2004年度 第24号

警察官ストーカー被害者報道

委員会決定 第24号 – 2004年12月10日 放送局:名古屋テレビ

見解:問題なし
警察官からストーカー行為の被害を受けた女性が、警察に被害届を出した際に名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、意に反してニュース等において顔を出して放送され、肖像権やプライバシーの権利侵害を受けたと訴えた事案。

2004年12月10日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第24号

申立人
愛知県在住の女性
被申立人
名古屋テレビ
苦情の対象となった番組
名古屋テレビ放送制作の番組
放送日時
2004年 3月 9日 17時台『スーパーJチャンネル』、22時台『ニュースステーション』
3月10日 5時台『朝いち!やじうま』、7時台『やじうまプラス』

申立てに至る経緯

放送内容
警察官にストーカー行為を受けたとする愛知県在住の女性が、傷害、暴行の被害届を出したというニュース。女性の、警察官に対する憤りのインタビューを含む。
この放送に対して、申立人は、「名古屋テレビ放送(以下「名古屋テレビ」または「被申立人」という)のインタビューに応じた際、顔出しの放送はしないとの約束がなされていたにもかかわらず顔出しで放送されたため、世間から興味本位で見られるなど、肖像権を侵害されたのをはじめ、プライバシーなど人権を侵された」として、放送後名古屋テレビに抗議し、謝罪を求めた。
これに対し、名古屋テレビは、「取材の際、顔出しで放送することの了承を得ており、申立人の勇気ある告発の意志を尊重して顔出し放送に踏み切ったものであり、訴えは心外」と主張した。
放送直後に、申立人からBRCに対し苦情が寄せられたが、名古屋テレビが話し合いによる解決の意向を示し、断続的に話し合いが行われた。しかし、双方の事実認識に大きな隔たりがあり、6月、申立人から「申立書」が提出され、その後の話し合いも不調に終わったことから、BRCでは話し合いによる解決が困難と判断し、8月の委員会で審理入りを決定した。審理入り決定後、申立人から手直しした「申立書(改訂版)」が提出された。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立ての要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁の要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

【委員会決定を受けての名古屋テレビの対応】

当該局の対応pdfPDFはこちら

2004年度 第23号

国会・不規則発言編集問題

委員会決定 第23号 – 2004年6月4日 放送局:テレビ朝日

勧告:人権侵害
2003年9月のテレビ朝日の情報トーク番組『ビートたけしのTVタックル』で、自民党の衆議院議員が予算委員会でヤジを飛ばしている映像が使われ、同議員が「全く関係ない映像を切り貼り編集した捏造で、名誉を毀損された」などと訴えた事案。テレビ朝日は別番組で同議員に意見表明の機会を提供し、当該番組内でもお詫びをしたが、同議員は救済措置を求めて申し立てた。

2004年6月4日 委員会決定

申立人
藤井孝男
被申立人
テレビ朝日
苦情の対象となった番組
テレビ朝日 「ビートたけしのTVタックル」
放送日時
2003年9月15日(月)午後9時から9時54分まで

申立てに至る経緯

株式会社テレビ朝日(以下「テレビ朝日」又は「被申立人」という)は、2003年9月15日(月)午後9時から9時54分まで、「ビートたけしのTVタックル」第627回「あれから1年…日本の決断」を放送した。
テレビ朝日は、同番組中の「自民党総裁選と北朝鮮問題」において、自民党総裁選挙に立候補した4人の候補者がこれまで北朝鮮問題へどのように対応してきたかについての発言を紹介する放送をしたが、自由民主党所属の衆議院議員であって同党総裁選挙に立候補している申立人(以下「藤井議員」又は、「申立人」という)については、同年9月9日の候補者所信発表演説会の北朝鮮に関する発言の紹介に引き続き、1997年2月3日の衆議院予算委員会において西村真悟議員(当時新進党)が「横田めぐみという一人の13歳の少女が拉致されたというむごい事件に関して」との質問を開始した直後に藤井議員が「発言に気を付けろ」、「しっかり責任をもって発言しろよ」との不規則発言をしたと視聴者に認識される放送(以下「本件番組部分」という)をした。
藤井議員は、上記不規則発言は、全く関係のない映像を切り貼り編集した「やらせ」映像であり、藤井議員が北朝鮮に対する拉致問題では極めて消極的な態度をとっているとの印象を一般視聴者に与えるものであり、藤井議員の名誉を著しく毀損するとともに、総裁選挙(2003年9月8日告示、同月20日開票)の悪質な選挙妨害であるとして、テレビ朝日に対し厳重抗議した。
テレビ朝日は、同年9月19日放送の「ニュースステーション」において他の総裁候補者と共に出演した藤井議員に特別に意見表明の機会を提供し、藤井議員は、「全くの事実無根であり、捏造といっていい」との発言をした。さらに、テレビ朝日は、同年10月6日の「ビートたけしのTVタックル」で「二つの場面が拉致問題に関する一連の議論であるとの認識で、直接繋げる編集を行ったため、藤井議員が横田めぐみさん拉致問題に対して不規則発言を行ったかのような誤った印象を視聴者に与える結果となったことについて心よりお詫び申し上げる」旨のお詫び放送をした。
その後テレビ朝日と藤井議員あるいは自民党との間で数回にわたり本件に関する話し合いないし電話連絡がもたれたが、同年12月11日藤井議員からテレビ朝日を相手方として当委員会に対し、本件申立てがなされた。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立ての要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2004年8月11日 【委員会決定を受けてのテレビ朝日の対応】

当該局の対応pdfPDFはこちら

2004年度 第22号

中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道

委員会決定 第22号 – 2004年5月14日 放送局:北海道文化放送

勧告:人権侵害(少数意見付記)
北海道文化放送は2003年10月の『スーパーニュース』で教育界におけるセクハラ急増問題を取り上げた。この中で、問題教師として取り上げられた中学教諭が「人事委員会が刑罰法規に触れる行為でない等の理由で教育委員会の懲戒処分を軽減したにもかかわらず、放送はこの修正採決を曲解してセクハラ教師と印象付け、名誉を傷つけ教壇復帰を妨げようとした」と訴えた事案。

2004年5月14日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第22号

申立人
北海道在住中学校教諭
被申立人
北海道文化放送放送
苦情の対象となった番組
北海道文化放送(UHB)<スーパーニュース>内「今日の特集」
放送日時
2003年10月14日午後5時50分

申立てに至る経緯

特集の内容
「生徒にキスを迫った教師の信じられない行為に親も激怒・・・処分は妥当?
スクールセクハラの驚くべき実態」(新聞テレビ欄タイトル)

申立人は、「5回にわたって自校の女子生徒の頬にキスをしたほか、同生徒と二人だけでドライブや食事に行き、また自宅の鍵を渡して生徒を自宅に招くなど、教育公務員としての節度を著しく逸脱した」として、北海道教育委員会から2002年4月12日付で懲戒免職処分に付された。
この処分に対して、申立人は、北海道人事委員会に対して懲戒権の濫用があるとして、処分の取消ないし修正を求める不服申立てを行った。
この申立てに対し、北海道人事委員会は、2003年7月10日、申立ての一部を認め、「申立人の行為は、教育公務員としてふさわしくない非違行為に該当するが、いわゆるセクシュアル・ハラスメントと評価されるものでなく、刑罰法規に触れるものではない」として、「処分は重きに失し、処分者の裁量権を逸脱した違法がある」(要旨)との理由で、停職6か月の処分に修正する裁決を下した。
これに対して北海道教育委員会は、同年9月18日、再審を請求したが、同年12月17日、再審事由に当たらないとして却下した。
以上の事実経過の中で、北海道教育委員会の再審請求後、その却下決定がなされるまでの間である10月14日に行われたのが本件放送であり、申立人は、本件放送内容が申立人の名誉を毀損し、申立人の職場復帰を妨げるものであるとして、10月17日以降12月22日まで、申立人代理人を通じ苦情を申し入れ、再三にわたり交渉の機会を持ったが、了解に達せず、2004年1月7日、当委員会に対して本申立てを行うに至ったものである。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立ての要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2004年6月21日 【委員会決定を受けての北海道文化放送の対応】

当該局の対応pdfPDFはこちら

2003年度 第21号

山口県議選事前報道

委員会決定 第21号 – 2003年12月12日 放送局:テレビ山口

見解:放送倫理上問題あり(少数意見付記)
申立人は2003年4月の県議会議員選挙に立候補した男性。テレビ山口が選挙前の3月のニュース番組で放送した統一地方選挙の企画「県議選・なんでも一番」において、申立人が最多立候補者として実名・顔写真付きで「合わせて12回出馬していますが、いずれも当選に至っていません」と紹介されたとして、選挙妨害であり人権を侵害されたと訴えた事案。

2003年12月12日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第21号

申立人
A
被申立人
テレビ山口
苦情の対象となった番組
テレビ山口 「TYS夕やけニュース21」
放送日時
2003年3月25日午後6時19分から6時51分まで

申立てに至る経緯

2003年4月の統一地方選挙を前にした3月25日、テレビ山口株式会社(以下、「テレビ山口」または「被申立人」という)は、午後6時19分から6時51分までの「TYS夕やけニュース21」の中で「統一地方選ミニ知識」として企画した14本シリーズのうちの1本「県議選・なんでも一番」を放送した。
内容は、最年少当選者、最多得票者など過去の県議選データから拾い上げた「一番」を紹介するもので、最後に「また補欠選挙も含めて県議選への立候補の回数が最も多いのはAさんで、71年から合わせて12回出馬していますがいずれも当選に至っていません」というコメントとともにA氏の上半身写真を出し、一行目に「立候補回数最多12回」、二行目に「A氏(下関市区)」、三行目に「⇒いずれも落選」のスーパーを付けた。
この放送に対して、申立人である下関市在住のA氏(以下、「A氏」または「申立人」という)は、放送当日テレビ山口に対して「選挙妨害である。改めて放送で名誉を回復してほしい」旨の抗議と救済措置を電話で要請した。
テレビ山口では、社内協議の上「事実関係は間違っていないので訂正放送は出来ない」と電話で回答した。
しかし、申立人はこの説明に納得せず、3月26日テレビ山口に対して「選挙違反行為である」との文書をFAX送信するとともに、山口地方法務局人権擁護課に対しても人権侵害・名誉毀損で訴えた。また、5月16日に「選挙の自由と公正・平等が阻害され人権が侵害された」とする文書をテレビ山口に送り回答を求めた。
テレビ山口は6月11日、報道制作局長名で「山口地方法務局人権擁護課から人権侵害・名誉毀損には該当しない旨の判断をもらっており、当社には法的責任はないと考えている」旨の文書を申立人に郵送した。
この後、8月1日付けで申立人は、BRCに対し「告示前の大切な時に、真実を曲げ嘘の番組を作り報道されたことで名誉を毀損され、人権を侵害された。また、意に反した悪いイメージの写真を無断で使われ肖像権を侵害された」などと申立てたものである。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2004年2月12日 【委員会決定を受けてのテレビ山口の対応】

当該局の対応pdfPDFはこちら

2002年度 第20号

女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て

委員会決定 第20号 – 2003年3月31日 放送局:NHK

見解:放送倫理違反(少数意見・補足意見付記)
NHKは2001年1月末から4日連続でETV2001シリーズ「戦争をどう裁くか」を放送した。この2回目「問われる戦時性暴力」に出演した女性が、「何の連絡もなく発言を改変し放送した。この結果、発言が視聴者に不正確に伝わり、研究者としての立場や思想に対する著しい誤解を生み、名誉権および著作者人格権を侵害した」などと申し立てた。

2003年3月31日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第20号

申立人
A・カリフォルニア大学準教授
被申立人
NHK
対象番組
NHK 「戦争をどう裁くか」第2回「問われる戦時性暴力」
放送日時
2001年1月30日

申立てに至る経緯

2000年12月、東京で民間法廷「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」(以下「女性国際戦犯法廷」または「女性法廷」という)が開催された。日本放送協会(以下「被申立人」または「NHK」という)は、この「女性国際戦犯法廷」を取材し、2001年1月29日から2月1日までの4日間連続で、ETV2001シリーズ「戦争をどう裁くか」を放送した。
申立人のカリフォルニア大学準教授、A氏(以下「申立人」または「A氏」という)は、上記シリーズの第2回「問われる戦時性暴力」および第3回「いまも続く戦時性暴力」の放送に、コメンテーターとして出演したが、このうち、第2回「問われる戦時性暴力」(2001年1月30日午後10時~10時40分放送)に対し、「スタジオ収録後、NHKの制作意図の変更に伴い、申立人に対して何の連絡もなく、申立人の発言を改変し放送した。この結果、申立人の発言が視聴者に不正確に伝わり、申立人の研究者としての立場や思想に対する著しい誤解を生み、名誉権及び著作者人格権を侵害した」として、2002年1月10日、BRCに権利侵害救済の申立てを行いたい旨、連絡があった。
BRCでは、NHKに相容れない状況にあるのか確認したところ、「A氏とは、個人の人権侵害について直接には一度も話し合いがなされていない」との説明があり、BRCとしては、双方に当事者間での交渉を継続するよう要請した。
この交渉の中で、同年7月8日、一時帰国したA氏とNHKとの直接面談が実現したが、双方の主張、認識の差が大きく、これ以上、話し合いの余地がないことを双方で確認して、交渉は物別れに終わった。このため、申立人が8月2日、BRCに権利侵害救済の申立てを行ったものである。
他方、NHKは、「女性国際戦犯法廷」の主催団体の一つとその代表者が、現在、NHK及び制作委託プロダクションを相手に損害賠償を求めている裁判と「対象番組が同一」「当事者が実質的に同一」であり、「問題とされている事実も同一」との判断から「裁判係争中の事案」に当たり、BRCの審理対象にならないと主張した。
しかし、BRCは本件申立てと裁判係争中の事案とでは当事者が別人格であること、申立て事由が、申立人自らの発言部分に関する指摘である、ことなどを総合的に判断した結果、2002年9月17日の委員会で審理することを決定した。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2002年度 第19号

福井・産廃業者行政処分報道

委員会決定 第19号 – 2002年12月10日 放送局:NHK福井放送局

見解:問題なし
福井県は2002年5月、申立人である産廃の収集運搬業者の事業許可を取り消す行政処分を行なった。NHK福井放送局は同日のニュースでこれを伝えたが、申立人は「処分が発効する前の一方的な放送で、名誉・信用を著しく損ねた」と訴えた。

2002年12月10日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第19号

申立人
福井県内の産業廃棄物収集運搬業者
被申立人
NHK福井放送局
対象番組
NHK福井放送局 ローカルニュース
放送日時
2002年5月24日 午後6時10分からと午後8時45分から

申立てに至る経緯

2002年5月24日、福井県廃棄物対策課は、県内の産業廃棄物収集運搬業者である申立人が、契約のない処理業者に産業廃棄物を運び込んだ上、廃棄物の受け渡しを管理するための書類に虚偽の記載をしていたとして、この収集運搬業者の事業許可を取り消す行政処分を行った。
NHK福井放送局(以下「被申立人」または「福井局」という)は、県が公表したこの処分内容を同日午後6時10分からと午後8時45分からのローカルニュース枠で放送した。
この放送に対して、処分を受けた収集運搬業者である申立人は、6月6日「NHKのニュースは誤った内容である上、不適正な画像放映が為されたことにより、申立人の会社や役職員らの人権と名誉を著しく損ねた」と文書で福井局へ抗議し、謝罪報道等の救済措置を講ずるよう要求した。
福井局では、福井県に問い合わせるなど報道内容について再調査したところ事実関係に間違いがないことが確認できたとして、6月8日申立人側に電話で「県の発表に基づき事実を伝えたもので、映像についても県の発表後に撮影取材したもの」と説明した。
しかし申立人側はこの説明に納得せず、6月10日にBRO事務局に「放送局側は非を認めず、決裂状態になった」と伝え、申立ての意向を示した。
その後申立人は6月14日福井県と県知事を相手取って「処分の取り消しと損害賠償を求める訴え」を福井地裁に起こした。
この一か月余り後の7月24日付けで申立人は「被申立人は当方への取材・確認をしないまま、県の一方的な言い分を報道して、当方の名誉・信用を毀損した」などとして、BRCに申立てたものである。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2002年度 第18号

出演者比喩発言問題

委員会決定 第18号 – 2002年9月30日 放送局:テレビ朝日

見解:番組内・放送後の対応に問題あり(少数意見付記)
2001年9月のテレビ朝日の情報番組『サンデープロジェクト』の討論において、ゲスト出演者が「戸塚ヨットスクール」を比喩に用いて発言し、同スクールの校長が重大な名誉毀損だと訴えた事案。

2002年9月30日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第18号

申立人
A
戸塚ヨットスクール校長
被申立人
テレビ朝日
対象番組
テレビ朝日 報道番組『サンデープロジェクト』
放送日時
2001年9月9日午前10時

申立てに至る経緯

申立ての対象になった番組は、2001年9月9日(日)午前10時の全国朝日放送株式会社(以下「テレビ朝日」という)の報道番組『サンデープロジェクト』であるが、その中で、「緊急・救国経済大討論」のタイトルの下、当面する日本の経済危機をどう乗り切るかをテーマに、司会者と3人のゲスト出演者による討論が、約23分間、放送された。
上記放送の中で、ゲスト出演者の経済アナリスト・森永卓郎氏(以下「当該ゲスト」という)が、IMFの対日審査をめぐって、「IMFなんか受け入れたら、あれは戸塚ヨットスクールですからね」「しごきの理論しかないんですよ。もう、どれだけのアジアの国を駄目にしたか分かっているんですか。あれはひどいところなんですよ」と発言した(以下「当該発言」という)。
戸塚ヨットスクール(以下「ヨットスクール」ともいう)側は、次週放送の前日である9月15日(土)午後10時30分頃、テレビ朝日に電話し、「当該発言は戸塚ヨットスクールがしごきで子供を駄目にしたという意味になり、同スクールと同校校長のAに対する重大な名誉毀損にあたる。謝罪と訂正をしてほしい」と抗議した。これに対して、テレビ朝日側は、「名誉毀損には当たらない」などと答えた。
その後、申立人、被申立人とも弁護士を通じ、それぞれ3回の文書の交換を行ったが、解決に至らず、A氏は、2002年2月21日、放送と人権等権利に関する 委員会(以下「委員会」という)に申立てを行ったものである。
申立人が校長を務めるヨットスクールは、同人により、1977年、愛知県美浜町に開設されたもので、厳しいスパルタ式のヨット訓練などを標榜し、情緒障害などの子供を中心に、全国から訓練生を集めていた。
しかし、1980年以降に訓練生の死亡事件が発生し申立人らが起訴され、2002年2月25日に、最高裁判所は上告を棄却する決定を下したため、申立人に対して傷害致死による懲役6年の刑が確定した。申立人は、同年3月29日に収監されたことにより、申立人側は同人妻である戸塚幸子氏を申立人代理人とした。

