第240回放送と人権等権利に関する委員会

第240回 – 2016年10月

STAP細胞報道事案の審理、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の審理、都知事関連報道事案の審理…など

STAP細胞報道事案の「委員会決定」案を検討、また事件報道に対する地方公務員からの申立て事案、都知事関連報道事案を審理した。

議事の詳細

日時
2016年10月18日(火)午後4時~9時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では、前回に引き続き「委員会決定」案について審理した。各委員から出された意見を踏まえ、次回委員会までに第3回起草委員会を開き、次回委員会に修正案を提出してさらに検討を続ける。

2.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の審理

3.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案の審理

対象となったのはテレビ熊本と熊本県民テレビが2015年11月19日にそれぞれニュースで扱った地方公務員による準強制わいせつ容疑での逮捕に関する放送。申立人は、放送は事実と異なる内容であり、初期報道における「極悪人のような報道内容」などにより深刻な人権侵害を受けたとして、謝罪文の提出など放送局の対応を求めた。
前回委員会で、申立人と被申立人であるテレビ熊本と熊本県民テレビの出席を求め、それぞれ個別にヒアリングを行った。
今回の委員会では、起草委員がヒアリング内容を基にまとめた論点整理メモに沿って審理が行われた。審理では、警察の広報連絡文と放送局による警察取材内容の扱い等について議論が交わされたほか、フェイスブック写真の使用について、当事者以外に波及するプライバシー問題への配慮の必要性を委員会として指摘するべきではないかといった意見が出された。そのうえで、次回委員会までに第1回起草委員会を開くことを決めた。

4.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
前回の委員会後、申立人から反論書が、フジテレビからこれに対する再答弁書が提出された。今月の委員会では事務局が双方の主張をまとめた資料を説明し、それを基に意見を交わした。

5.その他

  • 委員会が今年度中に開催予定の地区別意見交換会について、事務局から中国・四国地区の加盟社を対象に2017年1月31日に広島で開催することを報告、了承された。
  • 次回委員会は11月15日に開かれる。

以上

第108回 放送倫理検証委員会

第108回–2016年10月

参議院議員選挙と東京都知事選挙の選挙報道について審議入り

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』を審議。意見書原案を意見交換など

第108回放送倫理検証委員会は、10月14日に開催された。
出演者の姿を本人の了解を得ずに映像処理で消したのは問題で、制作体制などについて検証の必要があるとして審議入りしたTBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』について、意見書原案が担当委員から提出され、意見交換を行った。その結果、担当委員が修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。
参議院議員選挙について放送局から事案の報告がいくつかあり、また東京都知事選挙で不公平な放送がされたという視聴者意見が数多く寄せられたことなどから、選挙報道のありかたについて討議が行われ、参院選と都知事選の選挙報道全般を対象として審議入りし、意見をまとめることになった。
委員会の10周年にちなんだ記念のシンポジウムについて、パネリストの人選やテーマについて検討を行った。

議事の詳細

日時
2016年10月14日(金)午後5時20分~7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 出演者の映像を本人の了解なしに消去したTBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』を審議

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』(6月19日放送)の珍種目のひとつ「双子見極めダービー」で、実際は最後まで解答した出演者を、映像を加工して途中でレースから脱落したことにして放送した事案について、担当委員から前回までの議論を踏まえた意見書の原案が提出された。
原案では、問題となった放送にいたる経緯や原因を検証するとともに、その背景となっている問題点なども指摘された。委員会では、このような放送がなされた原因や背景について、制作体制やスタッフの意識の問題など、さまざまな観点から意見交換が行われた。
その結果、これらの議論をもとに、担当委員が修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。

2. 参議院議員選挙と東京都知事選挙の選挙報道について討議(審議入り)

7月に行われた参議院議員選挙と東京都知事選挙について放送局から何件かの事案の報告が寄せられたことや、都知事選で特定の3候補に報道が集中したのは不公平ではないか、との視聴者意見が数多く寄せられたことなどから、二つの選挙の具体的な事例を踏まえながら、選挙報道のありかた全般について委員会で議論を重ねてきた。「選挙報道が萎縮しているのではないか」といった指摘がなされている現状も考慮すると、具体的な事例を参照しつつ選挙報道の公平・公正についての委員会の考え方を示すのは意味があることなので、個別の番組についてではなく、参院選と都知事選に見られた選挙報道全般の問題点を対象として審議入りすることを決めた。
委員会では「候補者を紹介する時間を機械的に同じにするのではなく、幅広い観点からのバランスが大事では」といった意見や、「選挙報道が萎縮しているとの指摘もあるが、多様な選挙報道こそが放送の使命といえるのではないか」といった意見などが出され、幅広い議論が交わされた。
委員会は、今後、二つの選挙で見られた事例を踏まえつつ、テレビの選挙報道のあり方全般について審議し、選挙の公平・公正な実施に実質的な貢献をするとともに、視聴者の投票行動の選択に役立つ豊富で多様な情報を伝えられる放送とするために放送局に考えてほしいことを、「意見」としてまとめるとしている。

3. 委員会発足10周年記念シンポジウムについて

10周年記念のシンポジウムについて、新たに確定したパネリストの報告やテーマの詰めが行われた。

以上

2016年10月25日

TBSテレビ『オール芸人お笑い謝肉祭‛16秋』を審議対象に

青少年委員会は10月25日開催の第185回委員会で、上記番組を審議対象とすることを決定した。対象となったのはTBSテレビが2016年10月9日(日)18時30分から21時54分まで放送した『オール芸人お笑い謝肉祭‛16秋』内のコーナー「大声厳禁 サイレント風呂」と「心臓破りのぬるぬる坂クイズ」。視聴者から「男性が男性の股間を無理やり触る行為などがあった。内容が下品だ。子どもに説明できないような番組はやめてほしい」「浜辺で芸人がローション階段を全裸や下半身露出で滑り落ちるシーンが放送された。"裸になれば笑いがとれる"という低俗な発想が許しがたい」などの意見が寄せられ、委員会では番組を視聴した上で討論した。その結果、「委員会としてこれまで何回も指摘していることが理解されていない。どのような経緯で放送に至ったのかなど確認したい」などの意見が出され審議入りを決めた。
委員会では、近く質問状を当該放送局に送って回答を求め、次回委員会から実質審議に入ることにしている。

2016年10月14日

参院選・都知事選の選挙報道のあり方全般について審議入り

放送倫理検証委員会は10月14日の第108回委員会で、2016年7月10日に行われた参議院議員選挙と同7月31日に行われた東京都知事選挙の二つの選挙報道について討議し、個別の番組を審議の対象とするのではなく、選挙報道のあり方全般について審議入りすることを決めた。

参院選と都知事選について放送局から何件かの事案の報告が寄せられたことや、都知事選で特定の3候補に報道が集中したのは不公平ではないか、との視聴者意見が数多く寄せられたことなどから、選挙報道全般のあり方について議論。「選挙報道が萎縮しているのではないか」といった指摘がなされている現状をふまえ、委員会として選挙報道における公平・公正の意味について考え方を示すべきではないか、などとの意見も出され、委員会で議論を重ねてきた。

審議入りの理由について、川端和治委員長は「選挙報道のあり方についていろいろな議論があり、視聴者からもいろいろな意見が寄せられている状況で、委員会の考え方を示すのは意味があるだろう」と述べた。

委員会は今後、テレビの選挙報道のあり方全般について審議し、二つの選挙で見られた例をふまえつつ、選挙報道が実質的な公平・公正に資するような、あるいは視聴者の投票行動の選択に役立つものになるように放送局に考えてほしいことを「意見」としてまとめることにしている。

2016年9月12日

意見交換会(広島)

◆概要◆

青少年委員会は、言論と表現の自由を確保しつつ視聴者の基本的人権を擁護し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与するというBPOの目的の為、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての機能」を果たすという役割を担っています。今回その活動の一環として、広島県の放送局の皆様との相互理解を深め、番組向上に役立てることを目的に、9月12日の14時から17時まで、RCC文化センター会議室にて「意見交換会」を開催しました。
BPOからは、汐見稔幸・青少年委員会委員長、最相葉月・同副委員長、稲増龍夫・同委員、大平健・同委員、菅原ますみ・同委員、中橋雄・同委員、緑川由香・同委員の全委員と濱田純一・理事長、三好晴海・専務理事が参加しました。放送局の参加者は、NHK、中国放送、広島テレビ、広島ホームテレビ、テレビ新広島、広島エフエムの各連絡責任者、制作・報道・情報番組関係者など24人です。
会合ではまず、委員から、事前に視聴・聴取した地元制作番組についての感想が述べられ、続いて、濱田理事長から、表現の自由と放送法の解釈について解説がありました。また、汐見委員長からは、青少年委員会が8月に公表した文書についての説明がありました。
その後、(1)子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮について、(2)原爆の歴史の伝え方について、(3)地域におけるラジオの重要性、などについて、活発な意見交換がなされました。

【地元制作番組を視聴・聴取した委員の感想】

  • 『フェイス もう一度勉強してみんか?~地域の学習支援は子どもを救うか~』(NHK広島)非常に丹念な取材が重ねられていた。扱うテーマも良いのでローカルにとどまらず全国のネットワークを活用していただければよいと思う。
  • 『ひろしま8・6ドラマ ふろたき大将 故郷に帰る』(NHK広島)貧困問題や若者の自分探しなども取り込み、被ばくだけにとどまらない盛りだくさんなドラマ。内容もキャスティングも意欲的でとても見ごたえがあった。
  • 『ニュース6スペシャル ヒロシマとアメリカ』(中国放送)アメリカの核開発の歴史やアメリカの若者の被ばく観の変化の分析、また広島の被ばく者についても多方面にわたり取材するなど、多様な視点に基づき構成された見ごたえある番組だった。
  • 『ひろしまフラワーフェスティバル 花と笑顔の40年史』(中国放送)40年続く地元のイベントの初回開催までの苦労や、これまでの歴史の中でのエピソードなどを紹介する地元制作ならではの佳作。「広島はいい街だなぁ」と思わせてくれる番組だった。
  • 『学校青春バラエティー ぐるぐるスクール』(広島テレビ)中高生のリアルなはじけた姿に感動し涙した。出演する中高生のナチュラルな姿、進行役のタレントのアニキ感、見守る大人たちの視線、すべてが心地よかった。このような素敵な番組が全国で、特に大阪や東京のような大都市で作られるにはどのような工夫が必要なのだろう、と考えた。
  • 『"あの日"は何を変えたのか?~被ばく71年 アメリカの今~』(広島ホームテレビ)オバマ大統領の広島訪問でいったい何が変わったのか?に焦点があてられていたが、大統領の被ばく地訪問に対するアメリカ政府の意図など、表面には見えないところにこれほどまでに隠されたものがあったのかということを知った。
  • 『テレメンタリー2013 3500通の"グルチャ"の果てに…広島16歳少女集団暴行死事件』(広島ホームテレビ)グループチャット、"グルチャ"といわれるSNS上の文字のやりとりだけで、子どもがいかに危ない方向に変化していくかが非常によくわかり、不気味に感じた。直接知らないしゃべったこともない子どもたちが、文字だけのやりとりで、はやし立てたり制したりしながら最後は暴行死に至る。当事者以外の四十数名は共犯者なのだろうか、と考えさせられた。少女Aの自首までの経緯を第2弾として見てみたいと思った。
  • 『そ~だったのカンパニー』(テレビ新広島)69人の鋳物工場の奮闘記。コツコツ続けることの良さが分かる地元に貢献する気持ちのいい番組。
  • 『ヒロシマを遺した男~原爆資料館 誕生秘話~』(テレビ新広島)原爆資料館初代館長の話。今は忘れ去られてしまった人を、番組が丹念に掘り出していく。声高ではなく、等身大の好奇心で追いかけ、結果として真実が見えてくる品のいい番組だった。
  • 『大窪シゲキの9ジラジ』(広島エフエム)ターゲットを高校生に絞り込み、寄り添う番組。メールやファクスだけでなくLINEなど新しいメディアを活用するなど、ラジオ放送だけでない楽しみ方も工夫もされている。リスナーと出演者、作り手の信頼関係を強く感じ、長く愛されている番組なんだろうと思った。

【表現の自由と放送法の解釈】(濱田理事長)

衆議院予算委員会における総務大臣の「最悪の場合は電波停止もありうる」という発言などを中心として放送法を巡りいろいろ話題になったことは、放送の現場にとっては気になるテーマだと思う。
総務大臣発言の法的根拠である電波法76条とは、放送法に違反した場合の、無線局の運用停止や免許取り消しの可能性を規定したものである。では放送法はどのようになっているかというと、第1~3条では、放送の最大限の普及、そして放送の不偏不党や表現の自由の確保、健全な民主主義の発達に資するといったことや番組編集の自由などが掲げられている。そして第4条に政治的公平の規定がある。つまり総務省の解釈では、例えば放送法4条、政治的公平に違反すれば放送法違反ということで、電波法76条に基づく運用停止がありうるだろうとなる。
しかし放送法4条は、政府が放送内容について干渉する根拠となる法規範ではなく、自律的に番組を編集するための倫理規範であるというのが、メディア研究者や憲法研究者の間でも通説的な考えであるようだ。最高裁の判例でも『番組の編集は、表現の自由の保障を前提として、放送事業者の自律的判断にゆだねられていると国民一般は認識している』とある。仮に法規範と考える場合も、表現の自由が前提である以上は、政府の口出しは基本的に許されないことが大原則であるべきだし、倫理規範と考える場合も、放送のあり方が国民の信頼を得ていることが大枠となるので、制約がないわけではない。
この「政治的公平」という概念については、事前のアンケートでも各社の苦労がうかがえたが、ひとつ言えることは、政治的公平とはひとつの番組だけで完結すべきことではなく、その放送局全体で判断されるということ。ある番組の中で偏りが見られたとしても、それをもって議論にはならない。
実質的なことを言えば、政治的公平を考えるとき、表現の自由が大前提であることや、ジャーナリズムに権力の監視機能が求められているということを忘れてはならない。政治的公平という言葉をもって、「政府への反対意見ばかり報道するのはいかがなものか」という議論もあるが、一般に伝えられている情報というのは、現実的に公権力側からの情報が結果として多いということは往々にしてあり得るわけで、それに対しジャーナリズムのスタンスから一定の反対意見がある程度のボリュームで主張されてもバランスを欠くことにはならないとも思う。また視聴者のニーズ、国民の知る権利を見極め考えながら報道するというスタンスも、政治的公平を考える際には求められる。例えば、最近も話題になったが、選挙の候補者をすべて同時間で紹介しなければ政治的公平に反するのか、ということ。これは視聴者ニーズの観点からすれば、候補者を絞った報道も許されると考えられている。全候補者を等分に紹介することで本当に必要な情報が視聴者に伝わらなくなる可能性もある。政治的公平は、形式的に扱われるべきものではない。これからは、実質的な議論をメディアの側からも積極的に行っていくとよいのではないだろうか。

【質疑応答】
●=理事長、○=放送局出席者

  • ○ 政治的公平は放送局全体としてバランスをとればいいということだったが、これはメディア全体にまで広げて考えてもいいのだろうか。例えば、ある局が多少偏っていてもほかの放送局と比べていくつかの全体として見たときにバランスがとれていればそれでいいというようなことは考えられるか。
  • ● 今の法解釈では、ひとつの放送局においてバランスをとらねばならないとなっている。アメリカなどは全体バランスの方向に進んでいるし、今後は日本もその方向に進んでいくのではないかと思うが、現行制度ではひとつの放送局で考えることになっている。
  • ○ アメリカと日本の違いは、具体的にどのようなことがあるか。
  • ● 政治的公平という考え方は、アメリカにはない。それぞれの放送局が一種の特色を持ち、その中で放送間の競争が生まれ、視聴者の知識の幅広さ、情報量につながっていると言われている。
  • ○ 放送の多チャンネル化などメディアの変遷が著しいが、今後、放送法4条などの倫理規範が緩和される動きはあるのか。
  • ● 放送も新聞と同じでいいのではないか、という考え方は以前からある。しかし、放送というのは規制される対象として、他方、新聞は自由販売が原則という歴史的惰性がある。規制はなぜ必要なのか、という議論はこれから高まっていくだろう。

