第206回–2025年5月
TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議
第206回放送倫理検証委員会は、5月9日に千代田放送会館で開催された。
委員会が4月24日に公表した、委員会決定第47号 毎日放送『ゼニガメ』で事実と異なる内容を放送した「密着コーナー」に関する意見について、担当委員から当日の様子などが報告された。
TBSテレビは、2024年10月19日に放送したバラエティー番組『熱狂マニアさん!』2時間スペシャルで、インテリア小売業大手「ニトリ」を特集した。放送後、視聴者からBPOに「番組の全編でニトリの商品を紹介していた。価格や商品名も入っていた。番組の提供にも入り、本編からCMに移ってもニトリのCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会は、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして2025年1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提示され議論した。
日本テレビは、2025年3月24日に放送したバラエティー番組『月曜から夜ふかし』の街頭インタビューのコーナーで中国出身の女性の声を紹介したが、放送後この女性から実際に話した内容とは違うという指摘を受けた。委員会で議論した結果、このインタビューは女性が話した内容とは全く異なる文脈へと意図的に編集され、他国の文化に対する尊重を著しく欠いていた疑いがあり、制作過程に放送倫理上の問題がなかったかどうかを詳しく検証する必要があるとして4月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした途中経過が報告された。
4月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
議事の詳細
- 日時
- 2025年5月9日(金)午後4時~午後6時40分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1. 毎日放送『ゼニガメ』で事実と異なる内容を放送した「密着コーナー」に関する意見の通知・公表について報告
2. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議
3. 日本テレビ『月曜から夜ふかし』について審議
4. 4月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告 - 出席者
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小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、小柳委員、水谷委員、毛利委員、米倉委員
1. 毎日放送『ゼニガメ』で事実と異なる内容を放送した「密着コーナー」に関する意見の通知・公表について報告
毎日放送の情報バラエティー番組『ゼニガメ』は、2023年11月29日、2024年5月8日、同年7月17日の3放送回において、家屋清掃と出張買取を一度に行う業者を密着取材し、放送したが、全ての回において業者による“偽装”や“仕込み”のあったことが分かり、2024年9月の委員会で審議入りした。
委員会は「事実と異なる放送を三度に渡って放送したことは、視聴者の信頼を大きく裏切るもの」と指摘したが、1回目と2回目の取材は、国家資格者である司法書士が立ち会ったうえで、偽の不動産売買契約等が行われていたこと等から、放送局側に放送倫理違反があったとまでは言えないと判断した。他方、3回目の放送では、古い家屋から見つかった金の延べ棒や、業者から紹介された「偽の依頼人」に対する基本的な事実確認が不十分だったとして放送局側に放送倫理違反があったと判断した。
2025年4月24日に委員会は当該放送局へ委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。この日の委員会では、委員会決定を伝えた毎日放送のニュース番組の録画を視聴し、担当委員から当日の様子等について報告があった。委員のひとりからは、審議の途中で分かったことであるが、テレビ局が取材対象から、「テレビって、こんなもんだろう」と、半ばいい加減な存在のように思われているふしがあり、そうであるならばテレビ局の側から「自分たちはそんないい加減なことはしない」と意識的かつ積極的に示すことが必要であることを会見で訴えたと報告があった。別の委員からは、意見交換がなされた当該放送局への「通知」と比較すると、記者会見を設けた「公表」ではあまり活発な意見が出されることがなかったと報告があった。理由としては、本事案に3回の放送が含まれており、問題となった番組を見ることなく、意見書の記述だけをもとにどのような放送だったかを理解するのには苦労があったのかもしれないという指摘があった。
通知と公表の概要は、こちら。
2. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議
TBSテレビは2024年10月19日に放送したバラエティー番組『熱狂マニアさん!』2時間スペシャルで、「ニトリマニア集結!1万点からベスト3…名もなき家事が今夜消滅!」と題し、インテリア小売業大手ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを放送した。
放送後、視聴者からBPOに「番組の全編でニトリの商品を紹介していた。価格や商品名も入っていた。番組の提供にも入り、本編からCMに移ってもニトリのCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。この番組は2024年の1月13日と6月1日にニトリを放送しており、今回が3回目であることが判明したため、委員会は当該放送局に番組DVDと報告書の提出を求めることにした。
TBSテレビの報告書によると、番組は特定のジャンルに並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが熱狂していることや好きなものを紹介するバラエティー。コロナ禍の巣ごもりでコンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味や関心がファミリー層などで高まったことを受け、時短料理や清掃・収納など人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではなく、衣食住にまつわる生活の知恵を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして2025年1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、これまでの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされ、意見書の内容をさらに深めていくことになった。
3. 日本テレビ『月曜から夜ふかし』について審議
日本テレビは、2025年3月24日に放送したバラエティー番組『月曜から夜ふかし』の街頭インタビューのコーナーで中国出身の女性の声を紹介したが、放送後この女性から実際に話した内容とは違うという指摘を受けた。
委員会は当該放送局に報告書と番組DVDを求めそれらを踏まえて協議した結果、問題となっているインタビューは、女性が話した内容とは全く異なる文脈へと意図的に編集され、他国の文化に対する尊重を著しく欠いていた疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について放送倫理上の問題がなかったかどうかを詳しく検証する必要があるとして4月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。委員からは「カラスの肉を中国では食べるという事をなぜ面白いと思うのか。そこには中国人を冷笑する差別意識が底流にあったのではないか」といった意見や「今の中国の体制下では、テレビに出て少しでも批判的なことを言うと、身に危険が及んだり家族に累が及んだりするという恐怖心を抱いている人が多い。その点についての意識が低いように感じる。バラエティー番組とはいえ、もう少し国際感覚を磨くべきではないか」といった意見が出た。
これらの意見を踏まえて担当委員は引き続き当該放送局のヒアリングを続ける。
4. 4月の視聴者・聴取者意見を報告
4月に視聴者・聴取者から寄せられた意見では、元タレントと女性とのトラブルを巡る一連の問題に関する番組への批判が数多く寄せられた。また、クルド人を特集したドキュメンタリー番組について、あたかも日本人が差別をしているかのような偏向報道であった、クルド人ならびに彼らの関係者側の意見に偏っていたなどの批判が寄せられたことなどが事務局から報告された。
以上