放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第213回

第213回 – 2014年10月

散骨場計画報道事案のヒアリングと審理
「謝罪会見報道に対する申立て」審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案のヒアリングを行い、申立人、被申立人から詳しく事情を聞いた。「謝罪会見報道に対する申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2014年10月21日(火)午後4時~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案のヒアリングと審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、申立人、被申立人から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聞いた。
この中で申立人は、「顔なし」映像を記者会見の条件とした理由として、人口3万7,000人の熱海市で住民2千7,8百人の反対署名が集まっており、「私の顔が出ていれば、狭い田舎町で更なる事件に発展する可能性もある」と指摘。また、「このような行為は故意に行われたと思わざるを得ない」とも述べ、具体的被害として「テレビで大々的に出てしまい、熱海の町では相当な騒ぎになっている。熱海を騒がしている散骨業者と知れ渡ってしまい、よく話しかけてくれた住民たちも目をそむける。町に食事に出ることもできない。そういう状態は今も続いている」などと訴えた。
被申立人は、編成、報道の責任者や番組担当者ら5人が出席し、「約束に反して顔出ししてしまったことは、担当者の不注意・失念によるもので、故意によるものでは決してない。放送時間に追われる中でモザイクをかけ忘れるというミスであり、最終チェックも十分に行われなかった。取材相手との信義を果たせなかったことを深く反省している。業者社長にはお詫びの申し上げようもない」としたうえで、「二度とこのようなことのないように、再発防止策をすでに取っており、社内での研修会なども行っている」と述べた。
ヒアリング後も審理を行い、担当委員が「委員会決定」文の起草作業に入ることになった。その上で、次回委員会でさらに審理を進める。

2.審理要請案件:「謝罪会見報道に対する申立て」~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、TBSテレビが2014年3月9日に放送した情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。番組は、かつて「全聾の作曲家」として知られていた佐村河内守氏が楽曲の代作問題について謝罪する記者会見を取材し、その模様をまとめたVTRを放送するとともに、出演者によるスタジオトークを生放送で展開した。
この放送に対し、佐村河内氏は8月26日付で申立書を委員会に提出し、番組は「申立人の聴力に関して事実に反する放送を行ったものであり、それにより、申立人が聴覚障害者であるかのように装って記者会見に臨んだとの印象を与えたもので、申立人の名誉を著しく侵害するものであると共に、申立人と同程度の聴覚障害のハンディキャップを持つ者に対しても、社会生活上深刻な悪影響を与えた報道であった」と訴えた。申立書はまた、番組が特定の映像を意図的にカットして「悪意ある編集」を行い、「事実そのものを捻じ曲げて放送した上で、申立人の名誉権を侵害したことになり、本件は極めて重大かつ悪質な人権侵害」と主張している。
これに対してTBSテレビは9月30日付で委員会に提出した「見解」書面の中で、「当番組の放送内容は、放送された時点における重大な社会的関心事で、聴覚障害者に対する誤解や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評」と放送の趣旨を説明。その上で「謝罪会見の綿密な取材と、診断書についての専門家の見解の上で制作しており、『悪意ある編集』などによって申立人に聴覚障害がないと断定したものでもない」として、申立人の名誉を傷付ける放送ではないと主張している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

3.その他

  • 10月7日に名古屋で開かれた地区別意見交換会(中部地区)について、事務局から報告するとともに、その模様を伝える地元局のニュース番組の同録DVDを視聴した。

  • 次回委員会は11月18日に開かれる。

以上