第65回 放送倫理検証委員会

第65回 – 2012年11月

iPS細胞心筋移植手術実施との誤報について
尼崎事件の顔写真取り違え問題について

第65回放送倫理検証委員会は11月9日に開催された。
委員会が今年7月に出した日本テレビ『news every.』「食と放射能」報道に関する意見について、当該局から提出された対応報告書を検討した結果、これを了承し、公表することにした。
新聞の一面トップの誤報記事が、テレビでも報道されたiPS移植のニュースについて討議した。裏づけ取材の方法から、このニュースを事実と判断した根拠まで、当該2局から自主的に提出された報告書も参考にして、広範な議論が行なわれた。その結果、ニュースとして大きく扱った局に対して、これを事実と判断した根拠の説明を改めて求め、次の委員会で討議を継続することにした。
NHKとすべての民放キー局がミスをした尼崎事件の顔写真取り違え問題についても、写真の入手経路や確認方法について、提出された報告書をもとに討議した。各局とも複数の関係者から確認をとった上で放送していること、間違われた被害者から各局の訂正放送と謝罪を受け入れてこれ以上触れないでほしいという意向が表明されていることから、審議の対象として意見を公表するまでの必要はないという結論になった。しかし、容疑者写真の取り違えは、それ自体が重大な過ちであるので、19年前の古い集合写真から抜き出した顔写真を容疑者の写真として放送することには、たとえ複数の関係者が同一性を認めていても、なお記憶の薄れなどから間違いが起きる危険があることを認識して放送の可否を判断する必要があるので、それを踏まえた再発防止の取り組みを社内で確立しなければならないという委員会の討議結果を、BPO報告などで公表することにした。

議事の詳細

日時
2012年11月9日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構〔BPO〕」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
■日本テレビ『news every.』「食と放射能」報道の対応報告書を了承
■iPS細胞心筋移植手術実施との誤報について
■尼崎事件の顔写真取り違え問題について
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、立花委員、服部委員、水島委員

■日本テレビ『news every.』「食と放射能」報道の対応報告書を了承

日本テレビは、 『news every.』 の「食と放射能」報道に関する意見(委員会決定第14号)を受けて、社としての再発防止策を報告書にまとめ、10月30日、委員会に提出した。
それによると日本テレビは、1年余り前、同じ報道番組の「ペットビジネス」事案に続いて類似の過ちを繰り返したことを踏まえて、▽番組制作上の問題点を根本から見つめ直す「番組制作向上委員会」(委員長は大久保社長)を始動させたこと▽従来の取材ハンドブックを発展的に改訂し、各種ガイドラインや社内研修用テキストなどを加えた新しい取材ハンドブックを作成・配布したことなど、多様な改善策を実施している。委員会は、意見書で指摘した過去の教訓を現場で「血肉化」するための取り組みが幅広く進められている点を評価して、この報告書を了承することにした。(報告書の全文はこちらに掲載)

■iPS細胞心筋移植手術実施との誤報について

10月11日、一部新聞が一面トップで報じたiPS細胞心筋移植手術実施のニュースは、その後国際会議でポスター展示発表を行った研究者の虚偽発表であることが明らかになったが、放送局では2局が報道番組で当該研究者のインタビューを含むニュースとして伝え、また、ほとんどの局の情報番組がこの新聞記事を紹介する形で報じた。
ニュースとして伝えた2局のうち、日本テレビは11日朝から夜のニュースまで移植手術が実施されたことが事実であることを前提として大きく扱った。テレビ朝日は当日の夕方ニュースの最後で、国際会議で発表があった事実だけを短く伝えた。
虚偽の疑いがあると判明したあと、2局は13日から15日にかけて、お詫びや報道に至った経緯を説明する放送を行い、その後、当委員会に対して、経緯報告書を自主的に提出した。(新聞記事の掲載前から取材していたNHKは心筋細胞移植手術実施のニュースとしては全く放送せず、12日夜のニュースの中で何故放送しなかったかを説明した。)
委員会では、新聞の特ダネ記事を追いかけて報道する際に、どのような裏づけ取材が行われたのか、事実と判断した根拠はどこにあったのかを中心に、意見交換が行われた。
討議の結果、移植手術実施が真実であることを前提として、iPS細胞の作成方法や手術実施の経緯、患者のその後の状態までニュースで詳しく伝えた日本テレビに対しては、真実と判断した根拠は何だったのかに重点を置いた報告書を改めて求め、次回の委員会で討議を継続することになった。一方、移植を行ったと日本人研究者らが国際会議で公表したという事実のみを短いニュースで伝えたテレビ朝日については、国際会議でそのような公表があったこと自体は事実であるから、あくまでその紹介のみのニュースであれば、誤報とは言えないとして、議論を終えることにした。
新聞の記事の紹介を中心に放送した民放各局の情報番組についても、コメンテーターの解説などに問題点が認められるものの、基本的には新聞で報じられたことを当該の新聞記事を使用して紹介するという枠を出ていないことから、誤報とは言えないとして、議論を終了した。

【委員のおもな意見】

  • この問題は2つに分けなければいけない。ニュースで流したところと、情報番組で新聞の紙面を見せたところと。それは違う性格のものだと思う。
  • 新聞がどんなに大きく報道しようと、自社で内容も確認しないで報道してよいはずがない。
  • 自分が自ら取材に行ったものではなくて、受身から始まる取材に対してどう裏づけを取るかという問題だと思う。自分から攻めて行っていない時のスタンスや対応に弱いところがあると思う。
  • テレビが独自にスクープしてこれは大きな間違いでしたということなら少し違うが、どう見てもこれは新聞の後追いだろう。テレビにもっと裏付けの取材しなさいということは言えるが、それ以上のことは言えない。
  • 間違ってはいけないけれど、間違うことはある。その時に単に反省しましたとか、以後気をつけますということになると、物事がどんどん痩せ細っていくという感じがする。BPOはそうした役割をしているのではないのだからいろいろな対応があって良いと思う。
  • 情報番組は、新聞の記事を紹介しただけでなく、ある種のコメントを重ねている。その部分に関しては番組として見なすべきであろう。情報番組でお詫びしていないのは、自主的自律的な是正が図られていないということではないだろうか。
  • 結局、真実と信じて放送したことにどれだけ合理性のある根拠があったのかということになる。

■尼崎事件の顔写真取り違え問題について

尼崎の連続不審死事件では、活字メディアだけでなく、NHKとすべての民放キー局も、事件とは無関係の人の顔写真を容疑者として放送した。後日、「あの写真は私だ」という女性の訴えが弁護士経由で寄せられ、各局とも間違いを認め、お詫び放送をした。すべての局が全く同じ写真を容疑者の写真だとして間違って使用したという今回のようなケースは前代未聞といえる。
この事件は、その特異性から社会の関心も高く、管轄の在阪局だけでなく、在京局からの応援を含めた共同取材体制が組まれたことから、委員会はキー局と在阪の系列局に対して、写真入手の経緯や放送すると判断した経緯などの報告を求め、それを基に議論が展開された。
各局が入手したのは、同じ集合写真の中から接写したもので、報告書によると、提供者の証言だけでなく、複数の関係者にあたり、「似ている。間違いない」との声が多かったことから、放送に踏み切った局がほとんどである。
しかし、この写真は19年前のものだった。委員会では、いくら複数の関係者から確認をとったと言っても、19年前であれば、当時を知っている人に確認をとっても記憶の薄れがあろうし、最近の容疑者の知人であれば、19年前の容疑者については想像に任せるしかない状況になる。しかも集合写真の小さな画像だったことを考えれば、いっそう同一性の確認は困難であったはずである。複数の関係者への確認作業を行うというマニュアルを守っていても、このケースでは当人かどうかの根拠にはならないのではないか、集合写真から一人を抜き出して拡大した写真を見せて、この人ですかと聞いた局もあったが、その方法では、判断する人を強く誘導する結果になるからそれ自体適切でないなどの意見が出された。
討議の結果、委員会では、ミスが確認された後、各社とも速やかなお詫び放送をし、今回の問題点について自主的に検証していること、また間違えられた当事者が、各放送局の謝罪を受け入れ、これ以上の騒ぎにならないことを望んでいるとのことなどから、審議入りしないこととした。
ただし、容疑者写真の間違いは人権上大きな問題であることを肝に銘じ、今後間違いを繰り返さないために、従来の型通りの手続きや手法だけではなく、何が真の確認になるかの社内議論を深めて、実効性のある再発防止策を確立して欲しいとの要望を、BPO報告やホームページを通じて、各局に伝えることになった。
さらに、委員会では、警察が異例の措置としてメディアに提供した写真を各局とも繰り返し使っているが、裁判員制度に関連して、使い方によっては犯人視報道につながる恐れがある、という意見もあったことを付記して、これを契機に、事件報道における容疑者の顔写真の扱いについて、各局が改めて検討や確認をするよう要望することにした。

■ANN(テレビ朝日系列)中・四国ブロックと検証委員会との意見交換会開催

テレビ朝日系列の中・四国ブロック4局との意見交換会が、10月30日、松山市の愛媛朝日テレビの会議室で行われた。これまで大阪・福岡・札幌で行われた意見交換会は、いずれもエリアの全局が対象だったが、今回のように、ある系列局だけで行うのは初めて試みであった。
放送局側からはブロックの4局から部長クラスを中心に12名、また委員会からは吉岡委員長代行、香山委員が参加した。
意見交換会では、まず両委員から、委員会での論議を通じ、日頃感じている点が紹介された。吉岡委員長代行が、「スタッフが何故今、放送局で働いているのか、何を伝えたいのか。放送倫理はスローガンではなく、その使命から生まれるのではないか」と直近の事例を交えて語り、香山委員からは「ミスは起きることを前提として、些細なミスでも報告しあい、皆で共有することが大切だ」と、自身が属する医療現場で今や常識になっている例を挙げ、グループワークでシミュレーションしていく研修方法が提案された。
これを受けて、各局からは、若いスタッフとのコミュニケーションをめぐる悩みや取材のありかたなどについて様々な意見が出され、予定時間まで活発な議論が交わされた。
各局からは、「意見を交わすうちに熱くなった」「これまで持っていた“高みからの監視機関”という見方が変わった」「エラーを少なくしていくヒントをもらった」などの感想が懇親会などで語られた。
さらに「他系列の局の人が一緒だとなかなか本音は出ないものだが、ここまでさらけ出せたのは気心が知れていたからだろう。こうした形式をどんどん採って欲しい」との声も多かった。

以上

2012年10月4日

日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』に関する意見を通知公表

放送倫理検証委員会は2012年10月4日、日本テレビの番組『芸能★BANG ザ・ゴールデン』に関する意見を当該放送局に通知し、公表した。
この番組では、週刊誌などで話題となっている女性タレントと占い師の同居騒動を取り上げた。そして、新聞や番組内で、このタレントと同居していた占い師が出演するかのように告知しながら、実際に登場したのは別の占い師だった。
意見では、この番組が、ラテ欄での告知と、番組中のナレーションやサイドスーパーなどにおいて不適正な言葉を多用し、過剰な演出によって視聴者を欺くなど、放送倫理に反したものであると指摘した。

≪委員会決定はこちら≫

2012年10月3日

委員長談話 フジテレビ「『めざましテレビ』ココ調・無料サービスの落とし穴」について

放送倫理検証委員会
委員長 川端和治

放送倫理検証委員会(以下単に「委員会」という)は、2012年6月6日にフジテレビが「『めざましテレビ』で放送した「ココ調・無料サービスの落とし穴」について、放送倫理違反があると認めながら審議の対象とはしないと決定した。この事案は、「隠し撮り(録音)」という取材手法が問題になったものであるうえ、事実の歪曲や過剰な演出も認められたことから、委員会がそのように決定した理由を明らかにする必要があるであろう。よってここに、「隠し撮り(録音)」という取材手法に対する委員会の姿勢と、審議の対象についての委員会の基準を説明しておきたい。
pdf委員長談話全文PDFはこちら

1. 事案の概要

この番組は、様々な無料サービスを利用して失敗した経験について街頭アンケートを実施し、苦情の多かったものを実際に体験して紹介するというものだった。このうち「プレゼント付きアンケートでDMや勧誘電話がきた」という項目については、番組スタッフが、アンケートで名前のあがった化粧品会社のWEBサイトに身分を隠して無料サンプルを申し込んだところ、会社からかかってきた電話のやりとりが終わるまで36分もかかってしまったという様子が放送された。また「カットモデルでイメージ通りにならなかった」という項目では、モデルになることを志願した女子大生に隠しマイクを仕込んでカットの際のやりとりを送信させ、鏡に映るカットの経過も携帯のカメラで撮影してメールで送らせた。そして、それをカーテンで窓を目隠しした取材車の中から実況放送しているかのように演出して放送した。
しかしながら、化粧品会社からの電話が延々と続いたのは、化粧品会社が執拗にセールスしたからではなく、全く逆に、ディレクターの指示をうけた番組のレポーターが様々な質問を続けて会話を引っ張ったからであった。放送の際はこの化粧品会社の名前は伏せられオペレーターの音声はボイスチェンジされていたが、自社のオペレーターのやりとりが「隠し撮り(録音)」され、しかもあたかも執拗な営業がなされたかのように放送された事に気づいた当該化粧品会社から、放送当日フジテレビに厳重な抗議がなされた。
フジテレビは直ちに調査をして、抗議された内容は事実であることを確認した。またこの調査の際、同じ番組内の美容室でのやりとりも「隠し撮り(録音)」されており、しかも実況放送というのは演出で、いわゆる「後付け実況」であったことも判明した。
フジテレビは、放送の1週間後の6月13日に「ココ調」コーナーで、電話のやりとりが36分になったのは番組側が会話の時間を延ばすために質問を続けたためであったこと、執拗な勧誘の電話が長く続いたという事実と違う情報を伝えてしまったこと、化粧品会社の担当者の心を傷つけ不快な思いをさせたことをわびる放送をした。そして翌日に化粧品会社の本社を訪れ謝罪をした。

2. 放送倫理違反の存在と委員会の判断

「隠し撮り(録音)」が原則として許されないことは、放送局各局がそれぞれ社内基準として共通して定めている。フジテレビも報道局『「報道人ハンドブック」2007』に、「(6)隠し撮りや隠しマイクによる取材は、その目的を明示した場合に目的が達成できないことが明らかで、他に有力な取材手段がなく、取材内容に重大性と緊急性があり、その取材目的が社会的に正当と認められる場合などに許される。原則としては、安易に隠し撮りや隠しマイクによる取材はすべきではありません。しかし例外として『身分を隠しての取材』のケースと同様に、認められる場合があります。この場合も、部長やデスクの了解が必要です。」と規定している。
取材活動は、必然的に取材相手のテリトリーに入り込む行為であり、その成果は放送により広く公表されるのであるから、身分と目的を明らかにし、相手の承諾を得て行われることが原則である。「隠し撮り(録音)」による取材は、それが安易に行われると、場合によっては、肖像権やプライバシーの侵害になったり、名誉毀損になったり、その方法によっては、刑罰規定に触れる結果にもなりかねないという危うさを秘めている。このような取材方法が広汎且つ安易に行われた場合の国民生活への侵襲度は高く、いつどんな行為を放送にさらされるかも分からない社会というのは、誰にとっても耐えがたい社会となろう。民放連の報道指針が、「2報道姿勢」の(1)で「取材対象者に対し、常に誠実な姿勢を保つ。取材・報道に当たって人を欺く手法や不公正な手法は用いない」とし、「3人権の尊重」の(1)で「名誉、プライバシー、肖像権を尊重する」、(4)で「取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る」としていることからも、「隠し撮り(録音)」が原則として許されない取材方法であることは明らかだと言わなければならない。
しかし、フジテレビの「報道人ハンドブック」2007にも明らかにされているように、この原則には例外が認められなければならない。そうでなければ、隠された権力悪を暴くというような報道は不可能になり、放送倫理基本綱領に高らかにうたわれた「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」という使命も達成できなくなるであろう。「隠し撮り(録音)」という方法が、価値のある取材手段となりうることは、たとえば、2012年9月現在進行中のアメリカ大統領選挙候補者の資金集めパーティでの演説の隠し撮り映像が広く報じられることにより、選挙の結果を左右しかねない事実が暴露されたという事態が生じていることからも明らかである。取材者が原則禁止という規定により萎縮して、どうしても必要なときに「隠し撮り(録音)」をためらってしまうようなことがあってはならないのである。
問題は、この原則禁止と例外としての許容のバランスをどう適切に保つかである。そのためには、なぜ「隠し撮り(録音)」が原則として禁止されているかを十分に理解した上で、判断がなされなければならない。今回の事案では、判断責任者となった担当プロデューサーが、自分が行った過去の「隠し撮り(録音)」の事例から今回も許容範囲であると安易に考えたのであるが、他の番組関係者は「部長やデスクの了解が必要です」という形式的な基準の充足がなされたというだけで満足してしまい、「取材内容に重大性と緊急性があり、その取材目的が社会的に正当と認められる場合」という実質要件の充足については、誰も真剣に考えずに不適切な「隠し撮り(録音)」を許容するという結果を招いてしまった。
その意味で、この事案については放送倫理の違反があると言わなければならない。また36分の電話となった理由の歪曲や、実況中継と見せかけた過剰な演出についても、放送倫理違反がある。
しかし委員会は、この事案についてそのような放送倫理違反を審議案件として追及し、意見を公表することは適切ではないだろうと考えた。その理由は、何よりも、この事案について「隠し撮り(録音)」という取材方法が不適切であったと断罪することは、その結論だけのひとり歩きにより、例外的手法によってでも隠された真実を暴くという意欲を持った放送人の足かせとして機能してしまうのではないかと、委員会が恐れたことにある。
また、このような不適切な取材方法の直接の被害者となった化粧品会社と美容室が、フジテレビの謝罪を受け入れ宥恕している一方、「プレゼント付きアンケートでDMや勧誘電話がきた」とか「カットモデルでイメージどおりにならなかった」という社会的事実は、この番組の街頭インタビューでもあきらかにされているように確かに存在しているので、この放送によって視聴者が誤解して被害や不利益をうけたという事実もない。またこの番組は報道番組ではなく、娯楽の要素も盛り込まれている情報バラエティー番組として制作されている。これらの事実を総合すれば、この事案は、「隠し撮り(録音)」という例外的な取材方法が不適切に用いられ、また事実の歪曲も認められるものの、その被害は現時点では既に回復されている一方、審議の対象とした場合の萎縮効果が懸念されることから、TBSテレビ『情報7daysニュースキャスター「二重行政の現場」』についての委員長談話で示した「小さな問題についての誤り」同様、放送局側の自主的・自律的な是正が適切になされていれば、審議の対象とすることは適切でないと考える。
そしてフジテレビは、極めて迅速に内部調査をとげ、的確な謝罪放送をしたうえで、抗議した化粧品会社から宥恕されているうえ、自らの調査によって無料カットモデルの件についても問題があったことを摘出し、美容師からも秘密録音についての事後承諾を得ている。しかもそのうえで自主的に再発防止のための方策を考え、実行しているのである。もちろんフジテレビについては、2010年8月8日と9月26日に放送された『Mr.サンデー』で、街頭インタビュー対象者の事前仕込みと、雑誌付録バッグ所有の通行人の人数の水増しをしたという問題事案があり、そのとき、自主的、自律的に徹底した改善策を実行したはずなのに、一年足らずでまた今回の事案を引き起こしたことによって、前回の改善策は有効には機能していないことが示されたという問題もある。しかし、迅速で自発的な対応による被害者の宥恕、問題発生の原因分析と、対応策の立案、そしてそれを制作現場に「自分のこととして考えましょう」というスローガンで浸透させる努力という点で、前述した委員長談話に述べた「当該局の自主的な取り組み」は十分に行われていると評価するべきであろう。
以上の理由から、委員会はこの事案を審議の対象とはしないこととしたのである。

3.研修用資料『めざましテレビ「ココ調」の不適切表現の問題点から学ぶ』の公表について

フジテレビは、委員会への自発的報告を素材に、研修用資料として以下に掲げる文書を作成した。委員会は、この資料をフジテレビの了解を得て公表することにより、他の各局がこれをそれぞれの制作現場における研修の材料として使用することができ、そのことによって放送倫理と番組の質の向上に役立たせることができるのではないかと考えた。そこでフジテレビに交渉したところ、公開用に手を加えた版の提供を受けることができた。
この文書は、この事案で生じた誤りの原因分析についての貴重な資料であるとともに、研修の材料としても、研修対象者に対する「みんなで考えよう」という課題と、考えるヒントが付されていることによって、他局でも広く活用することが可能になっている。是非とも各局で、それぞれがさらに現場で討論し考える素材として活用することにより、より優れた研修資料を作成していただきたい。委員会は、そのような努力が共有されることによって、過ちが繰り返されないための共通の土台が構築されていくのではないかと考えている。
最後に、公表版の作成にご協力いただいたフジテレビに対する謝意を表明させていただく。

以上

pdfフジテレビ『めざましテレビ』「ココ調」の不適切表現の問題点から学ぶ

pdfフジテレビ『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて

第15号

日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』に関する意見

2012年10月4日 放送局:日本テレビ

週刊誌や芸能ニュースなどで話題になっていた占い師が出演するかのように、新聞の番組欄や番組内スーパーで告知したが、実際に出演したのは別の女性占い師だったという事案。委員会は「出る出ると手を変え品を変えて煽っておいて、最後に何のオチも工夫もないままに、全然ちがう人物を登場させるのは、羊頭狗肉そのものである」「ラテ欄での告知と、番組中のナレーションやサイドスーパーなどにおいて不適切な言葉を多用し、過剰な演出によって視聴者をあざむくなど、放送倫理に反したものであった」などと、指摘した。

2013年1月11日 【委員会決定を受けての日本テレビの対応】

標記事案の委員会決定(2012年10月4日)を受けて、当該局の日本テレビは、局としての対応と取り組みの状況をまとめた報告書を、12月27日、当委員会に提出した。
2013年1月11日に開催された委員会において、報告書の内容が検討され了承された。

全文pdf

目 次

  • 1. 委員会決定の報道
  • 2. 委員会決定内容の周知
  • 3. 番組審議会への報告
  • 4. 社外対応
  • 5. 委員会決定前までの制作局の取組み
  • 6. 委員会決定後の制作局の取組み
  • 7. 再発防止に向けての制作局の取り組み
  • 8. 日本テレビとしての全社的な取り組み
  • 9. 終わりに