【青少年委員会が公表した文書の解説】(汐見委員長)

青少年委員会では8月に「残虐なシーンのある番組を放送する際の配慮に関する委員長コメント」を出した。当該番組は、ホラーサスペンス系のドラマ。元来、夜10時から放送される番組だったが初回のみ放送時間が拡大され夜9時のスタートとなっていた。
コメントの論点は、2つある。まずは、相当に残虐なシーンがたびたびあることへの配慮がどこまでなされ制作されたかということ。2つ目は、ゴールデンタイムの放送で番組開始まもなくタイトルもなく残虐シーンが映し出されることにより、ホラーが苦手な視聴者も期せずして目にしてしまう可能性が高かった。つまり視聴者に選択の余地がなく、放送が持つ公共性の観点から問題はないだろうか、ということ。我々は、放送基準や放送ガイドラインを判断のよりどころとしているが、例えば民放連の放送基準には「病的、残虐、悲惨、虐待などの情景を表現する時は、視聴者に嫌悪感を与えないようにする」というふうに書かれており、またNHKの放送ガイドラインでは「ドラマなどフィクションの世界であっても、過度の刺激的な描写や暗示、不適切なことばなどは避ける。」とある。さらに、民放連の放送基準審議会は2001年「番組情報の事前表示」に関する考え方について文書を出しているが、そこには「午後5時~9時に放送する番組については、とりわけ児童の視聴に十分配慮する」ということが明記されている。今は録画視聴が増えているのでこの規定をそのまま昔と同じように準用するかどうかについては大いに議論が必要だが、規定があるということは事実である。従って、今回の番組については、子どもたちも見ていることを考慮し、慎重に制作していただきたいということを要請した。

【意見交換の概要】
●=委員、○=放送局出席者

(1)子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮について

  • ○ 最近、県内で教員のわいせつ事案が多数発生しているが、県教育委員会からは、児童・生徒への配慮のためとして、学校名と教員名の匿名を要請される。しかし、インターネット上には、実名も顔写真も掲載されていることが多く、各社配慮に意味はあるのか、と考えてしまう。
  • ○ 丁寧に取材を重ねていても、途中でSNSなど思わぬところで情報が拡散してしまい取材対象者に迷惑がかかることがある。従って、その配慮に取材の過程で今まで以上に時間と労力がかかってしまう。真実をできるだけ早く伝えるのが報道の使命でもあるなかで、板挟みになり苦慮しているということは、十数年前にはなかった課題だ。
  • ○ インターネット上では、真偽不明な部分も含めてすでに出回っている情報を、放送では被害者への配慮ということで匿名にしていることが、視聴者からみれば生ぬるく映ってしまい取材が手ぬるいと批判されることがある。
  • ○ インターネットに出ているからといってメディアが実名報道していいという論理にはならない。判断は、状況を総合的に鑑みてケースバイケースで行っている。
  • ● 被害者を守るためにメディアが口をつぐんでいるようにも見えて、違和感を禁じ得ないが、報道が逆の方向に向かってはいないだろうか。
  • ○ 社会性と事件性などから考慮はするが、原則は実名報道である。「出したもの勝ち」ではなく「出さない配慮」への評価が必要なのではないだろうか。
  • ○ 2013年に「呉16歳少女暴行死事件」が起き、おそらくあの事件でSNSに様々な情報が詰まっているとメディアが気づき、インターネットから情報取り放題のような傾向が生じたと記憶している。しかし、SNS上では子どもも大人も別人格のように書き込んでいたり、本意ではない書き込みの可能性も排除できない。インターネットは情報も取りやすいが、その危うさや人権への配慮も忘れてはならない。

(2)原爆の歴史の伝え方について

  • ○ 被ばくから71年、存命被ばく者も減少するなかテーマの枯渇やマンネリ化という状況を正直感じている。また被ばく体験を話したい人もいれば、思い出したくもないという被ばく者もいる。そんななか、原爆の歴史を今後どのように伝えていくかは、在広マスコミの課題だと考える。
  • ○ 私が入社した25年前は、曜日に関係なく「8月6日8時15分」を中心に編成が組まれ、全国ネットを差し替えて放送していたが、今ではそのように手厚い編成はなされなくなった。また近年、「8月6日」に対する全国からの注目の著しい低下を感じる。キー局は、もはや「8月6日」に目を向けていないのではないか、と非常に不安に思う。
  • ○ この10年で相当な変化を実感している。全国の方と広島の方との原爆や核に対する意識のギャップはものすごく大きくなっている。東京などでは「8月6日に何が起きたのか」を知らない子が普通になってしまっている。被ばく地の放送局として、全国に伝える役割を果たしていかねばならない。
  • ○ 若い人たちのニュースへの接触度が非常に低くなっている。いい番組を各局作っていると思うが、若い人たちに全く届いていない。ストレートのボールを投げて自己満足していても若い人は見てくれない。そんな若年視聴者に向けてどう知恵を出していくか、今、現場が一番悩んでいる所ではないだろうか。
  • ● 本当にテーマは枯渇しているのか、証言者はいないのか、ということを問いかけることから始めてみるということもあるのではないだろうか。平和を世界に訴える、放射線の害を訴えるだけではない、「もうひとつの広島」、つまり「これまで報道されてこなかった広島」というものが、まだまだ隠されてはいないだろうか。
  • ● 子どもたちがテレビを見ていないという問題は、広島だけではなくテレビ全体の問題。しかし、青少年委員会の中高生モニターと接していると、作り手が真剣に向き合って作った番組は必ず子どもたちに伝わっていることを実感できる。番組と子どもたちをつなげる方法は、我々も考えなくてはならないが、番組を受け取る子どもたちの力を信じてもいいと思う。
  • ● 原爆の悲惨な映像は、何歳ぐらいから子どもたちに見せてもいいのだろうか、という悩みが事前アンケートで寄せられたが、放送現場では実際どのように対応しているのか教えてほしい。
  • ○ 悲惨な映像は必要があれば使うし、必要がなければ使わない。しかし、子どもが怖がるから見せない、などの配慮は過剰にしなくても、子どもは子どもなりに柔軟な気持ちで受けとめられると思っている。
  • ● 悲惨な映像は、意味が伴わなければ、たとえ中高生が見たとしても、ただのグロい映像でしかなく、詳細な解説が必要になる。しかし丁寧な解説が添えられメッセージが伝わるものならば、どんな映像であっても、きちんと伝わる。

(3)地域におけるラジオの重要性

  • ○ 今、放送開始から17年目になる番組に携わっているが、子どもたちの居場所づくりを番組でやっている。共感を生むメディアでありたい、と思っている。
  • ○ 番組を通じて子どもたちに「相談する力」「吐き出す力」を育みたい。学校にも家庭にも居場所がないというリスナーの子どもたちが、なんとか明日を迎えられるように、メッセージを届けたいと、音楽の力を信じ番組を作っている。
  • ○ 10代でラジオを聞いていた子どもは、大人になってからも戻ってきてくれる。その時に「最近つらかったから久しぶりにラジオをつけた」と教えてくれたりすると、居場所づくりの重要性を再認識する。
  • ○ ラジオは情報の最終ラインだと肝に銘じている。テレビが扱わないような小さなネタ、ラジオが見逃すと消えてしまう情報があるので、緊張感を持って情報を扱うようにしている。一方、テレビでは言いにくいようなことも意識して言う。ラジオだからこそ言える表現や大きなメディアとは少し違う一言など、常に意識している。
  • ● 映像がないからこそ伝わる、想像できる、というラジオならではの特性がある。新たな特性や意味を持つメディアとしての価値も大きいと思うので、大切にしてほしい。

【委員長まとめ】

各地で意見交換会を行うが、毎回きれいな結論が導かれるわけではなく、様々な課題を改めて確認しあいながら、わずかな光でも見つけられればと思い続けている。今、メディアの多様化が一気に進む時代にあって、テレビやインターネットなどが互いに、どのようにすみ分けるかが、模索されるのだろうと思う。例えば、テレビとインターネットの比較についてだが、間もなく公表される我々が行った調査(「高校生のメディア・リテラシーに関する探索的研究-バラエティー番組に対する感想をめぐって-」)によれば、彼らが信頼するメディアは新聞に次いでテレビであり、最も信頼性が低いものはインターネットだという答えが出ている。テレビはとても丁寧に配慮もされて作られていることを、高校生は分かっている。インターネットは手っ取り早いから利用されているのであって、そことテレビが競争しても意味がないとも思う。しかし、放送現場にはインターネットに対していろいろな葛藤があることを、改めて感じさせられた。
また今回、広島の放送局のみなさんの原爆や平和へのこだわりに非常に感銘を受けた。原爆が投下されたこの地のメディアのみなさんには、200年経っても300年経っても、時代がどのように変わっていっても、人類の絶対的な平和の願いを伝え続けていくというマスコミの使命を担っていていただきたいと思った。

以上

第184回 放送と青少年に関する委員会

第184回–2016年9月27日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年9月27日に第184回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、8月の委員会が休会だったため、7月16日から9月15日までの2ヶ月間に寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。そのあと、8月と9月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は10月25日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年9月27日(火)午後4時30分~午後7時30分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 視聴者からの意見が多かったバラエティー番組や、クイズ番組については、特に議論を深める必要はないとなりました。

  • 埼玉県河川敷少年殺害事件における被害少年のプライバシーについて、なぜ保護されないのかという視聴者意見がありました。加害少年には法的制限があるが被害者には無い。事件報道で情報の開示はある程度必要であると思うが難しい問題だ、などの議論があり、今後も必要に応じて検討していくことになりました。

  • 「子どもに悪影響だから放送しないでほしい」という保護者からの視聴者意見がよく来る。問題が無いような番組を放送することが大前提であり、放送時間帯にも関わってくるが、保護者も一定の責任を担うことを考えていただきたい。
    1999年6月17日に日本民間放送連盟・放送基準審議会が公表した『「青少年と放送」問題への対応について』には、「17時~21時に放送する番組については、児童および青少年、とりわけ児童の視聴に十分、配慮する。(中略)なお、21時以降および休日の児童および青少年の視聴については、その保護者の方々にも一定の責任を担うことをお願いしたい」とある。また、2001年7月19日に同じく放送基準審議会が公表した『「番組情報の事前表示」に関する考え方について』には、「4.午後11時以降の番組については、主として保護者が児童・青少年の視聴について責任を負う時間帯と考え、原則として事前表示は行わないこととする」とある。放送局のいっそうの配慮と、保護者に理解を深めてもらうための努力が必要だとなりました。

中高生モニター報告について

【8月の報告】

32人の中高生モニターにお願いした8月のテーマは、「テレビまたはラジオ番組の企画を考えよう」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で23人から報告がありました。
「テレビまたはラジオ番組の企画を考えよう」では、テレビ番組の企画が21本、ラジオ番組は1本、ラジオ・テレビ同時放送という企画が1本寄せられました。企画内容は、バラエティー番組が11本、教養系番組が7本、クイズ番組が4本、ドラマが1本でした。またこのうち、データ放送を活用した双方向の番組など、視聴者参加型の企画が10本ありました。企画のねらいには、「大人も子どもも一緒に見られる」「だれでも楽しむことができる」と多世代で視聴し会話のきっかけにできる番組や、「翌日、学校で番組の話題で盛り上がることができる」という自分たちが見たい、若い世代をターゲットにしたものなど、コミュニケーションツールとしての番組を意識した意図が多くみられました。
「自由記述」では、オリンピック関連放送への意見が6人から寄せられました。「普段あまりスポーツは見ないが、オリンピック放送は楽しんでいる」という意見の一方、「放送局がそれぞれに、1人の選手に何度も同じ質問をするので、重複しがちで選手の負担が心配」や「オリンピック以外のニュースがいつまでたっても見られない」といった取材方法や放送枠への疑問の声もありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『熱闘甲子園』(朝日放送)に対し、「同じ高校生として共感した」や「思わず感動してしまうドキュメンタリー」など同世代ならではの意見が2件寄せられました。

◆委員の感想◆

  • 具体的に番組企画を考えることでより深いところから番組を見ることができるようになる。個性あふれる内容が多かった。ラジオとテレビの融合企画はいろいろ空想できて面白かった。
  • シンプルに書いてあるが、面白い企画が多かった。何より感想を書いてくれたテレビ局の対応に感謝したい。モニターもきっと喜ぶだろう。
  • 絵本で大人にも安らぎの時間を提供できるという若者目線の企画や、昔と今のテレビ・ラジオの番組を比較する企画、タイトルは4文字でまとめるなど、着眼点に光るものがあった。
  • 自分が見たいと思っている番組を企画したのか疑問が残るものもあったが、昭和へのタイムスリップ企画や、埼玉に特化した企画、dボタンを使った企画など、彼らの年齢だから発想できるものも多かった。
  • 寄せられた企画を専門家が洗練させていけば、今の若者が何を見たいと思っているかが分かる気がした。知識への欲求が強いことを感じた。
  • 作り手の事を考えることによって、メディアリテラシーが涵養されていく。学校の授業に番組企画を取り入れても良いのではないか。
  • いじめや犯罪の無い学園ドラマや絵本の朗読など、ほのぼのとしたものを求めているようだ。
  • 番組タイトルは4文字が良いという、実際に放送局の現場で実践していることを考え付いたのは素晴らしいと思う。YouTube に触れた企画が無かったのが残念だ。メディアとコンテンツの関係を考えてもらうと、もっと斬新な企画が生まれるかも知れない。

◆在京キー局番組制作者の感想◆

●NHK制作局青少年・教育番組部 チーフ・プロデューサー(『Rの法則』担当)

  • 「スマホ世代にテレビを見てもらうには?」10代向けの番組を制作しながら、常に考えていることです。そんな中、まさにターゲットである高校生からの企画書・・・興味深く拝見しました。データ放送やSNSを連動させた提案が多く、やはりテレビに対して"参加感"を求めているのだなと感じました。「目指せ!あなたも漢字マスター」はありそうでなかった番組。資格取得という目的に向け、出演者と視聴者が一緒に学びながら問題に取り組む・・・リアルタイムで正答率が出れば盛り上がりそうです。また、「ラジwatch」「テレ・ラジ」のように、"テレビ×ラジオ企画"が印象に残りました。ラジオの魅力をテレビで再発見するという発想が斬新でした。テレビで見てもラジオで聴いても面白く、成立する番組に仕立てるには相当力量が必要ですが、"波の垣根"を越えれば、もっと新しい番組が生まれるかもしれない・・・そんな可能性を感じることができました。

●日本テレビ チーフプロデューサー(『踊るさんま御殿』『笑ってコラえて』担当)

  • とても、テレビの力を信じてくれている企画が多く、テレビ制作に携わる者として単純に嬉しく思います。具体的なキャスティングもイメージした企画も多くあり、すぐにでも試せる企画も幾つか見受けられました。"双方向"や、"一般視聴者の出演"といった、視聴者参加型番組の提案も多かった印象があります。デバイスの進化に伴い、テレビの企画も進化しなければなりませんが、そういった時代の変化に敏感な企画が多く、大変楽しみです。

●TBSテレビ 制作局 制作一部 プロデューサー(『水曜日のダウンタウン』『クレイジージャーニー』担当)

