第277回放送と人権等権利に関する委員会

第277回 – 2020年1月

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」委員会決定を通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2020年1月21日(火)午後4時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案の審理

テレビ東京は、2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部は加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」としたうえで、音声の一部が加工されないまま放送された点について「編集作業上のミスで反省している。放送後速やかに社内ルールを見直し、再発防止に努めている」としている。
今委員会では、再修正された決定文案が担当委員から示され審理し、修正を加えたうえで、委員会として決定内容を承認した。2月14日に通知公表の予定。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉の『NEWS545』が昨年4月11日に放送した損害賠償訴訟のニュースを巡って元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」であり、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張した。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。テレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実だとして、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、起草担当委員より決定文の草案が提出され、担当委員が全体構成と論点別の主旨を説明した。審理の中では、とくに議員辞職と第三者委員会のセクハラ認定の時系列関係が逆転しているようなナレーションについて、委員の間で活発に意見が交わされた。この日の議論を元に、次回委員会までに、さらに決定文案の修正を行い、改めて審理することになった。

3.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の死刑囚の執行情報を分かりやすく伝えたもので、申立人の人権を侵害していないなどと反論している。
今委員会では、番組のどの部分が申立人の主張する権利侵害などの問題になりうるか、検討すべき論点を整理した。そのうえで、申立人と放送局の双方に対してヒアリングを行う方針を確認し、質問項目を決定した。次回2月委員会でヒアリングを実施する予定。

4.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の報告

今委員会では、まだ双方から必要な書面が整っていない状況が報告され、実質的な審理は行われなかった。
この事案は、札幌テレビ(STV)が、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道したもの。番組では、男性が家で申請書類を記入するところや、北海道庁での申請手続きなどの様子を放送した。これに対して、この男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求め申立書を提出したもの。
一方、札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものだとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。

5. 審理要請案件

・「大縄跳び禁止報道に対する申立て」
フジテレビは、2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を取り上げた。放送は、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに、周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介したもの。番組では、周辺住民が「本を読んだり、集中する日には、うるさいと思う」などと答えるインタビューが紹介された。この放送に対して、このインタビューに答えた女性が、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問され、勝手に放送に使われ、「懇意にしている進学塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて、BPO放送人権委員会に申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。

6. その他

  • 「覚せい剤押収報道に対する申立て」の通知報告
    前回委員会で審理入りしないと決めた同事案の処理に関する報告。同事案は、人権侵害の有無及びそれに係る放送倫理上の問題を検討する必要があると委員会が判断したものの、審理に不可欠な、取材の経緯を知る申立人の家族への事情聴取について了承を得られず、審理対象にしないと決定したもの。今回、申立人、被申立人である当該放送局に審理入りしないことを通知するとともに、委員長として、この決定にいたった委員会の判断と議論について説明する書簡を、双方に送ったことが報告された。

  • 委員会運営規則に関する議論
    BPOの認知度が上がるとともに、委員会に対する申立ての提出件数が急増し、内容が複雑化、委員会本来の目的とずれたものも散見されている。こうした状況を受け、委員会は、主に運営規則にある「苦情の取り扱い基準」のありかたについて議論した。委員会としては、これまでどおり委員会の審理を経て、その都度決定することを前提としながら、審理対象としない決定をすることができるような規定を明文化する方向で検討することとなった。

以上

第32号

関西テレビ 『胸いっぱいサミット!』
収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見

2020年1月24日 放送局:関西テレビ

関西テレビが2019年4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』の中で、コメンテーターとして出演した作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言した。この発言について委員会は、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている日本民間放送連盟(民放連)放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議を続けてきた。
委員会が行ったヒアリングの中で、制作陣からは 刺激的な表現で「ギリギリのラインを攻める」ことが視聴者から期待されているという趣旨の声が複数聞かれた。これについて委員会は、「ギリギリのラインを攻める」ことの意味とその危うさに対して制作陣の意識は不十分であったと言わざるを得ず、「ギリギリのラインを攻める」番組を放送倫理の観点から客観的にジャッジすることができる体制とはいえなかったのでないかと分析した。そのうえで、民放連放送基準「(5)人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」「(10)人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」や、当該放送局の放送倫理規範である「番組制作ガイドライン」の中の「すべての人は人種、皮膚の色、言語、宗教、などによって差別を受けることは許されることではありません」という規定などに照らして、審議の対象とした2回の放送はいずれも放送倫理に違反するものだったと判断した。

