放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第50回

第50回 – 2011年6月

日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』 ……など

6月10日の放送倫理検証委員会は、2007年5月の発足から数えて、第50回の開催となった。 5月31日に通知・公表が行われた日本テレビの「ペットビジネス最前線」報道事案については、当日のテレビニュース(録画)や報道された新聞記事を見たうえで意見交換を行った。政治的公平性について審議してきたBS11の『”自”論対論 参議院発』については、前回の議論を踏まえた意見書の改訂案が担当委員から提示された。検討の結果、若干の修正を加えることで合意がえられたため、審議を終了し 速やかに通知・公表を行うことになった。新規事案として、テレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』が議題となった。僻地シリーズの一つとして沖縄県南大東村をとりあげ、島の多数のサトウキビ農家が年収1000万円を越える収入を上げて沖縄本島に別荘をもつような裕福な暮らしをしていると紹介、放送後に南大東村長から抗議を受け、「実態とかけ離れた表現」をしたことを認めて放送で謝罪した。当該局が自主的に提出した詳細な報告書をもとに討議した結果、誇張表現が多く悪質であるとして、審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2011年 6月10日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

日本テレビ「ペットビジネス最前線」報道に関する意見

日本テレビの報道番組『news every.サタデー』の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。
5月31日、当該局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。事務局からそれに関する報告があり、続いて当日のテレビニュース(録画)や報道された新聞記事を見たうえで意見交換が行われた。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論 参議院発』

司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている番組が11回放送されたことが、政治的公平性を欠き、番組制作上の局の主体性も欠如しているのではないかと問題にされた事案。
前回の委員会で議論された、表現の自由と放送における政治的公平性の維持の関係をどう考えるかという問題や、番組編成全体で政治的公平性を配慮しているという当該局の主張に説得力があるかという問題を踏まえて作成された意見書の修正案が担当委員から提出され、3回目の審議を行った。
政治的公平性の問題に加えて、放送局としての主体性に問題はなかったかという視点で意見書をまとめることに意見が一致したので、表現の手直しは担当委員と委員長に一任することとして、審議を終了した。

誇張表現が著しく南大東村長から抗議を受けたテレビ東京の情報バラエティー番組『ありえへん∞世界』

今年1月25日に放送されたテレビ東京のバラエティー番組『ありえへん∞世界』で、南大東島には年収1000万円以上で、沖縄本島にも別荘を所有するサトウキビ農家が150から200名いるが、それはサトウキビの生産に多額の国の補助金が支出されているからであると紹介し、所有する別荘のイメージ映像としてビバリーヒルズの邸宅の写真を放送した。だが実は年収といっても生産諸経費が控除されていない売り上げ金額(粗収入)であり、しかも島のサトウキビ農家の平均粗収入は500万円程度で、経費を差し引いた所得金額は150万円程度であった。沖縄本島の家も子供の高校通学のための住居がほとんどで、ビバリーヒルズの豪邸のような別荘ではないことが判明した。南大東村長から「偏見にもとづいた誤解を招く」との抗議文を受け取った当該局は村に謝罪し、6月7日にお詫び放送をした。自主的な内部調査結果と改善策が、当該局から検証委員会に提出されたが、委員会では、番組は事実をゆがめて僻地を誇張し、サトウキビ農家についてのねじ曲げられた悪質な表現が多く、放送倫理違反が認められることから、その原因や制作過程の検証が必要だとして、審議入りすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • 担当したディレクターの取材が十分でなく、最初に作った筋書きにこだわっている。
  • 数字の取り扱いや確認が粗雑すぎる。取材対象者への誠意が感じられず、”上から目線”になっている。
  • 言葉遣いとして農家の場合、収入を年収ということは一般的であり、諸経費を引いて収入という人はあまりいない。しかし視聴者からみたら誤解すると思う。
  • 15時間かけて那覇から船で着き、港がないためクレーンで吊り上げられて島に上陸するのは”ありえへん”に相応しい光景だった。しかし飛行機では那覇から1時間少々で行けるのに僻地を強調している。
  • ビバリーヒルズの写真をだすアイディアは取材に行ったスタッフではなく、後になって出てくる。遊び心だと思うが目線は差別的ではないか。
  • ロケハンを兼ねて一人で取材している。しかも初めての担当ということでディレクターにはきつかったと思う。それにしても、局内のデスクやプロデューサーのチェックはどうなっていたのか。

以上