委員長談話

委員長談話 フジテレビ「『めざましテレビ』ココ調・無料サービスの落とし穴」について

放送倫理検証委員会
委員長 川端和治

放送倫理検証委員会(以下単に「委員会」という)は、2012年6月6日にフジテレビが「『めざましテレビ』で放送した「ココ調・無料サービスの落とし穴」について、放送倫理違反があると認めながら審議の対象とはしないと決定した。この事案は、「隠し撮り(録音)」という取材手法が問題になったものであるうえ、事実の歪曲や過剰な演出も認められたことから、委員会がそのように決定した理由を明らかにする必要があるであろう。よってここに、「隠し撮り(録音)」という取材手法に対する委員会の姿勢と、審議の対象についての委員会の基準を説明しておきたい。

pdf委員長談話全文PDFはこちら

1. 事案の概要

この番組は、様々な無料サービスを利用して失敗した経験について街頭アンケートを実施し、苦情の多かったものを実際に体験して紹介するというものだった。このうち「プレゼント付きアンケートでDMや勧誘電話がきた」という項目については、番組スタッフが、アンケートで名前のあがった化粧品会社のWEBサイトに身分を隠して無料サンプルを申し込んだところ、会社からかかってきた電話のやりとりが終わるまで36分もかかってしまったという様子が放送された。また「カットモデルでイメージ通りにならなかった」という項目では、モデルになることを志願した女子大生に隠しマイクを仕込んでカットの際のやりとりを送信させ、鏡に映るカットの経過も携帯のカメラで撮影してメールで送らせた。そして、それをカーテンで窓を目隠しした取材車の中から実況放送しているかのように演出して放送した。
しかしながら、化粧品会社からの電話が延々と続いたのは、化粧品会社が執拗にセールスしたからではなく、全く逆に、ディレクターの指示をうけた番組のレポーターが様々な質問を続けて会話を引っ張ったからであった。放送の際はこの化粧品会社の名前は伏せられオペレーターの音声はボイスチェンジされていたが、自社のオペレーターのやりとりが「隠し撮り(録音)」され、しかもあたかも執拗な営業がなされたかのように放送された事に気づいた当該化粧品会社から、放送当日フジテレビに厳重な抗議がなされた。
フジテレビは直ちに調査をして、抗議された内容は事実であることを確認した。またこの調査の際、同じ番組内の美容室でのやりとりも「隠し撮り(録音)」されており、しかも実況放送というのは演出で、いわゆる「後付け実況」であったことも判明した。
フジテレビは、放送の1週間後の6月13日に「ココ調」コーナーで、電話のやりとりが36分になったのは番組側が会話の時間を延ばすために質問を続けたためであったこと、執拗な勧誘の電話が長く続いたという事実と違う情報を伝えてしまったこと、化粧品会社の担当者の心を傷つけ不快な思いをさせたことをわびる放送をした。そして翌日に化粧品会社の本社を訪れ謝罪をした。

2. 放送倫理違反の存在と委員会の判断

「隠し撮り(録音)」が原則として許されないことは、放送局各局がそれぞれ社内基準として共通して定めている。フジテレビも報道局『「報道人ハンドブック」2007』に、「(6)隠し撮りや隠しマイクによる取材は、その目的を明示した場合に目的が達成できないことが明らかで、他に有力な取材手段がなく、取材内容に重大性と緊急性があり、その取材目的が社会的に正当と認められる場合などに許される。原則としては、安易に隠し撮りや隠しマイクによる取材はすべきではありません。しかし例外として『身分を隠しての取材』のケースと同様に、認められる場合があります。この場合も、部長やデスクの了解が必要です。」と規定している。
取材活動は、必然的に取材相手のテリトリーに入り込む行為であり、その成果は放送により広く公表されるのであるから、身分と目的を明らかにし、相手の承諾を得て行われることが原則である。「隠し撮り(録音)」による取材は、それが安易に行われると、場合によっては、肖像権やプライバシーの侵害になったり、名誉毀損になったり、その方法によっては、刑罰規定に触れる結果にもなりかねないという危うさを秘めている。このような取材方法が広汎且つ安易に行われた場合の国民生活への侵襲度は高く、いつどんな行為を放送にさらされるかも分からない社会というのは、誰にとっても耐えがたい社会となろう。民放連の報道指針が、「2報道姿勢」の(1)で「取材対象者に対し、常に誠実な姿勢を保つ。取材・報道に当たって人を欺く手法や不公正な手法は用いない」とし、「3人権の尊重」の(1)で「名誉、プライバシー、肖像権を尊重する」、(4)で「取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る」としていることからも、「隠し撮り(録音)」が原則として許されない取材方法であることは明らかだと言わなければならない。
しかし、フジテレビの「報道人ハンドブック」2007にも明らかにされているように、この原則には例外が認められなければならない。そうでなければ、隠された権力悪を暴くというような報道は不可能になり、放送倫理基本綱領に高らかにうたわれた「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」という使命も達成できなくなるであろう。「隠し撮り(録音)」という方法が、価値のある取材手段となりうることは、たとえば、2012年9月現在進行中のアメリカ大統領選挙候補者の資金集めパーティでの演説の隠し撮り映像が広く報じられることにより、選挙の結果を左右しかねない事実が暴露されたという事態が生じていることからも明らかである。取材者が原則禁止という規定により萎縮して、どうしても必要なときに「隠し撮り(録音)」をためらってしまうようなことがあってはならないのである。
問題は、この原則禁止と例外としての許容のバランスをどう適切に保つかである。そのためには、なぜ「隠し撮り(録音)」が原則として禁止されているかを十分に理解した上で、判断がなされなければならない。今回の事案では、判断責任者となった担当プロデューサーが、自分が行った過去の「隠し撮り(録音)」の事例から今回も許容範囲であると安易に考えたのであるが、他の番組関係者は「部長やデスクの了解が必要です」という形式的な基準の充足がなされたというだけで満足してしまい、「取材内容に重大性と緊急性があり、その取材目的が社会的に正当と認められる場合」という実質要件の充足については、誰も真剣に考えずに不適切な「隠し撮り(録音)」を許容するという結果を招いてしまった。
その意味で、この事案については放送倫理の違反があると言わなければならない。また36分の電話となった理由の歪曲や、実況中継と見せかけた過剰な演出についても、放送倫理違反がある。
しかし委員会は、この事案についてそのような放送倫理違反を審議案件として追及し、意見を公表することは適切ではないだろうと考えた。その理由は、何よりも、この事案について「隠し撮り(録音)」という取材方法が不適切であったと断罪することは、その結論だけのひとり歩きにより、例外的手法によってでも隠された真実を暴くという意欲を持った放送人の足かせとして機能してしまうのではないかと、委員会が恐れたことにある。
また、このような不適切な取材方法の直接の被害者となった化粧品会社と美容室が、フジテレビの謝罪を受け入れ宥恕している一方、「プレゼント付きアンケートでDMや勧誘電話がきた」とか「カットモデルでイメージどおりにならなかった」という社会的事実は、この番組の街頭インタビューでもあきらかにされているように確かに存在しているので、この放送によって視聴者が誤解して被害や不利益をうけたという事実もない。またこの番組は報道番組ではなく、娯楽の要素も盛り込まれている情報バラエティー番組として制作されている。これらの事実を総合すれば、この事案は、「隠し撮り(録音)」という例外的な取材方法が不適切に用いられ、また事実の歪曲も認められるものの、その被害は現時点では既に回復されている一方、審議の対象とした場合の萎縮効果が懸念されることから、TBSテレビ『情報7daysニュースキャスター「二重行政の現場」』についての委員長談話で示した「小さな問題についての誤り」同様、放送局側の自主的・自律的な是正が適切になされていれば、審議の対象とすることは適切でないと考える。
そしてフジテレビは、極めて迅速に内部調査をとげ、的確な謝罪放送をしたうえで、抗議した化粧品会社から宥恕されているうえ、自らの調査によって無料カットモデルの件についても問題があったことを摘出し、美容師からも秘密録音についての事後承諾を得ている。しかもそのうえで自主的に再発防止のための方策を考え、実行しているのである。もちろんフジテレビについては、2010年8月8日と9月26日に放送された『Mr.サンデー』で、街頭インタビュー対象者の事前仕込みと、雑誌付録バッグ所有の通行人の人数の水増しをしたという問題事案があり、そのとき、自主的、自律的に徹底した改善策を実行したはずなのに、一年足らずでまた今回の事案を引き起こしたことによって、前回の改善策は有効には機能していないことが示されたという問題もある。しかし、迅速で自発的な対応による被害者の宥恕、問題発生の原因分析と、対応策の立案、そしてそれを制作現場に「自分のこととして考えましょう」というスローガンで浸透させる努力という点で、前述した委員長談話に述べた「当該局の自主的な取り組み」は十分に行われていると評価するべきであろう。
以上の理由から、委員会はこの事案を審議の対象とはしないこととしたのである。

3.研修用資料『めざましテレビ「ココ調」の不適切表現の問題点から学ぶ』の公表について

フジテレビは、委員会への自発的報告を素材に、研修用資料として以下に掲げる文書を作成した。委員会は、この資料をフジテレビの了解を得て公表することにより、他の各局がこれをそれぞれの制作現場における研修の材料として使用することができ、そのことによって放送倫理と番組の質の向上に役立たせることができるのではないかと考えた。そこでフジテレビに交渉したところ、公開用に手を加えた版の提供を受けることができた。
この文書は、この事案で生じた誤りの原因分析についての貴重な資料であるとともに、研修の材料としても、研修対象者に対する「みんなで考えよう」という課題と、考えるヒントが付されていることによって、他局でも広く活用することが可能になっている。是非とも各局で、それぞれがさらに現場で討論し考える素材として活用することにより、より優れた研修資料を作成していただきたい。委員会は、そのような努力が共有されることによって、過ちが繰り返されないための共通の土台が構築されていくのではないかと考えている。
最後に、公表版の作成にご協力いただいたフジテレビに対する謝意を表明させていただく。

以上

pdfフジテレビ『めざましテレビ』「ココ調」の不適切表現の問題点から学ぶ

pdfフジテレビ『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて

第64回 放送倫理検証委員会

第64回 – 2012年10月

日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』通知・公表について

フジテレビ『めざましテレビ』委員長談話公表について

第64回放送倫理検証委員会は10月12日に開催された。
10月4日に「意見」を通知・公表した日本テレビの『芸能★BANG ザ・ゴールデン』と、10月3日に委員長談話を公表したフジテレビ『めざましテレビ』について意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2012年10月12日(金) 午後5時~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議案
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』に関する意見の通知・公表

日本テレビの『芸能★BANG ザ・ゴールデン』で女性タレントと占い師の同居騒動を取り上げ、新聞の番組欄での告知や番組内のスーパー、ナレーションでこの占い師が出演するかのように表示しながら、実際に出演したのは別の占い師だったという事案。
放送倫理検証委員会は10月4日に当該局に対して委員会決定第15号の意見書を通知し、続いて記者会見をおこなって、これを公表した。事務局から通知・公表ついての報告があり、当日のテレビのニュースや新聞での伝え方をもとに、担当委員を中心に話し合った。

フジテレビ『めざましテレビ』ココ調・無料サービスの落とし穴』についての委員長談話公表

フジテレビの『めざましテレビ』が6月6日に放送した「無料サンプルの落とし穴」企画で、化粧品会社からの電話を意図的に36分間も引き伸ばし、隠し録音を安易に行ったという事案。委員会は2度の討議を経て10月3日に『委員長談話』を公表した。談話では、この事案に放送倫理違反がありながら審議対象としなかったのは、隠し撮り(録音)された被害者への謝罪が受け入れられており、的確な訂正放送や研修など自主・自律による是正策も適切に行われているうえ、隠し撮り(録音)という取材方法が不適切であったとの結論だけのひとり歩きが、真実追究の意欲を持った放送人の足かせとなる恐れがあったからであると説明している。
委員会では、談話の公表の経緯と反響が報告され、また談話の内容についても再確認がされた。
(注:「意見」および「委員長談話」は既にホームページに掲載

以上

2012年7月17日

日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』審議入り決定

放送倫理検証委員会は7月13日の第62回委員会で、上記番組の審議入りを決定した。
対象となった番組は、芸能記者などが出演して芸能情報をバラエティー手法で伝える日本テレビの深夜レギュラー番組『芸能BANG+!』が、5月4日のゴールデンタイムに2時間スペシャルとして放送された、『緊急放送!芸能★BANG占い・離婚・・・渦中のアノ人が記者軍団と激突SP』で、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動にまつわる話を大きく取り上げた。
新聞の番組欄で、「今夜遂にスタジオへ・・・オセロ中島騒動の占い師が謎の同居生活全貌激白」と告知し番組内ではオープニングから45分以上にわたって同様のスーパー、ナレーションなどを繰り返し、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように放送したが、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の占い師の女性で、放送後、当該局に対して多数の抗議が届いたほか、BPOにも視聴者からの多くの意見が寄せられた。
委員会は、当該局からの報告をもとに討議を行った結果、視聴者の信頼という放送倫理の根本を裏切る放送ではないかとして審議入りを決定し、次回の委員会から審議する。

放送倫理検証委員会の「審議」とは?

委員会は放送倫理上問題があると考えた番組について、取材・制作のあり方や番組内容について、審議をします。委員会は、放送事業者および関係者に対し、番組についての関連資料を求めることができます。審議の結果、委員会は、放送倫理上問題があったかどうかなどを意見としてまとめ、当該局に通知し、公表します。

* 審議については、同委員会「運営規則 第4条」をご覧ください。

2012年7月31日

日本テレビ『news every.』の「飲み水の安全性」報道に関する意見

放送倫理検証委員会は2012年7月31日、日本テレビ『news every.』 「食と放射能 飲み水の安全性」に関する意見を、当該局に通知し、公表した。この番組では、利用者が急増している「宅配の水」の利用者と紹介した人が、実はその宅配水メーカーの親族であった。

意見では、故意ではなかったとはいえ、事実確認を怠った結果として宅配水メーカーに関係ある人に好意的な評価を語らせ、放送に求められる客観性、公平性等の放送倫理に違反したと指摘した。

≪委員会決定はこちら≫

提言

東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言

2011年9月22日 放送局:東海テレビ

情報番組『ぴーかんテレビ』で、「怪しいお米」「汚染されたお米」「セシウムさん」と不適切な表示のなされた字幕テロップが23秒間放送されたという事案。委員会は、この放送の背景には、他の放送局にとっても汲みとるべき点があるのではないかとして4項目からなる初めての「提言」をまとめ公表した。

委員長談話

TBSテレビ『情報7days ニュースキャスター「二重行政の現場」』について
放送倫理検証委員会委員長談話

2009年7月17日

大阪府の府道と国道との交差点で、大阪府の清掃車が、清掃用のブラシを上げて国道は清掃しないようにして通行する映像が二重行政の象徴的なシーンとして放送された。しかし、これが通常の作業と異なり、TBSの依頼によるものだったことが判明、TBSも行き過ぎた取材を認め、2週間後にお詫び放送を行った。委員会は審議事案とはしなかったが、委員長談話を公表して、委員会の姿勢を明確にした。

放送倫理検証委員会委員長談話

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TBSテレビからの回答

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第63回 放送倫理検証委員会

第63回 – 2012年9月

日本テレビ「食と放射能 飲み水の安全性」報道に関する意見

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』 …..など

第63回放送倫理検証委員会は9月14日に開催された。
7月31日に通知・公表した日本テレビの「食と放射能 飲み水の安全性」報道事案については、当日のテレビニュースや報道された新聞記事などを見たうえで意見交換を行った。
前回の委員会で審議入りした日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』については、担当委員から意見書原案が提出され、審議の結果大筋で合意を見た。若干の修正を加え、10月の初めに当該局に「意見」を通知し、公表することになった。
「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、電話セールスのトラブルは局側の演出よるものだった等の不適切な取材・表現があったフジテレビ『めざましテレビ』については討議の結果、この事案に関する委員長談話を公表することになった。
また、事務局から9月10日付けで5周年記念冊子を刊行したことと在札幌局との意見交換会を実施したことが報告された。

議事の詳細

日時
2012年9月14日(金) 午後5時~8時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議案
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「食と放射能 飲み水の安全性」報道に関する意見

日本テレビの報道番組『news every.』の中で詳しく紹介され、利用者として重要なコメントをした「宅配の水」の女性利用者が、実は一般の利用者ではなく、宅配の水を製造・販売する会社の経営者の親族(会長の三女で社長の妹)で、執行役員の妻であり、大株主でもあったという事案。
7月31日、当該局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。事務局からそれに関する報告があり、続いて当日のテレビニュースや報道された新聞記事などを見たうえで意見交換が行われた。

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』

日本テレビが5月4日のゴールデンタイムに2時間放送した『芸能★BANG ザ・ゴールデン』の中で、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動を取り上げ、新聞の番組欄での告知や番組内のスーパー、ナレーションで女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように表示した。しかし、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んでいたことのある別の占い師だったという事案。
担当委員から意見書の原案が示され、この原案をもとに審議を行なった。
審議の結果、委員会は意見書原案を基本的に了解し、10月の初めに当該局へ通知し、記者会見をおこなうことを決めた。

委員長談話公表へ 不適切な取材・表現があったフジテレビの『めざましテレビ』

6月6日放送の『めざましテレビ』は、「ココ調」のコーナー企画で、無料サンプルに応募したところ化粧品会社からのセールス電話が36分間にも及んだと報じた。しかし、電話はディレクターが意図的に引き伸ばし、会話は無断録音だったこと、さらに無料カットサービスのロケでも美容師の声を隠し録音していたこと、実況放送風にみせかけた過剰な演出があったことが判明し、前回の委員会から討議に入っていた。
今回は、フジテレビが事前に提出していた「不適切表現の問題点から学ぶ」という社内向けテキストの内容も参考にしつつ、この事案の扱いについて意見を交わした。
各委員からは、この事案の問題点は、意図的な電話の引き伸ばしをしたのにセールストークが長引いたかのように事実をゆがめて伝えていること、隠し録音、隠し撮りは、例外的にしか認められない手法なのに、重大性も緊急性もないにもかかわらず、隠し撮りが許されると安易に判断しているうえ、必要も無いのに後付け実況をしている点で放送倫理違反があるとの指摘があった。さらに2010年8月に起きた同局の『Mr.サンデー』事案との比較や、昨今のプライバシー意識の向上と表現の自由の関係など多岐にわたる意見が交わされたが、最終的には、迅速な訂正放送と謝罪により隠し録音の放送に抗議した化粧品会社の納得は得られていること、美容師も隠し録音放送を事後承諾していること、後付け実況は過剰な演出だが討議の対象とするほどの重みはないこと、迅速な内部調査と再発防止策の策定と実行により当該局の自主的・自律的な取り組みが十分に行われていることなどを総合的に考慮して審議入りはせず、委員長談話を出して、隠し撮り、隠し録音の基準についての問題点を指摘しつつ、審議の対象としなかった理由を説明することとした。またフジテレビが作成した総括テキストは、他局の人が読めば再発防止の共有財産になるとの評価もあったので、フジテレビの同意を得て、上記テキスト全文をBPOのホームページに掲載することにした。

その他

1.「放送倫理検証委員会2007~2012」発刊

BPOの放送倫理検証委員会は2007年の発足から5周年を迎え、これまでの委員会の決定、提言、委員長談話、それに委員会で議論になった事案をまとめた冊子、『放送倫理検証委員会2007~2012』を発刊した。
この冊子は、5年間に60回開かれた、放送倫理検証委員会が公表した勧告、見解を含む13の委員会決定、1つの提言、それに1つの委員長談話をすべて網羅するとともに、委員会で議論となったおもな事案59件を掲載した。
また、発足以来委員長を務めてきた川端和治委員長に、重松清委員が、放送倫理検証委員会がこの5年間何を考え、どんな思いで活動してきたかについてインタビューを行い、冒頭に掲載した。
『放送倫理検証委員会2007~2012』が放送倫理と番組の向上に役立つことを願い、BPO加盟の全国の放送事業者や関係先に配布した。

2.在札幌のテレビ・ラジオ各局とBPO検証委員会の意見交換会開催

在札幌局との意見交換会が9月10日、札幌市内のホテルで開かれた。一昨年の大阪、昨年の福岡に次いで3回目の開催であるが、ラジオ2局を含む8局から55人が、また委員会側からは、川端委員長、重松委員、服部委員の3名が出席した。
意見交換会は、2つのテーマを設け、第1部を「最近の事例から」また第2部を「委員会は発足以来、何を考え続けてきたか」とした。
第1部では、直近の事例である日本テレビの「宅配の水」の意見書のポイントを川端委員長が説明、1年前の「ペットビジネス」事案を踏まえて対応策を作ったはずなのに、なぜ同じようなミスを繰り返してしまったのか、その要因として、血肉化されなかったガイドライン、そして制作担当がベテランであったが故に「お任せ」になってしまうスタッフの意識があることが指摘された。
続いて、重松委員から、ミスは全国で起きていて、その原因や背景を見ると他局にとっても決して他人事ではないという事例を、ここ数年の討議・報告案件から紹介した。
さらに、服部委員が、こうしたミスが続くと行政や政治が介入する口実を与えることになり、放送局として危機感を持つ必要性を訴えた。
第2部では、委員会が発足5周年を機に刊行した冊子に掲載した「川端委員長へのインタビュー」を基に、会場からの質問を交えながら委員会がこの5年間何を考え続けてきたかを鼎談ふうに語り合った。
意見交換会では、会場からそのつどの質問のほかに、あらかじめ参加者に質問カードを配り、休憩中に回収、その質問をそれぞれのパートで適時取り込んだことから、放送局側と委員会側の意見交換が活発に展開される効果が生まれた。
特に、「ミスが起きるのは東京など大きな組織であるがゆえの意思疎通不足ではないかと思っていたが、実際に全国で起きている事例を聞くと、われわれも身につまされる」といった感想が出された。最後に川端委員長が、「番組制作側にぜひともこれを伝えたいという強い意思があるときにすばらしい番組が生まれる。そうした真摯な挑戦を続けている場合に、委員会が頭から「これは放送倫理違反だ」というような形式的な議論をすることは一切ない」と委員会のスタンスを述べた。
意見交換会終了後に開かれた懇親会では、「会場に来るまでは、きっと眠くなると思っていたが、双方のやり取りに聞き入ってしまい、寝る暇もなかった」と冗談めかした感想や、「自分なりに知っていると思ったことが、表面的にしか理解していなかったことがよく分かった」という声があちこちで聞かれた。
また、開催時間が午後2時から5時という時間帯であったため、制作現場からの参加者は限られていたが、「意見のやり取りを現場の若いスタッフにも聞かせてやりたかった」と残念がる局幹部も多かった。

以上

第14号

日本テレビ『news every.』の「飲み水の安全性」報道に関する意見

2012年7月31日 放送局:日本テレビ

福島第一原発の事故の影響で懸念されている水道水の安全性の問題を特集企画で検証した際、最近「宅配の水」として利用者が急増しているボトルドウォーターについても取り上げた。この中で、利用者として紹介され、子どものためにも宅配の水のほうを選ぶとコメントした女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの経営者の親族で、同社の大株主でもあったことが判明した事案。
委員会は、約1年前に同じ放送局の同じ番組の「ペットビジネス」報道でも、類似の問題が繰り返されたことを重視して比較検討した。その結果、取材・制作スタッフが実績のあるベテランだったため内部チェックが空洞化したこと、1年前の教訓をもとに策定された「企業・ユーザー取材ガイドライン」が現場で血肉化されておらず機能しなかったことなどを指摘した。

2012年7月31日 第14号委員会決定

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目 次

2012年11月9日 【委員会決定を受けての日本テレビの対応】

標記事案の委員会決定(2012年7月31日)を受けて、当該局の日本テレビは、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、10月30日、当委員会に提出した。
2012年11月9日に開催された委員会で、報告書の内容が検討され了承された。

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目 次

  • 1. 委員会決定の報道
  • 2. 委員会決定内容の周知徹底
  • 3. 番組審議会への報告
  • 4. 委員会決定前の取り組み
  • 5. 委員会決定後の取り組み
  • 6. おわりに

第13号

テレビ東京『ありえへん∞世界』に関する意見

2011年9月27日 放送局:テレビ東京

沖縄県の「南大東島」を取り上げ、サトウキビ農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ、村から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。委員会は、意図的に事実をゆがめ、視聴者を誤った認識に導く演出が行なわれていたこと、取材対象者への「愛」が欠落していたことなどを指摘した。

