第128回 放送倫理検証委員会

第128回–2018年7月

6月の視聴者意見についてなど

第128回放送倫理検証委員会は7月13日に開催され、6月にBPOに届いた視聴者意見の概要が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2018年7月13日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 6月の視聴者意見の概要

6月の30日間にBPOに届いた視聴者意見のうち、批判的な意見が寄せられた「新幹線車内での無差別殺人事件」や「大阪の震度6弱の地震」を巡る報道、「バラエティー番組の企画」について、事務局からその概要が報告されたが、個別の番組について特に踏み込んだ議論にはならなかった。

以上

第260回放送と人権等権利に関する委員会

第260回 – 2018年7月

「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2018年7月17日(火)午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案

対象となったのは、外交官・杉原千畝の出生地をめぐって、CBCテレビが2016年7月から翌年6月までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。岐阜県八百津町は千畝の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したが、番組では「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとして、千畝の戸籍謄本についての検証や千畝の出生地が記された手記の筆跡鑑定の結果等を放送した。
この放送について、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが「手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を訴え申し立てた。これに対しCBCテレビは、「一連の報道は、出生地の疑問やその根拠を再検証したもので、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、申立人らが偽造したという印象を一般の視聴者が抱くとは思えない」と主張している。
前回の委員会でのヒアリング、審理を受けて、起草委員会が開かれて「委員会決定」案が起草され、今月の委員会では担当委員が決定案を説明して審理した。審理の結果を踏まえ、第2回起草委員会で決定案を修正し、次回委員会に提案することになった。

2.「芸能ニュースに対する申立て」事案

対象の番組は、2017年12月29日に放送されたTBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター超豪華!芸能ニュースランキング2017決定版』。 番組の中程で「14位 俳優・細川茂樹 事務所と契約トラブル」とナレーションがあり、「昨年末、所属事務所から『パワハラ』を理由に契約解除を告げられた細川茂樹さん。今年5月、『契約終了』という形で、表舞台から姿を消した。」と伝えた。
この放送について細川氏は、事務所からパワハラを理由に契約解除されたことをわざわざ強調して取り上げているが、東京地裁の仮処分決定で事務所側の主張には理由がないことが明白になっており、申立人の名誉・信用を侵害する悪質な狙いがあったと言わざるを得ないと主張し、謝罪と名誉回復措置を求めて申し立てた。
前回の委員会で審理入りが決定したのを受けて、TBSテレビから答弁書が提出された。答弁書の中で、TBSテレビは、意図的に申立人を貶めた事実は全くないとする一方、放送に「言葉足らずであって、誤解を与えかねない部分があった」として、申立人におわびするとともに、ホームページあるいは放送を通じて視聴者に説明する提案し、出来る限りの対応をしようとしてきたとしている。
今後、申立人から反論書、TBSテレビから再答弁書が提出される見込みで、次回委員会でさらに審理を進める。

3. その他

  • 放送人権委員会は7月4日に東京・台場のフジテレビを訪問した。テレビ局の報道現場について理解を深める目的で、奥委員長ら委員7人が参加した。
    委員会では事務局より報告した後、委員が感想を述べた。
    当日は、まずフジテレビの報道の体制や取材から放送に至る業務の流れ、危機管理態勢の取り組みについて説明を聞いた。このあと報道センターへ移動し、夕方のニュース番組の放送直前のスタジオを見学したり、字幕スーパーのチェック体制や速報を出す仕組みの解説を聞いた。また、放送本番を迎えても作業が続く映像の編集現場(NV室)やサブ(副調整室)での送出の様子をリアルタイムで見学した。
    委員からは、「大人数が時間に合わせて動き回ってニュースを毎日放送しているのは、まさに職人の世界だと思った」、「インターネット上の情報等の真偽の見極め方といった最前線の話が聞けて参考になった」、「ニュース素材の編集において、委員会決定(第50号「大津いじめ事件報道に対する申立て」)を踏まえて改善している点の説明があり、私たちの存在意義を感じた」などの感想が出された。