2020年1月24日 第32号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

  • I はじめにpdf

  • II 審議の対象とした番組pdf

    • 1 4月6日放送回~戦犯ステッカー条例案をめぐる発言
    • 2 5月18日放送回~韓国国会議長の祝電問題をめぐる発言
  • III 本件各放送の制作過程pdf

    • 1 『胸いっぱいサミット!』の制作体制
    • 2 4月6日放送回の企画、収録に至るまで
    • 3 編集過程で何があったか
    • 4 5月18日放送回の制作・編集過程
  • IV 局の事後対応の経過pdf

    • 1 2回目の放送後からお詫びに至るまでの経緯
    • 2 番組審議会、オンブズ・カンテレ委員会の対応
      • (1)番組審議会の意見の内容と推移
      • (2)オンブズ・カンテレ委員会の提言
  • V 委員会の検証と分析pdf

    • 1 X氏の発言が編集でカットされなかった原因、背景
      • (1)「ギリギリのラインを攻める」ことの危うさが露呈した
      • (2)考査担当者の意見が尊重される制作環境だったか
  • VI 委員会の判断pdf

  • VII おわりにpdf

2020年1月24日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2020年1月24日午後1時30分からBPO第1会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。記者会見には、22社43人が出席した。
詳細はこちら。

2020年5月15日【委員会決定に対する関西テレビの対応と取り組み】

委員会決定 第32号に対して、関西テレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2020年4月24日付で提出され、委員会はこれを了承した。

関西テレビの対応

全文pdf

目 次

  • 1.委員会決定についての放送と社外通知
  • 2.委員会決定の社内通知について
  • 3.オンブズ・カンテレ委員会への報告について
  • 4.番組審議会への報告について
  • 5.再発防止、放送倫理意識向上への取り組みについて
  • 6.終わりに

2020年1月21日

「大縄跳び禁止報道に対する申立て」審理入り決定

対象となったのはフジテレビの『とくダネ!』。昨年8月30日の放送で、都内の公園において大縄跳び禁止の看板が立てられた話題を取り上げ、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介した。番組は、周辺住民数人をインタビューし、その中の一人として申立人が、「本を読んだり、集中して何かをやる日には、ちょっとうるさいと思う」などと答えた場面を放送した。

この放送に対して申立人は、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問されたものを、勝手に放送に使われた。「内容的に、懇意にしている学習塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて、BPO放送人権委員会に申立書を提出した。

これに対してフジテレビは、誘導尋問との指摘について、インタビュー映像には誘導尋問をする場面はないと反論するとともに、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」と主張している。

21日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第145回 放送倫理検証委員会

第145回–2020年1月

スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』委員会決定を通知・公表へ

第145回放送倫理検証委員会は1月10日に開催された。 委員会が昨年10月7日に通知・公表した長野放送の『働き方改革から始まる未来』に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含めた取り組み状況など対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、当該対応を了承して公表することにした。 少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ審議中のTBSテレビの『消えた天才』について、担当委員から意見書の修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、2月に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。 仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の修正案が示された。 海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議しているTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』とついて、意見書の原案が提出された。 スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人だったという不適切な演出で審議入りしているテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、意見書の骨子案が示された。 番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議入りしている琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、ヒアリングの途中経過や今後の予定が報告された。

議事の詳細

日時
2020年1月10日(金)午後2時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員

1. 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見への対応報告を了承

委員会が10月7日に通知公表した、長野放送の『働き方改革から始まる未来』に関する意見(委員会決定第30号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。 報告書には、「『役員・社員に対する放送倫理・番組基準の徹底と意識改革』に関する取り組み」として、社内で意見書勉強会とアンケートを実施するとともに、民放連事務局から講師を招いて「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の理解を深めるために勉強会を開いたことなどが詳細に記されている。委員からは「社員のアンケート結果からは、一人一人がしっかりと事例を受け止めていることがわかる」「社員に加え、制作会社の関係者まで広く対象とし、また、社員等の主体性を生かす研修を実施するなど、自主・自律的な観点から望ましい事後対応を行っている」といった感想が述べられ、適切な対応が行われているとして、当該報告を了承して公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)

2. スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議 2月に通知・公表へ

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、昨年8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたと報告があった。9月の委員会で、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議することになり、議論を重ねてきた。 今回は、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、2月に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議

参議院選挙公示前日の昨年7月3日、北海道放送は夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した企画を放送した。企画の中ではその他の比例代表の候補者や政党にまったく言及しておらず、制度上、参議院比例代表選挙には北海道という区切りがないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できず、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして、委員会は9月から審議を続けている。 今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。 