2011年9月27日 第13号委員会決定

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目 次

2012年1月13日 【委員会決定を受けてのテレビ東京の対応】

標記事案の委員会決定(2011年9月27日)を受けて、当該局のテレビ東京は、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、12月22日、当委員会に提出した。
2012年1月13日に開催された委員会において、テレビ東京の取り組みが検討され了承された。

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目 次

  • 1. 放送倫理検証委員会決定当日の対応について
  • 2. その後の対応について
  • 3. 再発防止策について
  • 4. 終わりに

第12号

情報バラエティー2番組3事案に関する意見

2011年7月6日 放送局:テレビ東京、毎日放送

1.番組で酵素飲料を飲み、ダイエットに成功したと紹介した女性が、その飲料を販売する会社の社長だった事が分かったテレビ東京の『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(2010年11月8日放送)

2.ホテルを購入しようとしたセレブな女性に密着した取材が、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の『イチハチ』(2010年11月17,24日放送)

3.同じ『イチハチ』で、出演した女性がニューヨークに23件もの不動産物権を持っていると紹介し、その後、毎日放送が女性の所有とは証明できず、事実と異なる情報を放送した可能性が極めて高いと言わざるを得ないと公表した事案(2011年1月12日放送)

委員会は、情報や事実の正確さを前提に制作されている以上、その正確性や公正性に対する確認や裏づけ取材は、バラエティーといえどもあやふやであってはならないと指摘した。
そのうえで、若い制作者たちへの手紙という「別冊」で、委員会への思いを表明した。

2011年7月6日 第12号委員会決定

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目 次

別冊「若きTV制作者への手紙」

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2011年10月14日 【委員会決定を受けてのテレビ東京と毎日放送の対応】

標記事案の委員会決定(2011年7月6日)を受けて、当該局のテレビ東京と毎日放送は、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、9月7日および10月7日に当委員会に提出した。
10月14日に開催された委員会において、両局の取り組みが検討され了承された。

テレビ東京の対応

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目 次

  • 1. 放送倫理検証委員会決定当日の対応について
  • 2. その後の経緯について
  • 3. 再発防止策について
  • 4. 終わりに

毎日放送の対応

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目 次

  • (1) 当社の対応
  • (2) 制作局の取り組み
  • (3) 「意見書」の指摘と「現場の声」
  • (4)再発防止に向けて
  • 【おわりに】

第11号

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見

2011年6月30日 放送局:BS11

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されており、政治的公平性に問題があるのではないかと視聴者から指摘された政治討論番組。当該局は、番組編成の全体で、配慮していると主張したが、委員会は、他の政治関連番組も視聴したうえで、政治的公平性を損なっていることや放送局の自主性が発揮されていないことを指摘した。

2011年6月30日 第11号委員会決定

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目 次

2011年10月14日 【委員会決定を受けてのBS11の対応】

標記事案の委員会決定(2011年6月30日)を受けて、当該局のBS11は、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、9月30日、当委員会に提出した。
10月14日に開催された委員会において、BS11の取り組みが検討され了承された

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目 次

  • ① 放送倫理検証委員会の審議に伴う対応、及び通知当日の対応
  • ② 役員会における対応 放送法及び民放連基準の勉強会実施
  • ③ 番組制作現場での対応 放送基準の勉強会実施
  • ④ 組織改編を実施して専任の番組適正検証委員を設置
  • ⑤ 弊社番組審議会における意見拝聴 及び今後のチェック強化
  • ⑥ 最後に…

第10号

日本テレビ 「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

2011年5月31日 放送局:日本テレビ

番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者でなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。担当ディレクターは、そのことを知りながら、一般客として放送していた。委員会は事実を正確に伝えておらず、公正性も損なわれていると指摘した。

2011年5月31日 第10号委員会決定

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目 次

2011年9月9日 【委員会決定を受けての日本テレビの対応】

標記事案の委員会決定(2011年5月31日)を受けて、当該局の日本テレビは、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、8月29日、当委員会に提出した。
9月9日に開催された委員会において、日本テレビの取り組みが検討され了承された。

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目 次

  • 1.委員会決定の報道
  • 2.委員会決定内容の周知徹底
  • 3.番組審議会への報告
  • 4.再発防止策の策定と実践の経緯
  • 5.BPO委員会決定後の報道局の対応について
  • 6.BPO委員会決定についての報道局 社員・スタッフの受け止め方
  • 7.BPO研修会について

第9号

参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見

2010年12月2日 放送局:長野朝日放送、信越放送、TBS、BSジャパン

参議院選挙に関連して、2つのローカルニュース番組と2つの情報バラエティー番組に対して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた事案。

(1) 長野朝日放送『abnステーション』(6月22日放送)
(2) 信越放送『SBCニュースワイド』(7月8日放送)
(3) TBS『関口宏の東京フレンドパークII』(6月28日放送)
(4) BSジャパン『絶景に感動! 思わず一句 初夏ぶらり旅』(7月11日放送)

2010年7月の参議院選挙比例代表には12の政党・政治団体から186人が立候補したが、長野県内で放送された(1)と(2)は、長野県に関係がある3つの政党の4人の候補者だけを取り上げ、その他の政党や候補者には言及しなかった。一方、(3)は、公示期間中に立候補者である特定の議員の名をあげ所属政党を当てさせるクイズを出題した。(4)は、タレント候補がリポーターを務めた3年前の旅番組を、投票日の夕方の投票時間中に再放送した。 委員会は、公平・公正な選挙は民主主義の根幹であるとして、選挙にかかわるすべての放送関係者に公平・公正性の徹底を求めた。

2010年12月2日 第09号委員会決定

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目 次

2011年3月31日 【委員会決定を受けての当該4局の対応】

標記事案の委員会決定(2010年12月2日)を受けて、当該4局はそれぞれの対応と取り組み状況をまとめた報告書を、当委員会に提出した。
2011年3月31日に開催された委員会において、4局の取り組みが検討され了承された。

長野朝日放送

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目 次

  • 1. はじめに
  • 2. 放送以降の対応
  • 3. 企画意図と放送までの経緯について
  • 4. 決定内容の周知と社内認識の共有
  • 5. 放送番組審議会での意見
  • 6. 勉強会の開催と問題点の把握
  • 7. 再発防止に向けて
  • 8. おわりに

信越放送

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目 次

  • Ⅰ委員会決定後の対応について
  • Ⅱ社内での報告と周知及び問題の共有化について
  • Ⅲ社独自の検証について
  • Ⅳ再発防止に向けた取り組みについて
  • Ⅴ公平・公正な選挙報道に向けて

TBS

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目 次

  • 1.委員会決定後の対応
  • 2.社内での報告と周知、問題の共有化
  • 3.再発防止に向けた取り組みについて

BSジャパン

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目 次

  • 1. 放送倫理検証委員会決定当日の対応について
  • 2. その後の経緯について
  • 3. 再発防止策について
  • 4.終わりに

第8号

TBS『報道特集NEXT』ブラックノート詐欺事件報道に関する意見

2010年4月2日 放送局:TBS

偽札詐欺事件が放送された際、TBSから番組を受注した制作会社のスタッフが、制作過程で配達された郵便物をポストから抜き取って開封するなどの違法な取材が行われたことが外部からの通報で明らかになり、TBSが番組でそれらを説明しお詫びした事案。委員会は違法行為の取材による放送責任を指摘するとともに、放送局と制作会社の信頼関係が空洞化しているのではないかと述べた。

2010年4月2日 第08号委員会決定

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目 次

2010年7月9日 【委員会決定を受けてのTBSの対応】

標記事案の委員会決定(2010年4月2日)を受けて、当該局であるTBSは、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を7月1日付で委員会に提出した。
7月9日に開かれた委員会で、TBSの取り組みを検討し、了承した。

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目 次

  • 1.委員会決定後の対応
  • 2.社内での報告と周知、問題の共有化
  • 3.再発防止に向けた取り組みについて
  • 4.おわりに-「『対等なパートナー』に意義ある中身を」について

第7号

最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見

2009年11月17日

9ヶ月にわたりテレビバラエティー番組について議論し、これまでの意見書のフォーマットや文体とは異なり、意見書そのものをバライティー風に表現した。「バラエティー番組がこれまで人々をタブーから解放し、より自由で、風通しのよい社会を作ることに貢献してきた事実を高く評価するがゆえに、一方でバラエティー番組においては放送倫理がもっと実質的に尊重されるような意見を述べつつ、その特性を発揮するよう制作者を励ますことの出来る方法はないものか、と悩み続け」ながら、作成された。この意見書を素材にした番組が作られ、全民放キー局の制作者によるシンポジウムが開かれるなど大きな反響を呼んだ。

2009年11月17日 第07号委員会決定

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目 次

2010年10月 民放連の取り組み

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目 次

  • 1.会長コメントの発表
  • 2.各社への周知と取り組み
  • 3.BPO放送倫理検証委員会委員と放送倫理小委員会委員との意見交換
  • 4.シンポジウム「バラエティー向上委員会~作りたいバラエティー、見たいバラエティー~」の開催
  • 5.機関誌『月刊民放』でバラエティー番組を考える特集
  • 6.民放連・ATP放送倫理セミナー「バラエティー番組と放送倫理」の開催
  • 7.その他

特集「バラエティーなう」

全文pdf資料1(シンポジウム記録)PDF

目 次

  • 1.民放連・放送基準審議会主催「バラエティー向上委員会」から
  • 2. テレビ・バラエティーはどこへ行く?
  • 3. <お笑い>の未来はいつだって明るい!
  • 4. BPO意見書はどううけとめられたか

第1回民放連・ATP放送倫理セミナー「バラエティー番組と放送倫理」の概要

全文pdf資料2(セミナー記録)PDF

目 次

  • 1. 講演「バラエティー番組における倫理とは」
  • 2. パネルディスカッション「送り手のバラエティー、受け手のバラエティー」

第6号

『真相報道 バンキシャ!』裏金虚偽証言放送に関する勧告

2009年7月30日 放送局:日本テレビ

岐阜県が発注した土木工事に絡み裏金作りが行われているという建設会社役員の証言をスクープとして報じたが、証言が虚偽であることが判明し、結果として誤報となった事案。委員会は、十分な裏付け取材をしなかったために、虚偽の告発情報が放送され、結果的に番組が犯罪行為の手段とされたとして、初めての勧告を出し、日本テレビに検証番組の制作などを求めた。

2009年7月30日 第06号委員会決定

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目 次

2009年10月7日 【委員会決定を受けての日本テレビの対応】

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目 次

  • 1)検証番組の制作、放送
  • 2)社内検証結果の公表
  • 3)訂正放送のあり方の検討
  • 4)勧告の周知徹底
  • 5)番組審議会への報告
  • 6)再発防止策 実践の現状
  • 7)BPO勧告公表後の報道局の対応について
  • 8)勧告についての報道局 社員・スタッフの受け止め方
  • 9)BPOに関するWeb研修について

第5号

NHK教育テレビ『ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか』第2回「問われる戦時性暴力」に関する意見

2009年4月28日 放送局:NHK

戦争と裁判をメインテーマに、戦時下における性暴力を扱った8年前のノンフィクション番組(『ETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか 第2回問われる戦時性暴力」』)が制作過程において政治的な圧力により内容が不当に改変されたと関係者による指摘があった事案。委員会は公共放送NHKの自主・自律を危うくし、視聴者に重大な疑念を抱かせる行為だったなどと、指摘し、放送・制作部門と国会対策部門の分離がなされるべきだと述べた。

第4号

光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見

2008年4月15日 放送局:キー5局・NHK

「光市事件」の報道を検証する会から、「光市事件の差し戻し審報道では、あまりにも弁護団へのバッシングがひどく、事実関係についても間違いや歪曲がある。裁判員制度導入を間近に控えて、裁判報道のありかたについて、委員会で検証して欲しい」などと申し入れがあった事案。委員会は「集団的過剰同調」など3点を示して、テレビ報道が「巨大な凡庸」に陥っているのではないかと指摘した。

第3号

テレビ朝日『報道ステーション』マクドナルド元従業員制服証言報道に関する意見

2008年2月4日 放送局:テレビ朝日

「マクドナルド製造日偽装問題」のニュースの中で、店の制服とバッジをつけた女性が「直営店でも商品の調理日改ざんをしていた」との内部告発の証言を放送したが、女性は現職ではなく、番組は、店員の制服を着て店長代理のバッジをつけた元店員が内部告発の証言をするという演出をしたことについて謝罪放送をし、また、証言者が番組関係者であることも明らかにした事案。委員会は、こうした安易な演出は、報道にあたっての慎重さに欠けるものであったなどと指摘した。

第2号

FNS27時間テレビ「ハッピー筋斗雲」に関する意見

2008年1月21日 放送局:フジテレビ

フジテレビは、27時間テレビのコーナー企画「ハッピー筋斗雲」で、素晴らしい活動を行っている人として地震の被災者やいじめ問題で苦しんでいる学校関係者に亡き父の名を冠したりんごを送って励ましている一般の人を紹介。その際、"ドッキリ企画"として、その人にスピリチュアルカウンセラーのカウンセリングを受けさせたところ、のちに、本人から「善意の放送の形をとりながら、結果的に自分や周囲の人たちが傷つけられた」と、抗議が寄せられた。
委員会は、放送基準が慎重な扱いを求める「スピリチュアル・カウンセリング」なるものを、「おもしろく」見せるために、出演者の生活に関わるマイナス情報を十分な裏付けを取らずに放送したことについて、取材・構成・演出上、放送倫理違反があると判断した。

2008年1月21日 第02号委員会決定

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目 次

2008年3月27日 【委員会決定を受けてのフジテレビの対応】

標記事案の委員会決定(1月21日)を受けて、当該局のフジテレビは社内で議論・検討した結果を、「『ハッピー筋斗雲』に関する報告書」にまとめ、3月27日に当委員会に提出した。この報告書は、民放連の「放送倫理・番組向上機構への対応に関する申し合わせ」(2003年6月19日)第2条によるものである。

4月1日に開催された委員会において、この報告書が委員会の意見を踏まえた改善策となっているかどうかが討議された。フジテレビは、バラエティ制作センター所属の全プロデューサーに対する社内アンケートを実施し、これをもとに番組プロデューサー28名を集めて勉強会を開催した。それをうけて編成局、バラエティ制作担当者、コンプライアンス担当者が検討会議を開催して、一般人出演企画における出演者の人権への配慮を自社の「番組制作ハンドブック」の一項目に加え、この改善策に対する外部有識者のコメントも得ていた。委員会では、霊能者に関する考察が不十分であるという指摘はあったものの、委員会の指摘についてバラエティ番組制作の全プロデューサーの意見を聞くなど、制作現場の自覚を促す改善策の取り組みがなされたことについては、委員会として高く評価することとした。

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目 次

  • 1. 弊社の対応経緯
  • 2. 番組プロデューサー・アンケートの実施
  • 3. 番組プロデューサー勉強会の実施
  • 4. 一般人に番組に出演していただく際の留意点について
  • 5. 留意点の社内外の徹底について
  • 6. 外部有識者からいただいたご意見

第1号

TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家関連の2番組に関する見解

2007年8月6日 放送局:TBS

TBSは、不二家の元従業員の内部告発に基づき、賞味期限切れチョコレートの再利用疑惑を報じた。その際、不適切な表現等があったとして、後日の番組内で、訂正とお詫びをした。委員会は審理を行い、発足後最初の決定であることから、決定内で放送倫理検証委員会の役割、審議、審理の区別、見解と勧告のちがいなどを詳しく説明した。そして、内部告発の根幹部分については、それを信じるに足る相当の根拠や理由はあったと判断。ただし、取材メモの紛失や広報窓口依存の取材、不注意なVTR編集、チョコレート製造工程に関する認識不足、断定・断罪的なコメント、放送前の打合せの不十分さなどに起因する不適切な放送をしたことに放送倫理上の落ち度があったと指摘した。また、謝罪の内容についても、訂正お詫びの主語や範囲の曖昧さ、放送から時間がかかりすぎている点を問題視した。最後に「番組は、もっとちゃんと作るべきだ」との委員の声でまとめた。

2007年8月6日 第01号委員会決定

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目 次

2007年11月16日 【委員会決定を受けてのTBSの対応】

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目 次

  • Ⅰ.BPO「見解」発表後の当社放送対応について
  • Ⅱ.検証活動について
  • Ⅲ.上記1~3に関する当社の対応方針について
  • Ⅳ.社内処分について
  • Ⅴ.番組制作体制の見直しについて
  • Ⅵ.組織変更について
  • Ⅶ.社内研修について
  • Ⅷ.むすびに

bbb

テレビ東京『ありえへん∞世界』に関する意見

2011年9月27日 放送局:テレビ東京

沖縄県の「南大東島」を取り上げ、サトウキビ農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ、村から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。

2011年9月27日 第13号委員会決定

川端 和治、小町谷育子、吉岡 忍、石井 彦壽、香山 リカ、是枝 裕和、重松 清、立花 隆、服部 孝章、水島 久光

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目 次

2012年1月13日 委員会決定を受けてのテレビ東京の対応文

標記事案の委員会決定(2011年9月27日)を受けて、当該局のテレビ東京は、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、12月22日、当委員会に提出した。
2012年1月13日に開催された委員会において、テレビ東京の取り組みが検討され了承された。

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目 次

第62回 放送倫理検証委員会

第62回 – 2012年7月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』 …..など

第62回放送倫理検証委員会は7月13日に開催された。
「宅配の水」の利用客として登場した女性が、宅配水メーカーの経営者の親族だったことが判明した日本テレビの報道番組『news every.』は、2回目の審議が行われた。1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちが、なぜ繰り返されたのかを中心に検証した意見書の修正案が了承され、7月中に通知・公表を行うことになった。
日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』の新聞の番組欄や番組内のテロップなどで、話題となっている占い師が出演するかのように告知しながら別の占い師が出演した事案についても、前回に続いて討議した。その結果、視聴者の信頼への裏切りという、放送倫理の根本に関するところで問題があるとして審議入りを決めた。
また、フジテレビ『めざましテレビ』の「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、電話セールスのトラブルは局側の演出よるものだった等の不適切な取材・表現があった事案について討議。取り扱いについては次回委員会で結論をだすことになった。

議事の詳細

日時
2012年7月13日(金) 午後5時~9時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議案
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

4月25日に放送された原発事故後の「飲み水の安全性」の特集企画の中で、「宅配の水」の利用者として紹介された女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの経営者の親族(会長の三女で社長の妹)で執行役員の妻であり、大株主でもあったことが判明した事案。
2回目の審議で、担当委員から、1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちがなぜ繰り返されたのかについて、分析・検証した意見書の修正案が委員会に提出された。
意見交換の結果、若干の補足を加えることでこの修正案は了承され、7月中に当該局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』

日本テレビは5月4日のゴールデンタイムに、深夜のレギュラー番組『芸能★BANG+!』を『芸能★BANG ザ・ゴールデン』として2時間放送した。この放送では、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動を大きく取り上げた。新聞の番組欄での告知や番組内のスーパー、ナレーションでは、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように表示したが、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の女性占い師だったという事案。
前回の委員会の後、日本テレビは委員会に対して、追加の資料として『芸能★BANG ザ・ゴールデン』問題の反省をもとにした全社的な取り組みを示すとともに、別紙として、経営トップからの社員への指示、その後開かれた研修会での社員の意見などを報告した。
委員会はこれらをもとに、前回に引き続いての継続討議を行った。バラエティ-番組の演出をめぐる放送倫理が問題となったこの事案の扱い方の難しさを中心に長時間に渡る討議がなされた。そして、視聴者からの信頼という放送倫理の根本を裏切っていることから、審議に入らざるを得ないという結論に達し、次回の委員会で審議を行うことになった。

【委員の主な意見】

  • 前回の討議でもあったが、具体的に放送基準などの何に当たるかというのは非常に難しい。
  • 要するに視聴者に対してフェアでないということ、視聴者を大事にしていないということで、まさに倫理の問題だと思う。
  • 今回のケースは、制作者の意図に反して「誤解」された事案ではなく意図的に視聴者の「誤解」を狙った「虚偽」だと考える。
  • ここまでレベルの低い案件はBPOが審議する前に局の内部で対応し、けじめをつければよい。委員会がわざわざ意見を述べるほどの奥行きのない事案だと思う
  • 本来は、本当にタレントと同居していた占い師の出演がだめになった段階で、この企画は占い師の登場を前提としないで、霊能者や占い師に騙されてお金を取られた出演者のトーク番組に変えてしまえばよかった。問題の占い師は出演しないことになったのに、変えられないまま最後まで行ってしまったとしか取りようがない
  • このケースが誤解をねらった確信犯ではなく、視聴者がそのように受け取るとは考えなかったというならば、コミュニケーション能力の低い制作者で、それだけで失格だ。

不適切な取材・表現があったフジテレビの『めざましテレビ』

問題となったのは6月6日放送の「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、ディレクターが実際に化粧品会社の無料サンプルに応募、その後かかってきた電話が36分間も続いたと放送したが、実は電話のやりとりの大部分は番組側が意図的に質問を重ねて会話を引き伸ばしていたという事案。また無料カットサービスを受けた美容室では、客になってくれた女性にマイクをつけ美容師との会話を録音した。
当該局は6月13日の同番組内でお詫びコメントを放送。7月9日には検証委員会に自主的に報告書を提出した。そのなかで、あたかも一方的な勧誘が長く続いたようになった点、さらに隠し撮り・隠し録音について社内規定に沿った許諾手続がとられなかったことに問題があったと自ら認めた。取材先にも直接陳謝したという。委員会は様々な角度から意見を出し合ったが、取り扱いは次回委員会で結論を出すことにした。

【委員の主な意見】

  • こちら側で質問を作って、結果的にできた36分を証拠に、ひっぱり電話が向こうからあったように表現する部分は悪質。
  • サンプルを送るだけだから、先方はセールストークをする理由はほとんどない。それを迷惑電話がくるという企画に合わせて撮ろうとするからむりやり引き伸ばすことになる。
  • モザイクが一般化し、水際で隠せばなんでもOKという雰囲気が怖い。
  • 原則、盗聴はするなと局の内規にあるが、なぜそのような内規があるのかを理解していないから、これは例外だと思いこむ。
  • 技術がよくなり、いまは秘密の意識なしに音が録れてしまう。
  • 放送局であることを明かさずに取材することは多いので、隠し録音が「いけない」と言われると逆に萎縮する懸念がある。
  • 自分の企画にはめこむ形で隠し撮りを利用しているが、これが一般化して隠し撮り自体がタブーだという流れになることは危険。そうなると表玄関からしか取材できなくなり、撮れるものも撮れなくなる。

以上

第61回 放送倫理検証委員会

第61回 – 2012年6月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

新聞の番組欄や番組内テロップなどで、話題の「占い師」が出演するかのように表示し、実際には別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン ……など

第61回放送倫理検証委員会は6月8日に開催された。「宅配の水」利用客として登場した女性が、宅配水メーカーの経営者の親族だったことが判明した日本テレビの『news every.』について、まず審議が行われた。担当委員から、担当ディレクターを含む11人に対して実施したヒアリングの内容が報告され、1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちが繰り返された原因や背景について意見交換が行われた。その結果、論点がほぼ整理できたため、次回の委員会で意見書をまとめることになった。また、日本テレビのバラエティー番組『緊急放送!芸能★BANG ザ・ゴールデン』で、新聞の番組欄や番組内テロップに、芸能ニュースで 話題となっている「占い師」が出演するかのように表示したにもかかわらず、実際には別の「占い師」が出演したために、多数の苦情が寄せられた問題について、委員会としてどう取り扱うべきかの討議がおこなわれた。

