放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第57回

第57回 – 2012年2月

「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」についての各局対応報告書のまとめ

第57回放送倫理検証委員会は2月10日に開催された。
2011年9月22日に公表した「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」については、本年1月末までに11局から対応報告書が寄せられた。事務局は、これを取りまとめて委員会に説明した。

議事の詳細

日時
2012年2月10日(金) 午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」についての各局対応報告書のまとめ

「怪しいお米」「「セシウムさん」など不適切なテロップが放送された東海テレビの『ぴーかんテレビ』問題に関し委員会は、当該局をはじめとしてBPO加盟全放送局に対し、2011年9月22日、BPO規約第23条に基づき4項目にわたる初の『提言』を行った。
その内容は、

  • 全社的なレベルで、あるいは部署や制作現場ごとに、放送の使命について話し合う機会を設ける
  • 番組の制作に必要な人員と時間が確保されているか、とくに生放送番組で不測の事態に対応できるゆとりが確保されているかについての再点検
  • スタッフの間で忌憚のない意見交換や問題提起ができる職場環境の整備
  • 制作現場スタッフの研修が、所属やフリーかを問わず、十分行き渡り、納得できる方法で実施されているかの再検討と、改善及び実りある研修の継続

である。

これを受けて、各局では様々な形で点検、検討が行われ、このうち、きっかけとなった東海テレビをはじめ、在京テレビキー全局、在阪準キー2局のほか、北海道、長野の地方局など、これまでに合わせて11局から『提言』への対応や取り組み状況が委員会に報告された。
それによると、東海テレビが自ら放送した「検証番組」をHPにリンクしたことで、各社とも不適切テロップが放送されるに至った経緯を知ることが出来たこともあり、この検証番組や、委員会の『提言』をもとに、全社的レベル、あるいは部署ごと、番組ごとに討論を重ねたことが報告された。
また、「検証番組」や『提言』について外部スタッフも含めて、制作現場をはじめ各セクションからアンケートをとり、その一部を報告書の中に書き込んだり、現場の感想や意見を取りまとめて報告書に添付した放送局が多かった。
そして、不適切テロップが作成されること自体、信じ難いことだとしつつも、それが放送されるに至った過程を見た場合、今回の事案が他局で起きた稀有な事例として片付けられない、と捉えている局がほとんどであり、「他山の石」として制作・放送の各段階において再点検を行うとともに、スタッフへの周知、研修を行っている。

1. 放送の使命について

各放送局には、すでに各部局、番組単位のほか社内横断的な会議が定期的に設けられ、放送に関わる諸問題を話し合い、情報の共有化を図っているが、放送の使命、放送のあり方について、これまで以上にこうした会議で論議を深める方向性を打ち出している局が多い。
一方、東海テレビの事案がテロップの作成に起因したこともあり、日常、放送で多発する誤字・誤読が視聴者の信頼を失うきっかけにつながるとして、「ミス撲滅」の強化を図り、実際に発生した事例を集約して、なぜそうしたことが起きたのか、分析を行っている局も複数あった。
そうした過程を通じて、ミスの発生には、制作に携わるスタッフ個人によるものと、組織の問題が混在することを再確認した、とある局は述べている。

2. ゆとりの確保

『提言』後、各放送局とも制作に必要な人員、時間、予算などの環境整備について洗い出しを行っているが、その点検を通じて、不安の声があった一部現場について、さらに実情を精査し、必要に応じて具体策を講じるとした局や、実際に生情報番組について増員した局もある。
一方、何をもって「ゆとり」と言うかについて戸惑いがありつつも、単に人数を確保するだけでなく、番組への参加意識・スキル・モラルなどスタッフの質の向上という視点が必要であり、スタッフ同士が助け合える職場環境が、結果的に二重、三重のチェックを生み出し、それがゆとりにつながるのではないかと考えている現場の声を寄せた局もある。

忌憚なく意見交換できる環境

ほとんどの局では、職場のコミュニケーションについて、上下関係、社員か外部スタッフかにかかわらず、何でも言い合える風土作りに力を注いでいる。
しかし、まだ風通しがよくないと感じているスタッフの声を寄せた局もあった。
そして、いかにスタッフが有機的にまとまるかが問題で、「あれ大丈夫?」の一言が言える心的余裕が必要だという現場の声もあった。
こうしたコミュニケーションを円滑にした上で、細かなことであっても現場で起きたヒヤリ、ハッとしたことを日々の反省会で共有したり、特定の部署のミスとしてではなく全部署の参考とするべく「ヒヤリ・ハット集」の作成を行っている局もある。

4. 実りある研修

各社が行っている研修会や勉強会はさまざまな形で行われ、コンプライアンス関係部署が説明するものや、テーマによって外部講師を招くものまで、その頻度は各局とも多い。
出来るだけ多くの社員や外部スタッフに参加して欲しいとの思いから、規模が大きくなり、結果として講義的側面もでてくる研修会もあるが、一方で、少人数による勉強会を組み入れ、相乗効果を生むよう試みている局が多い。
また、現場で実際に直面した課題やトラブルについて、どうすればよかったのかなど制作スタッフ同士のディスカッション形式による勉強会を実施し、その際には法務部や著作権部など他部署からも参加して、違う立場からの意見を取り入れることに力を入れている局もある。

今回の『提言』を受けて行った点検の過程そのものが、制作現場にとって意義深いものであったとした局もあり、自分が大好きな番組を守る、自分が大好きな番組が評価されるという観点が、すべてのスタートであるというスタッフの声を紹介した局もあった。

また、この東海テレビの事案や『提言』については「対応報告書」を提出した11局以外の放送局でも、各社番組審議会で取り上げられ、放送局側から「他山の石」として放送倫理の確立に全社を挙げて取り組んでいる状況の説明がおこなわれている。

以上