放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第140回

第140回 – 2008年10月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え ……など

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案について、「委員会決定」起草案の検討、協議が行われた。 また、「元祖いちご大福報道」をめぐる審理要請案件は、討議の結果、審理対象外となった。

議事の詳細

日時
2008 (平成20) 年 10月21 日(火) 午後4時~7時半
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、
中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」について、先月に引き続き審理が行われた。
本事案については先月、起草委員会が発足し「委員会決定」をとりまとめるための作業が進められてきたが、今月の委員会では、委員会決定起草案についての検討、協議が行われた。その結果、起草案の内容をさらに吟味したうえ、来月の委員会で改めて検討することとなった。
本件審理では、RCCが上記テレビ報道の内容を文字情報として自社ホームページ上に掲載し、申立人らがこれによる被害の継続を訴えているところから、「文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうか」を審理の対象として、これまで長時間にわたり熱心な議論が交わされてきた。

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え

『元祖いちご大福』報道に関する案件について、2回にわたって審議を行った結果、当案件を審理対象外と決定した。この案件は、「いちご大福」の考案者を自認する人とその人が経営する東京の和菓子屋が申立人となり大阪のテレビ局を訴えているもの。申立人は、「2008年3月放送のバラエティー番組で、”いちご大福の元祖は三重県の和菓子屋”と紹介されたため、考案者としての名誉・信用を著しく害された。また、元祖の店としての信用・営業権を侵害された」と主張し、訂正・謝罪放送を要求していた。
委員会では、双方から提出された文書・資料をもとに討議したが、多数の和菓子業者が元祖を名乗っている現状の中で、限られた資料に基づいて誰がいちご大福の元祖であるかを認定するのは困難であり、このような事案について当委員会が審理し、人権侵害の有無を判断することは相当ではないなどとして、審理の対象とはしないことを決定した。

「喫茶店廃業報道」事案の申立人が起した裁判の高裁判決報告

「喫茶店廃業報道」事案の申立人が、毎日放送を相手取って損害賠償を求めた裁判の控訴審判決(大阪高裁9月10日)について、事務局から報告した。
二審では、名誉毀損は認めなかったものの、隠しマイク・カメラによる取材で「みだりに自己の容貌・容態を撮影・公表されない自由と発言を録音・公表されない人格的利益」を侵害されたと認め、10万円の支払いを命じた。
一審では、名誉毀損を認め、人格的利益の侵害も認めており、40万円の支払いを命じていた。なお、放送人権委員会は、2005年10月「名誉毀損には当たらないが、隠しカメラ・隠しマイクの使用が不可欠とは認められない」として、放送倫理違反の見解を出している。(委員会決定第26号をご参照下さい)

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・83件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • TBS報道現場視察と番組スタッフとの意見交換会
    放送人権委員会では去る10月14日(火)、TBSの夕方の報道番組「イブニング5」(16:52~18:55放送)の放送現場や報道局内を視察するとともに、番組終了後、委員と番組スタッフとの意見交換会を行った。
    意見交換会では、放送倫理や人権に関わる問題などが活発に話し合われたが、中でも、最近インタビューなどで、いわゆる匿名映像(顔なしやぼかしなど)が多い点について局側から、「取材される側がそうした要望を出すことが多く、これに対し取材者が粘り強く交渉しないまま妥協してしまっている面もある。何とかしなくてはいけないがジレンマを感じている」との声もあった。
  • 次回委員会は11月18日(火)に開かれることとなった。

以上