議事の詳細

日時
2012年6月8日(金) 午後5時~9時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

『news every.』は4月25日放送の特集企画で、福島第一原発の事故の影響で懸念されている水道水の安全性の問題を検証した際、最近「宅配の水」として利用者が急増しているボトルドウォーターについても取り上げた。この中で、利用者として紹介され、子どものためにも宅配の水のほうを選ぶとコメントした女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの親族(会長の三女で社長の妹)だったことが判明し、委員会が前回審議入りを決めた事案。
2011年1月8日に放送された『news every.サタデー』で、ペットサロンやペット保険を取り上げた際にも、一般利用客として紹介した2人の女性が、運営会社の従業員だったことが発覚した。委員会は、事実を正確に伝えておらず、また、公正性が損なわれている点で放送倫理の違反があるという意見書を公表し、当該局も再発防止策を策定実施したにもかかわらず、なぜ類似の過ちが繰り返されたのかが、論議の焦点になった。
「ペットビジネス」事案を担当した2人の委員が今回も担当者に指名され、この企画の取材・制作にあたった2人のディレクターをはじめ、内容をチェックしたプロデューサーや、宅配水メーカーの関係者から聞き取りをした報道局幹部など、あわせて11人からヒアリングを実施した。
ヒアリングは、「ペットビジネス」事案を教訓に、取材対象企業の関係者をユーザーとして扱わないことや対象企業に安易にユーザーの紹介を依頼しないと定めた当該局の「企業・ユーザー取材ガイドライン」がどこまで浸透・機能していたのか、編集・制作段階での局内のチェックはどのように行われたのか、などを中心に進められ、それをもとに問題点を整理した意見書素案が委員会に提出された。
意見交換の結果、今事案の論点はほぼ整理できたため、次回の委員会で意見書をまとめ、7月いっぱいを目途に通知・公表することになった。

新聞の番組欄や番組内テロップなどで、話題の「占い師」が出演するかのように表示し、実際には別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』

芸能記者などが出演して芸能情報をバラエティー手法で伝える日本テレビの深夜レギュラー番組『芸能BANG+!』が、5月4日のゴールデンタイムに『緊急放送!芸能★BANG占い・離婚・・・渦中のアノ人が記者軍団と激突SP』のタイトルで2時間スペシャルとして放送され、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動にまつわる話を大きく取り上げた。
新聞の番組欄で、「今夜遂にスタジオへ・・・オセロ中島騒動の占い師が謎の同居生活全貌激白」と告知した。さらに番組内ではオープニングから45分以上にわたって同様のスーパー、ナレーションなどを繰り返し、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように放送した。
しかし、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の占い師の女性だった。放送後、当該局に対して多数の抗議が届いたほか、BPOにも視聴者からの多くの意見が寄せられた。
委員会は、当該局からの報告をもとに討議を行ったが、虚偽の事実を告知して視聴者を誤解させたという意味で審理案件ではないかという意見から、騙されるということも含めてバラエティーのカテゴリーの中に含まれるという意見まで、幅広い意見が出て議論が長時間交わされた。今回の委員会では結論に至らず、次回の委員会で更に討議を続けることになった。

【委員の主な意見】

  • 新聞の番組欄でも番組中のテロップでも嘘をついている。結果的にではなく、意図的に嘘をついている。これは時間泥棒ではないか。
  • こうしたバラエティーの場合、これもギャグの範疇という事案はなくはない、しかしこの放送の場合はどう考えてもそうはみられない。
  • 作り手のモラルの問題である。視聴者に対する目線が、視聴者を低く見て馬鹿にしているのではないだろうか。
  • 全体として占い師に騙されてはいけないという啓蒙番組のようにとれなくもない。最後の占い師の部分もそれなりに面白い。
  • 騙されることも含めてバラエティーというカテゴリーに含まれる。視聴者との間で、騙し騙されるという関係自体がバラエティーという番組の一つのスタイルである。
  • 騙し騙されるという関係については、制作者と視聴者が了解しあってなければならないはずだが、この番組ではそれがない。
  • この番組は、オセロ中島騒動の占い師という現実の情報をとりあげている。そう考えると情報番組という側面がある。とすれば視聴者に嘘をついて引っ張るようなことをしてはいけないというしかない。
  • 視聴者は、この番組を見るときに、芸能ニュースを見ようとしたから怒ったのではないか。騒動についての情報を占い師本人から知りたいと思って見たから、期待が裏切られたということになった。
  • 裏番組の制作者は、この番組を許せないと思う。裏番組の制作者にとってこの番組は公正ではない。

以上

第60回 放送倫理検証委員会

第60回 – 2012年5月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

取材対象を十分確認せず誤映像を放送した熊本放送の『夕方いちばん』

第60回放送倫理検証委員会は5月11日に開催された。
日本テレビの報道番組『news every.』(4月25日放送)の特集企画の中で、最近利用者が急増している「宅配の水」(ボトルドウォーター)について取り上げたが、利用客として登場した女性は、宅配水メーカーの経営者の親族(会長の娘、社長の妹)だったことが判明、当該局はお詫び放送をして謝罪した。
同じ番組で、1年余り前に「ペットビジネス」の運営会社の社員を一般利用者として紹介した事案では、委員会は放送倫理違反として意見書を公表したが(委員会決定第10号)、類似の問題が同一番組で繰り返された原因を検証するため、この事案も審議入りすることになった。
熊本放送の県域情報番組『夕方いちばん』のニュース枠で、洋服加工工場で起きた作業員の死亡事故を伝えた際、別の工場の映像が誤って放送された。誤報の原因は、警察の正式な発表前にインターネット検索で見つけた誤った情報が、取材者の一方的な思い込みや不十分な確認作業で最後まで訂正されなかったためで、当該局は5回の訂正・謝罪放送をして、誤報の被害者の納得を得た。被害は回復され、放送後に十分な原因調査を行い改善策も示しているとして、討議を終えた。
番宣や番組内で、芸能ニュースで話題となっている占い師が出演するかのように表示したが、実際には別の占い師が出演したバラエティー番組に対し、騙されたと批判する視聴者意見が多数寄せられた事案が事務局から報告された。当該局から報告書を求め、次回の委員会で討議を行うことになった。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」について、新たに名古屋地区の放送局から対応報告があった旨、事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2012年5月11日(金) 午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、吉岡委員長代行、石井委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

『news every.』は4月25日放送の特集企画で、原発事故の影響で懸念されている水道水の安全性の問題を検証した。その中で、最近「宅配の水」として利用者が急増している専用サーバーを使用するボトルドウォーターについても取り上げ、子どものためにも宅配の水のほうを選ぶという女性を、一般利用者として詳しく紹介した。ところがこの女性は、宅配水メーカーの親族(会長の三女で社長の妹)だったことが、当該局やBPOに寄せられた視聴者意見から判明し、当該局は1週間後に「お詫び放送」をして視聴者に謝罪した。
2011年1月8日に放送された『news every.サタデー』で、新しいペットビジネスとしてペットのマッサージサロンやペット保険を取り上げた際にも、一般利用客として紹介した2人の女性が、運営会社の従業員だったことが発覚した。委員会は、報道番組で従業員を一般利用者として紹介することは、事実を正確に伝えておらずまた公正性をそこなうという意見書を公表(委員会決定第10号2011年5月31日)していた。
当該局は、この事案のあと、「企業・ユーザー取材ガイドライン」を新たに作成して、取材対象企業の関係者をユーザーとして扱わないことや対象企業に安易にユーザーの紹介を依頼しないことなどを定めていた。しかし、当該局の説明によると、今回の特集企画の取材・制作担当者の中で、出演者の女性が対象企業の関係者かどうかに気を配ったり確認したりした者は、誰もいなかったという。
委員会は、「ペットビジネス」事案を教訓に作られた「企業・ユーザー取材ガイドライン」がどこまで浸透・機能していたのか、再発を防止するための社内研修はどのように行われていたのかなど、類似の問題が繰り返された原因や背景をきちんと検証する必要があるとして、審議入りすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • のど元過ぎればではないけれど、たった1年でみんな忘れ去られてしまうのだろうか。1年前、いろいろ議論を重ねて作った意見書が何の役にも立たなかったのだとすれば、それは問題ではないか。
  • 前の事案と比較して最大の相違点は、ペットビジネスのディレクターは承知の上で故意にやったのだが、今回の取材者は親族だと知らなかったと言っていること。制作過程の問題を軽重で言えば、今回はやや軽い。
  • 結果的に企業に近い人が広告的な活動をするのを防げなかったという点では同じではないか。今回のほうが、より経営者に近い人物だし、商品の大写し映像も多く、より広告的だったとも言える。
  • 再発防止の切り札だったはずの「ガイドライン」が、なぜ全く役に立たなかったのか。実際に使われていたのか。今回の取材・制作関係者から徹底してヒアリングをすることが必要だろう。
  • 今回の取材・制作担当者は、報道番組の経験や実績が豊富な中堅以上の人たちだったということだが、中堅やベテランになるほど、ガイドラインはあっても気にとめず、自分の経験ややり方で仕事を進めるのではないか。
  • 社内の研修はどうしても若手社員や若手の社外スタッフ中心になりがちで、中堅クラスや管理職は漏れていたのではないか。実効性の高い研修がきちんと行われていたかどうかだ。

取材対象を十分確認せず誤映像を放送した熊本放送の『夕方いちばん』

熊本放送の県域情報番組『夕方いちばん』のニュース枠で、今年2月24日、熊本市内の洋服加工工場で起きた作業員の死亡事故を伝えた際に、誤って別の工場の映像を放送した。この2つの工場は、業務内容が同じ、会社名まで酷似しており、工場の所在地も町名・字名まで同一で番地だけが異なっていた。
事故の一報連絡を受けたニュースデスクが、断片的な情報をもとにインターネットで検索した結果、別の工場のほうを事故が起きた工場と思い込んで、カメラマンに撮影を指示した。カメラマンはなんら変わった様子が見られない工場に不審を抱き、デスクに問い合わせたが、デスクは思い込みから間違いないと答え、カメラマンは工場側にコンタクトを取らずに撮影をした。その後、警察から正式な発表があったが、確認取材が不十分で、誰も誤映像であることに気づかなかった。
当該局は、間違えられた工場の苦情を受けて、5回の訂正・謝罪放送をして被害者の納得を得たほか、総務省に放送法に基づく訂正放送の報告を行った。委員会は、報道の根幹にかかわるミスではあるが、間違って映像を放送された工場の名誉回復は訂正・謝罪放送で果たされており、また放送局は放送後に十分な原因調査を行い具体的な改善策も示しているとして、審議入りしなかった。

以上

第59回 放送倫理検証委員会

第59回 – 2012年4月

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

平成24年度地方局との意見交換会の計画

第59回放送倫理検証委員会は4月13日に開催された。
NHK松山放送局の県域ニュース番組『おはようえひめ』で2月16日、ニュースと関係のない不適切な架空字幕が放送された事案について、NHKから新たに提出された回答書をもとに2度目の討議を行ったが、審議入りしないことになった。
ただ、他局でも類似したミスが起きており、委員長コメントをBPO報告の議事概要に付け加えることにした。
また、事務局から平成24年度の地方局との意見交換会の実施に関しての説明を行った。

議事の詳細

日時
2012年4月13日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、立花委員、服部委員

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

2月16日、NHK松山放送局の朝のニュース番組『おはようえひめ』で「しまなみ海道」関連のニュースを放送中に、「窃盗の疑い 愛媛大学教授逮捕」という、ニュースと関係のないタイトル字幕が2秒間放送され、訂正とお詫びが翌朝までに3度放送された事案。
委員会の再質問に対し、NHKから事故原因の詳細な説明と再発防止の具体策があらためて提出された。回答書では、契約スタッフが作成した練習用字幕が消去されずに電子台本に残った経緯、最初のおわびでは字幕のような事実がないことを確認する時間がなかったために「関係のない字幕が表示されました。失礼いたしました」とお断りするのが精一杯であったこと、契約スタッフの監督責任体制に不備があったので改めること、今後は固有名詞を使わない例文の用意など練習マニュアルを見直すことにより同種の事案の再発防止を図ること、放送中の緊急回避操作を確認したことなどが示された。
討議の結果、事実に反する字幕の放送による被害は迅速な訂正により回復されているし、提示された再発防止策は適切で同類のミスは防げるであろうとの判断から審議入りしないことにした。ただ、不適切字幕が出ないような対策が「ぴーかんテレビ問題」以後もとられていなかったことは問題であり、さらに電子台本については予期せぬ事態に対応する方法が技術的に複雑な点を危惧する意見が出た。

【委員の主な意見】

  • 不適切字幕の防止策として練習用には固有名詞を入れないというのだから、この類の事故は防げると思う。
  • 字幕の事実関係の有無をすぐには確認できなかったためとりあえずのお断りを入れ、確認ができた後に名前を挙げられた大学の名誉についてお詫びをしたのだから、これでいい。
  • ネクスト画面にでた字幕を急遽削除すると画面上は消えたように見えるが、実際には削除されなかったというのは、レアケースとはいえ不親切なシステムだ。
  • 2種類ある字幕系統の仕組みを完全に把握しておかないと削除方法もわからないということか。
  • システム設計に問題はないか。普段使わない回避操作をとっさにやれというのは無理ではないか。
  • 事故が頻発するのは問題だが、技術は複雑化しており、絶対間違いのない放送を求めるのは過剰な負担をかける気がする。

また、委員会では、バーチャルスタジオを使った他局の番組で最近、間違った映像が出てしまった事例についても意見が交わされた。昨今はコンピューター技術が番組制作に深く関わっており、誤字幕、誤映像等のミスが生じた場合の対応を再点検する必要があるのではないかという意見があがった。「ぴーかんテレビ問題」を契機に委員会として「提言」をおこなって注意喚起をしたにもかかわらず、同種のミスが散見されるので、委員長コメントを出すことにした。

■委員長コメント

最近、電子台本とかバーチャルスタジオとかネット上の動画の利用といった放送技術がさらに進化し、またより広く利用されるようになったことに関連して、誤って放送局が意図しなかった不適切な結果を招いてしまった事案が、委員会で討議の対象となったり報告されたりした。進展を続ける放送技術に、放送をする人間側が十分に対応できていないのではないかと思われる現象が見られるのである。
もとより当委員会は、放送倫理の向上という大きな目的のために設けられた機関であり、単なる技術上の問題に起因する放送事故について意見を述べる立場にはないが、東海テレビの『ぴーかんテレビ』における不適切なテロップの放送問題のように、誤って放送されてしまった内容によっては、視聴者の誤解など重大な放送倫理問題を招来する場合もある。
番組制作に使用される技術やシステムは、人間は必ず誤りを犯すということを前提に、たとえ誤りがあってもそれが重大な結果には直結しないような仕組みが用意され、運用されていなければならないはずである。今、起こっている問題は軽微であるが、このままでは将来重大な事故が発生するおそれがあるのではないかと憂慮されるので、委員会としてあらためて注意喚起しておきたい。

平成24年度地方局との意見交換会の計画

これまで地方局と委員会との意見交換会は、一昨年大阪で、また昨年には福岡で、それぞれ近隣の県の放送局も参加する形で行われ、参加局からは、「なかなか接する機会がない委員から生の話が聴けて有意義だった」と概して好評であった。こうした機会を多く設けてほしいという放送局の要望を受けての計画案として、

  • 過去2回の例と同様に一定の地区で多くの局に参加を募る形式
  • (1) の形式にテーマごとの分科会を設け、二部構成にする
  • 都道府県単位で、各放送局に参加を募る形式
  • 系列のブロック単位で行う形式

など、放送局の意向に沿った様々なパターンを検討していることが説明された。

以上

第58回 放送倫理検証委員会

第58回 – 2012年3月

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

第58回放送倫理検証委員会は3月9日に開催された。
NHK松山放送局の県域番組「おはようえひめ」で2月16日、ニュースと関係のない不適切な架空字幕が放送された件について討議を行った。字幕作成の練習で使ったものが削除されずに電子台本に残っていたための事故であったが、NHKの経緯報告では、技術的仕組みや担当者の業務範囲などについて分からない点があるため継続討議となった。

議事の詳細

日時
2012年 3月9日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

2月16日、NHK松山放送局の朝のニュース番組「おはようえひめ」で、「窃盗の疑い 愛媛大学教授逮捕」という架空の字幕が2秒間放送され、その訂正とお詫びが翌日朝までに3度放送された事案。
NHKから提出された経緯報告によれば、深夜に放送用の装置を使って新人訓練を行った際に作成した字幕が、消去されずに送出されたもの。
訓練は、タイトルのほか、漢字を誤記しやすい容疑者の氏名など架空の字幕を5枚作成、送出用の電子台本に登録したのち消去をかけたが、そのうちの1枚が消去されずに残ったことが原因という。この字幕は放送直前のチェックでは発見できず、また放送中にも緊急に外す措置をとったがうまくいかなかったという。
不適切な架空字幕については、東海テレビ『ぴーかんテレビ』問題をうけて昨年9月に検証委員会から「提言」を全加盟社に発信し再発防止を呼びかけていた。それにもかかわらず発生した事故であることから、字幕の作成理由や、事故に至った原因等について、経緯報告書に基づいて議論した。その結果、原因や事後対応になお分かりにくい点があるのでNHKに再度説明を求めて、次回の委員会で判断することになった。

【委員の主な意見】

  • 最初の訂正では「ニュースと全く関係がない字幕が表示されました」 としか言わなかった。これでは名前を出された大学は事実かどうか不安になる。
  • 字幕習熟訓練のルール、デスクとスタッフの業務範囲が分からない
  • あれだけピーカンテレビで問題になったのに、もう少し事実関係を明らかにしてほしい。 提言が活かされていない。
  • この人たちは真面目に取り組み、ふざけていたわけではないようだが、消去を忘れたのは問題だ。
  • やはり研修に不備がある。どのように再発防止につなげるか。
  • 番組前にチェックした際に発見できなかった字幕が、なぜ本番で表示されたのか。
  • 人は必ず過ちを犯すから、システムはそれを前提に組み立てて運用する必要がある。誰かが間違ったときにも実害が生じない仕組みを考え、また誤りを迅速に回復する訓練をしておかなければいけない。

以上

第57回 放送倫理検証委員会

第57回 – 2012年2月

「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」についての各局対応報告書のまとめ

第57回放送倫理検証委員会は2月10日に開催された。
2011年9月22日に公表した「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、本年1月末までに11局から対応報告書が寄せられた。事務局は、これを取りまとめて委員会に説明した。

議事の詳細

日時
2012年2月10日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」についての各局対応報告書のまとめ

「怪しいお米」「「セシウムさん」など不適切なテロップが放送された東海テレビの『ぴーかんテレビ』問題に関し委員会は、当該局をはじめとしてBPO加盟全放送局に対し、2011年9月22日、BPO規約第23条に基づき4項目にわたる初の『提言』を行った。
その内容は、

  • 全社的なレベルで、あるいは部署や制作現場ごとに、放送の使命について話し合う機会を設ける
  • 番組の制作に必要な人員と時間が確保されているか、とくに生放送番組で不測の事態に対応できるゆとりが確保されているかについての再点検
  • スタッフの間で忌憚のない意見交換や問題提起ができる職場環境の整備
  • 制作現場スタッフの研修が、所属やフリーかを問わず、十分行き渡り、納得できる方法で実施されているかの再検討と、改善及び実りある研修の継続

である。

これを受けて、各局では様々な形で点検、検討が行われ、このうち、きっかけとなった東海テレビをはじめ、在京テレビキー全局、在阪準キー2局のほか、北海道、長野の地方局など、これまでに合わせて11局から『提言』への対応や取り組み状況が委員会に報告された。
それによると、東海テレビが自ら放送した「検証番組」をHPにリンクしたことで、各社とも不適切テロップが放送されるに至った経緯を知ることが出来たこともあり、この検証番組や、委員会の『提言』をもとに、全社的レベル、あるいは部署ごと、番組ごとに討論を重ねたことが報告された。
また、「検証番組」や『提言』について外部スタッフも含めて、制作現場をはじめ各セクションからアンケートをとり、その一部を報告書の中に書き込んだり、現場の感想や意見を取りまとめて報告書に添付した放送局が多かった。
そして、不適切テロップが作成されること自体、信じ難いことだとしつつも、それが放送されるに至った過程を見た場合、今回の事案が他局で起きた稀有な事例として片付けられない、と捉えている局がほとんどであり、「他山の石」として制作・放送の各段階において再点検を行うとともに、スタッフへの周知、研修を行っている。

1. 放送の使命について

各放送局には、すでに各部局、番組単位のほか社内横断的な会議が定期的に設けられ、放送に関わる諸問題を話し合い、情報の共有化を図っているが、放送の使命、放送のあり方について、これまで以上にこうした会議で論議を深める方向性を打ち出している局が多い。
一方、東海テレビの事案がテロップの作成に起因したこともあり、日常、放送で多発する誤字・誤読が視聴者の信頼を失うきっかけにつながるとして、「ミス撲滅」の強化を図り、実際に発生した事例を集約して、なぜそうしたことが起きたのか、分析を行っている局も複数あった。
そうした過程を通じて、ミスの発生には、制作に携わるスタッフ個人によるものと、組織の問題が混在することを再確認した、とある局は述べている。

2. ゆとりの確保

『提言』後、各放送局とも制作に必要な人員、時間、予算などの環境整備について洗い出しを行っているが、その点検を通じて、不安の声があった一部現場について、さらに実情を精査し、必要に応じて具体策を講じるとした局や、実際に生情報番組について増員した局もある。
一方、何をもって「ゆとり」と言うかについて戸惑いがありつつも、単に人数を確保するだけでなく、番組への参加意識・スキル・モラルなどスタッフの質の向上という視点が必要であり、スタッフ同士が助け合える職場環境が、結果的に二重、三重のチェックを生み出し、それがゆとりにつながるのではないかと考えている現場の声を寄せた局もある。

忌憚なく意見交換できる環境

ほとんどの局では、職場のコミュニケーションについて、上下関係、社員か外部スタッフかにかかわらず、何でも言い合える風土作りに力を注いでいる。
しかし、まだ風通しがよくないと感じているスタッフの声を寄せた局もあった。
そして、いかにスタッフが有機的にまとまるかが問題で、「あれ大丈夫?」の一言が言える心的余裕が必要だという現場の声もあった。
こうしたコミュニケーションを円滑にした上で、細かなことであっても現場で起きたヒヤリ、ハッとしたことを日々の反省会で共有したり、特定の部署のミスとしてではなく全部署の参考とするべく「ヒヤリ・ハット集」の作成を行っている局もある。

4. 実りある研修

各社が行っている研修会や勉強会はさまざまな形で行われ、コンプライアンス関係部署が説明するものや、テーマによって外部講師を招くものまで、その頻度は各局とも多い。
出来るだけ多くの社員や外部スタッフに参加して欲しいとの思いから、規模が大きくなり、結果として講義的側面もでてくる研修会もあるが、一方で、少人数による勉強会を組み入れ、相乗効果を生むよう試みている局が多い。
また、現場で実際に直面した課題やトラブルについて、どうすればよかったのかなど制作スタッフ同士のディスカッション形式による勉強会を実施し、その際には法務部や著作権部など他部署からも参加して、違う立場からの意見を取り入れることに力を入れている局もある。