  • 今回皆さんの企画書を読ませていただいて、感じた事が2点あります…それは…
    (1) 【dボタン】や【視聴者参加企画】など、テレビ番組への参加意識の高さ
    ただ面白い番組・興味ある番組を見るだけでなく、視聴者自らが動いてる感…テレビ放送の相互性などの重要性…などが感じられました。
    (2) 【家族みんなで見られる番組】への期待
    現在家族の団らん時間の減少がよく聞かれますが、実は中高生の皆さんの家族への意識は高く、
    これは、昭和も平成も、根っこは変わっていない感じがしました。
    上記2点は、実は番組制作を仕事としている僕らも意識しなくてはならない事で、中高生の皆さんの着眼点の鋭さを感じるとともに、番組作りの基本とは何か、を改めて考えさせられました。

●テレビ東京 制作局 ディレクター(『ありえへん∞世界』『やりすぎ都市伝説』『じわじわチャップリン』担当)

  • 全体を通し、今放送されている番組と似通っているものが、あまりなくてビックリしました。普通なら「あの番組を少しパクってやろうかなぁ…」など、考えがちですが、どれも王道の企画を少しずらして、皆さん考えていたので、どれも読みごたえがありました。
    個別の企画ですが…「1泊2日昭和へタイムスリップ」。こちらはすぐやってもいいんじゃないかぐらい、いい企画だと思います。若い層も、年配の層にも、どちらにも刺さる、間口の広い企画でありながら、独自のメッセージ性もある、素晴らしい企画だと思います。
    「その先の物語」は、夢のある企画でいいなぁと思いました。業界にすっかり染まってしまった僕は、「魔女の宅急便」「花より男子」の先なんて、大先生方が書いてくれるかなぁ…と疑心暗鬼になってしまうのですが、そんな下らない常識を捨てて、こんな夢のある企画を実現できたら最高だと思います!
    「目指せ!あなた漢字マイスター」は、dボタンを使った企画というところが素晴らしいです。今、各局がdボタンの扱いに悩んでいる所だと思うので…。漢字に限定し、漢字検定を最終的に取ろう!というゴールもちゃんと設定していて、とても素晴らしいなぁと思いました。

●フジテレビ 制作局第二制作センター プロデューサー(『バイキング』担当)

  • 【総評】
    今回、皆さんの企画を拝見し、まず率直に感じたのは「知識」「課題」「学ぶ」「授業」というワードがたくさんあり、「テレビから知識を得たい」という期待があるのだと実感しました。テレビではなく、インターネットでいつでも知識が得られる時代になっても、テレビから発信される"映像を伴った情報"に、多くの期待が寄せられているのだと改めて感じました。
    また「大人も子どもも」「友達との話題になるような」といった世代間、家族、友人同士のコミュニケーションの手段としてもテレビの価値を見出している方が多く、SNSなどとは違った対・人間同士の会話を生むためのツールとしてテレビの役割を担っていることも再認識しました。
  • 【特に印象に残った企画】
    「先生たちのワイドショー」
    自分が担当している『バイキング』や『ワイドナショー』のように、ニュースを取り上げる番組が多いなか、この企画は"先生"という立場に目をつけ、教育者だからこその目線で取り上げるニュースってどんなものだろう?と興味をそそります。事件やニュース、社会問題の裏には必ず「教育論」が存在するので、尾木ママだけではなく様々な先生が独自の理論でディベートすると熱い番組になるかと思います。
    敬老の日スペシャル「1泊2日昭和へタイムスリップ」
    若者ならではの視点で企画が考えられています。敢えて不便な生活を強いられたらどうなるのか?ちゃんと昭和40年代の家具や家電をそろえることで世界観を作ろうと練られています。ノスタルジーな感覚を生むことで、若者だけでなく大人も懐かしく見ることができる番組になるだろうと期待が持てます。

◆モニターの番組企画◆

  • ●東京・中学1年・女子
    タイトル:「そういえばあの人何した人だっけ!?~日本に名を刻んだ偉人たち~」
    出演者:高橋英樹 黒柳徹子 トレンディエンジェル 林修 桐山照史(ジャニーズwest) 鈴木福
    番組のねらい:今の小中高生に名前は知っているけど何をしたかは分からない日本の偉人たちの偉業を知ってもらう
    番組の内容:番組では中高生から質問が出た偉人についてゲストが一人ずつ考えた答えを出し2分という制限時間で話し合って1つの答えにします。最後に司会の鈴木福君と質問をした中高生に納得のいく説明ができたらミッションクリアとします。ミッションがクリアしなかった場合は皆でセンブリ茶100mlをいっき飲みするというちょっとした罰ゲームをします。歴史という事に興味を持ってくれる事が目的なので誰でも楽しめるような番組を作りました。

    日本テレビ チーフプロデューサー(担当番組『踊るさんま御殿』『笑ってコラえて』): 難解で狭いターゲットになりがちな「歴史」を工夫してバラエティー化しようという心意気が伝わってきます。キャスティングも具体的にイメージ出来ていて素晴らしいです。歴史的な事象には様々な見方があり、それが歴史の面白い点でもあります。どうやって、意見に集約するのか気になります。
    テレビ朝日 Aプロデューサー: 楽しく歴史を知ろうというのは大変意義のある番組だと思います。ただ「知りたい」という小中高生の前向きな姿勢に、「是非知ってもらおう」と出演者が一所懸命答えることを考えると、「上手に説明できなかったら罰ゲーム」なのではなく「上手に説明できたら報奨」といったポジティブな形がいいのではないかと思います。

  • ●長崎・中学1年・女子
    タイトル:「その先の物語」
    出演者:青島広志さんの講演を見に行った時に面白かったのでゲストにしてほしい。小さいときの夢が女の子になることとおっしゃっていました。漫画も上手でした。他に、スポーツ選手や俳優、歌手、作家、ジャンルを問わず見てみたい
    番組のねらい:物語や歴史のその後の物語を想像して作る、大人も子どもも楽しめる
    番組の内容:例えば、魔女の宅急便のキキのその後。キキがお母さんになって、その子どもが魔女だったり、13歳の修行に出たり、学校生活を送っていたりなど。その後の物語を新しく作る。その都度ゲストがいて、そのゲストが、思い出に残っている物語や歴史などのその後を自由に考えて、アニメや、ドラマにする。そのゲストが、演じたり、声優になったりしても面白そうです。

    日本テレビ チーフプロデューサー: 今流行の、2次創作的なニュアンスもあり、面白そうな企画です。著作権者と、上手くコミュニケーションが取れる作品ならば、可能性もありそうです。
    テレビ朝日 Aプロデューサー: 想像力が広がる良い企画だと思います。ただし、視聴者が前提となる物語や歴史を知っている必要があると思うので、まずは誰もが知っている童話や史実を題材にしたらいいのではないでしょうか?また、先の物語を発表した後に、面白いと思った観客にボタンを押してもらって得点制にするなど、どう終わらせるのかを考えた方がよいと思います。

  • ●宮城・中学1年・男子
    タイトル:「めざせ!あなたも漢字マスター」
    出演者:宮崎美子 やくみつる 加藤シゲアキ 桐谷美玲 橋本環奈 城島茂 バカリズム
    番組のねらい:dボタンを使って番組参加型形式で漢検取得を目指す番組
    番組の内容:毎回テーマを決めて問題に取り組んだり、豆知識などを紹介して漢字に対する知識と理解を深め、将来役に立つ資格取得に向けてエールを送る。dボタンを使って一緒に問題を解きながらポイントも学べる形式で送る番組。視聴者も含めて出演者も資格取得を目指しお互いに励ましながらゴールを目指す。

    日本テレビ チーフプロデューサー: 今後のメディアの課題ともいえる、「双方向」を意識した、アカデミックな企画コンセプトだと思います。実際、漢字クイズは、クイズ番組の中でも定番で、それを漢字検定に絞ったのは、新しい要素だと思います。
    テレビ朝日 Aプロデューサー: 漢字検定合格を目指している人にだけ向けた番組ではなく、漢字検定を目指していない人たちにも、どうしたら番組を楽しんでもらえるかをもっと工夫すれば、より多くの人が見てくれる番組になると思います。dボタンを使っての演出は可能性が広がりますのでぜひ研究を続けてほしいと思います。

  • ●石川・中学2年・女子
    番組名:「ゲーム頂上作戦」
    出演者:ゲームが得意な人(予選をする)
    番組のねらい:ゲームが好きな人が楽しむ
    番組の内容:マリオカートやドンキーコング、バイオハザードなどの有名ゲームを、同じ条件で何人かの人にトーナメント形式で戦わせる。出演者は、一般人でも芸能人でもOKです。

    日本テレビ チーフプロデューサー: 今、You Tubeなどでは、ゲームをする、PLAY動画が人気ですね。ゲームごとにユーザーが限られているため、幅広い人達が、興味を持てるように工夫することが重要だと思います。
    テレビ朝日 Aプロデューサー: すでに世界では、eスポーツと呼ばれる高額賞金を獲得できるゲーム大会が存在しています。ゲーム頂上決戦を見せるのであれば、その大会を中継すればいいことになってしまうので、例えば、海外の大会での優勝者を実際に紹介したり、海外の大会への挑戦権をかけて番組内で競い合うなど、テレビ番組ならではの見せ方を工夫したらいかがでしょうか。

  • ●岡山・中学2年・女子
    番組名:「俺らの青春」
    出演者:中高生5人~10人のグループ
    番組のねらい:出ている人、見ている人に新しいいろいろなことを知ってもらう
    番組の内容:中高生5~10人のグループが共同生活をしながら、出された課題をクリアしていくサバイバル番組

    テレビ朝日 Aプロデューサー: サバイバルということは、課題をクリアできなかったら脱落していくということでしょうか?となると、出演者はなぜ生き残りをかけて課題をクリアしていくのでしょうか?最後まで残ったらどうなるのか?それよりも、番組タイトル「俺等の青春」からは、若者たちが協力し合って課題をクリアしていくことで生まれる友情や絆を描くという方が番組として見えるかと思います。

  • ●北海道・中学2年・男子
    番組名:一般人が挑戦!~番組チャレンジャー~
    出演者:オーディションで受かった一般人 それぞれの番組に合わせた芸能人
    番組のねらい:テレビを見る側の人には芸能人ではないときの面白さを伝え、一般人の出演者にはテレビの身近さを体感してもらう
    番組の内容:日本テレビのレギュラー番組や特番のバラエティーを最初に芸能人がやってみて、その次に同じ内容の同じ番組を一般人にやらせてみるとどうなるのかを検証する。それを2番組くらいやり、最後にd投票でどちらが良かったかを決める

    日本テレビ チーフプロデューサー: 一般の皆さんが参加する際に、単純にタレントと比較にされるのはハードルが上がった状態になってしまうかもしれません。(面白く見えない可能性が高い)。一般参加の持つ意味を、別に見つける必要があります。
    テレビ朝日 Aプロデューサー: 1番組を丸々、芸能人版と一般人版で放送するという形だと、途中から見た人(特に後半の一般人の番組から)はついて行けず最初から見ていないといけない番組になってしまいます。コーナー企画規模のものを比較するのであればまだ現実味があると思いますが、その場合は「○本勝負」など、見せ方に工夫が必要かと思います。

  • ●東京・中学2年・男子
    番組名:「クイズ しりとりでHow much?」
    出演者:トレンディエンジェル・アンガールズ・椿鬼奴、毎回ゲスト
    番組のねらい:出演者達がクイズ形式でしりとりをするので、視聴者には、楽しく視聴しながら色々なものの値段を知ってもらう
    番組の内容:出演者達が毎回出されるお題・テーマに合った物をしりとりで答えていく。さらに言った物を売っているお店に行って値段を当てていき、しりとりで「ン」を付けてしまったり値段が一番離れていた人が罰ゲームを受ける。しりとりのテーマは例えば「流行りの食べ物」だったら、パンケーキ→キットカット→トマトラーメン(ンがつくので失敗)と答えて行き、罰ゲームは超激辛料理を食べるなど。値段をピタリと当てた人は、その物を食べたりもらったりできる

    日本テレビ チーフプロデューサー: 芸人などで、実際にやると楽しそうな企画です。芸人本人が楽しむ以上の面白さを、どう視聴者に伝えていくか、(タレントが楽しんでいるだけではなく)が企画のポイントとなりそうです。
    テレビ朝日 Bプロデューサー: 答えの連鎖を楽しむなら「しりとり」だけにすると、答えを狭めてしまうかもしれません。さらに「しりとり」と「値段」ふたつの、どちらかひとつに絞った方が面白そうです。たとえば「流行の食べ物」がテーマだとしたら、最初100円のものからスタートし、次の人はそれより高い食べ物を探しにいくなどのゲームにすると良いと思います。

  • ●埼玉・中学2年・男子
    番組名:「知ってる?さ・い・た・ま」
    出演者:バカボン鬼塚(MC)・星野源(ゲスト)など埼玉県ゆかりの有名人にゲストとして番組に出演してもらう
    番組のねらい:今年一年間の埼玉のニュースを楽しく学べる
    番組の内容:バカボン鬼塚さんを中心に番組を進めていく。その年一年に起こった埼玉のニュースをわかりやすくクイズ形式にしてわかりやすく・楽しく伝える番組にする。また、さまざまな年代の人に楽しんでもらうためにいろいろな世代のニュースをクイズにする

    日本テレビ チーフプロデューサー: エリア限定のニュースということで、視聴者の幅をどう広げていくか、また、ニュースを扱うということで、クイズ形式が番組としてふさわしいかどうか、ニュース内容によって(被害者加害者が存在するようなケース)、扱いが適切かどうか考えていく必要がありそうです。
    テレビ朝日 Bプロデューサー: その土地のローカルニュースは、面白いと思います。全国ではそんなにすごくないニュースが例えば埼玉ではスッゴイ重大ニュースになってるなど、その土地土地の、「年間知られざる重大ニュース」として取り上げるといいかもしれません。さらに、そのニュースの当事者を取材するなどすると、面白いと思います。

  • ●神奈川・中学3年・女子
    番組名:「みんな集まれ!」
    出演者:朗読 神谷浩史【声優】
    番組のねらい:大切な人と過ごすクリスマスを一回目とし、毎週月曜日に放送する。何かとストレスの多い時代、子どもはもちろん、毎日忙しくしている大人にこそ絵本の読み聞かせにはセラピー効果があるので、安らぎの時間を提供できると思う
    番組の内容:各界で活躍している人に思い出に残っている絵本を1冊選んでもらい、それを毎回神谷浩史さんに朗読してもらう。(10分)残りの時間は選んだ理由と、その作品にまつわるエピソードや作者の他作品の紹介・本屋さんの紹介(オリジナリティあふれる書店も多いので)するコーナー(5分)

    テレビ朝日 Bプロデューサー: 絵本に特化するなら、その人の絵本の思い入れ、人生観を熱く描いた方がいいと思います。そんなに思い入れのある一冊を、あこがれの声優が読んでくれる。そうすることで、その人は思い出があふれ出て感動するという展開にすると、一冊の絵本からその人の人生観が見える感動のストーリーが描けるかもしれません。

  • ●愛知・中学3年・男子
    番組名:「君の知らない世界の授業」
    出演者:毎回ゲストが入れ替わる(レディーガガさん、錦織圭さん、クリスチャンラッセンさんなど)
    番組のねらい:この番組は世界各国でどこの国でも見られるように放送します。自分が普通に生きていたら絶対知らないような事を授業にして楽しく知ってもらうための番組です。時間も土曜の夜8時からと家族みんなで見られる時間帯です。
    番組の内容:この番組は世界で活躍している様々な分野において素晴らしい技術を持っている方を日本に限らず世界から呼び、ゲスト先生として授業をしてもらう。世界で放送するため吹き替え機能を使います。他にもSNSで連動し視聴者参加型テレビにします。生放送ではないのですぐにコメントやお便りを読むことはできませんが次週にできるだけ多くのコメントやお便りを紹介します。コメントやお便りを読まれた方は番組特製グッズを贈ります。その中でも抽選に勝ち抜いた方の数名には放送で来てくれたゲスト先生からのプレゼントも贈ります。いつも通っている学校ではきっと学ばないような事を授業としてたくさんの人に知ってもらいたいです。

