第109回 放送倫理検証委員会

第109回–2016年11月

TBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』を審議など

出演者の姿を本人の了解を得ずに映像処理で消したのは問題で、制作体制などについて検証の必要があるとして審議入りしたTBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』について、前回委員会の議論を盛り込んだ意見書の修正案が担当委員から提出された。内容や表現をめぐって意見交換が行われた結果、大筋で了解が得られたため、一部手直ししたうえで、12月上旬にも当該局への通知と公表の記者会見をすることになった。
参議院議員選挙と東京都知事選挙について放送局からの報告や視聴者からの意見が寄せられことから、選挙報道の公平・公正についての委員会の考え方を示すのは意味があるとして、前回委員会で、二つの選挙に見られた選挙報道全般の問題点を対象として審議入りしたが、今回の委員会では、担当委員から意見書の骨子案が出され、選挙報道のあり方についてさまざまな観点から議論が続けられた。
「慶應大学広告学研究会の女性集団暴行事件」を扱った二つの情報番組について討議した。一つはフジテレビ・関西テレビの共同制作番組『Mr.サンデー』で、中心人物とされる男子学生の実名が露出してネットに拡散した事案。もう一つは、テレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』で、被害女性への配慮を欠いた内容の放送がなされたという事案である。委員会は、当該局の報告を基に討議した結果、『Mr.サンデー』については、単純なミスであり事後の処理も適切であるので、当該局に一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事録に掲載するが審議の対象とはしないことを決めた。一方、『羽鳥慎一モーニングショー』については、さらなる確認や検討が必要だとして、次回委員会で討議を継続することになった。
委員会の10周年にちなんだ記念のシンポジウムについて、担当委員から構成の一部見直しが提案され、承認された。

1. 出演者の映像を本人の了解なしに消去したTBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』を審議

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』(6月19日放送)の珍種目の一つ「双子見極めダービー」で、実際は最後まで解答した出演者を、映像を加工して途中でレースから脱落したことにして放送した事案について、前回の委員会で意見書原案に示された意見や議論を踏まえた修正案が担当委員から提出された。
「出演者の姿を無断で消すことに一部スタッフが感じた疑問が伝わらなかったのは、番組の制作環境に問題があったのではないか」「バラエティー番組において、さまざまな属性の出演者との信頼関係を、制作者はどのように考えるべきか」などの論点について詰めの議論が交わされた。また、より明確に委員会の考えを伝えることができるよう、意見書の表現についても意見交換が行われた。
その結果、大筋で了解が得られたため、表現の細部等について手直しをしたうえで、12月上旬にも当該局への通知と公表の記者会見をすることになった。

2. 参議院議員選挙と東京都知事選挙の選挙報道について審議

7月に行われた参議院議員選挙と東京都知事選挙について、放送局からの報告や視聴者からの意見が寄せられる中で、委員会は前回、「選挙報道が萎縮しているのではないか」といった指摘がなされている現状も考慮すると、具体的な事例を参照しつつ選挙報道の公平・公正についての委員会の考え方を示すのは意味があるとして、参院選と都知事選に見られた選挙報道全般の問題点を対象として審議入りすることを決めた。
今回の委員会では、担当委員から意見書の骨子案が出され、「放送法で求められているのは、選挙の争点についての豊富な情報の提供である」といった意見や、「公職選挙法は、政見放送と経歴放送を除けば、選挙に関する報道の自由を制約してはいない」といった意見が出されるなど、選挙報道のあり方についてさまざまな観点から議論が続けられた。
その結果、これらの議論をもとに担当委員が意見書の原案を作成し、次回委員会に提出することになった。

3. 慶應大学広告学研究会の女性集団暴行事件の報道で、中心人物とされる男子学生の実名が露出したフジテレビ・関西テレビ共同制作の情報番組『Mr.サンデー』を討議

フジテレビと関西テレビが共同制作する情報番組『Mr.サンデー』は、「慶應大学広告学研究会の女性集団暴行事件」を扱った特集を10月16日に放送した。その中で、中心人物とされる男子学生のメールアドレスを入手して、取材依頼の電子メールを送信するとともに、そのメール本文と、パソコンに向かってメールを作成する模様を撮影し、イメージ映像として放送した。このメール本文にはこの男子学生の姓が記載されていたため、放送直後からインターネット上にメール文の静止画像が出回り、名前が拡散された。当該局の報告書によると、担当ディレクターがメールに男子学生の実名を書き込んだことを忘れていたため、モザイク処理などを施さずに放送し、その結果、実名が1.5秒間露出したという。
BPOには、「まだ立件されていない男子学生の実名がさらされている。問題ではないか」という視聴者意見が寄せられた。
当該局は、当該映像の使用を直ちに禁止すると共に、個人情報の扱いについて一層の注意喚起をし、個人情報やプライバシー情報についてはディレクターのみならずカメラマンやアシスタントディレクターまでクロスチェックすることを義務づけるなどの再発防止策をとり、また個人情報の拡散防止のためSNSサイトの管理者に情報の削除要請を行っているが、まだ完全に削除しきれていない。
委員会の議論では「初めて放送を見た視聴者は時間が短くて気付かないかもしれないが、誰かが録画して静止画像がネットに出ることは容易に想像でき、不注意では済まされない問題だ」などとの厳しい意見もあった。ただ、原因は単純なミスであり、委員会の意見を議事録に紹介することで当該局に一層の注意喚起を促すことにしたいとして議論を終え、審議の対象とはしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • ネットに個人情報をアップロードしたくて待ち構えている者が数多くいる中、メディア側が不用意に個人情報をさらしてはならない。
  • メールに実名を書きこんだことを、翌日になったら書いた本人が忘れたと報告書にあるが、にわかに信じがたい。あまりにもずさんだ。
  • メールアドレスをつかんだからといって、取材申し込みのメールをわざわざ映す必要は、そもそもない。ケアレスミスだろうが、必要のないイメージ映像まで作って尺を稼ごうとする安易な演出手法にも問題があるのではないか。
  • 事後の対応は迅速で、またSNSサイトの管理者に情報の削除要請をするなど被害の拡大防止に手を尽くしていることは評価できる。

4. 同じ慶應大学女性集団暴行事件の報道で、被害女性に配慮を欠いた内容を放送したテレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』を討議

テレビ朝日の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』は、「独自 慶應生女性暴行疑惑 現役メンバー直撃 当事者の証言」と題した特集を10月20日に放送した。独自取材として放送されたVTRは、慶應大学広告学研究会のメンバーや男性OBの「被害女性側にも非があるのではないか…」というインタビューや、女性が知人とやりとりしていたLINEの画面の内容(イメージ再現)など、男子学生側の言い分を中心に構成されていた。また、サークルメンバーの話にあった「大学側も動画を確認し、事件性なしと判断したと聞いている」というコメントをスタジオで取り上げ、コメンテーターから大学側の対応を非難する発言があった。
当該局から委員会宛てに提出された報告書によると、放送後、当該局には被害女性の弁護士から抗議文が届き、視聴者からも批判的な意見が寄せられた。また慶應大学からは「大学側は動画を確認していない。事件性がないとは言っておらず、報道されているような事件性を確認するには至らなかったとコメントを出した」との指摘があったという。
BPOに対しても、視聴者から「被害女性の人権を侵害している」などとの放送内容に批判的な意見が多数寄せられた。
その後、当該局が被害女性の弁護士と面会して、放送内容が配慮を欠いていたことを謝罪するとともに、10月27日の当該番組内でお詫び放送を行った。
委員会の議論では、「男子学生側の主張で構成されているうえ、裏取り取材がほとんど行われていない」「女性への配慮が決定的に欠けた放送内容になっている」などとの厳しい意見が相次いだ。しかしながらこの事案は、現在捜査が進められており、さらに確認や検討が必要な点も出てくる可能性があるとして、次回の委員会で討議を継続することになった。