  • 新潟県内の民放、NHKとの意見交換会を9月27日(木)に新潟市で開催することになった。

  • 8月の委員会は休会とし、次回の委員会は9月18日に開かれる。

以上

2018年6月に視聴者から寄せられた意見

2018年6月に視聴者から寄せられた意見

大阪北部で起きた震度6弱の地震をめぐる各局の災害報道のあり方への意見。東海道新幹線の無差別殺傷事件を報じた番組で、被害者に対するコメントが配慮に欠けているといった意見やリポーターの取材内容についての批判など。

2018年6月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,635件で、先月と比較して187件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール77%、電話22%、郵便0.6%、FAX0.4%。
男女別は男性58%、女性41%、不明1%で、世代別では30歳代26%、40歳代23%、20歳代22%、50歳代17%、60歳以上9%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。6月の通知数は延べ863件【54局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、23件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

大阪北部で最大震度6弱の地震があったが、各局の災害報道のあり方への意見が多く寄せられた。また、東海道新幹線の車内で起きた無差別殺傷事件を報じた番組の、被害者に対する配慮に欠けるコメントやリポーターの取材内容についての批判も多く寄せられた。
ラジオに関する意見は57件、CMについては19件あった。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は164件で、前月から56件増加した。
今月は「表現・演出」が31件、「報道・情報」が24件、「低俗・モラル」が12件と続いた。
「報道・情報」では、大阪北部地震の取材に関する意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 大学アメフト部の緊急記者会見が、罵声の飛び交う中開かれ、それを各局で取り上げていたが、一方的に大学と広報担当者を非難するものだった。広報担当者の仕切りが悪いのは分かるが、同じような質問を繰り返していた記者側にも混乱の責任の一端はあると思う。特に、ある記者から「この問題は、大学のブランドを失墜させることになるのでは…」との声が飛んでいたが、これは、マスコミ権力を使った一種の脅しであり、非難されてしかるべきである。

  • 和歌山県の資産家不審死事件の報道について。各局の情報番組では、配偶者があたかも犯人であるかのような報道が目立ち、多数のマスコミ関係者が彼女の行動の自由を妨げている。この報道姿勢には大いに疑問を持たざるを得ない。過去にあった松本サリン事件の事例から全く学んでいないのではないか。

  • 大阪北部で大きな地震があったが、地震発生からヘリコプターが多数飛び交い、なぜこんなに多く飛ばさなければならないのか、疑問に思った。ブロック塀が倒れた小学校の周辺では、被害にあった生徒の情報を聞き出そうとする取材陣がおしかけ、献花に行ってもすぐマスコミに取り囲まれる始末。取材に対応するストレスも溜まり、震災報道のあり方をもう少し考えてもらいたい。

  • 地震被害の大きかった大阪・高槻市に住んでいる。昨日、どの局か、表示のない取材クルーが来ていたが、取材の仕方があまりにひどかった。駐車している中継車は邪魔で、人の通行をさえぎってまで放送していた。女性リポーターは、中継の間だけヘルメットを着用していたが、それ以外の時は誰もヘルメットをかぶらず、大声で談笑し、壊れた家の表札まで無許可で撮影していた。被災した人たちは、ライフラインの状況を、インターネットでしか知ることができない。取材クルーは、壊れた家を映すのではなく、その人たちの知りたい情報を伝えるべきではないか。1995年の阪神淡路大震災でも被害にあったが、その時と取材の仕方がほとんど変わっていないように感じる。もっと被災者に寄り添った取材をしてほしい。

【番組全般・その他】

  • 昼の情報番組で、米朝首脳会談の映像を流す際、トランプ大統領と金正恩委員長の肉声に、声優による日本語の吹き替えを上乗せして放送していた。声優の感情が込められた芝居作りになっていて、誇張、歪曲して伝わるため、事実を誤認してしまうおそれがあると思う。日本語訳は字幕でも表示されていたので、声優はそもそも不要だったのではないか。一国の首脳同士の会談を、キャラクターの乗った吹き替えにするのは、分かりやすさを逸脱し、冷やかしているような印象を受け、不適切な演出に感じた。

