第123回 – 2007年5月
「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングと審理
「エステ店医師法違反事件報道」事案の審理…など
「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングと審理
北海道在住のルーマニア人でセラピストの女性から苦情申立てがあった事案は、4月委員会から実質的な審理に入ったが、5月の委員会ではヒアリングを行い、申立人と被申立人・テレビ朝日の双方から直接主張を聞いた。
申立人は、「2月にテレビ朝日のバラエティー番組に一家で出演したが、新聞のラ・テ欄に<バツイチ子連れ美女の・・・>等の表現で家庭の事情が書かれた。放送内容が当初説明を受けた企画意図と違っていた」と苦情を訴えた。これに対し、テレビ朝日は、「前夫との離婚について放送で紹介することは、申立人は事前に了承していた。大自然の中で生活する家族を描くという番組企画は一貫して変わっていない」などと反論した。
ヒアリングの後、さらに審理を行った結果、起草委員会で委員会決定の草案をまとめ、それを基に次回委員会でさらに審理を続けることになった。
「エステ店医師法違反事件報道」事案の審理
本件事案は、東京都町田市のエステ店経営者が「医師法違反で送検されたニュースの中で、極悪人の如く報道されて人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えているもので、これに対し、被申立人・日本テレビは「報道内容は、公益を図るものであり、事実を誤まりなく伝えている」と反論している。
本件事案について放送人権委員会は、前回の委員会でのヒアリングを受けて、5月7日に起草委員会を開き、委員会決定の草案作成に当たった。
5月の委員会では、この起草委員会での検討作業が報告され、「委員会決定」の原案取りまとめに向けて意見が交わされた。
その結果、「決定」案の細部の文言等について更に検討・修正を図ることになり、6月委員会で最終的な審理を行うことを決めた。
「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理
本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、朝日放送に対して苦情を申し立てたもので、申立人は「11月から12月にかけて放送された報道番組『ムーヴ!』において犬たちを救済する我々の活動が、一方的な偏見報道及び憶測報道によって、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と訴えている。
これに対し被申立人・朝日放送は「動物愛護団体の募金と活動実態が整合しているのかを検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。
放送人権委員会は2月の委員会で審理入りを決定した後、3回にわたって実質的な審理を行ってきた。特に5月の委員会では、コメンテーターの発言内容や取材のあり方等、多岐にわたるそれぞれの論点を整理し審理を行った。
その結果、6月の委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いてヒアリングを行い、それぞれの主張を直接聞くことにした。
更に、このヒアリングを受けて6月29日に起草委員会を開き、委員会決定の草案作成に向けて作業を進めることにした。
審理要請案件
「誤表記で人権侵害の訴え」
2月に北朝鮮を訪れた都内の男性から「平壌観光をした際に撮影した映像をキー局に提供したところ、それが<平壌の最新映像>として放送されたが、自分の会話部分に”記者”と誤って字幕表示された。これによって報道関係者との疑惑を持たれ、その後の訪朝が許されなくなるという被害を被った。これは人権侵害・名誉毀損であり、局には謝罪と訂正等を要求しているが、誠意ある回答がないので放送人権委員会に審理を要請したい」との苦情申立てがあった。当該局に問い合わせると「慰謝料を請求されており、話し合いは進んでいない」という。
5月の委員会でこの申立ての取り扱いを協議したところ、「放送人権委員会が法に基づいた強制調査権を持たない自主的苦情処理機関であることに鑑み、金銭要求を伴う案件については本委員会で審理すべきものとは認められない。(現行運営規則には明記されていないが、7月施行の改正運営規則には明記)」ということで委員全員の意見が一致、<審理対象外>と決定した旨を苦情申立人に文書で通知することになった。
4月の苦情概要
4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。
◆人権関連の苦情[12件]
- 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
- 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・2件
その他
村井専務理事より、放送倫理検証委員会の発足に伴い、NHK、民放連から体制強化のため委員・スタッフの人員増を含む予算の増額が認められたこと等の報告があった。
次回委員会は、6月19日(火)に、「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングを審理に先立って行うことを決め、閉会した。
以上