【委員の主な意見】

  • サークル側の学生の主張に沿った内容で、大学側が動画を見た上で事件性がないと判断したのかどうかなど、少し取材すればすぐに事実でないことが判明したことについても、男子学生側の言い分をそのまま放送している。ただ、当該局の報告書によると、番組担当の幹部が放送直後に問題点を指摘し、お詫び放送もしていて、事後処理は適切だと思う。
  • 男子学生側の主張を一方的に伝えた当該番組の発想自体が、ジャーナリストとしての倫理観を欠いているのではないか。男子学生側は、女性が他の男性と交際していたということが、女性にも非がある証拠だと考えているようだが、全くナンセンスな発想であり、この間違った判断を何の批判も加えずそのまま放送したことは、放送局側の見識を疑わせる。ただ、この事案で意見を言うたびに、被害女性にも焦点が当たってしまうのは本意ではない。
  • 一般論だが、捜査中の動いている事件については、より一層の細かい配慮が必要だ。当該番組にはこの配慮が欠けていたと思う。
  • VTRを見ていて大変不快に感じた。当該局が、常識的にはありえないサークル側の学生の主張を中心にして番組を構成していることと、大学側などに対して裏取り取材をしていないことが一番の問題ではないかと思う。ただ、捜査中の事案でもあり、事実関係に争いがあるようであるから、ひとまず推移を見守ったらどうか。

5. 委員会発足10周年記念シンポジウムについて

10周年記念のシンポジウムについて、担当委員から構成の一部見直しが提案され、承認された。

以上

第241回放送と人権等権利に関する委員会

第241回 – 2016年11月

STAP細胞報道事案の審理、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の審理、都知事関連報道事案の審理、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理入り決定…など

STAP細胞報道事案および事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の「委員会決定」案をそれぞれ検討、また都知事関連報道事案を審理し、浜名湖切断遺体事件報道に対する申立てを審理要請案件として検討して審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2016年11月15日(火)午後4時~10時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では、10月末に行われた第3回起草委員会での議論を経て提出された「委員会決定」修正案について各委員が意見を出した。次回委員会までに第4回起草委員会を開いて、さらに修正を加えた「委員会決定」案を次回委員会に提出して検討することとなった。

2.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の審理

3.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案の審理

対象となったのはテレビ熊本と熊本県民テレビが2015年11月19日にそれぞれニュースで扱った地方公務員による準強制わいせつ容疑での逮捕に関する放送。申立人は、放送は事実と異なる内容であり、初期報道における「極悪人のような報道内容」などにより深刻な人権侵害を受けたとして、謝罪文の提出など放送局の対応を求めていたもので、9月に双方からヒアリングを行っている。
今委員会では、11月上旬の第1回起草委員会でまとめられた「委員会決定」案について起草委員が説明し、それを受けて委員の間で意見交換が行われた。議論では、警察広報文と警察取材に基づく情報の扱いなどについて意見が交わされたほか、熊本県民テレビについては出演者のコメントについても議論された。委員会は、こうした議論を基に第2回起草委員会を開き、次回委員会に修正を加えた「委員会決定」案を提出することを決めた。

4.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
今月の委員会では、起草担当委員から本件事案の論点とヒアリングの質問項目の案が示され審理した。ヒアリングについては、今後、先行している事案の審理状況を見ながら実施することになった。

5.審理要請案件:「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」

上記申立てについて審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。
対象となった番組は、テレビ静岡が本年7月14日に放送したニュース番組(全国ネット及びローカル)で、静岡県浜松市の浜名湖周辺で切断された遺体が発見された事件で「捜査本部が関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べている」等と放送した。
この放送に対し、同県在住の男性は同月16日テレビ静岡に電話し、自分は事件とは関係ないのに同社記者が勝手に私有地に入って撮影し、犯人であるかのように全国ネットで報道をした等と抗議した。
同氏はその後テレビ静岡と話し合いを続けたが不調に終わり、9月18日付で申立書を委員会に提出。同事件の捜査において、「実際には全く関係ないにもかかわらず、『浜名湖切断遺体 関係先を捜索 複数の車押収』と断定したテロップをつけ、記者が『捜査本部は遺体の状況から殺人事件と断定して捜査を進めています』と殺人事件に関わったかのように伝えながら、許可なく私の自宅前である私道で撮影した、捜査員が自宅に入る姿や、窓や干してあったプライバシーである布団一式を放送し、名誉や信頼を傷つけられた」として、放送法9条に基づく訂正放送、謝罪およびネット上に出ている画像の削除を求めた。
また申立人は、この日県警捜査員が同氏自宅を訪れたのは、申立人とは関係のない窃盗事件の証拠物である車を押収するためであり、「私の自宅である建物内は一切捜索されていない」と主張、そのうえで、「このニュースの映像だけを見れば、家宅捜索された印象を受け、いかにもこの家の主が犯人ではないかという印象を視聴者に与えてしまう。私は今回の件で仕事を辞めざるをえなくなった」と訴えている。
この申立てに対しテレビ静岡は11月2日、「経緯と見解」書面を委員会に提出し、「本件放送が『真実でない』ことを放送したものであるという申立人の主張には理由がなく、訂正放送の請求には応じかねる」と述べた。この中で、「当社取材陣は、信頼できる取材源より、浜名湖死体損壊・遺棄事件に関連して捜査の動きがある旨の情報を得て取材活動を行ったものであり、当日の取材の際にも取材陣は捜査員の応対から当日の捜索が浜名湖事件との関連でなされたものであることの確証を得たほか、さらに複数の取材源にも確認しており、この捜索が浜名湖事件に関連したものとしてなされたことは事実」であり、「本件放送は、その事件との関連で捜査がなされた場所という意味で本件住宅を『関係先』と指称しているもの。また本件放送では、申立人の氏名に言及するなど一切しておらず、『申立人が浜名湖の件の被疑者、若しくは事件にかかわった者』との放送は一切していない」と反論した。
さらに、「捜査機関の行為は手続き上も押収だけでなく『捜索』も行われたことは明らか。すなわち、捜査員が本件住宅内で確認を行い、本件住宅の駐車場で軽自動車を現認して差し押さえたことから、本件住宅で捜索活動が行われたことは間違いなく、したがって、『関係先とみられる住宅などを捜索』との報道は事実であり、虚偽ではあり得ない」と主張した。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

6.その他

  • 委員会が10月27日に沖縄で開催した県単位意見交換会について、事務局から概要を説明し、その模様を放送した番組の同録DVDを視聴した。委員会から坂井眞委員長、奥武則委員長代行、曽我部真裕委員の3人が出席し、放送局側からは県内の民放5局とNHK沖縄放送局から合計42人が参加、地元沖縄の事例や最近の委員会決定について活発な意見交換が行われた。
  • 「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案で、「放送倫理上重大な問題あり」(勧告)の委員会決定を受けたテレビ朝日で、11月10日に坂井眞委員長と担当した奥武則委員長代行、紙谷雅子委員が出席して研修会が開かれたことを、事務局が報告した。報道や制作の現場の社員ら約130人が出席し、2時間にわたって決定のポイントやテレビ的技法の使い方等をめぐって意見を交わした。
  • 次回委員会は12月20日に開かれる。

以上

2016年11月15日

「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会11月15日の第241回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、テレビ静岡が本年7月14日に放送したニュース番組(全国ネット及びローカル)で、静岡県浜松市の浜名湖周辺で切断された遺体が発見された事件で「捜査本部が関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べている」等と放送した。
この放送に対し、同県在住の男性は同月16日テレビ静岡に電話し、自分は事件とは関係ないのに同社記者が勝手に私有地に入って撮影し、犯人であるかのように全国ネットで報道をした等と抗議した。
同氏はその後テレビ静岡と話し合いを続けたが不調に終わり、9月18日付で申立書を委員会に提出。同事件の捜査において、「実際には全く関係ないにもかかわらず、『浜名湖切断遺体 関係先を捜索 複数の車押収』と断定したテロップをつけ、記者が『捜査本部は遺体の状況から殺人事件と断定して捜査を進めています』と殺人事件に関わったかのように伝えながら、許可なく私の自宅前である私道で撮影した、捜査員が自宅に入る姿や、窓や干してあったプライバシーである布団一式を放送し、名誉や信頼を傷つけられた」として、放送法9条に基づく訂正放送、謝罪およびネット上に出ている画像の削除を求めた。
また申立人は、この日県警捜査員が同氏自宅を訪れたのは、申立人とは関係のない窃盗事件の証拠物である車を押収するためであり、「私の自宅である建物内は一切捜索されていない」と主張、そのうえで、「このニュースの映像だけを見れば、家宅捜索された印象を受け、いかにもこの家の主が犯人ではないかという印象を視聴者に与えてしまう。私は今回の件で仕事を辞めざるをえなくなった」と訴えている。
この申立てに対しテレビ静岡は11月2日、「経緯と見解」書面を委員会に提出し、「本件放送が『真実でない』ことを放送したものであるという申立人の主張には理由がなく、訂正放送の請求には応じかねる」と述べた。この中で、「当社取材陣は、信頼できる取材源より、浜名湖死体損壊・遺棄事件に関連して捜査の動きがある旨の情報を得て取材活動を行ったものであり、当日の取材の際にも取材陣は捜査員の応対から当日の捜索が浜名湖事件との関連でなされたものであることの確証を得たほか、さらに複数の取材源にも確認しており、この捜索が浜名湖事件に関連したものとしてなされたことは事実」であり、「本件放送は、その事件との関連で捜査がなされた場所という意味で本件住宅を『関係先』と指称しているもの。また本件放送では、申立人の氏名に言及するなど一切しておらず、『申立人が浜名湖の件の被疑者、若しくは事件にかかわった者』との放送は一切していない」と反論した。
さらに、「捜査機関の行為は手続き上も押収だけでなく『捜索』も行われたことは明らか。すなわち、捜査員が本件住宅内で確認を行い、本件住宅の駐車場で軽自動車を現認して差し押さえたことから、本件住宅で捜索活動が行われたことは間違いなく、したがって、『関係先とみられる住宅などを捜索』との報道は事実であり、虚偽ではあり得ない」と主張した。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2016年10月20日