  • 日曜夜の番組を見た。新幹線車内の殺傷事件について、警察署からのリポーターが「男性客に止められたことが犯人を刺激し、犯行をエスカレートさせた可能性もある」と報告していた。身をていして女性客を守った勇気ある行動を非難するようなもので、不適切極まりない。彼が行動しなかったら、女性客たちはもっと大きな被害を受けていたのではないか。番組として、犯人を擁護するようにも感じられ、その一方で、犠牲になった人に対する心ない説明が多く、見ていて憤りが収まらなかった。

  • バラエティー番組の繁華街での収録で、誘拐事件と誤解させる行為があり、警察が出動する騒ぎになったが、それだけでは済まない。今回のことをきっかけに、本当の犯罪現場に遭遇しても、通行人が「テレビの収録だろう」と思い込んで見過ごすという事態も起こり得る。社会に与えた迷惑の大きさを思い知るべきだ。

  • BSのドキュメンタリー番組に映像を提供したが、番組を見た一般の方から、「水中映像において、イルカの群れと他の魚が泳ぐ時期などに疑問がある。故意に映像をつなぎ合わせ、事実をすり替えているのでは…」との指摘を受けた。録画で確認したところ、確かにその通りで、これは、放送を通じて自然科学を一般に広く伝える上で、あってはならないことだと思う。私は、番組の編集には一切関与しておらず、映像の扱いも十分に注意するよう制作会社に伝えていた。映像は提供したが、勝手に編集され、事実と異なる内容が放送された。甚だ遺憾である。

青少年に関する意見

【「報道・情報」に関する意見】

  • 大阪北部での地震で学校のグラウンドに無断で入り、児童を撮影して生中継していた。教師に注意され生中継を中断したが、児童のプライバシー保護を考えていないし、被災者の視点に立った行動をしていないことは反省すべきだ。

  • 地震当日、死亡した女児の友達にインタビューしていた。被災した子どもに対して教師が心のケアに一生懸命に取り組んでいるとき無配慮なインタビューをすることに倫理観を疑った。

【「低俗・モラル」に反するとの意見】

  • アニメで、やかんのようなキャラクターが出てきて、注ぎ口が下半身にあり腰を振るという下品な表現があった。子どもの見る時間帯に不適切だ。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で、有名スポーツ選手が子どものころ受けたスパルタ教育を取り上げていたが、虐待にしか見えない。虐待をスパルタ教育と容認し、それに耐える子どもを称賛する番組は虐待を増長させるのではないか。

第204回 放送と青少年に関する委員会

第204回-2018年6月26日

視聴者からの意見について…など

2018年6月26日、第204回青少年委員会を午後4時30分からBPO会議室で開催し、6人の委員が出席しました。(1人は所用のため欠席)
委員会ではまず、5月16日から6月15日までに寄せられた視聴者意見について議論しました。
バラエティー番組で、芸人を街頭から連れ去り、倉庫に閉じ込めて、携帯電話で身代わりになる仲間の芸人を次々に呼び出していくというドッキリ企画に関して、「子どもが真似をして人間関係にひびが入る」「助けに来てくれた仲間を裏切るのは青少年に悪影響だ」などの視聴者意見が寄せられたことについて、委員からは、「これはドキュメントバラエティーという最近のバラエティーの一つの傾向であり、極限状況にタレントを追い込んで、その時の素のリアクションを見ることを狙いにしたものであろう」「心理的に追い込んでいくギャグもバラエティーにはありかと思う」などの意見が出されました。
6月の中高生モニターのリポートのテーマは「最近見たドラマについて」で、33人から報告がありました。モニターからは、医療をテーマにした連続ドラマについて「このドラマに出てくるプライドの高い人たちのライバル意識によって起こる問題は、医者だけでなく政治家や大学のスポーツ部の監督などに実際に起きている問題と同じだと思った」、朝の連続ドラマについて「自分と同じ年代の主人公で、とても親近感がわいてきて、ついつい感情移入してしまう。同年代が主人公の番組が少ないのでとてもうれしい」、また、男性同士の恋愛を描いた連続ドラマについて「男性同士のラブストーリーをコメディー風に描いているのが、すごくいいなと思った。ドラマのシーンのように、同性同士の結婚を偏見なく笑顔で祝うことができるようになってほしい」などの意見が寄せられ、それについて議論しました。
次回は7月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2018年6月26日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

