第82回 – 2007年9月
斎藤副委員長逮捕への対応と今後の委員会活動について
バラエティーにおける罰ゲームやいじめ等について …など
9月25日に開催した今年度第5回青少年委員会(通算82回)では、斎藤副委員長逮捕を踏まえた青少年委員会の今後の活動について議論した。また、バラエティーにおける罰ゲームやいじめ等について、7月18日~9月12日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見ならびに8・9月分の中学生モニターからの意見を基に審議した。議事に先立ち、6月15日に辞任した鈴木秀美委員の後任として、9月1日付で青少年委員会委員に就任した小田桐誠委員を紹介した。
小田桐誠(おだぎり・まこと)委員
ジャーナリスト
1953年生まれ。77年亜細亜大学法学部卒業後、日本実業出版社入社、79年同社退社。『週刊現代』『現代』『AERA』『宝石』などで、教育、事件、人物ルポ等の記事を執筆。80年代後半から、放送メディア関連のレポートを数多く発表。著書に『テレビのからくり』『PTA改造講座』『企業脅迫!-グリコ・森永事件の構図』など。04年から『GALAC』の編集長。現在、法政大学社会学部、武蔵大学社会学部の兼任講師も務める。
議事の詳細
- 日時
- 2007年9月25日(火)
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
-
斎藤副委員長逮捕への対応と今後の委員会活動について
バラエティーにおける罰ゲームやいじめ等について
視聴者意見について
中学生モニターについて
<調査研究について>
シンポジウム
斎藤副委員長逮捕への対応と今後の委員会活動について
冒頭、事務局から大麻取締法違反で逮捕された斎藤次郎副委員長について、現時点での事実経過の説明とBPOとしての対応の報告があった。
その後、委員会としての対応と今後の委員会活動について議論した結果、「委員会としては、これまで同氏とともに委員会活動を行ってきたことへの責任を痛感しているので、同氏の処遇についてBPOの決定があった後、青少年委員会としての対応を明らかにする」ことを確認した。
また、委員会として、中学生モニターや中学生フォーラム等の活動は今後も継続して行うことを申し合わせた。
バラエティーにおける罰ゲームやいじめ等について
前回(7月)委員会で申し合わせたとおり、この問題については審議を重ね委員会としての結論を出すことになっているが、本田委員長から「青少年委員会では、2000年に『バラエティー系番組に関する見解』を公表し、放送局に対して暴力シーンやセクハラに関しての要望をしているが、寄せられる視聴者意見を見ても、同見解が遵守・徹底されていないと言わざるを得ない。同見解には、委員会としての考え方だけでなく、放送の公共性、番組基準の徹底、放送局の責任体制の確立などあらゆることが網羅されているので、これ以上付け加えることは見当たらないが、2000年以後社会状況も変化し、肉体の露出度や性的表現の基準が寛容になってきているので、その点を踏まえテレビ局に対して同見解の再確認の要望を出すべきと考えている」といった提案が出され、これを基に継続審議することとなった。また、委員から「スポンサーの責任についても指摘していくべき」との意見があり、併せて検討していくこととなった。
視聴者意見について
セクハラ事件を起こした大学准教授を取り上げた情報番組で、インターホン越しではあるが、同准教授の高校生の長男にインタビューしたことについて「未成年に対して行き過ぎではないか」「容疑者の家族、とりわけ青少年への取材には配慮を望む」といった視聴者からの意見が寄せられ、委員からは次のような意見があった。
なお、事務局で当該局に事実確認をした結果、すでに担当部長が取材現場に対し「配慮が足りなかった。今後は再発防止を徹底するように」とのの注意をすでに行っていたとの報告があった。
- 未成年者へのインタビューについては、各局ともガイドラインを作成しているはずだが、実際の取材現場でどう捉えられているのかが疑問だ。チェック体制と現場の意識が乖離しているのではないか。
- 未成年者へのインタビューなどについては、「児童殺傷事件等の報道についての要望」(05年)の中で、”児童へのインタビューは、慎重を期すよう要望したい”と明記してあるのを確認してほしい旨の文書を出すべきだ。
- 放送局の現状を考えると、注意喚起のため、やはり文書は出すべきだ。
以上の審議の結果、当該局に対し「未成年者へのインタビューの配慮については、より以上の徹底を取材スタッフに行ってほしい」旨の文書を出すこととなった。
中学生モニターについて
今月は27人から35件のモニター報告が寄せられた。