中京地区の放送局との意見交換会

放送倫理検証委員会と中京地区の放送局13局との意見交換会が、10月20日に名古屋市内で行われた。放送局側から61人が参加し、委員会側からは川端和治委員長、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、藤田真文委員の4人が出席した。放送倫理検証委員会では、毎年各地で意見交換会を開催しているが、愛知県、三重県、岐阜県内のすべての放送局を対象としたのは初めて。
冒頭、BPOの濱田純一理事長が、「"自由"は、民主主義と表現にとって最も基本的なものである。しかし、その"自由"も緊張感がないと、いいものになっていかない。放送局の皆さんは、それを鍛える材料として、BPOをうまく利用してほしい。意見交換会は、皆さんの実感を委員に伝える貴重な機会である。委員も、その実感をベースに委員会の考えをまとめたいと努力している。その意味でも、今日は深い質疑応答ができるよう、日頃考えていることをストレートに話していただきたい」と挨拶した。
意見交換会の第1部のテーマは、「選挙報道について」だった。今年は、参議院議員選挙の年であり、その報道を中心に意見交換を行った。まず渋谷委員が、2013年の参院選の際、委員会が公表した決定17号「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」について説明し、「民主主義にとって最も重要なものが選挙であることをしっかり理解したうえで放送にあたってほしい。また、視聴者の立場に立って公正公平の意味を考えてほしい」と要望した。
次に参加者から、「選挙期間中、候補者を紹介する際は、尺を計って、平等に放送している。また、立候補表明をした人は、必要な時以外は出演させない。期間中、ある候補者を応援するタレントの出演も控えている。選挙ポスターの映り込みにも注意を払っている」「候補者を紹介する際、与党、野党をまとめるなど見やすくするための編集をしているが、公平性に悩むことがある。また、争点を取り扱う時、それが視聴者にとって本当の争点であるのか疑問に思うこともある」「選挙が近づいてくると、政策についての報道は、公平性を意識するあまり放送を控えてしまうことがある。18歳選挙が始まったが、特に若い人は、直前になって投票を決める傾向があるので、選挙が近づいた時の選挙報道はより重要になると思う」など選挙報道の現状が報告された。
これに対し、藤田委員からは、「選挙報道でも、基本的に、放送局の編集権、報道の自由は守られている。選挙期間中にトータルに公平性が担保されていればよい。時間の平等に神経質になりすぎているのではないだろうか」との指摘があり、斎藤委員からは「選挙報道でも自分たちで取材を重ねたうえで、自分たちの考えるニュースバリューにしたがって報道することが重要である。むしろ、自分たちで争点を作るくらいでよいのではないだろうか。要するに自信を持ってください、と言いたい」との発言があった。
これらの発言に対し、参加者からは、「自分たちで争点を捉えて、視聴者にとって選挙の本質は何かを伝えていくことが重要だとあらためて思った。しかし、私たちが視聴者にとって公正公平だと思って放送しても、視聴者の側から厳しい意見が来ることもある。最近、放送の自由に対して視聴者の目も厳しくなっている」という放送にあたっての悩みも報告された。
第1部の締めくくりとして、川端委員長から、「視聴者が正しい判断ができるだけの情報を伝えることが放送する側の任務である。それを果たしていないと、選挙という民主主義の基盤が損なわれてしまうのではないか。例えば、ある政党がどのような政策を掲げているか伝えるだけでなく、その政策を実行することにより、どんな利点があるか、さらには、どんなデメリットがあるかも指摘するべきではないか。選挙報道では、一定の公平性は担保しなければならないが、それだけをつきつめると、本来担うべき最も重要な任務が怠られてしまいかねない、ということを重く考えてほしい」との発言があった。
続く第2部のテーマは、「ローカル制作の情報番組について」だった。情報番組の制作において、いかにしてミスを防いでいくか、オリジナリティを出していくか、などについて意見交換が行われた。まず、参加者からは、「若いスタッフの中には、きわどい表現、きわどい取材がチャレンジングな番組作りと思っている人がいる。きわどくなくても攻めた番組が作れることを伝えるのに苦労している」「朝の情報番組では、オリジナリティを出すためライブ感を放送に生かすことを常に心がけている。正確性、誠実性を念頭に置いて放送しているが、面白くても裏が取れないもの、つまりグレーなものはいったん放送を取りやめることにしている。しかし、その判断には、日々悩んでいる」など番組制作にあたっての苦労、悩みが報告された。
これに対し、斎藤委員はジャーナリストの立場から、「取材を積み重ねることにより、どうしてもグレーであれば放送をやめるというのもひとつの判断だと思う。一番いけないのは、よくわからないまま適当にやってしまうことである。また、政治・経済などの難しい問題をわかりやすく伝えたいために、一側面からの情報だけを伝え、結果的にうその放送になってしまうこともある。情報番組には、報道以上に多方面からの徹底した取材が必要である」と発言があった。
さらに、参加者からは、「街の風景として撮ったものに、個人の家、車のナンバー、通行人が映り込んでいる。これに配慮すると、すべてのものにモザイクをかけなければならなくなる。意図したものでない映像にどこまで責任を負わなければならないのか悩んでいる」という映像の映り込みの問題が提起された。これに対し、藤田委員からは、「かつては公道上で、周囲が取材を認識していれば肖像権は侵害しないということが常識だったが、今は、モザイク映像が増えている。しかし、モザイクが当たり前だという考え方は表現の寛容性を狭めてしまうことになる。どこまでモザイクをかけるかの判断は、慎重に考えてほしい」という意見が出された。また、渋谷委員からは、憲法学者の対場から「本来、肖像権よりも報道の自由は優先されるが、それは、一般の人がどのように考えるかが重要になってくる。今は、ネットに記録がいつまでも残される時代。時代の変化に伴って、肖像権の考え方も変わってくる。放送局の判断でモザイクが必要になることも事実である」という指摘があった。
最後に、放送倫理検証委員会が10年を迎えるにあたり、発足時から委員長を務めている川端委員長から次のような発言があった。「この10年間、我々は、放送に間違いが起こった時、その原因とその背後にある構造的な問題をさぐってアドバイスをすることを基本的な立場としてやってきた。その結果、少しは放送倫理検証委員会がどんなものかわかっていただけたとは思っているが、まだ、制作現場、特に制作会社の人たちには、BPOは表現の範囲を狭めている、という意識があるのではないか。しかし、我々が意見を書くのは、重要な問題のみであり、自律的に是正が行われている時は慎重に扱っている。さらに意見の根拠としているのは、放送局が自主的に定めた放送倫理の基準だけである。今後も放送局の皆さんが、こういう放送をしたいという確信があれば、大いに取り組んでいただきたい」
以上のような活発な議論が行われ、3時間以上に及んだ意見交換会は終了した。

