第129回 放送倫理検証委員会

第129回–2018年9月

“オウム真理教の教材VTRの配布時期を誤報”フジテレビの『直撃LIVE グッディ!』などを討議

第129回放送倫理検証委員会は9月14日に開催され、フジテレビの『直撃LIVEグッディ!』と『報道プライムサンデー』が放送したオウム真理教元幹部の死刑執行をめぐる特集を討議した。当該番組は、教団が作成した教材映像の配布時期を誤って放送したもので、フジテレビは訂正とお詫びの放送を行った。委員会では当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、誤報に至った経緯等について、さらに詳しく説明を求めるべきではないかとの意見が相次ぎ、委員会として当該放送局に追加質問を行い、討議を継続することとなった。

議事の詳細

日時
2018年9月14日(金)午後5時~午後7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. オウム真理教元幹部の死刑執行に絡む特集で、後継団体で配布された教材VTRの配布時期を誤報したフジテレビの『直撃LIVEグッディ!』および『報道プライムサンデー』を討議

フジテレビの情報制作局制作の情報番組『直撃LIVEグッディ!』は、オウム真理教元幹部7人の死刑が執行された後、後継団体の一つであるアレフがオウム真理教時代に作成された教材映像を広く配布したと7月13日(金)の放送で伝えた。また、7月15日(日)には、報道局制作の『報道プライムサンデー』が、『直撃LIVEグッディ!』が入手した放送素材を使って同趣旨の内容を報じた。しかし放送後、映像提供者から当該映像は元幹部らの死刑執行前から配布されているものであり、執行後に配布されたものではないとの指摘があった。
当該放送局から委員会に提出された報告書によると、配布時期を誤って放送したのは担当ディレクターの思い込み等によるものと説明、映像提供者に謝罪するとともに、7月22日に『報道プライムサンデー』、23日に『直撃LIVEグッディ!』でそれぞれ訂正とお詫びの放送を行った。
委員からは、「インパクトのあるものを探す中、自分の思い込みに都合よく当てはめたのではないか」「個人の資質にも問題はあるが、チェックする人の役割も十分に発揮されたとは言えない」など、厳しい意見が相次いだ。
委員会では、映像提供者が映像の配布時期について説明しているにもかかわらず、なぜ担当ディレクターが配布時期について誤った思い込みを持ったのか、他のスタッフによるチェック機能が、なぜ働かなかったのか。また、「『とくダネ!』2つの刑事事件に関する意見(委員会決定第28号)」に対応して提出された当該放送局の「再発防止に向けた取り組み」に記されたチェック機能等が働かなかったことなどについて、より詳しい説明を求める必要があるとして追加質問を行い、次回の委員会でさらに討議することとなった。

以上

第261回放送と人権等権利に関する委員会

第261回 – 2018年9月

「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2018年9月18日(火)午後4時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、白波瀬委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案

対象となったのは、外交官・杉原千畝の出生地をめぐって、CBCテレビが2016年7月から翌年6月までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。岐阜県八百津町は千畝の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したが、番組では「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとして、千畝の戸籍謄本についての検証や千畝の出生地が記された手記の筆跡鑑定の結果等を放送した。
この放送について、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが「手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を訴え申し立てた。これに対しCBCテレビは、「一連の報道は、出生地の疑問やその根拠を再検証したもので、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、申立人らが偽造したという印象を一般の視聴者が抱くとは思えない」と主張している。
今月の委員会では、第2回起草委員会を経て提出された「委員会決定」修正案を審理し、次回委員会でさらに検討することになった。

2.「芸能ニュースに対する申立て」事案

対象の番組は、2017年12月29日に放送されたTBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター超豪華!芸能ニュースランキング2017決定版』。番組の中ほどで「14位 俳優・細川茂樹 事務所と契約トラブル」とナレーションがあり、「昨年末、所属事務所から『パワハラ』を理由に契約解除を告げられた細川茂樹さん。今年5月、『契約終了』という形で、表舞台から姿を消した。」と伝えた。
この放送について細川氏は、事務所からパワハラを理由に契約解除されたことをわざわざ強調して取り上げているが、東京地裁の仮処分決定で事務所側の主張に理由がないことが明白になっており、申立人の名誉・信用を侵害する悪質な狙いがあったと言わざるを得ないと主張し、謝罪と名誉回復措置を求めて申し立てた。これに対してTBSテレビは、意図的に申立人を貶めた事実は全くないとする一方、放送に「言葉足らずであって、誤解を与えかねない部分があった」として、申立人におわびするとともに、ホームページあるいは放送を通じて視聴者に説明することを提案し、出来る限りの対応をしようとしてきたとしている。
前回の委員会後、申立人から「反論書」が、被申立人から「再答弁書」が提出され、所定の書面が出揃った。
今月の委員会では事務局が双方から提出された資料と主な主張について説明し、委員が意見を交わした。今後、担当委員が事案の論点とヒアリングに向けた質問事項を整理し、次回委員会に提案することとなった。

