第239回放送と人権等権利に関する委員会

第239回 – 2016年9月

事件報道に対する地方公務員からの申立て事案のヒアリングと審理、世田谷一家殺害事件特番事案の通知・公表の報告、STAP細胞報道事案の審理、都知事関連報道事案の審理…など

事件報道に対する地方公務員からの申立て事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人の2局から詳しく事情を聞いた。また世田谷一家殺害事件特番事案の通知・公表について事務局から報告し、STAP細胞報道事案、都知事関連報道事案を審理した。

議事の詳細

日時
2016年9月13日(火)午後3時~10時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案のヒアリングと審理

2.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案のヒアリングと審理

対象となったのはテレビ熊本と熊本県民テレビが2015年11月19日にそれぞれニュースで扱った地方公務員による準強制わいせつ容疑での逮捕に関する放送。申立人は、放送は事実と異なる内容であり、初期報道における「極悪人のような報道内容」などにより深刻な人権侵害を受けたとして、謝罪文の提出など放送局の対応を求めた。
今回の委員会では、申立人と被申立人であるテレビ熊本と熊本県民テレビの出席を求め、それぞれ個別にヒアリングを行った。テレビ熊本からは取締役報道編成制作局長ら2人が、熊本県民テレビからは取締役報道局長ら3人が出席した。
この中で申立人は、まず事案全般について「事実と違う内容、過剰な報道、フェイスブックの写真を複数無断で使用された点が大きな問題だ」と指摘すると同時に、対象の2局は「公務員に対する偏向報道が顕著だ」と主張した。特に申立人は、フェイスブックの写真使用について、「個人アカウントを特定され、自分への誹謗中傷や、友人、家族にも被害が及ぶ可能性があり、かなり危険だ」と述べた。
その上で、テレビ熊本について、自宅前での記者リポートを取り上げ「自宅の映像まで放送したことは、いかがなものかと思う」と述べた。また、不起訴後にもかかわらず「公務員の不祥事」をまとめた年末企画の中で扱ったことを問題と指摘した。
これに対して、テレビ熊本は「現職の公務員による準強制わいせつ事案であり、社会的関心も高く、警察取材を基に事実のみを伝えた」と主張した。また、記者リポートは、「現場を特定するもので、交通事故の現場等と照らし合わせても正当だ」と説明するとともに、年末企画は「匿名とするなど人権に配慮した」と主張した。
一方、熊本県民テレビに対して申立人は、放送の中で「卑劣な行為」と出演者がコメントしたことについて、「人気キャスターの発言は影響力が強く、有罪だと思わせるものだった」と主張した。これに対して熊本県民テレビは、「警察以外に対して取材する努力は大切だが、性犯罪の密室性、被害者のプライバシー等の問題もあり、一報の段階では警察発表に基づいて報道することに一定の合理性があったと思う」と主張した。また、出演者のコメントについて「行為について言ったもので、不適切とは考えていない」と述べた。
委員会はこの後、論点に即してヒアリング内容について意見交換を行い、10月初めに起草委員が起草準備のための会合を開くことを決めた。

3.「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案に関する「委員会決定」の通知・公表が9月12日に行われた。委員会では、その概要を事務局が報告し、当該局のテレビ朝日が放送した決定を伝えるニュースの同録DVDを視聴した。

4.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2,000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今月の委員会では、9月6日に行われた第2回起草委員会を経て提出された「委員会決定」案について審理した。次回委員会では、さらにこの決定案の検討を続けることになった。

