2016年度 第64号

「事件報道に対する地方公務員からの申立て」
(熊本県民テレビ)に関する委員会決定

2017年3月10日 放送局:熊本県民テレビ(KKT)

見解:放送倫理上問題あり(少数意見付記)
熊本県民テレビは2015年11月19日、『ストレイトニュース』や情報番組『テレビタミン』内のニュース等で、地方公務員が準強制わいせつ容疑で逮捕されたニュースを放送した。
この放送について申立人は事実と異なる内容で、容疑内容にないことまで容疑を認めているような印象を与え、人権侵害を受けたと訴えるとともに、フェイスブックの写真を無断で使用されるなど権利の侵害を受けたと主張し、委員会に申立書を提出した。
これに対し熊本県民テレビは、「社会的に重大な事案」と位置付けたうえで「正当な方法によって得た取材結果に基づき放送した」として人権侵害はなかったと反論した。
委員会は2017年3月10日に「委員会決定」を通知・公表し、「見解」として放送倫理上問題ありと判断した。
なお、本決定には結論を異にする3つの少数意見が付記された。

【決定の概要】

本件は、熊本県民テレビが、2015年11月19日午前11時40分以降、ニュース番組の中で、地方公務員である申立人が、酒に酔って抗拒不能の状態にあった女性の裸の写真を撮影したという容疑で逮捕されたことを報じた3つのニュースと、翌日以降、逮捕後の勤務先の対応や、不起訴処分となったことなどを報じたニュースに関する事案である。本決定では、最も詳しく報道された、逮捕当日の午後6時15分からのニュースを中心に検討した。
申立人は、この放送について、意識がもうろうとしている知人の女性を自宅に連れ込んだとか、同意なく女性の服を脱がせたなど、申立人が認めたこともない容疑まで申立人が事実を認めているなどとしたり、「卑劣な犯行」などとコメントして、申立人が悪質な犯行を行ったと印象づける放送を行って申立人の名誉を毀損し、また、申立人の職場の映像を放送したり、申立人がフェイスブックに掲載した写真も無断で放送して申立人のプライバシー等も侵害したとして、委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、申立人について、(1)わいせつ目的をもって意識がもうろうとしていた女性を同意のないまま自宅に連れ込み、(2)意識を失い横になっていた女性の服を同意なく脱がせ、(3)意識を失い抗拒不能の状態にある女性の裸の写真を撮った、(4)((1)ないし(3)の)事実を認めている。さらに、(5)警察は、薬物などによって女性が意識を失った可能性も含めて今後調べる方針である、ということを伝えるものである。熊本県民テレビは、本件放送は警察当局の説明に沿ったものであり、申立人に対する名誉毀損は成立しない、また、地方公務員であった申立人についてフェイスブックの写真や職場の映像を放送することは社会の関心に応えるものであって問題はないと主張する。
放送が示した事実のうち、逮捕の直接の容疑となった(3)の事実と、(5)の事実以外に、(1)、(2)、(4)については真実であることの証明はできていないが、警察当局の説明に基づいてこれらの点を真実と信じて放送したことについて、相当性が認められ、名誉毀損が成立するとはいえない。
しかし、容疑に対する申立人の認否などに関する警察当局の説明は概括的で明確とは言いがたい部分があり、逮捕直後で、関係者への追加取材もできていない段階であったにもかかわらず、本件放送は、警察の明確とは言いがたい説明に依拠して、直接の逮捕容疑となっていない事実についてまで真実であるとの印象を与えるものであった。この点で、本件放送は申立人の名誉への配慮が十分ではなく、正確性に疑いのある放送を行う結果となったものであることから、放送倫理上問題がある。
放送のコメントについては論評として不適切なものとはいえず、フェイスブックの写真の使用や職場の映像の放送については、本件放送の公共性・公益性に鑑みて問題はないと考える。
委員会は、熊本県民テレビに対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために人権と放送倫理にいっそう配慮するよう要望する。

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2017年3月10日 第64号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第64号

申立人
熊本市在住 地方公務員
被申立人
株式会社熊本県民テレビ(KKT)
苦情の対象となった番組
『ストレイトニュース』『テレビタミン』
放送日時
  • 2015年11月19日(木)
    • 午前11時40分~11時49分『ストレイトニュース』
    • 午後4時45分~ 7時00分『テレビタミン』
    • 午後4時50分~「先出しニュース」
    • 午後6時15分~「テレビタニュース」
  • 2015年11月20日(金)午後4時45分~『テレビタミン』
  • 2015年12月 9日(水)午後4時45分~『テレビタミン』

