第54回 – 2011年11月
航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組
第54回放送倫理検証委員会は11月11日に開催された。
ある民放局のバラエティー番組で、航空便があるのに陸路を延々と旅をして、ヒマラヤ山麓の街を紹介したのは、秘境を強調するヤラセではないかという視聴者意見が寄せられた。討議の結果、演出の技法には何か釈然としない思いは残るが、放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。
9月22日に「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を発表してから2度目の委員会になった。この間多くの局の番組審議会で取り上げられ、また民放連小委員会との意見交換会もあった。1ヵ月半の間に示されたNHK、民放各局の対応内容や考え方を事務局がまとめて全委員に報告した。
議事の詳細
- 日時
- 2011年11月11日(金) 午後5時~7時
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組
- 出席者
- 川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員
航空便があるのに陸路を数十時間もかけて旅をしたのは、秘境を強調するヤラセではないかと指摘された民放局のバラエティー番組
インドのヒマラヤ山麓に住むたったひとりの日本人女性を訪ねて、女性タレントがニューデリーから陸路をバスやジープを乗り継ぎ、テントに泊まる苦難の旅の末に、55時間かけて秘境に住む女性を探しあてるバラエティー番組。
ところが、女性が住む街とデリー空港の間は1時間余りの航空便で結ばれており、番組がそのことに言及していないのは、秘境を強調するためのヤラセではないかという視聴者からの意見が寄せられた。
最近の審議事案に「離島の実情」を不適正に伝えた番組があり、その中でも航空便の就航が言及されていなかったことから、この審議事案との比較検討も含めて議論が交わされた。その結果、演出の技法としては釈然としない思いも残るが、離島事案のように直接の被害者がいるわけではなく、制作手法として放送倫理違反とまでは言えないとして、審議入りしないことを決めた。
【委員の主な意見】
- 利用者の多い少ないは別にして、陸路のコースがあるわけだし、何でもかんでも最短距離を行かなくてはいうことではないだろう。情報バラエティー番組としてとくに問題はない。
- この番組は、ヒマラヤ山麓に暮らす日本人女性の生活を紹介するというより、彼女を訪ねていく過程に主眼を置いて制作したと思う。そこにある程度の演出があってもいいのではないか。
- 最近の審議事案の場合は、不適正な伝え方が目立ち、放送で誤解や被害を受けた人もいたが、この番組ではそういうことはなさそうだ。
- 本来はモチベーションがないタレントに、ひとりの女性を探させようとするから、情報番組として成立させるため無理な苦労をさせることになる。日本人女性が陸路で行ったかどうかわからないのに、追体験、追体験と言っているのも、何かいやな感じがする。
- 放送倫理に違反しているとは言わないが、現地までの定期航空便があることを種明かしする作り方があったのではないか。無理に隠さなくてもそれが、オチになって、面白かったのではないか。
- 一妻多夫制は、現在は行われていないのに、今も存続しているような誤解を与えるという視聴者の指摘もあったが、文化・習俗としての影響が残っていると考えれば、さほどの問題ではないのではないか。
以上