放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第143回

第143回 – 2009年1月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案のヒアリング

「女性国際戦犯法廷 番組出演者の申立て」事案について ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案について、申立人、被申立人双方に対するヒアリングが行われた。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年1月20日(火)午後3時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案のヒアリング

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えたテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理で、ヒアリングを実施した。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容」などとして訂正と謝罪の放送を求めている。これに対しテレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

ヒアリングは野中氏、テレビ朝日双方に対して各1時間行われた。この中で野中氏は「横領されたのは、土地改良の補助金ではなく河川改修の土地代金だった。しかし、報道は私の映像をわざと出して、全土連が土地改良の予算獲得に努力した結果、横領事件が起きたかのように受け止められる内容だった。視聴者に分かるように名誉回復を図るため審理をお願いした。」と述べた。テレビ朝日側は「農業関連の公金の一部が横領されたという報道事実について、特段問題はなかったと認識している。政治と農業の関わりについても問題提起をしたかった。横領事件と野中会長個人を関連づけようとしたものではなく、野中会長の名誉・信用と肖像権を侵害したとは考えていない。」と述べた。

ヒアリングを受けて審理を続行し、放送によって申立人の社会的評価が低下したかどうか、補助金について十分な取材・報道がされたかどうかなどを中心に意見を出し合った。
次回の委員会も審理を続ける。

「女性国際戦犯法廷 番組出演者の申立て」事案について

2003年3月に決定が出された「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」事案について、2009年1月7日、被申立人NHKから申立人米山リサ氏にどう対応したかについての報告書が当委員会に提出された。 一方米山氏からは、裁判の過程において重要情報が提示されたとして、委員会でどのような対応をとられるのか考えを聞かせてほしい等の要望が書かれた書面が委員会に届き、委員会で意見交換した。

NHKは2008年6月、この番組についての訴訟が最高裁判決で終結したのを待って、同月、「委員会決定」で指摘された編集の行き過ぎ等について米山氏に謝罪したことなどを報告書で述べている。なお、NHKは、2003年8月に「委員会の決定に対する取り組み状況」の報告をしていたが、米山氏への対応は、裁判が継続中であることを理由に保留していた。

なお米山氏が、本申立ての審理の際、欠かせない重要情報が提示されていなかったとして、委員会に新たな対応をする考えがあるかと尋ねている点について協議したが、当委員会では、既に申立てに対する決定をした事案であり、現段階では、これ以上本件に関与しないとの結論に達した。

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の当該局からの報告

昨年12月3日に「委員会決定」の通知・公表が行われた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の当該局である中国放送(RCC)からその後の取り組みについて報告があった。
本事案の「委員会決定」は、当該局に対して決定を受けての改善や対応等を求めたものではないが、RCCからは1月15日付で「委員会決定後の取り組みについて」と題する以下の書面が寄せられた。
事務局より報告し、了承された。

平成21年1月15日

放送と人権等権利に関する委員会
委員長 竹田 稔 様

株式会社中国放送
執行役員総務局長 原森 勝成

「委員会決定」後の取り組みについて(報告)

この度、貴委員会から12月3日付け「委員会決定」通知を受け、当社では下記の取り組みを行いましたのでご報告いたします。

2008年12月3日(水)

  • BPOでの決定を受けて 夕方のテレビ番組「イブニング・ニュース広島」で決定内容についてニュース報道しました。
  • 東京で決定文書を受け取った報道センター長が、現地から報道センター社員全員に対し、「今後も県民の知る権利に応えるために、権力の監視を続け、公正、公平、正確に、そして放送倫理に即して、当社報道に関わるもの全員で報道にさらなる力を注いでいきましょう」(要旨)とのメールを送りました。
  • 報道センターのキャップ会議にてニュースデスクがニュースキャスターおよび記者クラブキャップに上記メール内容等を伝えて、今後も引き続き、人権に配慮しつつも政治に対する取材、特に調査報道に力を注ぐことを確認しました。

12月4日(木)

  • 当社部長以上が出席する幹部会(「一木会」)にてBPOの決定内容について報道センター長が報告。今後も取材にあたっては人権に配慮しつつ、報道機関として権力の監視を続けること等を報告。これに対し、社長から、これまで通りの報道姿勢を継続するよう激励を受けました。
  • 報道センターで働く社内外の全スタッフにBPOの決定の全文をメールに添付して送付し、今後の取材にあたっての糧にするように伝えました。

12月9日(火)

  • 放送倫理向上委員会(委員長 取締役テレビ局長)を開催。今回の決定を受け、ホームページ上での配信期間に問題はないのか、社員や番組のブログが人権に配慮した表現になっているかなど、さらなるチェック体制の必要性について議論しました。

12月11日(木)

  • 広報部長から全社員に一斉メールで放送人権委員会の委員会決定のアドレスを送り、全社員に閲覧を促しました。

以上

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・60件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 意見交換会[中部]のアンケート結果を報告
    昨年11月11日、名古屋で開催された放送人権委員会委員との意見交換会[中部]に関するアンケート結果について事務局から報告した。

    アンケートは、意見交換会に出席した52名全員を対象に行ったが、そのうち約6割に当たる31名から回答が寄せられた。

    主な内容としては、「掘り下げた内容の議論がなされ有意義であった」、あるいは「有益であった」との感想が23件、「毎年開催してもらいたい」「開催回数をもっと増やして欲しい」との積極的な意見が4件、また、「具体的なニュース映像等を利用すればさらに分かりやすかったのではないか」との意見も6件寄せられた。

  • 次回委員会は2月17日(火)に開かれることとなった。
  • BPO年次報告会が3月26日(木)に開かれることが決まり、事務局長から報告した。

以上