2002年3月19日開催の委員会は、「直接話し合いによる解決の機会を持つべきである」と判断し、双方に話し合いを求めた。
同年6月14日、申立人側から、「テレビ朝日は『話し合いは弁護士同士で行いたい』と言っているが、これまでも弁護士同士で行ってきて、それでも解決しなかったのだから進展は期待できない。委員会で審理してほしい」との連絡があった。
これを受けて、同年6月18日開催の委員会は、「話し合いによる解決は難しい」と判断し、本件を審理事案とすることを決定した。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2001年度 第17号

熊本・病院関係者死亡事故報道

委員会決定 第17号 – 2002年3月26日 放送局:テレビ朝日

勧告:人権侵害(少数意見付記)
熊本で車に乗っていた病院関係者4人全員が死亡する転落事故があり、テレビ朝日は2000年8月の情報番組で”熊本・謎の自動車事故”のタイトルで取り上げた。この放送に対して、医療法人と理事長が「事故は保険金目的の殺人事件の可能性が高いと報道し、名誉・信用を毀損された」と抗議した。テレビ朝日は翌年7月に地検の「事故は運転ミス」とする最終処分を放送したが、医療法人側は名誉・信用の甚大な被害の回復に足りないとして申し立てた。

2002年3月26日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第17号

申立人
医療法人A
B(同理事長)
被申立人
テレビ朝日
対象番組
テレビ朝日 情報番組『週刊ワイドコロシアム』
放送日時
2000年8月6日午後6時56分~

申立てに至る経緯

2000年5月28日、熊本県天草町で乗用車が崖下に転落し、乗っていた熊本市内のC病院の副理事長や看護部長ら4名全員が死亡するという事故が起きた。同年8月6日、全国朝日放送株式会社(以下、テレビ朝日又は被申立人という)は、午後6時56分からの情報番組『週刊ワイドコロシアム』でこの事故を”熊本・謎の自動車事故”というタイトルで取上げ、約40分間にわたって放送した。(注 当該情報番組は同年9月10日で終了)
この放送に対して、当病院を経営している医療法人Aと同会を代表するB理事長(以下、申立人という)は、「本件番組は、当該事故を保険金目的の殺人事件の可能性が高いと報道し、申立人の名誉・信用を毀損している」と抗議し訂正放送と謝罪を要求した。
一方、テレビ朝日は、「番組は、警察の杜撰な対応を検証するのが狙いで、保険金目的の事故と捉える意図はない」と主張、話し合いは進展しないまま年を越えた。
2001年2月2日、テレビ朝日は、「検察庁の処分がなされた時点で、情報系の番組で取上げる。その際警察が送致に当たって発表した保険金殺人疑惑がないとの意見を付記する」旨申し入れた。
2001年7月27日、熊本地方検察庁は「事故は、運転ミスによるもので、保険契約と事故は無関係」との最終処分及びコメントを発表した。テレビ朝日は7月30日午前8時からの『スーパーモーニング』の中で、この地検の最終処分内容を放送したが、申立人は、「極めて不十分な放送内容で、当方の名誉・信用に対する甚大な被害を回復するに足りない」として、8月2日、BRCに申立てたものである。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2001年度 第16号

インターネットスクール報道

委員会決定 第16号 – 2002年1月17日 放送局:日本テレビ

見解:放送倫理上問題あり(少数意見付記)
日本テレビは2000年10月『NNNきょうの出来事』で、インターネットを活用して教育を行うフリースクールを取り上げた。学園側は、取材段階でアポなしの強引な取材だと抗議し、報道内容についても事実を歪曲した一方的な内容で、関係者や学園の名誉を著しく毀損したと申し立てた。

2002年1月17日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第16号

申立人
A
B学園高等部理事・事務局長
被申立人
日本テレビ
対象番組
日本テレビ ニュース番組『NNNきょうの出来事』
放送日時
2000年10月20日午後11時30分

申立てに至る経緯

申立ての対象になった番組は、2000年10月20日午後11時30分の日本テレビ放送網株式会社(以下、日本テレビという)のニュース番組『NNNきょうの出来事』で、「インターネットの落とし穴」のタイトルの下、約9分間、放送されたものである。
申立人が事務局長を務める「B学園高等部」(以下、学園という)は、インターネットを活用して教育を行う「フリースクール」で、放送では、入学した生徒たちからは、授業料を払ったのに何の指導もしてくれないと抗議の声があがっており、元生徒と保護者およそ20名からなる「B学園・被害者の会」(以下「被害者の会」という)が結成されているとし、同会会員らへのインタビュー、「生徒の撮影したビデオテープ」や「学園の委託先会社で取締役を解任された旧役員のカセット録音テープ」、申立人への「直接取材」などによって構成されている。
申立人は、この放送に先立つ取材段階において、「アポなし、無通告、かつ嘘を含め強引な」取材について、日本テレビに対し「質問書」などを提出、抗議をするとともに、取材及び放送の取り止めを求めた。放送後においても、「対立している被害者の会なるものの撮影したビデオテープや対立している人物のカセット録音テープ」を放送で使用し、「報道は事実を歪曲し、一方的な内容で関係者や学園の名誉を著しく毀損し、損害を与えた」として、日本テレビに対し、謝罪と被害の回復措置を求める「抗議文」を提出した。
これに対し、日本テレビは、取材は、「通常の報道番組の取材プロセスに沿ったものであること」、放送は、「すべて匿名であり、映像や音声の処理を通じて、プライバシー保護には、十分な注意を図っており」「放送した事実関係に、間違いはないものと確信している」と回答した。
申立人はこれにより、日本テレビとの話し合いはつかないと判断し、2001年7月11日付けで申立てを行ったものである。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

2000年度 第12号

自動車ローン詐欺事件報道

委員会決定 第12号 – 2000年10月6日 放送局:伊予テレビ

勧告:人権侵害(少数意見付記)
1999年9月、松山市の元自動車販売仲介業者が架空ローン容疑で逮捕された事件を伝えた伊予テレビのニュースについて、自動車販売業者が「事件と関係ない自分の店の映像が断りもなく撮影され放送された。映像のボカシ処理が不十分で明らかに店名がわかり、事件の共犯かのような印象を多くの視聴者に与えた」などとして、名誉・信用の毀損を訴えた。

2000年10月6日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第12号

申立人
愛媛県松山市の自動車販売業者
被申立人
伊予テレビ
対象番組
ニュース番組「キャッチあい」
放送日時
1999年9月13日

申立てに至る経緯

1999年9月13日、愛媛県松山市で自動車購入の名義貸しを利用し、架空のローン契約を結んで信販会社から現金をだまし取ったとして、元自動車販売仲介業者が詐欺容疑で逮捕された。
伊予テレビではこの事件を、同日夜の県内向けニュース番組「キャッチあい」の中で、映像を使い1分55秒間放送した。
この放送に対し、松山市の自動車販売業者が、「詐欺事件と関係ない自分の店を、断りもなく撮影し放送した。映像のボカシ処理が不十分で、明らかに店名が分かる。放送は、正当な商取引をしただけの当店が、詐欺事件の共犯であるかのような印象を多くの視聴者に与え、多大な迷惑を被っている」と伊予テレビに抗議した。
しかし、放送局側は今回のニュースは、「詐欺容疑で逮捕された元自動車販売仲介業者の逮捕事実を主眼に放送したものであり、申立人の販売店は取引のあった一つの舞台として放送しただけで、映像上もボカシ処理を施し、特定できないよう配慮している。放送原稿でも申立人の販売店名および詐欺事件との関連について一切言及していない」と主張し、双方の話し合いは対立したままに終わった。
このため、自動車販売業者が「放送によって自分や家族の名誉・信用が毀損されただけでなく、経営も追い詰められた」として、今年6月1日、本委員会に「権利侵害」の救済を求める申立てを行った。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

1999年度 第11号

隣人トラブル報道

委員会決定 第11号 – 1999年12月22日 放送局:フジテレビジョン

見解:放送倫理上問題あり(少数意見付記)
1998年11月、フジテレビの情報番組『スーパーナイト』は石材業を営む男性とその作業場に隣接する住民の間のトラブルについて放送したが、男性が「放送は隣人の嘘の言い分を信用した一方的なもので、公平・公正を欠き名誉を傷つけられた」と申し立てた。

1999年12月22日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第11号

申立人
福島県いわき市の石材業者
被申立人
フジテレビジョン
対象番組
情報番組「スーパーナイト」
放送日時
1998年11月29日

申立てに至る経緯

1998年11月29日、フジテレビの情報番組「スーパーナイト」で、「激撮ご近所戦争3年間の全記録」(放送時間は24分)のタイトルの下に、福島県いわき市で石材業を営む申立人と、その作業場に隣接する住民(以下「隣人」)との間に生じたトラブルについて放送した。この放送は、トラブルの一方の当事者である隣人から送られてきたビデオテープや録音テープ、及び隣人が3年間にわたって記録した日誌などを基に取材、構成したものである。
この放送に対して申立人は「放送は隣人の嘘の言い分のみを信用した一方的なもので、公正、公平を欠き、終始申立人が悪者として報道され、著しく名誉を傷つけられた」としてフジテレビに抗議した。しかし、「事前の調査と十分な取材に基づいて制作したもので、放送内容に問題はない」とするフジテレビとの間で話し合いがつかず、今年8月、本委員会に申立がなされたものである。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

第1号

TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家関連の2番組に関する見解

2007年8月6日 放送局:TBS

TBSは、不二家の元従業員の内部告発に基づき、賞味期限切れチョコレートの再利用疑惑を報じた。その際、不適切な表現等があったとして、後日の番組内で、訂正とお詫びをした。委員会は審理を行い、発足後最初の決定であることから、決定内で放送倫理検証委員会の役割、審議、審理の区別、見解と勧告のちがいなどを詳しく説明した。そして、内部告発の根幹部分については、それを信じるに足る相当の根拠や理由はあったと判断。ただし、取材メモの紛失や広報窓口依存の取材、不注意なVTR編集、チョコレート製造工程に関する認識不足、断定・断罪的なコメント、放送前の打合せの不十分さなどに起因する不適切な放送をしたことに放送倫理上の落ち度があったと指摘した。また、謝罪の内容についても、訂正お詫びの主語や範囲の曖昧さ、放送から時間がかかりすぎている点を問題視した。最後に「番組は、もっとちゃんと作るべきだ」との委員の声でまとめた。

2007年8月6日 第01号委員会決定

全文pdfPDFはこちら

目 次

2007年11月16日 【委員会決定を受けてのTBSの対応】

全文pdfPDFはこちら

目 次

  • Ⅰ.BPO「見解」発表後の当社放送対応について
  • Ⅱ.検証活動について
  • Ⅲ.上記1~3に関する当社の対応方針について
  • Ⅳ.社内処分について
  • Ⅴ.番組制作体制の見直しについて
  • Ⅵ.組織変更について
  • Ⅶ.社内研修について
  • Ⅷ.むすびに

1997年度 第1号~第4号

サンディエゴ事件報道

第1号~第4号 – 1998年3月19日

1996年5月、アメリカで日本人教授と娘が射殺される事件が起きた。この事件の報道について、教授の夫人が、自分が事件に関与していたのではないかという予断に基く誤報、犯人視報道が繰り広げられたとして、NHK、TBS、テレビ朝日、テレビ東京を相手に名誉やプライバシーの侵害等を訴えた事案。

第4号 – 放送局:テレビ東京 見解:放送倫理上問題あり
第3号 – 放送局:テレビ朝日 見解:放送倫理上問題あり
第2号 – 放送局:TBS 見解:放送倫理上問題あり
第1号 -放送局:NHK 見解:問題無し

第4号 – 放送局:テレビ東京

申立人
A教授夫人
被申立人
テレビ東京
対象番組
「NEWS THIS EVENING」(平成8年年5月10日)
目次
申立てに至る経緯
申立人の申立て要旨
被申立人の答弁の要旨
委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

第3号 – 放送局:テレビ朝日

申立人
A教授夫人
被申立人
テレビ朝日
対象番組
「やじうまワイド」(平成8年5月10日・22日)
「ANNニュース」(平成8年5月10日等)
「スーパーモーニング」(平成8年5月10日等)
「ワイドスクランブル」(平成8年5月16日)
目次
申立てに至る経緯
申立人の申立て要旨
被申立人の答弁の要旨
委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

第2号 – 放送局:TBS

申立人
A教授夫人
被申立人
TBS
対象番組
「ニュースの森」(平成8年5月10日)
「関口宏のサンデーモーニング」(平成8年5月19日)
目次
申立てに至る経緯
申立人の申立て要旨
被申立人の答弁の要旨
委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

第1号 – 放送局:NHK

申立人
A教授夫人
被申立人
NHK
目次
申立てに至る経緯
申立人の申立て要旨
被申立人の答弁の要旨
委員会の判断

全文pdfPDFはこちら

第1号~第4号 審理経過

当該局の対応

委員長談話

bbb

テレビ東京『ありえへん∞世界』に関する意見

2011年9月27日 放送局:テレビ東京

沖縄県の「南大東島」を取り上げ、サトウキビ農家の収入が1000万円を超え、沖縄本島に別荘を持つような裕福な暮らしをしていると放送したところ、村から抗議を受け、当該局が実態とかけ離れていることを認めて謝罪した事案。

2011年9月27日 第13号委員会決定

川端 和治、小町谷育子、吉岡 忍、石井 彦壽、香山 リカ、是枝 裕和、重松 清、立花 隆、服部 孝章、水島 久光

全文pdfPDFはこちら

目 次

2012年1月13日 委員会決定を受けてのテレビ東京の対応文

標記事案の委員会決定(2011年9月27日)を受けて、当該局のテレビ東京は、局としての対応と取り組み状況をまとめた報告書を、12月22日、当委員会に提出した。
2012年1月13日に開催された委員会において、テレビ東京の取り組みが検討され了承された。

全文pdfPDFはこちら

目 次

中高生フォーラム

中学生モニターの6ヵ月の任期内に1度モニター会議を開催し(ただし「中学生フォーラム」を開催する場合は、フォーラムをその期のモニター会議に替えます)、内容をまとめた冊子を発行しています。

第8回中学生フォーラム

「激論! ニュース番組」

日 時 : 2008年12月26日(金) 13時00分~15時50分

会 場 : ルポール麹町

バラエティーやドラマ好きが多い今の中学生は、ニュースなどの報道系番組をどのように見ているのだろうか?今回は中学生モニターがニュースなどのあり方について、テレビ局の制作者と活発に意見交換をした。

前半は中学生モニターが現在のニュースの伝え方やコメンテーターのあり方などについて注文を出した。後半はビデオジャーナリスト神保哲生さんの問題提起を受け、情報環境が急速に変化する中での、これからのテレビ報道のあり方などについて、話し合った(登壇者は、中学生モニター15人、番組制作者6人《NHK解説主幹・鎌田 靖、日本テレビ報道局ニュース編集部チーフクリエーター・柴崎朋樹、TBS報道局編集センター長・矢部恒弘、フジテレビ報道センター デスク担当部長・石原正人、テレビ朝日お客様フロント部長・鈴木裕美子、テレビ東京 報道局プロデューサー・大久保直和》、ゲスト ビデオニュース・ドットコム代表 立命館大学教授・神保哲生)。 

コーディネーター:青少年委員会副委員長 橋元良明(東京大学大学院情報学環教授)
司会:木場弘子(キャスター、千葉大学教育学部特命教授)

第7回中学生フォーラム

「バラエティー大討論」

日 時 : 2008年3月26日(木) 13時00分~15時30分

会 場 : 千代田放送会館

2007年度から全国募集を始めた中学生モニターが集まり、お笑い系バラエティー番組にテーマをしぼって、日ごろ感じていることや疑問をバラエティー番組制作者にぶつけた。

中学生モニターの好きなバラエティー番組・嫌いなバラエティー番組の紹介から始まり、バラエティー番組への疑問、罰ゲームについて、これからのバラエティー番組のあり方についてなどを、中学生モニターと番組制作者が率直に話し合った(登壇者は、中学生モニター12人、番組制作者4人《NHK番組制作局・山田良介、日本テレビ制作局・松岡 至、フジテレビ編成制作局・小須田和彦、テレビ朝日 編成制作局・植村真司》、ゲスト メディアプロデューサー澤田隆治)。

コーディネーター:小田桐 誠委員、司会:木場弘子(キャスター、千葉大学教育学部 特命教授)

第6回中学生フォーラム

「中学生モニター 今、テレビに言いたいこと!」

日 時 : 2006年12月26日(火) 13時30分~16時00分

会 場 : ルポール麹町

2006年度から始まった中学生モニター制度を生かして、中学生モニターの現在のテレビ番組への評価とテレビとの付き合い方を探り、より良い放送やこれからのテレビのあり方を考えた。

中学生モニター報告を『14才の母』や“いじめ問題”など分野別に紹介し、番組制作者とのやり取りの中でテレビへの注文を出し話し合った。

さらに青少年委員会橋元委員が実施中の調査データをもとにテレビ視聴の実態について問題提起、中学生・制作者とともにテレビのこれからの見られ方や可能性について考えた(登壇者は、中学生モニター24人、番組制作者6人《NHKスペシャル番組センター・原神 琢、日本テレビ制作局・井上 健、TBSテレビ編成局・合田隆信、フジテレビ情報制作局・宗像 孝、テレビ朝日 編成制作局・植村真司、テレビ東京 制作局・深谷 守》)。

司会:麻木久仁子(タレント)

第5回中学生フォーラム

「いま、中学生にとってテレビとは」

日 時 : 2005年12月23日(金・祝) 13時30分~16時00分

会 場 : 千代田放送会館

多メディアの中で生きるいまの中学生にとって、テレビはどういう存在なのか、どう付き合っていけばいいのかを探った。

参加4校の意見発表やビデオ作品(テーマは、 “メディア活用の実態~ある中学一年生の1日をみつめて~”“テレビの良いとこ悪いとこ”“テレビと他のメディアの比較”“こんな番組あったらいいな”)などをもとに、各局の番組制作者と中学生が議論を展開した(登壇者は、中学生23人《4校》、番組制作者6人《NHK番組制作局・熊埜御堂朋子、日本テレビ編成局・井上 健、TBSテレビ報道局・杉尾秀哉、フジテレビ編成制作局・西山仁紫、テレビ朝日 報道局・宮川 晶、テレビ東京 制作局・松本篤信》)。

コーディネーター:斎藤次郎副委員長、司会:麻木久仁子(タレント)

第4回中学生フォーラム

「テレビ大討論」

日 時 : 2004年7月21日(水) 13時30分~17時00分

会 場 : イイノホール

「前半 報告『テレビ番組づくり体験』」では、“学校紹介”をテーマに4校の中学生がそれぞれ制作した、約3分の番組4本を上映。その後、番組制作者の感想やそこから学んだことなどについて、司会者と中学生が壇上で質疑応答(計 4校、11人)。