今回の意見交換会終了後、参加者からは、以下のような感想が寄せられた。

  • 情報番組の各局担当者の苦労が共有できた。ここ最近の人権意識や放送倫理意識の高まりから各局制作現場で必要以上に自主規制をしている感じを受けた。選挙報道と同じように自信を持って放送していくことが大切なのではと感じた。
  • 面白い番組や冒険的な番組を作りたいというのは、制作者なら誰しも思うところである。そのために普段やっていることから一歩踏み出したいという思いに駆られる。そういう思いにブレーキをかけるものとしてBPOがあると誤解している人も多いのではないか。BPOは決してそのような機関ではない。きちんとした理論武装ができている制作者であるなら、むしろ、どんどん意欲的な番組に挑戦することを望んでいるだろう。この「理論武装」というのが難しいと思う。コンプライアンスさえ守っていれば、それが達成されるというほど単純なものではないだろう。グレーゾーンのようで、そうでは無いというものを見つけ出していかなければならない。そのためには制作者(報道も含めて)に粘り強さが必要とされる。マニュアルで番組を作っていたのでは、人を感動させるようなものは作れないと肝に銘じるべきだろう。
  • 選挙報道については、候補者の取り扱いを同一尺、同レベル表現をルール化している各放送局のジレンマに対し、委員の方々から(若干の個人差は感じましたが)報道としては画一でなく、踏み込んだ取材と放送をすることが重要との意見をいただき、実りある意見交換になったのではと思います。
  • (選挙報道について)BPOの委員は、「全体として公平性が保たれていれば、個々の番組の表現は各局の判断に任される」と述べていましたが、総論は誰もそれに異論はなくても、実際はそのような考え方で放送はされていないと思う。本来の報道にあるべき姿とはどういうものか、消極的なチェックばかりではなく、日頃から踏み込んだ考え方を示し、萎縮しがちな放送現場(実際は管理する側の姿勢)にもっと勇気ある放送の姿勢を促すような積極的な発信をお願いしたいと思います。それが、放送やメディアとはどういうものかということを一般の人々にも考えてもらう契機にもなりうると思う。

以上

2016年10月に視聴者から寄せられた意見

2016年10月に視聴者から寄せられた意見

10月の改編期では、大勢の芸人たちが賞金を懸け、体を張ってクイズで競った番組への意見や、人工透析患者に対するブログ記事での暴言で、出演していた番組をすべて降板したキャスターへの批判、東京・豊洲市場の移転問題を扱った昼の情報系番組への意見など。

2016年10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,841件で、先月と比較して205件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性66%、女性33%、不明1%で、世代別では40歳代30%、30歳代27%、50歳代21%、20歳代13%、60歳以上8%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は972件【46局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

10月の改編期では、大勢の芸人たちが賞金を懸け、体を張ってクイズで競った期首番組への意見や、人工透析患者に対するブログ記事での暴言で、出演していたテレビ番組をすべて降板したキャスターへの批判、そのほか、豊洲市場への移転問題を扱った昼の情報系番組への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は42件、CMについては35件あった。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は181件で、前月から99件増加した。
10月25日開催の第185回委員会で、『オール芸人お笑い謝肉祭’16秋』(TBSテレビ)内の一部コーナーを審議対象とすることを決定したことを受け、今月は「委員会に関する意見」が81件と最も多かった。次に「表現・演出」が22件、「いじめ・虐待」が20件、「性的表現」が11件と続いた。
「委員会に関する意見」では、視聴者からの意見を委員会の考えと誤認した意見が目立った。
「表現・演出」では、アニメ番組で主人公の男児が裸になったシーンに複数の意見があった。
「いじめ・虐待」では、バラエティー番組で歌手に関する話題を取り上げた際、出演者がその歌手の容姿を揶揄していたとの意見が多数寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 豊洲市場への移転問題で、これまでの費用、長期延期による業者への補償金、今後かかると予想される建設費用等は都民負担が増え、東京オリンピックより費用がかかる可能性もある。そのことを議論せず、メディアでも扱われないまま、時間だけが流れている。この問題は、今後はいかに効果的に解決されるのか話し合うべきであるし、テレビ・ラジオでは真剣に取り扱うことを望むばかりだ。

  • 豊洲市場の問題を連日取り上げているが、出演者は皆揃って移転反対派ばかりだ。番組で伝える以上、反対派だけでなく賛成派の意見も取り上げるべきだ。また、専門家でもない芸能人が得意顔でコメントしていることも多々ある。知識も根拠もない意見など、何の説得力もないことをお伝えしておく。

  • 男子中学生暴行事件で、加害者は匿名、被害者の名前は明かされていた。加害少女によれば「後輩をいじめたので、暴行を加えた」もので、被害者は「後輩をいじめたかもしれない人」の印象だ。殴られ、重体になり、命も危ぶまれる被害者に、さらに追い打ちをかけるような報道は如何なものか。最悪、彼の意識が戻らない場合、真実が明かされないまま、加害者の言い分だけが残ることになる。

  • 元女優の大麻所持容疑での逮捕を受けて、逮捕前の映像を何度も流していた。容疑者であることを考慮しても、盗撮と見られるものばかりだ。事件とは何ら関係のない洗濯物を干すシーンなど、私生活を分別なく放送することは許されるべきものではない。

  • 中国訪問を控えたフィリピンの大統領についてのニュースで、「大統領は、中国との領海問題についてソフトランディングを目指している」とまとめていた。この"ソフトランディング"という言葉だが、日本語訳も説明も無かった。前後の脈絡から意味は推測できたが、一緒に見ていた両親には難しかったようだ。ニュースは分かりやすいことが一番だ。日本語で済む場合は日本語を使ってほしい。

  • プロ野球クライマックスシリーズのファイナルステージは、ここ数年、BSで中継している。今年はパ・リーグを全試合見ることができたが、セ・リーグは放送されなかった。例年弱小であったチーム同士が日本シリーズ出場を賭けた戦いを行う、非常に注目のカードであったのに残念。全国的に女性ファンをはじめ、ここ数年人気が広がっている。放送局に様々な事情があるのだろうが、視聴者のことも考えてほしい。

【番組全般・その他】

  • 夜の情報番組で、人工透析に関するブログ記事での暴言で降板した男性キャスターについて、女性アシスタントが、彼だけが悪いかのような釈明をした。しかし、以前番組で、彼自身のブログが炎上したことを話題にした時には、彼女や周りの出演者も大笑いしていた。透析患者に対して不謹慎でとても不快に感じたが、このことは番組関係者のみならず、放送したテレビ局にも問題があるのではないか。トカゲのしっぽ切りのように、一人だけを降板させて終わりにするのではなく、局としてきちんと責任をとるべきだ。

  • ミュージシャンの外見を名指しで「気持ち悪い、ブサイク」とは何事か。しかも音楽まで「こんな曲売れているのか」と誹謗中傷していた。彼は結成3年で「紅白」まで出場した優秀な作曲家だ。人のプライバシーをハイエナのようにあさり、コメンテーターがせせら笑っている。私達ファンはみんな怒っている。番組が面白ければ一人の人間の人生なんかどうなってもいいのか。

  • ミュージシャンの活動自粛の報道について、あまりにも個人の中傷に特化したものに感じた。たしかに一成人として、しっかり反省すべき重大な失態を犯したと思う。しかし、芸能人が一斉にテレビで言いたい放題に悪口を言い、ましてや外見のことをことさら批判し始めたことは如何なものか。一人の人間に対して大人数で、聞くに耐えない悪口を言う。このことは立派ないじめと言えるのではないか。

  • 期首番組で、芸人同士がお互いのズボンを脱がし合い、競技というより、ただ下半身をさらけ出すだけの集まりにしか見えなかった。しまいには全裸になる芸人も現れて、ひどい内容だった。下半身を出せば笑いが取れるという感覚が、芸人や番組制作者にあるのだろうか。番組の作り方を考えて直してもらいたい。

  • 期首番組で、芸人たちが野外のセットで自ら服を脱ぎ、全裸になる場面があった。収録は、一般人が観覧できるような状況に見え、下品極まりない。このような不適切な番組を休日のゴールデンタイムに放送する、局の常識を疑いたくなる。

  • 芸人が大勢出ていた期首番組は、テレビに活力があった頃を思い出させるような力強い番組だった。一部の視聴者からクレームが来るかもしれないが、「祭り」とは、日常のしがらみから一時解放されるものであって、本来、若干の不道徳性を内包するものではないだろうか。一部の批判に過剰に配慮していては何もできなくなる。ケガを恐れず体を張って球を追いかけるスポーツ選手が感動を与えるのと同じように、体を張って笑いを追求する芸人もまた尊いと思う。

  • 芸人が大勢出ていた期首番組について。私は現在40歳代だが、以前はこのような番組が沢山あった。もちろん真面目な番組も必要だとは思うが、トコトン馬鹿をやる番組もあっていいと思う。視聴者には「いやなら見なくていい」という選択肢があるのだから問題ない。正直、最近のテレビは自主規制が増えてきて、番組自体がつまらなくなり、バラエティーを見る機会がめっきり減った。見たい人は見ればいいし、見たくない人は見なければいいだけのことだ。もう少し見る側の選択肢を増やせるようにしてほしい。

