放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第125回

第125回 – 2007年7月

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の総括…など

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、「朝日放送のニュース情報番組『ムーブ!』において、犬たちを救済する我々の活動が、偏見や憶測によって、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てていたもの。

本委員会で、起草委員会でまとめた委員会決定草案について意見を交わした。一部加筆修正を含め、詰めの検討を重ねた結果、「本件番組の一連の放送については、何れも名誉毀損や信用毀損はないし、その放送及びそのための取材活動において、放送倫理違反もない」との「委員会決定」案を全員一致で了承した。

「委員会決定」は、8月3日に申立人、被申立人に「通知」された後、記者会見で「公表」されることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の総括

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の総括

上記2事案については、6月26日に「委員会決定」を「通知・公表」したが、それに対する当該局を含む放送局側の対応や関連新聞記事について事務局から報告があった。

今回は2事案あわせての公表とあって、放送と新聞の対応は、”放送倫理違反”と指摘された「エステ店」事案については在京テレビ6局が伝え、新聞6社も記事を掲載したが、”問題なし”となった「ラ・テ欄」事案について報道したのはテレビ3局、新聞3社だった。ただ、「ラテ欄の表記についても、放送局は適正な言葉、品位ある表現をすべきだ」との委員会の要望を掲載したところもあった。

委員会では、それぞれ当該局から提出された「委員会決定」に関する当日のニュースの放送内容を視聴した。「エステ店」事案については「通知」から3か月以内に当該局が対応策等や取り組み方を報告する事になっている。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人が「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道は、解放同盟幹部らが理事をしている特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダーである個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

これに対し、毎日放送は「当該報道は、大阪市の予算化されていない一部補助金のあり方に疑問を呈したもので、補助金受給施設の内、解放同盟が関係する法人の占める割合が多かったことから解放同盟の名称を出した。報道には、公益性・公共性があり、また、申立人だけでなく組織としての部落解放同盟の名誉を損なうものではない」と反論している。

放送人権委員会では7月の委員会から本事案について本格的な審理に入り、申立人・被申立人双方から提出された「申立書」と「答弁書」を基に意見を交わした。

次回8月の委員会では、申立・被申立双方に「反論書」と「再答弁書」の提出を求め、それをもとに審理を続けることになった。

審理要請案件

  • 「貸金業協会からの訴え」案件
    関東地区の貸金業協会が「東京キー局の朝番組で誤った事実を報道され著しく不利益を被った」と苦情を申し立てていた案件は、7月の委員会で協議の結果、審理対象外となった。
    当該貸金業協会は、「貸金業者の金利はグレーゾーンではなく違法ゾーンだ、とのコメンテーターの発言は、勝手な思い込みによる情報であり、視聴者に誤った印象を与えた」と主張し、局に対し謝罪と訂正放送を求めていたが、局側は、「今回のコメンテーター(弁護士)の発言は、最高裁判決等を踏まえ法律専門家としての見解を示したもので、訂正すべき必要はない」と反論していた。
    放送人権委員会の運営規則は、「苦情を申し立てることができる者は、放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする」と定めているが、7月施行の改正で「ただし団体からの申立てについては、委員会において団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは取り扱うことができる」との条文が新設された。しかしながら本件申立てをしている当該協会は自らその利益擁護のために社会に対し啓蒙・宣伝等の主張をなしうる立場にある団体であることなどから、委員会では「本件申立ては、例外的に審理をする必要性が高いとはいえない」と判断、全会一致で当案件を審理対象外とした。
  • 「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」案件
    和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーから「5月と6月の2回にわたって讀賣テレビの朝の情報番組で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、プライバシーが侵害された」とする申し立てがあった。
    これに対し読売テレビ、「取材した事実と公的な資料に基づいて公正な報道をしており、名誉権を侵害していないし、プライバシーの侵害もしていない」と反論している。
    放送人権委員会では、提出された「申立書」及び局側からの「対応経緯と見解」等の資料を慎重に検討、また局から提出された放送番組の同録DVDを視聴した結果、次回8月委員会から本事案について審理に入ることを決めた。

苦情概要

  • 「”ラジオ番組で誹謗中傷された”との訴え」について
    以前放送局に所属していた元女性アナウンサーが「当該局のラジオ番組で、男性アナウンサーの嘘の発言によって誹謗中傷された」として「局の謝罪と発言したアナウンサー本人の反省のことば」などを求めて、7月放送人権委員会に苦情を申し立てた。
    放送人権委員会事務局では、双方に対し「話し合いの余地があるのではないか」と交渉を続けるよう勧めていたところ、当該局より「話合いの結果、このほど全面的に解決した」との報告があった。
    また、女性のブログにも「すべて解決した」と書かれていたことから、本件は、放送人権委員会の審理をまたず円満解決したものとして委員会に報告、了承された。

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次の通り。

◆人権関連の苦情[18件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・18件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・0件

その他

事務局から、参議院選挙を前に、社民党から選挙報道が公正・公平に行われるよう、BPOでも監視するようにとの申し入れがあったことや、10月をめどに放送人権委員会委員を1名増員できるよう人選を進めていることなどが報告された。次回委員会を8月21日(火)に行うことを決め、閉会した。

以上