「後半 討論『本音で語ろう 中学生とテレビ』」では、青少年委員会「テレビメディア影響調査」の結果の一部などを引用しながら、“テレビの影響”“ニュースの伝え方”などについて討論(登壇者は、中学生11人《4校》、第1回フォーラム参加の高校生3人、番組制作者6人《NHK番組制作局・亀谷精一、日本テレビ編成本部・吉田 真、TBSエンタテインメント・吉田裕二、フジテレビ編成制作局・水口昌彦、テレビ朝日 報道局・朝本香織、テレビ東京 制作局・近藤正人》、青少年委員会委員3人)。

司会:斎藤次郎委員、駒谷真美(成蹊大学講師)

第3回フォーラム

「テレビへの提言~中学生からのメッセージ~」

日 時 : 2003年7月25日(金) 13時30分~16時45分

会 場 : イイノホール

「第1部 発表『テレビへのメッセージ』」では、中学生がグループ(学校)ごとに、“テレビの品格について”“私たちの視聴傾向とイチオシ番組”“よりよくテレビと関わろう”などをテーマに、それぞれの考えを発表(計 6校、33人)。

「第2部 公開討論『青少年のためにテレビは何をすべきか』」は、主にバラエティー番組やニュース番組について、中学生たちが番組制作者に注文や意見を投げかけるという形で進められた(登壇者は、中学生12人《6校》、制作者4人《NHK番組制作局・市川克美、TBSエンタテインメント・伊佐野英樹、フジテレビ編成制作局・吉田正樹、テレビ朝日 報道情報局・村尾尚子》、青少年委員会委員6人)。

司会:斎藤英津子(フリーキャスター)

第2回フォーラム

「これからのテレビ・中学生とともに考える」

日 時 : 2002年7月23日(火) 13時30分~16時55分

会 場 : abc会館ホール

「第1部 中学生の主張『テレビへの提言』」では、中学生が数人のグループごとに、“CMの落とし穴”“テレビの行き過ぎた演出「やらせ」について”“テレビの中の暴力”などをテーマに、それぞれの考えを発表(計 5校、27人、9グループ)。

「第2部 公開討論『青少年のためにテレビは何をすべきか』」では、第1部の発表を手がかりに、“やらせ”“暴力シーン”などをめぐり討論(登壇者は、中学生24人《5校》、番組制作者6人《NHK番組制作局・嘉悦 登、日本テレビ編成局・小山 啓、TBSエンタテインメント・鶴岡滋之、フジテレビ編成制作局・石原 隆、テレビ朝日 情報局・玉井愛美子、テレビ東京 制作局・多田 暁》、青少年委員会委員5人)。

司会:酒井ゆきえ(フリーアナウンサー)

第1回フォーラム

「青少年のための新テレビ論」
~公開討論「テレビはこのままでいいのか 中学生とともに考える」

日 時 : 2001年7月24日(火) 13時30分~16時50分

会 場 : abc会館ホール

中学生23人(海城中学校、東京女学館中学校ほか)、保護者6人、教師3人、放送局番組制作者3人(NHK番組制作局・吉田圭一郎、TBSエンタテインメント・高柳 等、フジテレビ編成制作局・大多 亮)、青少年委員会委員5人が登壇。

前半は、都内中学生600人へのアンケート調査結果(“中学生の好きな番組”“保護者が考えるテレビのマイナス面”など。臨床教育研究所「虹」による)を切り口に、バラエティー、ニュース、ドラマをめぐる論議が展開された。

後半は、青少年委員会が前年11月に発表した『バラエティー系番組に対する見解』をめぐり、意見が交わされた。

コーディネーター:尾木直樹委員、司会:斎藤英津子(フリーキャスター)

中高生モニター会議

中学生モニターの6ヵ月の任期内に1度モニター会議を開催し(ただし「中学生フォーラム」を開催する場合は、フォーラムをその期のモニター会議に替えます)、内容をまとめた冊子を発行しています。

2009年度後期

「私の見たい番組、私の作りたい番組」などについて

日 時 : 2010年1月10日(日)12時45分~15時30分

会 場 : 千代田放送会館 7階会議室

全国の中学生モニター32人中19人、青少年委員7人が出席

話し合われたテーマ:前半は「司会者が面白い番組」「面白くない番組」などについて話し合った。後半は、「もし自分がディレクターだったら『自分が見たい番組』『作りたい番組』」について率直な意見交換を行った。

2009年度前期

「保護者が見せたくない番組」などについて

全国の中学生モニター31人中16人、保護者11人、青少年委員6人が出席

話し合われたテーマ:前半は日本PTA全国協議会の調査「中2の保護者が見せたくないと思っている番組」(2009年3月)について、保護者も参加し率直な感想や意見交換。後半は中学生モニターと委員でニュース・情報系番組やドラマを含め、これからのテレビに求めることについて議論

2008年度

「ニュース、ワイドショーなど報道系番組について」

日 時 : 2008年7月26日(土)12時45分~15時30分

会 場 : 千代田放送会館 7階会議室

全国の中学生モニター33人中16人、青少年委員6人が出席

話し合われたテーマ:ニュースを見る理由・見ない理由、ニュースに違いはあるのか、最近の報道で感じたこと、ニュースについての本音トーク、中学生モニターに伝えたいこと、話し合いの中で考えたこと

2007年度

「好きな番組・嫌いな番組、その理由」

日 時 : 2007年7月27日(金) 13時00分~16時00分

会 場 : 千代田放送会館 7階会議室

全国の中学生モニター30人中14人、青少年委員会委員7人が出席。

話し合われたテーマ:バラエティー番組と罰ゲーム、どんなドラマを見るか?テレビの暴力やいじめをめぐって、漫画が原作のドラマについて、アニメ番組について、その他の番組について、テレビと他のメディア

2006年度

「テレビのここがいや」~7月モニター報告を中心に~

日 時 : 2006年7月2日(木) 10時30分~12時30分

会 場 : 千代田放送会館 7階会議室

東京都内と近郊の中学生モニター28人中12人、青少年委員会委員6人が出席。

話し合われたテーマ:トーク系バラエティー番組について、お笑い系バラエティー番組について、CMについて、ニュース・情報系番組について、地域と放送のありかたについて、テレビのデジタル化について、テレビに望むこと

よくある質問

question
BPOはどんな組織ですか?
また何をしているところですか?
answer
放送の表現の自由を守りつつ視聴者の基本的人権を傷つけることがないよう、NHKと民間放送が2003年につくった第三者機関です。3つの委員会が、独立して放送倫理や人権の問題を検証し、放送局への勧告や見解や意見などを公表します。必要な経費は、NHKと民放連・民放連加盟各社が負担しています。

2006年5月25日

2006年5月25日
放送と人権等権利に関する委員会委員長 竹田 稔

「秋田県能代地区における連続児童遺体発見事件」取材についての要望

4月9日に行方不明となり翌10日に遺体で発見された小学校4年の畠山彩香さんの母親から、昨24日、BPO[放送倫理・番組向上機構]に「テレビ、新聞、雑誌等メディア各社の猛烈な取材攻勢に見舞われ、生活を脅かされている。何とかして欲しい」という訴えが寄せられました。

母親は、「取材攻勢が激しくなったのは小学校1年の米山豪憲君の遺体が発見された5月18日以降で、自宅とその周辺は各社取材陣の数十台と思われる車に取り囲まれ自宅には住めず、避難先の実家も取材攻勢にあって外出もままならない。窓は開けられず、職場にも取材陣が付きまとう現状だ。27日(土)に娘の納骨を予定しているが、現状では出来そうにもない。何とか納骨だけは無事に済ませたい」と訴えています。

BRC[放送と人権等権利に関する委員会]は、放送による表現の自由を確保しつつ、放送による人権侵害の被害を救済するため人権侵害に関連する苦情申し入れに対しては、第三者機関として迅速、的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的としています。

当委員会は、1999年12月に「桶川女子大生殺害事件」に関して各社に取材の自粛を求める委員長談話を出していますが、今回のケースについても、放送各社に対し真相の究明を急ぐあまり過剰取材に陥り、本件事案の取材対象者のプライバシーを侵害することのないよう、節度をもって取材に当たることを強く要望します。

以上

2005年12月27日

2005年12月27日
放送倫理・番組向上機構
放送と人権等権利に関する委員会(BRC)委員長 飽戸 弘

「犯罪被害者等基本計画」に関するBRC声明

急激な社会の変化の中で、人々は内外の複雑困難な問題に直面し、とまどいと混迷を深めている。平和で安全な日々の暮らしを守るためには、生起する事態についてその真実を究明し、原因や問題点を明らかにすることが何よりも必要である。人々はこうした情報の提供を受けて自ら意見を形成し、それを自由に表明することを通じて、自らの生活を守り、社会をよりよい方向へ導くことができる。

そのためには、メディアにより、人々への必要かつ有益な情報が十分に提供されなければならない。メディアはこの点で重要な役割を担っており、人々の知る権利に十分に応えるべき責務がある。
本日、内閣は犯罪被害者等基本計画を閣議決定し、犯罪被害者の氏名を実名で発表するか否かを警察の判断に委ねることとした。

しかし、犯罪被害者の氏名は事実の確認や検証のための取材の出発点であるから、今回の措置は情報の流れを事前に警察当局が封鎖することに等しく、メディアによる情報収集を困難にし、人々がメディアを通じてその情報を受け取る自由を制約する結果を惹起することを否定しがたい。

これまで、メディアの側において犯罪被害者らに対し、無神経な取材や行き過ぎた報道がなされたことは事実であり、真摯な反省が求められているところである。しかし、現在メディアはその反省に立って、取材については平成14年4月、日本新聞協会が「集団的過熱取材対策小委員会」を設置し被害防止を図ってきている。また、行き過ぎた放送による被害については、平成9年5月NHKと民間放送各社において第三者機関としての「放送と人権等権利に関する委員会」を設立し、多くの苦情を受け付け、被害を訴える者と当該放送局との間の斡旋解決を図るとともに、現在までに17事案26件について決定を出して放送被害の救済に努めてきている。今回の措置は、当委員会のこうした努力やその果たしている役割を軽視するものと言わざるを得ない。

犯罪被害者の実名開示の可否の問題は、被害者間でも意見が分かれているところである。これに対する対応は、報道関係者が取材の際に被害者との信頼関係を築きながら、事件の社会的性格への配慮と被害者の希望を尊重・配慮することにより自主的に解決すべきであって、犯罪捜査に直接関わる警察に判断を委ねることで解決すべき問題ではないと考える。

以上のとおり、民主主義社会を根底から支える報道の自由の見地から、警察が情報の流れを事前に抑制することとなる今回の閣議決定は報道の死命を制しかねない重大な問題であることを広く訴えるとともに、内閣に対しては同措置を早急に改めるよう強く要望する。

以上

2001年9月18日

2001年9月18日
放送と人権等権利に関する委員会(BRC)

BRCの審理と裁判との関連についての考え方

【現在の運営原則】

「放送と人権等権利に関する委員会」[以下、「BRC」]の運営は、「放送と人権等権利に関する委員会機構」[以下、「BRO」]の規約およびそれに基づいて制定されたBRC運営規則に従って行われている。そして、BRO規約第4条の第1号に定められているBRCの事業(任務)は『個別の放送番組に関する、放送法令または番組基準にかかわる重大な苦情、特に人権等の権利侵害にかかわる苦情の審理』とされているが、司法に基づき係争中のものは除かれている。この規約を受けてBRC運営規則第5条も、その第1項(4)において、『裁判で係争中の問題は取り扱わない』とするとともに、また『苦情申立人、放送事業者のいずれかが司法の場に解決を委ねた場合は、その段階で審理を中止する』と規定しており、申立ての受理や審理はこの規約および規則に従って行われている。

しかし、裁判を受ける権利は当然、当事者に存在するのであるから、BRCの審理が終了し、苦情申立人、放送事業者のいずれかまたは双方がBRCの決定を不満として裁判に訴えることは何ら妨げないし、現に過去の審理案件においても、審理終了後改めて訴訟になった事例がある(「大学ラグビー部員暴行容疑事件報道」「隣人トラブル報道」)。さらにまた、同様の報道を行った放送局のうち、2放送局に対しては民事提訴するとともに、他方で4放送局に対してはBRCに申し立てた事例(「サンディエゴ事件報道」)や、訴訟にするかBRCに申し立てするか慎重に検討した結果、民事提訴を選んだ事例(「所沢ダイオキシン報道」)もある。

【BRCが「裁判で係争中の問題は取り扱わない」ことの意味】

  • では、BRCが裁判で係争中の問題は取り扱わないこととする理由は、どこにあるか。その第一は、法的判断の齟齬を防ぐことにある。BRCの任務は主に人権等の権利侵害にかかわる苦情の審理であり、当然、法的判断が重要となる。そのため、現在、BRCを構成する8人の委員のうち、4人は最高裁裁判官経験者を含む法律家となっている。他方、裁判所はもちろん法的判断の場であって、もしBRCに申し立てている事案が同時に裁判所で審理されるならば、場合によって裁判所とBRCの判断に齟齬が起きる可能性が生じよう。もちろん、一方は国家機関であり他方は民間の自主機関であるから、その間に判断の食い違いが生じること自体には否定的ではない。しかし、問題はBRCの判断は単に法的視点にとどまらず、広く放送倫理の視点を踏まえて行われているし、また行われなければならないということである。したがって、法的判断と放送倫理的判断が切り離せないような事案は、裁判所よりもBRCがよりふさわしいものと思われる。
  • また、第二の理由として、機能上の相違が挙げられる。自主的苦情処理機関であるBRCには法に基づいた強制的調査権がないので、真実発見・確定する能力に欠けるところがある。したがって、同一事案について、申立てと提訴が並行した場合または提訴が確定している場合には、裁判という強制的調査権により担保された直截的で最終的紛争解決に委ねるのが妥当である。また、裁判所にも調停・仲裁の機能があるが、BRCは連絡や斡旋で解決する事例が多いことからも明らかなように、主として謝罪や訂正を求める場合は裁判所に比べ手続きが簡単で迅速な処理が行われやすいBRCへの申立てが望ましいと考えられる。
  • BRCが裁判で係争中の問題は取り扱わないこととする第三の理由は、BRCが主として救済しようとしている報道被害者は、社会的にも経済的にも比較的弱い立場にある個人が念頭に置かれている。本来、名誉毀損等権利侵害に対する回復は訴訟手続きによるべきものであるが、訴訟は裁判費用や日数の点で一般人には利用しにくい難点がある。無料で、しかも迅速に解決できるというのがBRCの特徴であるが、裁判に訴えるだけの力のある報道被害者は、あえてBRC救済を必要としない立場にあるものと判断される。また、裁判所に比較するまでもなく、組織的にも人員的にも弱体なBRCとしては、種々の理由で訴訟を起こし得ない報道被害者を主な対象とすべきなのである。

【外国の状況について】

  • では、外国の状況はどうであろうか。非公的機関としての日本のBRCは、放送の苦情処理機関としては世界で稀な存在であるが、それに近いものとして英国のBSC[Broadcasting Standards Commission、放送基準委員会]がある。BSCは、1966年放送法によって設立された公的機関であるが、BSCが扱う苦情は、番組における、①不当もしくは不公平、②プライバシーの不当な侵害、および、③性・暴力表現、④差別と品位、の4分野である。これらのうちBRCと共通するのは、②のプライバシー侵害であるが、名誉毀損をはじめ放送による権利侵害一般を対象としている点では、BRCのほうがBSCよりも範囲は広い。裁判との競合について放送法の規定はないが、一般法と特別法の原則から、プライバシー侵害については放送法による解決が優先するものと思われる。この点に関し、1998年11月にBROを訪問したBSCのハウ委員長は、「BCC(96年放送法で現BSCに統合)時代に、コミッションの裁定に不満で放送局が裁判所に訴えたケースが6件あり、そのうち1件は私たちの裁定が覆された」と述べている。

    また、BSCでは、苦情の受理に関する規定として、『委員会の権限が及ばない事柄に関する苦情、もしくは申立期限を経過した事柄』とともに、『英国内の裁判所で係争中の事柄についての苦情、および、当該の放送に関して英国内の裁判所に訴えるに足る法的根拠のある事柄についての苦情は、受理されない』と掲げており、BRO設立に当たり参考にした経緯もある。

  • 米国にはBSCないしBRCのような全国的組織は存在しないが、1980年に放送メディアをも対象としたミネソタ・ニュース・カウンシル[Minnesota News Council。以下、「MNC」]が誕生した。この組織の前身は、英国の報道評議会[Press Council]を参考に1978年に設立されたミネソタ・プレス・カウンシル[Minnesota Press Council]であるが、放送界にも参加の希望があり、現在のMNCに改組された。つまり、MNCも英国の報道評議会を参考にしているわけであるが、それに倣った重要な点の一つとして、裁判との関係がある。この問題について、浅倉拓也氏はその著『アメリカの報道評議会とマスコミ倫理――米国ジャーナリズムの選択』(1999年・現代人文社)のなかで、次のように解説している。

    「MNCに苦情を申し立てる場合、名誉毀損などの訴訟を起こさないという誓約が要求される……。もちろん裁判で係争中の問題も受け付けない。MNCが苦情を審議する際に提供された情報や、MNCの報告、裁定文などの中で公表された事実に関しても、苦情申立人はこれらを名誉毀損や誹謗などのかどで裁判に訴えることはできない。」

    訴訟の権利を放棄しなければ苦情の申立てはできないという条件は、BRCのそれよりもはるかに厳しいが、その理由について浅倉氏は、MNCのギルソン事務局長の次の説明を紹介している。

    「もし訴訟する権利を放棄する必要がなく、しかもMNCが苦情申立人の主張を認める判断を示せば申立人はその結果を裁判所に持ち込んで訴訟を起こすだろう。そうなればメディアは二度とMNCの審理に参加しなくなるだろう。」

  • 苦情申立人からすれば、MNCの訴訟放棄の条件はいささか厳しすぎるようにも思われるが、裁判所のほかに、MNCやBRCのような苦情処理機関があることは、ある意味でメディアは”二重の危険”にさらされるわけである。また、苦情処理機関での証拠や証言が裁判で一方的に利用される危険性があり、そのため、第三者機関の存在を支えている”善意の合意”が崩れるおそれもある。米国で全国レベルの第三者的報道評議会が存在せず、また地方でもMNCを除いて成功していないのは、そのへんに大きな理由があるものと考えられる。BRCと裁判との関係も、さらに検討される必要があるが、その場合にも慎重な態度が望まれる。

    なお、英国では1990年に入って報道評議会が廃止され、91年からプレス業界の苦情処理機構として新たにプレス苦情委員会[PCC=Press Complaints Commission]が機能を開始したが、PCCの苦情申立手続規定は、従来の「提訴権の放棄制度」を廃止する一方、『委員会は、法的手続きに訴える可能性のある事案については、苦情処理を拒絶したり、延期したりする裁量権を持つ』との条項を定めた。