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 第1. はじめに
  • 第2. 名誉毀損の主張について
  • 第3. 肖像権、プライバシー侵害の有無について
  • 第4. 放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2017年3月10日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2017年3月10日午後2時からBPO第1会議室で行われ、このあと午後3時15分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

2017年6月20日 委員会決定に対する熊本県民テレビの対応と取り組み

委員会決定第64号に対して、熊本県民テレビから対応と取り組みをまとめた報告書が6月9日付で提出され、委員会はこれを了承した。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2016年度 第63号

「事件報道に対する地方公務員からの申立て」
(テレビ熊本)に関する委員会決定

2017年3月10日 放送局:テレビ熊本(TKU)

見解:放送倫理上問題あり(少数意見付記)
テレビ熊本は2015年11月19日、『みんなのニュース』等で、地方公務員が準強制わいせつ容疑で逮捕されたニュースを放送した。
この放送について申立人は事実と異なる内容で、容疑内容にないことまで容疑を認めているような印象を与え人権侵害を受けたと訴えるとともに、フェイスブックの写真を無断で使用されるなど権利の侵害があったと主張して、委員会に申立書を提出した。
これに対しテレビ熊本は、「社会的に重大な事案」と位置付けたうえで、「取材を重ね事実のみを報道した」として人権侵害はなかったと反論した。
委員会は2017年3月10日に「委員会決定」を通知・公表し、「見解」として放送倫理上問題ありと判断した。
なお、本決定には結論を異にする3つの少数意見が付記された。

【決定の概要】

本件は、テレビ熊本が、2015年11月19日午後4時50分以降、ニュース番組の中で、地方公務員である申立人が、酒に酔って抗拒不能の状態にあった女性の裸の写真を撮影したという容疑で同日午前に逮捕されたことを報じた4つのニュースと、翌日以降、逮捕後の勤務先の対応や不起訴処分となったことなどを報じたニュースに関する事案である。本決定では、最も詳しく報道された逮捕当日午後6時15分からのニュースを中心に検討した。
申立人は、この放送について、意識がもうろうとしている知人の女性を自宅に連れ込んだとか、同意なく女性の服を脱がせたなど、申立人が認めたこともない容疑まで申立人が事実を認めているなどとして、申立人が悪質な犯行を行ったと印象づける放送を行って申立人の名誉を毀損し、また、申立人の自宅建物の映像をむやみに放送し、フェイスブックに掲載した写真も無断で放送して申立人のプライバシー等も侵害したとして、委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、申立人について、(1)わいせつ目的をもって意識がもうろうとしていた女性を同意のないまま自宅に連れ込み、(2)意識を失い横になっていた女性の服を同意なく脱がせ、(3)意識を失い抗拒不能の状態にある女性の裸の写真を撮った、(4)((1)ないし(3)の)事実を認めている。さらに、(5)薬物などによって女性が意識を失った疑いがあり、警察はこの点も申立人を追及する方針である、ということを伝えるものである。テレビ熊本は、本件放送は警察の広報担当の副署長の説明に沿ったものであり、申立人に対する名誉毀損は成立しない、また、地方公務員であった申立人についてフェイスブックの写真や自宅建物を放送することは社会の関心に応えるものであって問題はないと主張する。
放送が示した事実のうち、逮捕の直接の容疑となった(3)の事実以外の(1)、(2)、(4)、(5)について真実であることの証明はできていないが、副署長の説明に基づいてこれらの点を真実と信じて放送したことについて、相当性が認められ、名誉毀損が成立するとはいえない。
しかし、容疑に対する申立人の認否などに関する副署長の説明は概括的で明確とは言いがたい部分があり、逮捕直後で、関係者への追加取材もできていない段階であったにもかかわらず、本件放送は、警察の明確とは言いがたい説明に依拠して、直接の逮捕容疑となっていない事実についてまで真実であるとの印象を与えるものであった。また、副署長の説明を超えて、単なる一般的可能性にとどまらず、申立人が薬物等を混入させた疑いがあるという印象を与えた。これらの点で、本件放送は申立人の名誉への配慮が十分ではなく、正確性に疑いのある放送を行う結果となったものであることから、放送倫理上問題がある。
フェイスブックの写真の使用やボカシの入った自宅建物の放送については、本件放送の公共性・公益性に鑑みて問題はないと考える。
委員会は、テレビ熊本に対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために人権と放送倫理にいっそう配慮するよう要望する。

