第80回 – 2007年6月
フジテレビ『はねるのトびら』について
視聴者意見について …など
フジテレビ『はねるのトびら』について
『はねるのトびら』におけるシリコンゴム巻きのパフォーマンスについて、再度審議した。
各委員の意見は次のとおり。
- シリコンゴム巻きだけをターゲットにして文書を出しても、また別の罰ゲームが出てくれば同じことであまり意味がないのではないか。視聴者や中学生モニターの意見に出てくるほかのバラエティー番組を視聴し、罰ゲームといじめ問題について時間をかけて議論したうえで、委員会としての姿勢を示すことが望ましい。
- 視聴者意見だけを基に議論するのではなく、委員会が自主的・集中的にバラエティー番組を視聴して罰ゲームの子どもへの影響についてもっと議論することを提案したい。
- 委員会としては、すでにバラエティー番組における罰ゲームなどについて「バラエティー系番組に対する見解(2000年11月29日)」を出しているが、あまり効果は見られていない。これを機会に改めてこの問題について審議するする必要があるのではないか。
- 罰ゲームについては、問題があるたびに委員会として指摘しているが、同様のものが出てくることをみると、いままでの経緯が生かされていないのではないか。局の番組審議会で審議することも重要だが、7月に開催されるモニター会議に制作担当者を呼んで中学生モニターと罰ゲームについて意見交換するほうが意義あるのではないか。
- モニター会議で制作者の意見を聞いても結局その場限りで終わって局全体の取り組みにはならないのではないか。今回のシリコンゴム巻きだけでなく、罰ゲームといじめについては、自粛を促す文書を委員会として出すべきだ。
- 前回委員会でも時間をかけて議論し、さらに今回も検討した結果として、やはりフジテレビに対して再度「シリコンゴム巻きの危険性の検討」と「番組審議会への報告」については、文書にして出すべきである。
- 回答に記された「番組審議会での審議予定はない」といった局の態度は問題だ。局として番組審議会で審議するなど社内できちんと問題点を継承しているようには思えないので、自局の番組には責任を取る姿勢を示してほしい。
- 「放送法第3条の4の?」には、苦情その他の意見概要は審議会等へ報告することが明記されているのだから、青少年委員会からの「回答要請」等の文書は審議会等に報告することが当然と考えていいのではないか。
以上、前回委員会の議論を踏まえてさらに検討した結果、フジテレビに対して「シリコンゴム巻きの危険性について今後の適切な対応を期待する。また、『はねるのトびら』に関して同社の番組審議会への報告を求める」旨の文書を出すことを決めた。また、委員会ではバラエティー番組での罰ゲームといじめに関して、今後、議論を深め審議を進めることとなった。
視聴者意見について
バラエティー番組で出演者の女性タレントにいたずらを仕掛ける企画について「番組の中でインターネットに悪口を書き込んだり、ノーメイクの写真を動画サイトに送ったり、悪意のある使用方法を紹介していて問題だ」といった意見が多数寄せられ、委員からは次のとおり発言があった。
- インターネットを使ったいじめは影響が大きく、それをテレビが率先してやるということは問題ではないか。
- テレビ番組でやるということは、当たり前のこととして市民権を与えてしまうことになり、いじめを助長するようなものだ。
- 悪質なものには市民権を与えないよう”NO”と言っていくことが委員会としての役割だ。
また、「会津若松頭部切断事件」と「長久手立てこもり事件」について、「過剰な報道が多く、青少年に悪影響を与える」「取材・報道が行き過ぎだった」といった報道のあり方に関して視聴者意見が多数寄せられ、委員から次のような意見が述べられた。 - 事件・事故報道は、各局必死でやっているので、ある程度過熱になるのは仕方がないが、取材対象者にストレスを与えたり、各局が同じ方向に行くことは考えるべきだ。
- 事件・事故が起きた直後の報道には人権問題や公にできないこともあって制約が多いが、時を経てから真実を解き明かしていく検証報道等がある。こういったテレビ報道の実態を子どもたちに伝えていくことも必要だ。
中学生モニターについて
今月は全国の中学生モニター28人から39件(1人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。内容はバラエティーについてが一番多く16件、ドラマが14件、情報・討論番組が4件、アニメ番組と教養番組が2件ずつ、CMについてが1件だった。局別ではフジテレビ系が13件、日本テレビ系が8件、TBS系7件、テレビ朝日系4件、NHK3件、テレビ東京系2件、テレビ愛知が1件だった。
