放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 委員会決定

2020年度一覧

放送倫理検証委員会は、「問題がある」と指摘された番組を、調査、審議・審理した結果を、「委員会決定」として公表、掲載しています。

※「放送倫理上問題がある」と指摘された番組は審議、「内容の一部に虚偽がある」と指摘された番組は「審理」

第40号-2021年2月10日 放送局:フジテレビ

フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見

フジテレビは、2020年6月19日、2019年5月から2020年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったと発表した。フジテレビが調査を委託した会社が再委託した調査会社で、実際には電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていたと明らかにした。フジテレビは世論調査を休止し、2019年5月19日から2020年6月1日にかけて18のニュース番組で伝えた世論調査結果とそれに関連する放送を取り消した。
2020年8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたことや、調査を委託した会社が不正の行われた調査会社へ再委託した経緯自体をフジテレビが把握していなかったなどのチェック体制の不備を踏まえ、合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
日本民間放送連盟(民放連)とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」と定め、また、民放連の放送基準の冒頭では「世論を尊び」「正確で迅速な報道」の重視を求めている。さらに放送基準の第32条は報道の責任として「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と規定する。
委員会は、本件放送は世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたり報じたもので、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めないとして、本件放送には重大な放送倫理違反があったと判断した。

第39号-2021年1月18日 放送局:フジテレビ

フジテレビ 『超逆境クイズバトル!!99人の壁』
解答権のないエキストラ補充に関する意見

フジテレビは、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、2020年4月3日、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
委員会は、当該放送局から提供された報告書と番組の映像をもとに討議した結果、「意欲的な番組であるが、もともと無理があったのではないか」「同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似がうかがわれる。なぜ教訓が生かされなかったのか、再発防止策が生かされていたのか解明する必要がある」などの意見が委員から出され、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りし、議論を重ねてきた。
委員会は、本件番組が解答権のないエキストラを出場させていたことは、番組が標ぼうしている「1人対99人」というコンセプトを信頼した多くの視聴者との約束を裏切るものであり、また、NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた「放送倫理基本綱領」の「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定に照らし、制作過程の重要な部分を制作者たちが十分に共有していなかった点において、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであるとして、本件番組には放送倫理違反があったと判断した。

委員長談話-2020年10月30日

番組内容が広告放送と誤解される問題について

秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関し、委員会はこれまで番組内容が広告と誤解されることに関する問題について計6回にわたり討議を重ねてきたが、今回の委員会で討議を終了し、審議入りしないこととした。また、これまで公表した「長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見」及び「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」を踏まえ、民放連加盟各社および民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて共有することが適切であるとして、「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題された委員長談話を公表することにした。

第38号-2020年9月2日 放送局:テレビ朝日

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する特集を放送したが、この特集に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。委員会は、同年11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
日本民間放送連盟とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」とし、「取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」と定めている。また、民放連の放送基準では、前文で「正確で迅速な報道」を求め、第32条では報道の責任として「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と掲げている。本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた。
したがって、委員会は、本件特集には放送倫理違反があったと判断した。

第37号-2020年8月4日 放送局:TBSテレビ

TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』における企画「爬虫類ハンター」を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
委員会は、日本民間放送連盟の放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
NHKと日本民間放送連盟が1996年に定めた「放送倫理基本綱領」には、「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定がある。「爬虫類ハンター」は、X氏が特異な能力を発揮し次々と希少動物を発見し捕獲するシーンを核とする企画であった。その核心である希少動物に、あらかじめ協力者から借り受けた動物、または別の場所で捕獲した動物を用いたことは、制作過程の重要な部分を制作者側が十分に把握していなかった点で、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであり、また、X氏が「確かな知識と野性の勘」を駆使して自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との了解や約束を裏切るものであったというほかない。
よって、委員会は、本件放送には放送倫理違反があったと判断した。

第36号-2020年6月30日 放送局:琉球朝日放送・北日本放送

琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやって来た〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!~自分に合った資産形成を考える~』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとして審議入りを決め、議論を続けてきた。

琉球朝日放送の番組には広告取引の実態がなかったにせよ、番組の中身や表示の問題点から、視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連の「留意事項」は、広告取引という対価性の有無にかかわらず番組全般に適用される。それに盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、本件番組は視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められる。従って、委員会は放送倫理違反があったと判断した。
また、北日本放送の番組は特に後半部分は提供スポンサーの意向や事業などから独立した内容なのか見分けがつきにくく、視聴者が広告放送であるとの疑いや誤解を抱くのは無理もない。民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連の「留意事項」に盛り込まれた「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らして総合的に判断すれば、本件番組は視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められる。従って、委員会は放送倫理違反があったと判断した。

第35号-2020年4月8日 放送局:北海道放送

北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、放送の内容が他の立候補予定者との公平・公正性を害し放送倫理違反となる可能性があり、制作に当たってこれまで委員会が指摘してきた諸問題が検討された形跡がないなどとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りした。
審議の結果、委員会は、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本件放送は公示日の前日に約5分間にわたって特定の立候補予定者のみを取り上げて視聴者に強く印象づけるような編集をし、有権者に誤解を与え比例区の投票行動を歪めた可能性があるとして、選挙報道に求められる公平・公正性を害したことが、放送倫理に違反していると判断した。