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2017年3月10日 第63号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第63号

申立人
熊本市在住 地方公務員
被申立人
株式会社テレビ熊本(TKU)
苦情の対象となった番組
『みんなのニュース』『TKUニュース』
放送日時
  • 2015年11月19日(木)
    • 午後4時50分~5時00分 『みんなのニュース』
    • 午後5時54分~6時15分 『みんなのニュース』(全国)
    • 午後6時15分~6時58分 『みんなのニュース』
    • 午後8時54分~8時57分 『TKUニュース』
  • 11月20日(金) 午後6時15分~『みんなのニュース』
  • 11月27日(金)午後6時15分~『みんなのニュース』
  • 12月 9日(水)午後4時50分~『みんなのニュース』
  • 12月16日(水)午後6時15分~『みんなのニュース』
    (年末企画「くまもとこの一年」)

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 第1.はじめに
  • 第2.名誉毀損の主張について
  • 第3.肖像権、プライバシー侵害の有無について
  • 第4.放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2017年3月10日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2017年3月10日午後1時からBPO第1会議室で行われ、このあと午後3時15分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
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2017年6月20日 委員会決定に対するテレビ熊本の対応と取り組み

委員会決定第63号に対して、テレビ熊本から対応と取り組みをまとめた報告書が6月9日付で提出され、委員会はこれを了承した。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2016年度 第62号

「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定

2017年2月10日 放送局:日本放送協会(NHK)

勧告:人権侵害(補足意見、少数意見付記)
NHKは2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
この放送について小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は2017年2月10日に「委員会決定」を通知・公表し、「勧告」として名誉毀損の人権侵害が認められると判断した。
なお、本決定には補足意見と、2つの少数意見が付記された。

【決定の概要】

NHK(日本放送協会)は2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
この放送に対し小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は、申立てを受けて審理し決定に至った。委員会決定の概要は以下の通りである。
STAP研究に関する事実関係をめぐっては見解の対立があるが、これについて委員会が立ち入った判断を行うことはできない。委員会の判断対象は本件放送による人権侵害及びこれらに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係もこれらの判断に必要な範囲のものに限定される。
本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる。
こうした判断に至った主な原因は、本件放送には場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があったことである。そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となってしまっている。
申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送によるプライバシー侵害の主張については、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言えるが、メールの内容があいさつや論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くないことなどから、プライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない。
本件放送が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材については、取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった。
その他、若山氏と申立人との間での取扱いの違いが公平性を欠くのではないか、ナレーションや演出が申立人に不正があることを殊更に強調するものとなっているのではないか、未公表の実験ノートの公表は許されないのではないか等の点については、いずれも、人権侵害または放送倫理上の問題があったとまでは言えない。
本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。

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2017年2月10日 第62号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第62号

申立人
小保方 晴子 氏
被申立人
日本放送協会(NHK)
苦情の対象となった番組
『NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層』
放送日時
2014年7月27日(日)午後9時~9時49分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.委員会の判断の視点について
  • 2.ES細胞混入疑惑に関する名誉毀損の成否について
  • 3.申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送について
  • 4.取材方法について
  • 5.その他の放送倫理上の問題について

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2017年2月10日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、被申立人に対しては2月10日午後1時からBPO会議室で行われ申立人へはBPO専務理事ら2人が東京都内の申立人指定の場所に出向いて、申立人本人と代理人弁護士に対して、被申立人への通知と同時刻に通知した。午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を行い、委員会決定を公表した。28社51人が取材、テレビカメラはNHKと在京民放5局の代表カメラの2台が入った。
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2017年5月9日 NHK 「STAP細胞報道に関する勧告を受けて」

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2017年7月3日 報告に対する放送人権委員会の「意見」

放送人権委員会は、上記のNHKの報告に対して「意見」を述べた。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2016年度 第61号

「世田谷一家殺害事件特番への申立て」に関する委員会決定

2016年9月12日 放送局:テレビ朝日

勧告:放送倫理上重大な問題あり
テレビ朝日は2014年12月28日に『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』を3時間に及ぶ年末特番として放送した。今なお未解決の世田谷一家殺害事件を、FBIの元捜査官が犯人像をプロファイリングするという内容で、その見立ては、被害者の1人の実姉である申立人が否定していた一家に強い怨恨を持つ顔見知りによる犯行というものだった。
申立人が元捜査官と面談した内容が十数分間に編集されて放送されたが、申立人は、規制音・ナレーション・テロップなどを駆使したテレビ的技法による過剰な演出と恣意的な編集によって、申立人があたかも元捜査官の見立てに賛同したかのようにみられる内容で、申立人の名誉、自己決定権等の人権侵害があったと委員会に申し立てた。
委員会は、「勧告」として、本件放送は人権侵害があったとまでは言えないが、番組内容の告知としてきわめて不適切である新聞テレビ欄の表記とともに、テレビ朝日は、取材対象者である申立人に対する公正さと適切な配慮を著しく欠いていたと言わざるを得ず、放送倫理上重大な問題があったと判断した。