3. その他

  • 長崎県の民放、NHKとの意見交換会を11月28日に長崎市で開催することになった。

  • 次回の委員会は10月16日に開かれる。

以上

2018年8月に視聴者から寄せられた意見

2018年8月に視聴者から寄せられた意見

ボクシング連盟幹部の不適切な交際などを報じた番組への意見や、夏恒例の長時間にわたるチャリティー番組への意見など。

2018年8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,196件で、先月と比較して22件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール70%、電話28%、郵便 1%、FAX 1%。
男女別は男性69%、女性29%、不明2%で、世代別では40歳代25%、50歳代22%、30歳代21%、20歳代20%、60歳以上10%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は延べ614件【40局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、24件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

大学アメリカンフットボールや女子レスリングなど、アマチュアスポーツ界の問題が後を絶たない中、ボクシング連盟幹部の不適切な交際などを報じた番組への意見が多く寄せられた。また、夏恒例の長時間にわたるチャリティー番組への意見も多かった。
ラジオに関する意見は41件、CMについては27件あった。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は84件で、前月から17件増加した。
今月は「表現・演出」が33件、「性的表現」と「低俗・モラル」がともに9件、「言葉」が5件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • ラオスのダム決壊で、多数の死者・行方不明者を出し、隣のカンボジアと合わせて3万人もの人々が避難している。この大惨事について、テレビ各局ともニュースとして小さく取り上げただけで、特集番組を組むなど大きく取り上げていない。タイの少年たちの救出の際は、連日のように報道していたのに、この差はどういう理由によるものか。手抜き工事による決壊だったのか、自然災害なのか、各国からの支援状況はどうなのか、きちんと取材し報道してほしい。

  • 鹿児島に住んでいる。今日、私は物損事故を起こして車も大破したので、警察を呼び、現場検証をしていた。そこに男性が数人来て、断りもなくカメラを回し始めた。その場には個人情報が分かるものもあり、子どももいたので、撮影を断ったが、「私たちは○○放送で、事故を報道する義務がある」と言われた。名前を尋ね、名刺を求めたが無視された。その後、その局の責任者らしき人が来て、放送するのか尋ねたところ、明確な返答はもらえなかった。事故を起こした直後で気が動転しており、子どもも一緒にいた。何の断りもなくこのように撮影をするのは、普通のことなのか。

  • 昼のニュースで、お盆のUターンラッシュの様子を伝えていた。その際、新幹線のプラットホームで、極端なローアングルで撮られた乗客の姿が映っていた。地面すれすれから、見上げるように撮ったと思われる映像だ。乗客の中には、ミニスカート姿で新幹線に乗り込む際、太ももの際どい所まで映された女性もいた。故意に狙ったのではないだろうか、盗撮映像に近い印象を受けた。ニュース素材として適切なものではないと思う。

  • 今日8月6日は、世界で初めて原爆が広島に投下された日だ。そんな日に、民放各局は、その時間帯の大半を、ボクシング連盟の問題を伝えることに終始していた。各局ともに言えることだが、報道内容の重みが分からなくなっているのではないか。報道番組、情報系番組のあり方を、真剣に検討することを望みたい。

【番組全般・その他】

  • 朝の番組に、ボクシング連盟の幹部が生出演していた。その中で、彼は「○○さんは前科者、暴力団と関係がある」など、個人名を挙げ、名誉毀損とも思われる発言をしていた。このように、何を話すか分からない人を生放送に出演させていいのだろうか。放送局には局としての責任があるはずだ。視聴率よりも、テレビで放送していい内容かどうかを確認することのほうが大切だと思う。

  • 民放各局の情報系番組に共通することだが、週刊誌の記事や関係者の噂話レベルの情報を、さもウラの取れた真実であるかのように伝えている。例えば大学アメフト部やボクシング連盟の問題などである。渦中の人たちに対し、この時とばかりにバッシング発言を浴びせているが、これらを一方的に伝えることは公正ではない。問題の人たちを擁護する気は全くないが、冷静さを欠いた報道はやめたほうがいいのではないか。

