第152回 放送倫理検証委員会

第152回–2020年9月

解答権のないエキストラで欠員補充していたフジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

第152回放送倫理検証委員会は、8月末に退任した鈴木嘉一委員長代行に替わり新任の米倉律委員が出席して9月11日に開催された。冒頭、神田安積委員長が岸本葉子委員を委員長代行に指名した。
委員会が9月2日に行ったテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の原案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が合計18回にわたり行われたフジテレビのニュース番組は、前回の委員会で審議入りし、今回の委員会では当該局に対するヒアリングの準備状況が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、これまでの議論を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

1. テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表について報告

テレビ朝日が2019年3月15日に放送したニュース番組『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画について、委員会は主要なエピソードを構成する登場人物のすべてがディレクターの生徒や知人だったうえ、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いており、放送倫理違反があったと判断し、9月2日に当該局に対し、意見書の通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ朝日のニュースを視聴し、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などについて報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された骨子案を踏まえて担当委員が作成した意見書の原案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は修正案が示される予定である。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの追加報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成し、誤った世論調査結果のデータを作成していたとしている。
前回の委員会では、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者に対して行うヒアリングの準備状況などが報告された。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとし、7月及び8月開催の委員会では、その経過報告を踏まえ、討議を継続していた。
今回の委員会では、これまでの議論を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

以上

第284回放送と人権等権利に関する委員会

第284回 – 2020年9月

「大縄跳び禁止報道に対する申立て」委員会決定を通知・公表へ

議事の詳細

日時
2020年9月15日(火)午後3時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」事案、審理

今事案の対象となったのは、札幌テレビが2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性に関する報道で、男性が自宅で申請書類に記入をし、北海道庁で申請手続きをする様子等の場面を放送した。この放送に対して取材された男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示するなど、「一時金申請を希望していなかったのに、記者が申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求めて申立書を提出した。これに対して札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ可能となった取材であり、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
前委員会でのヒアリングを受けて、今委員会では担当委員から決定文の原案が示された。委員の間で意見交換が行なわれ、大きな方向性についての異論はなかったが、取材する側と取材される側の関係についてどう表現するかなどの意見が交わされた。これを受けて、次回委員会までに担当委員の間でさらに検討を加えることになった。

2.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案、審理

フジテレビは2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を放送した。放送は、近所の進学塾の生徒たちが大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えていることに、周辺住民から苦情が出て、行政が規制したことを紹介したもので、周辺住民のインタビューが流された。
そのインタビューに答えた女性が、突然マイクを向けられ一度も見たことがないのに誘導尋問され、勝手に放送に使われたとして、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており、「捏造には該当しない」などと反論している。
委員会では、担当委員から決定文の修正案が示され、委員の間で意見交換を行った。その結果、決定内容について大筋で合意され、細かな文言の修正について委員長一任とし、次回委員会までに通知公表を行うことが決まった。

3. 審理要請案件「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理入り決定

フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019 - 2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘は番組内の「過剰な演出」がきっかけで、SNS上に批判が殺到し「自らの命を絶った」と訴え、人権侵害があったと申し立てた。これに対してフジテレビは、社内調査を基に「人権侵害は認められない」と反論している。委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理入りの要件を満たしていると判断し、審理を始めることを決めた。(詳細;委員会トピックス9月15日参照)

4. その他

  • 今年度これまでの新規申立て状況を事務局から報告した。

以上

2020年9月15日

「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理入り決定

BPO放送人権委員会は、9月15日の第284回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

この事案は、フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019 - 2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘は番組内で取り上げられた同居人男性の帽子をはねるシーンをめぐってSNS上で「批判的なコメントが殺到」したことを苦に「自らの命を絶った」としたうえで、きっかけとなったその場面は「過剰な演出」によるものであったなどとする申立書を委員会に提出したもの。
申立人はフジテレビに対して、娘は番組で狂暴な女性のように描かれたことによって、「番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けた」ことによる人格権の侵害と、「全ての演出指示に従うなど言動を制限する」等の条項を含む「誓約書兼同意書」による支配関係のもと自己決定権が侵害されたとして、娘に対する人権侵害があったと訴えている。そして、フジテレビに謝罪と公平・公正な検証を求めている。
これに対してフジテレビは、番組について「予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていた」としたうえで、社内での検証結果に基づき「制作者が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されなかった」と主張した。また、「同意書兼誓約書」に関しては、出演契約であり労働契約のように「指揮命令関係に置くものではない」として、「自己決定権を奪われたとの主張には理由がない」としている。そして、インターネット配信から放送後に至るまで、番組スタッフが本人と連絡を取り、ケア等により、「精神状況が比較的安定していることを確認している」ことなどを挙げて、「番組内で狂暴な女性のように描かれ、視聴者がSNS上で誹謗中傷し、精神的苦痛を受け、人格権を侵害されたとの申立人の主張は認められない」と反論している。