バラエティー番組において、芸人を倉庫に閉じ込め、脱出するには身代わりになる芸人を携帯電話で呼び出し、自分に代わって倉庫内に閉じ込めなければならないドッキリ企画について、「助けに来てくれた仲間を裏切るのは青少年に悪影響だ」「子どもが真似をして人間関係にひびが入る」「番組を見た小中学生が真似をしてゲーム化するのではないか心配だ」との意見が寄せられました。これに対して委員からは「このようなタレントを心理的に追い込む笑いもバラエティー番組にはありかと思う」などの意見が出されました。
また大学アメリカンフットボールの危険タックル問題で、反則プレーを行った学生の記者会見に関し、「学生に対しての質問がひどすぎる」「代理人弁護士が顔をアップで撮り続けないでほしいと言っているのに未来ある学生に配慮していない」などの意見が寄せられました。これに対し委員からは「20歳の方が自分で記者会見をするといった判断は、やっぱり尊重すべきではないかと思う」「非常に難しく微妙な問題だが、各局の対応がまずかったとまでは言えないと思う」などの意見が出されました。
これらの件に関しては、これ以上話し合う必要ない、となりました。
また中学生の「誘拐」をテーマにしたドラマについて、放送前にもかかわらず様々な意見が寄せられました。これに対して委員からは、「放送を見てからでないと判断できない」「事前抑制的な対応については慎重であるべき」などの意見が出されました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした6月のテーマは、「最近見たドラマについて」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で33人から報告がありました。
「ドラマについて」では、複数のモニターが意見を寄せたドラマが10番組あり、『日曜劇場ブラックペアン』(TBSテレビ)と『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ)にはそれぞれ4人、『連続テレビ小説 半分、青い。』(NHK総合)、『土曜ナイトドラマ おっさんずラブ』(テレビ朝日)にそれぞれ3人から報告がありました。「自由記述」では、番組が正時ではなく、数分前倒しで始まることに対して疑問を呈し、「正時にスタートして欲しい」と意見を述べたモニターが2人いました。またよく聴くラジオ番組(『SCHOOL OF LOCK!』/エフエム東京)について、番組から元気をもらい「ここにも自分の居場所があると思うことができる」との思いを伝えるモニターもいました。「18歳成人」の民法改正の動きに則し「〈大人になるための知恵〉を得られる番組を作ってほしい。法律で決められたからといって〈大人〉にされても、準備ができていないと困る」という4年後に成人を迎えることになる14歳ならではの意見もありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『R-1ぐらんぷり優勝者特番 濱田祐太郎のした事ないこと!』(関西テレビ)を4人が取り上げています。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • BGMの演出効果にまで言及しているリポートがいくつかあった。最近の子どもたちは、音楽の感性が鋭くて、ドラマをある意味、緻密に見ているということがわかった。

    • 『シグナル』(関西テレビ)を見て、「間違ったことがまかり通る現実の中で正しいことを追い求める姿に、本来社会がどうあるべきなのか再確認させられた」という感想があった。ドラマを見てここまで考えてくれたこと、感じた思いを自分の考えとして表現してくれていることを、とてもよいと思う。

    • 「(日本のドラマ界は)人気のあるタレントを主人公にキャスティングすればヒットするという安直な方向に向かっているのではないか?」「日本のドラマはDVD販売などの二次利用を狙わず低コストで制作するから面白い作品ができない」との指摘など、ドラマ制作の背景に言及した意見があった。

