の参加者に5万円の日当を出している」との事実を摘示しているものと認められ、それらは申立人の社会的評価を低下させるものと言える。この放送に公共性、公益性は認められるが、TOKYO MXによって、上記各事実の真実性は立証されておらず、申立人に対する名誉毀損の人権侵害が成立する。
これに加えて、1月2日および1月9日放送の『ニュース女子』には以下の2点について放送倫理上の問題がある。第一に、「放送倫理基本綱領」は「意見の分かれている問題については、できる限り多くの角度から論点を明らかにし、公正を保持しなければならない」などとしているところ、1月2日の放送を見れば申立人への取材がなされていないことが明らかであるにもかかわらず、TOKYO MXは考査においてこれを問題としなかった。第二に、「日本民間放送連盟 放送基準」は「人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」などとしているところ、そのような配慮を欠いた1月2日および1月9日のいずれの放送についても、TOKYO MXは考査において問題としなかった。
委員会は、TOKYO MXに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、人権に関する「放送倫理基本綱領」や「日本民間放送連盟 放送基準」の規定を順守し、考査を含めた放送のあり方について局内で十分に検討し、再発防止に一層の努力を重ねるよう勧告する。

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2018年3月8日 第67号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第67号

申立人
辛 淑玉
被申立人
東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYO MX)
苦情の対象となった番組
『ニュース女子』
放送日時
2017年1月2日(月)22時から23時のうち 冒頭16分
2017年1月9日(月)22時から23時のうち 冒頭 7分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.はじめに
  • 2.本件放送は申立人の名誉を毀損したか
  • 3.放送倫理上の問題について

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2018年3月8日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2018年3月8日午後1時からBPO第1会議室で行われ、午後2時30分から都市センターホテル6階会議室で公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

2018年6月19日 委員会決定に対する東京メトロポリタンテレビジョンの対応と取り組み

委員会決定第67号に対して、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)から対応と取り組みをまとめた報告書が6月8日付で提出され、委員会はこれを了承した。

全文PDFはこちらpdf


2018年2月に視聴者から寄せられた意見

2018年2月に視聴者から寄せられた意見

韓国・平昌で開かれた冬季オリンピックについて、競技内容や放送全般への意見に加え、韓国と北朝鮮の政治問題を、スポーツの世界に持ち込んだことへの批判や、全国各地の大雪被害に関する報道のあり方への意見など。

2018年2月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,299件で、先月と比較して710件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール86%、電話12%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性56%、女性43%、不明1%で、世代別では40歳代29%、30歳代27%、20歳代18%、50歳代17%、60歳以上7%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。2月の通知数は1,680件【41局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、19件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

韓国・平昌で冬季オリンピックが開かれたが、競技内容や放送全般への意見に加え、韓国と北朝鮮の政治問題をスポーツの世界に持ち込んだことへの批判が、多く寄せられた。また、先月に続き、全国各地の大雪被害に関する報道のあり方への意見も多かった。
ラジオに関する意見は32件、CMについては29件あった。

青少年に関する意見

2月中に青少年委員会に寄せられた意見は95件で、前月から25件減少した。
今月は「表現・演出」が27件と最も多く、次に「動物」と「性的表現」がそれぞれ10件、と続いた。
「表現・演出」では、バラエティー番組で自ら厳しい世界に飛び込んでいった若者を描いた企画について意見が寄せられた。「動物」では、犬の訓練士を取材したドキュメンタリー番組について意見が寄せられた。「暴力・殺人・残虐シーン」では、休日の早朝に放送したアニメ番組について意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • オリンピックが明日開幕するということを知らない人が意外に多くて驚いた。今一つ盛り上がらない原因として、韓国と北朝鮮の政治的駆け引きに注目するテレビ報道が挙げられると思う。「南北合同チームの是非」とか「北朝鮮の芸術団」とか、そんなことばかり取り沙汰されている。本来の"スポーツの祭典"とは違う方向に関心が行っているようで残念だ。今からでも遅くない。報道の仕方を軌道修正してほしい。