今回の『提言』を受けて行った点検の過程そのものが、制作現場にとって意義深いものであったとした局もあり、自分が大好きな番組を守る、自分が大好きな番組が評価されるという観点が、すべてのスタートであるというスタッフの声を紹介した局もあった。

また、この東海テレビの事案や『提言』については「対応報告書」を提出した11局以外の放送局でも、各社番組審議会で取り上げられ、放送局側から「他山の石」として放送倫理の確立に全社を挙げて取り組んでいる状況の説明がおこなわれている。

以上

第56回 放送倫理検証委員会

第56回 – 2012年1月

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

テレビ東京『ありえへん∞世界』の対応報告書について ……など

第56回放送倫理検証委員会は1月13日に開催された。
まず、前回の委員会で継続討議となった、原発事故による放射能の食事に与える影響を検証したNHKの情報番組『あさイチ』については、主に12月15日の放送の内容を元に検討したが、放送倫理上の問題はなかったとの結論に達した。
委員会が昨年9月末に出したテレビ東京『ありえへん∞世界』に関する「意見」について、当該局から提出された対応報告書を検討、委員会はこれを了承し、公表することにした。
放送局がBPOの活動についてどのように受け止めているかなどについて、在京、在阪の民放テレビ局およびNHK併せて12局とAM民放ラジオ3局を対象に聞き取り調査を行った結果を、事務局から報告した。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、新たに5局から報告があった旨、対応報告書を元に事務局から説明を行った。
なお、あと数局から提出の意思表示があることから、1月末に対応報告書の取り纏めをすることになった。

議事の詳細

日時
2012年 1月13日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、水島委員

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

10月17日にNHKの情報番組『あさイチ』で「放射能大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」と題して、全国7家族を対象に、一週間の食事に含まれる放射性物質の量を調査、分析した結果を放送した。
放送後、視聴者から放送されたデータについて誤りを指摘され、当該局は、11月24日の同番組の中でその時点までに判明した間違いについて謝罪、訂正した。更に12月15日には同番組でほぼ同量の時間を割いて、間違いの原因、わかりにくかった部分の説明、更に新たな情報の放送を行った。
今回、委員会は3回の放送の視聴と当該局から提出された複数の報告をもとにし、特に12月15日の放送を中心にして討議を行い、説明が足りないところはあったとしても、放送倫理の問題ではないとの結論に達し、審議として取り上げないことになった。

【委員の主な意見】

  • ずっとさかのぼっていけば、測定器の調整不足でグラフが ずれているのにその実験をやったことそのものが問われるかもしれないが、少なくとも12月の放送では11月の反省を踏まえて、11月に感じた疑問は解消されているので、これで良かったのではないかと思う。
  • スペクトルのずれという間違いがあったことは事実 であり、そ れが分からなかった ことが正当化されてよいのかどうかが問題。
  • 当該局に責任を問えるかという問題だが、それは無いだろう。
  • 科学番組をたくさん作ってきた人間として、科学的に厳密な番組というのはものすごく難しい。受け手の許容量を遥かに超える 水準で説明しないと厳密な 説明はできない。科学番組は、少なくとも放送にのせうる水準 にするためには、誰かがどこかで丸めなければ出来ない。この番組は問題ないと思う。
  • 説明が足りないところがあったとしても、これは放送倫理の問題ではないように思う。

テレビ東京『ありえへん∞世界』の対応報告書について

テレビ東京は、『ありえへん∞世界』に関する意見書に対して、社内における再発防止策を報告書にまとめ、12月22日に委員会に提出した。委員会はテレビ東京が経営面での制作体制の点検を含む様々な角度からの見直しが必要としたこと、さらに、本事案の演出が過失でなく故意であると意見書で指摘されたことを重く受け止めている点を評価して、この報告書を了承することにした。(対応報告はこちらに掲載)

その他

■ 在京・在阪局への聞き取り調査

BPOでは、昨年9月から10月にかけて、放送局がBPOの活動についてどのように受け止めているかなどについて、在京、在阪の民放テレビ局およびNHK併せて12局とAM民放ラジオ3局を対象に聞き取り調査を行った。
この調査は、各委員会運営の参考に資することを目的としたもので、各委員会の調査役らによるプロジェクトチームが、各局のBPO連絡責任者や放送現場の責任者に直接面談する形がとられた。その結果がまとまり、この日の委員会に報告された。

調査結果は、

  • BPOに対して持つイメージや各委員会の意見書の周知方法など、BPOの活動全般に対する受け止めや対応
  • 公表する意見書をはじめとして各委員会への放送局からの意見、要望の2つに大別して、調査役からそれぞれ具体的に説明が行われた。
    これを受けて委員からは、さまざまな意見が出されたが、放送局側から出された要望に対しては、各委員会でそれぞれ対応できるものと、他委員会を含めてBPO全体として考えるものとがあり、今後も引き続いて議論を重ねることにした。

以上

第55回 放送倫理検証委員会

第55回 – 2012年12月

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

事前収録した出演者の映像を生中継であるかのように演出した日本テレビの音楽番組『ベストアーティスト2011』 ……など

第55回放送倫理検証委員会は12月9日に開催された。
まず、NHKの情報番組『あさイチ』が、原発事故による放射能の食事に与える影響を検証した企画を放送した際に、誤ったデータが使われたことについて討議を行った。結論を出す前に、NHKが12月15日に予定しているミスがなぜ起こったかを明らかにする放送を見る必要があるということで、継続討議となった。
日本テレビ『日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト2011』が3時間の生放送中に、2組のアーティストの演奏を生中継を装って挿入した問題についても討議を行った。生であるという付加価値に寄り掛かった、嘘がすぐにわかるような拙い演出手法ではあるが、当該局としては、今後視聴者の誤解を招かない別な手法を考え、導入すると表明しているので審議入りはしないこととした。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、前回の2局に続いて、新たに3局からの対応が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2011年12月9日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

原発事故による放射能が日本各地の食事に与える影響を検証したデータに誤りがあり、謝罪と訂正を行ったNHK『あさイチ』

NHKの情報番組『あさイチ』で、10月17日、「放射能大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」と題して全国7家族を対象に食事に含まれる放射性物質の量を1週間分調査、分析した結果を放送した。放送されたデータについて視聴者から誤りがあると指摘を受け、11月24日同番組の冒頭でこの時点までに判明した誤りについて謝罪、訂正する放送を行い、更に12月15日に、間違いが起きた原因について、改めて同番組の中で詳しく説明することを公表した。
委員会では10月と11月の両放送の視聴、NHKのホームページ、NHKから提出された経過報告をもとに討議を行った。議論の中では、11月の謝罪と訂正の放送が、当面判明した間違いを説明したものであり、NHK自体もより慎重な調査・分析が必要としていることから、12月15日の『あさイチ』の放送内容を検討するまで判断を留保した方が良いとの意見が大勢を占めた。
このため、委員会は12月15日の『あさイチ』での放送を視聴した後に議論を再開する事になった。

【委員の主な意見】

  • 11月24日の放送はとりあえずお詫びをということで終わっていると思う。12月15日の放送を見ないと判断がつかないところがある。
  • 検出限界についての説明があやふやになっている。この意味をきちんと説明して欲しい。
  • 誤りが事後に判明したのだとすると、倫理上の問題ではないのではないか。あらかじめ分かっていてやったとは考えにくい。
  • ホームページで原因は分析装置の不備といっているが、混乱を招く言い方ではないだろうか。

事前収録した出演者の映像を生中継であるかのように演出した日本テレビの音楽番組『ベストアーティスト2011』

11月30日に放送された日本テレビの『ベストアーティスト2011』は、午後7時から約3時間にわたり幕張メッセから生放送されたが、このうち2組のアーティストの映像が2週間前に収録されたものであったという事案。
放送では、生放送の会場から、司会者が別会場に呼びかける形をとり、収録の際もそれを受けるやり取りをしたもので、画面上にもパラボラアンテナのマークが表示されていた。放送後、視聴者から「てっきり生で歌っているのかと思った。騙された」という批判が相次いだ。当該局は、騙す意図はなく音楽番組としての臨場感、疾走感を出すための演出である旨の経緯報告を委員会に提出した。また、収録の際、観覧客に「口外しないよう求めた」と報じた一部記事に対し、そうした趣旨の説明はしていない、と述べている。
委員会では、演出の範囲、視聴者の許容度、実質的被害者の有無など様々な観点から論議が行われた。また、この番組の後で放送された他の放送局の音楽番組で、冒頭に収録部分があることを断った事例があったことも話題となった。
その結果、このような演出手法に問題がないとは言えないものの、視聴者の誤解を招かない新たな手法を考えたい、とする当該局の姿勢に期待し、審議入りはしないこととした。

【委員の主な意見】

  • 3時間生放送という謳い方がどうかだ。収録だと言われなきゃわからないし、いかにも生放送のような挨拶も交わしているので、姑息といえば姑息だ。
  • 生放送であることの付加価値を作り手が感じているから偽ったのだろう。
  • 生放送の臨場感を作るために、自然に乗っかるように収録映像を入れたもので、報道的な生の価値とエンターテイメント的な生の価値は別ではないか。
  • 収録であることがバレないはずはなく、騙す、騙されるということではなくて、サービス精神で下手を打ったということだ。
  • 会場の客のボルテージを下げないためという局の説明だが、これはある意味で会場の客をも騙している。あまり良い感じはしない。演出方法としてもセコい。
  • 生でないことが分かってしまう時代なのだから、そのことを考えて演出することが大事だ。
  • この様な演出手法で問題はない、と委員会が言っているようには捉えられたくない。
  • 当該局も別の新たな手法を考える、と言っているので、そこに期待を残したい。

福岡の各局と検証委員会との「意見交換会」開催

在福テレビ局とBPO検証委員会との意見交換会が、2011年12月6日、福岡放送の9階大会議室で開かれた。前年の大阪に続く2回目の開催である。RKB毎日放送、九州朝日放送、テレビ西日本、福岡放送、TVQ九州放送、NHK福岡放送局の6局を中心に、九州・沖縄地区からの参加局を含めて14局約90人が出席した。
委員会側からは、川端委員長をはじめ、小町谷・吉岡両委員長代行、香山・是枝・重松・服部・水島各委員のあわせて8人が参加した。この意見交換会は、放送局の取材・制作現場の人たちに、委員会の活動について理解と認識を深めてもらうとともに、放送局側からも委員会に対する疑問や要望などを、率直に語ってもらおうという趣旨に基づくもの。双方が本音の意見を交換できるようにという趣旨から、今回も非公開で行われた。意見交換のテーマとして、今回は2つの柱を設定した。

  • 2011年は、報道番組や情報バラエティーで、事実や情報の取り扱いの杜撰さを指摘する委員会決定が相次いだことについて、どう考えるか。
  • 東海テレビの「ぴーかんテレビ問題」を受けて、委員会がすべてのBPO加盟社を対象に公表した「提言」について、どう受け止めたか。

テーマ(1)については、情報の確認=裏を取ることに関連して、出席者のなかから「完全無農薬の野菜」と紹介する際に、実態は店頭の表示などを信用してそのまま伝えており、生産者まで溯っての裏取りには限界がある場合が多いなどの意見が出された。また、テーマ(2)をめぐっては、他山の石として放送現場の再点検を進めているという発言が目立ったが、たった一人の非常識な行為によって、放送界全体に問題があるように言われるのはおかしいという意見もあった。意見交換会は、予定の3時間を15分余りオーバーして午後5時前に終了し、会場を移して懇親会が行われた。懇親会には6局の社長・放送局長も全員参加し、委員を囲んでの歓談が続いた。各局から寄せられた出席者の声としては、「多くの委員から生の話が聞けたことはとても有意義。検証委員会が身近になった」「議論が盛り上がってきたなと思ったらもう終わりという感じで、もの足りなかった」「テーマをもっと絞り込んで、議論が噛みあうように工夫してほしい」などが多かった。
「8人もの委員が参加されたのだから、分科会のような方法も加味すれば、もっと充実した意見交換ができたと思う」との指摘も相当数あったので、次回への検討課題にしたいと考えている。

以上

第54回 放送倫理検証委員会

第54回 – 2011年11月

航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組

第54回放送倫理検証委員会は11月11日に開催された。
ある民放局のバラエティー番組で、航空便があるのに陸路を延々と旅をして、ヒマラヤ山麓の街を紹介したのは、秘境を強調するヤラセではないかという視聴者意見が寄せられた。討議の結果、演出の技法には何か釈然としない思いは残るが、放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。
9月22日に「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を発表してから2度目の委員会になった。この間多くの局の番組審議会で取り上げられ、また民放連小委員会との意見交換会もあった。1ヵ月半の間に示されたNHK、民放各局の対応内容や考え方を事務局がまとめて全委員に報告した。

議事の詳細

日時
2011年11月11日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組

インドのヒマラヤ山麓に住むたったひとりの日本人女性を訪ねて、女性タレントがニューデリーから陸路をバスやジープを乗り継ぎ、テントに泊まる苦難の旅の末に、55時間かけて秘境に住む女性を探しあてるバラエティー番組。
ところが、女性が住む街とデリー空港の間は1時間余りの航空便で結ばれており、番組がそのことに言及していないのは、秘境を強調するためのヤラセではないかという視聴者からの意見が寄せられた。
最近の審議事案に「離島の実情」を不適正に伝えた番組があり、その中でも航空便の就航が言及されていなかったことから、この審議事案との比較検討も含めて議論が交わされた。その結果、演出の技法としては釈然としない思いも残るが、離島事案のように直接の被害者がいるわけではなく、制作手法として放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 利用者の多い少ないは別にして、陸路のコースがあるわけだし、何でもかんでも最短距離を行かなくてはいうことではないだろう。情報バラエティー番組としてとくに問題はない。
  • この番組は、ヒマラヤ山麓に暮らす日本人女性の生活を紹介するというより、彼女を訪ねていく過程に主眼を置いて制作したと思う。そこにある程度の演出があってもいいのではないか。
  • 最近の審議事案の場合は、不適正な伝え方が目立ち、放送で誤解や被害を受けた人もいたが、この番組ではそういうことはなさそうだ。
  • 本来はモチベーションがないタレントに、ひとりの女性を探させようとするから、情報番組として成立させるため無理な苦労をさせることになる。日本人女性が陸路で行ったかどうかわからないのに、追体験、追体験と言っているのも、何かいやな感じがする。
  • 放送倫理に違反しているとは言わないが、現地までの定期航空便があることを種明かしする作り方があったのではないか。無理に隠さなくてもそれが、オチになって、面白かったのではないか。
  • 一妻多夫制は、現在は行われていないのに、今も存続しているような誤解を与えるという視聴者の指摘もあったが、文化・習俗としての影響が残っていると考えれば、さほどの問題ではないのではないか。

以上

第53回 放送倫理検証委員会

第53回 – 2011年10月

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見への対応報告書について

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』
毎日放送『イチハチ』情報バラエティー2番組3事案に関する意見への両局の対応報告書について ……など

第53回放送倫理検証委員会は10月14日に開催された。
まず、6月30日に通知・公表した「BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見」を受けて当該局から提出された対応報告書の検討を行った。委員会はこれを了承し、公表することにした。
7月6日に通知・公表した「情報バラエティー番組2番組3事案に関する意見」に応じて提出されたテレビ東京および毎日放送の対応報告書についても検討を行い、両局の対応策を了承し、公表することにした。
委員会は、9月22日、全加盟社に宛てて、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を公表した。委員会が初めて行ったこの提言に対する放送業界の反応などについて、意見交換が行われた。
そして、9月27日に通知・公表したテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』の意見書についても議論が交わされた。

議事の詳細

日時
2011年10月14日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見への対応報告書について

BS11は、委員会の意見を受けて、どのような対応や取り組みを行なったかを報告書にまとめ、委員会に提出した。
新たに専任の番組適正検証委員を置いて、番組の公平性チェックを強化し、放送基準を遵守する旨の報告があり、委員会はこれを了承して公表することとした。(対応報告書はこちら)

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』
毎日放送『イチハチ』情報バラエティー2番組3事案に関する意見への両局の対応報告書について

テレビ東京および毎日放送は、委員会の意見を受けて、どのような対応や取り組みを行なったかを報告書にまとめ、それぞれ委員会に提出した。いずれも、意見書が指摘したインターネットを使ったリサーチ段階での留意点やバラバラの制作体制に起因する現場のコミュニュケーションギャップを埋めるための改善策などを打ち出している。
今回の意見書には、「若き制作者への手紙」が別冊として加えられたが、特徴的なことは、両局とも、意見書を受けて全社的規模で議論がなされ、その現場の声が報告書とともに「若き制作者への手紙」への「返信」という形で委員会に提出されたことである。その一部は報告書の中にも盛り込まれている。
現場での活発な議論は、自主・自律の観点から委員会が日頃より望んでいるものであり、こうした対応を高く評価し、両局からの報告を了承した。
当該局ではないものの、フジテレビも意見書を受けて、全社的に議論を重ね現場での受け止め方を文書にまとめて委員会に提出している。
また、両局の社内勉強会に参加した担当委員から感想が述べられた。

【担当委員の感想】

  • テレビ東京では、社外スタッフも含めて168名が参加したこともあって若干講義的な色彩とならざるを得なかったが、今回の意見書および「手紙」に対する関心の深さが示された。
  • 一方、毎日放送では大阪本社、東京支社のプロデューサー、ディレクターら30名ほどの参加であったが、それだけに全員が発言し、時にはスタッフ間同士での議論が白熱する場面もあって、充実した勉強会となった。

委員会では、放送局が様々な方法を模索して、現場クラスを含む真に実効性のある研修や勉強会を開くことを望む意見が多く出された。 (対応報告書はこちら)

東海テレビ『ぴーかんテレビ』問題に関する「提言」の公表について

9月22日に公表された「提言」では、全社的なレベルで放送の使命について話し合う機会を設けることや、生放送番組において不測の事態にも対応できるゆとりが確保されているかどうかを再点検することなど、4項目を挙げた。
委員会が初めて行ったこの提言は、単に東海テレビだけでなくBPO加盟全社に向けて出されたものであるため文書を各社に郵送したが、これを受けて各社がどういう取り組みを行うかを委員会として見守ることとした。(提言はこちら)

テレビ東京『ありえへん∞世界』に関する意見の通知・公表について

僻地紹介シリーズとして本年1月「南大東島」を取り上げた際、サトウキビ農家が沖縄本島に豪華な別荘を持ち、裕福な暮らしをしているなどと紹介した番組内容が事実とかけ離れ、住民の心情を害してしまったという事案。9月27日、当該局に対して委員会決定を通知し、記者会見を行った。
委員会では、公表当日のテレビニュースと報道された新聞記事をみたうえで意見交換が行われた。意見書にある「取材協力をしてくれた一般の人たちへの愛」について、委員から、取材対象者に誠心誠意向かいあうことにより、番組の向上のみならず、放送倫理違反のない放送が実現されるなどの指摘がなされた。 (決定文はこちら)

その他

■福岡の各局と検証委員会との「意見交換会」開催へ

昨年の大阪に続く2回目の意見交換会を、12月6日(火)に福岡で開催することを決めた。これは、委員会の活動について放送局の取材・制作現場の人たちに知ってもらうとともに、放送局側からも委員会に対する疑問や要望などを、率直に語ってもらおうという趣旨に基づくもの。在福のテレビ6局を中心に議論を進めるが、九州・沖縄の各局にも参加を呼びかける。

以上

第52回 放送倫理検証委員会

第52回 – 2011年9月

日本テレビ「ペットビジネス最前線」の対応報告書について

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』 ……など

第52回放送倫理検証委員会は9月9日に開催された。
まず、5月31日に通知・公表した日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見に対して当該局から提出された対応や取り組みについて報告書を検討した。委員会はこれを了承し、ホームページ等で公表することにした。 3回目の審議となったテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』は、担当委員から提出された意見書案について議論し、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。不適切な字幕テロップが放送された東海テレビの『ぴーかんテレビ』については、当該局から提出された検証報告書等をもとに、取り扱いについて議論した。その結果、委員会としては初めての「提言」を公表することにした。

議事の詳細

日時
2011年 9月 9日(金) 午後5時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「ペットビジネス最前線」の対応報告書について

日本テレビは、「ペットビジネス最前線」報道に関する意見について、どのような対応や取り組みを行ったかを報告書にまとめ、8月29日に委員会に提出した。
委員会としては、日本テレビが、「バンキシャ虚偽証言放送」以降に取り組んできたコンプライアンスの推進策などが組織の隅々まで浸透していなかったと反省し、より踏み込んだ対応策を打ち出したことを評価して、この報告書を了承することにした。(対応報告はこちらに掲載)

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

僻地紹介シリーズの第2弾として「南大東島」を取り上げ、サトウキビ農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ、村から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。
担当委員から意見書案が提示され、それに基づいて検討を行った結果、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。
(委員会決定第13号はこちらから)

不適切な字幕テロップが放送された東海テレビ『ぴーかんテレビ』について

東海テレビの情報番組『ぴーかんテレビ』で、「怪しいお米」「汚染されたお米」「セシウムさん」と不適切な表示のなされた字幕テロップが23秒間放送されたという事案。
各委員には、事前に東海テレビの検証番組のDVDと検証報告書を配布し、また、メールによる意見交換を行った上で、議論した。
現象としては、単純な誤操作による放送事故ではあるが、不適切な字幕テロップの送出により放送が与えた影響は無視できないうえ、事故の背景にある制作現場の問題は、委員会の意見書がこれまでくり返し指摘してきたことであるから、BPO規約23条に基づく「提言」をとりまとめ、公表することにした。(提言はこちら)

【BPO規約】

  • 第23条
    放送倫理検証委員会は、第4条第1項第2号に定める事業を行うほか、必要に応じて構成員に対し、第3条に定める目的達成のため、放送番組や放送倫理のあり方についての提言を行う。
  • 第3条
    本機構は、放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とする。

【主な委員の意見】

  • 大騒ぎになっていることは核心ではないと思うが、非常に不適切なテロップが23秒間流れたのは事実だから、その原因と結果について委員会は何か言わなければならないのではないか。
  • BPOがなにもしなかった場合、「検証番組を放送したからもういいんだ」ということになり、それでこの営業拡大路線というものが追認されていく感じになる。
  • 何らかの過失で重大な誤った放送がなされた場合にも倫理違反なのかどうかを議論すべきだ。
  • 一つの倫理問題ととる場合、放送倫理という文脈で問えるのか、社会一般的な倫理問題として問うべきか。
  • 経営合理化の問題であって、倫理の問題というよりどうやって番組をちゃんと組み立てていくかの問題だと思う。
  • 事故の背景にある現場のゆとりのなさ、コミュニケーションの不在、研修が効果を上げていないことは、これまで委員会が指摘してきた共通の問題。この際、規約23条の提言が適切ではないか。

以上

第51回 放送倫理検証委員会

第51回 – 2011年7月

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見の通知・公表について

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』と毎日放送『イチハチ』の情報バラエティー2番組3事案に関する意見の通知・公表について ……など

第51回放送倫理検証委員会は7月8日に開催された。
6月30日に通知・公表が行われたBS11(日本BS放送)の『”自”論対論 参議院発』事案、および7月6日に通知・公表が行われたテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』と毎日放送『イチハチ』の情報バラエティー2番組3事案については、記者会見を報じたテレビニュースや新聞記事を見たうえで意見交換を行った。
前回審議入りしたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』僻地第3弾「南大東島」は、当該局への聞き取り調査の結果をもとに2回目の審議が行われた。その結果、「実態とかけ離れた誇張表現」に至る原因などの分析と問題点についての合意が得られたため、意見書の草案作りに着手することとなった。