以上

2001年2月20日

2001年2月20日
放送と人権等権利に関する委員会(BRC)

放送番組の録画・録音の視聴請求について

BRCの審理を公正・迅速に行う上で、放送内容確認に関する東京高裁判決(平成8年6月27日)及び平成7年11月11日に施行された改正放送法(第4条、第5条)の趣旨にも鑑み、権利の侵害を受けたことが客観的に明らかな者だけでなく、その可能性を有する者でその主張に一応の合理性がある者に対しては、できるだけ視聴させることが望ましい。

以上

1999年12月22日

1999年12月22日
放送と人権等権利に関する委員会(BRC)委員長談話

「桶川女子大生殺害事件」取材についての要望

今年10月26日に発生した「桶川女子大生殺害事件」に関して、被害者の母親及び親族から、本日、テレビ局の執拗な取材に自粛を求める電話がBRCに寄せられた。母親及び家族からの訴えは以下の通りである。

「家の前に大勢の取材陣が群がり、家族の姿が映し出され外出も出来ない状況で、生活に支障をきたしている。殺害された娘の写真が度々放送され、家族の写真は映さないでほしいと頼んでも聞き入れてくれない。わが家の写せるところは全てさらけ出し、家族には小学生や大学受験を控えた子供もいるのに、話を聞かせてほしいと執拗に迫る。近所にも迷惑をかけ、このままではここに住んでいられなくなってしまう。被害者であるにもかかわらず、何でこれほどいじめられなくてはならないのか。被害者に自殺でもしろというに等しい」

BRCは、事件報道の際に度々指摘されることではあるが、今回も犯罪被害者の立場に十分な配慮をせず、被害者家族に二次的な報道被害が及んでいる事態が生じていることを憂慮せざるをえない。事件の真相を解明するための取材が必要であることはいうまでもないが、今後の取材に当たっては、上記の家族の声を真摯に受け止め、被害者及び家族のプライバシーを侵害することのないよう節度をもって当たることを強く要望する。

BRCとしては、本件の報道に対し、今後とも重大な関心を持っていることを明らかにしたい。

以上

2012年度 解決事案

「ストローアート作家からの申立て」事案 審理入り後の和解合意により解決

本事案はフジテレビが1月9日(月・祝)の『情報プレゼンター とくダネ!』で放送した企画『ブーム発掘!エピソード・ゼロ(2) 身近なモノが…知られざる街の芸術家編』について、ストローアートの作家が申し立てたもの。
企画では、ストロー、バナナ、海苔、それに石を素材とした4作品を紹介した。申立人は、数本のストローで作った組作品のヤシを1本ずつに崩し、本来飲むためのものではないにもかかわらず、飲み物に挿して喫茶店の客に出し反応を撮影・放送したこと、出演者に4作品の人気投票をさせた上、キャスターが「石以外は芸術ではなく趣味の域だ」とコメントしたことについて、「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」と主張した。
これに対し、フジテレビは「演出方法を明確に説明せず、申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている」として、放送でのお詫び案を示しメールで交渉を重ねてきたが、決着しなかった。
5月の委員会で審理入りが決まり、6月の委員会で書面審理、7月の委員会では申立人とフジテレビにヒアリングを行い、詳しい話を聞いた。ヒアリングを受けて委員会は、フジテレビがお詫びの意思を表明し、申立人に対し数度にわたり謝罪案を提示してきた経緯等もあることから、双方に対して和解による解決を打診した。
これに対し双方とも和解に応じる意向を示したため、委員会が作業を進めた結果、フジテレビは放送で演出についてお詫びし、ホームページでは演出のお詫びとキャスター発言等について見解を表明する一方、申立人はこれを受け入れ委員会への申立てを取り下げるとした合意に至り、8月21日に和解合意書を取り交わした。
その後、フジテレビは、8月23日放送の当該番組内、及び、同日から7日間ホームページにおいて合意内容を履行した。
審理入り後の和解解決は3件目となる。

【委員会コメント】

本事案において、委員会が双方の主張を十分に聞いたうえで和解を斡旋し、申立人も納得する形で早期に解決できたことは、放送による被害者の救済という委員会の使命にもかなうものと考える。
局側は、自ら反省している点は今後の番組作りにおいてぜひ活かしていただきたい。

(放送2012年1月9日 解決8月21日)

2011年度 解決事案

「店の信用にかかわる映像使用をされた」との訴え

在京テレビ・キー局が2011年4月に放送した情報バラエテイー番組について、古美術店の経営者から、「『以前に撮影した店の外観映像を風景として使用したい』とのことで許可したのに、あたかも放送で取り上げられた古美術品を私の店で売ったかのように見える使われ方をされた。このため、お客さんからは『放送ではすごい価格だったのに、なぜあんなに安い値段で売ったのか』といわれ、信用問題になっている」として、テレビ局に対し、放送での「お詫び」を求めて抗議が行われた。
テレビ局は、「店の名前を明示しているわけではないのでホームページ上でのお詫び・訂正であれば可能だが、番組内で取り上げることはできない」と回答した。これに対し経営者はあくまでも番組での「お詫び」を求めたが、双方の話し合いは進展せず、経営者から放送人権委員会に訴えが寄せられた。
委員会事務局では、テレビ局に対し、経営者側の意向を伝えるとともに、局として再検討し話し合いを続けるよう要請した。
その結果、6月に入って番組責任者が直接経営者と会って話し合いを行い、外観映像の使用について番組内で説明を行う旨の提案をした。経営者はこれを了承、その後放送された「お詫び」を視聴した結果、最終的に納得し、本案件は解決した。
(放送2011年4月 解決7月)

2009年度 解決事案

「引ったくり事件の被害者が取材を拒否したのに実名報道された」と抗議

2009年5月24日、在阪の民放テレビ局が、ニュース番組の中で、引ったくり事件の被害者を実名で報道した。この放送内容について、被害にあった女性は、「事件後、取材に来た記者に対して”プライバシーに関することなので取材はお断りします”とはっきり言ったのに、ニュースで、実名、職業、年齢などのプライバシーが報道され、多大な精神的苦痛を受けた。犯人はなお、逃走中だ」と局に訴えた。
これに対し、当該局は、「取材拒否を実名報道拒否とは受け止めなかった。事件報道では実名報道が原則」と説明したが、女性は納得せず、局側の謝罪を求めて放送人権委員会に苦情を申し立ててきた。事務局では、当該局に対し、女性に納得してもらえるよう説明するなど話し合いでの解決を勧めた。
双方で話し合った結果、7月13日に当該局担当者が女性宅を訪ね、「お詫び」の文書を提出した。これにより問題は解決を見た。「お詫び」の内容は、(1)取材を拒否した被害者の真意を汲み取り、実名報道の適否についてより慎重に対応すべきだった。(2)今後は、被害者から匿名を希望された場合には、その理由と事件の重大性などを比較考量し判断していくなどというもの。
事務局からの問い合わせに対し、女性は、「プライバシーを侵された怒りは消えませんが、改善策を含めたお詫びがあったことを前向きに受け止め、これで解決とします」と述べている。

(2009年5月放送 7月解決)

「匿名を要求したのに実名放送された」との訴え

在京テレビ・キー局が2009年4月に放送した”介護保険”をめぐる報道番組で、取材された人(東京在住)から、「匿名を求めたのに実名が放送されたため、世間に知られたくなかった母親の病状が明るみに出てしまった」とテレビ局に抗議があった。
テレビ局は、「母親の映像を出さないことを了解した時点で、顔出し取材に応じ介護の実態を話してくれた長女の実名を出すことは、承認されたものと思って放送した」と釈明した。しかし長女は納得せず、謝罪と再放送の際は匿名にするよう求めた。
テレビ局は3日後に再放送を行ったが、その際、名前の部分を平仮名に変えただけで放送したため、長女はさらに憤慨し、誠意ある謝罪と、映像を再び使用しない約束を求め、放送人権委員会に訴えた。 放送人権委員会では、テレビ局に対し、被取材者を傷つける意図がなかったことや、その取材のあり方、放送のあり方について誠意を持って説明し、納得してもらうよう話し合いを勧めていた。この結果、9月に入って、テレビ局から相手方に対し下記の内容の文書が示され、長女もこれを納得、この事案は解決した。
文書で示された内容は、このような問題の再発防止のため、1)取材協力者に対し、撮影取材が始まる前に番組の趣旨を十分説明する。2)実名か匿名かの事前確認を徹底する。3)苦情に対しては取材担当者レベルでなく、速やかに責任者を集めて真摯に検討し、責任者が直接誠意を持って説明する。の3点となっている。また局は、番組の再放送に当たっては、取材協力者の了解なしには行わないことも約束した。

(放送2009年4月 解決9月)

「インタビューの編集により誤解を招いた」との訴え

在京テレビ・キー局が2009年6月、ニュース番組で放送した”地方空港の開港”をめぐるニュース特集で、取材を受けた地元企業の社長が、インタビューの肝心な部分が削除されたことにより、名誉を侵害されたとしてその回復を訴え、放送人権委員会に苦情を寄せた。
訴えの内容は、「国内線が決まっていないのは残念だ。しかし、国際線の乗り入れが決まっているので心配していない」とインタビューで答えたが、その前半部分だけ放送され、開港を期待している地元企業の仲間に対し、自分があたかも開港に悲観的な意見の持ち主のように放送され誤解を招いたというもので、当該局に対し、名誉回復措置をとるよう要望していた。
委員会では、当該局に対し、被取材者と誠意を持って話し合うよう勧めていたところ、9月末になって、報道局長名での「説明とお詫び」の文書を出すこととなり、話し合いで決着することになった。 この文書の中で当該局は、「被取材者の考えを十分に汲み取った放送をできなかったことを申し訳なく思っています」と述べている。

(放送2009年6月 解決9月)

「夫の死亡ニュースに際し、息子の名前をスーパーされた」との訴え

四国のテレビ局が2009年7月、ニュース番組で元参議院議員の死亡ニュースを報じた際、画面に息子(現職衆議院議員)の名前を40秒間スーパーで入れるというミスを犯し、4分後に同じ番組内で訂正・お詫びを放送した。
この放送について、死亡した議員の家族から、「訂正放送をすればそれで放送局の責任は免れるのか、葬式を前に悲嘆にくれている家族に多大な精神的ショックと混乱を与えておきながら何の説明もお詫びもない」との苦情が放送人権委員会に寄せられた。
委員会では、当事者に対する謝罪のあり方が問題とされているケースであることから、当該局に対して、まず家族に誠意を持って説明するなど当事者間での話し合いを勧めた。
その後、当該局が家族へ話し合いを申し入れたところ、対応の遅れなどの経過説明を求められたため、ミスの発生から訂正にいたるまでの経緯と「関係者への連絡が遅かったという批判を謙虚に受け止めたい」とのお詫びを記した文書を役員名で送付した。
これに対し、家族は丁寧な説明を受けたとして、この「説明・お詫び」を受けいれることにし、その旨当該局に伝えた。また、放送人権委員会堀野委員長宛てに手紙を寄せ、問題が解決したことを連絡するとともに、被害者の立場から「誤報の影響が予想される場合は少しでも早く当事者に連絡していただくことを放送局側に要望したい」と述べている。

(放送2009年7月 解決12月)

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案  審理入り後の和解斡旋で解決

本事案は、2009年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。
放送は、不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は、放送内容は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反するものだったとして、謝罪などを求めた。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張した。
同年11月に審理入りし、2010年1月までヒアリングを含め3回の審理を行ったが、堀野委員長は本件事案は人権侵害を訴えるものでなく放送上の表現や編集の仕方が問題になっていた事案であることから、和解による解決が望ましいとして2月の委員会に提案し了承を得た。
委員会による和解斡旋の結果、2月18日にBPO会議室で委員長と申立人、フジテレビの責任者が出席して和解の手続きが取られた。フジテレビは、視聴者に誤解を与えかねない表現があったとしてお詫びし、今後取材先との信頼関係を大切にして報道に取り組むという内容の書面を申立人に手渡した。これを受けて申立人は委員会への申立てを取り下げ、双方が譲歩する形で本件は解決した。

審理入り後の委員会斡旋による和解解決は、2008年3月の「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」事案に次いで2件目である。

(放送2009年7月 解決2010年2月18日)

2008年度 解決事案

「離婚した妻の一方的主張を再現したバラエティー番組」に元夫が苦情

中国地方に住む男性から「全国ネットのバラエティー番組で、元妻の一方的な証言に基づいて、私の浮気が離婚の原因と決め付けた過去が紹介され、その場面の再現放送までされた」として、在京の民放局に訂正放送などを求める訴えが、放送人権委員会に寄せられた。
当委員会で、当該局に事実関係の確認と、男性との話合いを勧めたところ、数回の交渉で和解が成立し、5月の同番組(全国ネット)の最後でお詫び放送がなされ、また3日後には男性が住む県域のローカル局(全国ネット外)でも特別編成で同番組の放送が行われた。
当該局では、本件苦情の訴えを重視し、弁護士を交えて番組スタッフから調査を行い、離婚の原因についての説明が一方的だったことを確認し、再現VTRの使用は、男性の名誉を傷つけた恐れが多分にあることなどを認め、お詫び放送に踏み切ったもの。
なお、当該局では、上記の調査、お詫びの経緯等について、当委員会に報告書を提出し、その中で、今後の対応および再発防止策として、この放送内容について社内のさまざまなレベルで、研修、勉強会などを開き、反省の共有化、意識啓発を進めることになったとしている。

(2008年4月放送 6月解決)

アブラボウズを高級魚クエとして販売した疑惑追跡報道

在阪のテレビ局が、2007年暮のニュース番組内で、新たな食品疑惑として、高級魚クエと偽ってアブラボウズが販売されているという疑惑を追跡し、検証する企画報道を行った。
流通ルートから”偽クエ”の卸並びに小売をしている会社が突き止められ、社長(匿名)の取材に対する対応ぶりなどが放送された。
放送後、この社長が、「偽クエ疑惑の主犯格として扱われ、暴利を貪っているとの印象を視聴者に持たれた」と主張して、放送局に抗議したが、局側は、高級魚クエでも偽の表示で流通が行われていることを、一般の視聴者に注意喚起するための企画であると反論し、謝罪・訂正放送を拒否した。このような経過を経て、社長が2008年3月、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。
放送人権委員会で、双方に更なる話し合いを求めたところ、「二度とこのニュースを取り上げないよう求める」という社長側の要求をめぐって決着が長引いたが、局側が「今後も、適正な報道を行ってまいります」との表現を盛り込んだ文書を出すことで話し合いがまとまり、放送以来半年ぶりに解決した。

(2007年12月放送 2008年6月解決)

「亡くなった家族を生きているように間違って放送された」と抗議

九州の民放テレビ局が、「スーパーマーケットの前で、じゃんけんで勝つと品物が安く買えるゲーム」(VTR撮影)を行い、夕方の情報番組内で放送した。(08年6月26日)
放送後、ゲームの参加者(申立人)から、「家族構成は祖父母、両親、子供4人」と字幕入りで放送されたため、取引先や知人から「祖父母は、まだ生きているのか」「前に香典をおくったが・・・」などと疑惑の目で見られたり、不審に思われたりして迷惑を受けたと、局に対し、訂正と謝罪をしてほしいとの抗議がなされた。
実際は、両親に子供6人の8人家族であったのを、取材者が聞き間違えたか、思い込みによって誤報となったもの。
抗議に対し、局側は電話で事実を間違えたことを詫びたが、謝罪文(申立人が知人に説明するため、局側が間違えたことを証明する文書)の提出を拒み、また、自宅へ謝罪に来てほしいとの要請についても断ったため、放送人権委員会への相談となった。
事務局からの事情聴取に対し、申立人は「訂正・謝罪は求めない」「慰謝料等も求めない」と述べていたこともあり、局に対し、誤報で迷惑を掛けたのは事実であり、電話だけでなく自宅に出向いて謝罪し誠意を示すのもひとつの解決法ではないかと勧めたところ、部長でもあるプロデュサーが申立人宅に出向き、お詫びした。申立人は「早い段階で誠意を見せてほしかった」と言いつつもこれを了承し、一転解決となった。申立人は、局が誠意を持って謝罪したことを評価し、謝罪文は要求しなかった。
放送から約1ヵ月後の7月に解決となったが、局側は「これまでの対応と今後の対策」を盛り込んだ説明・報告書を放送人権委員会委員長宛て送付、その中で「間違って放送したことは事実であり、直ちに訪問して謝罪すべきだった」と反省している。

(2008年6月放送 7月解決)

2007年度 解決事案

「ラジオ番組で誹謗中傷された」との元局アナからの苦情

以前放送局に所属していた元女性アナウンサーが「当該局のラジオ番組で、男性アナウンサーの嘘の発言によって誹謗中傷された」として「局の謝罪と発言したアナウンサー本人の反省のことば」などを求めて7月放送人権委員会に苦情を申立てた。
放送人権委員会事務局では、双方に対し「話し合いの余地があるのではないか」と交渉を続けるよう勧めていたところ、当該局より「話合いの結果、このほど全面的に解決した」との報告があった。
事務局で女性のブログを確認したところ、女性も「尊敬する方々から謝罪を頂き、(発言した)本人からも誠意ある言葉を貰ってすべて解決した」とブログに書いており、本件は、放送人権委員会の審理をまたず円満解決したものとして委員会に報告、了承された。

(2007年6月放送、2007年7月解決)

「松茸の産地偽装疑惑報道」への苦情

11月、某地方の松茸販売業者から「当店は、この地方でただ一店、産地表示して松茸を売っているのに、朝早くからアポイントもなく押しかけてきた記者に最初から結論ありきの態度で長時間取材され、中国・韓国産の松茸をあたかも当地方産と偽装して販売しているように報道された。局に抗議すると『間違った放送はしていない』の一点張りだった」と苦情を申立ててきた。
放送人権委員会事務局では、当該局に対し「申立人は、地元商工会や観光協会との関係を一番問題にしている」と伝えた。これを受けて局の番組責任者が申立人を訪れて話しあった。その結果、「産地偽装についてはそれぞれ言い分があったが、“アポなし長時間取材”等についてはお詫びした。申立人は当方の誠意を認めてくれて和解に応じ、解決書を取り交わした」との報告があった。
また申立人に確認すると「局の責任者が商工会・観光協会にも事情を説明してくれた。お陰で円満に解決することができた」ということであった。

(2007年11月放送  2007年12月解決)

