放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 委員会決定

2021年度一覧

放送倫理検証委員会は、「問題がある」と指摘された番組を、調査、審議・審理した結果を、「委員会決定」として公表、掲載しています。

※「放送倫理上問題がある」と指摘された番組は審議、「内容の一部に虚偽がある」と指摘された番組は「審理」

第42号-2022年3月9日 放送局:テレビ朝日

『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見

テレビ朝日は、情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』の2021年3月から10月にかけて放送した視聴者からの質問に答えるパートにおいて、番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問であるかのように放送したケースが含まれていたとして、10月21日、番組と番組のウェブサイトで公表し謝罪した。同パートでは、番組の前半で当日のテーマを視聴者に伝え、放送中に番組ウェブサイトなどで受け付けた質問を番組終盤で紹介し出演した専門家らが答えていた。ところが、番組スタッフが作成した質問を視聴者からの質問として放送したケースが多数含まれていた。また視聴者から受け付けた実際の質問を使用した場合も、文章の表現を修正したケースでは、クレームを避けるためとして投稿者の属性を書き換えて架空の属性で放送していたという。
委員会は、視聴者の質問や意見を番組が作ることは世論の誘導にもつながりかねず、放送倫理違反の疑いがあるとして、11月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議の結果、質問は視聴者の関心事やその傾向を示す重要な事実情報であり、本件放送のようにそれらを制作者が歪めることがあってはならない。また、本件放送で扱われた質問は、視聴者の意見表明とは必ずしも言えないが、投稿者の属性を書き換えることはその出所を不明確にするものであり、日本民間放送連盟の放送基準の「(32)ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない」「(35)ニュースの中で意見を取り扱う時は、その出所を明らかにする」に反しているとして、放送倫理違反があったと判断した。

第41号-2021年7月21日 放送局:日本テレビ

日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見

日本テレビは3月12日に放送した情報番組『スッキリ』のコーナー『週末オススメHuluッス』で、アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品を紹介した際、出演したタレントが「この作品とかけまして、動物を見つけた時ととく。その心は、あ、犬」という謎かけのコメントをした。放送後、日本テレビには視聴者から不適切だという批判が相次ぎ、日本テレビは、同日夕方のニュース番組『news every.』で「放送内容においてアイヌの方たちを傷つける不適切な表現がありました。深くお詫び申し上げるとともに今後、再発防止に努めてまいります」と謝罪し、日本テレビのウェブサイト及び番組ウェブサイトにお詫びを掲載した。翌週月曜日15日には、『スッキリ』の番組冒頭で「制作に関わった者に、この表現が差別に当たるという認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした」と説明し、全面的に謝罪した。
委員会は、当該放送局に報告書と同録DVDを求め協議した結果、差別的な表現であり放送倫理違反の疑いがあるとして、4月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議の結果、本件放送はアイヌ民族に対する明らかな差別表現を含んだもので、オンエアに至った背景には、収録動画の最終チェック体制が極めて甘く、アイヌ民族やその差別問題に関する基本的知識がスタッフ間で決定的に不足していた点があったことを指摘し、日本民間放送連盟の「放送基準」の「(5)人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」「(10)人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」などに反しているとして、放送倫理違反があったと判断した。