放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第130回

第130回 – 2007年12月

メディア・スクラム苦情の対応について意見交換

放送人権委員会10周年フォーラムの報告…など

メディア・スクラム苦情の対応について意見交換

放送人権委員会では、本年7月、運営規則に「集団的過熱取材(メディア・スクラム)」に対応する条項を明文化し、また、このところ事件渦中の人物やその家族から過熱取材による被害の救済を求めてくる例が増えてきているため、12月の委員会にテレビ朝日取締役で民放連報道小委員長の渡辺興二郎氏とNHK報道局社会部長の柳辰哉氏を招き、メディア・スクラムへの対応策等について意見を交換した。

まず渡辺氏が「2001年初頭に集団的過熱取材への批判が急速に強まり、民放連会員各社は、過熱取材による被害防止のために各社共通の留意点を現場取材者に徹底させるなどの対応を取るべきであるとの認識に達し、放送局の枠を超えて解決策を取ってきた」と述べ、在京キー5局が持ち回りで幹事を務める等の対応体制を具体的に説明した。

続いてNHKの柳氏が、取り囲み取材や通夜・葬儀、静穏が求められる場所での取材等についてまとめられた新聞協会編集委員会の見解を説明、また、「メディア・スクラム対応は、しっかり取材するためのものである。人々の信頼を失うと取材がしにくくなるからだ」との考えを示したうえで、対応策として「1.早めの対応、2.現場を見る、3.社会人としてのマナーを守れ、を徹底しようとしている」と述べた。

これに対し委員側からは、「メディア・スクラム発生の可能性にどう対応するか」「公人の場合は対応を区別して考えるとしているが、具体的にはどう区別するのか」等の質問があり、渡辺・柳両氏から「この6年間メディア・スクラム対応をやってきて、今は相当迅速に動けるようになった」「公人は違うというだけで区別するのは危険だと思う」「BPO・放送人権委員会に寄せられる情報をできるだけいただき、それを現場取材に生かしていきたい」等々の発言があった。

放送人権委員会事務局からは、最近の例として、守屋防衛省前次官の家族から「集団的過熱取材による報道被害の訴え」があったことは民放連の対応幹事社とNHKに伝えたが、委員会として善処を要望する事態までには至らなかったことを報告した。

放送人権委員会10周年フォーラムの報告

放送人権委員会事務局から、去る12月5日(水)に開催された「放送人権委員会10周年フォーラム」の概要、反応、アンケート結果などについて報告した。

フォーラムには、民放120名、NHK31名など239名が参加、コンプライアンス担当や編成担当を中心に、報道・情報の制作現場の人も集まった。なお取材のテレビカメラは、5社・6台。

竹田稔放送人権委員会委員長による基調講演「放送による人格権侵害と放送倫理」に続き、三宅弘放送人権委員会委員のコーディネートで「放送倫理」をメインテーマにパネルディスカッションが行われた。ジャーナリストの江川紹子さん、読売新聞の鈴木嘉一さんらをパネリストとし、これまで放送人権委員会が審理して来た事例を中心に、取材・編集・OAのそれぞれの段階での問題を討議、会場からの声もたくさん出され、活発な意見交換が行われた。その中では、取材における隠しカメラ・隠しマイク、編集・OAでのモザイク・顔を映さないインタビューの多用などについて、その妥当性や問題点が指摘され、参加者の関心も高かった。

参加者のアンケート結果では、「具体的な事例をベースにしたフォーラムで、分かりやすく有益だった」と言う声が多く、この種のフォーラムを年に1度は開いて欲しいという要望が多く寄せられた。

なおこの日の委員会で放送人権委員会委員から、「内容的にも充実していて良かった」という声と共に、「視聴者・市民と放送局の間に立つ第三者機関のBPOであるので、フォーラムにも市民が参加しても良かったのではないか」という意見もあった。

「グリーンピア南紀再生事業の報道」事案の通知・公表報告

和歌山県那智勝浦町にあるグリーンピア南紀の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが、読売テレビの報道番組で事実と異なる報道をされ名誉を毀損され、プライバシーを侵害されたと権利侵害を申立てていた事案で、委員会は「名誉毀損にもプライバシー侵害にもあたらない」という判断を下した。12月4日、その「決定」を申立人、被申立人双方に対し通知し、マスコミに公表した。その模様とその後の放送対応について事務局から下記報告を行った。

  • 通知・公表には、竹田委員長と起草委員を務めた五代委員長代行、三宅委員が出席、記者会見にはメディア側からは24社41人が集まり、テレビカメラ6台が入った。
  • 決定通知を受けた申立人の代理人は「人権尊重の観点からの問題提起に何の配慮もなされていない」と決定に不満を表明する見解を出した。一方、読売テレビは「極めて妥当な見解である」とのコメントを発表した。

また、委員会は、当該局読売テレビの、この決定についての当日夕方のニュースを視聴した。
2007年度に、委員会が「決定」を出した事案はこれで5件で、過去最多となっている。

仲介・斡旋解決事案と苦情概要

●「松茸の産地偽装疑惑報道」事案の仲介・斡旋解決

11月、ある地方の松茸販売業者から「当店は、この地方でただ一店、産地表示して松茸を売っているのに、朝早くからアポイントもなく押しかけてきた記者に最初から結論ありきの態度で長時間取材され、中国・韓国産の松茸をあたかも当地方産と偽装して販売しているように報道された。当該局に抗議すると『間違った放送はしていない』の一点張りだった」と苦情を申し立ててきた。

放送人権委員会事務局では、当該局に対し「申立人は、地元商工会や観光協会との関係を一番問題にしている」と伝えた。

これを受けて局の番組責任者が申立人を訪れて話しあった。その結果、「産地偽装についてはそれぞれ言い分があったが、”アポなし長時間取材”等についてはお詫びした。申立人は当方の誠意を認めて和解に応じ、解決書を取り交わした」との報告があった。

また申立人に確認すると「局の責任者が商工会・観光協会にも事情を説明してくれた。お陰で円満に解決することができた」ということであった。(放送11月 解決12月)

●人権等に関する苦情

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[11件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

放送法改正案について

12月11日衆院本会議を通過した放送法改正案について、審議経過などを事務局が報告した。

この中で、12月4日の衆院総務委員会にはBPOの飽戸弘理事長が民放連会長やNHK会長らとともに参考人として招かれ質疑が行われたこと、また13日にはBPOの放送倫理検証委員会の川端和治委員長が参院総務委員会に招致されたことが紹介された。

また、放送法改正案が衆院を通過した際には、BPOに関連して「放送の不偏不党、真実及び自律が十分確保されるよう、BPOの効果的な活動等関係者の不断の取り組みに期待するとともに、政府においては、関係者の意向も踏まえつつ、その取り組みに資する環境の整備について検討を行うこと」という付帯決議が行われているが、この点に関してBPOとして何らかの意思表示をすべきではないかと言う意見があった。

しかし、当面は、参院での審議の成り行きを見守ることになった。

次回委員会を、1月15日に開くことを決め、閉会した。

以上