青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第85回

第85回 – 2007年12月

視聴者意見について

中学生フォーラムについて …など

12月11日に開催した今年度第8回青少年委員会(通算85回)では、11月20日~11月30日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、中学生フォーラムと調査・研究について検討した。

議事の詳細

日時
2007年12月11日(火)
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題

視聴者意見について

1.『「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解』について

先月に引き続き、視聴者から「バラエティーの罰ゲームが本当に青少年に悪影響を与えるのか」という『見解』に対する反論意見が寄せられたことについて、是永論委員から『テレビが視聴者の現実認識に与える影響―ワイドショー等、番組タイプ別の培養分析―』(中村功、1998年)が紹介され、「テレビの暴力シーンが、見る頻度によって暴力に対する意識の持ち方に影響するという培養効果に関する研究の中で、バラエティーの視聴頻度の高い人に関して、暴力に対する社会観や認識に対するテレビ視聴の効果が、他の番組に比べて強いという結果が出ている。議論の余地はあると思うが、『見解』の反論に対する科学的な根拠のひとつとして参考になると思う」と説明があり、委員から「ワイドショーやバラエティー、刑事ドラマの視聴頻度が高い人ほど、実際の犯罪件数は減少しているにもかかわらず、世の中に暴力が溢れているという認識が強く、中でもバラエティーを見ている人に効果が強く出ているということなので、『見解』への反論に対し、根拠のひとつとなるのではないか」という意見が出された。

また、「この調査は、バラエティーの内容分析まで踏み込んでいないので、バラエティーに絞った調査研究を行うと罰ゲームの影響が実証できるかもしれない」という意見も出され、調査・研究のテーマとして検討することになった。

2.男児の裸について

田舎暮らしを始めた家族を紹介する番組の中で、小学生の少年を含む幼い兄弟が風呂に入るときに全裸が映ったことに対し、「児童の人権、児童ポルノ法の観点から見て不適切だ」「女児の裸は大騒ぎするが、男児はいいのか」等といった視聴者意見が寄せられ、当該局からビデオ提供を受け、委員会で視聴のうえ審議した。各委員の意見は次のとおり。

  • 制作者としては、大自然の中で暮らすことと子どもの裸が調和するという意図で作ったのだろう。全体の流れで見ると全く問題ない。しかし、男児の裸でも撮る時はバストショットにするなりカメラワークを考えて撮ったほうがよかったのではないか。
  • 番組自体はほほえましい映像で、子どもの裸についても悪気なく映してしまったのだろうが、悪気のある人が見る可能性もあり、慎重にならなくてはいけないのではないか。今は人権に対する社会のレベルが上がってきているので、制作者も意識するべきだ。
  • 子どもの裸に関しては、制作者は番組の構成に必要かどうかを考えるより、機械的に全裸は映さないと判断して作るべきではないか。
  • 制作者に対し、いきなり児童ポルノの関係で男児の裸は映してはいけないという警告をするより、児童ポルノに利用されるという認識なく作っていることが問題なので、そのことを委員会として知らしめていくことが大事だ。
  • 男児の児童ポルノに関する取り扱いについては、各社のガイドラインの見直しの際に検討するよう求めたい。

以上の審議の結果、児童ポルノに関しては継続審議になっているが、特に男児に関して今後も上記と同様の問題が出てくることが予想されるので、できれば次回委員会に専門家を招き、勉強することにした。

3.アニメ番組について

京都父親殺人事件に関連して、2つのアニメ番組が放送中止・休止になり、それ以後も深夜に放送されていたアニメが打ち切りになったことなどに対し、「深夜アニメが問題というならば、視聴年齢制限制度をつくるべきだ」「影響があるからと打ち切りにするより、青少年が安全に視聴できるよう映画のPG指定相当の区分を導入してほしい」といった視聴者意見が寄せられ、委員から次のような発言があった。