  • 夜帰りが遅いので、ニュース番組はこれしか見ることができない。報道は、社会の問題や矛盾を取材して視聴者に提示するのが使命ではないのかと思うのだが、この番組を見るといつもがっかりする。豊洲問題では、土壌汚染対策の責任の所在と、その陰に見え隠れする大手ゼネコンの存在が知りたいのだが、番組では、外国人コメンテーターが「責任の追及はするべきではない」と言い、別の日には、築地のリポートとして市場を歩き高級魚を紹介していた。そこには何も問題の核心に触れる部分がなかった。これなら旅番組でやれば十分だ。報道番組に情報的要素を入れるのは時流だろうが、ここまで報道としての役割を放棄し、どうでもいい取材に終始すると、局はこれを報道番組として認識しているのか疑問に思う。

  • 鉄パイプが落下して男性が亡くなるという痛ましい事故があった。奥さんと歩いていた際の事故だったようだ。インタビューで男性を良く知る人に、故人の人柄を問うまではいいが、夫婦仲まで聞いていた。今回の事故に関係ないばかりか、取りようによっては、奥さんに何か責任があるようにも取れる。取材してしまったのなら仕方ないが、なぜ編集で削除しないのか。配慮がないにも程がある。

  • 心霊現象や面白映像など、視聴者からの投稿を紹介し、優秀作品を選んでいた番組は、タイトルからして「CGなどではなく、自然に映ってしまった映像」であると解釈して視聴した。ところが大賞を取ったのは「空を飛ぶ象」という作品で、どう見てもCG技術を使った映像だった。受賞理由もはっきりせず、釈然としない。冒頭で番組コンセプトや選考基準などをもっと明確にすべきだった。

【ラジオ】

  • 夕方4時からの番組は、今、最高に面白くてためになる番組だ。日替わりの出演者がニュースを分かりやすくも鋭く分析。テレビでは見ることができない奥の深い解説を聞くことができる。男性アナウンサーも本当によく勉強していて、話の転がり方が実に爽快。こんなに面白い番組がテレビでも見られれば本当にいいのにと思う。ポッドキャストで番組を流してくれているのがとても助かるし、ダウンロードして何回も聞いている。これからもずっと続けてほしい。

【CM】

  • クレジットカードのCMは、カラフルなスカートの女性が踊っているが、下着のようなものが何度もチラチラ見えて下品すぎる。わざと見せているのか。

青少年に関する意見

【「委員会」に関する意見】

  • お笑いタレントが多数出演した番組を青少年委員会で審議するとのニュースを見た。苦情が多数あるようだが、神経質にならずに、あのような番組を潰さないでほしい。私はあのような番組を楽しく見て育った。子どもへの影響があるとの意見もあるが、そんなに嫌ならば子どもに見せなければいいし、インターネットの影響の方がよほど大きい。どうか一方的な意見に惑わされないでほしい。
  • 委員会がお笑い番組を審議すると聞いた。時代が変わったとはいえ、こういう番組があってもいいと思う。その番組を見たが、昭和時代の馬鹿らしさがあり懐かしかった。こうした番組を楽しいと思う人もいるのだ。審議は人を傷つけるような内容の番組に限ってほしい。
  • お笑いタレントが多数出演した番組を委員会が審議するのは当然だと思う。「嫌なら見なければいい」との意見はこの問題の本質からかけ離れている。子どもから高齢者まで誰もが簡単に見ることができる地上波で、視聴者が不快な思いをすることが容易に想像できるようなわいせつな行為の数々を放送することは問題だ。公共の電波を利用していることを踏まえ、厳しく審議してほしい。

【「表現・演出」に関する意見】

  • アニメ番組で主人公の男児が全裸になるシーンがあった。突発的かつ不本意な形で服を脱がされたシーンについては問題ないと思うが、教室で自ら全裸になるシーンは子どもの教育上問題があるのではないか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で歌手に関する話題を取り上げた際、出演者がその歌手の容姿を揶揄していた。容姿をあげつらって"いじって"いたが、学校でも同じようなことが起こっている。これはいじめに相当することだ。

【「非科学的な事柄」に関する意見】

  • 未確認飛行物体や未確認生物を取り上げた番組があった。バラエティー番組なのだろうが、フィクションである旨が出ていなかったように思う。常識ある大人ならばフィクションであることを理解したうえで楽しむことができるが、多くの子どもたちが見る時間帯にこのような非科学的な番組を放送すると、子どもたちの真実を見極める目を育てるにあたっての障害にならないか心配だ。

【「低俗・モラルに反する」との意見】

  • ローションを塗った階段を使ったクイズで、多数のお笑いタレントが陰部を晒すシーンがあった。多くの子どもも視聴していたと思われる。子どもから高齢者までが安心して見ることができるような内容にしてほしい。

2016年10月14日

意見交換会(立命館アジア太平洋大学)

◆概要◆

青少年委員会は青少年にとっての放送番組の向上を目指すとともに、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路」としての機能も担っています。その活動の一環として、10月14日(金)の午後2時15分から5時までの間、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)A棟3階第1会議室において、同校の学生と意見交換会を行いました。
意見交換会には、同校から7カ国12名の留学生を含む22名の学生、青少年委員会からは汐見委員長、最相副委員長、稲増委員、専門家として宇治橋祐之氏(NHK放送文化研究所・メディア研究部主任研究員)が参加しました。また、オブザーバーとしてNHKおよび在大分の放送局から6人が参加しました。

当日は意見交換に先立ち、BPOの役割や設立経緯について説明した後、同校の牧田正裕社会連携担当部長からあいさつがあり、その後、参加者全員が自己紹介を行い、稲増委員の司会進行で活発な意見交換が行われました。意見交換にあたっては、宇治橋氏から適宜、各国の放送事情などについて解説があったほか、在大分局からもそれぞれの実務経験を踏まえた発言がありました。
意見交換では、まず人気バラエティー番組でのお笑いタレントの"罰ゲームシーン"を視聴したうえで、学生たちから自身の感想や出身国での一般的な捉えられ方などについて発言がありました。その他、日本の放送と自国の放送の違い、日本のアニメや性的表現、ラジオなどについて意見交換しました。
汐見委員長からは「青少年委員会は本当に青少年にとって良い番組とは何だろうと考え続けています。子どもの頃に見たテレビが一生を方向づけることもあるはずです。そうした番組を作る力は放送局だけではなく、視聴している皆さんの様々な意見の中で作られていきます。放送は日本の文化です。それを外国の方が見たときにどう評価するのかとても興味がありました。いい機会になりました」との感想がありました。
最後に最相副委員長から「日本が自慢できるものは長らく技術に偏っていましたが、近年、テレビは素晴らしい番組をたくさん作り輸出してきました。皆さんも母国に持ち帰れるような、自慢できるような番組を探していただけたらと思います」と閉会のあいさつがありました。
意見交換の概要は次のとおりです。

【罰ゲームシーンについて】
「面白い番組だ。自国でもこのようなシーンが放送されているが、家庭に悪い影響を与えるとはとらえられていないと思う」(インドネシア)、「このような番組があれば自国でも人気が出ると思う」(シンガポール)など、番組の面白さに注目した好意的な意見が寄せられた一方、「このような番組は来日して初めて見た。とても面白いが、お笑いタレントの人たちが本当に危険かどうか判断しかねるので、もう少し軽めの罰ゲームでもいいのではないか」(メキシコ)、「バカバカしい内容で笑わせるのではなく、意義のあるお笑い番組を放送してほしい」(ベトナム)などの意見もありました。
日本人の学生からは「罰ゲームを見て、面白いという気持ちより怖いという気持ちの方が勝った」「自分が見る分には面白いと思うが、幼稚園児や小学生が真似するおそれがあると思う。親子一緒に視聴する必要があるのではないか」など、留学生に比べて"罰ゲーム"への否定的な意見が目立ちました。また、「BPOには『バラエティー番組などでの過激な演出がいじめを助長する』との意見が寄せられることが多いようだ。私はそうは思わないのだが、放送局の人はどう考えているのか」との質問があり、オブザーバーからは「直接的にはつながらないと個人的には思うが、乱暴な行為への抵抗感が薄れることも考えたい」などの発言がありました。

【日本の放送と自国の放送の違いについて】
「日本の番組はクリエイティブだ。アイデアが非常に面白い」(インドネシア)、「中国系なので、自国では中国の番組を良く見ていた。中国の番組と比べると日本の番組は真面目だ」(マレーシア)、「日本のドラマは恋愛ものだけではなく幅広い。見ると頑張ろうという気持ちになれる。人生のレッスンになるような番組が多い」(ベトナム)、「NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見て、頑張ろうという気持ちが湧いてきた」(インド)など、コンテンツの素晴らしさに触れる意見が多く寄せられました。報道については、「日本のメディアには自由がある。自国の放送は政府が管理しているので、政治に関するニュースが少ない」(ベトナム)「地震や台風などの災害時に文字情報などを有効に利用していて驚いた」(メキシコ)などの感想がありました。

【日本のアニメや性的表現について】
「自国で日本のアニメを見て日本の文化を学んだ。学校を舞台にしたアニメでは桜の季節に入学式があることや、正月に書初めをしていることなどを知り興味が湧いた。インターネットを通じて視聴している人が多いようだ」(メキシコ)、「自国で見ていた日本のアニメに少し性的なシーンがあり、親に注意されたことがある」(ベトナム)、「日本で制作されたアニメで仮に乱暴な言葉や性的な言葉が使われていても、自国で放送する際には違う言葉に翻訳されるので、特に問題にはなっていない」(インドネシア)、「胸を誇張したアニメキャラクターなどの存在には驚いた」(メキシコ)、「宗教的な問題で婚前交渉が許されない国の人も留学しており、日本の放送に驚いていた。しかし、彼らは人や国によって性的表現に対する意識や厳しさは違うことを理解し、それが日本の“当たり前”だと受け止めている」(日本)などの発言がありました。宇治橋氏からは「日本の放送の性的表現が各国と比較して緩いかと言うと一概には言えない。例えばヨーロッパではあれば裸のシーンは意外と多い面もある。それぞれの国の文化的、宗教的背景があり、その捉え方による」との解説がありました。

【ラジオについて】
「バイクツーリングが趣味なのでラジオをよく聴く。天気や災害情報を入手するのにとても役立っている。また、色々な音楽が聴けるのも魅力だ」(スリランカ)、「アメリカに留学した際にNHKの英語ニュースを聴いていた。日本での出来事を知りつつ勉強にもなり、とても便利だった」(日本)、「自国で大地震があった際、停電などでテレビが見られず情報が入らなかった。津波という現象を知らない人も多く、水が引いた海に入って多くの人が亡くなった。電池でも聴けるラジオがあれば津波の情報も入手できたと思うので、被害者数も相当違ったのではないか」(スリランカ)、「車を運転する際に音楽だけでは寂しいので、トークもあるラジオ番組を聴いている」などの意見がありました。委員からは「先日は大分でも大きな地震があったので、災害に対する不安を持っている留学生も多いと思う。阪神淡路大震災や東日本大震災では避難やライフラインの確保にラジオが大変役立った。ピンポイントで大事なことを伝えるのに適したメディアがラジオだ。外国語によるコミュニティーFMを自ら立ち上げることも考えてはどうか」などの発言がありました。

以上

第185回 放送と青少年に関する委員会

第185回–2016年10月25日

TBSテレビ『オール芸人お笑い謝肉祭 ’16秋』審議入り…など

2016年10月25日に第185回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。6人の委員が出席し、まず、9月16日から10月15日までに寄せられた視聴者意見から1案件について「討論」し「審議」入りすることを決めました。そのほか、10月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は11月22日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年10月25日(火) 午後4時30分~午後6時50分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、中橋雄委員、緑川由香委員

TBSテレビ『オール芸人お笑い謝肉祭 16秋』について討論

● TBSテレビが2016年10月9日(日)18時30分から21時54分まで放送した『オール芸人お笑い謝肉祭‛16秋』内のコーナー「大声厳禁 サイレント風呂」と「心臓破りのぬるぬる坂クイズ」について、視聴者から「男性同士が股間を触る行為などがあった。内容が下品だ。子どもに説明できないような番組はやめてほしい」「浜辺で芸人がローション階段を全裸や下半身露出で滑り落ちるシーンが放送された。"裸になれば笑いがとれる"という低俗な発想が許しがたい」などの意見が寄せられ、委員会では番組を視聴した上で討論しました。その結果、「委員会としてこれまで何回も指摘していることが理解されていない。どのような経緯で放送に至ったのかなど確認したい」などの意見が出され審議入りを決めました。委員会では、質問書を当該放送局に送って回答を求めることにしました。委員からは次のような意見が出ました。

  • 私の感覚がマヒしてしまっているのか、またバカやっていると思ってしまう。正直嫌な気にはならなかったが、さまざまな基準に対する判断が難しくなってきているのを感じた。

  • テレビを家族で見ることが多い日曜日の夜の時間帯に放送するのに適した内容とは思えない。こんな形でしか笑いが取れないのだろうか。お笑い芸人の世界のヒエラルキーを垣間見るようで、しらけてしまう視聴者も多かったのではないか。

  • 青少年委員会では「放送の公共性」や「表現上の配慮」について繰り返し発言してきているが、全く響いていないことに落胆した。全裸の男性芸人や女性芸人の際どい場面にカメラが繰り返しズームインするなど確信犯的に追っていた。現場にいたスタッフはなぜ止めなかったのか、そしてそれがなぜ放送されるに至ったのか知りたい。

  • 「大声厳禁 サイレント風呂」で男性が男性の股間を触っていたが、男性同士だから許されるという意識があったのだろうか。LGBTの観点からも問題を指摘したい。

  • ハプニングでズボンが脱げるのは、笑いの取れるギリギリの演出として考えられるが、皆が見ている中で階段を全裸で滑り落ちるのは故意にやっているもので、さまざまな問題をはらんでいる。お笑いになると放送倫理や社会的な約束事のセンサーが働かなくなってしまうのだろうか。

  • お笑いの新しいジャンルとして革新的なチャレンジなら応援したいが、今回の演出はそうは受け取れなかった。一つ間違えると「低俗」と言われても仕方がない。

視聴者からの意見について

  • ● 「不倫した歌手が未成年者にお酒を飲ませたことに関して、出演者が当人の人格・容姿などについて悪口を言い合っていた。いじめと同じではないか」という視聴者意見について、委員からは次のような意見が出ました。

    • 反社会的な行為に対して意見を言うのはまだしも、容姿や趣味に対してまで取り上げて話題にするのは、いじめにつながると思う。今回は出演者のラジオでの発言に言及していたが、よってたかってという感じではなかった。

    話し合いの結果、これ以上の段階には進まないことにしました。

  • ● 「世界で起きたとする衝撃スクープ映像を特集した番組で、人間がトカゲを生んだとか未確認物体の映像を放送していた。このような非科学的な番組は子どもに悪影響だ」という視聴者意見について、委員からは次のような意見が出ました。

    • 大人は一目でありえない事だと理解できるが、子どもはどうだろうか。科学的検証もないままに中途半端に番組が進行していたが、子どもに悪影響を与えるほどでは無いと思った。

    話し合いの結果、これ以上の段階には進まないことにしました。

中高生モニター報告について

32人の中高生モニターにお願いした10月のテーマは「最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で22人から報告がありました。
「最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想」については、報道番組2人、情報番組5人(うちラジオ1人)、ドキュメンタリー番組13人から報告がありました。情報番組では、『ZIP!』(日本テレビ)を2人が取り上げ、「通学前にのんびりテレビは見られないから、番組進行のタイムスケジュールが固定されているこの番組は、時計代わりにもできて助かる」という学生らしい意見がありました。また、ドキュメンタリー番組では、話題のスマホアプリゲーム「ポケモンGO」の"聖地"と呼ばれる公園を舞台にした『ドキュメント72時間』(NHK総合)に3人から感想が寄せられました。
「自由記述」では、バラエティー番組について「最近のイタズラは見ていて不快。イタズラされる人のことも番組を見ている人のことも両方の気持ちを考えてほしい」「笑いをとるためにやって良いことと、やってはいけないことがあると思う」という昨今のバラエティー番組の演出・手法に対する意見が複数ありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『究極の男は誰だ!? 最強スポーツ男子頂上決戦2016』(TBSテレビ)への感想が2人からありました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想】

    • ドキュメンタリー番組の感想が多く寄せられたことは意外だった。「普通に生活していたら知ることのない色々を知ることはとても面白い」「笑える面白さではないが、知識として脳みそに入れておくと良いと思える」など、ドキュメンタリーの良さを表現しているコメントや価値を感じていることが伝わってくるようなコメントを寄せてくれたことが嬉しかった。

    • 番組に対して批判的なコメントもあったが、具体的にどのような場面や出来事をそのように捉えたのかが、記述では分からなかったので「どの部分を問題だと思ったのか」聞いてみたくなった。

    • いい視点は出ているのに、きちんと書き込まれていないために、詳細が把握できないリポートがあり、残念に思った。

    • 寄せられたリポートの過半数がドキュメンタリー番組への感想だったことを鑑みると、情報番組などの広く流布している情報ではなく、ドキュメンタリーのように掘り下げて描かれた"真実"や"知識"に対する欲求が強いのかもしれない。

    • 災害報道の特集について寄せられた「課題を取り上げることも重要だが、希望を持つことができるような光の部分ももっと大々的に取り扱うべき」との意見や、週末の朝の情報番組を「暗いニュースや芸能ニュースを取り扱わない情報番組はとても良い」と評価する意見などを読むと、中高生たちには"希望"を扱ってほしいという思いがあるように感じる。このような声は、番組を制作する人たちにとっても何らかのヒントになるのではないだろうか。

  • 【自由記述】

    • 10月6日の『SCHOOL OF LOCK』(FM東京/FM山口)の「『君が独りぼっちじゃないと気づいた日』を教えてほしい」という放送について「久しぶりに良い番組を聴いたなと感じた」という報告があったが、この番組をぜひ聴いてみたくなった。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想】

    • 『フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿』(NHKBSプレミアム)科学の闇の事件にスポットを当てる新しい側面からの番組です。事件を取り扱うので少し怖い部分もありますが、丁寧に分かりやすく作られているので、科学に詳しくなくてもよく分かり、とても興味深く引き込まれます。事件内容の解説だけでなく、実際にその分野に詳しい科学者や専門家を呼んで、なぜそのような事件が起きたかも検証するので、科学者の心情を推測したり、その時の時代背景の解説もありと、より深く楽しめます。(宮城・中学1年・男子)

    • 『コズミックフロント☆NEXT』(NHKBSプレミアム)私は宇宙が好きで、時々父と一緒にこの番組を見るのですが、地球からでも肉眼で見ることができる惑星や衛星のことなど、意外と身近なものをテーマに、外国の研究者の人の話などを交えながら詳しく知ることができて、とても面白いです。私は本や雑誌もよく読むけれど、この番組ではCGや衛星写真などで視覚的に楽しむことができるし画質がきれいなので、これまでよりも天体や宇宙のことに興味をもつようになりました。また、世界の一流の研究者たちの試行錯誤や研究の苦労なども描かれていて、自分の考えや仮説が証明された時の喜びなどは、視聴者にとっても臨場感のある感覚で描かれているように感じ、私のお気に入りの番組のひとつです。(岡山・中学2年・女子)

    • 『NEXT 未来のために~もう一人のアンネ 娘に託すアウシュビッツの記憶~』(NHK総合)この番組は母の勧めで見ました。アンネ・フランクと同じような体験をした生存者の話でした。とても印象に残る内容でした。特に驚いたことは、人間が人間を平気で殺していた時代がたった70年前だということです。生存者の話を聞く若者たちを見ていると、当時の状況に驚いた様子もありましたが、恐怖も感じていたように見えました。このように「戦争」や「差別」などについてのドキュメンタリー番組は、後の世の中から消えてはいけない教訓だと感じました。(北海道・中学2年・男子)

    • 『ドキュメント72時間~大都会 モンスターに沸く公園で~』(NHK総合)最近話題になっている「ポケモンGO」がテーマで、8月20日から22日までの3日間、墨田区の錦糸公園に来る人達にインタビューをするという内容でした。前日の午後3時から翌朝の5時まで、雨宿りをしながらずっと公園内で「ポケモンGO」をやっていると話していた22歳の男性は、千葉県から自転車で来たということでしたが、ビーチサンダルを履いていて、自転車の前かごには紙パックの飲み物1つしか入っていなかったのですが、とても楽しそうにコイキングを集めている話をしていました。やりたいことがなくてフリーターをしているけれど、友達に負けたくなくてコイキングを集めていて「これしか極められない」と言っていた言葉が印象に残りました。自分にとっては友達とドッジボール等をして遊ぶ場所である公園には、色々な人がいるのだなと感じました。その中のひとりが「こういうゲームをする無駄な時間や心の余裕が大切だと思う」と言っていた言葉は、なんとなく分かる気がしました。(東京・中学2年・男子)

    • 『ZIP!』(日本テレビ)僕の好きな番組の1つです。僕が見た水曜日のコーナーは、アナウンサーの桝さん自身が大学で学んだことを生かして、動物などの普通は知らないところまで教えてくれるのでとても良いです。僕も実際に、学校の理科の授業で生かすことができます。ただ、まだまだ改善できる点はあると思います。たとえば、番組の最後の方で放送される、「MOKO’S キッチン」は、家庭にあるような材料で、簡単においしい料理を作れるというコーナーですが、僕が見ている限りでは、全然家にないような、マメだとか、装飾の葉っぱなどを使います。そういうところは、もう少し視聴者目線でなくてはいけないと思います。(埼玉・中学2年・男子)

    • 『ZIP!』(日本テレビ)朝の情報番組は息の長い番組が多いと思うが、私はこれしか見ません。理由は番組の特集や各コーナーが進んでいくタイムスケジュールが固定されているので、通学前の支度をしている私にとって、朝からのんびりテレビを見られないから、時計代わりに決まった時間に決まったコーナーの放送は助かる事。そしてもう一つはニュースから流行や日常の疑問に関しての特集など幅広いジャンルについて、簡潔に分かりやすく伝えてくれているので、テーマの取り上げ方がうまいなと思います。(神奈川・中学3年・女子)

    • 『サラメシ』(NHK総合)普通の番組だと仕事の内容などに注目するのですが、この番組はお昼ご飯という誰でも食べるものに、焦点をおいているのがとても興味深いと思います。また、サラリーマンに限らず様々な職業の人のランチに注目していて、その職業特有のまかないなどが分かりました。お昼ご飯というのは、みんなにとって楽しみで息抜きになる存在だというのが伝わってきました。(千葉・中学3年・女子)

    • 『ドキュメント72時間~大都会 モンスターに沸く公園で~』(NHK総合)この番組はいつもとても充実しています。今回は今話題のスマホアプリ「ポケモンGO」によって人が溢れ返っている公園についてでした。僕自身はこのゲームをしたことがありませんが、この番組を見てこれだけの人が夢中になっているゲームなのだと知りとても驚きました。聖地と呼ばれるこの公園は、今まではそんなに人がいなかったのに、このゲームのおかげか朝から夜中まで人であふれていました。インタビューを受けるほとんどの人たちがこのゲームのために公園に来ていました。僕にとってはとても衝撃的でした。この番組では、以前、女子刑務所についても放送していました。その回はとても心に残っています。普通なら知らないことやそこまで気にしないことなどいろいろありますが、とても面白いと思います。笑える面白さではありませんが、知識として脳みそに入れておくというか、こういうこともあるんだなぁと思える良い番組だと思います。(愛知・中学3年・男子)

    • 『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)「何でも屋」だった方が、所謂「おひとり様」で亡くなった方の「おかたづけ」をすることになった話。人口密度の高い東京でも、「おひとり様」で亡くなる方が、頻繁に発生し、「何週間も誰にも気づかれずに」そのままの状態が継続し、隣人が「異臭」によって、事態が発覚するという始末。人口は密だが、「人間関係」は「希薄」であるから、ある意味この状況は仕方ないと考える。主人公の方は、次から次へと増加するこの「おひとり様の孤独死」から、人生感が変化し、「結婚」をし、「子供」を持った。死を見つめることにより、「生」の大切さを再認識した。視聴者にも、ズキズキ伝わった。リアル感が、画像の向こう側から、時空を超えて伝達された。非常に判り易い番組で、評価できると思います。視聴者に「奥の奥まで」考えさせる事が必要だと思います。(東京・中学3年・男子)

    • 『報道特集』(TBSテレビ/毎日放送)地震、水害、阿蘇山の噴火という3つの災害に相次いで見舞われた熊本県の現状が伝わる分かり易い特集であった。現在の課題や取り組みなどが紹介されていたが、しかしどれも光と影の、影の部分が強調されていたように思えた。このような災害後の報道においては課題を取り上げることも重要だと思うが、希望を持てるような光の部分ももっと大々的に取り扱うべきだと思った。(兵庫・中学3年・男子)