  • 平昌オリンピックについて。選手が主役のはずの報道のおよそ半分が北朝鮮応援団の話題ばかりで、異常だ。この日は、日本人選手が出場しているにも関わらず、ニュースになるのは日本人選手の登場に拍手をしない北朝鮮の応援団の情報だった。何のためのオリンピックなのか。北朝鮮の応援団は一度見れば十分だ。

  • 平昌オリンピックが開幕したが、この日の日本海側の天気予報は雪。ちょうど福井県に出張しており、テレビをつけると"大雪警報"の情報が出ていた。詳しく知りたいと思い、開会式を放送している局にチャンネルを合わせたところ、オリンピック映像だけが流れ、警報の文字も何もなかった。視聴者センターに問い合わせると、「オリンピックだから出さない、字幕がないことを視聴者が望んでいる」と言われ、話を聞いてもらえなかった。災害警報よりもオリンピックを優先するというのか。釈然としない思いだけが残った。

  • 福井県を中心とした大雪被害で、およそ1,500台の車が立ち往生し、24時間以上たっても解消の目途が立たないなか、朝・昼のワイドショーなどの、前日に発表された皇室関連の結婚延期報道を延々と繰り返す番組作りに疑問を抱いた。大雪は生活に大きな影響をきたしている。被害を伝える情報が少なく、不安にかられる人たちが大勢いるのではないか。

  • 富山県の大雪は大きな被害をもたらしそうだ。しかしながら、テレビはどの局も時間を割いて報道しない。食料や物資は交通が滞れば届かないのに、情報が必要な地方の人たちを無視して、オリンピック関連や芸能ニュースなどばかり。優先順位が違うのではないか。被害が拡大した場合、メディアにも責任があると思う。必要な人たちに必要な情報を伝えてほしい。

  • 就職活動の取材で許可なく撮影され、ニュースで放送されてしまった。取材クルーは、企業側には許可をとっていたようだが、求職者側にそれはなかった。私は、映り込みではなく、しっかりと顔をさらされてしまったが、就職活動時期が遅いという自覚があるので、あまり人に知られたくなかった。そういった事情を無視されたのは本当に悲しい。

【番組全般・その他】

  • 一般の人を誤って容疑者と報じた朝の番組。この手の後始末は、MCやアナウンサーが謝罪するだけでことを済ます。テレビ局の人間は、企業や政治家が何かやらかすと、「責任はどう取るつもりか」と詰め寄るが、自分たちの商品である"情報"に手違いがあったのなら、それは自分たちの責任問題である。局も番組も非を認めるべきだ。プロデューサー、チェック担当、テロップ作成者、全員そろって謝罪したほうがいいのではないか。どの局も、一昔前に比べたらありえないくらい、名前、写真、情報などの間違いが多い。そして、「大変失礼しました」の一言で次の話題へ行ってしまう。ネタをツイッターから拾い、ユーチューブの映像を紹介する。一般の人たちがすでにSNSで見たものを流す時代。テレビが本当につまらなくなった。

  • 大相撲の緊急特番を見た。一連の暴力事件の報道にもう辟易するが、いまだ解決させたくない向きがあるようで驚かされる。沈黙を続けていた親方が番組でベラベラと喋り、自己肯定、自己弁護に終始し、完全に相撲協会が悪であるかのような発言を並べ立てていた。テレビ局のスタンスが果たして正しいのか、疑問を抱いた。暴力は絶対にあってはならない。しかし、メディアは、視聴者を偏った思想や信条、局独自のポリシーに誘導してはいけない。多角的に物事を分析し、今回の騒動に対しても、双方向の言い分をしっかり取材・調査し、あらゆる可能性を探り、さまざまな意見を提示すべきなのではないかと強く感じた。それらの中から何を選択するかは視聴者の自由であり、決して特定の意見を押し付けられ、偏った方向へ誘導するべきではない。メディアの果たす役割は大きい。慎重に番組作りをしてもらいたい。