    日本テレビ チーフプロデューサー: グローバルな視点に立った、素敵な企画だと思います。キャスティング例に挙がった方々が先生になるとすれば、エキサイティングな放送になりそうです。
    テレビ朝日 Bプロデューサー: 成功を収めた人の話は聞きたい人が多いテーマです。実際著名な人の講演会は面白く盛況です。しかし、話が苦手な人もいるので、進行役を立てるとか、成功を収めた異ジャンルの二人が成功の秘訣を聞きあうなど成功者の秘訣を引き出す工夫があれば、見やすくなると思います。

  • ●神奈川・中学3年・男子
    番組名:「世界の果てまで行ってQ」
    出演者:内村さん、出川さんなど
    番組のねらい:世界で著名な科学者等の皆さんに、難しい質問をブツけて、珍解答を得ること。
    番組の内容:(1) 科学の世界では著名な科学者の方に直接会いに行き(世界の果てまで;外国)簡単な質問(日本語以外で)をして、どのくらい噛み砕いて子ども(出川さんにも判るように)でも判るように説明していただけるか、そのギャップを視聴者が楽しむ。(2) 科学者の方が、専門用語を出来るだけ使用しないことが、条件

    日本テレビ チーフプロデューサー: 世界は勿論、日本でも可能な企画だと思います。「説明の仕方の違い」をどうエンターテインメントにしていくかが、演出工夫のポイントです。
    テレビ朝日 Bプロデューサー: 科学者などその職業を生業としている専門家に協力を仰ぐのであれば敬意を払って番組作りすることが大事です。難しい事柄をいかに簡単に説明するのかという点については目の付け所が良いと思います。それを生かすために例えば、難しい事項を、日常の分かりやすい身近な現象に置き換えたり、例えたりして見せると良いと思います。

  • ●兵庫・中学3年・男子
    番組名:「せんたく」~あなたの選択がすべてを決める~
    出演者:アナウンサー1名、男性お笑いコンビ1組、女性タレント1名
    番組のねらい:一方的に見るだけではなく、番組自体を見ている視聴者自身が作っていき、映像コンテンツとしての面白さだけではなく、自分が操っているかのようなゲーム的要素をデジタル放送の長所を生かし盛り込む
    番組の内容:生放送の年末バラエティー。生放送で街をブラブラするのだが、最大の特徴はデータ放送を最大限に生かし、どう行動するか、何をするのかをリアルタイムで見ている視聴者が色ボタンで投票し、決める。例えば進む方角や飲食店でどのメニューを頼むか、電車に乗ってどの駅で降りるかなど。さらに一回で完結するわけではなく次年は前年の終了地点から再スタートし、連続性がある。番組を作るのは視聴者であるということ。今までにも色ボタンで答えるクイズなどの番組はあったが、番組の内容を決めるような番組はなく、この番組はある種のゲーム的要素を含んでいる。年末番組としてだけではなくレギュラー番組としても良いかもしれない

    日本テレビ チーフプロデューサー: テレビの"双方向"への可能性を検討した素敵なコンセプトです。出演者が実際に感じる緊張感、興奮をどう視聴者に伝えていくかが、ポイントとなりそうです。
    テレビ朝日 Cプロデューサー: 「ラスボス=最終的な目標」を何にするかで番組がガラッと変わると思います。ある種ロールプレイングゲームのような企画で面白い企画です。ただし生放送で街をブラブラ…する場面をガチで放送する場合、放送できないカットやカメラが入れないエリア、さらには映り込みの人達の許諾等々様々な問題をクリアしなくてはなりません。

  • ●高知・高校1年・女子
    番組名:「オリンピックについて考える」
    出演者:過去のオリンピック選手など
    番組のねらい:どの世代でもオリンピックについて興味を持ち、みんなが国際問題やオリンピックの必要性を考える
    番組の内容:まず、オリンピックで行われる競技やそれらのルール説明、見どころ、注目国や選手などについて放送する。また、名場面やハプニングなどを放送して若い世代でも楽しんで見ることが出来るようにする。特にオリンピックの成り立ちについて特集を組み、スポーツという文化の必要性やあり方のついて考えられる番組にする。また、参加国の情勢や国の問題などを放送し、世界全体としての問題として扱う。例えば、難民問題やドーピング問題にも触れ、スポーツ精神についてや、国と選手との関係などについても議論する。最後に、2020年に行われる東京オリンピックについて、開催までの道のりや問題点なども放送して、みんなで東京オリンピックを楽しみに出来るようにする

    テレビ朝日 Dプロデューサー: 各局で同じような企画が放送される中「ここを見てほしい!」というメインネタを中心に構成すると他企画との差別化ができると思います。まずはオリンピックについて「視聴者が何を見たいのか?知りたいのか?」リサーチから始めると、より良い企画が生まれてくるはずです。

  • ●京都・高校1年・男子
    番組名:「先生たちのワイドショー」
    出演者:学校・塾の先生方
    番組のねらい:若者のニュース離れが叫ばれて久しい。専門用語が多く使われ、専門家による解説が難解に聞こえることもあって、従来のニュース番組は若者には敬遠されがちなのだ。そこで、学校や塾などで日々教鞭をとっている先生方だけで番組を構成することで、学生にとって近づきやすく、そして分かりやすいニュース番組を目指す
    番組の内容:毎週日曜日の朝、日々学生を教えている先生たちが、一週間のニュースの中から「未来に向けて、若者たちに知ってほしい、考えてほしい」、あるいは「受験で必要になる」ニュースを取り上げ、学生にとって親しみやすい言葉で解説を行う。通常のワイドショーでは取り上げられないようなニュースにも着目する。また、学生たちから寄せられた素朴な疑問にも、先生たちが分かりやすく答える。番組は、先生たちが丸テーブルを囲み、ディベート形式で進行する。その場で出された未来志向の視点を、視聴者である学生にリアルタイムで問題提起し、意見を募って番組内で紹介する

    日本テレビ チーフプロデューサー: 学校の先生たちのワイドショーは、斬新なコンセプトです。キャラクターの際立った先生だと面白くなりますね。先生達の「ものの見方」が露わになりますので、先生方の見識もシビアに問われることとなります。
    テレビ朝日 Eプロデューサー: 着眼点は良いと思います(「分かりやすいニュース」)。ただタイトルに"ワイドショー"と付ける事で、どんなニュースを扱うのか視聴者も迷うので、タイトル名も一工夫あるとよりベターです。学校や塾の先生というのも面白い発想です。扱うネタをブラッシュアップしていけば、番組のワンコーナー的な企画として目玉になる可能性はあると思います。

  • ●福岡・高校1年・男子
    番組名:敬老の日スペシャル「1泊2日昭和へタイムスリップ」
    出演者:福岡の高校生3人組
    番組のねらい:昭和40年代の家電や家具がそろえられた部屋で、高校生3人が1泊するのをカ メラで密着する。携帯電話やパソコンは一切使用しない生活を体験する。1日の過ごし方、時間の使い方、会話やコミュニケーションの仕方が今とはどのくらい違うのか。本当に便利な生活とは何かを考える
    番組の内容:木造で築35年以上の家には、昭和40年代の家具や家電が揃えられている。そこで高校生3人が1泊2日寝泊まりする。携帯電話とパソコン、ゲームは持ち込み禁止。3人にとって一番の不便は何か。また、この経験をすることで高校生たちは日常をどのように感じるようになるのかをカメラで密着する。

    日本テレビ チーフプロデューサー: 「○○のない生活」をテーマとした、体験型ドキュメントバラエティーは、過去にもありますが、敬老の日ということで、さらに見やすくなるかもしれません。
    テレビ朝日 Cプロデューサー: 「平成生まれの高校生が昭和40年代の設定の部屋にこもる」というアイデアの入口は面白いです。ただ山奥キャンプ体験と同じで、1日で不便さを感じてもらうのは難しいかもしれません。衣食住すべて昭和40年以前の設定にこだわり、当時から続く店以外では買物禁止、部屋から出ずに自炊…など何か番組的にルール(しばり)があると良いと思います。

  • ●東京・高校2年・女子
    番組名:
    出演者:三吉彩花、小松菜奈、黒島結菜、山﨑賢人、吉沢亮、平野紫輝
    番組のねらい:次の日学校で必ず1回は話題になるような、皆が見るドラマ
    番組の内容:いじめや犯罪のない学園ドラマ。以前やっていた『ごめんね青春』のように、女子高と男子校で分けて話が進んでいくドラマ。女子高や男子校の生徒はキャラが濃い人が多いと思うので、『ごめんね青春』のように合併はせず、それぞれで話が進んでいき、塾などで交流していく姿を描いていく内容。

    テレビ朝日 Fプロデューサー: 宮藤官九郎さん脚本のドラマ『ごめんね青春』をイメージした、負の要素を排除したドラマの着眼点は良いと思います。ただそのしばりの中で「次の日学校で必ず1回は話題になる…」内容を目指すのであれば、何を話題にするのかを考えるのが必須になるでしょう。"必ずどんでん返しがある"“必ずスカッとする内容がある"とか、ブラッシュアップしてみてはいかがでしょうか。

  • ●広島・高校2年・女子
    番組名:「私が俳優です」
    出演者:進行役(2名)スタジオで見る人(4名)
    番組のねらい:俳優たちのアドリブ力を見るという番組。演目だけ提示し、後は15分間、俳優たちだけでドラマを作るというもの
    番組の内容:台本一切なしで作る即興演劇番組。ドアを開けたらカウントスタート。15分間演技をしてもらう。副音声でスタジオの声が聞ける。コントもあり、泣き笑いOKな番組です

    日本テレビ チーフプロデューサー: 『スジナシ』という有名な番組がほぼ近い形として放送されています。アドリブでのお芝居にどういった枷を作るか、視点を変えれば新しい企画として成立する可能性がありそうです。
    テレビ朝日 Gプロデューサー: 演技に興味のない視聴者にも、この即興演劇を見るモチベーションを考えないと企画としては成立するのが難しいと思います。台本一切なしの即興演劇、しかも15分というのはそうとうハードルが高い企画です。なかなか出演していただける俳優さんはいないと思いますが、発想はとても面白いです。

  • ●東京・高校2年・男子
    番組名:「映画再発見の旅」
    出演者:司会者は上田晋也さん。他は真面目な芸能人の人と面白いことを言える人が半々くらい
    番組のねらい:今まで作られた名作映画を多くの人に知ってもらいたい。その際、楽しい番組の運営を心がける
    番組の内容:日本や世界の映画にスポットを当て、毎週一つ映画を取り上げてその映画のロケ地に行き、その作品の作られた経緯や魅力などを語る

    テレビ朝日 Hプロデューサー: 映画というジャンルはマニアが多く、地上波にその深掘りを求めている方は少ないように思えます。ただし名作映画はいつになっても色褪せないものだと思います。それらの映画を今の時代に置き換えて見せていくなど映画に興味を持たない人にも引っかかる構成が必要ではないかと…。情報番組の1コーナーとしては成立していると思います。

  • ●山口・高校2年・男子
    番組名:「テレ・ラジ」
    出演者:男性アナウンサーと女性アナウンサーが司会する。ゲストは、毎週入れ替わりで、SNSやホームページで募集した視聴者。選ばれた視聴者は、年代も性別も人種も職業もばらばらになるように構成したい。
    番組のねらい:インターネットの普及によって、若者のテレビ・ラジオ離れが進んでいる。若者を中心とする視聴者に開かれた番組(視聴者参加型の番組)を通して、テレビ・ラジオの魅力を再発見してもらいたい。
    番組の内容:テレビ・ラジオの同時放送が望ましい。これによりテレビでみる楽しさとラジオで聞く楽しさが両方味わえると思う。
    ・コーナー1「TwitterVoting」:ツイッターの投票機能を使用して、今週起こったニュースについて、視聴者の意見を聞こうという企画。ハッシュタグをつけてそのニュースに対してコメントをすることも可能。投票結果とコメントを随時紹介する。経済・ITなど、どのようなニュースでもよいが、政治について取り上げると若者が政治に対して関心を持つことができ、政治参加への意欲が生まれるのではないのだろうか。
    ・コーナー2「Rediscovery テレ・ラジ」:「昔のテレビ・ラジオのほうが面白かった」と大人の人は言う。実際に昔の番組を視聴し、司会、ゲスト、視聴者が討論し、今のテレビ・ラジオと何が違うのかまた何を求めるのかを紹介する。ここで、昔の番組の良いところ悪いところを洗い出して、現代のテレビ・ラジオになにを求められるのか考えたい。
    ・コーナー3「Watch Local テレ・ラジ」:テレビやラジオでは、その地域独特のローカル番組が多くある。その中でも人気の高い番組を紹介することによって、地方の活性化にもつながると思う。
    各コーナーの合間には、ラジオのように音楽を流したら良いと思う。音楽を多く流すことは、ラジオのとても良いところだと思う。テレビで視聴する場合には、ミュージックビデオなどを楽しむことができる。ラジオで聞く場合には、純粋に音楽を楽しむことができる。
    日本テレビ チーフプロデューサー テレビとラジオの同時放送する際に、テレビ・ラジオお互いの「強み」は何か、意識すると、お互いの特性を生かした相乗効果のある番組になりそうです。若者が意見を発信する場としてのラジオテレビ同時放送番組は楽しみです。

    テレビ朝日 Fプロデューサー: 視聴者がメイン出演者でテレビとラジオ同時放送という発想は斬新です。またSNSの投票機能も駆使したり、未来のマスメディアが向かう道を探るような試験的企画だと思います。出演者の会話やBGMなど音声のみでも魅力がある構成、討論テーマ、視聴者意見を見いだせるかがカギだと思います。

  • ●大分・高校3年・女子
    番組名:「戦慄!!恐怖の夜」
    出演者:やるせなす 稲川淳二 菊池亜美 疋田紗也
    番組のねらい:まだ暑いので涼しくなるように
    番組の内容:肝試しや心霊映像の紹介 心霊写真の紹介では専門家に解説をしてもらいます。あと、今子ども達の間で流行っているコックリさんのような遊びなどの紹介をします

    テレビ朝日 Hプロデューサー: 心霊映像、心霊現象といったものは疑惑を持たれるものが多く、ネット情報社会の今では共感しづらいジャンルのような気がします。ただ紹介するのではなく「心霊映像はこうやって作られる」など科学的検証などを行い、あえて作為的に作られたという前提で真っ向否定していく方が視聴者は楽しんでくれるかも知れません。

  • ●東京・高校3年・女子
    番組名:「てれクイ」
    出演者:オリエンタルラジオ、タレント、モデル、俳優、芸人など+α
    番組のねらい:家族みんなでワイワイしながら見られて会話のきっかけになり、また知識も増える番組にしたい。親や兄弟、友達などと一緒に違う世代・ジャンルの内容を見ることで他者を理解しようとする姿勢を持ってほしいし、実際仲良くなれると思う。オリラジ司会は私の趣味です。
    番組の内容:普通のクイズ番組。小学生のとき見ていた『IQサプリ』や『平成教育委員会』のような何の変哲もないクイズ番組が今はない気がする。特番や2時間スペシャルより、毎週1時間コンスタントに楽しみにできる番組がほしい。また、個人で動画配信できるコンテンツが普及している今だからこそ、家族全員で大きなテレビを囲んでワイワイできる番組があるといいと思う。雑学的なもの・小学校~高校の科目などに加えて、たとえばアニメ・声優・昔の映画・宝塚・クラシック音楽・ファッション・電車など興味がなければ触れなさそうなジャンルにも焦点を当てて、毎週「全然有名ではないがそのジャンルに詳しい人や人気がある人」を出演者として呼べたら良いと思う。普段テレビを見ない層も「今週は○○の特集だから見る」となるかもしれないし、毎週番組を見ているうちに今まで全く知らず興味がなかったことに関心が湧くかもしれない。それは自分で好きなものを選んで見るネット経由とは違う、テレビだからこそできることだと思う。