  • 昼の番組で、大学チアリーディング部のパワハラ問題を取り上げていた。告発文だけを根拠に、一方的に指導者の人格を否定するような発言がみられた。そもそも、告発文が事実に即したものなのか甚だ疑問に感じ、告発者側が誇張したようにも取れる内容だったが、それが真実であると疑わない姿勢で、指導者を攻撃し続けた。不確実さを含まないとも限らない内容を基に、複数の出演者で指導者の人格否定をするのは、適切な放送であったとは思えない。

  • 40度近い気温で、外出自粛がアナウンスされる中、ドクターやトレーナーなど周りのサポートがあるとはいえ、トライアスロンの選手でも実施しないような行き過ぎた距離を、NOと言いにくい芸人に走らせたのはどうかと思う。また、膝の激痛に耐えて走ることをなぜ美談仕立てにするのか。練習時から「アイスピックで刺されたように痛む」と言っている人間を無理やり走らせることが、「感動に繋がり」「愛は地球を救う」ことになるのか、甚だ疑問だ。テレビ局の都合で、放送終了間際にゴールするように調整しているのも、毎年見ていて気持ちが悪い。「毎年恒例だから…」ということで、どんどん無茶な内容になっていくのは、目も当てられない。

  • チャリティー番組の企画に合わせて、大手商業施設で募金をしている。近所のスーパーでは、すべての出入口で行われており、入る時と出る時、2回募金をしないと後味が悪いほど、大声で募金を呼び掛けている。良心の呵責を利用されているようで、あまり気分は良くない。ボランティアや募金活動が悪いとは言わないが、もう少しやり方を考えてもいいのではないか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • チャリティー番組でタレントが過酷なトライアスロンに挑戦する企画について、"酷暑・熱中症注意"と毎日報道されている中、このような企画がなぜ強行されるのか理解に苦しむ。見ているだけで苦痛だった。部活中に熱中症で倒れる学生、亡くなった小学生が思い出された。彼ら当事者の遺族が見ていたらと思うと胸が張り裂けそうだ。

【「低俗・モラル」に関する意見】

  • 深夜のバラエティー番組で、子どもが踊っている隣に股間に24枚のシートを重ねた上にコーヒーカップを載せた裸の芸人が出てきて、シートを1枚ずつ取って行き、最後はコーヒーカップだけで股間を隠し得意そうにしていた。深夜とはいえ子どもが踊っている隣でこのような芸をさせるのはいかがなものか。

【「性的表現」に関する意見】

  • 海外で制作・放送されたドッキリ映像を扱ったバラエティー番組について、小学生の子どもと見ていた。下ネタとお色気の内容が多すぎて不快な気持ちになった。19時台に放送するには性的映像が多用されていた。できれば子どもに見せたくなかった。

【「言葉」に関する意見】

  • 各局の番組で「強制性交」という言葉が繰り返されることに抵抗を感じる。青少年が見ているテレビで"強制"という言葉がついているとはいえ、"性交"と連呼している。他の表現を考えて実施してほしい。

【「編成」に関する意見】

  • 日曜の朝に娘が楽しみにしている少女アニメがある。その日はアニメ番組を潰し、直前の情報番組を拡大して高校野球の内容を放送していた。
    アニメ番組を潰してまでやる必要はあるのだろうか。番組を楽しみにしている子どもたちの気持ちを考えてほしい。

【「視聴者意見」に関する意見】

  • 深夜のアニメに苦情が入り過ぎている。深夜アニメは子どもが間違って見ないように深夜に放送しているのであって、それに対して"子どもが見たらどうするのか"という意見を述べるのはおかしい。子どもが深夜アニメの時間帯に起きているのであれば、それは子どもを寝かさない親の責任であって、番組に責任があるのではない。

2018年9月7日

『放送人権委員会 判断ガイド2018』を刊行

放送人権委員会は『放送人権委員会 判断ガイド2018』を刊行した。委員会がこれまでに通知・公表した67件の決定文や、そこで示された判断のポイントや留意点、関係の資料等を掲載している。
決定件数が増えたことから、判型を従来の『判断ガイド』よりもひと回り大きいB5版とし、3色刷りにして見易くした。内容では、委員会審理で取り上げる機会が多くなっているバラエティー番組と名誉感情に関する項目を新たに設けた。