放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第86回

第86回–2014年10月

"川内原発報道めぐり事実誤認と不適切な編集"
テレビ朝日『報道ステーション』審議入り…など

第86回放送倫理検証委員会は10月10日に開催された。
"全聾の作曲家"と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案については、審理の対象となった5局7番組のヒアリングが終了し、担当委員から報告が行われた。次回委員会までに、問題発覚後の対応についての報告書を改めて各局に求め、さらに審理を継続する。
テレビ朝日の『報道ステーション』が、九州電力川内原子力発電所の新規制基準適合に関するニュースを9月10日に放送した際、事実誤認と不適切な編集があったと原子力規制委員会から抗議を受け、2日後に同番組内でお詫び放送を行った。当該局からの報告書をもとに討議した結果、国民の関心が高いニュースでこのような間違いをしたのは小さな問題ではないとして、審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2014年10月10日(金)午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、藤田委員、升味委員、森委員

1.「全聾の作曲家」と称していた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案を審理

全聾でありながら『交響曲第1番HIROSHIMA』などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組等で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼して自己の作品として公表していたことが発覚した事案について、新たに2局2番組に対するヒアリングが行われた。その結果、審理の対象になった以下の5局7番組すべてに対するヒアリングが終了した。

  • TBSテレビ『NEWS23』「音をなくした作曲家 その"闇"と"旋律"」(2008年9月15日)
  • テレビ新広島『いま、ヒロシマが聴こえる・・・』(2009年8月6日)
    <フジテレビを含む多くの系列局が日時を変更して放送>
  • テレビ朝日『ワイド!スクランブル』「被爆二世・全聾の天才作曲家」(2010年8月11日)
  • NHK総合『情報LIVE ただイマ!』「奇跡の作曲家」(2012年11月9日)
  • NHK総合『NHKスペシャル』「魂の旋律~音を失った作曲家~」(2013年3月31日)
  • TBSテレビ『中居正広の金曜日のスマたちへ』
    「音を失った作曲家 佐村河内守の音楽人生とは」(2013年4月26日)
  • 日本テレビ『news every.』「被災地への鎮魂 作曲家・佐村河内守」(2013年6月13日)

担当委員から、新たに実施された2局2番組に対するヒアリングの内容が報告されたあと、今後の審理の進め方について意見交換が行われた。その結果、問題発覚後の各局の対応は、すでに提出された報告書にも一部記載されているが、半年余りの時間が経過していることから、事後の検証の内容、視聴者への説明が十分になされたか、再発防止策がどのように実施されているかなどについて、改めて各局から文書で報告を求めることになった。

2.川内原発をめぐる原子力規制委員会の報道に事実誤認と不適切な編集があったテレビ朝日の報道番組を討議 審議入り決定

テレビ朝日の『報道ステーション』は、原子力規制委員会が九州電力川内原発について新規制基準に適合していると正式に認めたニュースを、9月10日に約8分間放送し、規制委員会の田中委員長の記者会見で、火山の審査基準に関する質疑が集中したことなどを伝えた。放送後、規制委員会からの抗議を受けて社内調査をした結果、竜巻の審査ガイドに関する記者とのやりとりを火山に関するものと取り違えて放送したことと、火山の審査基準をめぐる質疑で田中委員長の回答部分に不適切な編集があったことが判明した。当該局は規制委員会に謝罪するとともに、2日後の同番組内で約5分間訂正とお詫びを行った。
委員会は、当該局から提出された報告書をもとに討議した結果、事後の対応が迅速で的確であったにしても、国民の関心が高いニュースで、2つの間違いをしたのは小さな問題とは言えないとして、審議の対象とすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • 時間に追われていたにしろ、なぜあのように不適切な編集がされ、きちんとチェックもされずに、放送されてしまったのだろうか。

  • 時間に追われているニュースの制作現場では、さまざまなミスや間違いが起こりうる。その際には、事後の対応がどこまで適切に行われたかが重要ではないだろうか。

  • 2日後の訂正・お詫び放送はかなり詳細なもので、評価できるのではないか。

  • 国民が非常に関心をもっている事柄について、このように誤った内容で放送をしてしまったことは、やはり小さな問題とは言えないだろう。委員会は審議の対象とするかどうかについての基準を公表しており、それに照らせば、審議して意見を述べるべき事案と言うことになる。

  • 報告書を読むと、ニュースの制作現場で、分業体制が複雑化していることに驚いた。なぜこうしたことが起きたのかをきちんと検証して、他の放送局に警鐘を鳴らすことも委員会の役割だろう。

以上