「無理やりインタビュー・放送に抗議」

事務局から、仲介・斡旋解決事案として下記内容を委員会に報告し、了承を得た。
「取材を拒否したのに無理やりインタビューされた上放送(2008年2月21日)された。テレビ局に抗議し謝罪を求めたが誠意ある対応を示さない」と、宮城県在住の商店従業員が委員会に苦情を訴えてきた。
抗議の内容は、「2月にテレビ局から、深夜番組の恋愛応援企画コーナー(バレンタインデーに女性がチョコレートを渡すのを応援するもの)での取材要請があったが、はっきり断った。にもかかわらずテレビ局は女性と共に待ち伏せし、仕事を終えて店を出たところで無理やりインタビューされ、取材を断っている場面を放送された」というもの。
放送後の抗議に対し、テレビ局は「匿名、モザイクにしたので名誉毀損には当たらない」と釈明し、「迷惑をかけたとしたらすまない」との意向を示したが、商店従業員は「まったく誠意が感じられない対応だ」として、BRCへ訴えた。
BRC事務局では、「商店従業員は放送された人の気持ちを考慮した誠意ある謝罪を求めている」とテレビ局に伝え、話し合うよう要請していた。その結果商店従業員から、「2度の話し合いの末、このような取材の再発防止などをテレビ局が約束してくれたので了解した」との連絡を受けた。またテレビ局からも、同日「円満解決した」との報告があった。

(解決 2008年2月29日)

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」委員会審理を経て仲介・斡旋解決

福島県いわき市の木材加工会社の社長が、隠し撮りの放送(2007年12月12日)により人権を侵害されたという申立てについて、133回委員会で、その社長と当該局・福島テレビの関係者から個別にヒアリングを行った。
この中で社長は、「産業廃棄物を自社の敷地に不法投棄していたことは事実で反省もしている。しかし隠しカメラで、雑談と思わせインタビューされ、これを逮捕当日のニュースに使われたのは納得できない」と申立てに至った理由を語った。その上で社長は、「地元の同業者は産業廃棄物の扱いに疎いところがあったが、今回の逮捕によって皆で研究していこうという機運も出ている」と語ると共に、BRCに申し立てし、このヒアリングに出て話が出来たことで、福島テレビに対する怒りの気持ちも、ずいぶん落ち着いてきたと率直に語った。
一方福島テレビ側は、「悪質な産廃不法投棄事件であるが、社長はインタビューに応じてくれなかった。しかも逮捕も間近であり、なぜ不法投棄を続けていたかを報道するためには隠し撮りもやむを得なかった。従って申立人への人権侵害などに当たるものではない」と主張した。しかし「隠し撮りの放送により社長が不愉快になった気持ちは十分理解できる。その気持ちも重く受け止め、こうした取材については今後も十分慎重に対応したい」という考えを明らかにした。
この考えの表明を受け、委員会で改めて申立人に聞いたところ、「相手の気持ちも分かったので、これ以上争う積もりはない」として苦情申立てを取り下げることとなった。

(解決 2008年3月18日)

2006年度 解決事案

「疑惑解明に後ろ向きと報道され名誉を傷つけられた」との苦情

9月、ある地方都市の保守系市議会議員が「地元局で放送されたニュース特集で、議員としての名誉を著しく傷つけられた。報道姿勢に問題があると思うので放送人権委員会で審理してもらいたい」と、前触れなく文書で要請してきた。
このニュース特集は、「福祉と利権の構造」をテーマにしたもので、市の特別養護老人ホームを巡る贈収賄事件を調査する百条委員会が「選定過程に問題はなかった」との結論を出したことを受け、市議会の不作為を糾弾する内容だった。
苦情を申立ててきた市議会議員は、「百条委員会で疑惑解明に後ろ向きの言動を取り続けたように描かれた」と主張していたが、当該局では「報じたことはすべて事実であり、また本人に直接取材を申し込んだが拒否された。報道機関としての対応は十分にしている」と反論していた。
放送人権委員会事務局では「名誉を傷つけられたとの主張に具体性がなく、また間違った事実関係が報道されていないので、放送人権委員会への審理要請案件としては無理がある」ことを議員に説明、再考をうながしていたところ、2週間後「事務局の指摘を考慮し、苦情申立を取り下げる」と伝えてきた。

(2006.10.5放送 06.11.10解決)

「説明された企画意図とは違い、虚偽の内容を含む形で放送された」との苦情

10月、東京の映画製作会社の代表から「製作した映画の紹介をするという企画意図だったので取材に応じたが、放送では監督個人のことに終始し、虚偽の内容を含む捏造としか思えないものもあった。取材に来たテレビ制作会社に抗議したが、何の回答もない」と強い抗議が寄せられた 当該局に問い合わせたところ、「すぐに社内調査する。事実関係がわかり次第報告する」ということであった。
映画は、在日コリアンである監督自身の家族を10年にわたって追い続けたものだが、映画製作者側が最も問題にしていたのは、監督と朝鮮総連が対立的にあるように扱われたことだという。
しかし10日後、映画製作会社の代表から「放送人権委員会の仲介で当該局の番組責任者とようやく会えて話し合うことができた。放送人権委員会から声をかけられて初めて局が動いたということになるが、相手の態度に誠意を感じたので穏便にことを納めようと思う」と伝えてきた。またその翌日、局からも「監督の在日コミュニティーの中での立場が悪くなったとするならば、申し訳ない」旨の当方の反省を理解してもらい、和解した」との報告があった。

(2006.10.27放送 06.12.20解決)

「不審死幼児の母親と間違って報道され、退職を余儀なくされた」との訴え

10月、秋田県大仙市の浅い農業用水で不審死した4歳男児の遠縁という若い女性から「葬儀の際に、男児の母親(後に殺人容疑で逮捕)と間違われて、泣いている顔を正面から写されテレビのニュースで放送された」と訴えてきた。さらに当該女性の母親から「番組では“31歳の子持ち”とコメントされたが、娘は20歳代で来年早々に結婚を控えている。娘は興奮し、仕事にもいけない状態だ」と、苦情を申し立ててきた。
局側からは「すぐに訂正し、担当責任者がお詫びに行き、詫び状を手渡した」との報告があったが、その後、女性は退職を余儀なくされたという。
しかし、12月はじめになって、本人の父親から「娘の病状はだいぶ回復した。当該局の番組責任者が3度も秋田に来られ、謝罪をされ、誠意を感じるようになった。いかがすべきだろうか」との相談があった。BRC事務局から「局の誠意を感じるのであれば、和解されてはどうか」と伝えたところ、まもなく局側から「無事、和解・解決した」との報告があった。

(2006.10.00放送 06.12.00解決)

2005年度 解決事案

「プライバシーを侵害された」との苦情

8月中旬に放送人権委員会事務局に寄せられた訴えの概要は「居酒屋を今も営む85才の義母の半生を描いて<世のお年寄りに勇気を与える>という趣旨を説明され、それに賛同して家族はドキュメンタリー番組の取材をOKしたのに、放送では本人の奮闘だけでなく、自分たち子供夫婦や孫たちの他人様には知られたくない事実も描かれた」というもので、家族の一人が苦情を訴えてきた。
申立人は、「謝罪と再放送中止の確約」を求めるとともに、「自分たちが映っているテープの引渡し」を強く要求していたが、放送人権委員会事務局では「報道機関として、放送局が取材テープを局外に出すことはない」と説明し、テープ引渡しにこだわらずに話し合いを続けるよう勧めた。
その結果、局側も誠実に対応し「再放送や二次利用での番組販売等を行なわない」、10月末に当該番組の中で「事実関係において一部誤解を生じさせる表現があった」とする旨の字幕スーパーを放送することで双方が合意し、事案は和解・解決した。

(2005.8.14放送 05.10.19解決)

2004年度 解決事案

「盲導犬の世話を巡り、名誉を傷つけられた」との苦情

沖縄県のペット美容室経営者(男性)から、「ラジオ番組で、取材にも来ずに、自分がリタイアした盲導犬の世話をしていることについて、『それを“目玉”にして商売している』といった趣旨で紹介・放送された。犬の世話はあくまで純粋ボランティアでやっているのであり、出演者のこの発言は、自分の名誉・信用を傷つけるものであった。出演者から真意を聞きたい」との苦情があった。
この苦情を当該放送局に連絡したところ、「番組では、この経営者の活動を美談として放送したもので、経営者を誹謗・中傷する内容ではない。放送の責任はすべて放送局にあり、出演者は出せない」との報告があったが、放送人権委員会担当調査役から「誠意を持って話し合いを続けてほしい」旨を要請。
その後、再度、双方による話し合いが行われ、同経営者から「当該局幹部と出演者本人が家に来て弁解した。納得できない部分もあるが、出演者本人が来てくれたこともあり、これで矛を収めようと思う。ご面倒をおかけした」と放送人権委員会担当調査役に連絡してきたため、当該局にも確認し、斡旋解決事案とした。

(2004.10.2放送、04.10.19解決)

「被虐待児ドキュメントで子どもを無断撮影」との母親からの苦情

2004年8月に山形県の女性から、「ドキュメンタリーの番組宣伝を見て、児童施設に預けている4歳の長男が被虐待児の一人として撮影されたことを知った。あわてて当該放送局に放送をやめるように求めたが、映像処理を少し施されて結局、放送されてしまった」との苦情があった。
当該局は、「学園長に企画意図を理解してもらった上で撮影許可を得た。当該児童は2カットしか映っていないが、苦情に応えてモザイクを大きくした。放送後は何も言ってきていない」としていたが、女性はその後も、放送人権委員会事務局に対し「納得できない」と不満を訴えてきていた。
放送人権委員会担当調査役から再度、当該局に問い合わせたところ、9月に入って、当該局幹部が申立人と直接面談し、改めて企画意図を説明して了解を求めた。これに対し女性は「学園長の許可だけで、親の許可なく撮影したことは問題だ」と重ねて主張したが、新たに具体的なことは何も求めなかったという。
当該局から「この話し合いの段階で一件落着したものと考えられる」との報告がある一方、その後数か月間、抗議がないことから、12月21日開催の放送人権委員会に諮った結果、委員会としても落着したと判断することにした。

(2004.08.16放送)

「ヘリコプター・オーナーから“名誉毀損”」との苦情

2004年10月に大阪府の男性から、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情があった。
当該放送局は、番組を紹介するホームページの中で、内容を訂正する措置をとったが、男性は納得しなかった。
放送人権委員会事務局から双方に話し合いを要請したところ、再度の話し合いが行われ、その中で局側が、内容を修正した番組を男性の出身地などで放送することを提案し、男性もこれを了承、解決した。

(2004.10.2放送、04.10.19解決)

「強引な取材でキスを強要された」との苦情

2004年12月に愛知県の女性から、「駐車していたところ、2人組のお笑いタレントの一人が無断で乗り込んできて、無理やりキスしょうとした。しかも、この一部始終をテレビカメラに撮影された。局側に抗議したら、放送しないと答えたが、問題の本質がわかっていない。こんな取材・撮影は絶対許せない。」との苦情があった。
放送人権委員会事務局から双方に話し合いを要請した結果、再度の話し合いが行われ、局側から「取材の行き過ぎ」を認め、謝罪するとともに、問題となったコーナー企画を即時打ち切る事などを提示した。女性側も「局が誠実に対応してくれたので了解した。放送人権委員会に感謝する」ということで、解決した。

(2005.1.6解決)

2011年 10月

中国・四国地区各局との意見交換会

今年度の「放送人権委員会委員との意見交換会」は、中国・四国地区のBPO加盟放送事業社を対象に10月4日広島で開かれた。広島では2005年5月以来6年ぶりの開催となり、前回の35人を大幅に上回る加盟14社・63人が出席した。委員会側は委員9人全員と事務局が出席した。また記者7人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
当日は午後2時に開会し午後5時に終了の予定だったが、震災報道をめぐって議論が白熱したことから予定を延長して議論を続けた。このため、午後5時30分まで3時間半におよぶ長丁場の会議となった。

◆前半◆

  • 委員長冒頭挨拶
    堀野委員長は冒頭挨拶で東日本大震災と福島第一原発の事故に触れ、66年前に広島で起きたことが別の形で繰り返されたことは大きな悲しみだと述べた。この後、「放送人権委員会が発足して間もなく15年になる。この間39の事案で決定を出してきた。上記の震災など世の中の大きな変動の中で一人一人の人権を扱うことはミクロでマイナーなことと思われるかもしれない。しかし、報道は大局を正確に把握するとともに一瞬たりとも気を緩めてはならず、どんなに小さなことでも正しく公平・公正に伝え、国民に考える素材として価値あるものを提供していくことが任務だ」と指摘した。そして「我々が厳しい決定を出すことで放送局が自粛したり萎縮するとすれば、それは本意ではない。報道は日々の取材でもプライバシーや肖像権の問題が生じるし、不正や疑惑に切り込む調査報道では対象者の社会的評価を下げ、名誉にかかわる問題が生じることもある。それらを含め局は過ちを犯すことがある。しかしそれでも自粛してはならず、問題と正面から向き合い、自らの意図を正確に発信し、国民から支持を得るよう努めてほしい」と呼びかけた。
  • 東日本大震災報道について
    3人の委員が東日本大震災報道についてスピーチした。

    (1) 大石委員「被災地から考える~私が見て、感じたこと」
    私が最初に広島で取材を始めたのは1984年だった。86年にチェルノブイリの事故が起き90年に現地に入った。広島の被爆者たちはチェルノブイリの被災者を自分のことのように心配していた。当時、クレムリンは情報を伝えなかったため避難しない人が多かった。これまで何度か現地を訪れているが、病気の人は本当に増えているし、若い人が指で数えられないほど亡くなったという話も聞いた。
    いま福島で感じるのは報道が本当のことを伝えてくれていないのではないかという地元の苛立ちだ。なかには不安とストレスで眠れず自殺に追い込まれる人もいる。福島の人たちは見捨てられ棄民となっているのではないか。水俣でも感じ、広島や長崎の被爆者にも感じたのと同じことを福島でも強く感じる。
    ジャーナリズムで一番大切なことはどの立場に立って報道するかということだ。私は弱者の立場に立って伝えてほしいと思う。それは福島の人たちの立場に立つということだ。東電や政府の取材においても福島の人たちがどう思うかを常に考えながら伝えてほしい。
    報道の皆さんが寝泊りするところもない中で取材を重ねてきたことは本当にすごいと思う。目の前の悲惨な現実に何をどう伝えていいのか悩まれることもあると思う。その中で一番大事なことは被災した人の立場に立ち、その思いを共有していくことではないか。私も自分自身に何ができるかを考えながらそのことを深く突き詰めていきたい。

    (2) 山田委員「放送メディアの震災報道と被災者」
    ジャーナリズムは現実から逃げずに現実を直視し伝えることであり、想像力を働かせて番組を作ることだ。それが今テレビ・ラジオに問われている。
    テレビやラジオ、新聞等の伝統的なメディアは、最初は速報や一定の安心感の醸成、支援力の形成という点で大きな力を発揮したと思う。但しその後は政府等の公的機関の情報に頼らざるを得ず、”大本営発表”という批判を受けることになった。そこに従来型の取材報道体制への懐疑や批判が含まれていることが重要だ。
    たとえばあやふやな情報や凄惨な画像を流すとパニックになるので放送しなかったといわれている。アメリカの9・11の後にもエリートパニックという話があったが、視聴者は本当にテレビの情報を鵜呑みにしてパニックを起こすのか。それは局の驕りではないのか。改めて考え直してもよいと思う。また放送法第4条にある視聴者への多角的な論点の提示はできているか。たとえば政府は安心だとPRするが、それに対して安心と安全の違いを峻別し検証し伝えることが報道機関の役割ではないか。さらに被災者に寄り添う報道とはなにか。その言葉に放送局の自己満足はないか。最も困っている人、最も弱い人、あるいは東京発の情報に対抗できる地元の見方や意見をどう発信していくかが問われている。
    いま陸前高田市に行くと瓦礫の山は片付けられ、現地はきれいな草原となっている。その中でどう息切れせず、忘却せずに伝え続けていくか。そのためには覚悟が必要だ。中には被災者にとって不愉快で不都合な情報も入ってくるだろう。それも報道し切るという覚悟を持たなければ本当の意味で被災者に寄り添う報道はできないと思う。

    (3) 武田委員「原発報道とメディアへの一視点」
    私は事故の後は現地に行っていない。事故の後にしか行かないジャーナリズムに不満がある。ジャーナリズムは事故の前に現地に行くべきだった。たとえば事故直後、再臨界という言葉が飛び交ったが、知識を踏まえてその危険を伝えるものではなく、圧倒的に事故前の蓄積が欠けていた。いわば事故という抜き打ちテストに日本の報道は合格できなかった。
    地元と原発との関係、原発推進と反原発についても考えておくべきだった。両者の不幸な向き合い方が日本の原子力のリスクをむしろ高め、原発の事故率を高めてしまった側面がある。大本営発表等の批判についての検討も必要だが、事故前に日本の原子力をめぐる構造を分析し報道することができなかった、それがあの事故を招いたという意味でジャーナリズムには責任がある。この問題を考えないと後につながらないと私は思う。
    3・11以後の原発報道もいわば「東京目線」で行われてきたのではないか。たとえば原発の敷地外からプルトニウムが発見されれば大ニュースになる。しかし地元にとっては核種の如何以上に被曝するかしないか、これから生きていけるかが大事だし、避難すること自体がリスクになる人もいる。寄り添うとすれば、そうしたリスクを総合体として伝えないと原発報道は被災者のためにならない。そのあたりは反省すべき点が多い。
    日本のジャーナリズムには速報主義、事実主義、中立公正原則がある。しかし単に早ければよいわけではなく、戦前の原爆開発計画が報道され、原発と原爆の連続性が理解されていれば、日本の原子力史は変っていたかもしれない。またプルトニウムが検出されたという事実を報道するだけでよいのかという問題もある。中立公正原則をあえて踏み越えて寄り添い型の報道が必要な場合もある。
    3・11を経てこの3点を再検証すべき時を迎えていると思う。

◆後半◆

15分間の休憩を挟み、後半は「顔なし、モザイク映像の多用と報道の信頼性」「不正や疑惑の追及とその課題」、「東日本大震災報道」をテーマに委員と放送局出席者との間で意見を交わした。
このうち「東日本大震災報道」では、遺体映像について「日本のテレビでは遺体映像は出ていないが外国のメディアでは海に浮かぶ遺体の映像が流れたと聞く。どう考えるか」との質問が出た。
委員からは、「最初の3か月、半年という範囲では遺体映像を出す必要はないと思う。遺体映像がなくても今回は悲惨な状態についての情報の共有や共感できる絵作りはできたと思う」という意見に対し、「牛や豚が死んでいる映像だけでは真実は伝わらない。次世代にまで伝えるという点では、迫真のある映像を残すことをベースに且つ人間の尊厳を守っていくという観点からまず撮影し、そのうえでボカシを入れるかどうかを議論し、出すべきものは出すという方向性で行かないとメディアとしての意義はない」とする意見が出た。
また「欧米のメディアでは遺体を含むはるかに凄惨な画像が通常放送されている。それと日本での扱いとの間にあまりの段差がある。その理由は明確にし検証していく必要があると思うが、名前が特定できるとか親族には分ってしまう等の場合は別として、遺体であるから放送しないという一般的な原則が果たして有効かどうか、いま少し議論する必要があると考える」とする意見や、「広島の原爆の時も遺体写真がほとんどなかった。いま話を聞いていると66年前と全然変わらない、何を考えて私たちはここまで来たのだろうかと愕然とした思いだ。やはり撮らなければいけない、記録しなければいけない。それを記憶させていかなければいけないというのが私たちの仕事の宿命というか使命だ。そういう映像を撮らなくて済むようになることは大事だが、やはり記録のために撮っておくことは大事だと思う」という意見も出された。
堀野委員長は「原爆の時の黒焦げになったモノクロ写真や東京大空襲の際のおびただしい遺体のモノクロ写真は残っている。もう二度と戦争はいやだという思いはそのような写真を見ることでも継承されていく。災害でも同じことだと思う。特に人災が含まれる災害での死は後世に伝えるべき極めて大きな問題だ。それこそメディアの責任ではないかと思う」と述べた。