    • 普段は性差別やジェンダーについてSNSで知ることが多いというモニターが、『おっさんずラブ』(テレビ朝日)を視聴し「テレビメディアとSNSをうまく利用して今の社会を知ることができればいい」と感想を述べていた。ドラマを見ることにより、ドラマには描かれていない実際のマイノリティーの問題に自分でアクセスし、ドラマの奥の現実にアプローチしてくれたのだとするならば、ドラマの意義が発揮されていたのだろうと思う。

  • 【自由記述】について

    • 5歳の女の子が虐待で亡くなった事件のニュースを見て「今の日本の児童保護のずさんな実態を知った」との報告があった。社会問題に関心を寄せるきっかけにテレビがなっていることがわかる。

    • 「全世代がジェネレーションギャップを感じることなく見られるようなドラマやバラエティーが少なくなってきたように感じます」と感想を述べているモニターがいた。実際のところどうなのかはわからないが、中高生はそのように感じているのかもしれない。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たドラマについて】
    • 『シグナル』(新潟総合テレビ/関西テレビ)このドラマは、現在と過去それぞれの時代を生きる2人の刑事がトランシーバーを通じて未解決事件に挑むミステリーです。事件解決に協力してほしい気持ちとこれ以上関わり続けると殺されてしまうという不安な気持ちのせめぎあいがとても切なかったです。また全体的に画面が暗かったり、BGMがどきどきするような曲だったりしたので、とてもどきどきして面白かったです。(新潟・中学1年・男子)

    • 『スペシャルドラマ検事・悪玉』(テレビ朝日)この話は、タレント政治家を狙った無差別事件を発端とし、宗教、カルト事件などかなりシリアスな内容でした。ミステリー好きでないと「見てみよう」とは思いづらいですが、見始めると引き込まれるスタートは良いと思いました。音楽がジャズ風でかっこよかったです。(東京・中学2年・女子)

    • 『コンフィデンスマンJP』(関西テレビ/フジテレビ)このドラマは、良くない行いをしている人からお金をだまし取るというドラマです。父に紹介されてみたところ思わず爆笑してしまいました。ぼくは主演の長澤まさみが演じるダー子が好きです。いつも明るくて「え?いつからだましてたの?」と思うことがたびたびあります。(兵庫・中学2年・男子)

    • 『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(NHK総合)スクールロイヤーという聞きなれない立場の弁護士の話。舞台が中学校ということに興味を持ち見始めた。校則に従い、生まれつきの茶髪を黒髪に染めていた男子生徒の話では、大人たちの対応に矛盾と怒りを感じた。終盤のいじめによる自殺未遂の女子生徒と主人公が向き合う場面は、いじめている人いじめられている人、みんなに見てほしいと思う。弱い立場の人が強くふるまう人に対して意見を言うのは難しいことだが、法律がひとつの心の武器になることがわかった。(福岡・中学2年・男子)

    • 『ブラックペアン』(RKB毎日放送/TBSテレビ)このドラマは、理事長の座を巡って2人の権力ある医者が毎回対決し、ワクワクします。彼らは人の命を救う医者なのに、学会の理事長になるために論文を書いたり手術を成功させたりして、なんだか自分の手柄のために仕事をしているように見えます。今回も西崎教授が、自分が手術でミスをしたことで評判を下げることがないようにミスを隠したり部下のせいにしたりしようとしました。このドラマの中では、手術はもはや患者のためではなく医者のためにされているように思えます。私は、このドラマに出てくるプライドの高い人達のライバル意識によって起こる問題は、医者だけでなく政治家や大学のスポーツ部の監督などに実際に起きている問題と同じことだなぁと、このドラマを通してしみじみ思いました。(福岡・中学3年・女子)

    • 『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(NHK総合)30分の全6回、計3時間のテンポの良い話で見やすかった。自分が学生という立場なので、親近感を持つことも多かった。また自分も少し理屈っぽくて法律が好きなので、法律で間違いを正すというこの話がとても良いと思った。あまり不幸になる人のいないエンディングだった。(沖縄・高校1年・男子)