    日本テレビ チーフプロデューサー: 家族で共有できる番組は、今後さらに重要となるはずです。より具体的にイメージしてみると、いい企画が発想できそうです。
    テレビ朝日 Cプロデューサー: シンプルなクイズだと視聴者が飽きてしまうので、例えばクイズ問題以外でも…情報の意外性、珍答・誤答の面白さ、ルール設定の新しさなど+αがあれば企画が成立する可能性はあります。オリエンタルラジオなど具体的なMCの名前を出すと、展開のイメージがわくので企画書としてとても良いと思います。

  • ●群馬・高校3年・男子
    番組名:「さまざまな職業について知ろう」
    出演者:桝太一、バナナマン、その他ゲスト
    番組のねらい:僕には就きたい職業がない。それにも関わらず、テレビで放送されているのはバラエティー番組やドラマ、アニメなどの娯楽番組ばかりだ。バラエティー番組で、この世にはこんな職業があり楽しみ、やりがい、大変さなどを伝えれば興味関心が湧き、職業に対する視野を広げることが狙い
    番組の内容:この世には知らないところで様々な仕事が経済を回すために動いている。しかし、私たちは働いたことがないから実際にそれについてよく分からない。それなのに、高校では理系文系の選択をする。大抵の人は理系の方が職業の選択が広いという理由だけで、文理選択をしているだろう。それらの理由として考えられるのは、子どものころに様々な体験、経験をしなかったからだ。という訳で僕が考えた番組はその仕事のプロに密着して仕事のやりがい、つらさを伝える番組である。しかし、これはプロフェショナルの番組のパクリである。だから、大人がインタビューをするのではなく、子どもがインタビューをすることによって子どもの目線から職業を知ることができると考えられる。そうすれば、職業について興味関心が湧く番組になり、将来の職業に就くときでも広い視野で職業を見ることができるだろう

    テレビ朝日 Dプロデューサー: 様々な職業人の姿は非常に興味深いです。一見地味な仕事に関わる職業人からも人間味を演出(引き出して描くこと)できれば可能性は大いに広がると思います。その際は取材する側の力量・経験・熱意が大変重要になると思います。

  • ●福岡・高校3年・男子
    番組名:「ラジwatch」
    出演者:毎週同じMCの方1人とゲストのアーティスト(グループ可)
    番組のねらい:いつもは、ラジオでしか聞けない雰囲気をまさかのテレビの画面で見られる!ラジオ離れしている若い方~お年寄りの方まで、ラジオの魅力をテレビから発信したい。
    番組の内容:セットは、ラジオと同じ。週代わりでアーティストをお迎え。お迎えするアーティストは、今週目玉の方を中心に呼ぶ。また、オリンピックの期間では、オリンピックに関する特集や正月·お盆·クリスマスなどの特集をすることで、アーティストの呼ぶ頻度を抑えることができる。また、月ごとに演歌の方中心や10代ターゲット中心などにすることで、幅広い視聴者が見ることができる。この番組の最大の特徴は、ラジオを見ることである。いかにラジオと同じ状況作り出すことかが大事になってくる。そこで、ラジオの内容ですが、お便りを読んで回答したり、歌を歌ったり、そのアーティストについての質問をしたりするなどして、視聴者に向けてラジオってこんな感じなんだぞ!と、伝えることができれば良いと思う。

    テレビ朝日 Gプロデューサー: 既存の音楽番組との差別化があまりわかりませんでした。セットがラジオ風というのは面白いと思います。ラジオならではの良さが何なのか、ラジオの魅力はどうすれば表現できるのか・・・などを明確にして、どんなコーナーをやるべきか、考えるともっと楽しい番組になるかもしれません。

  • テレビ朝日
    • Aプロデューサー『EXD4』『おいしい王国ごはんジャパン』『題名のない音楽会』『トリハダ 秘スクープ映像100科ジテン』担当
    • Bプロデューサー『トリハダ秘スクープ映像100科ジテン』担当
    • Cプロデューサー『クイズプレゼンバラエティQさま!!』担当
    • Dプロデューサー『林修の今でしょ!講座』『橋下×羽鳥の番組』担当
    • Eプロデューサー『爆笑問題のぶっちゃけ寺』担当
    • Fプロデューサー『お願い!ランキング』『学生HEROES!』担当
    • Gプロデューサー『お願い!ランキング』『はくがぁる』担当
    • Hプロデューサー『キスマイ魔ジック』『まとめないで』担当

【9月の報告】

32人の中高生モニターにお願いした9月のテーマは「夏休みに見て気になった番組の感想」でした。また「自由記述欄」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。今回はテスト期間と重なったモニターも多かったようで、いつもより少ない23人からの報告でした。
「夏休みに見て気になった番組の感想」では、「オリンピック関連」と『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)にそれぞれ5人から報告が寄せられています。「オリンピック関連」では、親子で競技を見て感動したという意見や、4年後の東京オリンピックに夢を馳せた意見があったほか、NHKと民間放送の違いを分析したモニターもいました。一方、「自由記述欄」には「パラリンピックをほとんど放送しないのはなぜですか」という指摘も寄せられています。
『24時間テレビ 愛は地球を救う』には、「感動した」、「勇気をもらった」という意見とともに、「違和感がある」というモニターもいました。また、同じ時間帯に放送していた『バリバラ』(NHKEテレ)に言及した意見が2人からありました。ドラマには3人から、『NHKスペシャル』(NHK総合)には違うテーマに関して2人から報告が寄せられました。
「自由記述欄」には、「台風以外のニュースも伝えてほしい」、「夏休みで夜遅くまでテレビやラジオに接する人が多いので性的表現には気をつけてほしい」との意見や、BS放送での編成に触れ「テレビが泣いている」と訴える意見もありました。
「青少年へのおすすめ番組」には、7月に放送された『"繰り返さないために"~尾木ママと考える教育論~』(仙台放送)や、9月に放送された『芸術ハカセ~人生が面白くなるアートの新説~』(テレビ朝日)など、 5つの番組に感想が寄せられました。

◆委員の感想◆

【夏休みに見て気になった番組の感想について】

  • リオオリンピックの中継について、複数の放送局を比較して良い点や物足りなかった点などを指摘する意見や、2020年開催予定の東京オリンピックでの放送のあり方についての言及があった。モニター報告を通じて、このような視点が育ってきていることを実感した。
  • 障害者を取り上げた番組を見て単に感動するだけではなく、「普段、自分がどのような視点で障害者に接しているかを自問自答した」との感想が寄せられたことは意義深い。
  • インターネット情報を基に、番組制作の裏側にも想像を巡らせているようだ。意見を見ると、放送には真実や誠意を求めていることがよく分かる。
  • 中高生モニターと同年代の人を取り上げた番組についての感想が多くあり、同年代への興味が深いことがうかがえる。
  • オリンピックや障害者を取り上げた番組について、モニターから色々な見方が示されたが、パラリンピックの取り上げ方についてどのように思ったかも聞いてみたい。パラリンピックを見て励まされる障害者がいる一方、そうではない人もいると思う。
  • トーク番組を視聴したモニターが、番組の制作過程にまで想像を巡らせていた。夏休みに放送局を見学したことが少し影響しているとしたら嬉しいことだ。
  • 番組予告で内容を明らかにし過ぎだとの苦言があったが、共感できる。
  • 『NHKスペシャル 未解決事件File05 ロッキード事件第3部 日米の巨大な闇 40年目のスクープ』(NHK総合)について、「その当時の日本の政治の深い闇にスポットをあてることで、そこから得られる教訓を今の世の中に知らしめる意図を感じる」との感想があった。番組の意図を深く考えて、しっかり評価できていると感じる。
  • 番組を見て、単に「良かった」「面白かった」などの感想を寄せるのではなく、番組の良い点を自分に引きつけて意見を述べたり、論理的に説明したりできるようになってきたと感じる。建設的な意見も多く感心した。
  • 『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』(日本テレビ)について、「障害者のチャレンジ企画が多いが、もっと他のチャリティー活動もできるのではないか」との意見があった。確かにチャリティー=障害者支援ではない。ハッとさせられる意見だった。

【自由記述について】

  • インターネット上では情報が飛び交っているにも関わらず、マスメディアではあまり扱っていない出来事について、マスメディアが自己利益のために情報を出していないのではないかとの記述があった。インターネット上での情報とマスメディアでの情報が異なると、このような反応をする若い人は多いと思う。一般的な話として、個人が憶測を含めて意見や考えを示しているインターネット情報とは違い、マスメディアでは安易に情報を流すのではなく、丁寧に節度を持って放送していることを分かってもらう必要があろう。
  • BS放送でいわゆる通販番組が多いことについて、「テレビが泣いている」との苦言が寄せられている。良質な番組が多い一方、確かにこのような番組も目立つ。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 各局が青少年におすすめする意図が分かりにくいとの意見があった。各放送局には、もう少し意図が分かるような番組選択や見どころの説明をしてほしい。
  • 宮城県で起こったいじめによる中学生の自殺を取り上げた、『"繰り返さないために"~尾木ママと考える教育論~』(仙台放送)を視聴したモニターがいた。地元での事件ということもあり、真剣に見てくれている。「全国放送することにより、いじめ問題に取り組んでいる人たちのヒントになる」との意見のとおり、ぜひ、他の地区でも放送してもらいたい。