  • 深夜帯に放送しているアニメは、大人向けの内容でもタイトルだけでは分からないものもあるので、番組のタイトルに”何歳以上”といった注意書きがあったほうがいいのではないか。
  • 視聴年齢制限制度を導入すれば、見せたくない保護者は自主的に制限がかけられるのでこれも選択肢の一つと考えられるのではないか。
  • 年齢制限制度をつけてしまうと、かえって子ども達に見たい気を起こさせてしまうのではないか。

以上の審議の結果、深夜帯のアニメについては、今後も注視していくことになった。

4.パチンコCMについて

アニメゲームを基にしたパチンコ台のCMについて、「性的なことを連想させる表現が出ているので、子どもが見る時間帯での放送は自粛してほしい」といった意見が視聴者から寄せられ、委員から次の意見が述べられた。

  • 子どもが見る時間帯のCMについては、過度の性的表現などは注意して放送してほしい。
  • 視聴者が指摘しているパチンコCMは、だんだん表現がエスカレートしているようだ。局の考査はどう判断しているのか疑問がある。
  • 番組はチャンネルを替えるなどで選択できるが、CMはいつどんな内容のCMが流れてくるか分からないので、視聴者には選べないということを放送局は考えてほしい。

以上の審議の結果、パチンコCMの放送状況を調査したうえで、さらに議論していくことになった。

そのほかに、「バラエティー番組で、お笑い芸人たちが身体に攻撃を加える芸は、あくまでもテレビの中だけのものと一般視聴者には分かっていても、特別支援を受けている子どもたちは健常者と違い判断することができず、マネをしてしまうことが多いので、視聴者の中には現実と非現実の区別がつかず受け入れてしまう人たちがいることを忘れてほしくない」という視聴者意見が寄せられ、委員から次のような発言があった。

  • 今までは、青少年という枠で影響の有無を問題にしてきたが、一歩踏み込んで対象とする範囲を広げ、特別支援を受けている知的障害者も含めたうえで、委員会としての活動をしていかなくてはいけないと感じた。
  • 特別支援には知的障害だけではなく、軽度の発達障害の人達も含まれ、特定少数の人達とは言えない。また、虐待を受けた子ども達がいる養護施設での再虐待なども問題となっていることを考えれば、バラエティーでの罰ゲームなどがどう影響してくるのか、大きな問題となってくるのではないか。

以上の意見を受け、バラエティーの罰ゲームについては、青少年だけでなくこうした障害者への影響についても議論を広げていくことになった。

中学生フォーラムについて

事務局から第1~6回までの内容説明と今後の取り組みについて提案があり、次のような意見が各委員から出された。

  • 日本のテレビ番組のことだけでなく、世界の悲惨な状況にいる子ども達の存在を中学生モニターに知ってもらいたいが、フォーラムの中で放送とどう結びつけていくかが難しいところだ。
  • 制作者が学校に行き、番組作りの裏側を教える”出前授業”のようなものや海外のテレビ番組を見せ日本の番組と比較させるといったメディアリテラシー的なことをテーマにしてはどうか。
  • PTAの調査で子どもに見せたくないと言われている番組について、親と子ども達の考え方の違いを議論させることも必要と思うので、そういった場にできないか。
  • 舞台の上で、制作者と子ども達が話し合うといった構成では、双方ともなかなか本音が出ないので、もっと会場にいる人も参加できるワークショップ的なものにするといいではないか。

以上の意見を踏まえ、小田桐誠委員を中心に企画・構成を詰めていくことになった。

調査・研究について

来年度の調査・研究について検討し、各委員から次のような意見が出された。

  • イギリスでは、近年、子ども番組が減少しているようだが、日本と海外の子ども番組の比較研究をして、青少年向け番組のあり方を考えてはどうか。
  • 是永論委員から紹介のあった『テレビが視聴者の現実認識に与える影響―ワイドショー等、番組タイプ別の培養分析―』を参考に、バラエティーに絞った内容分析を行い、罰ゲームが青少年に与える影響について調査研究ができるとよい。
  • メディアリテラシー的なプログラムを組み、その成果を定期的に収集していくかたちでの研究のほうが委員会に活用できるし、また、フォーラムの企画としても組み込めるのではないか。