    • 『シグナル』(関西テレビ)僕はこのドラマを初回から最終回まで全話視聴したが、はじめは、‘無線機で現在と過去がつながる’というありえない設定の物語だということであまり観る気が起こらなかった。しかし初回からストーリーに引き込まれ、このドラマの面白さに気づいた。ストーリー全体を通して、二人の刑事の正義感の強さが描かれていた。たとえ周囲に反対されても、たとえ立ち向かう敵がどんなに大きくても、自分の信念を貫き、間違ったことがまかり通る現実の中で正しいことを追い求める姿に、本来社会がどうあるべきなのか、再確認させられた。‘絶望するような過去があっても、望みを捨てなければ、これから続く未来には希望がある’という強いメッセージが伝わってきた。社会の中で悲しい過去は消えないが、未来に希望をもちたい。(兵庫・高校1年・男子)

    • 『半分、青い。』(NHK総合)「半分、青い」は4月から始まって以来、毎日欠かさず見ている大好きなドラマです。いつも録画をして一日の終わりに見ているのですが、主題歌を聞くと、今日も一日頑張った、明日も頑張ろうと思えます。毎日の楽しみ、そして勉強の息抜きとなっています。この物語は、私と同じ年代の主人公で、見ていてとても親近感がわいてきて、ついつい感情移住してしまいます。同年代が主人公の番組は少ないのでとてもうれしいです。主人公は片耳が聞こえません。しかし、そのことを半分、青いとらえる主人公が大好きです。私にはないポジティブさを持っていて、いつも勇気と元気をもらっています。また、ドラマでは、主人公と仲間たちとの絆や家族愛、自分の意志を強く持つことの大切さが描かれていて、毎回いろいろ考えさせられます。そして、最近特に感動したのが、主人公の漫画の先生である秋風先生の言葉「心を動かされることから逃げるな、そこには真実がある。半端に生きるな」です。漫画家志望の主人公に対する言葉ですが、私にも響きました。全力で、高校生活を送って、後悔しないように、今しか感じられないことを感じ、全力で楽しまなければいけないな、と改めて思いました。時々、私は何に向かって歩いているのか、と迷うこともあります。そんな中で、大きな夢を持つ主人公は、あこがれの存在であり、がむしゃらに、そしてひたむきに頑張る姿を見て、テレビの前で応援しています。また、その姿から自分も頑張らなければいけないと思ったり、勇気をもらったりしています。自分のなりたいものに向かって頑張ることの楽しさをドラマを通して、感じることができ、素敵だな、私も早く見つけたいな、と思いました。(福井・高校1年・女子)

    • 『おっさんずラブ』(北海道テレビ/テレビ朝日)母と一緒に楽しく拝見させていただきました。男女間の恋愛だけでなく、現代に浸透しつつある同性愛を描くドラマ、とても新鮮でよいと思いました。(北海道・高校2年・女子)

    • 『ドラマ25 宮本から君へ』(テレビ東京)この番組は金曜日の深夜に放送されているため、学校のことをあまり考えなくてもよく、1週間終わった達成感や疲労感に寄り添ってくれる内容なのでついついリアルタイムで見たくなってしまう構成になっていると感じた。初めの数話を見たときは、主人公の不器用さや思うようにうまくいかない現実を見ることが苦しく、辛かった。しかし、いつか自分が社会に出たときにこのような世界で生きるかもしれないと気付いたときから、しっかり物語を見続けようと思うようになった。そして、初めは自らのこだわりが仕事でも恋愛でも通用しないことがもどかしくて、落ち込み激しく怒り、叫んでいた主人公が、徐々に自分にできることを模索し、懸命に働くことで自立した社会人になっていく姿に引き込まれ、私もがんばろうと思うようになっていった。この番組は中高生をターゲットにしたものではないかもしれないし、高校生の私には理解しきれていない内容もあるかもしれないが、胸が熱くなるこのドラマに高校2年生のこの時期に出会えてよかったと思うとともに、主人公と同じくらいの年齢になったとき、またもう一度見直したいと思っている。(東京・高校2年・女子)