◆モニターからの報告◆
【夏休みに見て気になった番組の感想について】

  • 『リオオリンピック関連番組』(NHK総合ほか)今年の夏はリオオリンピックが私の家のテレビにはよく映っていました。父がスポーツ好きだから、普段はあまりテレビを見ない父ですが一緒に見ました。重量挙げの三宅選手と体操選手はすごかったです。重いものを持ち上げたり、ありえない動きの体操を見て感動して驚きました。(長崎・中学1年・女子)
  • 『24時間テレビドラマスペシャル 盲目のヨシノリ先生〜光を失って心が見えた〜』(日本テレビ)今回のドラマを見て思ったことは、ヨシノリ先生の演技が良かったと思った。もともと明るかった先生が、目が見えなくなってしまったことをきっかけに、とても暗くなってしまい、どうなってしまうか心配だったが、最後には、もとの先生に戻って、安心した。性格も同じなのか分からないが、現実にあんな先生がいるなんてすごいと思った。(東京・中学1年・男子)
  • 『NHKスペシャル 未解決事件File05 ロッキード事件第3部 日米の巨大な闇 40年目のスクープ』(NHK総合)最近本やテレビ番組で田中角栄が取り上げられていて、ある種ブームになっていたので興味を持ちました。再現ドラマを使い、臨場感にあふれる内容でとても引き込まれました。事件の詳細を知らない私達でもわかりやすく、詳細まで丁寧に作られていました。多くの実際の証言や資料を基にしていて、これまでわからなかったことや、あまり知られていなかった真実なども知ることができ、とても核心に近づいているように感じられました。ただ未解決事件なのでその結論は視聴者の考えにゆだねられている部分が多いと思いました。今、その当時の日本の政治の深い闇にスポットをあてる事件を扱うことで、そこから得られる教訓を改めて今の世の中に知らしめる意図もあるのかもしれないとも感じました。(宮城・中学1年・男子)
  • 『所さんの目がテン』(日本テレビ/西日本放送)この番組は岡山県の津山高専の人達が出演していたので気になって見てみました。全国各地の色々な場所から集まった高校生が科学実験を見せてくれるという内容でした。実験は私達中高生や大人が見ても面白いものでしたが、小学生にとっても楽しんで見られるようなものばかりでした。それに小学生にとっては自由研究のテーマを決めるのにも役立つのでとても良いと思いました。(岡山・中学2年・女子)
  • 『リオオリンピック関連番組』(NHK総合ほか)僕がリオオリンピックに興味を持った一番の理由は、自分自身が学校の卓球部に入っているので、今回のリオオリンピックで、卓球の男子と女子がどちらもメダルを獲得した試合を見て、すごいなと嬉しく思ったからです。また今回のオリンピックでは、日本選手全体で獲得したメダル総数が41個と過去最高で、その中にはこれまであまり目にする機会がなかった、カヌーや競歩などでもメダルを取っていたので、「こういうスポーツもあるんだ」「日本人選手が活躍していてすごいな」と感じました。4年後の東京オリンピックがとても楽しみになり、東京大会では自分がやっている卓球や、以前習っていた水泳などを見に行きたいと思います。さらに、自分は教科の中で英語が一番好きなので、大会のボランティアなどとして、東京オリンピックに携わることができたらいいなと思いました。(東京・中学2年・男子)
  • 『バリバラ』(NHK Eテレ)この放送回の時は、「検証!『障害者×感動』の方程式」と題して『24時間テレビ』の裏番組で放送されたので驚きました。レギュラー出演者の元アメリカ柔道代表の大橋さんが今年の『24時間テレビ』にも出演したこともあり、それらしい音楽やキーワードで、いかにも健気な障害者として大橋さんを描き、それを壊すように使えない発言を連発し、そのたびスタッフが「その話いらないっす」「いやそこ大変な感じで行きましょ」などと『24時間テレビ』をパロディー化して放送。24時間番組の舞台裏では、ああいった演出が入っているのかなと思うと報道の自由に対して少々複雑です。24時間テレビでは、障害や難病を持つ人が、さまざまな難題に挑戦する感動的な企画は人を感動させ、勇気づけられます。でも一歩見方を変えたら、「自分の人生はうまく行っていないけれど、あんな大変な人もいるんだ」と上から見下ろす視点で障害者を見ていないか?と障害に対する意識について考えさせられました。私自身ボランティアで様々な身体的に障害を抱えている人達と過ごしてきましたが、障害そのものは何も特別なことではありませんが見下し感?みたいな意見が飛び交うのは閉鎖的な島国日本の悪いところなのでしょうね。(神奈川・中学3年・女子)
  • 『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』(フジテレビ/東海テレビ)このドラマは幼い頃からの夢だった囲碁のプロ棋士に挫折した主人公がコネで入社した会社で頑張っていくという話です。このドラマは普通のヒューマンドラマですが、主人公の成長を見るととても応援したくなる気持ちや、自分も少しのことで落ち込んでいてはだめだなぁと感じることがあります。主人公はコネで入社したため初めは周りからつまはじきにされますが、誰よりも一生懸命努力し仲間ができたり課長に認められたりするところはとても感動します。もしこのドラマで描かれていることが本当なら会社には入りたくないなぁと思ってしまうような理不尽なシーンもありますが、逆にそこがリアルで面白いなぁとも思います。主人公はそんな理不尽なことでも文句ひとつ言わず努力しているところがとても心に響きます。社会に出てから世の中の厳しさを知る主人公ですがそれは現実でもあり得ることだと思います。周りにいる大人で世の中のリアルな話をしてくれる人はなかなかいないと思うので、このようなドラマを見て少しは社会のなり方を学ぶことも大切なんじゃないかと思います。夏休みにはたくさんのテレビを見ましたが、このドラマが一番心に残りました。頑張る勇気をくれる素敵なドラマだと僕は思いました。(愛知・中学3年・男子)
  • 『日曜ビッグ「秘境の地からやって来た!仰天ニッポン滞在記」』(テレビ東京/テレビ大阪)インドネシアに暮らし、今も原始的な生活を営む先住民族「ダニ族」が訪日し、様々な体験を通じて、日本の文化や暮らしに触れるという内容の番組です。今までありそうであまりなかった番組でとても面白かった。特に日本人ですらも好き嫌いが分かれる食品(梅干しなど)を何の抵抗もなく、自然と食べることや、味覚が違うこと、日本の文化と遠く離れたインドネシアのダニ族の文化の意外な共通点(先祖崇拝など)を知ることができ、とっても面白かった。この番組は今までの日本と海外の違いを比較する番組とは違い、ダニ族から見た異国という視点から見ることができとても楽しい番組だった。ただ、改善してほしい点を挙げるとするならば、帰国後、生活がどう変化したかや日本についてどう思い、それを人に伝えたかを知りたいと思った。つまりは日本滞在終わりました。はい、終わりではなく、帰国後・・・というような事後談があるとより面白い番組になると思った。(兵庫・中学3年・男子)
  • 『バリバラ』(NHK Eテレ) この番組は『24時間テレビ』が終わってから話題になっていたので見てみた。確かにとても面白かったし訴えたいことがよく伝わってきた。それに『24時間テレビ』について障害者を感動の道具としている"感動ポルノ"だと言っていて、私も実際その番組を見ていてそう思ったし、共感できた。だけどあまりにも裏番組を意識し過ぎていて気になった。黄色いTシャツを着ていたり、番組のテーマだったり「対24時間テレビ」を主張し過ぎていたと思う。こういう裏番組を真っ向から批判するような番組をNHKが放送するのはいかがなものかと思った。限度があると思うし、公平さが欠けていて見ていて不快になった。(東京・高校1年・女子)
  • 『全国高等学校野球選手権大会』(NHK総合/Eテレ)この夏休みは甲子園をよく見る夏でした。きっかけは県大会で自分の通っている高校が決勝まで行き、直接会場まで応援に行ったことでした。残念ながら惜しくも勝つことはできませんでしたが、野球や甲子園に興味を持ちました。テレビで見る甲子園は、なんだか熱意で満ちているように感じました。選手の気持ちや緊張感が見ているこちらにも伝わってきて、すごくドキドキしました。こんな風に何かに一生懸命になってみたいと思いました。私が甲子園を見て感動したのと同じように、全国の高校生に甲子園を見てもらい、チームワークの凄さやその熱意を感じてほしいなと思います。また、スポーツ番組は伝える人の主観が入ってしまうので難しいと思いますが、誰もが気軽に楽しんで見ることが出来るようにしてほしいです。(高知・高校1年・女子)
  • 『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』(日本テレビ/読売テレビ)障害を持つ人にスポットを当て、そのチャレンジをサポートするという内容が主になっている番組だが、「障害者を取り上げるといつも感動話になる」という声を多く耳にした。この番組の裏でNHKが「障害者=感動」の方程式に疑問符をつける内容の番組を放送したことも話題になった。自分も周囲も、感動的な、悪く言えば「重い」内容が長時間続くことにうんざりしていた。特に、今回はパラリンピックの年だったせいか、障害者チャレンジの内容が多かった気がしている。もう少しやることがあるのではないか。熊本地震の被災地を支援する活動や、自然環境を保護する活動、チャリティーを冠しているのであれば、もっとバラエティーに富んだ内容を放送できると思う。また、今回初めて『24時間テレビ』の深夜帯の放送を視聴したが、時間を何とかして埋めようとしている感があった。突飛な例ではあるが、欧州サッカーの試合を中継してみるとか、深夜でしかできないことをもっと考えてもいいと感じた。(大阪・高校1年・男子)
  • 『プロフェッショナル 仕事の流儀「プロサッカー監督・森保一」』(NHK総合)サッカーJリーグのサンフレッチェ広島監督・森保一さんの指導方針や思考について取りあげてあり、とても興味深かった。ぼく自身も中学、高校とサッカー部に所属しているので、森保一さんの話は心に響いた。夏休み期間中は、部活動の時間も普段よりも長く、顧問の先生と話す時間も長くなる。ぼくのパーソナリティーを顧問の先生に知ってもらうことと、顧問の先生の人柄をぼくらも知ろうとすることの大切さが理解できた。今回は、番組内容と実生活を照らし合わせて見ることができて興味深かった。プロを目指す訳ではなくても、チームをまとめることや目的を共有することの難しさと楽しさが感じられた。(福岡・高校1年・男子)
  • 『NHKスペシャル ふたりの贖罪(しょくざい)~日本とアメリカ・憎しみを越えて~』(NHK総合)太平洋戦争中、敵として戦い、戦後は相手国への憎しみと信仰の狭間で葛藤しながらも、伝道の道を進んだ日米二人の軍人の物語。私自身はキリスト教徒ではないが、学校で聖書の勉強をしているので気になり、視聴した。ただ事実を淡々と伝え、戦争や宗教に対する主張はあまりせず、あくまで視聴者に判断を委ねているのに好感が持てた。(神奈川・高校2年・女子)
  • 『トコトン掘り下げ隊!生き物にサンキュー!!』(TBSテレビ/テレビ山口)この番組は、犬や猫など様々な動物をとりあげて、面白映像やかわいい映像、珍しい映像などを放送する番組です。家族で楽しく見られる番組なので、家族でよく見ています。この日の放送では、「動物と暮らして幸せ!2時間SP」と題して放送していました。熊、猫、犬などの動物と暮らす中でのさまざま「幸せ」のあり方が描かれていました。どれも視聴していてとても心が和らぎ楽しい時間になりました。中でも印象に残ったのは、飼い主と愛犬たちの闘病生活の話です。その愛犬たちは、16歳と14歳でとても高齢で病気を患っています。そんな中でも飼い主はありったけの愛情を持って接していました。たくさんの思い出を作ってくれた動物を最期まで責任を持って看取ることが「家族としての当然の義務」だと言っていました。この飼い主と愛犬たちの「絆」を感じて、とても感動しました。私も猫を飼っていて、たくさんの楽しい家族との思い出を作ってくれています。そんな猫を最期の時まで愛情をもって接してあげようと決意することができました。しかし、番組の最後では、中華街に行ってグルメレポートをしていました。これは、生き物には全く関係がありませんでした。今回だけでなく、この番組は生き物とは全く関係のないトークも多い気がします。生き物が主役の番組でこのようなトークは取り上げるべきではないと思います。(山口・高校2年・男子)
  • 『坂上忍の好きか嫌いか言う時間』(TBSテレビ)二つの違う立場の人たちが討論(?)する形式のトーク番組で、「東大生VS京大生」「外国人からみた日本」「上京してきて思ったこと」などのテーマをCM予告で見て、面白そうだと思って録画し、家族と一緒に見ました。京大生や外国人などインタビューされている人のキャラが濃くて面白かったのですが、途中でちらっと「1ヵ月間インタビューをした結果~」と言っていたのを聞いて、「あぁこれ面白いやつ厳選されているんだなぁ」と思って、放送されて私たちが見る完成形までに企画したり、会議したり、インタビューしたり、編集したり、といった制作過程を経ているんだ、と感じました。夏休み中、TBSの局内を見学したことが記憶に残っていて、だからこそ裏側に想像を巡らすことができたのかもしれません。番組の企画自体は面白かったのですが、3時間は長いと感じました。もうひとつ、テレビのバラエティー番組について思っているのは、予告で番組内容を明かし過ぎなのではないかということです。バラエティーはその後(または次週)放送する部分の一番面白いシーンやオチになるシーンを予告で晒してしまうことが多いため、実際の番組を後で見ても「なんだ、これだけか」という気分になります。そしてラスト5分くらいのCMの前に、その後の内容の予告としてだいぶ煽る感じのテロップが出るのに、CMが終わるとだいたいそのシーンは数秒で、もう番組が終わってしまう、という展開が多く、だいたいは見るのが面倒になって止めてしまいます。でもテレビだからできる良い部分もあって、それはスポンサーを表示している画面の横や上下に1行くらいの予告を載せていることです。あれは視聴者に「チャンネルはそのまま!」にさせるため端的に内容を伝え期待させられるキャッチコピーが練られていて、面白いなーと思います。「美男高校地球防衛部」というアニメのそのテロップが毎回凝っていて、楽しんで見ています。(東京・高校3年・女子)
  • 『リオオリンピック関係のハイライト番組』(NHK総合)地球の裏側で開催されていた、リオオリンピック。どの時間帯のNHKを見ても、飽きることのないような番組構成で素晴らしかったです。いま、リオパラリンピックのまっただ中ですが、パラも同様に直前スペシャル等で盛り上げていて、オリンピック同様に楽しむことができています。しかし、これが東京オリンピック・パラリンピックだったら、どうでしょうか?仕事や学校に通っている人がリアルタイムで見ることができません。そのような人たちにも楽しんでもらう努力(お手伝い)をメディア(特にテレビ)がするべきです。そこで、最低でも仕事や学校から帰る時間に合わせて、ハイライトを流す。時間の都合が合えば、日本人出場の試合を全部録画で流す。さらに、その放送番組のホームページでアーカイブスが無料で見られるなど、様々な努力をすることでメディアという組織から日本をオリンピックまたは、パラリンピック一色にできるのではないか?と、考えました。(福岡・高校3年・男子)

【自由記述】

  • 8月という事で戦争関連のテレビ番組がたくさんあったので、歴史を知る大切なきっかけになりました。(東京・中学1年・女子)
  • 台風が来てすごく大きなニュースに取り上げられていましたが、ニュースの中で台風の同じ映像を何度も流すのではなく、他のニュースも時間をとって伝えてほしいです。台風のニュースばかりで他に起こっていることがあまり知れないのは少しもったいないです。(岡山・中学2年・女子)
  • 夏休みということもあり、夜遅くまで、テレビやラジオを見たり、聞いたりしている人がたくさんいると思います。その中で、性的表現などを含めての発言をしている番組が見受けられました。もう少し、そのところの管理をしてほしいと思いました。(埼玉・中学2年・男子)
  • 少し気になったのがオリンピックはどこの局も放送しますが、今開催しているパラリンピックはどこの局もほとんど放送していないのはなぜですか。僕はオリンピックだけでなくパラリンピックにもとても興味があるので放送してほしいです。僕から見るとオリンピックは放送するのにパラリンピックは放送しないなんてパラリンピックに出場している選手の方に対して少し失礼だと思います。放送しない理由があれば教えてほしいです。(愛知・中学3年・男子)
  • 最近目立つのがBSの番組の手抜きです。ほとんどが商品の販売のCM。「お電話待ってます」とスタジオからの実演販売。食傷気味です。ひどいです。総務省はこんな番組(CM)の垂れ流しをするのであれば、免許の剥奪も考えていいのでは。番組情報を見れば一目瞭然です。プロデュ―サーさんたちも、予算が無いからといって、単に「枠」さえ埋めればいいという発想を止めてほしいです。テレビが泣いている。(東京・中学3年・男子)
  • 最近の番組はあまりにも告知目的の番組(特にバラエティー番組)が多すぎるような気がする。単刀直入にいえば告知目的のバラエティー番組は面白くない。告知目的であることが明白な番組の場合チャンネルを変えることが多い。もう一つ多いと感じるものが、衝撃映像をまとめた非常に手抜きにしか見えない番組。すべての番組が違う映像を紹介するのならまだいいのだが、一度放送した映像を別番組で見ても全くもって面白くない。こんなものはインターネットの動画を閲覧することと何の変わりもなく、もっとテレビにしか成しえない番組を放送してほしい。(兵庫・中学3年・男子)
  • 毎年夏休みに、日本テレビ系列の放送局で『24時間テレビ』が放送されています。日本で1番有名なチャリティー番組です。障害のある方の挑戦であったり被災地でのことを特集したりと、すごく感動したり考えさせられる番組だと思います。しかし、毎年やらせではないだろうかや、障害のある方への対応の悪さなどが指摘されています。いろいろ問題はあるとは思いますが、1年に1回くらいはあのような番組があっても構わないのではないかとも思います。ただ、放送する以上、嘘ではなく本当の実態を見せるような番組にしてほしいです。(高知・高校1年・女子)
  • 8月に学生たちの間で絶大な人気を誇るロックバンド「RADWINPS」が『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に出演。テレビ初出演となった。SNSなどではティーンエイジャーを中心に多くの反応があった。「若者のテレビ離れ」が叫ばれて久しいが、私自身、若者をターゲットにした番組(アニメも含む)がゴールデンの時間帯になかなか進出しない現状を感じている。ゴールデンの時間帯は、家族で見ることができる番組が求められるようだが、そこで敢えてある世代だけを狙った番組を放送してみると、家族間での趣味の共有によって話題が生まれるというメリットも期待でき、面白いかもしれない。(大阪・高校1年・男子)
  • 民放の特別番組で時々警察に密着した番組が放送されています。警察がどんなことをしているのか知ることができて良いとは思いますが、取材することによって警察の方の邪魔になるのではないかと疑問に思うことがあります。また、被害者にも容疑者にも人権があります。顔にモザイク加工などはされていますが、誰なのか特定されないように最大限の配慮が必要です。また、このような番組は都市の警察官の動きに密着することが多いと思います。だから、地方の交番のような所でも密着取材をしたら身近で多くの視聴者に興味を持ってもらうことができると思います。(山口・高校2年・男子)
  • SMAP解散報道について、マスコミが事務所批判を全くしないのがおかしいと思います。ネットでは確実に事務所が勝手に解散を進めたという風に書かれている記事ばかりなのに、テレビなどで取り上げないのが不思議です。マスコミとジャニーズ事務所との癒着を感じます。私のお母さんがファンなので、毎日いろんな情報を聞きますが、ファンにとっては悲しく怒りたくなる報道ばかりなので正しい情報を発信してほしいです。(大分・高校3年・女子)

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『"繰り返さないために"~尾木ママと考える教育論~』(仙台放送)私の住む市で起こった中学生のいじめによる自殺を取り扱った番組でした。アナウンサーの方が一人と尾木ママと呼ばれる尾木直樹さんと二人で番組が進められました。事件についての詳細が示され、アンケート結果や第三者委員会の様子が伝えられましたが、実際のところまだ裁判で係争中ということもあり、あまり詳しいところまではわからず、今までテレビで見聞きした内容とほとんど同じでした。コメンテーターも尾木先生お一人だけだったので、正直意見に偏るところがあり、もう少しほかの方の意見も聞いてみたいと思いました。いじめを繰り返さないとタイトルにありましたが、いじめに取り組む学校も一校だけの紹介だったので、市内外にかかわらず、全国でも他に取り組んでいる様子を伝えてもらえれば考えるヒントになるかもと思いました。(宮城・中学1年・男子)
  • 『VS嵐』(フジテレビ/北海道文化放送)吉本芸人チームが対戦チームでくると、各試合の合間のトークがいつもより笑えるものになっています。映画やドラマの対戦者だと宣伝目的なので中身があまり面白くありません。ですから、今回のような対戦者が多くなるとお笑い好きの方も視聴するのかなと思いました。(北海道・中学2年・男子)
  • 『第36回全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ/中京テレビ)僕とそこまで年の変わらない方々がとても難しいクイズに挑戦している姿はとてもかっこ良いと思いました。今回の日本だけでなく海外に行きながらクイズを答えるというシステムはとても面白いと思いました。回答者も頑張ろうという気持ちになると思いますし、何よりとても景色が綺麗で良かったと思います。クイズに関してはとても難しく僕にはわからない問題がほとんどでしたが見ているだけでも勉強になったと思います。もう少し視聴者も参加できるようになるともっと面白くなると思います。dボタンでの学校紹介が僕的には良かったと思います。(愛知・中学3年・男子)
  • 『テクネ 映像の教室』(NHK Eテレ)僕は小学生の頃映画監督になりたかったので、テクネには興味がある。今回紹介されていた3つの手法も、Eテレの子ども番組や民放のアニメなどに使われていることに気付くと得した気分になれた。(福岡・高校1年・男子)
  • 『芸術ハカセ~人生が面白くなるアートの新説~』芸術史について解説する知的教養バラエティー番組はあまり見たことがなかったので、興味をひきました。さまざまな芸術家の知られざる学説が面白かったです。司会の葉加瀬太郎さんも芸術に対して専門的な知識を持っていて、解説も分かりやすく、葉加瀬さんによる演奏もありました。初めて知ることも多く、飽きずに視聴することができました。中でも日本でも知られる「蛍の光」がベートーヴェンの編曲だったということには驚きました。芸術史だけでなく建築史や科学史などでも同じような知的教養バラエティー番組があっても面白いと思います。(山口・高校2年・男子)

