放送人権委員会

放送人権委員会 委員会決定

2002年度 第18号

出演者比喩発言問題

委員会決定 第18号 – 2002年9月30日 放送局:テレビ朝日

見解:番組内・放送後の対応に問題あり(少数意見付記)
2001年9月のテレビ朝日の情報番組『サンデープロジェクト』の討論において、ゲスト出演者が「戸塚ヨットスクール」を比喩に用いて発言し、同スクールの校長が重大な名誉毀損だと訴えた事案。

2002年9月30日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第18号

申立人
A
戸塚ヨットスクール校長
被申立人
テレビ朝日
対象番組
テレビ朝日 報道番組『サンデープロジェクト』
放送日時
2001年9月9日午前10時

申立てに至る経緯

申立ての対象になった番組は、2001年9月9日(日)午前10時の全国朝日放送株式会社(以下「テレビ朝日」という)の報道番組『サンデープロジェクト』であるが、その中で、「緊急・救国経済大討論」のタイトルの下、当面する日本の経済危機をどう乗り切るかをテーマに、司会者と3人のゲスト出演者による討論が、約23分間、放送された。
上記放送の中で、ゲスト出演者の経済アナリスト・森永卓郎氏(以下「当該ゲスト」という)が、IMFの対日審査をめぐって、「IMFなんか受け入れたら、あれは戸塚ヨットスクールですからね」「しごきの理論しかないんですよ。もう、どれだけのアジアの国を駄目にしたか分かっているんですか。あれはひどいところなんですよ」と発言した(以下「当該発言」という)。
戸塚ヨットスクール(以下「ヨットスクール」ともいう)側は、次週放送の前日である9月15日(土)午後10時30分頃、テレビ朝日に電話し、「当該発言は戸塚ヨットスクールがしごきで子供を駄目にしたという意味になり、同スクールと同校校長のAに対する重大な名誉毀損にあたる。謝罪と訂正をしてほしい」と抗議した。これに対して、テレビ朝日側は、「名誉毀損には当たらない」などと答えた。
その後、申立人、被申立人とも弁護士を通じ、それぞれ3回の文書の交換を行ったが、解決に至らず、A氏は、2002年2月21日、放送と人権等権利に関する 委員会(以下「委員会」という)に申立てを行ったものである。
申立人が校長を務めるヨットスクールは、同人により、1977年、愛知県美浜町に開設されたもので、厳しいスパルタ式のヨット訓練などを標榜し、情緒障害などの子供を中心に、全国から訓練生を集めていた。
しかし、1980年以降に訓練生の死亡事件が発生し申立人らが起訴され、2002年2月25日に、最高裁判所は上告を棄却する決定を下したため、申立人に対して傷害致死による懲役6年の刑が確定した。申立人は、同年3月29日に収監されたことにより、申立人側は同人妻である戸塚幸子氏を申立人代理人とした。

2002年3月19日開催の委員会は、「直接話し合いによる解決の機会を持つべきである」と判断し、双方に話し合いを求めた。
同年6月14日、申立人側から、「テレビ朝日は『話し合いは弁護士同士で行いたい』と言っているが、これまでも弁護士同士で行ってきて、それでも解決しなかったのだから進展は期待できない。委員会で審理してほしい」との連絡があった。
これを受けて、同年6月18日開催の委員会は、「話し合いによる解決は難しい」と判断し、本件を審理事案とすることを決定した。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立て要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁要旨
  • IV. 委員会の判断

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