15日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理入りの要件を満たしていると判断し、審理を始めることを決めた。委員会は今後、双方が提出する書面と、申立人と被申立人に対するヒアリングをもとに審理を行い、その結果を「勧告」または「見解」としてとりまとめ、申立人およびフジテレビに通知した後、記者会見を行い公表する。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2020年9月2日

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、9月2日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、テレビ朝日からは常務取締役(報道局担当)ら4人が出席した。
まず、神田委員長から、委員会決定について、本件特集には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その理由として、本件特集の主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当ディレクターの知人らだったうえ、ロケがあることを事前に知って取材の舞台となったスーパーに来店していたのであり、偶然に出会った利用客ではなかった。このことからすれば、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていたと説明した。
続いて升味委員長代行は、「本件特集の制作会社はテレビ朝日と密接な関係があり、その報道部門を支えてきたともいえるところから、仲間意識もあってできた番組を受け取るときの考査、検収の意識が薄くなっていたのかとも思われる。対応策に示されているように今後は十分注意してほしい」「今後の対策として、本来なら準備に手間も時間もかかる人間ドキュメントを報道番組内で毎週のように定期的に放送していくことの難しさを認めて、このような番組制作を再検討するという点は、他局を含め多くの関係者に参考になるだろう」と述べた。また高田委員は、「今回ほど引き返すチャンスがたくさんあった事案は滅多にないが、それを生かせなかったのは残念」「番組に関わった多くの人が疑問を感じていたことが判明しており、仮にそれらの疑問が全体で共有されていればブレーキがかかったのではないか」「同僚や上下関係の中では仲間を疑うことに躊躇しがちだが、疑うことは確認することと裏表なので怠ってはいけない」とコメントした。最後に神田委員長から、偶然を装って故意に登場させたという点において、過去の類似の事案と比較して重い点があるとの補足説明がなされた。
これに対してテレビ朝日は、「今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります」「視聴者の皆様の信頼を回復すべく、引き続き再発防止に努めてまいります」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社31人が出席した。
はじめに神田委員長が委員会の判断について、「本件特集は、偶然に街で出会った人から話を聞き、その暮らしや人生模様を描き出し、ごく平凡に見える人の思いがけないドラマやエピソードを視聴者に伝える報道番組内の特集である。しかし、主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当した契約ディレクターの生徒や知人だったうえ、本件特集のロケがあることを事前に知って舞台となったスーパーに来店していたのであり、いずれも偶然に出会った利用客ではなく、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない『客』を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた」と評価をして、放送倫理違反があったと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて升味委員長代行が、「視聴者にとっては面白かったり楽しかったりした前提が全部崩れてしまうということにもなるし、報道番組としての事実を伝えるという点でも非常に問題があった番組だったと思っている」と述べた。高田委員は、「制作の各段階で疑問を持ったスタッフはいたが、それが共有されなかった点がポイント。取材において疑うことは確認作業と同じであり、それをしていれば本件は起きなかったのではないか」と述べた。
記者からの質問は、事実関係の確認に関するもの以外、特になかった。

以上

2020年8月に視聴者から寄せられた意見

2020年8月に視聴者から寄せられた意見

連日の猛暑の中、感染拡大が続く新型コロナウイルスについて報じた番組への意見、取り上げ方への要望が多く寄せられた。

2020年8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,908件で、先月と比較して174件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話16%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性52%、女性26%で、世代別では40歳代28%、50歳代22%、30歳代20%、20歳代15%、60歳以上12%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は延べ1,168件【58局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、25件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