調査研究について

2015年10月に行った立命館守山高校アンケート調査リポート「高校生のメディア・リテラシーに関する探索的研究-バラエティー番組に対する感想をめぐって-」を、10月8日9日に静岡大学浜松キャンパスで開催される、第13回子ども学会議でポスター発表することになったとの報告がありました。

今後の予定について

  • 10月14日に開催予定の留学生との意見交換会(立命館アジア太平洋大学)について、進捗状況の報告が事務局からありました。
  • 来年3月5日に日本テレビの協力を得て開催予定の2016年度中高生モニター会議に関して、進捗情報の報告が事務局からあり、担当は最相副委員長に決まりました。
  • 在京局との意見交換会・勉強会について、来年1月をめどに開催することにし、内容について検討しました。

その他

  • 第13回子ども学会議ポスター発表報告

    日本子ども学会主催の第13回子ども学会議(10月8日~9日、静岡大学浜松キャンパス)において、「高校生のメディア・リテラシーに関する探索的研究―バラエティー番組に対する感想をめぐって―」を発表しました。
    発表にあたっては、菅原委員がポスターを前に説明を行いました。学会関係者や学生からは調査規模や方法を高く評価する声が相次いだほか、同研究を踏まえて来年度に実施する本調査への期待が多く寄せられるなど、44のポスター発表の中でもひときわ高い関心を集め、優秀ポスター賞を受賞しました。
    同研究は2015年10月に立命館守山高校の生徒およそ300人を対象に実施したアンケート調査を分析したものです。バラエティー番組の一部(お笑いタレントの罰ゲームのシーンなど)を集団で視聴してもらい、意見を尋ねるとともに、普段のテレビやラジオ、新聞、インターネット利用等のメディア接触状況、メディア・リテラシー等に関してアンケート調査しました。
    研究では、番組に対して倫理的な問題を感じている生徒や、「いじめにつながる」と考える生徒は少なかったものの、自分たちよりも幼い小中学生が真似したら危険であり、このシーンを不快に思う人もいるだろうと客観的に判断している生徒が相当数いることなどが分かりました。

2016年9月12日

「世田谷一家殺害事件特番に対する申立て」事案の通知・公表

[通知]
9月12日(月)午後1時からBPO会議室で坂井眞委員長と、起草担当の奥武則委員長代行と紙谷雅子委員が出席して本件事案の決定の通知を行った。申立人は代理人弁護士4人とともに、被申立人のテレビ朝日は常務取締役ら3人が出席した。
坂井委員長が決定文のポイントを読み上げ、「本件放送は人権侵害があったとまでは言えないが、番組内容の告知としてきわめて不適切である新聞テレビ欄の表記とともに、テレビ朝日は、取材対象者である申立人に対する公正さと適切な配慮を著しく欠いていたと言わざるを得ず、放送倫理上重大な問題があった」との「勧告」を伝えた。
申立人の代理人は「このような結論が出たことを、局側としては、『ああ、そうですか』というだけではなくて、なぜそうなったのかについて、経営担当者から第一線に至るまで深く掘り下げていただきたい。人権侵害にはならなかったが、申立人が非常に苦痛を味わったことは事実認定の中にあると考えているので、そのようなことが犯罪被害者に関連して、これから起きないよう深い総括をお願いしたい」と述べた。
テレビ朝日は「委員会の決定を真摯に受け止めて、今後の番組、ならびに、放送に必ず生かしていきたい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見をして、決定を公表した。23社49人が取材した。テレビの映像取材はテレビ朝日がキー局を代表して行った。
坂井委員長が決定の判断部分を中心に説明し、結論の最後の段落、「報道機関としてのテレビ局が、未解決事件を取り上げ、風化を防ぐ番組を取材・制作することは一般論としては評価できる試みと言えよう。だが、その際、被害者やその関係者の人権や放送倫理上の問題にはとりわけ慎重になることが求められる。テレビ朝日は、本決定を真摯に受け止め、その趣旨を放送するとともに、今後番組の制作において、放送倫理の順守をさらに徹底することを勧告する」という部分を読み上げた上で、未解決事件を取り上げることには社会的意義があるが、その場合には十分な配慮をしなければいけないという指摘をさせていただいたと述べた。
奥委員長代行は、「本件面談場面を詳細に検討した。申立人が主張しているような形に明確にはなっていないが、ナレーションなどのテレビ的技法を駆使して、最初は思い当たる節がないと言っていた人が、最後は思い当たる節があると転換したというふうな作りになっている。それは間違いないので、テレビの作り方としては非常に問題があるということで、放送倫理上重大な問題があるという判断をした」と述べた。
紙谷委員は、「申立人から『自己決定権』という、委員会としてはこれまであまりそういう主張を受けたことがなかったので、いろいろ検討した。自分が言っていないことを言わされている。自分の主張が正確に伝わっていない。周囲の人から誤解され、それを解くのに非常に苦労をした。申立人はそれを『自己決定権』を侵害されたという形で表現している。委員会としてどう受け取ったらいいのか、だいぶ議論したが、社会的評価が下がったということであるならば、名誉毀損の枠組みの中で議論しても問題ないのではないかということで、判断、処理をした。委員会としてはかなり考えた上で、残念ながら決定文には数行でしか反映できなかったということを補足したい」と述べた。

このあと質疑応答に移った。主な内容は以下のとおりである。

(質問)
本人が言ってないことを言ったかのように放送されたのに、人権侵害ではないというのは法律家が定める人権侵害に該当しないということか。

(坂井委員長)
人権侵害といった場合、憲法上保障されているどういう人権の侵害なのかという議論が必要だ。言っていないことを報道されてしまった、ないしは、言ったことが歪められて放送されてしまったということは、民事法レベルなら、例えば、慰謝料請求とか、そういう話はありうる。その場合故意・過失、違法性のある行為、損害、因果関係があればいいということになるので、そういう法的な要件に当てはまる場合はあると思う。しかし、この場合はそういう民事法レベルの不法行為の話をしていない。憲法上の人権の侵害といった場合に、どういう権利の侵害なのかというのは非常に難しいところだ。自己決定権の侵害というが、その自己決定権とは何なのかということは学問的にもまだ固まっていない。なので、この委員会でそれについて何か概念を定立して、自己決定権侵害だというべき状況ではないだろうという、そういう意見が強かったと思う。民事法レベルでは当然問題が起きうるけれども、ここで問題にしている人権侵害という話にはならないだろうというのが私の理解だ。

(紙谷委員)
人のコアにある部分を何か疎かにされたのではないかというレベルでは、すごく問題はあるという主張に説得力がないわけではない。ただ、今回の場合にはそれを承認するのは無理かもしれないけれども、社会的評価の低下をもたらす名誉毀損と同じ枠の中で処理した。委員会としては自己決定権とはこういうものだと考えるという議論で書いてもよかったのかもしれないが、そこまでやっていいのかみたいな議論もいろいろあった。それで、申立人はそう言っているけれども、そこの判断はしていないという文章になった。

(坂井委員長)
補足すると、申立書の中にもある名誉毀損だとか、プライバシー侵害だとかであれば分かりが易い。しかし、申立人側には代理人に弁護士が4名付いていて、その方たちも自己決定権という言葉は使っているけれども、それについて具体的に、どういう主張をされているのか明確でなかった。ヒアリングで私も直接質問をした。名誉毀損、プライバシー侵害、人格権としての自己決定権侵害と書いてあるが、具体的にどういう憲法上の権利の侵害だと主張されるのかと。それが明確だったら、判断しやすいのだが、そこのところを抽象的に人格権としての自己決定権侵害だと書かれてしまうと本件では具体的な意味がよく分からないので、もう少し分かりやすく説明していただけたらありがたいという趣旨だ。しかしその点は、申立人代理人の弁護士も今の法律解釈の状況を前提にして主張するわけだから、なかなかクリアに主張できないし、実際質問に対する回答も明確とはいえなかった。そうすると我々としても、「それは分かりましたが、どう受け止めるかは委員会で考える」ということになって、先ほどから説明しているような結論になった。
例えば、本人が考えたこともない嘘のことを放送してしまって、それが、そういうことを言ったという事実の摘示となって、その人の社会的評価が下がるということであれば、自己決定権について判断するまでもなくそれ自体で名誉毀損だということになる。紙谷委員から説明があったことだ。そういうこともありうるわけで、その場合、名誉毀損として人権侵害を認定すれば足りることで、そこで自己決定権侵害と言わなければいけないのだろうか、というような問題もあって、委員会として、独自に言ってもいいのかもしれないが、そんなに簡単な問題ではないというのが今回の委員会の総意だと思う。

(質問)
本件に関して言えば、テレビ的技法が行き過ぎたのか、間違ったのか。委員会はどう判断したのか。

(坂井委員長)
これは3人全員からお話したほうがいいと思う。まず私から話をすると、テレビ朝日はそういうつもりはなかったと言うが、ある方向性の番組を作りたいとは思っていて、その中にとても苦しい思いをしている事件の被害者遺族の方を出演させて、作りたい方向に当てはめようとして、歪めてしまったということだと思う。最近の別の事案でも申し上げたことだが、こういう事実報道と調査報道とバラエティが混じったような番組では、それはストレートニュースではないわけで、一定の方向を出したいというケースがある。例えば、この番組であれば、サファリック氏が一定の見解を出して、とてもつらい目にあった被害者遺族もそれに賛成したみたいなことにしたかったのかなと思う。ところが本人は、そうじゃないと最初に言っているし、最後までそうですねと言ってないのに、番組の方向性に合わせて使ってしまった。そういう意味では歪めた。歪めたということは具体的にどういうことだったかというと、事実がどうだったかというところを、ストレートにその方向で言ってしまうとまちがいなく問題が起きる。そこで、テレビ的技法を使ったのだろうが、結局、視聴者にはそのように受け取れるような番組を作ってしまったということだ。つまりそのようにして事実を歪めた。それはテレビ的技法の使い方として間違っていると私は思っている。一定の意見を言う、見解を言うのはテレビ局の番組制作上当然自由だけれども、そこに出演してもらった被害者遺族の考えを歪めて使ったり、事実を曲げたりしてはいけない。被害者遺族はこう言っているけれども、それについての意見はこうだと言えばいいのに、そうではなく、事実の部分を曲げたところが間違っている。事実にもっと謙虚に向き合い、事実をもっと謙虚に扱わなければいけない。そういう姿勢でないと、またこういう問題が起きるだろうと私は考えている。

(奥委員長代行)
この番組におけるテレビ的技法の使い方は正しかったか、どうかという話であれば正しくないということになる。正しくないということの内容は委員長が縷々説明したとおりだ。

(紙谷委員)
かなりミスリードさせるような形で使っている。つまり、どちらかというと、そのまま流しちゃうと、テレビ局のシナリオにはあまり乗らなくなってしまったところに、ピーという音を入れ、思い当たる節が、とかなんとかというふうなものを、肯定したのだというふうに解釈できるように、テロップで出したとか。まさに、わざわざ誤解させている。あるいは、誤解しても不思議ではないような道筋を作っていくような使い方というのはまずい。そういう意味では、委員長と同じように事実を歪めている。そっちに持っていったら困るなあという時に、別なほうに持っていっているという使い方ではまずいのではないかと。強調するとかということであれば、決して悪い使い方ではないのかもしれないが。だから、テレビ的技法を否定しているわけではない。ただ、正直に使ってくださいということだ。

(坂井委員長)
それが端的に表れているが新聞テレビ欄表記だ。「〇〇を知らないか?心当たりがある!遺体現場を見た姉証言」。実際そんなことは言っていないのに、こういうふうに書いてしまっている。それについてテレビ朝日は字数制限があるし、適切な要約だと言うけれど、そうだろうか。起草委員の表現に委員会の総意として賛同しているが、「制限の中で番組内容を的確に伝えるのがプロの放送人たる者の腕だろう」ということだ。事実を曲げないでちゃんと要約していただきたい。しかしやはり、ここでは、事実を曲げてしまっているとわたしは思っている。そのようなことを言ってないわけだから、サファリックも申立人も。

(質問)
自己決定権を名誉毀損の中で議論したということだが、テレビ欄の問題も含めて名誉毀損にならないと判断したのか。
「理解しがたい事態である」という厳しい言葉がある。遺族の気持ちを考慮していないこともあって「重大」が付いたとの説明があった。「倫理上重大な問題あり」だが、人権侵害にはならないという、その差はどこにあるのか。

(坂井委員長)
人権侵害になるかどうか、この場合は名誉毀損かプライバシー侵害かという話で、名誉毀損の問題なので、この放送によって申立人の社会的評価が低下したのかどうかいうことになる。この事案の場合は、そういう内容にはなっていない。それは人権侵害に関する判断で、分かりづらいかもしれないが、決定文の17ページから18ページに書いてあるとおりだ。大きく分けると、まず、一般の視聴者、申立人の活動を知らない人にとってどうかと。申立人にとっては不本意かもしれないが、犯罪被害者の遺族が犯行の動機を怨恨に求めること自体は特異なことではない。だから、そういうことを言っているとされた人の社会的評価が下がるかというとそうではなくて、そういうこともあるだろうという話だと思う。次に、「ごく近い人々」、申立人がグリーフケアを一生懸命やっていることを知っている人にとってどうかということ。これも考えなくてはいけないということで、これも議論した。けれども、わたしどもが最初のところで事実認定をしたように、この放送自体はそういう誤解が生じる可能性が強いかもしれないが、そこまで断定的には言っていない。放送を見て、申立人の活動を知っている人が「考えを変えちゃったんですか」と思ったとしても、それは、決定文で「誤解」と書いたがその人の理解。しかし、問題は見た人がどう考えたかではなくて、放送内容が社会的評価を低下させるような内容の事実摘示をしたのかということだ。そして放送ではそこまでは言っていない。放送を見た申立人を知る方からそういう批判があったことは否定しないし、申立人は大変だったと思う。大変だったけれども、それで放送によって社会的評価が低下したという話ではないだろうということで、法律論としては名誉毀損にならないという、そういう形の議論だ。
ただ、それと、先ほどからご質問があるように、事実を歪めたりするテレビ的技法の使い方は大変問題だし、こういう大事件の被害者遺族については十分な配慮をして扱わなければいけない。これもイロハだと思うけれども、そこについては不十分だったのではないかと。この点についての放送倫理上重大な問題ありだという判断は、別に人権侵害なしとすることと食い違うものではないと思う。
整理すると、人権侵害ではないというところは法律的な要件の問題として、それは満たしていないという判断。だからといって、放送倫理の問題としては全部OKだということでは決してなく、重大な問題があるという判断だ。決定文で「勧告」とした場合、「判断のグラデーション」を見ていただければ分かるが、「勧告」には「人権侵害」と「放送倫理上重大な問題あり」とが並べて書かかれている。あえて、どちらが重いという書き方はしていない。表記としては上に「人権侵害」と書いているが、「勧告」としては同じだという理解をしている。

