放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第123回

第123回–2018年2月

毎日放送『教えてもらう前と後』皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した特集を討議など

2月8日に、当該局への通知と公表の記者会見を行ったフジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
皇后陛下の肖像写真の撮影時期や撮影のエピソードに誤りがあったとして訂正放送を行った毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』について、1月の番組と訂正放送を改めて視聴し、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、当該放送局に、誤った情報の"ネタ元"とされる資料の提供を求めるとともに追加質問を行い、次回の委員会でさらに討議することとなった。
1月25日、沖縄地区の各放送局と委員会との意見交換会が、那覇市内で開催された。

議事の詳細

日時
2018年2月9日(金)午後5時00分~6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. フジテレビ『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見の通知・公表

フジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見(委員会決定第28号)の当該放送局への通知と公表の記者会見が、2月8日に実施された。2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として別人の映像を放送したのに続いて、翌8月にも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、刑事事件の容疑者に関する最もセンシティブな情報に関して、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして、10月の委員会で審議入りしていた。
委員会は、事実に反する報道で誤った情報を視聴者に伝えた2つの特集は、放送倫理基本綱領や日本民間放送連盟放送基準に抵触し、放送倫理違反があったと判断した。そのうえで、2つの特集の制作過程においては、何度も誤りに気づいて修正するチャンスがあったにもかかわらず見逃されてしまったことを指摘、放送現場に、改めて刑事事件報道の原則を再確認するとともに、番組スタッフの連携の力をさらに高めるよう求めた。
委員会では、委員会決定を伝えたフジテレビのニュースと当該番組を視聴し、委員長や担当委員から、通知の際のやりとりや記者会見の内容などが報告された。

2. 毎日放送『教えてもらう前と後』皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した特集を討議

毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』は、1月9日に放送した皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪を行った。
当該放送局の報告書によると、番組では、写真は陛下が皇太子時代の昭和32年に撮影され、「女ともだち」と題して「宮内庁職員組合文化祭美術展」に出品されたなどと紹介したが、実際に撮影されたのはご成婚後の昭和38年で、写真撮影と美術展出品をめぐるエピソードも根拠がないものだった。放送中に視聴者から指摘があり、事実確認を行った結果、誤りが判明したという。
毎日放送は宮内庁に謝罪するとともに、総務省近畿総合通信局に報告し、1月23日の同番組で訂正放送を行った。
委員会では、「写真に添えられたキャプションを見れば時系列的に矛盾していることがわかったはず」「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」「訂正放送の内容や番組ホームページに掲載された謝罪文では、視聴者に何が問題だったのか全く伝わっていないのではないか」など、厳しい意見が相次いだ。
委員会では、訂正放送のあり方や制作の経緯について詳しく調べる必要があるとして、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報の"ネタ元"とされる書籍など関連資料の提出を求め、次回委員会で引き続き討議することになった。

【委員の主な意見】

  • 写真撮影の時期と経緯が正しいものであることを確認した上で作られなければならない番組であるのに、肝腎の写真の入手がスタジオ収録の前日までできないまま制作が進められていたというのには驚く。
  • 誤った撮影時期を伝えたという点では単純なミスだが、そのミスをもとに、ご婚約前に承諾を得て撮影したとか、「女ともだち」というタイトルで美術展に出品したというフィクションを放送してコメントを加えている。
  • 写真の誤使用よりも、伝えた事実に誤りがあったことが問題だ。
  • エピソードが間違っていたことについて、間違った箇所を明示しての訂正やお詫びがないのは問題だ。

3. 沖縄地区の各放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会開催

1月25日(木)沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、那覇市内で開催された。委員会が沖縄地区の放送局と意見交換会を開催したのは今回が初めてである。意見交換会には琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ、ラジオ沖縄、FM沖縄、NHK沖縄放送局の6局から24人が出席した。委員会からは川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員が出席、BPOの濱田純一理事長が同席した。なお意見交換会は、双方が率直な意見を述べることにより、相互の理解を深めるという趣旨から、非公開で行われている。
意見交換会の前半は、昨年12月14日に委員会が公表した東京メトロポリタンテレビジョンの『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見書について、後半は、基地問題に関連してインターネット空間で出回っている沖縄ヘイトやデマ情報に地元の放送局がどう向き合っているのかをテーマに活発に意見が交わされた。
意見交換会では、『ニュース女子』の意見書ついて、まず川端委員長から委員会決定のポイントの解説が行われたあと質疑に移った。特に、委員会が独自に行った現地調査について各局から質問や意見が相次ぎ、調査に赴いた担当委員を中心に詳しく説明するとともに活発な議論が展開された。また、米軍ヘリから小学校や保育園に部品が落下した問題をめぐり、学校や教育委員会に誹謗中傷の電話が相次いだことについて、各局とも複雑な県民感情を慮って放送するか否か迷ったり悩んだりしていることが具体的に報告され、参加した委員からは沖縄の放送現場の葛藤が聞けて非常に有意義な意見交換になったと感想が述べられた。この他、高速道路で起きた玉突き事故に絡んで、米軍兵士が日本人を救助したのに沖縄のマスコミはこの美談を無視して報じないと一部全国紙が非難した件について、当時のニュース映像を視聴した。「継続取材をしているが、そんな事実は確認できない」「県警も否定している」など現場の報告や意見が相次いだ。予定の時間をオーバーして活発な意見交換会となった。

以上