放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第124回

第124回 – 2007年6月

「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングと審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の最終審理…など

「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングと審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、「11月から12月にかけて放送された朝日放送の報道番組『ムーヴ!』で、犬たちを救済する我々の活動が、偏見や憶測によってあたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てたもので、これに対し朝日放送は「動物愛護団体の募金と活動実態が整合しているかを検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

6月の委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いてヒアリングが行われ、”募金収入の内訳や使途がどのようになっているのか””コメンテーターの発言はどのような根拠に基づいているのか”などについて質疑が行われた。

ヒアリングの後、審理が続けられ、起草委員がこれまでの審理内容を踏まえた素案作りに入ることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の最終審理

本事案は、東京都在住のエステ店経営者が「私が医師法違反で送検されたことを伝えた日本テレビのニュースの中で、極悪人の如く報道されて人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えたもの。

放送人権委員会は本事案の「委員会決定」案について6月の委員会で最終審理を行った。その結果、「本件放送は、記者がその身分を隠して行った隠しカメラ、隠しマイクによる取材を基に放送することが不可欠であったとは言い難いものがあることに加えて、申立人個人の報道に重点を置き過ぎ、行き過ぎた懲罰的内容になってしまった点において、放送倫理違反があったというべきである」との「委員会決定」案を委員全員一致で了承した。

この「委員会決定」は、6月26日に申立人、被申立人双方に「通知」された後、記者会見で「公表」されることになった。

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の最終審理

本事案は、ルーマニア人セラピストが、テレビ朝日に対し、「バラエティー番組に出演した際、ラ・テ欄で”バツイチ”と表記されるなど名誉・プライバシーを侵害された。また、子どもに対する過剰な演出もあり、放送倫理に違反している」などと申し立てたもの。

放送人権委員会は、起草委員会での検討結果を踏まえ、6月の委員会で最終審理を行った結果、「番組に家族ぐるみで出演し、自ら離婚の事情を語ったりしており、名誉・プライバシーの違法な侵害があったとは認められない。ラ・テ欄表記や子どもたちに対する演出等についても放送倫理に反するとまではいえないと判断する」との「委員会決定」を全員一致で了承した。

また、放送人権委員会はこの決定の中で、ラ・テ欄の表記も放送内容と一体との判断を示し、放送局に対しいっそう「適正な言葉」と「品位ある表現」を用いるよう要望した。この「決定」も、6月26日に「通知・公表」されることになった。

審理要請案件

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」案件

6月、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人から連名で下記のような苦情申立があった。

「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道で、部落解放同盟やそのリーダーである個人が関係している福祉法人をことさらに強調して、新たな”闇の補助金支出”の疑いがある、とされた。償還金補助を受けてきた施設は約50あるが、解放同盟や人権協会に関係する者が役員をしているのは、その4分の1に過ぎない。しかし当該報道では解放同盟幹部らが理事をしている特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与え、解放同盟やそのリーダーである個人の悪いイメージを広め、その名誉権を著しく侵害することになった」

この苦情申立てに対し、毎日放送では「当該報道は、大阪市の予算化されていない一部補助金のあり方に疑問を呈したものであり、補助金を受給した福祉施設の内、解放同盟が関係する法人の占める割合が多かったことから解放同盟の名称を出した。この報道は、公益目的・公共性を有するものであり、また、そもそも申立人だけでなく組織としての部落解放同盟の名誉を損なうものではなかった」と反論している。

放送人権委員会では「苦情申立書」及び局側から提出された「事案の経緯と当社の見解」の2書面を慎重に検討し、また当該報道の同録テープを視聴の上、次回委員会から本事案について本格的に審理を始めることを決めた。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[11件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・5件

その他

村井専務理事より、放送人権委員会運営規則改正の7月1日から施行に伴い体制強化を図るため、調査役を1名増員することになったこと、新委員の1名増員については10月をめどに実施できるよう人選を進めていることなどが報告された。次回委員会は7月17日(火)に行うことを決め、閉会した。

以上