【決定の概要】

テレビ朝日は2014年12月28日(日)に『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』を3時間に及ぶ年末特番として放送した(以下、「本件放送」という)。2000年12月30日深夜に発生し今なお未解決の世田谷一家殺害事件を取り上げ、FBIの元捜査官が犯人像をプロファイリングするという内容だった。その見立ては、被害者の1人の実姉である申立人が否定していた一家に強い怨恨を持つ顔見知りによる犯行というものだった。
本件放送では、申立人が元捜査官と面談した内容が十数分間に編集されて放送された(以下、「本件面談場面」という)。申立人は、本件面談場面は、規制音・ナレーション・テロップなどを駆使したテレビ的技法による過剰な演出と恣意的な編集によって、申立人があたかも元捜査官の見立てに賛同したかのようにみられる内容で、申立人の名誉、自己決定権等の人権侵害があったと委員会に申し立てた。これに対し、テレビ朝日は、過剰な演出と恣意的な編集を否定し、本件面談場面は申立人が元捜査官の見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる内容ではないと反論した。
委員会は本件面談場面の流れを検討し、申立人が元捜査官の見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる可能性が強い内容だったと判断した。新聞テレビ欄の番組告知の表記についても思わせぶりな伏字や本件放送内で語られていない文言を使ったもので、番組内容の告知としてきわめて不適切なものだったと判断した。
しかし、本件面談場面は、申立人が元捜査官の見立てに賛同したかのように視聴者に受け取られる可能性が強い内容だったとはいえ、申立人が自身の考えを変えたとまで視聴者に明確に認識されるものではなかったこと、さらにたとえ元捜査官の見立てに賛同したと受け取られたとしても、そのことが申立人の社会的評価の低下にただちにつながるとは言えないことなどから、本件放送は申立人の人権侵害には当たらないと委員会は判断した。
申立人は、本件放送後、本件面談場面を見て元捜査官の見立てに申立人があっさり賛同したものと受け取った申立人にごく近い人々から厳しい批判や反発を受け、精神的苦痛を味わったと主張する。だが、これらの批判や反発は申立人にごく近い人々からの反応や意見であって、申立人が元捜査官の見立てに賛同するという事実がただちに社会的評価の低下をもたらすとは言えないことを考えると、申立人の人権侵害があったとまでは言えないと委員会は判断した。
次に放送倫理上の問題について判断した。テレビ朝日は申立人に取材を依頼した時点で、申立人が事件をめぐる怨恨を否定し、悲しみからの再生をテーマにさまざまな活動を行っていることをよく知っていたという。また、番組に出演する際には、衝撃的な事件の被害者遺族ということへの配慮が必要なことも十分認識していたという。にもかかわらず、申立人の考えや生き方について誤解を招きかねないかたちで本件放送を制作したことになる。番組内容の告知としてきわめて不適切である新聞テレビ欄の表記とともに、「過度の演出や視聴者・聴取者に誤解を与える表現手法(中略)の濫用は避ける」、「取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る」とした「日本民間放送連盟 報道指針」に照らして、本件放送は申立人に対する公正さと適切な配慮を著しく欠き、放送倫理上重大な問題があったと委員会は判断する。
委員会は、テレビ朝日に対して本決定を真摯に受け止め、その趣旨を放送するとともに、今後番組制作のうえで放送倫理の順守をさらに徹底することを勧告する。

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2016年9月12日 第61号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第61号

申立人
入江 杏 氏
被申立人
株式会社テレビ朝日
苦情の対象となった番組
『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』
放送日時
2014年12月28日(日)午後6時~8時54分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • はじめに――本事案の核心
  • 1.本件面談場面の流れ
  • 2.テレビ的技法について
    • (1) なぜ、問題にするか
    • (2) 二つの伏せられた発言
    • (3) ナレーション
    • (4) テロップ
  • 3.視聴者はどう受け取ったか
  • 4.新聞テレビ欄の表記
  • 5.人権侵害に関する判断
    • (1) 申立人の主張
    • (2) 人権侵害に関する結論
  • 6.放送倫理に関する判断
    • (1)「最後のピース」の意味
    • (2) 被害者遺族への配慮
    • (3) 放送倫理に関する結論