2010年 9月 

在京地区各社との意見交換会

放送人権委員会は、9月21日の委員会終了後、在京局のBPO連絡責任者との意見交換会を千代田放送会館会議室で開催した。相互理解を深め委員会活動に資する目的で、在京のテレビ、ラジオキー局とNHKから11人、委員会側から9人の委員全員と事務局メンバーが出席した。

堀野委員長は席上、放送倫理と委員会の決定について次のように述べた。
「放送人は、人の心の痛みに対する配慮が基本になければいけないと感じている。放送人に驕りがあってはいけない。放送倫理とは、つき詰めれば、うその放送で人を傷つけてはいけない、表現の仕方で傷つけてはいけないということだ。放送倫理がすべてどこかに書いてあるわけではない。例えば放送倫理基本綱領があるが、あらゆる場面に適用されるような放送倫理はない。聴く人、見る人、取材を受けた人、放送に参加した人たちの心の痛みを思いやる気持ちがあるかどうか、これが放送倫理だと思う。 委員会の決定を受けた局は現場を含めてもっとディスカッションしてほしい。決定のこの点が不満だ、もう少し突っ込んで議論したいといっていただければ、私どもも議論に応じたい」。

この後、事務局から、今後の委員会活動として、毎年開いている各地区別の意見交換会を、今年は北海道の局を対象に12月初めに札幌で開催すること、これまで出された36事案・45件の「委員会決定」を網羅した新しい『判断基準2010』の編集を進めており、11月に発行するので活用してほしいこと等を説明した。
また、本人の知らぬ間に本人の映った映像が放送で流れ、それにより権利侵害を受けた可能性があるので局に放送の視聴を求めたところ断られたとの相談が事務局に寄せられることを紹介し、こういう場合はできるだけ視聴させることが望ましいという委員会の見解が出ている(2001年2月20日)ので、系列局にも伝えてほしい旨要請した。

意見交換では、「委員会決定」を公表する記者会見の場で、当該番組の映像を公開できないかどうかについて意見を出し合った。
局出席者からは「事案を理解してもらうために見てもらった方がいい。各局の合意が必要だが、個人的にはそう思う」、「出さないのが大原則だが、客観的に判断するには見ないと分からないものもある」、「放送目的外の使用には絶対反対だ」、「人権を侵害されたという申立人は、世の中に二度と出してくれるなという気持ちだ」などの意見があった。

委員からは「テレビは見た感覚が大事だ。『委員会決定』の先例を文書で扱うだけでなく、例えば映像ライブラリーにストックして関係者が検証できるようにするなど検討すべきだ」、「年一回程度の研究会でみんなで勉強しようというときに、提供してもらえる映像素材があればいい」等の意見があった。

このほか、委員会審理の進め方や決定文の書き方、各局での決定の周知法などをめぐって意見を交わした。
在京局のBPO連絡責任者との意見交換会は2004年以来で、今回が5回目となったが、約2時間にわたって自由かつ活発な意見交換が行われた。

2009年 12月

九州・沖縄地区各社との意見交換会(開催地:福岡)

12月2日 、福岡市内のホテルにおいて、「放送と人権・放送倫理」をテーマに、放送人権委員会の全委員が出席して、九州・沖縄地区の放送局との意見交換会を行った。
委員会は年に1度、地方ブロック単位で意見交換会を実施しているが、九州ブロックの開催は2002年以来7年ぶり2回目。各局からは、これまでの意見交換会参加者を大幅に上回る31 局 86人が集まった。

局とBPOは”辛口の友人”で

意見交換会では、はじめに堀野紀委員長が基調講演した。
この中で委員長は、「報道・情報番組は真実に切り込む勇気と気概を持って欲しい、また同時に正しい意味での緊張感を持って制作して欲しい。委員会にあがってくる問題を見ると、報道が病気にかかっているのではないかと思う。そうでなくても、放送局が “未病 “、健康でない状況にあると感じる。 報道が病気にかかると国家が介入しようと出てくる ことになる。表現の自由を守り、政治の介入を招かないことが大事であり、番組の正確性と人権に関しては厳しい自覚を持って制作して欲しい。
BPOは局に対し厳しい意見を言うこともあるが、これについてはどんどん局も発言して欲しい。お互いが”辛口の友人”の関係でありたいと思う」と語った。
続いてこの1年間に出された5件の「委員会決定」について事務局からその概要を説明し、「決定」を起草した委員を中心に、そのポイントや問題点などを具体的に紹介した。その中で、この1年間はとくに事案が多く寄せられ、すでに5件の委員会決定が出されたが、 「勧告」という厳しい決定が相次いでおり、放送局側が真剣な対応を迫られているとの説明があった。この後は、現在の放送の抱える問題から、「裏付け取材の必要性」「訂正放送のあり方」「匿名映像の多用」にテーマを絞って、委員と参加者の間で活発な意見交換を行った。

「裏付け取材」=複数の確認を

まず「裏付け取材の必要性」では、今年7月30日、放送倫理検証委員会が勧告を出した、日本テレビ『真相報道バンキシャ!』を例にあげた。勧告では裏付け取材に関して、「募集サイトであれ、電話やメールや手紙によるものであれ、本来視聴者からの情報は、取材調査の入り口に過ぎない。そこをきっかけに、当事者や関係者を直接取材し、裏付けを取り、可能な限り確実な事実を描いて行くことが、制作スタッフの仕事であろう」と厳しく指摘している。
これについては参加局から、「『バンキシャ!』のような取材の し かたは考えられない」「複数人の確認が基本だ」「裏付けのとれないものを報道することへの”怖さ”を大事にすべき」といった声が出された。
また、裏付け取材の不足による問題として、「隣人トラブル」などの放送について事務局から報告した。とかく被害・迷惑を受けたという人からの情報に偏り、相手の話を聞かないまま放送し、その人から「一方的な放送だ」と訴えられるケースが多く、放送人権委員会の33件の事案の内5件もが、こうしたケースだったと説明された。これに対し委員から、「ある問題についての解釈とか評価を行うと、当然のことながら、それとは異なった物の見方、あるいは解釈があり得るはずだ。そのことは局の中でオンエアする前に、 十分議論していただきたい」との注文があった。

「訂正放送」も番組の一部

続いて、『バンキシャ!』やTBS『サンジャポ!』の「保育園事案」でも大きなテーマになった「訂正放送のあり方」について話が移った。両番組とも、誤った内容を報道された当事者から求められて訂正放送を行ったが、「何を誤ったのか、正しくは何だったのか」がよく分からず、「お詫び」としても不足で、結果的に当事者を納得させられていない。
こうしたことから「保育園事案」の決定では「訂正放送の趣旨」として、以下の4条件をあげた。

(1) 視聴者一般に対し、放送の誤りを知らせ、正しい事実を伝える。
(2) 視聴者一般に対し、誤報があったことをお詫びする。

そして、その放送によって被害を受けた者がある場合には、

(3) これらを通じ、当事者に対し、お詫びの気持ちを伝える。
(4) 同時に、当事者が受けた被害(例えば名誉毀損や名誉感情の侵害等)について社会的に回復する効果を生む。

これについて、放送局側に「(3)(4)を条件とされると、当事者とのやりとりがたいへん難しくなる」と心配する声があることから、この決定を起草した委員は、「その当事者に対し、放送外も含め何らかの補償をするとか、直接会いに行ってお詫びをするとか、いろんなことをされるだろう。その中の1つとして、訂正放送を通じて、その当事者の気持ちの回復が図られればよりプラスになる。訂正放送の際には、基本の2条件にプラスして、(3)(4)により、当事者に放送を通じてお詫びの気持ちが伝わり、名誉感情が回復されるならばベストだろうと思う。このことをもう一度局内で話し合って欲しい」と語った。
また、現状の訂正放送のやり方について複数の委員から、「往々にして、番組終了直前に局アナの顔出しだけで放送されることが多い。フリップやVTRなども使って、普通の番組と同じように工夫して出してはどうか」「訂正放送の価値を積極的に捉えるような姿勢も必要」といった提案もあった。

「匿名映像」の多用にブレーキを

最後に、最近インタビューなどの際に 使われている「匿名映像」( 顔無し、モザイクなど)の問題が話し合われた。
過去の「委員会決定」では、「匿名やモザイクの使用は、重要な証人や、重大な事件現場で、被害が及ぶ危険がある時や、関係者の名誉、プライバシー等を著しく侵害する恐れがある場合などでは、必要な方法の1つである」ということを言っている。しかし、「取材不足を補う便法として、これを安易に用いることは、調査報道の本質に反し、ジャーナリズムとしての姿勢が疑問視されかねない」などとも指摘している。
この「匿名映像」が増えている現状についてある委員は、「たとえば公園で子どもがいて、かわいいから撮ろうと思っても、どこかからお母さんが飛んで来て、”撮らないでください!”と言われること をよく経験する。取材される人が顔を出すことを拒否することが多く、モザイクも首なしも、当たり前という現状になっている。これは行くところまで行って、『これじゃあ伝わらない』と皆が気づき、 はじめてやめようということになるのではないか」との認識を語った。
これに対し局側からは、「現場には、何とか説得して顔出しでインタビューをとるよう指示しているが、一般の人の意識も変わって来ていて、なかなか歯止めが効かない」
「『取材対象者との対話・説得には絶対手を抜くな』 というのを 持っておかないといけない」といった声 があった。
さらに委員からは、「放送は公益的なもの、公共的なものである。そういう放送に協力することで、ある種の社会的使命を果たすという認識を被取材者が共有すれば、状況は変わ る 。それが共有されていない現実があること を、作り手側はある程度問題意識として持たなくてはいけない 」「よほど合理的な理由がない限り、個人の名前と顔は、きちんと表に出してメッセージを発すべきものだという理解を、国民的なレベルで持つことが大事で、それを強調するのが、テレビの役目ではないだろうか」といった声が出された。
また「名誉毀損することは普通は違法だが、名誉を毀損する事実を報道しても、その報道に価値があれば許されることが、憲法的価値として認められている。せっかく認められているのに、メディアの側が安易にモザイクや首なしの映像にすることは、事実を事実として流さなくても良いと言っていることにもつながる。だから、『目撃証言では顔を出してもらわないと価値がない』と被取材者に一生懸命説得して欲しい。安易に首なしやモザイクにしたら、『 別に出さなくていいですね』と裁判所も思うことになる。そう なると 永遠に後退する から、 メディアの方にがんばっていただきたい」などと、局に対する激励の言葉が続いた。

2008月 11日

中部地区各社との意見交換会(開催地:名古屋)

11月11日、放送人権委員会委員と中部地区会員各社の報道・制作責任者等との意見交換会が名古屋で開催された。
今回の意見交換会は地方開催としては8回目、東京開催を含めると12回目となる。意見交換会には、中部地区のラジオ、テレビ44社のうち26社が参加し、BPOの連絡責任者のほか報道、制作現場の責任者等これまでの意見交換会では最も多い52名が出席した。放送人権委員会からは、竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員の8名が出席し、また事務局から役員2人を含む9名が参加した。
今回は特に最近の報道、制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題について、具体的なテーマに沿って意見交換を行った。
冒頭、竹田委員長が「放送倫理について」と題する基調講演を行い、続いて上野統括調査役が、最近の放送人権委員会の活動報告を行った。
この後、今回のテーマのひとつである「隠し撮り」の問題に入り、局の参加者からは、「隠しカメラは原則として使用してはならないとあるが、重大事件における強制捜査の前の、被疑者の映像取材を行うことはよくあるし、また最近の『振り込め詐欺事件』など対象に接近していかないと、実態を描けないものまで原則として使用すべきでないと言うことなのか」との質問があった。これに対し、堀野委員長代行は、「一般にえげつないとされている取材方法について、その取材によっていかなる真実が明らかにされ、その真実が社会的にどの程度重要な問題であるか、公共性、公益性においてどれだけ明らかにする必要があるかなどとの相関関係で考慮していくべき」との考えを示した。
次に「匿名映像」のテーマに移り、インタビューで、首から下の映像や、顔にボカシをかけた映像が増えていることについて意見を交わした。委員からは、「人権への配慮でそうしなくてはならないケースがあることは分かるが、極力顔を出して話してもらわないと、証言の信頼性を損なう」などと改善を求める意見が出された。これに対し局側からは「匿名映像は、事故関係ではあまりないが、学校関係の不祥事などではよくある」、「顔出し映像によるその後のトラブルを避けたいという意識が進んでいるのでは」、「できるだけ顔出しでの放送をと心がけているが、取材現場では顔出しでは応じてもらえないことがあり、放送までの時間的制約もあって匿名映像となることもある」などの報告が出された。また撮影後に、「顔を出して放送しても良いですか?」と局の人間が確認するケースもあるという声もあった。

2008月 10日

テレビ局の現場視察と意見交換会(訪問局:TBS)

放送人権委員会では10月14日、TBSの夕方の報道番組「イブニング5」(16:52~18:55放送)の放送現場や報道局内を視察するとともに、番組終了後、委員と番組スタッフとの意見交換会を行った。
委員9名のうち8名が参加し、生放送中のスタジオ、報道セクション、編集ルーム等を見学・視察したあと、放送を終えたばかりの「イブニング5」キャスター三雲孝江さん、コメンテイター杉尾秀哉さん、番組制作スタッフとの間で意見交換の場を持った。
意見交換会では、放送倫理や人権に関わる問題などが活発に話し合われたが、中でも、最近インタビューなどで、いわゆる匿名映像(顔なしやぼかしなど)が多い点について局側から、「取材される側がそうした要望を出すことが多く、これに対し、取材者が粘り強く交渉しないまま妥協してしまっている面もある。何とかしなくてはいけないがジレンマを感じている」との声もあった。

2007年 12月

『放送人権委員会10周年フォーラム』(開催地:東京)

放送人権委員会は、1997年5月の委員会発足から丸10年を記念して「放送と人権~放送倫理の確立を目指して」をテーマに、『放送人権委員会10周年フォーラム』を12月5日、東京・千代田区の全国都市会館で開催した。全国の民放・NHKの放送関係者を中心に約250人が集まった。
第1部は竹田稔委員長による基調講演「放送による人格権侵害と放送倫理」。
竹田委員長は、特に表現の自由と名誉権やプライバシー侵害との調整について、「その報道が公共の利害に係り、公益を図る目的でなされ、報道された事実が真実であると証明されるか、もしくは真実と信ずるについて相当の理由がある場合は故意・過失はなく、不法行為は成立しない」とした昭和41年の最高裁判決が、表現の自由と人格権侵害の調整の法理として指導的に機能してきており、その意義は大きいと述べた。そのうえで、「放送はいまや国民にとって最も身近なメディアであり、その社会的影響力は極めて大きい。放送事業者は民主主義社会の基盤である表現の自由の担い手として、自ら社会的責任を全うするため、放送のあり方を問われている」と述べ、関係者の自覚を強く促した。
第2部は、「放送は市民を傷つけていないか」「取材・編集・OAに当たっての放送倫理」というテーマでのパネルディスカッション。読売新聞編集委員で長らく放送を担当している鈴木嘉一さん、ジャーナリスト江川紹子さん、NHK及び在京民放テレビの関係者らがパネリストとして出席し、放送人権委員会の三宅弘委員をコーディネーターに活発な意見交換を行った。
討議では、隠しカメラ・隠しマイクによる隠し撮りと、モザイクや顔なしインタビューの多用が大きな話題となった。この内、隠しカメラ・隠しマイクについては、原則的には使用すべきでないとしながらも、毎日新聞の「旧石器発掘捏造報道」や、大阪MBSによる「大阪市役所のカラ残業報道」のように、隠し撮りの効用を評価する声も多かった。そして、隠し撮りが不可欠なケースもあるのだから、「一切ダメ」というのではなく、取材をした上で、それをどう出すかをしっかり考えるなどフォローが重要だとする意見もあった。
また、最近は、事件や事故現場でのインタビューでも、モザイクや顔のない映像が多用されていることが問題となった。放送人権委員会は過去の事案で、対象者が被害を受ける可能性のある場合などは必要な手法の一つだが、安易な使用は報道の真実性を疑われることになり、原則としては避けるべきであるとする判断を示してきた。これについて、パネリストの間から「取材する側もされる側も安易にこの手法を受け入れており、いわば覚えてしまった状況にある」と現状を指摘する声があった。そして、NHKの「ワーキングプア」のように、顔出しの放送に結びつける取材者の努力が改めて求められるとの結論となった。

2006年 11月

関西地区各社との意見交換会(開催地:大阪)

11月28日、放送人権委員会委員と近畿地区会員各社のBPO連絡責任者等との意見交換会が大阪で開かれた。今回の意見交換会は地方開催としては7回目で、東京での開催を含めると11回目となる。
「意見交換会」には、近畿地区のテレビ、ラジオ局12局からBPOの連絡責任者、あるいは報道・制作現場の責任者等、これまでの意見交換会では最も多い40名が参加した。一方放送人権委員会側からは、竹田稔委員長、堀野紀、五代利矢子両委員長代行、右崎正博委員、中沢けい委員、三宅弘委員の6名と事務局から6名が出席し、最近の制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題等について意見を交わした。
冒頭、竹田委員長から、10年間近くにわたってこれまで果たしてきた放送人権委員会の役割と今後の課題について基調報告があった。この中で竹田委員長は、「見解」、「勧告」を受けた後の当該局の対応について「これまでの対応は、満足出来るものであったが、一方で何度も審理対象になっている局があることも事実である。今後一層どのように改善策をとったら良いか、各局で考えて実行していって欲しい」と述べた。また放送人権委員会事務局からは、最近の苦情傾向として「メディアスクラム状況に対する抗議」や「モザイクがかけられていたが地域社会ではすぐに特定された」「隠しカメラで無断撮影された」等の苦情が増えているとの報告があった。
この後、意見交換に移り、まず委員会決定を受けた当該局から、その後の対応等について報告があった。その中で局側の担当者は「隠しカメラ、マイクの運用面について現実の問題としてどのように考えていったら良いか、頭を悩ましている」と実情を述べた。これに対し委員からは「隠しカメラ、マイクは原則として使用すべきではない。場合によって公共性、公益性との比較衡量上例外的に認められるというものではないか」との説明があった。
最後に放送局側から、放送人権委員会の審理と裁判との関係について、「これまで放送人権委員会で審理した後、裁判になる事例がある。止むを得ないと思うが、なにか腑に落ちない。歯止め的なものはないのか」との質問があった。これについて竹田委員長は、「裁判制度と放送人権委員会の制度自体が存在基盤を異にするものであり、運営規則第5条の『裁判で係争中の事案は取り扱わない』との規定が、今のところ放送人権委員会として出来る限度だ。放送局側の言わんとすることは重々わかるが、放送人権委員会の存在意義を理解して頂き、協力をお願いしたい」と述べ、大阪での意見交換会を終えた。