4."レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは昨年5月、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと明らかにした。番組の制作担当者は、利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。 委員会は、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞いて放送に至った経緯を検証する必要があるとして、昨年9月に審議入りを決めた。 この日の委員会では、担当委員から意見書の修正案が示され、それをもとに議論した。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。 

5. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは、昨年8月14日放送のバラエティー番組『クレイジージャーニー』の中で海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議することを決めた。 この日の委員会では、12月に行われた制作担当者らに対するヒアリングを踏まえて担当委員から意見書の原案が示され、意見交換が行われた。次回委員会には、この日の議論を受けた意見書の修正案が提出される予定である。

6. スーパーで偶然出会ったように放送した買い物客4人が取材ディレクターの知人だったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は昨年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」でスーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が、取材ディレクターの知人だったことがわかったとして、10月に謝罪した。 11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議することになり、12月に当該放送局の番組制作担当者らに対するヒアリングを行った。 これを踏まえて今回の委員会には意見書の骨子案が提出され、意見交換が行われた。次回委員会には議論を受けた原案が示される予定である。

7. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が昨年9月21日に放送した『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっていて、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかという意見が相次ぎ、12月から審議を続けている。委員会は、昨年10月に別の放送局の番組に対して出した意見書の審議の過程や結果が、それぞれの番組の制作過程にどのように反映されたのについても詳しく聞く必要があるとしてヒアリングを始めていて、この日の委員会ではその途中経過が報告されるとともに、今後の予定が説明された。 次回委員会には、意見書の構成案が提出される予定である。

以上

2019年12月10日

読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、12月10日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、長嶋甲兵委員の4人が出席し、読売テレビからは常務取締役(コンプライアンス、技術担当、社長担当補佐)ら3人が出席した。
委員会決定について升味委員長代行は、「プライバシーの観点から、取材でここまで踏み込まずにどこかで止まって欲しかった」と述べた。岸本委員は、「本件は多くの放送局にとって共通の課題だと思うが、放送後の対応には目を見張るものがあった」と述べ、また長嶋委員は、「報道と情報バラエティの境がなくなりつつある中で、良識のようなものが混乱している」と発言した。最後に神田委員長から、「意見書の冒頭に番組内で叱責した出演者の発言をあげたが、その内容には大変重いものがあり、その後の自主・自律的な対応につながったと言えよう。意見書だけではなく、その言葉を、今後の教訓として自局内で問い続けていってほしい」とコメントした。これに対して読売テレビは、「意見を真摯に受け止め、今後の番組作りに生かしていく。放送後、番組制作体制の強化とともに全社的な研修会を開催して人権意識の向上に取り組んでおり、今後も再発防止と信頼回復に努めていく」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社44人が出席した。
はじめに神田委員長が、「問題の放送は、特に性的少数者の人権や当事者の社会的困難への配慮が課題として議論されている時代に、もっとも感性が鋭敏であるべき放送が、著しく配慮を欠くやり取りを放送した点で看過できない問題があり、民放連の放送基準(3)に反し、放送倫理基本綱領や民放連の報道指針に反する放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って説明を加えた。続いて升味委員長代行が、「報道番組で培ってきた人権意識や裏取りの意識を貫いて、情報バラエティの番組作りにも生かしてもらいたい。また研修や日々の現場でお互いに意見を言い合うことなどを積み重ねて、人権への関心を高めてほしい」と感想を述べた。岸本委員は、「企画を成立させる、誰かがチェックしている、といった基準ではなく、多様性の時代の社会生活における普通の感性で取材や制作をすることが課題である」と述べ、長嶋委員は、「街ブラ企画には問題を生む土壌があるなと気になった。違和感を共有する場がなかった点も踏まえて、新たなワークフローの形を考える必要があるのではないか」と述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 特に性的少数者の人権などが議論されている時代、と委員会の判断にあるが、放送倫理違反があったとする今回の意見に時代背景が影響したとの認識でよいか。
A: プライバシーに関しては、性的少数者の当事者だけではなく、その背後にいて告白できない人たちも含めて守っていかねばならない時代であり、それを前提にして放送基準を理解しないといけなく、その解釈の中に時代は影響してくる。(升味委員長代行)
   
Q: この放送に関わってヒアリングの対象となった13人のうちで、女性は何人いたのか。
A: 2人。役職者ではない。(升味委員長代行)
   