    • 『崖っぷちホテル!』(日本テレビ)人気のあるタレントやアイドルならある程度ファンを獲得できるということを考慮してキャスティングをされているなら、日本のドラマ界はあまりいい傾向にないのではないかと感じた。日本のドラマはDVD販売などの二次利用を狙わず低コストで制作するから面白いものが少なくヒット作が増えないなどの見方もある。ぼくは、お金がないなら1週間に3本も4本もドラマを作る必要がないとさえ感じる。(東京・高校2年・男子)

    • 『おっさんずラブ』(テレビ朝日)男性同士の恋愛ものというコンセプトが世間にどのように受け入れられるのか興味がありました。初回からあまり期待せずに見始めましたが、回を重ねるごとにどんどん面白くなり、違和感なく楽しめました。男女のラブストーリーのようにキュンキュンするシーンがあり、ドキドキしながら見ていました。今まで男女のラブストーリーしかなかったところに、男性同士の恋愛をコメディータッチに描いているのですごくいいなと思いました。性差別やジェンダーなどに関する問題も多くある現代で、性的少数者にとって何かプラスになったのではないかな、と思います。私自身も今まであまり詳しく知ろうと思ったことがなかったので、このようなドラマでコメディーチックに描かれてはいるけれど、多くの人がこのような人たちの存在に気付くことができたのではないかと思いました。このドラマのシーンのように、同性愛者の結婚を偏見なく笑顔で祝うことができる日本になってほしいです。(東京・高校2年・女子)

  • 【自由記述】

    • 部活が忙しくてあまりテレビを見られていませんが、最近はまっている番組は『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)です。この番組を見るといろいろなことがわかって面白いです。また年齢関係なくみられるので、家族で一緒に楽しめるのがいいです。(新潟・中学1年・女子)

    • 2022年4月から、18歳で成人となる改正民法が可決された。私はちょうど2022年に18歳になる。テレビの報道番組は、もっと小中高生に向けた「大人になるために知恵」を得られる内容で作ってほしい。法律で決まったからといって「大人」にされても準備ができていないと困る。(福岡・中学2年・男子)

    • 民放に多いのですが、番組が10時ちょうどからではなく、9時56分などから始まるのはどうしてなのかな?と思っています。ちょうどに始まるほうが、時間がわかりやすくてうれしいです。(福岡・中学3年・女子)

    • 5歳の女の子が虐待を受けて死亡したという事件報道を見て、今の日本の児童保護のずさんな実態を知った。この女の子は過去に2度児童相談所に保護されていたらしいが救えなかった。以前にも似たようなニュースを見たことがある。これらはきっと氷山の一角で、もっと多くの子どもたちが亡くなっていると思う。この事件を改善のきっかけにしていってほしいと思う。(沖縄・高校1年・男子)

    • 56・57分スタートという番組が多く、何時スタートか覚えづらいです。00分スタートにしてほしいです。また、ニュース番組で取り上げるニュースが、身近なものが多すぎる気がします。身近な情報も必要ですが、海外の大きなニュースももっと知りたいなと思います。(福井・高校1年・女子)

    • 全世代がジェネレーションギャップを感じることなく見られるドラマやバラエティーが今は少なくなってきているように感じます。(東京・高校2年・女子)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)を聴くことが多くなり、出演者がリスナーと向き合ってまっすぐ言葉をかけていて、胸がグッと来で、私もがんばろうと思える。ここにも居場所があると思える。(東京・高校2年・女子)

    • インターネットで好きな情報が得られる世の中で、テレビで何を報道するかが重要だと思った。夕方の報道番組を見ているとき、ザッピングしていると各局同じ話題が取り上げられていることが多いと感じる。(東京・高校3年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】について

    • 『R-1ぐらんぷり優勝者特番 濱田祐太郎のした事ないこと!』(関西テレビ)目が見えないことをネガティブにとらえるのではなく武器として漫談をしているところに感動しました。一般的には障害者だからこのネタは笑えないという方もいらっしゃると思います。しかし、他は全て私たちと同じであって、私たちよりも自分のことをわかっています。「芸人として笑ってほしい」という言葉がとても響きました。(東京・高校2年・女子)