5.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日に放送した情報番組『Mr.サンデー』で、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体が夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃を支払っていた問題を取り上げた。番組では、雅美氏を取材するため早朝に取材クルーを団体と会社の所在地である舛添氏の自宅兼事務所に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は1メートル位の至近距離から執拗な撮影をされて衝撃を受け、これがトラウマになって登校のため家を出る際に恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集され、視聴者に雅美氏を誤解させる放送だったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した「経緯と見解」書面において、2人の子供を取材・撮影する意図は全くなく、執拗な撮影行為など一切行っておらず、雅美氏の発言も家賃に関する質問から雅美氏の回答を一連の流れとしてノーカットで放送したもので、作為的編集の事実は一切ないとしている。さらに政治資金の流れの鍵を握るキーパーソンで使い道について説明責任がある雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
前回の委員会で審理入りが決まったのを受けてフジテレビから申立書に対する答弁書が提出され、今月の委員会ではこれまでの双方の主張をまとめた資料を事務局が提出した。

6.その他

  • 次回委員会は10月18日に開かれる。

以上

第107回 放送倫理検証委員会

第107回–2016年9月

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』を審議 次回委員会までに意見書の原案を作成
選挙報道について議論など

第107回放送倫理検証委員会は、9月9日に開催された。
出演者の姿を本人の了解を得ずに映像処理で消したのは問題で、制作体制などについて検証の必要があるとして審議入りしたTBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』について、8月に実施した制作担当者へのヒアリングの結果が担当委員から報告され、意見交換を行った。
参議院選挙に関連して放送局からいくつかの事案の報告があり、また東京都知事選挙で不公平な放送がされたという視聴者意見が数多く寄せられたことなどから、選挙報道のあり方に関する議論が行われたが、次回委員会で引き続き対応を検討していくことになった。
委員会の10周年にちなんだ記念のシンポジウムについては、パネリスト候補への出演交渉の現状報告があり、人選や開催日時についてさらに詰めていくことを確認した。

議事の詳細

日時
2016年9月9日(金)午後5時25分~8時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 出演者の映像を本人の了解なしに消去したTBSテレビの『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』を審議

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』(6月19日放送)の珍種目のひとつ「双子見極めダービー」で、実際は最後まで回答した出演者を、映像を加工して途中でレースから脱落したことにして放送した事案。7月の委員会で、バラエティー番組であっても、出演者の姿を本人の了解を得ずに映像処理で消したのは問題であり、そのような編集が行われた番組の制作体制などについて検証の必要があるとして、この番組を審議の対象とすることを決め、8月には、担当委員による当該番組のプロデューサー、ディレクターら制作スタッフ9人に対するヒアリングが実施された。
委員会では、担当委員からヒアリングの概要が報告され、経緯の確認が行われた。その上で、なぜこのような出演者への配慮に欠けた編集がなされ、放送に至ったのかについて、「スタッフ間での情報共有の不足や認識の落差がなぜ生じたか」「分業化が進む番組制作でチェック体制は十分だったか」「現場で疑問の声が出なかったのは何故か」などの点についても意見が交換された。そして、今回の議論をふまえ、担当委員が次回委員会までに意見書の原案を作成することになった。

2. 選挙報道について議論

参議院選挙、東京都知事選挙について放送局から何件かの事案の報告が寄せられたことや、東京都知事選挙で特定の3候補に報道が集中したのは不公平ではないか、との視聴者意見が数多く寄せられたことなどから、選挙報道全般のあり方について議論が行われた。「選挙報道が萎縮しているのではないか」といった指摘がなされている現状を踏まえ、委員会として選挙報道における公正・公平の意味について考え方を示すべきではないか、などとの意見も出され、次回委員会で引き続き議論を継続することになった。

3. 委員会発足10周年の記念シンポジウムについて

10周年記念のシンポジウムについて、司会やパネリスト候補への出演交渉の現状が報告された。その結果、来年3月頃の年度内開催に時期を遅らせ、会場の選定、日時やパネリストの確定をさらに進めていくことが確認された。

以上

青少年とテレビ調査

青少年とテレビ調査

青少年委員会では2015年度から2017年度にかけて「青少年とテレビ調査:青少年のテレビに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討」をテーマに調査研究を行っています。