議事の詳細

日時
2011年 7月 8日(火) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

BS11『”自”論対論 参議院発』に関する意見の通知・公表について

2011年の1月から3月まで、11回にわたって放送されたBS11の政治討論番組『”自”論対論 参議院発』は、番組の司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるとされた。
委員会は6月30日、「この番組が放送倫理に違反する」と判断した意見を、当該局に対して通知し続いて記者発表を行った。委員会の席上では、記者会見での質疑応答などに関する報告が事務局からあり、続いて記者会見の模様を報じたテレビニュースや新聞記事を見たうえで、意見交換が行われた。

テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』と毎日放送『イチハチ』の情報バラエティー2番組3事案に関する意見の通知・公表について

一括審議となっていた上記3事案は、いずれも取り上げた情報や事実の正確さを確認する努力を怠っていて、その扱い方が杜撰であったこと、また、そのうち2事案については、出演者が放送で取り上げた情報と密接な利害関係を有していた点で、公正さを欠くとして、「放送倫理違反」とする意見書を7月6日に当該2局に通知し、公表した。2日後の委員会では、これを扱ったテレビ各局の放送や新聞記事を検討したが、委員会の「意見」が正確に反映されていないニュースや記事があるとの指摘がなされた。
また今回、意見書の別冊として添えた「若き制作者への手紙」に対し、当該局のみならず各放送局の関心も深く、勉強会の開催が各局で予定、検討されていることが報告された。

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

僻地紹介シリーズの第3弾として『南大東島』を取り上げたが、多数の農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に豪華な別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ南大東村長から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。
審議2回目の今回は、番組制作者に対する聞き取り調査の結果が担当委員から提示され、それに基づいて議論が展開された。視聴者に誤った印象を与えてしまった原因はどこにあったか、笑いを取るための許される演出の範囲や、取材対象者への敬意の意義など多角的に意見交換が行われた。審議はほぼ終了し、次回9月の委員会で意見書をまとめることになった。

以上

第50回 放送倫理検証委員会

第50回 – 2011年6月

日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』 ……など

6月10日の放送倫理検証委員会は、2007年5月の発足から数えて、第50回の開催となった。 5月31日に通知・公表が行われた日本テレビの「ペットビジネス最前線」報道事案については、当日のテレビニュース(録画)や報道された新聞記事を見たうえで意見交換を行った。政治的公平性について審議してきたBS11の『”自”論対論 参議院発』については、前回の議論を踏まえた意見書の改訂案が担当委員から提示された。検討の結果、若干の修正を加えることで合意がえられたため、審議を終了し 速やかに通知・公表を行うことになった。新規事案として、テレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』が議題となった。僻地シリーズの一つとして沖縄県南大東村をとりあげ、島の多数のサトウキビ農家が年収1000万円を越える収入を上げて沖縄本島に別荘をもつような裕福な暮らしをしていると紹介、放送後に南大東村長から抗議を受け、「実態とかけ離れた表現」をしたことを認めて放送で謝罪した。当該局が自主的に提出した詳細な報告書をもとに討議した結果、誇張表現が多く悪質であるとして、審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2011年 6月10日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

日本テレビの報道番組『news every.サタデー』の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。
5月31日、当該局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。事務局からそれに関する報告があり、続いて当日のテレビニュース(録画)や報道された新聞記事を見たうえで意見交換が行われた。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている番組が11回放送されたことが、政治的公平性を欠き、番組制作上の局の主体性も欠如しているのではないかと問題にされた事案。
前回の委員会で議論された、表現の自由と放送における政治的公平性の維持の関係をどう考えるかという問題や、番組編成全体で政治的公平性を配慮しているという当該局の主張に説得力があるかという問題を踏まえて作成された意見書の修正案が担当委員から提出され、3回目の審議を行った。
政治的公平性の問題に加えて、放送局としての主体性に問題はなかったかという視点で意見書をまとめることに意見が一致したので、表現の手直しは担当委員と委員長に一任することとして、審議を終了した。

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

今年1月25日に放送されたテレビ東京のバラエティー番組『ありえへん∞世界』で、南大東島には年収1000万円以上で、沖縄本島にも別荘を所有するサトウキビ農家が150から200名いるが、それはサトウキビの生産に多額の国の補助金が支出されているからであると紹介し、所有する別荘のイメージ映像としてビバリーヒルズの邸宅の写真を放送した。だが実は年収といっても生産諸経費が控除されていない売り上げ金額(粗収入)であり、しかも島のサトウキビ農家の平均粗収入は500万円程度で、経費を差し引いた所得金額は150万円程度であった。沖縄本島の家も子供の高校通学のための住居がほとんどで、ビバリーヒルズの豪邸のような別荘ではないことが判明した。南大東村長から「偏見にもとづいた誤解を招く」との抗議文を受け取った当該局は村に謝罪し、6月7日にお詫び放送をした。自主的な内部調査結果と改善策が、当該局から検証委員会に提出されたが、委員会では、番組は事実をゆがめて僻地を誇張し、サトウキビ農家についてのねじ曲げられた悪質な表現が多く、放送倫理違反が認められることから、その原因や制作過程の検証が必要だとして、審議入りすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • 担当したディレクターの取材が十分でなく、最初に作った筋書きにこだわっている。
  • 数字の取り扱いや確認が粗雑すぎる。取材対象者への誠意が感じられず、”上から目線”になっている。
  • 言葉遣いとして農家の場合、収入を年収ということは一般的であり、諸経費を引いて収入という人はあまりいない。しかし視聴者からみたら誤解すると思う。
  • 15時間かけて那覇から船で着き、港がないためクレーンで吊り上げられて島に上陸するのは”ありえへん”に相応しい光景だった。しかし飛行機では那覇から1時間少々で行けるのに僻地を強調している。
  • ビバリーヒルズの写真をだすアイディアは取材に行ったスタッフではなく、後になって出てくる。遊び心だと思うが目線は差別的ではないか。
  • ロケハンを兼ねて一人で取材している。しかも初めての担当ということでディレクターにはきつかったと思う。それにしても、局内のデスクやプロデューサーのチェックはどうなっていたのか。

以上

第49回 放送倫理検証委員会

第49回 – 2011年5月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』 ……など

第49回放送倫理検証委員会は、5月13日に開催された。
4回目の一括審議を行ったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送の『イチハチ』ホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3事案は意見書の詰めを行い、内容面での合意が得られたため、審議を終了した。最終的な修正作業を行い、速やかに当該局への通知と、公表の記者会見を行う。
同じく審議中の日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』についても、担当委員から提出された意見書の修正案に対し、委員の中からほとんど異論は出ず、5月下旬をめどに、当該局への通知と、公表の記者会見を行うことになった。
政治的公平性について審議しているBS11の『”自”論対論 参議院発』については、意見書原案が担当委員から提示され、ヒアリングの概要が報告された。

議事の詳細

日時
2011年 5月13日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

上記2番組で放送された3つの事案は、いずれも出演者からの情報に頼り、事実確認が杜撰であったことから問題が起きており、番組の制作過程に似通った構造的問題を含んでいることから、委員会は一括して審議をおこなってきた。
4回目になる今回の審議では、担当委員から出された意見書原案について詰めがおこなわれ、内容について大筋で合意した。
更に、多忙な制作現場のスタッフには、意見書を読む余裕がないという状況を踏まえて、どうしたら委員会の思いが伝わるのか、どんな方法が考えられるのかについても、意見交換が行われた。
審議は今回で終了し、表現の手直しなどの修正を行ったうえで、新たな工夫を加えて意見書を通知・公表することになった。

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。
3回目の今回の審議では、担当委員から意見書の修正案が提出され、補足的な議論があったが、特段の異論などは出されなかった。
このため、必要な加筆修正を経て、5月下旬をめどに、当該局への通知と、公表の記者会見を行うことになった。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

番組の司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるのではないかとされる事案。
担当委員が作成した意見書の原案が提示され、あわせてBS11に対して行ったヒアリングの概要が報告された。憲法が定める表現の自由と、放送法や民放連の番組基準などが掲げる政治的公平性をどう考えるかという問題や、番組編成全体で政治的公平性を配慮しているという当該局の主張に説得力があるかという問題などについて、さまざまな議論が交わされた。次回の委員会では、こうした議論を踏まえた修正案をもとに、審議を継続する。

以上

第48回 放送倫理検証委員会

第48回 – 2011年4月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』2事案

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』 ……など

第48回放送倫理検証委員会は、定例の第2金曜日を第3金曜日に変更して、4月15日に開催された。
一括審議となったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送『イチハチ』のホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3つについては、担当委員が作成した意見書の原案について審議した。
同じく審議中の日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』についても、担当委員から意見書の原案が提出された。今回の問題が起きた背景を、担当ディレクター個人と報道局という組織の両面から検証したもので、次回に委員会の議論を踏まえた改定案に基づく審議をすることになった。
政治的公平性に問題があるのではないかということで前回審議入りしたBS11の『”自”論対論 参議院発』については、意見書の骨子が担当委員から提示され、主に表現の自由と放送法との兼ね合いをどう考えるかという点で議論が行われた。

議事の詳細

日時
2011年 4月15日(金) 午後5時30分~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、重松委員、服部委員、水島委員

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』2事案

  • 番組で酵素飲料を飲みダイエットに成功したと紹介した女性が、その飲料を販売する会社の社長だったことがわかったテレビ東京の『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(2010年11月8日放送)
  • ホテルを購入しようとした女性に密着した取材が、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の『イチハチ』(2010年11月17、24日放送)
  • 同じ『イチハチ』で、出演した女性がニューヨークに23件もの不動産物件を持っていると紹介し、その後、毎日放送が「女性の所有だったとは証明できず、(中略)事実と異なる放送をした可能性が極めて高いと言わざるを得ない」と公表した事案(2011年1月12日放送)

上記2番組3事案は、いずれも出演者からもたらされた情報に対する事実確認の杜撰さから起こった問題であることから、委員会は前回から3つの事案をまとめて審議している。今回は担当委員から意見書の原案が提出され、各委員の間でさまざまな意見が交わされた。委員会の考えていることを、どうしたら放送局の上層部だけでなく、実際に現場で番組を作っているスタッフに伝えることが出来るかという問題に多くの時間が割かれた。今回の議論を踏まえ、次回の委員会までに担当委員が意見書の改定案を作成することになった。

ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。審議入りしたあとの議論を踏まえて、担当委員から意見書の原案が提出された。 今回の問題が起きた背景を、担当ディレクター個人と報道局(経済部)という組織の両面から検証したもので、委員の間でさまざまな議論が交わされた。 一方、当該局からは、審議入り後に報道局の社員やスタッフが、各部ごと番組ごとに議論を重ねてまとめた総括的な社内文書「なぜニュース番組で『不適切手法』が放送されてしまったのか?」が委員会に自主的に提出され、議論の参考とされた。 次回の委員会には、意見書の改定案が提出され、審議が続けられる。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されていて、政治的公平性に問題があるのではないかと前回審議入りした事案。『”自”論対論 参議院発』全11回の放送を視聴しての審議が行われた。 表現の自由と放送法との兼ね合いをどう考えるか、また、番組のスポンサー表示がなされていないことが問題ではないか等の議論が行われた。次回の委員会までにBS11からヒアリングを行い、問題点を整理して原案作成に入ることにした。

以上

第47回 放送倫理検証委員会

第47回 – 2011年3月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』…など

3月11日に開催予定だった第47回放送倫理検証委員会は、東日本大震災のため、31日に延期して開催された。
一括審議となったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送『イチハチ』のホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3つについては、意見書の構成やターゲットについて、ヒアリングを踏まえて議論をおこなった。次回の委員会までに意見書の草案を担当委員が作成し、それを基に審議することになった。
日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』で、最新のペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を紹介したが、客として登場した2人の女性は、ともに運営会社の社員だった。
この事案については、取材・制作にあたったディレクターや上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施したが、その概要が担当委員から報告された。この中では、ディレクターと上司との間にさまざまな認識の乖離があったことが指摘され、なぜミスが防げなかったのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は生かされているのか等について意見交換が行われた。次回の委員会には、意見書の原案が提出される。
政治的公平性に問題があるのではないかが問題となったBS11の『”自”論対論~参議院発~』については、前回から討議を継続して番組編成全体で公平性に配慮しているという局の主張を検証した。この番組は、司会者、出演者ともに一政党のみで、その政党の広報番組と区別できないという偏りがある点に問題があるとして審議入りすることになった。
TBSがボクシングのタイトルマッチを中継録画で放送した際、直前のニュース番組『Nスタ』で、既にKOで決着がついていたにもかかわらず、あたかも結果が出ていないかのように伝えたことを不当な演出として問題にするべきかを討議した。確かに、視聴者に誤った印象を与えるが、ニュースではなく一種の番組宣伝であり、あえて審議するほどの重大性はないうえに、局も自発的に改善策を示してしているので取り上げないことにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

酵素飲料を飲むことでダイエットに成功したと番組で紹介した女性が、その飲料を販売する社長であったことが判明したテレビ東京の「月曜プレミア」と、15億円でホテルを購入しようとする富豪女性に密着した取材は、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の「イチハチ」が、すでに審議入りしていた。
これに加え、毎日放送の同じ「イチハチ」で、ニューヨークに23件もの不動産を持つ女性が紹介されたが、当該局が「女性の所有であることが証あったことだった。また、世代間ギャップの指摘明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した案件について、前記2つの事案と通底する問題があるとして、前回委員会で一括して審議入りした。
これを受けて毎日放送のニューヨーク事案について、制作スタッフらからのヒアリングが行われ、その結果が担当委員から報告された。
その上で、情報バラエティー番組における事実関係や情報の取り扱いについて議論が展開されたが、制作サイドの事実に対する認識や判断の甘さ、拡大解釈が、内部で精査されることなく安直に番組つくりがなされていく実態や、事案発覚後も、プロデューサークラスと現場ディレクタークラスとの間で、何が問題であったかの認識に温度差があることも浮かび上がってきた。
委員会では、これまで様々な形で発信してきた委員会の思いが、なかなか現場の制作スタッフに伝わっていないのではないだろうかという懸念を踏まえて、如何にしたら伝わるのか、意見書のスタイルを含めて模索し、担当委員の間で原案を作ることとした。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

1月8日に放送されたこのニュース番組は、右肩上がりの状況が続いているというペットビジネスを取り上げ、ペットサロンとペット保険の2人の女性客を紹介した。ところが2人は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが判明し、前回の委員会で審議入りした事案。
担当委員は、2人の女性客が社員だと知りながら取材・放送したディレクターをはじめ、上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施した。そこで浮き彫りになったのは、取材方法や職場のコミュニケーション状況などについて、ディレクターと上司の間にさまざまな認識の乖離がもあった。
委員の間からは、報道の使命や責任について十分な社内教育が行われているのか、ミスを防げなかった組織的な原因はどこにあるのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は本当に現場に生かされているのだろうか、などの意見が出された。次回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出される。

【委員の主な意見】

  • 上司は部下に目配りをして対話の場も設けていると考えているのに、部下のほうは自分が理解されず評価もされていないと思っている。この状況は、当該局だけの問題だとは思えないし、報道現場だけに起きている問題だとも思えない。そこに根の深さを感じる。
  • ニュースを伝えるという報道の使命や役割は、同じような情報を扱うバラエティー番組と比べて、はるかに重いものだ。報道モラルの低下を言うのは簡単だが、どんな社内教育や指導が行われているのか、
  • 「バンキシャ」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたという。ところがこのディレクターは研修会の参加記録は残っているのに、本人には参加した記憶がないということだ。教訓が本当に生かされているのかどうかの検証も必要ではないか。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論』

視聴者から、政治的公平性に問題があるのではないかとの指摘があったBS11の政治討論番組
『”自”論対論~参議院発~』(全11回)は、司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている。当該局からは、番組編成全体で政治的公平性を保つようバランスをとっているとの説明書が提出された。
8番組35放送分のDVDの提出を受け、全体として本当に配慮されているかの検証を行ったが、一政党に偏して11回の放送を行ったという問題性は明らかであり、審議入りをして、なぜそのような企画が採用されたのか、その際他の政党に対する公平性の確保についてはどのように実現するつもりであったのかなどを調査することを決めた。

【委員の主な意見】

  • 司会者が「われわれ自民党は」という発言をしている。明らかに放送法の第一条「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」に反している。
  • 放送法と憲法の関係には、微妙な問題が存在している。表現の自由と大きくかかわることなので慎重に議論すべきだ。
  • スポンサーが明示されていないことは大きな問題だ。
  • まるで、政党の持ち込み番組ではないか。
  • アメリカでは不偏不党の枠が取り払われている。それをどう考えるべきか。
  • 放送局として、編成権や主体性の放棄につながるのではないか。
  • 放送局の自律は、MC(司会者)やキャスターの存在に託されるのではないか。
  • 反対意見があればお寄せ下さいというテロップ表示を流せば、一方に偏すると言うことを避けたと見なせるのではないか。
  • 不毛な機械的公平性議論は避ける必要はある。

終了しているボクシングの試合を試合前のように伝えたTBS『Nスタ』スポーツコーナー

夕方の報道番組『Nスタ』(2月1日放送)のスポーツコーナー『こちら運動部』で、直後に当該局が放送するボクシング世界タイトルマッチを前に、試合の見所などを、スタジオと会場で事前に収録したVTRで放送した。しかし、実際には、試合はこの放送の30分近く前に結果が出ており、視聴者に誤解を与えかねない放送になった。
当該局からの報告書では、放送までの経緯が説明され、更に社内での議論の結果、今回の放送は生で進行している番組の中では視聴者に誤解を与えた表現であり、避けるべきだったと結論している。また今後の対応について、生番組における、競技が終了しているスポーツ番組の告知については、番組宣伝コーナーを設けるなどが示された。
委員会ではこの放送を番組宣伝と考えるかどうか、意図的に誤解させるメッセージがあったのではないかなどの意見が出されたが、事案の重さと、当該局の認識の仕方、今後の対応への姿勢から審議入りしないことに決定した。

【委員の主な意見】

  • 嘘をついたわけでもないし、ある意味番組宣伝として捉えれば、どうなんだろう。お金をかけて独占放送権を買っているわけだから。
  • スポーツ中継を種明かしして、これはディレイですといわれて結果がわかっているものを見ても面白くない。
  • 次から番組宣伝をしますということが明示されていれば問題はない。
  • 意図的に誤解させるメッセージがあったことは否定できない。しかし大きな問題ではないということもできる。
  • 過剰な臨場感を期待させるために、余計な勇み足をしている。
  • 報道のニュースの枠内であったということが問題だ。

「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」を受けて当該4局から報告書

2010年12月2日に行われた標記事案の委員会決定を受けて、当該4局はそれぞれの対応と取り組み状況をまとめた報告書を、当委員会に提出した。
この日の委員会において4局の取り組みが検討され了承された。
4局の報告はこちら。

以上

第46回 放送倫理検証委員会

第46回 – 2011年2月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

政治的公平性が問題になった在京テレビ局の討論番組…など

第46回放送倫理検証委員会は2月18日に開催された。
当該局から提出された報告書を公表することで討議を終了したフジテレビの『Mr.サンデー』については、川端委員長の前文を付して、BPOのホームページと「BPO報告」に掲載されたことが報告された。
在京のテレビ局が1月に放送した討論番組は、政治的公平性に疑念があると、視聴者から意見が寄せられた。討議の結果、より詳細な資料を検討する必要があるという結論に至った。当該局に資料の提出を依頼し、継続して討議することにした。
取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であったことから審議入りが決定した毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)については、担当委員が行ったヒアリングの中間報告が行われた。
同じ毎日放送の『イチハチ』(1月12日放送)でニューヨークに不動産を23件持っている女性を紹介したが、視聴者から虚偽ではないかとの指摘があった。当該局は調査不足による誤った放送であったことを認めている。上記2番組と共通する問題なので、この番組を加えて3番組をいっしょに審議することにした。
日本テレビの報道番組『news every.サタデー』(1月8日放送)が最近流行のペットビジネスとして、ペットサロンとペット保険を紹介した。ところが客として登場した2人の女性は、これらの店舗を展開する運営会社の社員であったことが、当該局への視聴者意見から判明した。このような取材が行われた背景や原因を検証するために、審議入りすることにした。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

当該局から提出された社員研修用の詳細な報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、他の放送局でも、調査の方法やあるべき解決策の指針、問題点の事前チェックの参考資料として役立つと思われたので、当該局に公表することを依頼したところ、了解が得られた。
BPOでは、川端委員長の前文を付してBPOのホームページにアップするとともに、2月15日発行の「BPO報告」(NO.93)の3ページ以降にこの報告書を掲載した。(全文はこちら[PDF])
pdf

政治的公平性が問題になった在京テレビ局の討論番組

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている政治討論番組が放送された。政治的公平性から見ておかしいのではないか、との視聴者意見が寄せられた。
当該局によると、番組編成上同様のレギュラー番組が複数あり、その中で政治的公平性を保つようバランスを取っているとの説明であった。委員会はそれを検証するために関係する番組と説明書を提出してもらい、討議を継続することにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』および毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(1)

テレビ東京は、酵素飲料を飲むことにより、ダイエットに成功したと紹介された女性は、その飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。毎日放送は、15億円でホテルを買収しようとする富豪女性が紹介されたが、そのホテルを宣伝するための作り話ではないかと視聴者から指摘があった事案である。
前回の委員会では、この2事案については事実の確認と演出方法に共通する問題点があるので、一括して審議入りすることにした。
主に両番組の制作スタッフを対象にして、2人の担当委員によってヒアリングを実施し、その経緯を委員会に報告した。その報告によると、出演者の選定プロセスが安易であることや情報・事実に対する認識に甘さがあること、また、制作スタッフ間でのコミュニケーション不足などが指摘され、制作体制上、共通する問題点が明らかになってきた。

所有者の確認が不十分だった毎日放送『イチハチ』(2)

世間の常識と隔絶したセレブたちの豪勢な生活ぶりを紹介するスペシャル番組の中で、ニューヨークに23件の不動産を持つという女性を紹介した。ニューヨークの豪華なコンドミニアムをその女性の案内で取材・放送したが、視聴者から「紹介されたコンドミニアムは彼女の所有物件ではない」との情報が当該局に寄せられた。当該局が独自に調査した結果、「女性の所有であることが証明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した。
委員会では、当該局からの報告書を元に討議した結果、制作過程において前回審議入りを決めた同じ番組の「ホテル購入話」と通底する問題があるのではないかとの判断から、テレビ東京と毎日放送の前記2番組とあわせて3つの番組をまとめて審議することにした。