(質問)
この件に限らず、BPOで取り上げられる事案の場合、過剰な演出と恣意的な編集というのは1つのキーワードとして出てくる。今回のケースでは「過剰な演出」はあったと判断したのか。

(坂井委員長)
結論としてはイエスだ。用語としてそう言ってないだけで、例えば19ページ、放送倫理に関する判断の(1)「最後のピース」の意味のところ。「そこでは規制音・ナレーション・テロップなどのテレビ的技法がふんだんに使われていた。伏せられた発言は伏せるべき正当な理由があったとは思えない。むしろ前後のナレーションによってその重要性が強調され、視聴者の想像を一定の方向に向けてかきたてる組立てになっていた。その結果、申立人がサファリックの見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる可能性が強い内容となったのである。その際、とりわけ『結論』的に流される『思い当たる節もあるという』というナレーションが視聴者に与えた影響は強かったと言えよう」。これを読んでいただければ、用語としてそう言ってないだけで、中身としてはそういうことが書いてある。そういう部分が何か所かある。より具体的に書いてあるということだ。そのあたりは、今のところもそうだが、事実認定のところでも書いてある。

(奥委員長代行)
決定文の中で本件番組におけるテレビ的技法は恣意的であり、過剰であったという表現はしていない。しかし、具体的内容に即して、その点を指摘している。

(質問)
過剰な演出があった、あるいは、恣意的な編集があったと、直接的に文言として明言されなかった、盛り込まれなかったのは、何か委員会として理由があるのか。

(坂井委員長)
わたしの理解だが、抽象的にそういうことを言うよりも、何がどういけなかったのかと書くほうが意味があると思う。この決定は、当然、局の方にも理解していただかなければならないが、恣意的な編集とか過剰な演出とだけいっても、それってなんですかという話になる。それよりは、ここがこういうふうにおかしいと具体的に書くことこそ我々の仕事だと思うので、そう書いている。あえて書かなかったということではなくて、結論として、そう言っているとより理解してもらえる内容だと思っている。

(奥委員長代行)
今、指摘を受けて、割とびっくりしたが、そんなことはない。あえて避けたなんていうことは全くない。

(質問)
決定を通知された時の申立人の反応は。

(坂井委員長)
基本的には人権侵害を認められなかったから不満だというような直接的なことはおっしゃっておられない。こういう判断が出たことについては、受け入れていただいていると思う。申立人代理人の方が最初におっしゃっていたのは、これは申し上げてもいいと思うが、「放送倫理上重大な問題あり」という結論が出たわけだが、今、皆さんからご質問受けたようなことは、放送を見ればある程度分かることでもあるわけで、それであれば、もっと手前の段階で、申立人と局との間で解決ができるべきではないかという趣旨のことをおっしゃっておられたと思う。あとは、委員会の決定について、テレビ朝日にしっかり理解をしていただいて、今後こういうことがないようにしてもらいたいという趣旨のことだったと思う。

(奥委員長代行)
申立人には、基本的にかなり納得していただいたという感じを持った。テレビ朝日は、非常に決まりきった言葉だろうが、真摯に受け止めて対応するということを言っていた。

(質問)
放送を見ていないが、決定文の「放送概要」を見る限り、申立人は特になにかこれといった証言はしていないように思えるが。

(坂井委員長)
わたしの記憶ではない。

(奥委員長代行)
それ以上のことはヒアリングでも何もなかった。

(紙谷委員)
まさに今の質問のような、「思わせぶり」がこの放送の特徴だった。何かあるに違いないと。

以上

2016年9月に視聴者から寄せられた意見

2016年9月に視聴者から寄せられた意見

岩手県に上陸した台風10号に関する報道系番組の取材のあり方への意見や、東京都の豊洲への市場移転問題を扱った情報番組への意見。暴行事件のあと不起訴になった二世俳優に対する報道のあり方への意見が多く寄せられた。

2016年9月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,046件で、先月と比較して233件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール80%、電話18%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性53%、女性46%、不明1%で、世代別では30歳代30%、40歳代25%、20歳代23%、50歳代13%、60歳以上7%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。9月の通知数は1,230件【43局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

台風シーズンの中、全国各地で多くの被害が出たが、岩手県に上陸した台風10号に関する報道系番組の取材のあり方への意見や、新都知事のもと、東京都で11月に予定されていた豊洲への市場移転問題を扱った情報番組への意見、また、暴行事件のあと不起訴になった二世俳優に対する報道のあり方への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は37件、CMについては31件あった。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は82件で、前月から13件減少した。
今月は、「表現・演出」が18件と最も多く、次に「性的表現」「いじめ・虐待」がそれぞれ12件、「暴力・殺人・残虐シーン」が8件と続いた。
「表現・演出」では、高校生が出演するクイズ番組の演出についての意見が目立った。
「性的表現」では、有名女優の娘であるタレントがアダルトビデオに出演するとの話題の取り上げ方について、複数の意見が寄せられた。
「いじめ・虐待」では、お笑いタレントが容姿を揶揄することで笑いを取ることについて、複数の番組に苦言が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 最近、意見でありながら誰の意見なのか、責任の所在を隠している放送が目立つ。ナレーションの中で、いい悪いという意見を述べたり、あるいは某代議士の意見として個人名を隠して述べたり、街の声などという、嘘か真実かも分からないような意見もある。いずれも視聴者を誘導する意図が感じられる。女子アナの中には、意見と事実の区別ができていない者も見受けられ、テレビ関係者のモラルが低下している。意見は事実報道に紛れ込ませないということをもう一度自覚してもらい、誰の意見であるかを明確に分かるよう、責任の所在を明確にして、ごまかさないようにすべきだと思う。

  • 二世俳優の報道について。この事件は事実関係がしっかりと解明されておらず、マスコミが断片的な事実のみを都合よく報道し、彼ならびに彼の母親である女優の名誉や尊厳を踏みにじるような声が目立つ。裁判にかけられて有罪と下されていない以上、彼らの人権を無視するような悪意ある報道は自粛されるべきではないだろうか。それを鑑みず、被害者感情に訴え、さも自分たちが正義であるかのように報じるマスコミやテレビ番組の出演者に憤りを感じる。

  • 二世俳優の報道について。性犯罪については、事実認定、有罪確定、刑の執行後の再犯率や、また当人がなぜ犯罪に至ったかを真剣に検証すべきで、報道により、単に「甘やかしてわがままに育てた親の責任の結果生じた犯罪」という安易なイメージを刷り込むべきではない。薬物犯罪に更生教育が必要なように、性犯罪にも然るべき更生措置などが必要であることを報道してほしい。

  • 私は岩泉町民だ。電気も徐々に復旧するなか、現場の惨状を自分たちの目で確認もせず、ニュースやワイドショーの情報だけで、行政や町長の対応などが批判されているようだ。やっと電話が繋がりかけたところで、町役場などに全国の人たちからの批判が殺到し、対応に追われている。岩泉全域にわたり道路は寸断され、未だに孤立して救助を待っている状態だ。ニュースで取り上げるのはいいが、復旧の妨げになるような無責任な行動は慎んでもらいたい。

  • 岩手県の台風による水害で、孤立した住民が道路に「SOS」の文字を書いて助けを求めていた。被災した方は救助ヘリだと思い、一生懸命に手を振って助けを求めていたが、それは報道ヘリで、しかもそれをニュース番組で放送していた。そもそも災害時は助けを呼ぶ声が聞こえなくなるので、報道ヘリは飛ばすべきではない。熊本地震の教訓が全く生かされていない気がする。

  • 台風10号での浸水被害や、岩手県の高齢者施設のニュースについて。施設の職員が台風の情報がよく分からず死亡させたかのように報道されている。私の住む沖縄は台風によく襲われるが、それでも毎回状況が違い、対応が難しい。岩手県に上陸したのが初めてなら、台風に対応する方法が分からなくて苦労したのではないだろうか。職員を責めるような報道は見ていてつらい。

  • 毎日時間帯を問わず、豊洲市場移転のニュースが放送されている。取り上げるのは構わないが、専門知識のないコメンテーターが「豊洲は危ない」とあおるだけの番組が多く見受けられる。出演している芸能人の多くは、個人的意見を言っているだけに過ぎないかも知れないが、その影響力はすさまじく大きいことを理解すべきだ。専門知識がない人を呼ばないのが一番いいが、専門家による学術に基づいたコメントは必要だ。その際、芸能人は黙っておくのがよい。居酒屋で交わすレベルの会話をテレビでされても、デマが独り歩きし風評被害を広げるだけだ。

  • マスコミは、豊洲の人たちが汚染エリアに住んでいると、全国の人に思われることで、どれだけ心労が溜まるのか分かっているのだろうか。豊洲市場の土壌問題で、科学的根拠に基づかない不安感をあおる報道が、住民の安心できる生活を奪っている。一般住民が報道による被害者だ。

  • 情報番組で、横浜の病院で起きた男性患者の変死事件を扱っている。各番組とも「点滴パックにどうやって異物を混入したのか」に注目し、考えられる様々な方法を具体的に説明している。模倣犯罪が起きたらどうするのか。真相が判明するまでは、警察の発表を淡々と伝えるだけで十分なのではないか。

【番組全般・その他】

  • サッカーのワールドカップ・アジア最終予選中継は、解説者が終始感情むき出しで、客観性に欠ける発言が多く見受けられ、全く解説になっていなかった。あまりに不快に感じるので音声を消して観戦したが、日本代表選手の活躍が期待され、国民の注目が高い中で、このような中継は非常に問題がある。彼に関しては様々な媒体で批判が多い。放送局は、新たに適任の解説者を起用するか、副音声に工夫をするなど対策を練ってほしい。

  • パラリンピック中継は、オリンピックと同じように、日本人選手のメダル獲得を中心に放送されている。せっかく放送する時間を増やしたのだから、健常者スポーツと同じような扱いをしないでほしい。大局的な視点に立ち、障害者に対する偏見を減らす放送、日本人選手の試合だけではなく、外国人選手にも同じようにスポットを当てた放送が望ましい。

  • 土曜日の昼に、往年の俳優を偲ぶ映画を2本放送していた。この時間帯に放送するには激しい性行為のシーンが何度もあり、特に強姦描写が生々しく、こんな内容を流していいのか疑問に感じた。現実に釈放された俳優の報道があったばかりだったが、女性を暴力や欲望で蹂躙、傷つけるような描写が、当然の如くしかも昼間に流れることに憤りを禁じ得ない。カットすることで作品のオリジナリティーを損ねると考えるのであれば、未成年などへの配慮を含め、深夜に放送すべきだ。

  • 二世タレントがAVに出演するという話題で、出演している男性タレントたちがヘラヘラと笑い話にしていた。この女性については、ホストクラブへの過剰な依存が原因とされているが、ホストが狙った女性を性風俗で働く状態まで追い込むことは、以前から何度も事件化しており、笑い話にできるような話ではない。また、「借金を自分の体で返すのは立派」というコメントもあったが、そういった考え方が借金による自殺や人身売買へと繋がっている現実があり、公の場で話すコメントとしてどうなのだろう。ヘラヘラ話していい話題なのかどうか、制作者には考えてほしい。

  • 散歩をする番組でよく見かけるのだが、タレントが道幅いっぱいに広がって歩いている。その時に一般の方が収録の邪魔になるのか、番組スタッフに車道に追いやられる。以前はベビーカーに子どもを乗せている母親が誘導されていた。そのせいで事故でも起きたらどうするつもりなのか。撮影する際に色々と許可を取っているのだろうが、一般人はタレントのために道を譲らなければならないという風潮は納得できない。

  • バラエティー番組で、「いくら儲けた」「年収いくら」や「家賃いくら」など、お金の話がよく出てくるが、平気でお金の話をする神経は理解できないし、拝金主義を助長するだけでしかない。子どもの貧困や生活保護受給者が増加するなど、経済的な問題が深刻な昨今、平気で金儲けを自慢したりするのは如何なものか、考えてほしい。

  • 一般家庭で作る里芋料理と名産地で作る里芋料理の差というコーナーで、千葉県八街市で作る里芋料理を紹介していた。私は40年以上八街市に住み、両親は里芋も作る農家だが、里芋の磯辺揚げや里芋ドリア、里芋餃子など見たことも聞いたこともない。八街市における里芋の当たり前の食べ方のような紹介の仕方は、誤解を招くのでやめてほしい。

  • 無名芸人がペンションに合宿しながら先輩芸人による「笑い」の授業を受け、悩みながらネタを生み出し、順位を決めていくという内容の番組は、バラエティー型ドキュメンタリーともいえそうなほど深い。一つの笑いを生み出すことがどれほど大変なことなのかを視聴者に教えてくれるし、課題を一つひとつ乗り越え成長していく姿に勇気がもらえる。面白くて泣けて前向きな気持ちになれる素晴らしい番組だと思う。

【ラジオ】

  • 通販コーナーで、担当者による商品宣伝にパーソナリティーが毎回のように加わる。そもそもリスナーはパーソナリティーが好きでその番組を聴いている。その人が商品をほめたり感心したりすれば、商品への信用は倍増する。その結果、冷静な判断ができなくなる恐れがある。通販コーナーの商品説明者とパーソナリティーの共演は避けることが望ましい。

【CM】

  • 軽自動車のCMで女性が車の運転をしているが、シートベルトをしているように見えない。シートベルトを装着しているのであれば、誤解を招かぬよう強調した方が良いのではないか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • お笑いタレントが学校に侵入し、女子生徒の制服等を窃盗した事件の判決についての報道で、被害生徒が警察から返還された制服を着用しながら、顔を隠すことなく事件の感想などを述べていた。被害生徒はタレント活動もしているようなので、本人同意の上での撮影なのだろうが、未成年でもあり、演出に違和感を覚えた。

  • 高校生が出演するクイズ番組で海外ロケをしていた。現場は世界的に有名な観光地で大変混雑していたにも関わらず、出演者とカメラマンが走り回っており、危険かつ迷惑な行為だと感じた。高校生にマナーを守らせることも大事なことではないか。

【「性的表現」に関する意見】

  • 有名女優の娘であるタレントがアダルトビデオに出演するとの話題を取り上げた際、コメンテーターとして出演していた海外在住の女子高生に、居住国でのアダルトビデオ事情について質問していた。他にもコメンテーターが出演している中、未成年にわざわざ聞くことではない。

  • BSで往年の名画を放送していたが、女性を暴力で蹂躙するようなシーンが多く、昼間の時間帯に放送するには性的描写が過激だと感じた。過激なシーンをカットして放送できないのであれば、未成年の視聴に配慮し、深夜帯に放送すべきだ。

  • 歌番組で少女デュオが「そのうちエッチもしてみたい」と歌っていたが、いかがなものか。今後の彼女たちの人生にも大きな影響を与えてしまうことにならないか心配だ。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • お笑いタレントが高校時代のエピソードを話す中で、同級生の女の子の容姿を外国人男性俳優に例えて揶揄していた。もしこの放送を本人が視聴していたらどんな気持ちになるのかと考えると胸が痛くなった。たとえ本人が視聴しなくても、同級生が見れば「あの人のことだ」と気付くだろう。容姿をからかうことはいじめにも繋がるのだから、青少年の視聴を念頭に、もっと表現に配慮した番組作りをしてほしい。

【「食べ物」に関する意見】

  • グルメ企画で、出演者が巨大な天ぷらなどを一口で食べたり、食べながら話をしたりしていた。かつて、大食いや早食いがはやっていたころ、子どもが窒息死する事故があった。少なくとも一口で食べさせないようにするか、注意を促す文言の表示が必要だと思う。