2005年 11月

東北地区各社との意見交換会(開催地:仙台)

放送人権委員会委員と東北地区会員各社のBPO連絡責任者等との意見交換会が11月29日、仙台で開催された。今回の意見交換会は、大阪、名古屋、福岡、札幌、中・四国地区に次いで地方での開催としては6回目、東京での開催を含めると10回目となる。
意見交換会には、東北地区のテレビ・ラジオ局18局(NHKは仙台局と東京から出席)から、BPOの連絡責任者、あるいは制作現場の責任者等32名が参加した。一方放送人権委員会側からは、飽戸弘委員長、竹田稔・堀野紀両委員長代行、五代利矢子・右崎正博・中沢けい・渡邊真次各委員と事務局が出席し、昨今の制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題等について意見を交わした。
冒頭、飽戸委員長から、これまで9年間に亘って放送人権委員会が果たしてきた役割と、放送人権委員会が抱える課題について基調報告があった。この中で飽戸委員長は、特に放送局への期待として、「放送人権委員会は報道の自由を守る機関であって、その放送人権委員会の決定をきっかけに反省と改革の出発点としてもらいたい」と強調した。
続いて、「放送人権委員会判断基準2005」の発刊について、監修をつとめた右崎委員が内容と利用方法について説明し、「放送局の皆さんにはこの『判断基準2005』を人権問題に関する重要指針として受けとめて頂きたい」と述べた。また放送人権委員会事務局からは、最近の苦情傾向として、「幼児、児童、学園内の取材と撮影に関する保護者からの抗議」や「性的少数者や難病患者の扱いに対する苦情」、「警察発表に基づく報道への抗議及び訂正要求」等が増えてきているとの報告があった。
この後、意見交換に移り、放送局側から、「福知山線の脱線事故でみられたように、個人情報に関連して取材側と取材される側とが実名公表をめぐってもろにぶつかった場面が見られたが、このような場合、報道現場ではどのように対応していったらいいか」という質問があった。
放送人権委員会委員側からは、「基本的には実名報道が望ましいが、事故報道の場合、被害者あるいは家族の心の痛みに配慮した報道も必要ではないか」、「事件事故によって被害を受けている人が報道によって更に被害を受けることは避ける必要があるが、現在は警察まで実名を発表しなくなってきているように行き過ぎた状態になっている。このような中、報道する側はどこにポイントを置いて報道するのか考える必要がある」等と答えた。
最後に、委員から放送局側に対して「テレビが大きい力を持っていることを自覚するとともに、放送される側への思いやりを持って欲しい。放送のプロとして自覚と誇りを持ってがんばってもらいたい」との激励の言葉があり、仙台での意見交換会を終えた。

2003年度 解決事案

「白装束集団とは無関係」との苦情

情報番組に対して、宗教法人「GLA」から苦情申立てがありました。内容は、「白装束集団に関して報道した際に、白装束集団の代表者がかつてGLAに所属していたなどと報道したが、そのような事実は全くない。GLAが白装束集団と根本において同一であるかのごとき印象を与えるのは、まことに迷惑であり、事実無根の報道に対して訂正・謝罪を求める」というものです。
これに対して当該局は、「放送中にGLAから訂正要求の電話があったが、事実に間違いはない」としています。双方に話し合いを求めた結果、当該局から、「GLAの広報担当者と話し合った結果、白装束集団の代表者が、過去にGLAにいたことが事実だとしても、現在は何の関係もなく、今後この問題を取り上げる際には十分注意することを約束し解決した」との連絡があり、事務局でGLA側にもこの旨を確認し解決しました。

(2003.05.03.放送、05.09解決)

「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との苦情

岐阜県の建築業者から苦情申立てがありました。内容は、「悪質リフォーム業者の特集番組の中で、自分の父親がリフォームした家が『欠陥住宅』として取り上げられた。放送に当たって当方への取材は全くなく、相手方の主張だけで番組が作られてしまった。番組を放送した局に抗議したところ、制作したのは東京のキー局だと言われ、制作局に抗議したが、『欠陥住宅だから放送しただけ』との回答であった。この放送で父は「悪質業者」の烙印を押されてしまい、仕事にも支障をきたしている」というものでした。
当該局との話し合いがほとんど行われていないため、事務局から当該局に苦情の趣旨を伝え、対応を要請しました。
当該局プロデューサーが苦情申立人に、放送内容と放送意図をあらためて説明、遺憾の意を表明し、今後、当該番組で、同じ映像を使用しないなどで合意しました。

(2003.05.26放送、07.02解決)

「ドラマの台詞で、ショートステイを”姨捨山”に喩えた」との苦情

栃木県の男性(53)から苦情申立てがありました。内容は、「ドラマの台詞で、介護を受けている老人が刑事からアリバイを問われて、『おれは、ショートステイ(老人ホーム)という姨捨山にいた』という表現があったが、これは差別ではないか。当該局に抗議したが『問題ない』とのこと。なんとかならないものか」というものです。
事務局が当該局に苦情の趣旨などを伝えたところ、後日苦情申立人から、「担当プロデューサーとの話し合いで、その台詞の部分は事実上再放送しないなど納得できる回答があった」との連絡があり解決しました。

(2003.06.24放送、07.03解決)

「写真が無断で使用された」との苦情

大阪の男性からの苦情で、「6月に放送された、精神障害者の社会復帰を目指す番組の中で、仲間と一緒に私が写っている8年前の写真が断りもなく使われた。その後仲間とは、立場や考えが変わり、一緒の写真を使われて非常に迷惑している」というものです。
当方から、当該局に苦情の趣旨を記した文書送る一方、苦情申立て人の相談に応えて、放送局側との話し合いを勧めました。その結果、局側が、無断での写真使用を陳謝する謝罪文を出し、決着しました。

(2003.06.07放送、08.29解決)

「話の内容をねじ曲げられた」との苦情

神奈川の女性から、「情報番組のインタビューに応えて、娘とのトラブルを話したところ、話の内容を再現映像でねじ曲げて放送され、私自身も悪者扱いされた。放送での謝罪や訂正を求めたい」との苦情がありました。
当該局に「苦情連絡票」を送り、対応を求めた結果、番組担当者との話し合いで苦情を申し出ていた女性は、「怒りも収まった」ということで、決着しました。
今年度5件目の斡旋解決です。

(2003.10.23放送、11.11解決)

「一方的な取材で・ドクハラ・として放送された」との苦情

精神科医(苦情申立人の代理人)から報道番組への苦情で、「精神科医がドクター・ハラスメントで取り上げられた。患者からの一方的な取材によるもので、当該放送局に抗議をしたが、納得できる回答は得られていない」というもの。
上記代理人から、放送人権委員会に「斡旋」をお願いしたいとの申入れがあったので、当方が当該局にその旨「苦情連絡票」を送付。話し合いが2度ほど行われ、その結果「精神科医療特有の治療の難しさを理解するためにも、今後も懇談の機会を設ける」ことで双方合意した。

(2003.5.20放送、12.1解決)

「自分は欠陥住宅とは判断していない」との苦情

大阪の男性から情報番組への苦情で、「11月の初め、プロダクションのディレクターとの打ち合わせで、報道番組で欠陥住宅の論評をし、警鐘を鳴らしてもらいたいということだったので、番組に出演した。当該局の担当者は立ち会っておらず、当初の話と違うので、収録部分の削除などを要求したが、連絡もなくそのまま放送された。住宅の検査結果には法的なミスはなかったにもかかわらず、放送では欠陥まみれと言われ、私にも多数の電話があり迷惑している。当該局に抗議したところ、『時間的余裕がなく削除できなかった』というFaxが来た。訂正を求めたい」というもの。
当方が、当該局に話し合い解決を求めたところ、当該局のプロデューサーが、苦情申立人を訪ね(大阪)話し合い、「欠陥住宅」についての認識に差異があり、事前にその溝を埋めておくべきだったことを双方が確認、当該局が、今後、同様の企画の際に協力要請をすることを約束して解決しました。

(2003.12.1放送、04.2.12解決)

2002年度 解決事案

「娘を暴行被害者と誤認報道」母親からの苦情

「強盗傷害事件の被告に対する論告求刑(懲役12年)を伝えたニュースの中で、自分の娘が暴行事件の被害者であるかのように放送された。このような報道で、また、娘や家族が大きなショックを受けている」との苦情。
当該放送局は訂正放送を実施したが、母親の了解を得られず話し合いが続けられた。2002年6月になって、今後、被害者の立場、気持ちに最大限配慮した報道をすることを約束する合意書を交わし解決した。(山梨)

(2001.11.08 放送、2002.06.05 解決)

バラエティー番組出演者から 放送中止の訴え

「美容整形をテーマにしたバラエティー番組に、パニック症候群で通院している娘が出演することになったが、番組の予告を見て娘の病気への影響が心配になった。放送を中止してほしい」という両親からの訴えがあった。番組責任者と本人、両親が話し合った結果、放送局側が、本人や家族の気持ちを配慮して出演部分を全面的にカットすることを決め、解決した。(東京)

(2002.06.28 放送予定、06.26 解決)

「約束無視の放送」と情報番組に苦情

営業担当の会社員から「仕事を終えてからゲームセンターで遊んでいるところを撮影され、『顔は出さない』との約束を無視して放送された。自分は放送を見ていないが、得意先などで『放送に出ていた』などと言われ、仕事をサボって遊んでいるかのように受け取られ迷惑している」との苦情があった。本人が放送テープを確認したところ、本人が考えていたほどの明確な映像でなかったこと、局側が改めて迷惑をかけたことを謝罪する文書を出すことで解決した。(大阪)

(2002.04.26 放送、07.05 解決)

「不登校児ドキュメント」保護者からの苦情

「不登校になった小学校5年の娘が通っているフリースクールを取材したドキュメンタリー番組が放送された。スクール側は生徒の実名、顔などは出さないよう要求したが、放送では自分の娘だけが何の映像処理もされずに、悪いイメージで放送された。このため放送後、子供は登校しなくなってしまった」との苦情が保護者からあった。保護者と放送局の責任者が会い、局側が家族を傷つけたことを謝罪、今後、不登校問題を番組で継続的に取り上げて行くことを約束し解決した。(大阪)

(2002.05.31 放送、07.12 解決)

「レズビアンは怖い」発言でトーク番組に苦情

「男女のタレントが司会するトーク番組で、女性が”最近、私にレズ説があるの。女の子に誘われて行ったら、大変怖い思いをした”と発言、それを受けて男性が”怖いなー、そんな人おるで、この頃。ちょっと隠さなあかんのとちゃうの、あんなん”とレズを冒涜する発言をした」との苦情があった。当該局に連絡し対応を要請した結果、1月10日に当該局から、「性的マイノリティーの人権、心情に配慮が足りなかったことを認め、再放送に当たっては不適切な部分を削除することを約束し解決した」との報告があった。(大阪)

(2002.12.20 放送、2003.01.10 解決)

「バラエティー番組でプライバシーの侵害」との苦情

「6~7年前に19歳の息子が交通事故で死亡した。死んだ息子の恋人が、バラエティー番組の霊能企画に出演し、息子の写真、墓などの映像を映しながら、息子との関係、現在の気持ちなどを話した。この中で霊能者が『交通事故で死亡したのは親の愛情が足りなかったからだ』などと無責任なことを話した。この放送に妻が怒り、テレビ局に抗議した。放送に当たって放送局から何の連絡もなく家族のプライバシーが侵害された」との苦情があった。当該局に連絡し対応を要請した結果、2月5日に当該局から、「1月に同じ番組で謝罪放送を行い解決した」との連絡があった。

(2002.11.27 放送、2003.02.05 解決)

「トークバラエティー番組で名誉毀損」との苦情

「番組で作家募集をしていたので応募した。オーディションを受けて、自宅などを撮影された上で、11月28日に放送された。この放送はひどいもので、私の顔と部屋が映し出される中(3分)で、応募した短編の説明をしだすと、司会者らが”おたくだ””危ない”などと連呼し、自分を笑いものにした。当該テレビ局の担当者に会って抗議したが、司会者らの謝罪には応じられないということだった。作品を読んだ感想もなく、番組の中でただ袋叩きにされたようなもので、これは個人に対する中傷、侮辱であり人権侵害である」との苦情があった。
当該局に連絡し対応を要請、当事者間の話し合いが行われた結果、2月初めに当該局から「謝罪放送を実施し解決した」との連絡があった。(札幌)

(2002.11.27 放送、2003.02.05 解決)

「無断撮影・放送で名誉毀損」の苦情

昨年8月24日に放送された在阪テレビ局のバラエティー番組に対する大阪の主婦からの抗議は、今年3月に当該局が謝罪放送を実施し解決しました。
抗議の内容は「スーパーで買い物をして出てきたところを、女性アナウンサーに声をかけられたが、急いでいたので断った。このとき撮られた映像が、断りもなくバラエティー番組で放送され、『大阪のおばちゃんはこんなに怒っている』という音声とともに、アップにした顔に”怒りマーク”が付けられていた。放送局に抗議したところ、局は今年1月の検証番組で一方的に謝罪放送を行ったが、自分としては同じ番組での謝罪を要求しており納得できない」というものでした。
事務局から当該局に苦情の趣旨を伝え対応を要請した結果、この3月に当該番組で謝罪放送が行われ解決しました。今年度8件目の斡旋解決事案になりました。

(2002.08.24 放送、2003.03.25 解決)

2005年 3月

中国・四国地区各社との意見交換会(開催地:広島)

放送人権委員会委員と中国・四国地区の放送局のBPO連絡責任者等との意見交換会が3月7日、広島市で開催された。地方での開催は、大阪、名古屋、福岡、札幌に続いて5回目で、東京を含めると9回目となる。
意見交換会には、両地区のラジオ・テレビ22放送局(民放20局、NHKは広島と東京)から、BPO登録代表者や連絡責任者ら32人が参加。飽戸弘委員長、竹田稔・堀野紀両委員長代行のほか、右崎正博、五代利矢子、中沢けい、渡邊眞次の各委員、それに事務局が出席して、報道・制作現場が抱える人権や放送倫理上の課題について意見交換した。
冒頭のスピーチで飽戸委員長は、最近のテレビメディアを巡る社会環境の変化を具体的に指摘した上で、「今こそ、放送局側が”自主・自律”を成功させなければならない。放送人権委員会は、そのための”報道の自由を守る機関”である」と強調した。
この後、放送人権委員会事務局から最近の苦情の傾向として、「顔出しやモザイクを巡る人権侵害の訴え」や「取材不足や構成・演出・編集によって事実を歪曲されたとの抗議」、「児童施設等の取材・撮影に関する保護者からの抗議」が増えていることなどを報告し、これを受けて参加者との意見交換に入った。
意見交換ではまず、広島県のテレビ局から、「女子高生殺人事件で集団的過熱取材を避けるため、地元の編集責任者会議で協議したが、代表取材で真実追求ができるのか」などの悩みや苛立ちが報告された。また、愛媛県のテレビ局から、「キー局に素材送りした映像が不適切な編集によりネット放送され、地元市民から慰謝料を要求されたトラブルでの苦情対応の難しさ」が紹介されるなど、具体的事例に沿って委員との間で活発な質疑応答が行われた。
さらに委員側から、「真実でない放送によって権利を侵害された場合の放送法に基づく訂正放送請求権は私法上の権利とは認められない、とする最高裁判決があった。これにより今後、放送局は、放送法上の訂正放送をするか否か、自律的・自主的に対応することが求められることになり、その責任はますます重くなった」との指摘があった。
最後に、飽戸委員長ら各委員が、「現場の人たちから、具体例を挙げて取材・報道上の悩みや苦情対応の難しさに関する話が聞けて、大いに参考になった。
また、参加各局には放送人権委員会の機能・役割をより理解してもらえたと思う」と感想を述べた。

2003年3月

『らいむいろ戦奇譚』サンテレビジョン

『らいむいろ戦奇譚』に関するサンテレビジョンからの回答

意見の要旨

2003年3月17日

(株)サンテレビジョン
青少年委員会連絡責任者 様

「アニメ らいむいろ戦奇譚」について再度のお尋ね

「アニメ らいむいろ戦奇譚」について、貴社の見解をお送りいただきありがとうございました。貴社の見解は、3月12日に開かれた「放送と青少年に関する委員会」で、ご報告しました。

多くの委員から「番組が3月で終了するにしても、他局が深夜の時間帯に放送しているのに、サンテレビジョンだけは、午後6時に放送しているが、この理由を当該放送局にぜひ聞いてほしい」という結論となりました。

お忙しいところ誠に恐縮ですが、当委員会の疑問について、次回の委員会(4月9日)までにご回答をいただきたくお願い申し上げます。

放送番組向上協議会
青少年委員会事務局

局の回答

まずは先の見解で充分なご説明ができなかったことをお詫びいたします。

あらためまして「他局が深夜放送しているのに、サンテレビジョンだけは、午後6時に放送している」経過、理由についてご報告いたします。

当該番組は、昨年秋、代理店を通じて、当社東京支社を経由し、1月から放送希望が伝えられました。企画書などの内容を勘案し、深夜帯での放送が適当であろうという判断を編成はしました。しかし、この時点では1月以降の編成作業は既に終了し、深夜に放送枠はありませんでした。一旦はスタート時期を変更するなど、深夜帯に放送枠が設定できるまで放送を見合わせるという検討もしましたが、営業から強い要請に応じるかたちで、午後6時台での放送に至ってしまいました。その結果として、貴委員会へ寄せられたご意見のような反響を呼び、視聴者に配慮を欠く結果となってしまいました。

今後は、視聴者の生活時間帯と青少年への影響を配慮し、当然のことながら番組編成にあたっては、その内容と放送時間帯について充分検討した上で決定し、二度とこのようなことがないようにしていきたいと考えています。

以上

2003年1月

『機動戦士ガンダムSEED』毎日放送

『機動戦士ガンダムSEED』に関する毎日放送からの回答

意見の要旨

  • 番組中、未成年者の性行為を思わせる描写があった。行為自体はないものの、密室で女の子が裸体にシーツをまとっているシーン。キャラクターの設定が15歳という点も問題だし、夕方の時間帯に子ども向けに放送するものとしては不適切だったのではないか。