【委員の主な意見】

  • これらの問題の中核は、セレブな出演者の話を鵜呑みにすることにある。事実確認とか取材がおろそかになり、出演者をどう扱うかということが制作の中心になってしまっている。
  • 出演者に嫌われたくないという制作者の気持ちの根底には、この人のお蔭で番組を成立させてもらっている、ネタを貰っているという意識が厳然とあるのではないか。
  • このような企画に登場するセレブな出演者について、制作サイドは芸能人であるという認識を持っているようだ。しかし、視聴者にとっては、一般人の中にこのような人がいると理解するのだから、当然、裏取りはしなければならない。
  • スタジオトークに留まらず、実際にあるリアルな世界に取材に出るという選択をした段階で、テレビと関係ない世界との関わりが出てくる。そこに対してどういう責任を果たすかという認識がない。
  • バラエティー番組であるし、トーク全体が駄法螺話だから、厳密に取材しなくてもよいのではないかという議論が現場にあるのだろうか。
  • この問題は明確に倫理違反とまで言えるかどうか。事実誤認になる可能性はあるけれども、本当に事実誤認であるかどうかは、委員会は立証できない。
  • 放送界が、情報という人参を結局うまく利用されているのではないだろうか。商品として利用されているものもあれば、芸能人になるステップに利用されているものもある。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

『news every.サタデー』(1月8日放送)のコーナー企画で、新しいペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を取り上げた。犬を連れてそれぞれの店を訪れた2人の女性客を取材したが、この女性はペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが、放送後に局に寄せられた視聴者意見で判明した。当該局は2週間後(1月22日)にお詫び放送をして視聴者に謝罪した。
当該局から委員会に提出された報告書によると、取材したディレクターは、2人の女性客が運営会社の社員だと知りながら、時間の制約もあって取材・放送したという。
委員からは、ニュース現場の報道モラルはどうなっているのか、誰もこのミスに気づかなかったのはなぜか、一昨年の「バンキシャ!」問題のあと示された再発防止策は機能しているのだろうか、などの指摘があった。
委員会は、同様の問題が繰り返された背景や原因などを検証するために審議入りすることにした。

【委員の主な意見】

  • 情報バラエティー番組について、事実を正確に伝えることの重要性を議論しているが、正確さが命のニュース番組でも同じような問題が起きてしまった。ニュース現場の劣化、報道モラルの低下を指摘せざるを得ない。
  • ニュースを伝える者としての主体性が全く感じられない。どんな手段や方法であっても、とにかく映像さえ撮れればいいという安易さには憮然たる思いがする。
  • この担当ディレクターは社員ではないということだが、なぜ先輩やデスクに相談をしなかったのだろうか。職場内のコミュニケーションそのものが、日常的に機能していないということなのか。
  • ひとりの判断ミスにだれも気づかず、問題のある放送がそのまま放送されてしまった。軽い話題やトピックスでも、許されることではない。
  • 「バンキシャ!」問題は、情報の裏付けが不十分で、結果的には誤報になったが、取材者にはチャレンジする姿勢が感じられた。その意味では、今回の事案のほうが問題の根は深いともいえる。
  • 「バンキシャ!」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたということだったが、どこまで機能しているのか。大きな代償を払って得たはずの教訓は、本当に生かされているのだろうか。

以上

第45回 放送倫理検証委員会

第45回 – 2011年1月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送のバラエティー番組 『イチハチ』…など

第45回放送倫理検証委員会は1月14日に開催された。
フジテレビの『Mr.サンデー』事案では、当該局から提出された詳細な報告書は、今後同様の事案が発生した時の参考にもなるし、ひいては再発防止の効果も期待できると思われるので、委員会としてこの報告書を公表することの可否を照会したところ、当該局の了解が得られた。それを前提に検討した結果、この事案は、問題の性質、影響度、放送後の対応等を総合的に考慮し、当該局の報告書を公表して、討議を終了することにした。
前回の委員会で継続討議にした以下の2つの番組は、取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であった。類似した事案であることから、まとめて審議入りすることに決定した。

  • 毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)
    8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介したが、その中で、ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介された。視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった事案。
  • テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)
    酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。

議事の詳細

日時
2011年 1月14日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、石井委員、香山委員、是枝委員 重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌に関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、街で偶然見つけたかのように放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。
前回の委員会で、当該局から出された社員研修用の詳細な報告書が、単なる監視体制の強化ではなく、現場の自覚と自発的な取り組みを強調していることなどを評価し、これを公表すれば、他の放送局でこうした事案が発生した場合に、調査の方法やあるべき解決策の指針として役立つのではないか、また、この報告書を他局でも研修等の素材とすることで事前に問題点がチェックでき、同種事案の再発防止にも役立つのではないかという意見が多く出された。そこで委員会から公表の可否を照会したところ、当該局から公表の了解が得られた。
委員会では、この事案で問題となった手法が、審議入りを見送ることで今後も安易に使われる可能性があるなど、この事案の持つ問題の性質・広汎性・影響度を考慮するとともに、これまで生じた同様の事案との軽重を比較検討した。この番組が取り上げた月刊女性ファッション誌が付録のバッグの人気でヒットしているという社会現象自体は現実に存在すること、更に当該局から再発防止に有効だと思われる報告書(社内向けで本来非公開)の公表に協力が得られたことなどを総合的に判断したうえで、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 放送により社会に与えた影響が大きいか小さいかという点と、事が起きた後に局がどのように対応したかは大切なポイントだと思う。これまでの事案に照らして、取り上げなくて良いと思う。
  • 当該局の報告書が厚ければ良いのか、そういう判断基準だと誤解されないかという疑問がないわけではない。しかし現場のスタッフが再発防止のために第三者委員会を作って話し合った結果として考えるならば、よく出来ていると思う。現場のディレクターが何を考えてこうなってしまったかが良く分かる。
  • この報告書の水準で各局がやってくれたら、それがどんどんテレビ界に広まってくれたら、委員会としてはありがたい。
  • こういった問題は、「嘘じゃなくて演出の範囲だ。他もやっている」といった反応も予測出来るが、当該局は不適切表現で、やるべき演出方法ではないという認識を示した。こういった真面目な対応は評価できる。
  • 過去の事案で他局から提出された報告書と比較しても、今回は内容的に充実していると思う。そこを評価しないと、「では、どうすればよいのか」という事になってしまう。

【フジテレビ『Mr.サンデー』の社内研修用報告書】

フジテレビから公表する了解が得られた社内研修用の報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、放送倫理検証委員会の川端委員長の前文を付して、2011年2月16日、ホームページ上に公表した。また、BPO報告No.93にも掲載されている。

pdf公表にあたって_- 委員長前文
pdfフジテレビの報告書 - 「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送の
バラエティー番組 『イチハチ』

昨年の11月17日に放送された『イチハチ』で、富豪の女性が九州にあるホテルを買収するために折衝する模様が放送されたが、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと、視聴者から指摘された事案。当該局からの経緯報告書や新たに提出された資料を基に議論を行った結果、放送倫理上の問題があり、より詳しい事実関係を関係者からヒアリングする必要があるとして、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

昨年の11月8日に放送された『月曜プレミア!』で、酵素飲料を飲み、断食と組み合わせた方法でダイエットに成功した女性が紹介されたが、この女性がその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明した事案。当該局からは、前回委員会に提出した経過報告書に次いで、あらためて詳細な内部調査を行った結果をまとめた報告書が提出された。
毎日放送の事案同様、放送倫理上の問題があり、制作プロセスや事実関係の確認が必要だと判断し、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

【上記2事案に関する委員の主な意見】

  • 制作担当者のチェックが甘かったことが原因で、出演者が仕掛けたわけではないのに、番組が出演者の商売として有利に作用するという結果をもたらした。そういう意味では、2つの番組には共通性がある。
  • 個人であれ企業であれ、取材対象者がメディアを有効利用しようという意図を持っている場合があることを否定することはできない。しかしそれはメディア側のチェックの問題だ。
  • 番組制作者は、出演者の取捨選択についてきちんと判断しなければならないが、その能力が劣化しているのではないか。
  • 民放連の放送基準のなかに、宣伝になるようなものは放送してはいけないという項目(37条)があるのに、「結果的に利用されちゃったね、おしまい」というのはおかしい。気が付いた人が調べればすぐに分かるのに、あなた任せが蔓延している。制作担当者が調べるべきところを自分がやってしまうと現場スタッフの士気が下がる、といった遠慮があるのだろうか。

上記2番組について委員会は、バラエティー番組や情報番組などの番組ジャンルを問わず、テーマの取材対象として取り上げるかどうかを吟味するリサーチの段階で、事実関係や情報の精査がおろそかになっているのではないかとの危惧感を抱いた。この2番組については、共通の問題点があり、それが視聴者の信頼を失うことに繋がるのではないかという観点から、今後、一括して審議入りすることとした。

以上

第44回 放送倫理検証委員会

第44回 – 2010年12月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第44回放送倫理検証委員会は12月10日に開催された。12月2日に通知公表が行われた参議院選挙事案については、報道された新聞記事やテレビ番組を見た上で意見交換を行った。
女性誌が付録につけたバッグ関連の取材で、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について、当該局のプロジェクトチームが社員研修用に作成した報告書が新たに提出されたので討議した。委員の間では評価できる内容だという意見が多かったので、当該局に対してその報告書を公表する意思があるかどうかを確認した上で、今後の対応を決めることにした。
8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介するバラエティー番組。ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介されたが、視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった。誤解を与えるような取材方法や事実関係について継続して討議することにした。
テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)で、酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。当該局で内部調査が行われており、次の委員会までに詳細な報告書が提出される予定なので、討議は次回に持ち越すこととした。

議事の詳細

日時
2010年12月10日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、是枝委員 立花委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

さきの参議院選挙(7月11日投票)に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた4番組の事案は、12月2日に当該4局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。担当委員からそれに関する報告があり、続いて報道された新聞記事とテレビ番組を視聴した上で意見交換を行った。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌が付録につけるバッグがブレイクしていることに関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、偶然に街で見つけたかのようにして放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。当該局の「再発防止プロジェクトチーム」が、本事案の問題点を詳細に検証し、社内の制作セクションに向けて作成した報告書が新たに提出された。委員からはこの報告書は評価でき、委員会がこれを公表することによって、全放送局にわたり再発防止が期待できるのではないか、という意見が出された。

【委員の主な意見】

  • 今回の社内向け報告書は、他の番組を含めてすべての現場で徹底的に議論しようという姿勢が貫かれているところは評価できる。
  • この報告書は事実経緯がよく調べられ、問題点も指摘されている。今後、このような事案が発生した局は、この報告書をお手本にすべきだ、という事例として公表できないだろうか。
  • これまで提出された報告書は、監視体制を強めますというワンパターンだったのに比べれば、今回のものは委員会が言い続けている現場で討論することによりスタッフの自覚を促すというやり方に近い。そういう意味で評価できる。
  • 「事実をありのまま伝える」という基本的な取材姿勢が欠けていた点に問題がある。報告書によると取材者は「(街で見つけた)15人に(あらかじめ用意した)3人を足したのは何故か」と漠然と思っているだけだ。報告書では、なぜ肝心のその分析をしなかったのだろうか。
  • (放送基準解説書の)情報系番組において虚偽が許されないという箇所に該当するし、演出過剰であるということは指摘できる。
  • 制作スタッフの中に、これはおかしいと思った人が複数いながら、積極的に止める手段はとらず、見逃してしまう結果となった。何故そうなったのか、構造上の問題があるのではないか。
  • この社内向け報告書は、担当ディレクターがきちんとした倫理意識を持っていなかったからだと、個人の資質のせいにしているが、むしろそこが問題ではないか。

委員会は当該局に対して、委員会による報告書の公開を打診し、その結果次第で今後どのように討論を続けるかを決めることにした。

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われたバラエティー番組

「世間の常識から外れたセレブな女性のお買い物」というテーマで、8人の若い女性が2週にわたって紹介された。それについて、視聴者から内容に疑問があると、複数の意見が寄せられた。
そのうちの1人で、以前宿泊したホテルが気に入ったので、そのホテルを買収したいという女性に密着。番組では、ホテル側との折衝シーンが流され、あたかも買収話が進んでいるかのように構成されているが、視聴者から、買収話はウソであり宣伝のための話題つくりではないかとの指摘があった。さらに、放送後、買収話が進んでいると信じた利用客からホテルに対して問い合わせが相次いだ。
ホテル側は売却の意思がないことや取材に協力したことなどをブログに載せて対応した。また、そのセレブ女性の周辺関係者が、ホテルのオーナーの肉親であることが明らかになった。
取材方法や事実関係を精査するために、討議を継続することにした。

【委員の主な意見】

  • 放送人の自主・自律性の問題であり、取材・制作の過程できちんとした倫理に基づいて制作していたのか疑問がある。
  • 放送前に、そのセレブ女性が所属する事務所から、制作会社のプロデューサーには、「売却の話はなさそうだ」という情報が伝わっていたが、その情報が局の担当者には伝わっていない。そこも問題だ。
  • バラエティー番組であったとしても、「事実」を扱う場合は、それをねじ曲げないように最大限の配慮が必要だ。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組
  『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

11月8日放送の『月曜プレミア!』で、野菜や果物を発酵させた酵素飲料を飲み、断食と組み合わせたダイエットを体験して、減量や美容の増進に成功したという女性が紹介された。ところが放送後に、この女性はその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明し、当該局は取材時の確認作業に不手際があったことを認めた。
事案の概要を記した経緯書が委員会に提出されたが、事実関係についての詳細な内部調査が進められている最中であり、詳しい報告書を待つことにした。
新たな討議事案も含めて、バラエティー番組でも事実を扱う場合は、正確な情報に基づいて制作されなければならないのに、肝心の情報の確認や取材の方法に共通した問題があるという指摘が委員の間から相次いだ。当該局からの詳細な報告書の提出を求めるなどした上で、次回の委員会で討議を継続することにした。

以上

第43回 放送倫理検証委員会

第43回 – 2010年11月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第43回放送倫理検証委員会は11月12日に開催された。今夏に行われた参議院選挙関連の放送で、公平・公正性に疑念が持たれた報道番組および情報番組の合計4番組について3回目の審議を行った。その結果、担当委員が作成した決定文案について委員会の合意が得られたので、12月上旬に当該4局に対して通知した上で記者発表する運びとなった。 付録にバックをつけることで売り上げが伸びている女性誌関連のインタビュー取材で、視聴者から不自然な映像が指摘され、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について討議した。過去にも他局で同様の事案があり、議論はそれとの関連にも及んだが、当該局から新たに提出される報告書を待って、改めて討議することにした。 10月22日に開催された「在阪局・BPO検証委 意見交換会」(詳細は90号参照)について、意見交換会に参加した在阪各局から意見や感想が寄せられたので事務局から報告した。 事務局からは、11月10日に行われた総務省のフォーラムはまとめの段階に入り、今まで出された意見を集約したうえで座長の見解を添えて総務大臣に提出される見通しであることを報告した。

議事の詳細

日時
2010年11月12日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、重松委員 立花委員、服部委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた報道2番組(長野朝日放送、信越放送)と情報バラエティー2番組(TBS、BSジャパン)の事案について、前回の審議をふまえて、担当委員から決定文の修正案が提出された。
この4番組には、参議院比例代表選挙の趣旨を正しく理解せずに制作したと思われるものから、単純な過失と見られるものまで、放送の公平・公正性に関する疑念の程度には差があるが、民主主義の根幹を成す選挙に関わる放送であるのに、公平・公正性を損なわないよう制作するという根本的倫理が十分に尊重されていないという点では、共通の問題があることから4番組を一括した形で委員会決定とすることが、今回の審議で改めて確認された。
一方、TBSのバラエティー番組『アッコにおまかせ』(6月6日放送)の中でも、参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念がもたれる内容があったことが審議の過程で明らかになり、決定文で指摘することになった。
当該4局に対する委員会決定の通知と公表の記者会見は、12月上旬に行うことにした。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

付録にデザイナーズバッグを付けることで販売部数を伸ばしている女性誌に関して、フジテレビの情報番組『Mr.サンデー』が、インタビュー取材を2回にわたって放送(8月8日、9月26日)したところ、視聴者から「場所が異なる2ヶ所の取材現場に同じ女性が映っている」などとやらせ疑惑が指摘された。当該局が調査した結果、制作スタッフが複数の女性を事前に仕込んで撮影したことがわかったので、お詫び放送(10月17日)をするとともに、委員会に対し詳細な報告書を提出した。
これと同様の取材方法が、去年・今年と名古屋のテレビ局において採られており、委員会はBPO報告に記載して注意を喚起した。にもかかわらず、同様の事案が起きたことに委員会は危惧を抱き、過去の事例を踏まえて討議した。

【委員の主な意見】

  • 問題は髪型を変えて2度も出てくる女性で、仕込み過剰だ。特定の女性をそうまでして出すのは、普通ではない。「やらせ」と同じことだ。
  • こういう取材では、あるがままに表現すれば良いと思う。そうではない取材方法に走ってしまう理由が分からない。
  • 日本のメディアは「やらせ」にアレルギー反応があって、すごく潔癖になっている。それは虚偽放送の抑止力になっているが、この事例は「やらせ」と言われるのを回避するために、無理やり通行人に聞いてみたという形式にしてしまったのではないか。
  • バッグを持った通行人を15人も見つけたなら、そのほかに事前調査で判明した愛好者を3人連れてきて、意見を聞きましたと正直なストーリーにすればよい。なぜ通行人18人にこだわったのか。
  • 最近、雑誌にバッグや景品をつけるというのは凄まじい現象になっている。その現象自体について虚偽を言ったわけではない。
  • こういった取材方法が、このまま広がっていったらまずい事になるというのはわかる。しかし、過去にあった捏造事案と比較すると、手法選択の間違い、数の水増し、連絡体制の問題はあるにしても、この事例は軽いと思う。
  • 演出はある程度、番組に必要だと思う。どこまで許されるかと いう程度問題ではないか。
  • 街頭でインタビューして意図しない答えが返ってくることが、実は、取材者を鍛えてゆく。しかし今回のように、コメントや映像を仕込んで済まそうとすることが、取材、制作の弱さになって行き、非常に大きな不祥事を起こす土壌になる。
  • 当該局は、問題点の検証と再発防止に向けたプロジェクトチームを立ち上げ、報告書をまとめることにしている。委員会ではそれを受けてさらに議論を重ねることした。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

10月22日に大阪の読売テレビで開催した「在阪局・BPO検証委意見交換会」に関して、在阪各局の出席者から事務局へ意見や感想が寄せられたので委員会に報告した。これらの意見を参考にして、次回以降開催する地方における意見交換会の材料にする予定である。

以上

第42回 放送倫理検証委員会

第42回 – 2010年8月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』…など

第42回放送倫理検証委員会は10月8日に開催された。放送の公平・公正性に疑念が持たれた参議院選挙に関する4番組(2つの報道番組と2つの情報バラエティー番組)については、当該4局に対して実施したヒアリングの報告と、担当委員が作成した決定文案の審議を行った。その結果、決定文の方向性が固まったので、次回の委員会までに修正案を作成し、再度審議することにした。
5ヶ月の間にお詫び、訂正放送を3回繰り返したTBS『がっちりアカデミー!!』については、当該局から提出された再発防止の取り組みを検討した結果、それを了承して討議を終えることにした。
「在阪局・BPO 検証委 意見交換会」については、議論の材料にするために在阪局に依頼したアンケート結果を集約して委員に配布するとともに、テーマや進行方法について、委員と事務局が意見を交わした。
事務局からは、8月25日に行われた総務省のフォーラムに、BPOの活動内容を正しく理解してもらうための補足説明書を提出したことを報告した。

議事の詳細

日時
2010年10月 8日(金) 午後5時~7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、2つのニュース番組と2つの情報バラエティー番組は、放送の公平・公正性に疑念が持たれたため、前回審議入りした。この事案について、担当委員が9月下旬、当該4放送局に対するヒアリングを実施した上で作成した決定文案を中心に審議を行った。
審議の対象になったのは、以下の4番組である。

  • 長野朝日放送『abnステーション』(6月22日放送)
  • 信越放送『SBCニュースワイド』(7月8日放送)
  • TBS『関口宏の東京フレンドパークII』(6月28日放送)
  • BSジャパン『絶景に感動! 思わず一句 初夏ぶらり旅』(7月11日放送)

上記4番組は、公平・公正性に関する疑念を生じさせる程度が相当異なり、参議院比例代表選挙の趣旨を正しく理解せずに制作した結果、公平・公正性に重大な疑問を生じさせているものから、単純な過失と見られるものまでバラツキがある。またヒアリングの結果、問題の認識や受け止め方にも局間で差異があることが判明した。
いずれにせよ、民主主義の根幹を成す選挙に関わる放送は十分に慎重でなければならない。当委員会は、今年5月の第38回委員会でも、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)で選挙の事前運動と受け取られかねない放送が行われた事案を討議した。この事案は審議入りこそしなかったものの、参議院選挙を間近に控えていることもあり、委員会は「BPO報告」に詳しく記載して全放送局に注意喚起を求めた。
にもかかわらず、その意図が放送現場に届かなかったという自省も込めて、当委員会は今回の審議事案の決定文で、改めて全ての放送局に注意を喚起して、公平・公正性に対するきめ細かな配慮や、再発を防ぐための目配りを、強く求めることにした。
なお、次回の委員会までに、担当委員によって修正案が作成される。

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』

この番組は既報のように、5カ月間で事実に反する説明や不適正な編集など3回のミスがあり、そのたびにお詫び放送をしている。委員会は前回 の討議で、番組制作過程におけるチェック方法に問題があると判断し、どのような対策を講じて実施したかについて報告を求めた。
当該局からは「この問題ではA弁護士のアドバイスを受けた、B協会やC役所に確認した」など、委員会が指摘した後の放送について、詳細かつ具体的なチェック内容を記した報告書が提出された。その後はミスが出ておらず、委員会はこのままの状態が継続することを期待して、当該局の対応を了承し、討議を終えることにした。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

10月22日(金)に大阪の読売テレビで開催することになった「在阪局・BPO検証委 意見交換会」での議論の材料とするため、在阪各局に対し実施したアンケート結果を集約し、各委員に配付した。会合のテーマを3つに絞ることや進行方法などについて、委員と事務局が意見を交わした。

■在阪局との意見交換会開く 検証委初の試みに11局84人参加

「在阪局・BPO検証委 意見交換会」が10月22日、読売テレビの1階ホールで開かれ、予定の3時間を超えて意見が交わされた。
開催に当たっては、在阪局以外にも、関西圏の局に案内を出した結果、制作現場で中核的な役割を担っているデスクやプロデューサーを中心に11局84人の参加があった。
委員会側からは、川端委員長、吉岡委員長代行をはじめ、重松、立花、服部、水島委員のあわせて6名が参加した(事務局除く)。
意見交換会は、双方が率直な意見を述べることにより、相互の理解を深めるという趣旨から、非公開とした。開催にあたり在阪局にアンケートを行い、100通近い回答の結果に基づき、次の3つのテーマを設定することにした。

  • 放送局と委員会の距離 ~検証委員会は放送局より偉いのか?~
  • 委員会の思いと現場の言い分 ~委員会決定は現場に届いているのか?~
  • 放送局に明日はあるのか ~表現の自由を守るために~

会は、各テーマの合間に各委員からの5分コメントをはさんで進行された。
テーマ2の意見交換では予定時間をオーバーするほど活発な発言があった。最後に川端委員長のまとめのコメントがあり、約15分押しで閉会となった。
意見交換会に引き続いて、各局の経営者の方々も参加して懇親会が行われた。そこでは「3時間はあっという間に過ぎ、話し足りなかった」「画面や活字でしか接する機会がない委員から、生で話が聞けたことは有意義だった」といった在阪局からの声が聞かれた。
検証委員会と東京以外の放送局との意見交換会の開催は、今回が初めての試みであったが、在阪各局の熱意と協力によって会は活況を呈することとなった。委員会としては、今後も年に一度くらいの割合で、このような会を各地で開催する予定である。