以上、調査・研究のテーマについては、今後も継続して検討することになった。

中学生モニター報告〔12月分〕

12月はこれまでと異なり、委員会から「バラエティー番組の罰ゲームをどう思うか」という課題を提出した。報告は32人のモニターから寄せられ、青少年委員には委員会終了後のため郵送された。報告の概要を紹介する。

  • 「罰ゲームは絶対止めるべき」(6件)・「罰ゲームは必要不可欠だ」(1件)という両極の意見は少なく、「必要だが、ひどいものは規制」「反対だが楽しいものなら良い」という意見が大多数の25件を占めた。
  • 肯定的な意見は、「私は、罰ゲームをやることで番組がおもしろくなる、と考えます。本来、暴力をふるうことは悪いと思いますが、芸人、芸能人はそういうことをやってお金をもらっている。それが仕事なんだと思います」、「罰ゲームが無くなったら面白味が無くなってしまう。罰ゲームは我々中学生にあまり影響が無いように感じます。僕の学級では普通の会話にバラエティー番組の話題などはほとんど出てきません」などであった。
  • 罰ゲームに反対する意見で目立ったのは「食べ物を粗末にするのはダメ」というもので9件あった。
    また反対する理由として「一歩間違うと怪我をしたり、死んだりするような罰ゲームは絶対にやめた方がいいと思う。中学生や小学生でも簡単に真似することが出来るものは特にだ」、「罰ゲームが、学校で遊びとして使われていたことがある。内容は、あまりひどくはなかったが、やられていた子は、とても痛そうで、その罰ゲームの放送に疑問を持った」、「中・高生の手本ともなるテレビで大人がイジメに近いことを堂々とやるのはよくないと思います。罰ゲームをやるにしても、もう少しソフトな罰ゲームを考えてもらいたいです」などであった。
  • 批判意見が多く寄せられたのは、『はねるのトびら』(9件)と『めちゃ2イケてるッ!』(4件)の2番組。『「ぷっ」すま』と『とんねるずのみなさんのおかげでした』には2件ずつ、「罰ゲームのモノマネで笑え、勝った人にごほうびをあげるなど、見ている方も気持ち良い」などの好評意見があった。
    また「どの番組の罰ゲームもワンパターンで面白味がない。出演者も視聴者もナニが起こるか分からないような罰ゲームにした方が良い。最近はウケ狙いのために大げさなリアクションをとる人が目立つ」という厳しい批判もあった。

青少年委員からは、中学生モニターへ以下のお便りが送られた。

  • 中学生モニターの皆さんが真剣に考えて下さったことを、いつもながらとても嬉しく拝見しました。罰ゲームに賛成の人も反対の人も、自分なりの根拠をしっかり提示して書いています。
    私たちが日々、直面する問題には、どちらが絶対に正しいとか、間違っているとか、簡単には是非をつけられない問題が少なくありません。バラエティー番組の罰ゲームもその一つかも知れません。送付される12月分の中学生モニター報告のまとめを、どうか「違い」に関心をもって読んでみてください。自分とは異なる意見を表明したモニターの意見が見つかったら、それをあなたの意見を見直すチャンスにしていただければと思います。
  • 特に具体的な提案があるのがいいですね。なるほどと、ついつい頷いています。
    バラエティー番組が好き・嫌い、罰ゲームここまでなら許せる・絶対許せない。いろんな感想、意見があるのは自然なことですし、とても大切なことです。自分の意見とは違っても、他の人が自由に発言する権利はみんなで守っていかなければなりません。ともすれば異なる意見を、力や数で排除しがちですが、それでは双方向のコミュニケーションは成り立ちません。自分の思いをうまく、わかりやすく、適確に表現して伝えることは大事ですが、それ以上に相手の言うことに耳を傾ける習慣を身に付けていくことが重要だと思います。是非聞き上手になってください。

1月のモニター報告は「年末年始の特別番組について」の感想を聞く事になった。

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