    (男性 20歳 東京 1/20メール受)

  • 夕方6時という放送時間にもかかわらず過度な性描写があり、家族で見ていて気まずい思いをした人も多いのではないか。仮にあの描写(性行為後の様子)が物語の展開上必要なものであったとしても、ああもダイレクトな絵を見せることなくそのことをにおわせるような表現はできたはずではないか。激しい憤りと落胆を覚えた。あくまで子どもの見る番組であるということを忘れてほしくない。

    (男性 22歳 東京 1/20メール受)

  • 子どもの見る時間帯の子どもの見る番組に性行為を連想させるシーンを入れるのはどうかと思う。しかもその表現は、目的を達成するためなら愛情なき体の関係を容認しているようにとれ、子どもの援助交際を後押ししかねない。このようなシーンを放映した局の見解を聞きたい。

    (男性 32歳 茨城 1/20メール受)

局の回答

ご指摘のシーンは、敵の攻撃を受けた主人公の少年キラ・ヤマトが反撃のために戦闘態勢に入るというシーンで、キラと15歳の少女フレイ・アルスターの2人が関係を持ったことを暗示する映像になっています。放送のなかで、父親を目の前で敵に殺されたフレイは、復讐するために、戦いの無意味さに悩むキラを何とか敵との戦いに向かわせようとしますが、その過程で、フレイの中で大切なものがどんどんと壊れていくようすを描きました。このように、フレイは「戦争が人々を破壊していく極限状況のもとでは、人は如何にもろい存在なのか」ということを表現するのに必要なキャラクターであります。

今回のシリーズに制作者が込めた思いは、「戦争そのものがいけないんだ。戦うことがいかに不毛で虚しいか」ということであります。そして、番組をご覧の若い世代の人たちが登場人物に対して痛みを感じてもらうことで、「戦争は対岸の火事なんかではない」、「差別や憎しみが対立を生み出し、終いには戦争という異常な事態にまで発展してしまうことの悲惨さ」を伝えたいと思っています。

とはいえ、このような制作側の意図は別にして、今回視聴者の皆様から寄せられた「フレイの行動を表現するにあたっては、もっと映像に配慮があってしかるべきではないか」というご意見につきましては、まさにご指摘どおりであります。

今後は、低年齢の多くのこどもたちがテレビの前にいる時間帯の放送であることを十分念頭において、ご意見を、これからのストーリー展開に反映させる とともに、映像に関しての充分な配慮をする考えです。

最後に、制作意図を視聴者の皆様にきちんと汲み取っていただけるように、今後作画などに鋭意努力していく所存なので、何卒ご理解くださいますようお願いいたします。

以上

2003年2月

『らいむいろ戦奇譚』サンテレビジョン

『らいむいろ戦奇譚』に関するサンテレビジョンからの回答

意見の要旨

  • 18禁のゲームソフトを題材にした過激なアニメを放送していいのか。局の姿勢に疑問を感じる。

    (男性 22歳 大阪 1/29メール受)

  • 夕方の時間帯のアニメなのに、全裸の少女が出てきたり、キスやセックスを思わせるような行為までする。もともと18禁のゲームソフトが原作のアニメであるし、深夜ならともかく、18時からの放送にはふさわしくない。

    (男性 21歳 大阪 1/14メール受)

  • 18禁のゲームソフトが元となっているアニメ。他局では深夜枠で放送されているのに、週末の夕方に放送するのはおかしい。時間帯に配慮すべきだ。

    (男性 20歳 大阪  1/7メール受)

局の回答

この番組は、今年1月から放送しています。寄せられたご意見を真摯に受け止めるとともに、同番組の放送を3月末で終了する予定です。

今後も、視聴者の生活時間帯と青少年への影響に配慮し、番組編成にあたってはその内容と放送時間帯について充分検討していきたいと考えています。

以上

2002年12月

『とんでるワイド大田黒浩一のきょうも元気!』熊本放送

『とんでるワイド大田黒浩一のきょうも元気!』に関する熊本放送からの回答

意見の要旨

上記ラジオ番組の1コーナー“よかばいばなし”に対して、2002年12月20日に、男性視聴者から「あまりに性的過ぎる」という主旨の意見が寄せられました。委員会から特に回答を求めたわけではありませんが、その件について、熊本放送の番組担当者から見解が届きましたので掲載します。

局の回答

このご意見について、熊本放送としての見解を述べさせて頂きます。

ご指摘の件は、タレントの大田黒浩一と局の女性アナウンサー(社員)で進行している、朝の生ワイド番組で、月曜日から金曜日まで、「お笑い丼」として放送しているコーナーのうち火曜、水曜、木曜の週3回放送している「よかばいばなし」の部分です。

このコーナーは夫婦間、もしくは夫婦が若かった頃の性生活が話題の中心となっており、聴取者から寄せられたFAX、手紙、ハガキ、メールを素材としています。当然注意しなければならない内容だけに、事前に担当ディレクターが充分にチェックしています。また、相方としての局の女性アナウンサーもチェック機能の役目を充分に果たしています。また、大田黒浩一は地元で1、2位を争う名パーソナリティで、自らも劇団(肥後にわか的劇団)を主宰、話術にも長けており、さりげなく、明るく、そして品を落とさず、不快感を与えないようなしゃべりで進行しています。さらに、放送時間帯は子どもが在宅していない午前11時ごろで、春、夏、冬の各休み期間と祝日には休止、内容を変更して放送しており青少年に対しては充分に配慮しています。

番組が、当ラジオの看板番組で、その中の一番の名物コーナーでもあり、女性リスナーからも、厭味がなく面白いと評価を受けていると自負しています。

従いまして、チェックは更に厳しくしますが、このコーナーは継続してまいります。

(2003年1月20日 株式会社熊本放送)

2002年11月

『緊急指令!これマジ!世界のふしぎと戦うぞスペシャル!』テレビ朝日

『緊急指令!これマジ!世界のふしぎと戦うぞスペシャル!』(10月12日放送)に関するテレビ朝日からの回答

意見の要旨

  • 月面着陸の疑惑を放送していたが、科学的な検証がまったくなく、反論できる人が一人も出演しておらず、いたずらに誤解させるような内容だった。多角的に情報を紹介する、という放送の原則に反しているのでは。

    (男性 49歳 東京 10/15メール受)

  • 衝撃的な取り扱いは科学に疎い人間や子どもを信じさせるに十分な内容だった。文科省や大学機関のHPでは疑惑を科学的に解明しているにも関わらず、そのことに少しも触れないのはおかしい。

    (女性 39歳 静岡 10/15メール受)

  • 子どもの見る時間帯の番組なのだから、うわさはうわさ、という前提をきちんと説明しないと、混乱を招く。

    (女性 53歳 石川 10/4ファクス受)

局の回答

『これマジ!?』という番組は、世の中のありとあらゆる不思議ネタを紹介するという狙いの番組です。今回、指摘されている企画内容も、もともと、「人類は月に降り立ったのか?」というタイトルのテレビ番組がアメリカで放送され、話題になりましたものを今年1月に、『これマジ!?』が紹介したのが発端です。この話題はイギリスにも広がり、同様の番組が、「月で何が起こったのか?」というタイトルで放送されました。

『これマジ!?』では、これら「アポロ疑惑」について制作されたアメリカとイギリスのテレビ番組を翻訳・再編集し、過去3回に分けて紹介する形をとってきました。しかし、今回の放送では、私たちがこれまで抱いてきた疑問に対して、初めて、アポロ元宇宙飛行士に反論を聞きに行くと言う番組初の検証を試みました。結果的には、アポロ16号元宇宙飛行士チャールズ・デューク氏とアポロ11号元宇宙飛行士バズ・オールドリン氏の2人のインタビューがとれ、それぞれの見解を番組で放送いたしました。

過去3回の放送が、海外のテレビ局が制作した番組を紹介し「あなたはこの番組を見てどう思いますか?」という問いかけだったのに対して、今回は、元宇宙飛行士のインタビューを入れることで、一歩踏み込んだ形で、あらためて視聴者に問いかけた放送内容になっています。

このVTRを見終わった後のスタジオでは、ゲストの黒沢年雄さんは「アポロは月面着陸していないと思う」という意見。実際に元宇宙飛行士のところにインタビューに行ったデヴィ夫人は、「アポロは月面着陸に成功していると思う」という意見を述べています。そして、最後は、デヴィ夫人がMCや他のゲストたちに「月の土地」をプレゼントすることで、いつか自分の目で確かめに行ってくださいという締めくくりになっています。

以上、番組では、視聴者の方からいただきましたご意見にあるような、「アポロ月面着陸疑惑」の一方的な情報紹介をしたつもりはありません。元宇宙飛行士のインタビューを入れることで、疑惑に対する反論も盛り込んだつもりです。また、スタジオでの出演者の意見も肯定・否定の双方を取り上げると同じに、番組的な結論までは出していません。しかし、視聴者からのご意見にありましたような、文部省や大学機関のHPまで紹介しなかったのは、番組の構成上の問題です。

今後、『これマジ!?』は、レギュラーでの放送はなく、年に1~2回の特別番組として放送される可能性はあります。ただし、「アポロ疑惑」について放送するかは未定ですが、今回いただきました視聴者からのご意見を真摯に受けとめ、今後の番組制作に生かしていきたいと思います。

2003年3月

『ハロー!モーニング。』テレビ東京

『ハロー!モーニング。』に関するテレビ東京からの回答

意見の要旨

  • 普段の番組内容は子ども向けにできていて楽しく見ている。しかし、2月23日の放送で、モーニング娘。の新メンバーが、DVD撮影をしている映像が流れてびっくりした。まだ中学生の少女たちが、水着やブルマーを着て床に寝転ぶ様子が生々しく映されていたからだ。世間では水着やブルマーは“イヤらしいもの”の対象になっているし、現在学校教育の場ではブルマーは使用されていない。見ているほうも不快だし、出演している少女たちもかわいそうだ。

    (女性 東京)

  • 中学1~2年生の女の子にブルマーなどはかせてマット運動をさせるなど、露骨な性的とも取れる描写が目に余った。セクハラではないのか。ファン層や放送時間帯を考えると、幼い子どもも多く見ていると思われる。それなのに、あの放送内容はあまりに配慮が足りない。

    (女性 17歳 東京)

  • ビデオ・DVDの撮影の様子を紹介するのを見て不快に思った。文句が言えない新人のアイドルの子にブルマーや水着を着せ、マット運動などをさせる。なぜそんな必要があるのか。あのようないかがわしい映像をテレビで流さないでほしい。まるで児童ポルノのようだ。今時ブルマーなど、風俗関係の人しかはいていないではないか。

    (女性 26歳 東京)

など、主に20・30代の女性から意見が寄せられています。

局の回答

『ハロー!モーニング。』は、モーニング娘。のメンバーを中心とした若いアイドルたちが、歌・踊り・コント・ゲームなどを繰り広げ、日曜昼に若者たちを中心に楽しんでもらうバラエティー番組です。あふれる若さと、さわやかさを多くの若者に感じてもらおうというコンセプトで制作しています。

番組内のモーニング娘。新メンバーの「DVD撮影」の模様の中で、「水着姿」「ブルマー姿」のシーンがありましたが、決して興味本位なものではないと考えます。視聴者の方から「水着・ブルマー姿」に対してご批判を受けましたが、映像内容はむしろ健康的な姿を描いており、「いやらしさ」を感じさせるものではありません。

しかし、放送と青少年に関する委員会に批判が寄せられたことは真摯に受け止め、今後も番組内容、映像表現には細心の注意を払っていく所存です。

また、制作スタッフも常に議論を重ね、十代のアイドルが出演するという性格もあり、映像表現が青少年に与える影響を念頭におきながら制作しています。今回の視聴者からのご指摘を受け、制作スタッフもより一層、視聴者、特に児童・青少年とテレビ表現に関して考えて参りたいと存じます。

以上

2003年8月

『27時間テレビみんなのうた』フジテレビ

『27時間テレビみんなのうた』(6月28日・29日放送)に関するフジテレビからの回答

意見の要旨

  • タレントが酒を飲みすぎて、本番中に男性器を晒してしまうという椿事があった。彼は飲むとそのクセありと評判の人らしく、それを知っている共演者やスタッフが酒を飲ませて煽り、やらせたのではないかと思う。番組演出上の悪乗りはほどほどにすべきだ。

    (男性 20歳 東京)

  • 酔っ払ったタレントが下半身を丸出しにするというハプニングに対して、局は「お咎めなし」だという。一般人がやるとわいせつ物陳列罪で処罰の対象になるのに、テレビ番組やタレントなら許されるのはおかしいと思う。

    (男性 30歳 東京)

局の回答

番組中のご指摘の部分につきましては、予想できないハプニングでしたが、視聴者に不快な映像が流れてしまい、心からおわびします。

笑福亭鶴瓶さんは番組のテーマ「再開」を求めて、長崎県・飛島を訪れていました。当日、鶴瓶さんは島民との交流会で酒を飲んでいましたが、スタッフの予想以上に酔いがまわっていたようです。スタッフには飲ませて酔わそうという演出上の意図はありませんでした。

問題のシーンは生放送中の深夜26時18分におきました。暑いのでパンツ1枚で熟睡している鶴瓶さんにスタジオのコーナー司会者が「起きて!」と呼びかけたため、鶴瓶さんは目を覚ましたものの、寝ぼけて急に立ちあがった拍子に掛け布団と一緒にパンツがずり落ちてしまいました。

カメラマンも予想外の出来事にとっさに対応ができず、画面が切り換わるまでの約1秒間露出した映像が流れてしまいました。

このアクシデントに対し、放送直後でコーナー司会者がバラエティーコーナーの範囲内でのフォローコメントを発しましたが、さらにメインスタジオの司会進行の立場である高島彩アナから27時37分に「FNS27時間テレビ・みんなのうたでは、さきほど中継の中でお見苦しい点がありましたことをおわび申し上げます」とコメントで謝罪しました。

この件につきましては番組審議会、メディア検討委員会、メディア検討小委員会、考査会議、広報視聴者対応会議そして制作のプロデューサー会議で議題としてとりあげて深く反省すると共に、今後の生放送のやり方について、さらなる注意が必要であることを指導徹底いたしました。

2003年8月

『水10!ワンナイR&R』フジテレビ

『水10!ワンナイR&R』に関するフジテレビからの回答

意見の要旨

  • 王監督の顔を便器に見立てて、口から飛び出した水で尻を洗う商品を紹介するというコントがあったが、王監督をバカにしており非常識もはなはだしい。やっと良い事と悪い事の判断ができないような放送局は、言論の自由、表現の自由などを言うことはできない。

    (男性 41歳 北海道)

  • ジョークとは程遠く、ただ有名人を愚弄しただけの下らないコント。あまりに無節操だ。

    (男性 30歳 栃木)

  • 王監督の顔を便器に見立てたコントは、世界のホームラン王であり国民栄誉賞をもらった人に対して、あまりに失礼ではないか。視聴率をとれば良い、人の耳目を集めれば良いというテレビ業界の姿勢がこのようなことを生むのではないか。

    (男性 56歳 東京)

局の回答

問題の「ジャパネットはかた」のコーナーは、テレビ通販番組「ジャパネットたかた」をパロディ化したもので、不定期に放送しているものです。

今回のパロディは、手法・表現として行きすぎたものであり、局として、これを充分にチェックできずに放送してしまったことを深く反省しております。

この件につきましては、ただちに王貞治監督ならびに福岡ダイエーホークス球団に直接おわびするとともに、8月20日放送の番組冒頭、須田哲夫アナウンサーの顔出しで「先週のワンナイR&Rの中で、福岡ダイエーホークスの王監督ならびに球団・関係者の方々に不快の念を与え、ご迷惑をおかけしましたことを深くおわびいたします。」とコメント謝罪いたしました。

さらに8月30日放送の「週刊フジテレビ批評」で、広報部長が視聴者の皆様への事情説明を行うとともに、王監督ならびにダイエー球団・関係者の方々におわびいたしました。

今回の事態を受けて、弊社の社内組織であるテレビメディア検討委員会、テレビメディア検討小委員会、考査会議、広報視聴者対応会議、そして制作プロデューサー会議等において、番組のチェック機能のさらなる強化策について検討するとともに、スタッフの放送倫理意識について改めて自覚を促しました。

9月10日の番組審議会でも議題として取り上げます。

社内での検討の結果、今後の番組のチェック体制につきましては、企画段階での編成・制作上長による事前チェックを行い問題発生を未然に防ぐとともに、従来より番組の納品を早めることによってチェック時間を十分に取るなど、編成・制作のダブルチェック体制を更に強化することにいたしました。

2004年 11月

在京地区各社との意見交換会(開催地:東京)

放送人権委員会委員と在京テレビ・ラジオ局のBPO連絡責任者との意見交換会が11月16日、東京で開催された。昨年4月に委員長と5人の委員が交代して以来、初めてとなる会合には、飽戸弘委員長はじめ8人の委員全員と、在京各局から10人の連絡責任者(代理を含む)が出席した。
冒頭、飽戸委員長が、「放送人権委員会は判決を下す裁判所ではない。皆さん放送事業者が自ら設置した、自主自律のための機関であって、(表現の自由に対する)権力の介入を防ごうとする機関だ」と、改めて放送人権委員会の基本的な機能を強調。あわせて、「放送人権委員会から『委員会決定』という形で問題が提起された際は、当該局だけでなく、全局の皆さんがそれに関心を持ち、問題について議論してほしい」と要望した。
意見交換では局側から、「今、裁判所では個人の名誉やプライバシーを重視している。苦情申立人は、表現の自由を尊重する放送人権委員会よりも、裁判所を頼りにしようという傾向になりはしないか」と、第三者機関としての立場の難しさを問いかける意見が出された。
これに対し委員からは、「放送人権委員会は司法でも行政でもない。委員会は、放送局の倫理性を問う方向に行くべきだと考えている」、「我々の役割は基本的には人権侵害と放送倫理上の問題からの救済だが、判断が難しいのは”放送倫理とは”ということ。法的責任でないため、そこに幅があるのはやむを得ない」、「厳しい勧告も出したが、局に求められるのは自律性だ」といった考えが述べられた。
また、「申立人の資格が『当分の間、個人』となっているが、”当分”はいつ頃までであり、団体の扱いはどうなるのか」との質問があった。これに対し、委員や事務局からは、「団体すべてが対象外ではなく、個人に近い団体は扱っている」、「放送人権委員会発足後8年になるので、『当分の間』や『個人・団体』について今後、議論が必要になってくる」との説明が行われた。
最後に委員から、「案件や事案を見てきて思うが、取材・編集過程でもう少し注意すれば、人を傷つけるような大きな問題にはならなかったはず」、「表現者は、何故そういう表現をするのかを常に考えるべきで、機械的な自主規制だけでは困る」、「放送局側から、番組を企画した際の志の高さを聞くとホッとする」といった感想が述べられ、意見交換会を締めくくった。