Q: 感度の高いアンテナを張るよう期待するとあるが、その反面で気にし過ぎて萎縮して自由な表現ができなくならないか。そのバランスに関してはどう考えるか。
A: 出演者に言われてその重大性に気付いたが、出演者に言われるまで気が付かなかった、そのギャップの大きさの理由を知りたかったが、必ずしも明らかにならなかった。そこで、今後、感度の高いアンテナを張る必要性に触れたが、今回の事案や意見書の内容が今後の番組制作を萎縮させるようなものだとは考えていない。むしろ、放送に至るまでの間に、放送倫理に照らして議論をすることが必要であったと思う。(神田委員長)
  萎縮というのは、どこに触れたらいけないのかがわからない時に起こるものであり、研修などで知見を広めることによって、伸び伸びと制作することができるのだと思う。(岸本委員)
  気付いている人もいたが共有する場がなかったり、判断するのが1人の統括プロデューサーに任されていたりした点は、違和感や問題意識を丁寧に拾い上げるようなシステムではなかったということで問題である。(長嶋委員)
  自分が知るということがまずは大事だが、自分の関心事だけではなく現場の色んな人と意見交換をする場を持ち、別の見方があることを指摘され、それで知識が広がっていくと思う。(升味委員長代行)
   
Q: 意見書を読むと違和感を持った人もいたようだが、声を上げられなかったのは、仕事に追われていたとか放送時間が迫っていたとか、気持ちの面での弱さのようなものがあったのかどうか、ヒアリングで聞く機会はあったのか。
A: 元々ダブルチェック体制だったが1人の統括プロデューサーに任され、彼がコンプライアンス意識も高く上司や部下からの信頼も厚くて、何となくスルーしてしまった感じである。(長嶋委員)
  時間に追われているというようなことはなかった。前提として2部は問題が起こるようなことはないという油断があった。そして制作の過程で違和感を感じたスタッフもそれを共有し反映する場がなかったことがあげられる。(升味委員長代行)
   
Q: チーフプロデューサー(CP)と統括プロデューサー(統括P)について、CPは役職名で何人かいるプロデューサーの中から任命されていると思うが、統括Pもそのような認識でいいのか、それとも何人かを束ねる立場なのか。また、生放送時に対応すべきは統括Pであると定められているのか。
A: 番組には統括Pが2人いて、1部と2部それぞれを統括している。放送中に対応するのは統括Pである。(升味委員長代行)
   
Q: 放送を見ていないので教えてもらいたい。性別を表明していない客にどう接したらいいか悩むご主人というテーマで、興味本位だけの企画ではないと思っていたのだが、現実的にはどんな内容・コンセプトだったのか。
A: お好み焼き屋の店前をよく通る犬を連れた人が、男か女かわからないというお店の女性の悩みに対してお笑い芸人が応えるという内容。(長嶋委員)
(*回答を聞いて、質問者が勘違いしていたとの返事あり)
   
Q: もし同じ内容の企画がバラエティ番組で深夜の放送だとして審議されたら、同じ見解になるのか。
A: 私たちが解答を述べることは控えるべきであり、まさに放送局がその番組がどのような内容であるかを踏まえて自主的・自律的に判断してほしい。(神田委員長)

以上

2019年12月に視聴者から寄せられた意見

2019年12月に視聴者から寄せられた意見

夜のニュース番組で、議員の会見について不適切な編集が行われたことへの批判や、長時間のバラエティー番組への意見など。

2019年12月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,269件で、先月と比較して675件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール76%、電話22%、FAX 1%、郵便 1%。
男女別は男性59%、女性40%、不明1%で、世代別では40歳代28%、50歳代23%、30歳代22%、20歳代14%、60歳以上11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は延べ682件【58局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、23件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

夜のニュース番組で、議員の会見について不適切な編集が行われたことへの批判が多く寄せられた。また、長時間のバラエティー番組への意見も多く寄せられた。
ラジオに関する意見は52件、CMについては18件あった。

青少年に関する意見

12月中に青少年委員会に寄せられた意見は88件で、前月から62件減少した。
今月は「表現・演出」が31件、「危険行為」が9件、「その他」が7件、「報道・情報」と「編成」がそれぞれ5件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 議員の定例記者会見のニュースにおける悪意あるVTR編集について。当該場面を見て、なんと無責任な議員なのかと思ったが、後から議員本人のツイッターを通じ、実際の流れや、どの場面が切り取られているのかを説明している情報を知り、本当に起きたこととの隔たりに驚いた。また、翌日の放送で、この件について謝罪があったが、数十秒のアナウンスに留まり、どうして視聴者を騙すような内容を放送したのか?わざわざ会見終了後の発言を組み込んだ意図は何なのか?編集が恣意的でなかったとしたら、なぜこのようなことになったのか?などの説明が不十分で、到底納得できるものではない。正確性、公平性を欠き、誤解を与える放送は視聴者にとって不利益でしかない。早急な改善を求める。