分野別ではドラマが一番多く18件、続いてバラエティーに関する意見が7件、あとはスポーツ番組と音楽番組が3件ずつ、またアニメ番組と情報・討論番組が2件ずつだった。
局別ではフジテレビ系が16件、日本テレビ系が7件、テレビ朝日系が4件、NHK3件、TBS系とテレビ東京系が2件ずつだった。
- 今月は最終回を迎えるドラマに対して、沢山の報告が寄せられた。一番多かったのは『花ざかりの君たちへ』で6件、「現実離れしていて本当ではありえない話が面白い」「マンガとはちがって”イケメンパラダイス”となっていて、友だちと好みが分かれたりして語り合えた」「最後までよく考えられていると思える終わり方だった」などといずれも好評だった。
5件報告があった『ライフ』は好評が3件で賛否両論ある意見が2件だった。好評意見は「少し現実離れしたスケールのいじめですが、その壮絶さがまたいいと思いました」などで、「見始めると次はどうなるかとハマル」という指摘も数多くあった。否定的意見は「いじめがリアルで少しやりすぎ」「主人公がいじめていた人をかばう結末がキレイにできすぎ」などだった。
2件ずつ意見があったのが『探偵学園Q』と『勉強していたい!』で、いずれも好評だった。後者は3回シリーズで、重病で入院中の子どもと教える若い教師を描いたもので、「ドラマの内容から考えさせられるメッセージが随所にあり、久しぶりに心に届いたドラマでした」という意見だった。 - バラエティー番組はすべて1件ずつで、好評だったのは4番組で『「ぷっ」すま』は「毎週違う企画で飽きさせない、内容が本当に面白い」、『天才!志村どうぶつ園』は「たくさんの動物のかわいらしさが分かる」、『水10』は「オリエンタルラジオが様々なミニゲームをゲストとやるので面白いときはすごく面白い」、『熱血!平成教育学院』は「頭を働かせられる良い内容」などだった。
批判意見があったのは2番組で、『クイズ!ヘキサゴン』には「順位の低かった人をけなしていてそれを笑いにしている感じで本当にさみしい」、『一瞬で笑えるネタ祭り』には「とにかく忙しいのが気になった、また大賞が一人の独断と偏見で決まるのはおかしい」というものだった。 - その他、スポーツ番組では『世界陸上2007』に2件で、司会の2人が好評で競技も「真剣な勝負は下手なドラマより見ごたえ」があったという意見だった。ただ事前に競技時間を言わず、CMや録画で引っ張る手法には批判があった。
音楽番組では『MUSIC JAPAN』のネオ・ビジュアル特集が、「海外で話題を集めているジャンルの企画で、BSの完全版がとてもよかった」と好評だった。
アニメでは『結界師SP』は「緊張感がバリバリしている」と好評で、『DEATH NOTE』は「発想が斬新だが怖い」という意見だった。
情報番組では『近未来予測!テレビ”ジキル&ハイド”』に「改めて大規模な災害が起こるとたくさんの人の命が危険にさらされることが分かったが、CMの前や後に同じ所を何回も流していてうっとうしかった」という意見が、『あらすじで楽しむ世界名作劇場』には「絶対に読まない本がアニメやドラマで紹介され分かりやすかった。レギュラー番組になるのを期待している」という意見が寄せられた。
委員会では『ライフ』に関して、一般視聴者からは批判的意見が多く寄せられたが、中学生の意見はしっかり見ていて貴重だという意見が出された。また8月に命の大切さを訴えた『はだしのゲン』や『ゾウの花子』などのドラマシリーズや『あらすじで楽しむ世界名作劇場』など良質な番組に関心を持つ中学生も多く、こういう番組を放送する意味は大きいという意見もあった。
2007年度前期モニターは9月の報告が最後で、10月からは全国から選ばれた33人のメンバー(応募者100人から選考)で新たなスタートを切る。
<調査研究について>
橋元委員から「今、テレビは子ども達にどう見られているか?」の調査について、報告書の原稿が出来上がり、10月末の刊行を予定しているとの報告があった。
シンポジウム
「”テレビは王様”の時代は終わるのか?~小中学生36人インタビュー調査を受けて~」の開催
9月13日、東京の千代田放送会館で放送関係者など128人が参加し、シンポジウムを開催した。第1部は、青少年委員会の橋元良明委員が、昨年10月から実施した小中学生36人を対象に行ったインタビュー調査「今、テレビは子ども達にどう見られているか?」の調査結果を報告。
第2部のパネルディスカッション「”テレビは王様”の時代は終わるのか?」では、第1部の調査報告を受け、パネリストの横澤彪・鎌倉女子大学教授、岡田惠和・脚本家、小川善美・(株)インデックス社長、藤田真文・法政大学教授、橋元良明・青少年委員会委員(司会は小室広佐子・東京国際大学准教授)が子どものテレビ離れ進むといわれる現状とテレビ番組のこれからについて議論を展開した。
このシンポジウムの詳細は、冊子としてまとめ11月末に発行する予定。