以上

第41回 放送倫理検証委員会

第41回 – 2010年9月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与を批判したテレビ東京の『週刊ニュース新書』…など

第41回放送倫理検証委員会は9月10日に開催された。
まず、7月に行われた参議院選挙をめぐって、放送の公平・公正性に疑念が持たれた2つの報道番組と2つのバラエティー系情報番組について討議した。その結果、4番組をまとめて審議入りすることとし、当該局に対してヒアリングを実施することになった。
昨年11月にテレビ東京の報道番組『週刊ニュース新書』で、岡崎市がいわゆる貧困ビジネスに不正に関与していると報道した。岡崎市はそのような事実はないと反発し、両者間で話し合いが続けられていたが決着がつかず、岡崎市側から、議論を再開してほしいと要望があった。討議の結果、事実関係に争いがあるが、この事件についてどちらの言い分が正しいかを認定することは当委員会の役割ではないという結論となった。
TBSの『がっちりアカデミー!!』は、この4月にスタートした番組であるが、5カ月の間にお詫び、訂正放送が3回も繰り返されたのは、番組の制作・チェック体制に問題があるのではないかという意見が相次いだ。今後どのような再発防止策を実施するのかについて当該局に報告を求め、推移を見守ることにした。
TBSの情報生番組『ひるおび!』で、ある政治家がツイッターを始めたと放送したが、政治家本人に確認しておらず、結局”なりすましツイッター”であることがわかった。同番組内で訂正されたが、取材の基本である事実確認を怠らないようBPO報告に記載して、注意を喚起することにした。
初めて開催する在阪局と検証委員会との意見交換会について、テーマや進行方法を検討した。
事務局からは、8月25日に行われた総務省のフォーラムについて報告があった。

議事の詳細

日時
2010 年 9月10 日(金) 午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、視聴者から、以下の4つの番組は放送の公平・公正性に問題があるのではないかという意見が寄せられた。

  • 長野朝日放送『abnステーション』(6月22日放送)
  • 信越放送『SBCニュースワイド』(7月8日放送)
  • TBS『関口宏の東京フレンドパークII』(6月28日放送)
  • BSジャパン『絶景に感動! 思わず一句 初夏ぶらり旅』(7月11日放送)

上記4番組のうち、(1)と(2)はローカルニュース番組、(3)と(4)は情報バラエティー番組である。
このたびの参議院選挙比例代表には12の政党・政治団体から186人が立候補したが、長野県内で放送された(1)と(2)は、長野県に関係がある3つの政党の4人の候補者だけを取り上げ、その他の政党や候補者には言及しなかった点に問題がある。参議院比例代表選挙には制度上長野県という区切りを入れる余地がないので、ことさらに長野県関係者だけを取り出して放送することは、長野県内の有権者を、長野県関係の候補者に誘導する効果を否定できない以上、それだけで選挙の公正・公平性の問題が生じる。
一方、(3)は、選挙の公示期間中であるにもかかわらず、特定の改選議員の名をあげて所属政党を当てさせるクイズを出題した。
また、(4)は、あるタレント候補がリポーターを務めた3年前の旅番組を、投票日当日の夕方に再放送したという問題である。
選挙は、民主主義の根幹に関わる重大事であるが、その選挙をめぐって、公平・公正性に疑念が持たれる放送があったことは、仮にその原因が制度の理解不足や不注意であったとしても問題である。各局の放送基準でも、公平性について厳しく規定されている。委員会としては、以上の4番組を一括して審議入りし、当該局へのヒアリングを実施したうえで、「意見」を述べることにした。

【委員の主な意見】

  • 参院選の比例代表の非拘束名簿について、番組で選挙民に知らせたいというのは問題ない。でも、そのサンプルとして県連所属という区切りで県内の候補だけを取り上げると、ほかの候補者との関係でどうしたって公平性を害することになる。
  • 参議院の比例代表区には、県という区切りは何の意味も持たない。しかし、この2つのニュースでは、それが何か意味のある区切りであるかのように報道されていることが問題だ。
  • 選挙制度を当該局が正しく理解しているのかを議論する以前に、当該局側がいずれも放送の時点では、ルール違反をしたと思っていないことが問題ではないか。民放連やNHKの放送基準、いろいろな法的な規定について無頓着であるということは、放送の自由の上にあぐらをかいているんじゃないかと思われても仕方ない。
  • 信越放送のほうは投票日3日前の放送という問題があるが、中身を比べてみたら、4人の候補者間の公平という点では長野朝日放送のほうがはるかに問題が大きい。参議院の非拘束名簿のもとではありえない区切り方を放送局が勝手にやったことによって、ああいう放送が可能になったのだから。
  • これは氷山の一角で、ほかのローカル局でもあるかもしれないということを前提にすべきだ。とりあえず、俎上にあがっているニュースの2番組は選挙制度を理解しない結果として公平・公正性を害している。ほかにもあるかもしれないので、注意喚起のために取り上げざるをえない。
  • 2つのニュース番組については、選挙制度上認められない内容であったために、公正性を害したという倫理違反が考えられる。バラエティー系の2番組は、本来チェックされるべきものがチェックされないで素通りしているという、そういう不注意が問題だ。
  • 視聴者の、ある種リテラシーみたいなものを喚起するためにも、こういう放送はいけないのだと公表することには意味があるように思う。
  • 選挙の公平・公正性というのは民主主義の基本だから、それを最大限、尊重するような放送をしなければいけないのに、こういう放送がなされているのは、どこかが緩んでいるのではないか。メディアにはそういう責任がある。

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与を批判したテレビ東京の『週刊ニュース新書』

昨年12月と今年の1月に、委員会で討議した事案。 昨年11月28日に放送された「”貧困”を食い物に……行政の闇」は、岡崎市と無料低額宿泊所の業者とが癒着して、生活保護を受けている入居者を苦しめていると伝えた。それに対して岡崎市が反論し、岡崎市とテレビ東京との間で解決に向けて話し合いが継続されていたので、委員会としては推移を見守ることにしたが、8月に話し合いが決裂。岡崎市から、検証委員会で議論を再開してほしいと要請が出された。
この事案では、果たして意図的な「誇張」や「ゆがめられた表現」があるのかについて、両者の主張に食い違いがある。そのどちらが正しいかという事実認定や裁定を行うことは、当委員会の任務ではない。両者の主張が平行線をたどる中で、この先委員会が議論を行っても意味がないとして、討議を終えることにした。

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』

8月13日の放送の『がっちりアカデミー!!』のテーマは自己破産で、自己破産者は給料の4分の1が、1カ月間差し押さえられると誤った情報を流した。
翌週お詫び放送をしたが、その訂正自体が不正確で誤解を生むものだった。討議の結果、訂正放送もされているし、法律の専門家を監修者に加えるという対策もとられているので、この放送だけを審議案件とはしないことにした。
しかし、この番組は開始以来5カ月で事実関係においてミスが3回あり、3回お詫び放送をしている。過去の2回は、4月16日放送の「薬の説明書」と「お薬手帳」との取り違い、6月18日放送のテスト答案に関する編集ミスである。番組のチェック体制に問題があると判断せざるを得ず、対策の実施状況報告の提出を求めるとともに、委員の意見を詳しく載せて推移を見守ることにした。

【委員の主な意見】

  • 今回の放送の訂正放送自体にも事実誤認がある。自己破産が認められても、免責決定がなされなかったら、責任を免れることはできない。
  • 「裁判所が破産と言うと借金が棒引きになります」というコメントは誤りだ。破産の手続と免責の手続は全然違う手続だ。もっと慎重に制作すべきではないか。
  • 普通、お詫び訂正放送のこういう文章を作る時には、一応、法律の専門家のアドバイスを受けるべきではないのか。
  • お詫びと訂正で「出演者の発言にこうありましたけども、こう訂正します」とはっきり言わないと、どこがどう訂正なのか、これでは次の回しか見てない人には分からない。
  • これだけ続くと、ちょっと酷い。どこかが壊れたんじゃないかなと思ってしまう。金属疲労というレベルではなくて。
  • 多分、番組の作りの構造として、リサーチャーがいて法律事務所などの調査は全部その人たちがやり、まとめたペーパーはディレクターに渡す。出演者のコメントは構成作家が別に書く。こういった、寄せ集めて作っていく悪い面がこの番組には出ていて、リサーチャーがコメント原稿をチェックできる状況になく、最初の情報が人を経るごとに変わっていった。その結果が、今回の間違ったコメントになったと思われる。
  • 現場の感覚として、番組スタート以来何カ月間も監修者を付けずにやってきてしまったことが、一番の問題だと思う。この手の番組をやるのであれば、普通は最初に監修者を付けると思うが。
  • 不注意が原因、派生する問題が小さい、すぐに訂正した、という事案の場合、過去の例からすると、取り上げないという方に行くけれど、わずか5カ月で3回目だとそうもいかないか…
  • 日本の場合、法的な知識のレベルが、少数の専門家以外はガクッと低いということがある。いい加減な専門家に聞いて、そのいい加減な専門家の回答を理解できないまま勝手に誤解して放送するという問題だ。これはある意味で、根は深いのかもしれない。

“なりすましツイッター”を本物と誤報したTBSの『ひるおび!』

TBSの生の情報番組『ひるおび!』(9月6日放送)で、ある政治家がツイッターを始めたと放送したが、そのコーナー終了直後に社内からの指摘を受け、当該政治家の事務所に電話で聞いたところ誤報であることが判明した。番組では25分後にお詫びをした。有名人に成りすましたツイッターが横行している中、報道の原則である確認をせずに放送したことについて、注意喚起を求めることとした。

【委員の主な意見】

  • 元農水大臣の時の事案が生かされてない。局内で何の情報も伝わってないということは、この局には、BPOが何をやっても伝わらないのだと思ってしまう。
  • お詫びをする対象というのは、本来、視聴者であるはずなのに、そうではなくてその政治家に謝ったのではないかと受け取れる。
  • ブラックノートの時の回答書に、何か問題が起きた時には、かなりいろいろな人を集めて、仰々しい会議を開きますと書いてあった。それが実行されていれば、本当はセクションを超えて連絡が行われていなければいけないはずだ。
  • ツイッターには有名人のなりすましが多いので必ず確認が必要という基本常識がないことが問題。
    ケアレスミスが多すぎる。バラエティーでやったように、いつもトラッシュボックスがあって、その中からまたいろんなものをやるというシステムが必要かもしれない。
  • こういう情報番組でも、自分が直接取材で得た情報ではない、新聞記事とかを読んで番組を作ることがある。その手法が一般化してしまったので、取材源に当たるとか確認を取るという基本原則がなくなったのだと思う。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

意見交換会は10月22日(金)に大阪の讀賣テレビの大会議室で行うことに決まった。放送局、検証委員会がそれぞれ常日頃思っている疑問や要望などについての質疑応答を行う予定。また、そのための材料として放送局側から事前にアンケートを提出してもらい、それに基づいていくつかのテーマを設定することにした。

以上

第40回 放送倫理検証委員会

第40回 – 2010年7月

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュース番組

寝起き時の脳の働きを調べる実験データに改竄があったTBSの『がっちりアカデミー』…など

第40回放送倫理検証委員会は7月9日に開催された。
TBSの複数の番組で放送された「農水大臣が外遊先でゴルフをしていた」という報道が誤報であった事案について、当該局から提出された経緯報告書をもとに、2回目の討議を行った。その結果、取材で得た情報がニュースデスクに共有されないなど、重大なミスが内在していたこと、お詫び放送の伝え方に不備があったことなどが、改めて指摘された。委員会として審議入りはしないが、当該局に対するウォーニングとして、議論の内容をBPO報告で詳しく紹介することにした。
バラエティー番組で、睡眠から目覚めたときの脳の働きについて、被験者のペーパーテストで調べる実験を行ったが、間違ったテスト結果が放送された。制作過程のミスであり社会的な影響もないので取り上げないこととした。
参議院選挙に関する放送で、比例代表の特定の候補者だけ取り上げて紹介した報道番組や、候補者の名前をクイズ問題に出したバラエティー番組等に、公平公正の観点から疑問があると、視聴者から指摘が寄せられた。これらの番組については、当該局から報告書を提出してもらった上で、次の委員会でまとめて討議することにした。
委員会が4月に出したTBSのブラックノート事案の「意見」に対して、当該局から改善策が提出されたので検討の結果、了承することで一致した。
東京以外の放送局と検証委員会との意見交換会について検討した結果、開催にむけて準備に入ることとした。
事務局からは、この夏に開催される2つの勉強会の案内があった。

議事の詳細

日時
2010年 7月 9日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュース番組

TBSは5月20日の『朝ズバッ!』およびその他のニュース枠で、複数の民主党幹部の取材に対する発言をもとに、口蹄疫発生後に中南米に外遊した当時の農水大臣が外遊先でゴルフをしていたと報じた。しかし、その後誤報であることが判明したとして、当日昼前のニュースでお詫び放送をし、社内処分も実施した事案。
委員会は、取材から放送に至る経緯の説明には明確でない部分があるとして、改めて当該局に質問書を出し、提出された詳細な経緯報告書をもとに、2回目の討議を行った。
報告書の中で当該局は、「記者が取材先で得た重要な情報が、ニュースデスクに伝わっていなかったこと」「記者の思い込みなどから、裏付け取材が不十分だったこと」などを認める一方、番組の制作担当者の連絡ミスからニュース原稿は”民主党幹部の発言の引用”であるのに、画面表示ではゴルフをしたことが一部で断定的な表現になってしまった、などと説明している。
委員の中からは、他のメディアも同じように取材しているのにTBSだけが誤報をしたという事実を重く受け止める必要がある、現職閣僚の進退につながりうる報道なのに裏付け取材が甘い、お詫び放送の伝え方が曖昧で関係者や視聴者に対する謝罪になっていない、などの厳しい指摘が出された。
委員会は、当該局からの詳細な報告書によって、事実関係や問題点の所在がほぼ判明したこと、当該局はすでに誤報に至った原因を解明し、局内処分をし、再発防止策もとっていること、不十分とはいえ迅速なお詫び放送もなされていること、この事案を委員会が審議の対象にすることは、政治家への取材や監視を不必要に萎縮させるおそれもあり好ましくないことなどから、審議入りはしないこととしたが、当該局に注意を促すウォーニングとして、議論の内容をBPO報告などで詳しく紹介することにした。

【委員の主な意見】

  • 今回の報告書で、かなり詳細な経緯まで分かったが、記者の取材した情報が指揮をとるデスクに正しく伝わらないというのが本当だとしたら、大きな問題だ。
  • ぶら下がりなどで他社も同じような情報をキャッチしていたということだが、それではなぜTBSだけが放送に踏み切って誤報を出してしまったのか。裏付け取材の不備などと簡単に言うのではなく、重く受け止める必要がある。
  • ゴルフをしていたという情報をつかんで、これでいけるという雰囲気や思い込みのようなものが記者、キャップ、そしてデスクにも広がったのではないか。仮に民主党幹部がそう発言しても、現職閣僚のクビがかかったニュースなのだから、現地を含めて徹底的な裏付け取材をしなければ放送できないはずだ。
  • 倫理上の問題というよりも、取材者として、報道担当者としての資質の問題とも言えるのではないか。そうならば、この委員会で議論する問題ではない。
  • 当該局は最後まで、大臣が実際にゴルフをしていたかどうかの事実関係を伝えていない。伝えているのは、大臣自身が否定の会見をしたことと、民主党幹部が発言を翻したということだけ。報道機関として、事実はどうだったかをきちんと確認して、客観的に伝えるべきだった。
  • その部分がきちんと押さえられていないから、お詫び放送も、誰に何をお詫びしているのか曖昧なままになっている。
  • 今回の事案は、ファクト(事実)とクォート(引用)の関係が問題になった。もちろんクォートとしてでもニュースとして伝えるべきケースもあるが、その場合きちんと区別をして伝えなければならない。
  • 政治問題や政治家に対するメディアの監視が重要であることは、言うまでもない。誤報はむろん良くないが、誤報の原因が究明され、すでに対策も取られた事案であり、むしろメディア側が不必要に萎縮することのないよう審議入りは控えるべきではないか。
  • 確かに審議入りしての議論までは必要ではないと思うが、さまざまな課題が浮き彫りになった事案だ。当該局に注意を促す趣旨で、BPO報告やホームページなどでは、議論の中身をできるだけ詳しく紹介してほしい。

寝起き時の脳の働きを調べる実験データに改竄があったTBSの『がっちりアカデミー』

TBSのバラエティー番組『がっちりアカデミー』(6月18日)で、寝起き時の脳の働きを調べるために、深い眠りと浅い眠りではどのような違いがあるかについて、被験者のアシスタントディレクターへの簡単なペーパーテスト(計算問題)が行われた。その中で、1問目の解答が不正解であるカットが放送されたにも関わらず、結果は100点だったのはおかしい、と視聴者から指摘があった。
当該局は誤りを認めて、7月2日にお詫び放送をした。さらに当該局は、予備のカットを使ってしまったという単純な編集ミスで、意識的な数字の改竄ではないと説明している。また、この実験は厳密な科学実験ではなく、深い眠りと浅い眠りの違いをわかりやすく示すことが目的なのだから100点でも80点でも大差はなく、社会的に大きな問題があるとはいえない。勿論、編集ミスから放送にいたるまでのチェック機能が働かなかった結果、間違ったデータを放送したことについて当該局は反省すべきだが、既に非を認めて丁寧なお詫び放送をしているので、取り上げないことにした。

【委員の主な意見】

  • 視聴者が気がついたことを、編集段階で何人ものスタッフが下見しているのに気がつかないことが情けない。
  • ミスの内容は明白だし、お詫びもきちんとしている。それによって健康被害が起きたわけでもないし、社会的な影響もない。
  • この事案もそうだけれど、全体にケアレスミスが多すぎる。すみませんでしたとか、気がつきませんでしたとか。

参議院選挙に関して不適切な内容があった複数の番組

放送で選挙を扱うときは番組のジャンルに関わらず、公平公正を常に留意しなければならないが、このたびの参議院選挙においては複数の番組に対して視聴者から、公平公正の観点から疑問があるとする意見が寄せられている。番組を視聴し、当該局に報告を求めた上で、次回の委員会で一括して討議することにした。

TBSから提出された『報道特集NEXT』ブラックノート事案の改善策について

民放連の申し合わせに従い、4月に委員会意見が出された『報道特集NEXT』ブラックノート事案について、TBSから具体的な改善策を含めた取り組み状況が提出された。委員会は報告書を検討し、了承した。
なお、報告書はBPOのホームページに掲載した。

東京以外の放送局と検証委員会との意見交換会の開催

委員会の活動や決定内容を深く知ってもらうことについては前回の委員会で議論したが、広く知ってもらうために、委員が地方に出向いて意見交換をすることが提案され、初回は大阪エリアを候補地とすることで承認された。

事務局連絡

7月29日に、民放連とATPが開催する放送倫理セミナー「バラエティー番組と放送倫理」(水島委員が司会)の案内と、8月3日にBPOが開催する事例研究会の出席要領について事務局から説明があった。

以上

第39回 放送倫理検証委員会

第39回 – 2010年6月

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュースとフジテレビの『とくダネ!』

委員会の意思表明の方法について…など

TBSとフジテレビの複数の番組で放送された、農水大臣の外遊先におけるゴルフ報道が誤報であった事案について討議した。その結果、TBSについては、取材からお詫び放送までの経緯に明確でない部分があるので、当該局に質問書を出し、回答を得た上でどう扱うかを決めることとした。 委員会で審理・審議した内容は、記者発表やBPO報告で公表しているが、審理や審議に至らなかった議論の内容が、制作現場に伝わりにくいという現状について、どう改善すべきかを検討した。 事務局からは、昨年秋に続く2回目のBPO事例研究会を、8月3日に開催することを報告した。

議事の詳細

日時
2010年6月11日(金) 午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、立花委員、服部委員、水島委員

農水大臣が外遊中にゴルフをしていたと誤報したTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』およびニュースとフジテレビの『とくダネ!』

TBSは『朝ズバッ!』(5月20日放送)およびその他のニュース枠で、複数の民主党幹部からの証言をもとに、口蹄疫発生後に中南米に外遊した当時の農水大臣が外遊先でゴルフをしたと報じた。
しかし、農水大臣が抗議し、取材した民主党幹部も証言を翻したことから誤報であることが判明したとして、当日昼前のニュース等でお詫び放送をした事案。当該局は自主的に原因究明を行い、裏付け取材が不十分だったことや局内のチェックのミスを認めて、既に社内処分も発表している。委員会はそうした当該局の自主的な対応を理解しつつも、誤報に至った事実関係に明確でない部分があるので、当該局に対して質問書を出し、その回答を待って取り扱いを決めることとした。
フジテレビの『とくダネ!』は、TBSの報道をキャスターが引用しただけであり、お詫びもしているので取り上げないことにした。

【委員の主な意見】

  • 報道は当初、口蹄疫の問題がありながら長期間日本を留守にしたことが問題という伝え方だったが、2回3回と報道を重ねるに従って、外遊先でゴルフをしたことに重点が移っていった。ゴルフの方が責めやすいからなのか。
  • コメントでは「ゴルフをしたという民主党幹部の発言から生じた疑惑」を伝えているのに、テロップでは「農水大臣ゴルフ」と断定し、齟齬をきたしている。ファクトではなくクオート(引用)だというなら、徹底してそう表示すべきだ。
  • 記者の問いかけに対して、大臣が当初は否定せず無言であったことを、取材者側は肯定の根拠と判断したということだが、手前勝手な解釈だ。
  • 「言論の自由」の中には誤報も含まれ、それは常に起こり得ることだ。間違いが起こった場合、原因を調べ、どう対応したかが問題になる。このケースで、TBSはそれなりに対応しているし、大きな問題ではないと思う。
  • 民主党の複数の幹部の発言として「こんな時期に外遊するのはケシカラン」「その際ゴルフをした」、と報じたのは取材不足とはいえない。しかし、ゴルフについて本人が否定し、民主党の幹部も自らの発言から逃げたので、結果としてファクトではなかった。
  • TBSの取材について、どのような裏づけがあって、あのような放送になったのかは、時間軸に沿ったきちんとした説明がないと正確なことがわからない。
  • 今回のケースは、クオートのときにどういう報道の仕方なら許されるのか、本人が否定したときにどのように対応するかという問題だ。
  • お詫び放送は、TBS側の問題点に関しては頬被りして、民主党幹部が発言を変えたことに原因があると逃げているように感じる。
  • TBSは取材が不十分であったことはお詫びしているが、肝心のゴルフをしたかどうかについては触れていない。フジテレビのキャスターは農水大臣には謝るが視聴者に向いていない。

委員会の意思表明の方法について

委員会の決定内容を、放送局の一部だけの人ではなく、主に、実際に制作現場で働いている人たちに広く知ってもらうためにはどうすべきかについて検討した。審理や審議に入った事案は、決定内容を記者発表し、「BPO報告」やホームページにも詳細に掲載しているが、審理や審議に至らなかった議論の内容は、制作現場に伝わりにくいという指摘がある。今後、事案の内容に適した公表の方法を事案ごとに検討し、改善に努めることになった。

連絡事項

昨年秋から始めたBPO主催の2回目の事例研究会を、8月3日に開催することにした。検証委員会関係のテーマは、TBSのブラックノート詐欺事件報道を踏まえた「委託制作における放送局の責任~取材・報道のあり方をめぐって」で、服部委員が参加・報告する。

以上