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2016年9月12日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2016年9月12日午後1時からBPO会議室で行われ、このあと午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
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2016年12月20日 委員会決定に対するテレビ朝日の対応と取り組み

テレビ朝日から対応と取り組みをまとめた報告書が12月9日付で提出され、委員会はこれを了承した。

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2016年度 第60号

「自転車事故企画に対する申立て」に関する委員会決定

2016年5月16日 放送局:フジテレビ

見解:放送倫理上問題あり (補足意見付記)
フジテレビは2015年2月17日放送のバラエティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』の企画コーナーで自転車事故を取り上げ、自転車事故で母親を亡くした男性のインタビューに続けて、自転車事故を起こした息子とその家族の顛末を描いたドラマを放送した。ドラマでは、この家族が高額の賠償金を払ったが、この事故でけがを負った小学生が実は当たり屋だったという結末だった。
この放送について、インタビュー取材に応じた男性が、取材の際にドラマで当たり屋を扱うことの説明がなかったことは取材方法として著しく不適切であり、自分も当たり屋であるかのような誤解を視聴者に与えかねず名誉を侵害されたなどとして委員会に申し立てていた。
委員会は、「見解」として、名誉毀損等の人権侵害は認められないが、フジテレビは申立人の立場と心情に配慮せず、本件放送の大部分を占めるドラマが当たり屋の事件を扱ったものであるという申立人にとって肝心な点を説明しておらず、本件放送には放送倫理上の問題があると判断した。

【決定の概要】

フジテレビは、バラエティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』(2015年2月17日放送)の「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナーで自転車事故の問題を取り上げ、自転車事故被害者の遺族である男性のインタビューに続けて、自転車事故を起こした息子とその家族の顛末を描いたドラマを放送した。ドラマは、この家族が高額の賠償金を支払ったが、この事故でけがを負った小学生が実は当たり屋だったという結末であった。
この放送について、インタビュー取材に応じた男性が、ドラマで当たり屋を扱うことの説明が取材の際になかったことは取材方法として著しく不適切であり、自分も当たり屋であるかのような誤解を視聴者に与えかねず名誉を侵害されたなどとして委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には、申立人に対する名誉毀損等の人権侵害は認められないが、放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、番組の構成上、申立人のインタビュー場面を含む情報部分とドラマ部分とに区別され、本件ドラマの当たり屋の事件と申立人が母親を亡くした事故は関係がないことから、一般視聴者に対して、申立人が当たり屋であるかのような誤解を与えるものとはいえない。したがって、申立人の社会的評価の低下を招くことはないから、本件放送による申立人の名誉毀損は認められない。また、本件放送で申立人に対する否定的な評価やコメントがなされているものではなく、申立人が出演した情報部分とドラマ部分とは区別されており、その関連性は間接的なものにとどまるから、本件放送による申立人の名誉感情侵害が認められるとまではいえない。
次に、放送倫理上の問題について検討すると、本件ドラマは、当たり屋の事件をとりあげた事例であって、被害者を装っている者を描くにすぎないことになるから、自転車事故が被害者に深刻な結果をもたらすという側面をなんら描いていない。フジテレビは、申立人が被害者遺族の立場から自転車事故の悲惨さを訴えたいことを認識していながら、申立人の立場と心情に配慮せず、本件放送の大部分を占める本件ドラマが当たり屋の事件を扱ったものであるという申立人にとって肝心な点を説明しなかった。この点において、フジテレビは、申立人に対して番組の趣旨や取材意図を十分に説明したとは言えず、本件放送には放送倫理上の問題がある。
以上から、委員会は、フジテレビに対し、本決定の趣旨を放送するとともに、社内及び番組の制作会社にその情報を周知し、再発防止のために放送倫理の順守にいっそう配慮するよう要望する。

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2016年5月16日 第60号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第60号

申立人
A
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』
企画コーナー「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」
放送日時
2015年2月17日(火) 午後7時~8時54分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.申立人の主張と本決定における取り扱い
  • 2.人権侵害に関する判断
  • 3.放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送内容の概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2016年5月16日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2016年5月16日午後1時からBPO会議室で行われ、このあと午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

2016年8月16日 委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み

フジテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が8月9日付で提出され、委員会はこれを了承した。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの