放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 委員会決定

2023年度一覧

放送倫理検証委員会は、「問題がある」と指摘された番組を、調査、審議・審理した結果を、「委員会決定」として公表、掲載しています。

※「放送倫理上問題がある」と指摘された番組は審議、「内容の一部に虚偽がある」と指摘された番組は「審理」

第45号-2024年1月11日 放送局:TBSテレビ

TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見

TBSテレビは、2023年1月『news23』の中の「調査報道23時」において、農業協同組合(JA)で、共済営業の過大なノルマ達成の為に、職員やその家族が不必要な契約を結ぶいわゆる“自爆営業”が横行していると、顔をぼかし声を変えた職員の証言をベースに報じた。放送後BPOに、この職員と会ったことがあるという視聴者から、放送を見て取材に応じているのが誰であるかをすぐ特定できたという声が寄せられた。委員会は、取材源の秘匿という報道の原則が損なわれた疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして、同年8月に審議入りを決めた。
委員会で関係者へのヒアリングや資料の精査を進めた結果、以下の点が明らかになった。まず、本放送の取材は、内部告発者の同意に依存して映像の見た目を優先した形で進められており、内部告発者の状況や真意をくみ取った取材とは言い難く、情報源の秘匿という本来放送局が負うべき責任を軽んじた対応であったことが判明した。また、内部告発者が使用を控えてほしいと頼んだ映像を、約束を失念して放送してしまっており、情報源の秘匿を第一に考えていれば起こりえない失策を犯していたことも分かった。更に、取材を担当したディレクターがひとりで映像編集も行ったため、事前の映像チェックが十分ではなく、最後の砦としてのプレビューが機能していなかったことも明らかになった。
委員会は、これらの点などを問題点として認定し、取材源の秘匿が厳守できていなかったとして、本放送は、日本民間放送連盟報道指針の「2 報道姿勢」の(4)に反するものであり、放送倫理違反があったと判断した。

第44号-2023年12月5日 放送局:NHK

NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見

NHKは2023年5月、『ニュースウオッチ9』の中で「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」という1分5秒のVTRを放送した。3人の遺族のインタビューが含まれており、そこには「父を亡くした〇〇さん」などのテロップがつけられていた。前後の脈絡などから3人は、家族が新型コロナウイルスに感染して亡くなった遺族であると受け取るのが自然な映像だった。しかし実際には、3人は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であった。
委員会は、ワクチン接種による被害を訴える遺族を、新型コロナウイルス感染によって亡くなった人の遺族と誤認させるような放送が、なぜ、どのようにしてなされたのか検証する必要があるとして、同年6月の委員会で審議入りを決めた。関係者のヒアリングや議論を重ね、次のような事実を認めた。①VTR制作担当者と直属の上司は、コロナウイルスに感染して亡くなった人と、ワクチン接種後に亡くなった人を、広い意味で、コロナ禍で亡くなった人にかわりないという不適切な認識をして放送に臨んだ。②この担当者はインタビュー取材の相手である遺族に対し、ワクチンの問題を放送で扱わないという自分の意図を明確に説明せず、取材者としての基本を実践していなかった。③この担当者が取材経験などの面で十分とはいえないにもかかわらず、組織内で十分なサポートを受けていなかった。④放送前に行われた試写において、適切なチェックがなされなかった。
以上のことから委員会は、放送が放送倫理基本綱領やNHKの放送ガイドラインに反しているとし、放送倫理違反があったと判断した。