放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第129回

第129回 – 2007年11月

守屋前防衛事務次官宅前のメディア・スクラム対応

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の最終審理…など

守屋前防衛事務次官宅前のメディア・スクラム対応

放送人権委員会事務局は、防衛省の守屋前事務次官の家族から、11月14日夕方自宅前での過熱した取材による報道被害の訴えが寄せられたため、緊急に民放連の「集団的過熱取材問題」担当幹事社に対し善処を求めたことを11月の委員会に報告した。

以下報告内容。前事務次官の家族の一人がBPOに訴えてきた苦情は「このところ、テレビ・新聞・雑誌各社の過熱取材により生活を脅かされている。事件には関係のない自分までカメラに追い回される。私道では各社カメラが勝手な場所取りを行うなど、周辺住民にも多大の迷惑を及ぼしており、家族や周辺住民にとって耐えられない状況が続いている。何とかしてもらえないか」というもの。

放送人権委員会の運営規則(07年7月改正)は、第5条3項に【放送関係者による重大な権利侵害等を伴う取材活動・放送がなされ、これが継続中であって、かつ緊急に対応する必要があると認めたときは、本人または利害関係人の申立てにより、委員会は、放送事業者または所属の関係者に対し、その事態を解消するために必要な措置を取るよう要望することができる】と定めている。

放送人権委員会事務局では、上記規則に従い、直ちに民放連の「集団的過熱取材問題」担当幹事社(テレビ朝日)に対し、まずこの家族の苦情申立ての概要を伝え、善処方を要請した。担当幹事社であるテレビ朝日の報道局次長は、14日の午後5時に関係各社に対し、放送人権委員会事務局から受けた家族の苦情概要を伝えるとともに、「改めて節度ある取材について協力されるように」との文書を送信、15日には局次長自身が現場を見回った後、「本日は問題ない」と放送人権委員会に報告してきた。

16日午前に放送人権委員会の調査役が現地を視察したところ、現場は、すでに静かで落ち着いており、ゴミの散乱もなかった。同日昼過ぎには苦情を申し立てていた家族から電話があり、「その後は概ね静かになった。感謝している」旨、伝えてきた。

放送人権委員会では、2006年5月に秋田で起きた「連続児童遺体発見事件」に関して「取材対象者に対するいわゆる集団的過熱取材はいかなる場合にも慎むべきことである。真相の究明を急ぐあまり過熱取材に陥り、取材対象者のプライバシーを侵害することのないよう、節度を持って取材に当るよう要望する」との委員長名の文書を関係各社に送付している。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の最終審理

和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの報道番組(5月26日、6月2日放送)で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案の最終審理が行われた。

本事案は、これまでにヒアリングを含め4回の委員会と1回の起草委員会で審理が行われているが、11月の委員会では、起草委員会で検討された「委員会決定」の草案をもとに審理を行い「委員会決定」案が了承された。

申立人・被申立人に対する「委員会決定」の通知とマスコミに対する発表は、12月4日に行われることになった。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の通知・公表の報告

11月12日に行われた標記事案に対する「委員会決定」の通知・公表の模様を11月委員会で事務局から報告した。

また、この委員会決定がメディアにどう扱われたかを調査した「放送対応と関連新聞記事」についても委員会で報告された。被申立人の毎日放送は、通知当日に当該ニュース番組「VOICE」の中で決定要旨を伝えた。委員会で、その録画を視聴した。また在京キー局の中では3局がこのニュースを伝えた。一方新聞報道では、東京地区では3社が、大阪地区では4社が関連記事を掲載した。

苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[5件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情) ・・・ 5件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情) ・・・ 0件

その他

次回12月18日の委員会では、新たな事案の審理が無い場合には、メディア・スクラムが発生した際のテレビ各局間の対応組織の運用の実情について、NHK、民間放送連盟から担当者を招き説明を聞くことになった。