    • 『NHKスペシャル 活断層の村の苦闘~熊本地震・半年間の記録~』(NHK総合)熊本地震の半年後についてのドキュメンタリー番組でした。私がこの番組を見て一番驚いたのは地震から半年経つにも関わらず、まだ水道や道路が復旧していない地区があるということです。それどころか、まだまだ倒壊した建物が多くみられ、地震の日から時が止まってしまったかのような場所もありました。この番組で特に注目していたのは、活断層の上で生活する村でした。新しい家を建てる、畑を作る、生活を始める上でここにいていいのかと悩む人達がいました。この土地を離れたくないけど、また地震が起こるかもしれない活断層の上で生活するのは不安、悩むのも当然だと思います。私ならどうするだろうと思いながら番組を見ていました。たぶん熊本が完全に復興するのにはまだまだ時間がかかるだろうけど、私は解決するまできちんと情報を集めたり報道を見たりしていきたいです。(高知・高校1年・女子)

    • 『サタデープラス』(TBSテレビ)この番組は毎週自宅でできる健康チェックや健康に良い食事などを教えてくれるので役に立っています。最近朝の情報番組では、同じニュースや似たような特集を組んでいることが多くてつまらないので、暗いニュースや芸能ニュースを取り扱わない、役立つ情報番組はとても良いと思います。(東京・高校2年・女子)

    • 『バラのささやき 創られた美の物語』(NHKBSプレミアム)バラの歴史をファンタジックに、美しい映像とともに描いたドキュメンタリー。非常に見応えがあった。バラの美しく気高い姿は、いつの時代も人を魅了して止まないのだと分かり、もっとバラについて知りたいと思った。声優の演技にも引き込まれた。(神奈川・高校2年・女子)

    • 『フェイス フロム・アメリカ~彼らがヒロシマで見つけたもの~』(NHK広島)この番組は、アメリカ人が広島を訪れて何を感じているのかを描いた番組です。私は、広島を訪れるアメリカ人が多いことは知っていましたが、どのような気持ちで訪れているのかは分かりませんでした。意外だったのは、アメリカ人の多くは、広島を訪れるまで原爆のことについてほとんど知らないことです。あるアメリカ人は「原爆を落としたのは早く戦争を終わらせるためで仕方がなかったと思っていた」と語っていました。しかし広島を訪れることによって新しい価値観が生まれていました。日本とアメリカお互いが「知る」ことによって今の平和が保たれているのだと思います。それが「彼らが見つけたもの」だと私は思います。この番組を通して私は、お互いについて「知る」ことは怖く、恐ろしいこともあるけれど、逃げずに「知る」ことでよい世界が築かれると感じました。(山口・高校2年・男子)

    • 『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)今回の番組はファッションデザイナーについてでした。その中で特に印象に残ったことがあります。「作為のないものが美しい」ということです。この言葉は番組の後半に出てくるのですが、最初聞いたとき意味が分からなすぎて印象に残りました。普段私がすごい!と思うものは大きな建造物や絵画など圧倒されるものがほとんどです。しかし、この主人公のデザインは常識外れで大胆なことに驚きました。例えば、紙を小さい丸でくりぬいた後の残骸の紙切れ。無造作に置いていたその紙切れが一つのデザインになっていました。私は新しくて未知の世界を見せられたような気がしました。自分の知らない世界を見ることで新しい物の見方や発見、考え方があり、実際に経験するのとは違うけど感じるものはたくさんありました。人の人生観や考え方を知ることも良いことだと改めて感じることができました。(福岡・高校3年・男子)

  • 【自由記述】

    • バラエティー番組の中で、イタズラする映像をよく見ますが、最近そのイタズラに、どう見てもされている方が嫌がっているものがよくあります。たとえイタズラをされているのが芸能人だったとしても、されている人が明らかに困ったり嫌がっている映像は見ていて不快です。番組を作っている人も大人ですから、相手の気持ちを考えることができるはず。イタズラされる人のことも、番組を見ている人のことも両方の気持ちを考えてほしいです。(岡山・中学2年・女子)

    • 笑いを取るためにやって良いこととやってはいけないことがあると思います。過剰に演出するのもどうかなぁと思うことがよくあります。(愛知・中学3年・男子)

    • 先日、学校で「人々に大きな衝撃を与えるような事柄ではなく、人々の命を守るうえで教訓となるようなありふれた事故などの事柄をもっと報道すべきだ」という趣旨の文章を扱った。ニュース番組が重要度の高い事柄から報道しているのかという事に、疑問を覚えることはしばしばある。先刻は、豊洲市場の問題について連日報道が続いた。東京で持ち上がった問題が専ら報道されている状況を、東京以外に住んでいる人はどのように感じるのか、ということについて、考察の余地は十分にあるのではないだろうか。(京都・高校1年・男子)

    • 10月6日の『SCHOOL OF LOCK』(FM東京/FM山口)で「『君がひとりぼっちじゃないと気づいた日』を教えてほしい」と題したコーナーがありました。リスナーから『君がひとりぼっちじゃないと気づいた日』に関するメッセージを募集して、パーソナリティとリスナーが電話をつないで話を聞いていました。どの話も「ひとりぼっちじゃないと気づいたきっかけ」がとても感動的でした。今ひとりぼっちと感じている人にはとても励みになったのではないかと思います。久しぶりに良い番組を聴いたなと感じました。(山口・高校2年・男子)

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『究極の男は誰だ!?最強スポーツ男子頂上決戦2016~究極の肉体美を持つ芸能人16人の中からNo.1の称号を手に入れるのは誰だ!?~』(TBSテレビ/CBCテレビ)皆さんとても身体能力がすごくて驚いてばかりでしたが、少しやりすぎではないかと思う場面がいくつかありました。まず、上から流れてくる水の重さにどれだけ耐えられるかというものです。見ていて気持ち悪くなりました。人が押しつぶされるような感覚でした。もちろんつぶされないようにはなっていますが、足や腕がパンパンになりがくがく震えながら上から流れてくる水の重さに耐えるシーンは拷問のようでした。もう少し良い競技にしてほしかったなぁと思いました。(愛知・中学3年・男子)

    • 『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ/中京テレビ)Hey!Say!JUMPの知念侑李さんが片足しかないワラビーの世話をして群れに返すお別れのシーンはとても感動しました。群れに返す時にボロボロと泣いていた知念さんとワラビーとの関係にとても心に来るものがありました。初めましてから始まり、ワラビーのもう片方の足の型を作ってあげたり跳ぶ練習をしたり共に生活してきたのを見ているので、お別れのシーンはこっちまで感動しました。知念さんとともに生活し無事群れに帰ることのできたこのワラビーは幸せだろうなぁと思いました。(愛知・中学3年・男子)

    • 『歓びの絵 ねむの木学園 48年の軌跡』(NHKBS-1)この学園を設立された宮城まり子さんのことは知らなかったけれど、障害のある子どもたちのために学校を作ったということにとても驚きました。昔は今よりももっと障害に対しての偏見も多かっただろうに、そんな中自分でその子たちを助けようとした彼女は強いなと思いました。また、子どもたちに絵を書いて気持ちを伝える方法を伝えたということも素敵だなと思いました。子どもたちに誰かとつながる方法、自信を与えたと思います。彼らの美術展にはいつか必ず行きたいです。(高知・高校1年・女子)

    • 『サヘル・ローズのイチオシNIPPON』(ワールド・ハイビジョン・チャンネル)サヘル・ローズさんが帯広を訪問して、観光パンフレットを作るという内容でした。これまで外国人の目線から見た観光番組は見た事がなかったので興味を持ちました。また、地元の野菜を使った名物なども紹介しつつ、なぜ帯広が食料自給率が120%と高いのか、農家の人などの話から分かりました。そして、実際に作成された観光パンフレットが番組ホームページに掲載されています。そこには番組で紹介されたことが詳しくまとめられていて読みやすかったです。さらに帯広について知りたいという気分になりました。(山口・高校2年・男子)

調査研究について

2015年10月に行った立命館守山高校アンケート調査リポート「高校生のメディア・リテラシーに関する探索的研究-バラエティー番組に対する感想をめぐって-」を、10月8日9日に静岡大学浜松キャンパスで開催された「第13回子ども学会議」でポスター発表し、優秀ポスター賞を受賞したことについて、事務局から報告がありました。

今後の予定について

  • 来年3月5日に日本テレビの協力を得て開催予定の「2016年度 中高生モニター会議~日テレフォーラム18~」について、進捗状況の説明が事務局からあり、内容について検討しました。

  • 来年1月をめどに開催予定の在京局との意見交換会・勉強会について、進捗状況の説明が事務局からあり、担当は中橋委員に決まりました。

その他

  • 10月14日に立命館アジア太平洋大学で行った意見交換会について、参加した委員と事務局から報告がありました。【詳細はこちら