- 件数が一番多かったバラエティー分野では、『はねるのトびら』に今月も2件意見があったが、他は1件ずつだった。『はねるのトびら』は賛否に分かれ、「やっぱり一番面白いのは”短縮鉄道の夜”というコーナーです。今流行っている言葉とかを知ることができるので、とても面白いです」という意見と、「どのコーナーも何ていうか、品がない、伝えたい意味が分からない」という意見だった。『学校へ行こう!MAX』は今月も好評で「視聴者からの1本の投稿ビデオがハリウッドスターに演奏を聞かせるまでに広がっていく番組の影響力はすごい。こういう視聴者参加型の番組はすごく面白い」という意見だった。他に好評だった番組は『ガリレオの遺伝子』、『めちゃ2イケてるッ』『とんねるずのみなさんのおかげでした』『田舎に泊まろう!』など。また『日曜ワイド・大胆MAP』には、普通ではあり得ない設定が多いという批判が、『いきなり!黄金伝説』にはマナーが悪いという批判が寄せられた。
- ドラマでは4本の番組に2件ずつ意見が寄せられた。『わたしたちの教科書』は「このドラマは、本当にすごいと思う。近頃の薄っぺらいドラマと違い深い深いドラマである。その理由はおそらく人物の描き方だろう。たまにこのような深い人間ドラマが放送されると、身がひきしまる思いがする」、「中学校が舞台という事で、中学生の自分も他人事ではないと思い、いつも見ていてイジメ等の問題について考えさせられています。今までにないマジメなドラマだと思います」などと好評だった。『ライアーゲーム』も「トリック等で頭を使う事が多いので最高です。この系統のドラマを増やしてほしいです」などと好評だったが、放送時間をもっと早くしてほしかったという要望もあった。『プロポーズ大作戦』も「ありきたりなラブストーリーだろうなと思っていましたが、見てみるとタイムスリップの所とかで話が結構こっていて、見ごたえがありました」などと好評だった。『生徒諸君!』には、先月「あまりに悲惨な内容で3話見たところで見るのをやめてしまった」という意見が寄せられたが、今月は「私は現実をしっかり捉えていて、とてもいい内容だと思いました」という好評意見と「たいした山場となる所もなかったような気がします。原作を読んでみたいと思うのが今の感想です。原作とテレビの違いが知りたくなるくらい、テレビに足りないものがあるような気がしてしょうがないです」という批判意見に分かれた。
- 情報系番組では『藤原紀香 陣内智則 披露宴生中継』に「マスコミだけが視聴率のために大騒ぎしているという感じで、我が家では全員しらけていた」という批判意見が寄せられた。
- アニメ番組では『アイシールド21』には「みんなが何か1つの夢に向かってがんばるというのは、とても良いことだと思います。感動したりするアニメはあまりないので、とてもいいアニメ番組だと思います」という好評意見が、『セイントオクトーバー』には「土曜日の朝あたりにやる番組かと思いきや深夜枠に。子供に影響を及ぼす番組でも無いからこれは朝でもいいのではないか」という注文が寄せられた。
- NHK教育テレビの2本『ETV特集 ワタシの見たニッポン』と『明日をつかめ 平成若者仕事図鑑』は好評で、『平成若者仕事図鑑』には「将来どういう仕事に就けばいいのか今悩んでいるので、仕事の情報があるのはいいことです。これからもいろいろな仕事を取り上げてほしいです」という意見も寄せられた。
少年委員会での、委員の主な発言を紹介する。
- 『はねるのトびら』について、芸人が院長になりモデルや芸能人にカウンセリングするコーナーへの批判と、他のコーナーも面白いけど品がないという意見があった。「心から笑える楽しい番組になるように期待しています」という中学生の声に耳を傾けるべきだ。
- 『行列のできる法律相談所』への「だんだん内容が低下している。バラエティーの部分とまじめな部分とのバランスの取れた内容に期待したい」という意見も説得力がある。
- 『学校へ行こう!MAX』への「視聴者参加型の番組は面白い」という評価には共感する。
- 『生徒諸君!』に関して、先月のモニター意見への反論も出されている。中学生モニター会議での議論を期待したい。
- 連盟賞の地区審査に参加したが、目を見張るようなドキュメント番組があった。是非全国の子どもたちに見てもらいたい
- 子どもに配慮する放送時間帯の問題について話がおよび、「現行は5時から9時であるが、やはり11時くらいまでは子どもへの配慮が必要になっている」という意見と、「11時までにすると子どもが11時過ぎまで起きていることを奨励することにならないか」という意見が出され、継続して審議していくことになった。
7月の中学生モニター報告のテーマは「好きな番組・嫌いな番組、その理由」とし、7月27日に開催される「中学生モニター会議」でも、この報告をもとに話し合うことになった。
調査・研究活動について
橋元委員から「今、テレビは子ども達にどう見られているか?(仮)」の調査について、報告書全体の構成が決まり、8月下旬を目途に完成する予定になっている。9月のシンポジウムで発表するが、インタビューの引用、図表等もあるので相当のボリュームになる、との報告があった。