連日の猛暑の中、感染拡大が続く新型コロナウイルスについて報じた番組への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は75件、CMについては40件あった。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は90件で、前月から7件減少した。
今月は「表現・演出」が27件、「報道・情報」が15件、「低俗、モラル」が9件、「危険行為」と「いじめ・虐待」がそれぞれ7件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 新型コロナの報道について。連日、感染者の数をセンセーショナルに流すだけで、国民の不安と恐怖をあおっている。死亡者数、入院者数、重症者数、回復退院数、実際の陽性者数などには触れず、報道機関の役割を放棄している。パニックを誘発し、経済を萎縮させて破壊し、自殺者を増やし、暗い話題をそんなに増やしたいのかと恐怖を感じる。報道姿勢に一定の規制が必要ではないか。

  • 新型コロナの報道について、偏った意見ばかりで視聴者の不安をあおっている。私は飲食業だが、テレビの影響で客足が遠のき、死活問題になっている。不安要素の報道も必要だろうが、経済面も考えて多角的な報道をしてほしい。このままでは、閉店せざるを得ない店も数多く出てしまい、自殺者も増えるばかりだ。

  • 正直、連日の新型コロナ関連番組は飽き飽きしていて、気分が沈む。特段、新情報があるわけではなく、感染者が発表されるたびに速報まで打って、うんざりする。今後、コロナについては、特別な演出をせずに粛々と報道してもらいたい。一方、もっと取り上げるものがある。モーリシャスの油流失事故、中国の食品ロスに関する日本の状況、コロナ禍の中で起きた児童虐待など、細かい事案であっても、しっかりと取り上げたほうがいい。

【番組全般・その他】

  • 京都・渡月橋での暑さのリポートはあまりにもひど過ぎる。40℃を超える気温の中、ディレクターが明らかに熱中症のような様子で必死に中継リポートしていた。帽子も日傘もささず、さらにはマスクもしながら、熱中症リスクの高い格好だった。この際、スタジオで受けていたMCは、支離滅裂なことを言い始め、体調の悪そうなディレクターに、終始あざけるような態度で応対し、ディレクターがスタジオに返そうとしても、無理やり放送を続行するように伝えていた。ディレクターをリポートに行かせた局の判断は間違っている。残酷ショーを見たいのではない。情報番組なら、正しい情報を適切な方法で伝えるべきであり、今回の放送は、不適切どころか、非人道的ですらあった。

  • 新型コロナ報道について。最近では、「インフルエンザより軽い」という方向性を作ろうとしている。番組に出演している医者やコメンテーターが、「コロナは大したことない」という持論を展開していることが多く、「コロナは危険」という持論の人たちはテレビに出てこなくなった。インフルエンザと違い、ワクチン無し、特効薬無し、ウイルスの実体もはっきり分からないという点に触れず、希望的観測が述べられている。東日本大震災のメルトダウンの時と同じで、政府の方針に沿わない報道が少なくなっていくように感じる。

  • ワイドショーのあり方について、新型コロナを通じて知ることになった。国難とも言えるこの状況に対して、ショーとして報道するやり方、より扇情的に問題を取り上げ、ネットで情報を拾い、街頭インタビューの類型的なコメント。「後手、後手…」と政府批判。まともに政策の説明やコロナ対策の啓蒙や休業補償の話をせず、興味のある内容だけを取り上げ、それを切り取って放送。テレビ局の世論操作が一方的だ。日本人のモラルを高めようとするテレビ局はないのか。感染を防いで行こうとなぜ訴えないのか。無知なコメンテーターもやめさせてほしい。それだけでも誤った考えが減ると思う。

  • バラエティー番組のやらせに、厳しくなり過ぎてはいないか。普通のことを普通にするだけでは、当然ながら面白くならない。やらせなしのリアリティーと面白さを追求すれば、危険な企画が増える。一方で、ワイドショーや報道の意図的編集は気になる。専門家や政治家の言葉を切り取って、全く逆の意味になるよう編集された報道が散見される。楽しませることよりも、情報を伝えることに重きを置くべき番組は、発言者や情報源の意図通りにしっかりと報道する責務があるのではないか。いろいろな意見を報じるのは大切だが、本人が言っていないことを、あたかも言ったように報道するのは捏造だ。独自の情報や独自見解を発表するのはいいが、発言者の意図が歪曲されて伝わるように編集するのは、事実を捻じ曲げる意図があり、悪意に満ちている。面白くするためのやらせよりもよほど問題があると思う。

  • 勤務している会社のリスク管理部門から、「職員一人ひとりのコロナ対応」なる文書が社内にて掲示された。そこには体調管理、職場での感染防止、職場以外での生活、感染症が疑われる職員発生時の対応などが分かりやすく示されていた。そして最後に追記として、「世間の報道などに惑わされたり、一喜一憂せず、人に感染させない行動を率先垂範する事が重要」と加えられていた。最近、報道に対して、疑問や疑念、不満を感じ、またそう感じざるを得ない不祥事も起きているだけに、とても印象に残っている。そして強く感じたのは、こういった文書が出回ること自体、報道の信頼、信用、権威、地位といったものが著しく低下しているのではないかということだ。

  • 仲間と飲み会をする、趣味のサークルでカラオケをする、合唱をする、海でサーフィンをする、旅行に行く、コンサートに行く、親戚に会う。これらは感染者がいない場所なら何の問題もない活動、不要不急かもしれないが、人生を楽しむ、豊かにする活動だ。私たちは生命を維持することだけを目的に生きているわけではない。そして、これらの不要不急と思われることを生業としている人々にとって、仕事がなくなることは生命がなくなることにも等しい。新型コロナ報道の際に、これらの活動がまるで悪であるようなイメージを植え付けないでほしい。一度イメージが落ちてしまうと回復するのには相当なエネルギーが必要になる。人類の敵はコロナであり、人とのコミュニケーションが悪いわけではない。これ以上イメージを悪くしないでほしい。もう十分に周知されている。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • プロ野球中継を見たら大勢の解説者が次の打者の打撃予想をするクイズ形式だった。解説がほとんどなく、ヒットなら何ポイント、フォアボールなら何ポイントと獲得ポイントを競うもので、子どもや視聴者に賭博のやり方を教えるようなものだ。スポーツ中継でこのようなやり方は野球ファンとしては納得できない。

  • ボートレースのPR、実況中継、開催日程などが紹介される番組が夜の8時台に放送されている。誰に見てもらうために放送しているのか。児童、生徒、未成年への影響は考慮していなくていいのか。

【「要望・提言」に関する意見】

  • 8月は原爆投下日、終戦記念日があるが、年々戦争に関連した番組が減っているように感じる。戦争を体験した人が減っている今、そういう人たちを取材して戦争体験を映像や音声で残してほしい。戦争に関する番組やドラマを放送し、青少年に戦争の悲惨さ、残酷さを伝えていってほしい。

【「危険行為」に関する意見】

  • バラエティー番組でお笑い芸人に生のパイナップルを皮ごと食べさせていた。汗だくで涙ぐみながら食べて、後で嘔吐していた。全く笑えない映像で食道や内臓を傷つけるのではないかと心配になった。子どもが真似をしたり、いじめの手段に使われたらどうするのか。

【「喫煙・飲酒」に関する意見】

  • 最近目立つのが番組内での飲酒行為だ。出演者が赤い顔で酒を飲みながら番組を進めている。芸人の食レポにおいても酒を要求する場面がある。青少年への影響をどう考えているのか。

第38号

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見

2020年9月2日 放送局:テレビ朝日

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する特集を放送したが、この特集に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。委員会は、同年11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
日本民間放送連盟とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」とし、「取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」と定めている。また、民放連の放送基準では、前文で「正確で迅速な報道」を求め、第32条では報道の責任として「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と掲げている。本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた。
したがって、委員会は、本件特集には放送倫理違反があったと判断した。

2020年9月2日 第38号委員会決定

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目 次

2020年9月2日 決定の通知と公表

通知は、2020年9月2日午後1時30分から千代田放送会館7階会館会議室で行われ、午後2時30分から同2階ホールで公表の記者会見が行われた。記者会見には、21社31人が出席した。
詳細はこちら。

2020年12月11日【委員会決定に対するテレビ朝日の対応と取り組み】

委員会決定 第38号に対して、テレビ朝日から対応と取り組みをまとめた報告書が2020年11月27日付で提出され、委員会はこれを了承した。

テレビ朝日の対応

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目 次

  • 1.委員会決定前の対応
  • 2.委員会決定時の放送対応
  • 3.委員会決定内容の周知徹底
  • 4.放送番組審議会への報告
  • 5.委員会決定後の取り組み
  • 6.再発防止に向けて
  • 7.おわりに