今後の予定について

  • 10月2日、熊本市にて意見交換会(熊本地区)を開会することを確認しました

以上

第259回放送と人権等権利に関する委員会

第259回 – 2018年6月

「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など

議事の詳細

日時
2018年6月19日(火)午後3時~8時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、白波瀬委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案 ヒアリング、審理

対象となったのは、外交官・杉原千畝の出生地をめぐって、CBCテレビが2016年7月から翌年6月までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。岐阜県八百津町は千畝の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したが、番組では「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとして、千畝の戸籍謄本についての検証や千畝の出生地が記された手記の筆跡鑑定の結果等を放送した。この放送について、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが「手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を訴え申し立てた。
今月の委員会では、申立人と被申立人のCBCテレビにヒアリングを実施し、詳しい話を聴いた。
申立人側は、NPOの副理事長2人が代理人の弁護士とともに出席し、「鑑定結果について、『完全に違う』という鑑定員の発言や『千畝の文字ではない可能性が極めて高いという結果が出ました』というナレーションがあり、現在、NPOが手記を保管していることからすれば、改ざんに申立人らが関与しているとほぼ特定する結論になっている。一連の放送の中では、『改ざん』、『偽造』、『偽物』という言葉が使われているし、アナウンサーの表情や態度からも、視聴者に改ざんの印象を与えていると理解する。取材のときには偽造や改ざんの可能性に関する指摘や質問等は一切なく、納得して帰られたので、放送を見て非常に驚いた」等と述べた。
CBCテレビからは報道の責任者ら3人と代理人弁護士が出席し、「手記の清書前の原稿で出生地が書き換えられていて、千畝本人が行ったのか、その可能性を探る方法として筆跡鑑定を行った。その結果、千畝の筆跡とは違う可能性が高いと伝えただけであり、いつ、誰が書き換えたかについては言及しておらず、手記が偽造や改ざんされたと断定するような放送はしていないし、視聴者もそう受け取ることは無いと考える。報道の意図は、手記が真正なものか偽造されたものかを確かめるものではなかったので、わざわざ申立人に筆跡鑑定の結果は問わなかったが、『手記は誰が書いたものですか』という質問はしている」等と述べた。
ヒアリング終了後、本件事案の論点を踏まえ審理を続け、その結果、担当委員が決定文の起草に向けて準備に入ることになった。

2.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」委員会決定についての対応報告の検討

本年3月8日に通知・公表が行われた委員会決定第67号「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」(勧告 人権侵害)に対して、東京メトロポリタンテレビジョンから対応報告が提出され、委員会はこれを了承した。

3. 審理要請案件「芸能ニュースに対する申立て」

委員会は、本件申立ての審理入りを決定した。
番組は、2017年12月29日に放送されたTBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター超豪華!芸能ニュースランキング2017決定版』。
番組の中程で「14位 俳優・細川茂樹 事務所と契約トラブル」とナレーションがあり、「昨年末、所属事務所から『パワハラ』を理由に契約解除を告げられた細川茂樹さん。今年5月、『契約終了』という形で、表舞台から姿を消した。今年は、芸能人と事務所をめぐるトラブルが目立った」と伝えた。
この放送について細川氏は、事務所からパワハラを理由に契約解除されたことをわざわざ強調して取り上げているが、東京地裁の仮処分決定で事務所側の主張には理由がないことが明白になっており、申立人の名誉・信用を侵害する悪質な狙いがあったと言わざるを得ないと主張し、謝罪と名誉回復措置を求めて申し立てた。
これに対してTBSテレビは、委員会に提出した「経緯と見解」において、申立人を意図的に貶めようと放送したという主張はまったくの誤解だとする一方、放送に「言葉足らずであって誤解を与えかねない部分があった」として、申立人に謝罪するとともに、ホームページあるいは放送を通じて視聴者に説明する意向を示したが、当事者間での話し合いでは解決に至らなかった。
委員会は、本件申立ては委員会運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理入りすることを決めた。

4. その他

  • 次回委員会は7月17日に開かれる。

以上