  • 女性出演者が、大阪に北朝鮮の工作員が紛れ込んでいるという趣旨の発言をしていた。この発言に関しては二つ問題がある。一つは、情報源を明かさずに発言したこと。現在、北朝鮮が核放棄できるか、核ミサイルを打たないか、国際社会が固唾をのんで見守り、平和的解決に向けて慎重に交渉を進めようとしている時期に、国内向けであっても、むやみな発言は避けたほうがいいし、このような国際問題は虚偽の情報が横行しやすいため、情報源を明確にしてから話すのが適当だ。もう一つは、仮に事実であったとしても、放送で流す内容ではない。もし大阪に北朝鮮の工作員が潜入しているとしても、誰が工作員かということをどうやって知るのか。この発言は、大阪に住んでいる在日コリアンの人たちへの憎悪を煽り、差別やそれに伴う犯罪を引き起こす恐れがあると思う。

  • 私たちが普段しないような、珍しい体験をした人をスタジオに呼び、それを紹介するという番組を見た。女性アナウンサーが、体験談をプレゼンテーションするという形で番組が進んでいく。その進行は、面白おかしく、時には真面目な知識も交えて、というものだ。スタジオに呼ばれた人たちには、それぞれにドラマがあるのだと気付かされることが多々ある。今回は、毛抜きで襲ってきたタクシー強盗に、愛情を持って接したという男性の体験談が紹介された。ゲストの女性タレントが、そのタクシー強盗の言動に厳しい言葉を浴びせた場面もあったが、人には誰しも愛情が必要であることが改めて分かった。お笑い芸人やタレントの内輪話を流すだけの番組より、趣のある番組だと思う。

  • 愛車自慢コンテストの特集を見た。マシンや競技そのものにスポットが当てられることが多いモータースポーツで、レーシングドライバーが、普段どんな車に乗っているのかという特集は、非常に興味深い。今なお愛され続ける往年の名車を大切に乗り続けているドライバー、競技で使用するマシンと同じ車種に乗っているドライバー、あるいは、意外なドライバーが意外な車種に乗っているなど、見ていて非常に楽しい。地上波におけるモータースポーツ番組がめっきり減ってしまった今日、こういった番組や特集をきっかけに、モータースポーツに興味を持つ人が老若男女問わず増えてくれれば、車好きとして嬉しい。

【ラジオ】

  • 私の住んでいる県では、老人たちの老化ぶりを面白がる風潮があるようで、女性パーソナリティーが務める情報番組の冒頭から、それをネタに盛り上がっている。「お年寄りはこんな風になっていくんですよ…」と面白おかしくからかわれ、70代の私にとっては実に不愉快だ。局に抗議をしたが、今のところ何の対応もない。ラジオは毎日楽しみに聞いているが、これには耐え切れない思いがする。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、夢のため自ら厳しい世界に飛び込んでいった若者たちを密着取材した企画について、今どき、このような根性論に終始した指導をする運動部を、美談として紹介するのは、時代錯誤ではないか。これを教育の一環として大人が真似をしたら、体罰問題、パワハラ問題につながるのではないか。

【「動物」に関する意見】

  • ドキュメンタリー番組で凶暴化した犬をしつける犬の訓練士を描いた企画について、訓練とは言い難い暴力を使った虐待であり、犬ならば許されるというものではない。動物に対する虐待が、その後、弱い立場の人間に矛先を変えていくことがあるのではないか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 休日の早朝に放送したアニメ番組について、子どもが見る時間にあのような残虐なアニメを放送する気がしれない。もう一度、青少年のための番組作りを考え直してもらいたい。最近は、残酷なアニメが親の知らない時間帯に多く放送されていて不安だ。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 話題がオリンピックばかりである。ほぼ一日中、オリンピックを放送しているのに、ニュースの時間まで使う必要はないと思う。ニュースの時はオリンピック以外のニュースを放送するべきだ。政治離れが若者に進んでいる理由には、ニュースでの政治に関する時間が少なすぎることも挙げられると思う。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 科学を扱ったバラエティー番組で、丸刈り頭の芸人の頭に特殊なジェルを塗り、火をつけ、オムレツを焼いていたが、危険すぎる。子どもが真似したら大事故につながる。また、いじめの道具にしたらどうするのか。「マネしないでください」と文字を入れていたが、文字を入れれば何をしてもよいというわけではない。