放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第135回

第135回 – 2008年5月

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  ヒアリング及び審理

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  委員会決定案について最終審理 …..など

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  ヒアリング及び審理

群馬県行政書士会の幹部から、「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」との申立てについて、申立人、被申立人を個々に招いてヒアリングを行い、そのあと審理した。

放送は昨年12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の幹部が、会の席上発言者に暴行を加え、傷害の疑いで書類送検されたことが、今日の県議会で取り上げられた。しかしこの幹部は不起訴処分になったことから、県は処分を行わない考えを明らかにした」と伝えたもの。

ヒアリングで、申立人は「エフエム群馬の放送内容は事実とは全く違う。自分になんの取材をしないまま、県議会の委員会で取り上げられたからと言って、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない。真実を探る努力を怠ったことから、真実でない放送をされ、名誉侵害を受けたので、放送法4条に基づきエフエム群馬に対し訂正放送と謝罪を求めたい」と主張した。

これに対し被申立人のエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、書類送検、不起訴という重要事項については事実確認をして報道しており、真実でない事項の放送はしていない。公の場で、公人が語った内容を伝えたことに問題はないと考える。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論した。

ヒアリングを受けて委員会では、この事案を名誉侵害や放送倫理の面などから審理を行い、起草委員にその内容のとりまとめを委託した。次の委員会ではそのとりまとめを受けて最終的な判断を決定する方向となった。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  委員会決定案について最終審理

本事案は、「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送のNHK『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたNHK教育テレビ・ETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして許されるものではないし、放送倫理にも違反していた」と訴えているもの。これに対しNHKは「判決について報じる場合は、裁判所による客観的な判断であるから原告や被告の言い分を付さずとも基本的に公平の観点で問題はない。また、申立人の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

5月の委員会では、5月13日に開かれた「起草委員会」で検討された内容が報告され、「委員会決定」原案取りまとめに向けて意見が交わされた。

その結果、「決定」案の細部の文言等について、さらに各委員の意見を集約して6月3日に起草委員会を開き、最終的な取りまとめ作業を行うこととした。

宗教団体からの審理要請案件  審理対象外を通告へ

本案件は、在京の民間放送局が、2007年9月報道番組で宗教団体への潜入取材レポートを行ったことをめぐって、隠しカメラ・隠しマイクの対象となった宗教団体および団体幹部から、名誉毀損等の権利侵害ならびに公平・公正に関する放送倫理違反とする二つの申立てがなされた。

2007年7月放送人権委員会は運営規則を改正し、条件付きながらも「団体からの申立て」も受理することとし、また、「公平・公正の苦情」についても訴えることができることとした。これを受けての団体からの本格的な審理要請案件であり、委員会では、審理入りするかどうかについて慎重な議論を行った。その結果下記のような結論に達し、それぞれの申立人に通知することになった。

まず、個人からの申立てについては、「匿名、モザイクなどの使用により個人を特定できないことから、名誉・プライバシー・肖像に関する権利侵害は認められないし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者と認めることもできない」などとして、放送人権委員会の運営規則第5条(1)、(2)の規定に定める苦情申立てを受理する基準に該当しないと判断した。

また、団体からの申立てについては、「申立てを受理するかどうかについては、団体としての、規模、組織、社会的性格などを考慮する必要がある。潜入取材に関して申立人が放送中止を求める仮処分申請を東京地方裁判所に出し、却下の決定を受けており、申立人は、本件放送による名誉・信用の侵害については、司法による権利救済を求めることが可能な団体であると解され、司法による救済とは別に、放送人権委員会における救済の必要性が高いなど、審理対象とすることが相当であるとは認められない(放送人権委員会運営規則第5条(6)による)。さらに「匿名、モザイクなどの使用により個人を特定できないことから、名誉・プライバシー・肖像に関する権利侵害は認められないし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者と認めることもできない」(放送人権委員会運営規則第5条(2)による)などとして、上記とあわせ、本件申立ては審理の対象外とすることと判断した。

* 放送人権委員会の運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)

  • 名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関するものを原則とする。
  • 公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者からの書面による申立てがあった場合は、委員会の判断で取り扱うことができる。
  • 団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる。

苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳。

◆人権関連の苦情

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談(個人又は直接の関係人からの要請)・・・8件
  • 人権一般の苦情や批判(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)・・・144件

* 今年度より、一般視聴者からの苦情や批判の集計に当たっては、従来の人権侵害の枠に止めることなく、放送倫理を問うものまで含めることとした。

『放送人権委員会判断基準2008』 発刊

事務局から、『放送人権委員会判断基準2008』の編集・印刷が完了し、5月16日発刊したことを報告した。全加盟各社等に配布し、さらに購入の要望があるところには、実費の1冊600円で頒布することにしているが、すでに、テレビ局や日弁連等から注文が来ていることを合わせて説明した。

次回委員会を6月17日に開くことを決め、閉会した。

以上