  • 夜のニュースで、スウェーデンの16歳の環境活動家を批判する日本のサラリーマンを取材していたが、なぜ、"新橋でちょっと一杯引っかけたサラリーマン"の談話を、日本を代表する意見のように扱うのか。偏った意見を、多くの人の考えのように報道するのは問題だと思う。

【番組全般・その他】

  • 女性芸人のナンバー1を決める番組を見た。優勝者として、翌日の朝の情報番組と、飲み歩き企画の深夜ロケへ出演する権利を得た。優勝してすぐ徹夜で飲みに行き、そのまま朝の情報番組へ出るスケジュールを組んでいる。あらかじめ決められた飲酒と長時間労働が突然訪れる、テレビ業界のやり方はおかしい。しかも、あまりテレビ慣れしていない芸人たちに、気を抜く隙も与えないという過酷さもある。

  • 漫才の特番を見た。出演した芸人のネタは漫才ではなく、政治的プロパガンダだった。特定の思想を持った人が、芸術やエンターテインメントを隠れみのに、自身の主義主張を展開している。ネタの最後に「これでもうけているのは自分…」と言った、一見、オチに見える発言でカモフラージュしていたが、彼の日頃の言動からすれば、主義主張を展開する場として番組を利用していたのではないだろうか。生放送でない以上、番組制作者の政治的公平性への配慮が十分であったとは思えない。

  • 大食いや激辛料理を食べる企画は、今の時代にそぐわない。たくさん食べる人や辛いものを好きな人を番組で取り上げるだけならいいが、食品ロスを少しでも減らそうとしている流れの中で、チャレンジと称し、出演者が無理やり食べさせられているのを見るのは、気分のいいものではない。

  • 女性ジャーナリストが、元民放局記者から性暴力を受けたと訴えた裁判について、朝の番組のコメンテイターは、「元記者は安倍首相に非常に近い人物で…」「僕は彼女を信じる」と、一方的な理論を展開していた。彼が信じようが信じまいが、それ自体は自由だ。しかしそこに"反安倍政権"の思想を加える必要があったのか。以前より、彼の発言には反政権の強い主張が垣間見られる。放送という公共の場での発言であることを自覚した方がいい。彼を番組に出すのであれば、違う主張の人も出演させるべきだと思う。

  • 朝の番組を見た。「地震からの避難の常識」について、今と昔で比較していてためになった。一方で、専門家による避難対策が、都会の比較的新しいマンションを前提としたもので、一軒家や古いアパートなどに住む人たちにとっては、あまり意味のあるものではないのではと感じた。命にかかわることなので、住居状況をパターン分けするなど、工夫してほしかった。

【ラジオ】

  • 昼の生放送を聞いていたところ、比較的強い地震があった。トークが盛り上がっていて、ゲストが「地震速報入れるのかな?」という話しのテンポになったのに、パーソナリティーはそのまま続行した感じに受けとれた。その後、5分以上遅れて速報が入ったが、地震速報は素早く伝えるものだと思う。放送局の地震に対する基準がよく分からない。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 各局でドッキリ番組が放送されているが、人をだます行為で笑いを取ろうとすることに違和感を覚える。子どもたちの見る時間に放送されると、子どもは純粋な分だけ大人が思う以上にテレビの影響を受けやすいからだ。

  • 深夜0時を過ぎた生放送のバラエティー番組に、小中学生の子どもが電話で出演していた。出演させる親も親だが、テレビ局側には18歳未満は不可とする年齢制限を設けるなどの対応を望む。

【「危険行為」に関する意見】

  • 高校生二人が用水路に転落した人を救助したニュースの再現映像で、実際の高校生を用水路に飛び込ませていた。未成年にこのような行為をさせることは危険だ。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 防犯カメラ映像を流しすぎではないか。暴力事件も虐待映像も偶然見てしまった子どもたちが夜、眠れなくなるのではないかと心配だ。被害者の姿が安易に放送される現状はいかがなものか。ましてや映っているのが未成年であるならばなおさらだ。

【「編成」に関する意見】

  • 深夜番組を日曜の昼間に再放送するのはやめてもらいたい。深夜だから許される内容であって昼間に放送していい内容ではない。子どもも見る時間帯にふさわしくない。

【「言葉」に関する意見】

  • ニュースなどで出来事をアナウンサーなどが語るとき"発覚しました"とあたかもその出来事を故意に隠していたことが放送局の努力により明るみに出たかのごとき表現を行っている。放送局は、日本語をもっと大切に使ってほしい。"わかりました""明らかになりました"など状況により使い分ける日本語の素晴らしさを明日に伝えるために。