放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第117回

第117回–2017年7月

ネット情報を誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』『ノンストップ!』を討議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、特集を取材・制作した制作会社に追加の質問項目を送り、再度ヒアリングへの協力を求めたところ、その回答が文書で寄せられた。担当委員から今回の回答のポイントについて説明があり、委員会が行うべき検証や調査の具体案など、今後の審議の進め方について引き続き議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から意見書原案が提出された。意見交換の結果、担当委員が修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。
真偽を確認せずに誤ったネット情報を放送した、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』および同局の情報番組『ノンストップ!』について討議が行われた。その結果、ふたつの番組を審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、「委員長コメント」を出し注意喚起を行うことになった。

議事の詳細

日時
2017年7月14日(金)午後5時00分~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、TOKYO MXを通じて、特集を取材・制作した制作会社に質問事項を添えた文書でヒアリングへの協力を求めている。最初の質問事項に対しては文書で回答があったので、これについていくつかの追加の質問項目を送り、再度ヒアリングへの協力を求めたが、その回答が文書で寄せられた。担当委員からは今回の回答のポイントについて説明があり、あわせて今後どのような検証や調査を行うかについても具体案に沿って意見交換が行われた。そして、それらの検証や調査も踏まえ、担当委員が次回委員会までに意見書の原案を作成することになった。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』で1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、委員会は4月、審議入りを決めた。
TBSテレビには、5月に関係者ヒアリングを実施した後、取材ディレクターがホームレス男性に依頼した具体的な内容や状況、別の男性への取材内容や流れを確認する追加質問を行っていたが、その回答について報告があった。その上で、担当委員から、同番組の制作体制や放送にいたった経緯、問題の原因・背景を踏まえた意見書の原案が提出された。委員会では、意見書の構成やどのような点にポイントを置くかなどについて意見交換が行われ、それらの議論をもとに担当委員が意見書の修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。

3. ネット情報を誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』『ノンストップ!』を討議

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。
また、同局の情報番組『ノンストップ!』は、6月6日、人気アイス特集のコーナーで「ガリガリ君」を紹介した。この中で季節限定商品の1つとして、「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像を真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
ふたつの事案に対し、委員会では「ほかの局の番組制作現場でも同じ状況があるのではないか」、「根が深い問題で今後も同様の事案が頻発するおそれがある」などの意見があがった。また、「番組制作のためのリサーチがネットからスタートする現状では、リサーチする人がどういうネットリテラシーを持つべきかを改めて考える必要がある」、「2011年に公表した『若きテレビ制作者への手紙』の中の『便利の落とし穴にはまらないで』で、番組制作のためのネット利用についての注意喚起をしたにもかかわらず、指摘したことがそのまま起きている」という指摘もあった。
討議の結果、ふたつの番組は、放送倫理違反があると認められるものの、間違った内容それ自体は大きな問題とはいえず、当該放送局によって適切なお詫びや再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、「委員長コメント」を出し注意喚起を行うことになった。

以上