調査内容

青少年とテレビ調査:青少年のテレビに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討

【予備調査】

2015年10月30日に立命館守山高校でおよそ300人の高校生を対象に、バラエティー番組の一部を視聴し意見を尋ねるとともに、普段のテレビやラジオ、新聞、インターネット利用等のメディア接触状況、メディア・リテラシー等に関するアンケート調査を実施しました。
なお、2016年10月8日~9日に静岡大学浜松キャンパスで行われた第13回子ども学会議で、この調査を基に「高校生のメディア・リテラシーに関する探索的研究―バラエティー番組に対する感想をめぐって―」を発表し、優秀ポスター賞を受賞しました。
以下が、その報告書です。

立命館守山高校 アンケート調査リポート(2016年9月15日)

◆全文PDF◆pdf

◆目次◆

  • 1. 調査の目的
  • 2. 調査の方法と対象
  • 3. 結果と考察
  • 4. まとめと今後の課題

2016年度 第61号

「世田谷一家殺害事件特番への申立て」に関する委員会決定

2016年9月12日 放送局:テレビ朝日

勧告:放送倫理上重大な問題あり
テレビ朝日は2014年12月28日に『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』を3時間に及ぶ年末特番として放送した。今なお未解決の世田谷一家殺害事件を、FBIの元捜査官が犯人像をプロファイリングするという内容で、その見立ては、被害者の1人の実姉である申立人が否定していた一家に強い怨恨を持つ顔見知りによる犯行というものだった。
申立人が元捜査官と面談した内容が十数分間に編集されて放送されたが、申立人は、規制音・ナレーション・テロップなどを駆使したテレビ的技法による過剰な演出と恣意的な編集によって、申立人があたかも元捜査官の見立てに賛同したかのようにみられる内容で、申立人の名誉、自己決定権等の人権侵害があったと委員会に申し立てた。
委員会は、「勧告」として、本件放送は人権侵害があったとまでは言えないが、番組内容の告知としてきわめて不適切である新聞テレビ欄の表記とともに、テレビ朝日は、取材対象者である申立人に対する公正さと適切な配慮を著しく欠いていたと言わざるを得ず、放送倫理上重大な問題があったと判断した。

【決定の概要】

テレビ朝日は2014年12月28日(日)に『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』を3時間に及ぶ年末特番として放送した(以下、「本件放送」という)。2000年12月30日深夜に発生し今なお未解決の世田谷一家殺害事件を取り上げ、FBIの元捜査官が犯人像をプロファイリングするという内容だった。その見立ては、被害者の1人の実姉である申立人が否定していた一家に強い怨恨を持つ顔見知りによる犯行というものだった。
本件放送では、申立人が元捜査官と面談した内容が十数分間に編集されて放送された(以下、「本件面談場面」という)。申立人は、本件面談場面は、規制音・ナレーション・テロップなどを駆使したテレビ的技法による過剰な演出と恣意的な編集によって、申立人があたかも元捜査官の見立てに賛同したかのようにみられる内容で、申立人の名誉、自己決定権等の人権侵害があったと委員会に申し立てた。これに対し、テレビ朝日は、過剰な演出と恣意的な編集を否定し、本件面談場面は申立人が元捜査官の見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる内容ではないと反論した。
委員会は本件面談場面の流れを検討し、申立人が元捜査官の見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる可能性が強い内容だったと判断した。新聞テレビ欄の番組告知の表記についても思わせぶりな伏字や本件放送内で語られていない文言を使ったもので、番組内容の告知としてきわめて不適切なものだったと判断した。
しかし、本件面談場面は、申立人が元捜査官の見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる可能性が強い内容だったとはいえ、申立人が自身の考えを変えたとまで視聴者に明確に認識されるものではなかったこと、さらにたとえ元捜査官の見立てに賛同したと受け取られたとしても、そのことが申立人の社会的評価の低下にただちにつながるとは言えないことなどから、本件放送は申立人の人権侵害には当たらないと委員会は判断した。
申立人は、本件放送後、本件面談場面を見て元捜査官の見立てに申立人があっさり賛同したものと受け取った申立人にごく近い人々から厳しい批判や反発を受け、精神的苦痛を味わったと主張する。だが、これらの批判や反発は申立人にごく近い人々からの反応や意見であって、申立人が元捜査官の見立てに賛同するという事実がただちに社会的評価の低下をもたらすとは言えないことを考えると、申立人の人権侵害があったとまでは言えないと委員会は判断した。
次に放送倫理上の問題について判断した。テレビ朝日は申立人に取材を依頼した時点で、申立人が事件をめぐる怨恨を否定し、悲しみからの再生をテーマにさまざまな活動を行っていることをよく知っていたという。また、番組に出演する際には、衝撃的な事件の被害者遺族ということへの配慮が必要なことも十分認識していたという。にもかかわらず、申立人の考えや生き方について誤解を招きかねないかたちで本件放送を制作したことになる。番組内容の告知としてきわめて不適切である新聞テレビ欄の表記とともに、「過度の演出や視聴者・聴取者に誤解を与える表現手法(中略)の濫用は避ける」、「取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る」とした「日本民間放送連盟 報道指針」に照らして、本件放送は申立人に対する公正さと適切な配慮を著しく欠き、放送倫理上重大な問題があったと委員会は判断する。
委員会は、テレビ朝日に対して本決定を真摯に受け止め、その趣旨を放送するとともに、今後番組制作のうえで放送倫理の順守をさらに徹底することを勧告する。

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2016年9月12日 第61号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第61号

申立人
入江 杏 氏
被申立人
株式会社テレビ朝日
苦情の対象となった番組
『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』
放送日時
2014年12月28日(日)午後6時~8時54分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • はじめに――本事案の核心
  • 1.本件面談場面の流れ
  • 2.テレビ的技法について
    • (1) なぜ、問題にするか
    • (2) 二つの伏せられた発言
    • (3) ナレーション
    • (4) テロップ
  • 3.視聴者はどう受け取ったか
  • 4.新聞テレビ欄の表記
  • 5.人権侵害に関する判断
    • (1) 申立人の主張
    • (2) 人権侵害に関する結論
  • 6.放送倫理に関する判断
    • (1)「最後のピース」の意味
    • (2) 被害者遺族への配慮
    • (3) 放送倫理に関する結論

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2016年9月12日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2016年9月12日午後1時からBPO会議室で行われ、このあと午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

2016年12月20日 委員会決定に対するテレビ朝日の対応と取り組み

テレビ朝日から対応と取り組みをまとめた報告書が12月9日付で提出され、委員会はこれを了承した。

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2016年8月に視聴者から寄せられた意見

2016年8月に視聴者から寄せられた意見

リオデジャネイロで開かれたオリンピックに関連するさまざまな番組への意見。人気アイドルグループの解散問題や俳優の女性暴行事件を報じた情報系の番組に関するもののほか、東京都知事選に関する番組への意見も多く寄せられた。

2016年8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,813件で、先月と比較して82件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール75%、電話23%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性60%、女性39%、不明1%で、世代別では40歳代28%、30歳代28%、20歳代17%、50歳代17%、60歳以上7%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は900件【47局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、19件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

リオデジャネイロで開かれたオリンピックに関連する様々な番組への意見が多かった。また、人気アイドルグループの解散問題や俳優の女性暴行事件を報じた情報系の番組に関するもののほか、先月に引き続き、東京都知事選に関する番組、事件を起こした芸人を復帰させたバラエティー番組、殺人の描写が強烈なドラマへの意見も多く寄せられた。
ラジオに関する意見は49件、CMについては58件あった。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は95件で、前月から7件減少した。
今月は、「性的表現」が24件と最も多く、次に「表現・演出」が22件、「暴力・殺人・残虐シーン」が11件と続いた。
「性的表現」では、ラジオ番組でのパーソナリティーの発言が卑猥だとの意見が多数寄せられた。
「表現・演出」では、怪奇現象を取り上げた番組に関する意見が目立った。
「暴力・殺人・残虐シーン」では、先月に引き続き、ドラマでの残虐的な表現に意見が集中した。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 都知事選について。選挙後の報道は、新知事を推薦しなかった自民党との対立を面白おかしく煽っているように見える。選挙中の相手に対する批判は当たり前のことであり、選挙民は相手への攻撃も選択の一判断材料としている。候補者も攻撃を当然のこととして受け止めている。当落決定後は、相手の健闘を称えエールを送る。民主主義における選挙はかくあるべきだと考えている。しかし、今のマスコミは色々な映像を引っ張り出して対立を煽っているようにしか見えない。新聞離れ、テレビ離れは、単にインターネットの普及が大きな原因ではないことを関係者は認識すべきだ。

  • オリンピックで盛り上がるのは大いに結構だが、生活に必要な番組まで休む必要があるのだろうか。しかも、ニュース番組もオリンピックの話題が中心となり、スポーツニュース化している。直前まで放送していた競技の結果を番組冒頭で伝えることや、後の番組がオリンピックハイライトなのに、ニュース番組の中でまで長々と報じることが必要か疑問だ。サブチャンネルもあるのだから、有効活用して放送の仕方を工夫してほしい。

  • オリンピックで日本選手の活躍は大変うれしいことだ。しかし、その活躍ぶりをどのテレビ局もほぼ同じ時間帯で、しかも、ほぼ同じ内容で、朝から晩から夜中まで報道することに違和感を覚える。その間に本来報道されるべきことが、おろそかになっているのではないか。

  • オリンピックの中継について、「このあと」などの表記には十分に気を配ってもらいたい。「まもなく選手登場」といってから3時間以上出てこなかった。「このあと」や「まもなく」など言葉は曖昧ではあるが、何らかの具体的な規定を設けないと制作側もエスカレートしてしまい、テレビとしての信用にもかかわるのではないか。

  • オリンピックの放送で、深夜早朝の解説がやかましい。時差の関係もあるが、日本が深夜早朝の場合は、解説の音量や喋るスピードを落として、ゴルフ程度の音量・スピードで話すべきだ。大音量で早口の解説がスポーツの品位を落としている。昼間ならともかく、時間帯を考えて上品に放送してほしい。

  • 貧困特集で女子高校生が取り上げられていた。パソコンが買えないから、キーボードだけを買ってもらって練習しているとして、部屋の様子が映された。部屋にはたくさんのコミックがあり、物があふれていた。貧困とは、食べ物も満足に食べられず、ほしい物を我慢して堪えていることをイメージしていたが、彼女の部屋の様子からは、そのようなイメージは全く感じなかった。本当の貧困なのか疑わしい内容だった。

  • 1月の不倫問題を起こした女性タレントに対する報道を始め、8月のアイドルグループ解散報道に至るまで、スポーツ新聞の不確かな一方的な情報を垂れ流しで報道する姿勢について、とても不愉快な感情を抱いている。嫌なら見なければよいということだろうが、芸能人とはいえ、このような個人攻撃の内容を放送しているのかと思うと、いじめ社会を助長しているにすぎないのではないかと考える。このような姿勢が許されるならば、日本は成熟した社会といえるのか疑問を抱く。せめて一方的な情報だけでなく複数の視点も提示して、視聴者に投げかけるようなものにしてほしい。

  • 情報系の番組で、連日大きく二世俳優の事件を扱っているが、番組コメンテーターのなかには、同業者として、母親である女優の今後を心配するような発言ばかりしている人がいる。犯罪であるということを忘れたのか、容疑者に対する怒りや被害者への同情は全く聞かれない。芸能人というのは一般人とは違い、マスコミを利用して意見を発信できる立場にある。一般社会での厳しさに比較して、芸能界は甘いと言われても仕方がない。

【番組全般・その他】

  • 暴行容疑で逮捕された芸人が不起訴処分になったとはいえ、未成年への性暴力の加害者だ。性暴力被害を軽く扱い、笑いに変えることはやめてほしい。彼が立ち直り、社会生活を取り戻すことは大切だが、それは公共の電波に乗せたバラエティー番組においてでは決してない。被害者と同じように、性的被害を受けた女性達が、テレビの前に座っている可能性も考えてもらいたい。

  • 元お笑いグループメンバーのコント番組があった。内容がとにかくひどい。下ネタが多すぎる。すでに平成であり、昭和ではない。人をバカにすることや、コンプレックスを誇張させることは危険だ。これを子ども達が見ている時間帯に放送する意味がわからない。放送局は時代が違うことを自覚せよ。制作サイドだけで盛り上がっているものを放送すべきではない。

  • 午後のニュースショーに、女性キャスターと男性俳優に加え女性アナウンサーが出ている。番組を進行する側であるのに、華やかなロングヘアの彼女は、お嬢様然として席に座っているだけで、司会らしい役割を果たしていない。初めて見た時はゲストの芸能人だと思ったほどだ。キャスターのすっきりとした容姿やテキパキした司会ぶりに比べて、あまりにも場違いな感じがする。お飾りではなくアナウンサーなのだから、そのことを自覚して番組に臨むべきだ。

  • 民放局のオリンピックテーマ曲に、人気俳優の楽曲が使用されている。局が決めたことに文句を言うつもりはない。問題は曲のかけ方だ。競技中以外ほとんど歌が流れている。スタジオに戻って専門家が解説をする時にも流れているため、話が聞き取りにくい。金メダルを獲った選手へのインタビューの間もバックで流れていた。その局を見ると、延々と彼の歌を聞くことになるのだ。これではオリンピックを見ているのか、歌を聞いているのかわからない。

  • 元野球選手が、オリンピックの卓球で勝利してガッツポーズをとった男子選手について「あんなガッツポーズはダメ。手は肩より上げちゃダメ。礼に始まり礼に終わる、ですから」とコメントしていた。選手にしてみれば、大舞台での勝利で、嬉しくて思わずとった行動だろう。テレビでわざわざ注意するほどのことではない。野球選手の昔の映像をみつけたので見てみると、肩から上に手を上げてヘルメットまで放り投げていた。この行動のどこに相手投手への敬意があるのか。自分のことを棚に上げて他人にものを言うなと言いたい。

  • 夜のニュース番組で、オリンピック卓球女子団体チームを招いてのインタビューがあった。「誰が最も活躍したか」という質問は、明らかに特定の選手をさげすむために用意した質問だ。人気選手に対する悪意がにじみ出ていて不愉快な気持ちになった。

  • 朝のニュース番組で、東京オリンピックのメリットは国威高揚のためと報じていた。今回のオリンピックでは日本人のメダルばかりに注目した報道が多く、違和感を持った。世界各国のスポーツ選手が、出場のために努力し、体と精神を鍛えているところに意味があるのに、日本人以外の選手の感動的なシーンがほとんど見られず不気味だった。それが、報道する側がオリンピックの意味を、国威高揚のためと認識しているのだとしたら、もっと恐ろしい。その理念自体を捻じ曲げ、精神を汚すものではないか。

  • ゆとり世代をテーマにした番組では、昭和世代に対するアンケートを基に解説していた。ゆとり世代は「仕事の連絡はLINEで済ませる」「日本語を正しく使うことができない」「子どもに対するしつけができない」など、あらゆる描写が極端で、まるで「ゆとり世代に生まれた人間が全員常識はずれ」のように描かれており、ゆとり年代に生まれた者として非常に不快だった。世代間の考え方や文化の違いは少なからずあるものと理解しているが、特定の世代を一括りにして、ネガティブな部分を誇張した内容は如何なものか。

  • 異常犯罪の捜査を扱うドラマは、口に飴玉を詰められた少女の遺体、下半身を土の中に埋められたまま上半身だけ地上に出された遺体など、異常な変死体の露骨な描写が放送される。犯罪捜査そのものよりも、猟奇犯罪の変死体への興味や、自らが殺人者になる可能性があるという刑事の心理が主題で、まるで異常犯罪そのものを助長するかのように見える。

  • 朝のワイドショーの天気予報のコーナーで、気象予報士がかき氷を紹介して食べていた。夏の風物詩という演出かもしれないが、それでなくても天気予報は時間が短い。かき氷の説明より天気の解説に時間を使うべきだ。

【ラジオ】

  • 土曜夜の番組で、メインパーソナリティーの高圧的な空気感が実に不快だ。毎回猥褻なセリフを、ゲストに無理やり言わせるという公開セクハラが行われている。芸能界の上下関係を番組に持ち込んでいるようで、これはリスナーには関係ないことだ。

  • オリンピック期間中、民放ラジオ統一番組を決められた時間に放送するやり方は、競馬中継の途中で番組が挿入されることや、ワイド番組での流れを切るような弊害がある。杓子定規に放送せず、各放送局の実情に合わせた放送をすべきだと思う。

【CM】

  • スマホ用アプリゲームのCMは、全国版ではなくローカルなのかは不明だが、宮城県や東北の県の方言で「けっぱれ」という方言を使っている。これは、その地域によっては聞いたことはあるが、実生活では、現在あまり使われてない方言だそうだ。方言は、個人が想像するよりも大変デリケートなものだ。使われ方次第では田舎者扱いをされたり、誤解されたりしてしまう。このCMは方言がメインではなく、ゲームの内容をメインに作られたものなのかもしれないが、東北の方々がこの方言を使うだろうという思い込みで作っているのであれば、改善してほしい。

青少年に関する意見

【「性的表現」に関する意見】

  • 学校が夏休み中の昼間にも関わらず、性器の話や下ネタばかりの卑猥な内容のラジオ番組だった。子どもと一緒に聴いていたが、すぐにスイッチを切った。このような番組を放送しないでほしい。

  • 性的暴行事件を犯したタレントの母親が開いた記者会見で、そのタレントの性的嗜好などを聞いているリポーターがいたが、無神経ではないか。私は自分の子どもと一緒に視聴していたのだが、質問内容の意味を問われて答えに詰まってしまった。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 怪奇現象を取り上げ、科学的根拠もないのに「霊のいたずら」などと決めつけるような演出になっていた。このような番組は教育上、倫理上問題があるのではないか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 猟奇殺人を取り上げるドラマがあるが、過激なシーンが多すぎるのではないか。子どもたちへの悪影響を懸念している。放送するなら時間帯に配慮すべきだ。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 埼玉県東松山市での少年殺害事件の報道が詳細過ぎるのではないか。この事件は神奈川県川崎市での中学生殺害事件を模倣しているようにも思える。詳細な報道をすることで影響を受け、また、同じような事件が起きてしまうのではないかと懸念している。加害者の供述やしたことなどを報道するよりも、今後、このような事件を起こさせないために、大人たちがどうすべきかを考えさせるような内容にしてほしい。

【低俗・モラルに反するとの意見】

  • お笑いタレントがオリンピックメダリストの物まねをして床に寝転がった際に、別のお笑いタレントが顔を踏みつけていた。以前に別の番組でアイドルが踏みつけられた際に、このような行為への非難が多くあったと記憶している。人の顔を踏むのは面白いことなのだろうか。誰も注意する人がいないのかと驚くばかりだ。悪いことではないと勘違いして、子どもが真似しないか心配だ。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 少女が巨大な滑り台に挑戦するという企画があった。少女自身の希望による企画だったようだが、実際に滑り台に挑戦する段階では、嫌がっていた。それにも関わらず、大人たちが少女を抱え上げ、無理やり滑らせており、虐待のように感じた。少女が精神的に傷ついていないか心配だ。